説明

置換された1−O−アシル−2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノース類の製造方法

本発明は、式Iを有する1−O−アシル−2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノース類及びその中間体の製造方法に関する。
【化1】


式中、Rは、−C(O)−C−Cアルキル又は−C(O)−アリールを示し、Rは、C−Cアルキル、C−Cパーフルオロアルキル又はアリールを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−O−アシル−2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノース類及びその中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4’−チオヌクレオシド類は、抗ウイルス及び抗新生物活性について魅力的な化合物である。例えば、1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン(4’−チオ−FAC)は、インビトロ及びインビボにおいて優れた抗腫瘍活性を有することが示されている[Y. Yoshimura他; J. Org. Chem. 1997, 62, 3140-3152; S. Miura 他, Cancer Lett. 1998, 129, 103-110; S. Miura 他, Cancer Lett. 1999, 144, 177-182; Y. Yoshimura 他, Bioorg Med. Chem. 2000, 8, 1545-1558; D.A. Zajchowski 他, Int. J. Cancer 2005, 114, 1002-1009]。
【0003】
本発明は特に、式Iの化合物を製造するための新規方法に関する。
【化1】

式中、
は、−C(O)−C−Cアルキル又は−C(O)−アリールを示し、
は、C−Cアルキル、C−Cパーフルオロアルキル又はアリールを示す。
【0004】
一般式Iの化合物は、4’−チオヌクレオシド類の製造における鍵となる中間体である。
【0005】
1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン[4’−チオ−FAC]:
【化2】

【0006】
化合物IIを視野に入れて、1−(2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン[4’−チオ−FAC]の製造には特に興味がある。
【化3】

以下において、アノマーアセテートのα−ジアステレオマーをIIαと称し、β―アイソマーについてはIIβを使用する。
【0007】
この化合物及びその製造は、WO97/73993、WO97/038001及びそれに付随する文献[Y. Yoshimura 他, J. Org. Chem. 1999, 64, 7912-7920; Y. Yoshimura 他, Nucleosides Nucleotides 1999, 18, 815-820; Y. Yoshimura 他, Nucleic Acids Symposium Series 1998, 39, 11-12; Y. Yoshimura他, Tetrahedron Lett. 1999, 40, 1937-1940]に初めて記載された。
【0008】
これに関連して、式IIIの化合物の製造経路を記載する。
【化4】

式中、
及びRはアルキル、シリル又はアシルを示し、Rはアシルを示す。
(スキーム1)
【0009】
[スキーム1]
【化5】

【0010】
スキーム1の出発物質は、市販の1,2:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-α-D-アロフラノース(A1)であり、D−グルコースから4工程で得ることができる [D.C. Baker 他, Carbohydr. Res. 1972, 24, 192-197]。上記のようにして、化合物IIは、1,2:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-α-D-アロフラノースから出発して全部で14の化学工程で得ることができ、又はD−グルコースから出発して18の化学工程で得ることができる。ここで化合物IIは、IIα及びIIβからなるアノマー混合物として得られる。文献には、IIα/IIβ比率については何も記載していない [Y. Yoshimura 他, J. Org. Chem. 1999, 64, 7912-7920]。A14から出発して文献の方法と同様にしてIIを製造するために本出願人が行った実験室実験においては、1:1から3:2のIIα/IIβ混合物が得られた。
【0011】
化合物IIを製造するための先行技術から既知のこの方法の欠点は、多数の化学工程が必要であり、工業規模で本方法を実施することがかなり困難であるということである。また、合成を工業規模で実施する場合には特に、以下の困難及び問題点がある。
・この方法は、少なくとも5回の分取クロマトグラフィー分離(prep-HPLC)を含む。
・中間体A6、A7、A9、A12が不安定である。
・工程A2、A3、A4、A8、A9、A11、A12における粘性液体の取り扱いが困難である。
・化合物A6はメタノールに非常にゆっくり溶解する。ナトリウムメトキシド(NaOMe)の存在下において、化合物A7におけるメトキシ基によるメシレート基の求核置換が副反応として生じる。副生物の生成が、特に反応を比較的大規模で行う場合に生じる。
・イソプロピリデン基の切断後、他の後処理法では大量の副生物が生じるため、トリフルオロ酢酸(TFA)を減圧下で留去する必要がある。工業規模の場合、これにはかなり困難が伴う。
【0012】
長い合成手順、そしてその工程の幾つかはスケールを大きくできないか、又はかなりの費用がかかることから、スキーム1に示した方法は、化合物IIの工業的商業的製造には適していない。
【0013】
化合物IIの別の製造方法が、WO2007/068113及びそこに記載の文献 [J.K. Watts 他, J. Org. Chem. 2006, 71, 921-925] に記載されており、以下のスキーム2に要約を示す。
【0014】
[スキーム2]
【化6】

【0015】
ここで、最後の合成工程では、アノマーアセテートIIの混合物(IIα/IIβ比は1:2から1:14)が得られる[J.K. Watts 他, J. Org. Chem. 2006, 71, 921-925も参照]。副生物B8は、カラムクロマトグラフィで除去する。
【0016】
化合物B1は、L−キシロース(天然には存在しない)から6工程で製造することができる[J.K. Watts 他, J. Org. Chem. 2006, 71, 921-925]。即ち、化合物IIは、L−キシロースから合計13の化学工程で製造することができる。
【0017】
この合成手段に特有の欠点は、出発物質L−キシロースが高価であり、工業規模での合成のためには非常に少量しか商業的に入手できないということである。
【0018】
さらに、合成を工業規模で行う場合には特に、以下の困難及び問題点がある:
・各合成段階において、複雑な保護基の変換そして各場合においてクロマトグラフィー精製を行う必要がある。
・液体アンモニア及びリチウム元素の非常に低温での使用(工程B2)
・高いモル質量を有し商業的入手が困難な特別なシリル保護基の導入および除去(工程B3及びB5)
・フッ素化剤としてのDASTの使用。DSATは入手が困難であることに加え、安全性の問題(取扱い温度、ガスの生成を伴う発熱反応におけるDASTの分解)が、この反応のスケールアップにおいて重要な役割を担う(工程4)。
・非常に低温でのオゾンの使用(B7)。
・プメラー(Pummerer)転位中の高温(110℃)、及び副生物B8の約20%の生成 [J.K. Watts 他, J. Org. Chem. 2006, 71, 921 -925]。
【0019】
合成の個々の工程における上記した困難性により、スケールアップは困難又は不可能であり、また出発物質の入手が限定されていることにより、スキーム2に示した方法も同様に、化合物IIの工業的商業製造のためには全く適していない。
【発明の概要】
【0020】
この背景に対して、本発明の目的は、式Iの化合物の工業的製造を可能とする代わりの方法を提供することであった。
【0021】
本発明によれば、上記目的は、式IVで示される商業的に容易に入手可能な化合物から出発し、鍵となる工程である「環状硫酸エステルの標的化した開環を介するフッ素原子の導入」及び「特別の触媒を使用したスルホキシドのプメラー(Pummerer)転位」を経由する10の化学工程において高い収率で式Iの化合物を得る方法により達成された(スキーム3)。
【0022】
[スキーム3]
【化7】

【0023】
本発明による方法で出発物質として使用する式IVの化合物は、天然の容易に入手可能なD−リボースから4回の化学工程で合成することができる。D―リボース及びタイプIVの化合物(例えば、5-O-ベンジル-2,3-O-イソプロピリデン-L-リキソノ-1,4-ラクトン)はともに商業的に入手可能である (米国特許第 6,448,415 B1号)。
【0024】
さらに、本発明による方法は、kg量でも容易に入手可能な試薬のみを使用する。
【0025】
中間体V、VI及びVIIは、粗生成物としてのみ単離され、各場合において次の工程において直接使用される。最後に、化合物VIIIは高純度(> 97%)に結晶化される。このように、時間かつ資源集約的な精製(例えば、分取クロマトグラフィー)は省略することができる。
【0026】
工程IX、XI及びXIIも同様に単離は行わず、粗物質を次の工程で直接使用する。
【0027】
本発明によれば、合成手順の全体において、3つの中間体(VIII、X及びXIII)のみを単離すればよく、分取クロマトグラフィーは1回だけ必要である(X)。中間体VIII、XII及び生成物I(II)は結晶化により高収率かつ高純度(> 93%)で単離される。
【0028】
本発明による方法は、複雑な保護基の変換を必要としない。
【0029】
スルフィドXIIの酸化は、オキソン(OXONE)(モノ過硫酸カリウム三塩、2KHSO・KHSO・KSO)を用いて室温で標的化した形で実施することができ、過酸化は、当モル量を使用することによって問題なく回避することができる(スキーム2、B7を生じる反応を参照)。
【0030】
本発明によれば、プメラー(Pummerer)転位(XIII→I)は、触媒量の硫酸水素カリウムの存在下において行う。この触媒を使用することにより、低い反応温度(<90℃)において高収率(> 80%)と同時に非常に低い副生物の生成(< 5%)を達成することができる [スキーム2、IIを生成する反応を参照]。得られる粗生成物Iは、不純物をほとんど含まず、α−アノマーの割合もごく少量であるので、精製については簡単な結晶化で十分である。
【0031】
本発明による方法は、ジオールの形成によるチオフラノースの構築、ビススルホネートを介するその活性化及び硫化ナトリウムによる環化;保護基の技術、及びオキソン(OXONE)によるスルフィドの酸化のために、当業者に公知の一般的な化学変換を利用しない。しかし、本発明の特別の側面は、チオフラノースの個々の立体中心を標的化し非常に効率的に構築することである。
【0032】
本発明の更に別の側面は、環状硫酸エステルIXの立体選択的な開環による化合物XのC3原子におけるフッ素原子の立体特異的な導入である。
実施形態の説明
【0033】
式Iの化合物を製造するための本発明による方法の第1工程においては、
【化8】

(式中、
は、−C(O)−C−Cアルキル又は−C(O)−アリールを示し、
は、C−Cアルキル、C−Cパーフルオロアルキル又はアリールを示す。)
式IVのリキソノラクトンを、0.5〜10モル当量の式A(AlH)又はA(BH)(式中、Aはアルカリ金属である)で示される水素化物ドナーの存在下において還元して、
【化9】

(式中、
は、C−Cアルキル又はアリールメチレンを示し;
及びRは互いに独立に、水素、C−Cアルキル、C−Cパーフルオロアルキル又はアリールを示す)
式Vのジオールを得る。
【化10】

【0034】
ここで、0.5〜1.5モル当量の水素化{すいそか}アルミニウムリチウム(LiAIH)を使用することが好ましい。反応工程は、好ましくは0℃〜30℃の間の温度で行う。
【0035】
第2工程においては、ジオールVを、少なくとも2モル当量の第3級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)又はピリジン(例えば、ピリジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、コリジン、ピコリン類、ルチジン類)、好ましくは2−5モル当量のトリエチルアミンの存在下において、少なくとも2モル当量のスルホニルクロリドR−SO−Cl又はスルホン酸無水物R−SO−O−SO−R(式中、RはC−Cアルキル、C−Cパーフルオロアルキル又はアリールを示す)、好ましくは2−5モル当量のメタンスルホニルクロリドと反応させて、式VIの化合物を得る。
【化11】

【0036】
反応工程は、好ましくは0℃〜30℃の間の温度で行う。
【0037】
第3工程においては、ビススルホネートVIを、例えば、DMF、NMP、DMA、DMSO、DMEU、好ましくはNMP(N−メチルピロリドン)などの極性非プロトン性溶媒中で、50℃より高い温度、好ましくは50℃から100℃の間の温度で、少なくとも1モル当量の硫化ナトリウム(NaS)と反応させて、式VIIのチオフラノースを得る。
【化12】

【0038】
工程4においては、式VIIのチオフラノースを、水と、エーテル(例えばジエチルエーテル、THF、ジオキサン、MTBE)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、カルボン酸(例えば、酢酸)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン)の群から選択される有機溶媒との溶媒混合物、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)と水との混合物中において、鉱酸(例えば、HCl、HSO、HPO)、アルカンスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸)、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸)、パーフルオロスルホン酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸)又はパーフルオロアルカンカルボン酸(例えば、トリフルオロ酢酸)の群から選択される0.01〜5モル当量の酸、好ましくは0.01〜5モル当量のHSOを用いて、式VIIIのジオールに転換する。
【化13】

【0039】
反応工程は、好ましくは20℃〜100℃の間の温度で行う。
【0040】
ジオールVIIIは、アルカン又はその混合物(好ましくはヘプタン)と、カルボン酸エステル(好ましくは、酢酸イソプロピル又は酢酸エチル)との溶媒混合物からの結晶化によって単離される。
【0041】
工程5においては、一般式VIIIのジオールを、少なくとも0.2モル当量の式AH、ACO又はA(OtBu)(式中、Aはアルカリ金属を示す)で示される塩基、好ましくは0.2〜3モル当量の水素化ナトリウムの存在下において、1−2モル当量の式X−SO−X(式中、X及びXは互いに独立にCl又はイミダゾイルを示す)で示されるジオール活性化試薬、好ましくは1−2モル当量のスルホニルジイミダゾールと反応させて、式IXの環状硫酸エステルを得る。
【化14】

【0042】
反応工程は、好ましくは−5℃〜20℃の間の温度で行う。
【0043】
工程6においては、式IXの環状硫酸エステルを、0℃から30℃の間の温度において、1〜3モル当量の式N(R11F(式中、R11はC−Cアルキルを示す)のフッ化アンモニウム、好ましくは1〜3モル当量のテトラブチルアンモニウムフルオリドと最初に反応させ、このようにして得た反応混合物を、鉱酸(例えば、HCl、HSO)、アルキルスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸)、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸)、パーフルオロスルホン酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸)又はパーフルオロアルカンカルボン酸(例えば、トリフルオロ酢酸)の群から選択される酸、好ましくは硫酸(HSO)と反応させて式Xのエーテルを得る。
【化15】

【0044】
この反応の第2の部分工程は、好ましくは20℃〜70℃の間の温度で行う。
【0045】
工程7においては、式Xのエーテルを先ず、部分工程a)において、0℃〜−80℃の間の温度において、少なくとも1モル当量のハロゲン化ホウ素BY(式中、YはF、Cl又はBrを示す)の存在下において、好ましくは1〜4モル当量の三塩化ホウ素を用いて、反応させる。
【0046】
部分工程b)においては、部分工程a)において得た反応混合物を、C−Cアルカノール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、イソブタノール)、アリールアルカノール(例えば、ベンジルアルコール)及びフェノール類(例えば、フェノール)からなる群から選択されるアルコール成分と、脂肪族第3級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)の群又はピリジン類(例えば、ピリジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、コリジン、ピコリン類、ルチジン類)の群から選択される塩基との混合物、好ましくはメタノールとピリジンの混合物を用いて反応させて、式XIのジオールを得る。
【化16】

【0047】
本方法及び反応混合物の反応停止は、好ましくは0℃〜−80℃の間の温度において行う。
【0048】
工程8においては、式XIのジオールを、脂肪族第3級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン)の群又はピリジン類(例えば、ピリジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、コリジン、ピコリン類、ルチジン類)の群から選択される少なくとも2モル当量の塩基の存在下において、好ましくは2〜10モル当量のピリジンを用いて、少なくとも2モル当量の酸塩化物R−Cl又は酸無水物R−O−R(式中、Rは、−C(O)−C−Cアルキル又は−C(O)−アリールを示す)、好ましくは2〜5モル当量の塩化ベンゾイルを用いて反応させて、式XIIの化合物を得る。
【化17】

【0049】
工程9においては、式XIIのスルフィドを、水と式R−C(0)−R’(式中、RおよびR’は互いに独立にC−Cアルキル、C−Cパーフルオロアルキル又はアリールを示す。)のケトン(好ましくはアセトン)との溶媒混合物中において、0℃から50℃の間の温度において、0.5〜1モル当量の式AHSO(式中、Aはアルカリ金属を示す)で示されるアルキル金属過硫酸塩、好ましくは0.5〜1モル当量のオキソン(モノ過硫酸カリウム三塩、2KHSO・KHSO・KSO)を用いて酸化し、式XIIIのスルホキシドを得る。
【化18】

【0050】
生成物XIIIは、好適な溶媒、好ましくはメチルtert−ブチルエーテルからの結晶化により単離される。
【0051】
工程10においては、式XIIIのスルホキシドを、30℃〜100℃の間の温度において、鉱酸(例えば、HCl、HBr、HSO、HPO、アルカリ金属重硫酸塩、第一アルカリ金属リン酸塩)、アルカンスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸)、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸)、パーフルオロスルホン酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸)又はパーフルオロアルカンカルボン酸(例えば、トリフルオロ酢酸)の群から選択される0.01〜2モル当量のプロトン酸の存在下において、又は0.01〜2モル当量のルイス酸(例えば、LiCl、MgBr、Ti(OR13)(式中、R13はC1−C6−アルキル又はアリールメチレンを示す)の存在下において、好ましくは0.01〜2モル当量の硫酸水素カリウムの存在下において、少なくとも1モル当量の酸無水物R−C(O)−O−C(O)−R(式中、RはC−C−アルキル、C−C−パーフルオロアルキル又はアリールを示す)、好ましくは少なくとも5モル当量の無水酢酸を用いて反応させることにより、式Iの化合物を得る。
【化19】

【0052】
生成物Iは、適当な溶媒、好ましくはエタノールからの結晶化により単離される。
【0053】
これまで、文献には、硫酸水素カリウムが、スルホキドから対応するチオアセタールへのプメラー転位を触媒し、副生物の生成を防止するという実例は記載されていない。
【0054】
基R、R、R、R、R、R、R’、R11およびR13のC1−C6アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル又はn−ヘキシル基が挙げられる。
【0055】
基R、RおよびR13のアリールメチレン基としては、例えば、ベンジル又は4−メトキシベンジル基が挙げられる。
【0056】
基R、R、R、R、R及びR’のアリール基としては、例えば、フェニルまたは置換フェニル基が挙げられる。
【0057】
基R、R、R、R及びR’のC−Cパーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたはノナフルオロブチル基が挙げられる。
【0058】
式A(AlH)又はA(BH)の水素化物ドナー、塩基AH、ACO又はAOtBu、アルキル金属過硫酸塩AHSOにおけるアルカリ金属Aとしては、例えば、リチウム、ナトリウム又はカリウムが挙げられる。
【0059】
基Rの−C(O)−C−Cアルキル基としては、例えば、アセチル、n−プロパノイル、イソプロパノイル、n−ブタノイル、t−ブタノイル、イソブタノイル、n−ペンタノイル、又はn−ヘキサノイル基が挙げられる。
【0060】
基Rの−C(O)−アリール基としては、例えばベンゾイル又は置換ベンゾイル基が挙げられる。
【0061】
好ましくは、本発明による方法は、Rがベンゾイルを示し、Rがメチルを示す化合物I(スキーム3による)を製造するために、即ち式IIβの化合物を製造するために使用される。
【0062】
本発明によれば、R、R及びRがメチルを示し、Rがベンジルを示す、式IIβの化合物の製造方法(スキーム3による)が特に好ましい。
【0063】
さらに本発明はまた、本発明による方法(スキーム4)の好ましい態様の中間体、特に、
1−O−ベンジル−3,4−O−イソプロピリデン−L−アラビニトール(C2);
1−O−ベンジル−3,4−O−イソプロピリデン−2,5−ジ−O−メタンスルホニル−L−アラビニトール(C3);
1,4−アンヒドロ−5−O−ベンジル−2,3−O−イソプロピリデン−4−チオ−D−リビトール(C4);
1,4−アンヒドロ−5−O−ベンジル−2,3−O−スルホニル−4−チオ−D−リビトール(C6);及び
1,4−アンヒドロ−5−O−ベンジル−2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−D−アラビニトール(C7)
に関するものである。
【0064】
[スキーム4]
【化20】

【0065】
化合物C1 (5-O-ベンジル-2,3-O-イソプロピリデン-L-リキソノ-1,4-ラクトン) は市販されている。以下において、スキーム4に示した反応の手順を記載する。
【0066】
合成手順
1-O-ベンジル-3,4-O-イソプロピリデン-L-アラビニトール(C2):
0〜10℃において、44.68 g (116.78 mmol)の水素化アルミニウムリチウムを450mlのTHF中の50 g (179.66 mmol) のC1の溶液に測り入れ、混合物を、反応が終了するまで攪拌する。20℃において、水及び水酸化ナトリウム水溶液を添加し、沈殿した固体を濾別し、THFを用いて生成物を含まないように洗浄した。粗生成物の溶液を濃縮し、溶媒を完全に除去する。これにより、53.26 g のC2(105%)が粗生成物として得られ、これを次の工程C3においてこの形で使用する。
【0067】
1H-NMR (400 MHz, DMSO): 7.39-7.24 (m, 5H, H-7 to H-9), 4.81 (t, 1 H, 5.46 Hz, 1 -OH), 4.65 (d, 1 H, 5.84 Hz, 4-OH), 4.5 (s, 2H, 2xH-6), 4.15-4.00 (m, 2H, H-2 and H-3), 3.76 (qd, 1 H, 6Hz, 2.5 Hz, H-4), 3.7-3.55 (m, 2H, 2xH-1), 3.49-3.35 (m, 2H, 2x H-5), 1.38 (s, 3H, 10-CH3), 1.25 (s, 3H, 10-CH3).
【0068】
13C-NMR (75 MHz, CDCl3): 138.0, 128.8, 128.2, 128.1 (Ar), 108.9 (0-C-O), 77.7 (CH2), 76.9 (CH2), 73.8 (CH), 71.9 (CH), 68.9 (CH2), 61.0 (CH), 28.1 (CH3), 25.6 (CH3).
【0069】
1-O-ベンジル-3,4-O-イソプロピリデン-2,5-ジ-O-メタンスルホニル-L-アラビニトール(C3):
20℃において、54.54 g (538.97 mmol)のトリエチルアミンを、450mlのTHF中の53.26 g (179.66 mmol、工程C2において100%の収率と想定) のC2(粗生成物)の溶液に添加し、39.39 g (431.17 mmol) のメタンスルホニルクロリドを0〜10℃で測り入れる。混合物を、反応が終了するまで攪拌し、水を添加し、層を分離させる。水層をMTBEで抽出し、合わせた有機層を、飽和塩化ナトリウム溶液及び炭酸水素ナトリウム希薄溶液で洗浄する。粗生成物の溶液を濃縮し、溶媒を完全に除去する。これにより、86.66 gのC3(110%)が粗生成物として得られ、これを次の工程C4においてこの形で使用する。
【0070】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 7.40-7.30 (m, 5H), 4.90 (dt, 1 H, 11.5 Hz, 6.6 Hz), 4.56 (dd, 2H, 11.8 Hz), 4.42-4.39 (m, 2H), 4.38-4.35 (m, 2H), 3.83 (dd, 1 H, 10.61 Hz, 6.06 Hz), 3.70 (dd, 1 H, 10.61 Hz, 5.05 Hz), 3.10 (s, 3H), 3.02 (s, 3H), 1.50 (s, 3H), 1.37 (s, 3H).
【0071】
13C-NMR (75 MHz, CDCl3): 136.8, 128.6, 128.2, 128.0 (Ar), 109.7 (0-C-O), 77.8. 75.6, 74.5, 73.7 (CH2), 69.6 (CH2), 67.7 (CH2), 39.0, 37.5, 27.2, 25.4.
【0072】
1,4-アンヒドロ-5-O-ベンジル-2,3-O-イソプロピリデン-4-チオ-D-リビトール (C4):
50.99 g (215.59 mmol)の硫化ナトリウム (33%純度)を、550 mlのN-メチル-2-ピロリドン中の86.66 g (179.66 mmol、工程C3において100%の収率と想定) のC3 (粗生成物)の溶液に添加し、混合物を内温80℃まで加熱し、この温度で、反応が終了するまで攪拌する。内温20℃において、水及びMTBEを添加し、層を分離させ、水層をMTBEで抽出する。合わせた有機層を水で最終的に洗浄する。粗生成物の溶液を濃縮し、溶媒を完全に除去する。これにより、56.41 gのC4(112%)が粗生成物として得られ、これを次の工程C5においてこの形で使用する。
【0073】
1H-NMR (400 MHz, DMSO): 7.40-7.25 (m, 5H, H-7 to H-9), 4.89 (t, 1 H, 4.7 Hz, H-2), 4.73 (d, 1 H, 5.65 Hz, H-3), 4.50 (s, 2H, 2xH-6), 3.55-3.42 (m, 2H, 2xH-5), 3.37 (t, 1 H, 6.2 Hz, H-4), 3.10 (dd, 1 H, 12.6 Hz, 4.7 Hz, H-1), 2.76 (d, 1 H, 12.6 Hz, H-1 ').
【0074】
13C-NMR (75 MHz, CDCl3): 137.9, 128.4, 127.9, 127.5 (Ar), 110.9 (0-C-O), 86.3 (CH), 83.8 (CH), 73.2 (CH2), 72.2 (CH2), 53.3 (CH), 38.3 (CH2), 27.2 (CH3), 25.3 (CH3).
【0075】
1,4-アンヒドロ-5-O-ベンジル-4-チオ-D-リビトール(C5):
50 mlの水及び9.22 g (0.094 mmol)の硫酸の溶液を、450 mlのTHF中の56.41 g(179.66 mmol、工程C4において100%の収率と想定) のC4(粗生成物)の溶液に添加し、混合物を70℃まで加熱し、この温度で数時間攪拌する。完全な転換を達成するために、70℃において数mlを留去する。MTBEを20℃で添加し、層を分離させ、水層をMTBEで抽出する。合わせた有機層を、飽和炭酸カリウム溶液で中和する。固体を濾別し、MTBEを用いて生成物を含まないように洗浄する。粗生成物の溶液を酢酸イソプロピルに再蒸留し、生成物をヘプタンの添加により結晶化する。これにより、33.67 gのC5 (C1から出発する4工程において78%)が得られる。
【0076】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 7.39-7.29 (m, 5H), 4.56 (s, 2H), 4.37 (dt, 1 H, 7.33 Hz, 3.54 Hz), 4.04 (dt, 1 H, 7.07 Hz, 6.82 Hz), 3.70 (dd, 1 H, 9.09 Hz, 5.31 Hz), 3.62 (t, 1 H, 9.09 Hz), 3.56-3.51 (m, 1 H), 3.1 1 (d, 1 H, 3.54 Hz), 3.05 (dd, 1 H, 11.62 Hz, 4.55 Hz), 2.85 (dd, 1 H, 11.62 Hz, 3.03 Hz), 2.65 (d, 1 H, 3.54 Hz).
【0077】
13C-NMR (75 MHz, CDCl3): 137.4, 128.6, 128.0, 127.8 (Ar), 80.4, 74.8, 73.6 (CH2), 73.0 (CH2), 47.0, 33.6 (CH2).
融点:78-82℃
【0078】
1,4-アンヒドロ-5-O-ベンジル-2,3-O-スルホニル-4-チオ-D-リビトール (C6):
0℃において、75 ml のTHF中の50 g (208.06 mmol)のC5の溶液を、100 mlのTHF中の2.5 g の水素化ナトリウム(鉱油中)の懸濁物に添加し、混合物を0℃で1〜2時間攪拌する。0℃で、450 mlのTHF中の45.36 gのスルホニルジイミダゾールの溶液を測り入れ、混合物を反応が終了するまで20℃で攪拌する。この形で、粗生成物を次の工程C7のために直接使用する。
【0079】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 7.40-7.26 (m, 5H), 5.41 (dt, 1 H, 6.06 Hz, 3.28 Hz), 5.33 (dd, 1 H, 6.32 Hz, 2.78 Hz), 4.54 (d, 2H, 2.53 Hz), 3.81 (dd, 1 H, 9.85 Hz, 4.29 Hz), 3.72 (m, 1 H), 3.64 (dd, 1 H, 9.85 Hz, 4.80 Hz), 3.47 (dd, 1 H, 13.39 Hz, 5.81 Hz), 3.16 (dd, 1 H, 13.39 Hz, 3.28 Hz).
【0080】
13C-NMR (75 MHz, CDCl3): 137.0, 128.6, 128.2, 127.7 (Ar), 87.9, 86.1 , 73.7 (CH2), 71.2 (CH2), 51.6, 36.8 (CH2).
【0081】
1,4-アンヒドロ-5-O-ベンジル-2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-D-アラビニトール (C7):
20℃において、150 mlのTHF中の131.3 gのテトラブチルアンモニウムフルオリド三水和物の溶液を、化合物C6の製造で得た粗生成物の溶液に測り入れる。混合物を、反応が終了するまで30℃で攪拌する。反応混合物を、硫酸(33%濃度)を用いてpH1に調整し、反応が終了するまで50℃で攪拌する。20℃において、水酸化カリウム水溶液を用いてpHを7〜10に調整し、生じた沈殿を濾去する。層を分離させ、水層をジクロロメタンで抽出する。合わせた有機層を濃縮し、粗生成物を、溶媒を完全に除去した後、クロマトグラフィーにより精製する。これにより22.68 gのC7 (45%)を得る。
【0082】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 7.4-7.27 (m, 5H, H-7 to H-9), 5.04 (qd, 1 H, 51.7 Hz, 5.44 Hz, H-2), 4.55 (s, 2H, 2xH-6), 4.37 (td, 1 H, 11.7 Hz, 4.9 Hz, H-3), 3.68-3.55 (m, 2H, 2xH-5), 3.45-3.38 (m, 1 H, H-4), 3.2-2.99 (m, 2H, 2xH-1).
【0083】
13C-NMR (100 MHz, CDCl3): 137.65, 128.52, 127.91 , 127.77 (Ar), 97.27 (C-2), 79.10 (C-3), 73.46 (C-6), 72.69 (C-5), 48.58 (C-4), 31.72 (C-1).
19F-NMR (376 MHz, CDCl3): -183.14 (m, 2-F).
融点:83-85℃
【0084】
1,4-アンヒドロ-2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-D-アラビニトール(C8):
-65℃未満の温度において、350 mlのジクロロメタン中の50 g (206.35 mmol)のC7の溶液(-10℃に予め冷却)を、546.82 g (412.69 mmol)の三塩化ホウ素(ジクロロメタン中1 mol/l)に添加する。-65℃未満にて30分後、完全に転換しているかどうか反応を確認する。150 mlのメタノールと116 mlのピリジンの混合物を-65℃未満で反応混合物に添加し、混合物を15分後に20℃まで加熱する。溶媒を減圧蒸留により完全に除去する。ジクロロメタンを残渣に添加し、溶媒を完全に除去する。これにより、133 gのC8(423%)が粗生成物として得られ(残存量のピリジン及び塩酸ピリジニウムが含まれる)、これを次の工程C9においてこの形で使用する。
【0085】
1H-NMR (400 MHz, DMSO): 5.49 (d, 1 H, 4.77 Hz, 3-OH), 4.98 (qd, 1 H, 51.55 Hz, 3.76 Hz, H-2), 4.94 (t, 1 H, 5.2 Hz, 5-OH), 4.17 (ddd, 1 H, 15.18 Hz, 4.14 Hz, 3.76 Hz H-3), 3.61-3.53 (m, 1 H, H-5), 3.37-3.30 (m, 1 H, H-5'), 3.19-3.02 (m, 2H, H-4 and H-1), 2.93 (ddd, 1 H, 18.22 Hz, 12.1 Hz, 3.76 Hz, H-1 ').
【0086】
13C-NMR (75 MHz, CDCl3): 97.1 (d, 185 Hz, C-2), 77.5 (d, 24 Hz, C-3), 63.3 (d, 3 Hz, C-5), 50.9 (d, 4 Hz, C-4), 31.1 (d, 22 Hz, C-1).
【0087】
1,4-アンヒドロ-2-デオキシ-2-フルオロ-3,5-ジ-O-ベンゾイル-4-チオ-D-アラビニトール(C9):
133 g (206.35 mmol、工程C8において100%の収率と想定)のC8 (粗生成物)を400 mlのジクロロメタンに溶解し、97.92 g (1237.9 mmol)のピリジンを添加する。87.01 g (618.97 mmol) の塩化ベンゾイルを10℃で滴下添加し、混合物を、反応が終了するまで20℃で攪拌する。メタノールを添加し、混合物を1時間攪拌する。最後に、水を添加し、層を分離する。粗生成物の溶液を濃縮し、溶媒を完全に除去する。これにより、114.53 gのC9(154%)が粗生成物として得られ、これを次の工程C10においてこの形で使用する。
【0088】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 8.20-8.00 (m, 4H), 7.65-6.90 (m, 6H), 5.85 (dt, 1 H, 9.98 Hz, 2.64 Hz), 5.40 (ddd, 1 H, 48.79 Hz, 7.16 Hz, 3.01 Hz), 4.54 (s, 1 H), 4.51 (s, 1 H), 3.95-3.82 (m, 1 H), 3.45-3.35 (m, 1 H), 3.35-3.28 (m, 1 H).
【0089】
13C-NMR (75 MHz, CDCl3): 165.0 (C=0), 133.6, 133.1 , 129.8, 129.7, 128.5, 128.4, 96.5 (d, 184 Hz, C-2), 79.0 (d, 29 Hz, C-3), 65.2 (d, 4 Hz, C-5), 48.5 (C-4), 34.9 (d, 23 Hz, C-1 ).
【0090】
1,4-アンヒドロ-2-デオキシ-2-フルオロ-3,5-ジ-O-ベンゾイル-4-スルフィニル-D-アラビニトール (C10):
114.53 g (206.35 mmol、工程C9において100%の収率と想定) のC9 (粗生成物) を400 mlのアセトンに溶解し、60 mlの水を添加する。20℃において、69.77 g (113.49 mmol)のオキソン(OXONE)を少しずつ添加する。完全に転換したかについて反応を確認し、亜硫酸ナトリウムの希薄溶液を添加する。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液を用いて中和し、アセトンを減圧蒸留により完全に除去する。ジクロロメタンを懸濁物に添加し、固体を濾去し、ろ過ケーキをジクロロメタンで生成物を含まないように洗浄する。粗生成物の溶液をMTBEに再蒸留し、この溶媒中に単離する。これにより、56.4 g (C7からの3工程において72.6%) のC10が得られる。
【0091】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 8.05 (m, 4H), 7.60 (m, 2H), 7.45 (m, 4H), 5.83 (m, 1 H), 5.74 (m, 1 H), 4.89 (ddd, 1 H, 12.1 Hz, 5.1 Hz, 0.9 Hz), 4.75 (ddd, 1 H, 12.4 Hz, 7.6 Hz, 0.9 Hz), 3.65 (m, 1 H), 3.75 (m, 1 H), 3.45 (m, 1 H).
【0092】
13C-NMR (75 MHz, CDCl3): 165.7, 165.2 (C=0), 134.0, 133.5, 130.0, 129.7, 128.6, 128.5 (Ar), 95.4 (d, 185 Hz, C-2), 77.2 (d, 33 Hz, C-3), 71.6 (C-4), 61.1 (d, 2 Hz, C-5), 55.8 (d, 19 Hz, C-1).
【0093】
1-O-アセチル-2-デオキシ-2-フルオロ-3,5-ジ-O-ベンゾイル-4-チオ-β-D-アラビノフラノース (ΙΙβ):
80 mlの無水酢酸及び361 mg (2.66 mmol)の硫酸水素カリウムを10 g (26.57 mmol)のC10に添加し、混合物を、反応が終了するまで80℃で攪拌する。反応混合物を、最初はトルエンと一緒に繰り返して共蒸留させ、次にエタノールと一緒に共蒸留させる。最後に、生成物をエタノールから結晶化する。これにより、8.9 g (80%) の化合物IIβが得られた。
【0094】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 8.10-7.90 (m, 4H, Ar), 7.63-7.29 (m, 6H, Ar), 6.18 (d, 1 H, 4.4 Hz), 6.12-6.02 (m, 1 H), 5.45 (dd, 1 H, 9.04 Hz, 4.52 Hz), 5.28 (dd, 1 H, 8.85 Hz, 4.52 Hz), 4.68 (dd, 1 H, 11.49 Hz, 6.22 Hz), 4.49 (dd, 1 H, 11.49 Hz, 6.41 Hz), 3.74 (dd, 1 H, 13.56 Hz, 6.40 Hz), 2.12 (s, 3H).
【0095】
13C-NMR (75 MHz, CDCl3): 169.6 (COCH3), 165.8, 165.4 (COPh), 133.6, 133.1 (Ar) 129.8, 129.7, 128.5, 128.2 (Ar), 92.5 (d, 207 Hz, C-2), 75.7 (d, 23 Hz, C-3), 74.0 (d, 17 Hz, C-1), 66.1 (C-5), 42.4 (d, 7 Hz, C-4), 21.0 (CH3).
融点:130℃
産業の利用可能性
【0096】
本発明の方法は、式Iの化合物の工業的に有利かつ優れた製造を提供するものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物の製造方法であって、
【化1】

(式中、
は、−C(O)−C−Cアルキル又は−C(O)−アリールを示し、
は、C−Cアルキル、C−Cパーフルオロアルキル又はアリールを示す。)
以下の工程を含む上記の方法。
(1)式IVのリキソノラクトンを、0.5〜10モル当量の式A(AlH)又はA(BH)(式中、Aはアルカリ金属である)で示される水素化物ドナーの存在下において還元して、
【化2】

(式中、
は、C−Cアルキル又はアリールメチレンを示し;
及びRは独立に、水素、C−Cアルキル、C−Cパーフルオロアルキル又はアリールを示す)
式Vのジオールを得る工程:
【化3】

(2)式Vのジオールを、少なくとも2モル当量の第3級アミン又はピリジンの存在下において、少なくとも2モル当量のスルホニルクロリドR−SO−Cl又はスルホン酸無水物R−SO−O−SO−R(式中、RはC−Cアルキル、C−Cパーフルオロアルキル又はアリールを示す)と反応させて、式VIの化合物を得る工程:
【化4】

(3)式VIのビススルホネートを、極性非プロトン性溶媒中で50℃より高い温度で少なくとも1モル当量の硫化ナトリウム(NaS)と反応させて、式VIIのチオフラノースを得る工程:
【化5】

(4)式VIIのチオフラノースを、水と、エーテル、アルコール及び芳香族炭化水素の群から選択される有機溶媒との溶媒混合物中において、鉱酸、アルカンスルホン酸、アリールスルホン酸、パーフルオロスルホン酸及びパーフルオロアルカンカルボン酸の群から選択される0.01〜5モル当量の酸を用いて、式VIIIのジオールに転換する工程:
【化6】

(5)式VIIIのジオールを、少なくとも0.2モル当量の式AH、ACO又はA(OtBu)(式中、Aはアルカリ金属を示す)で示される塩基の存在下において、1〜2モル当量の式X−SO−X(式中、X及びXは独立にCl又はイミダゾイルを示す)で示されるジオール活性化試薬と反応させて、式IXの環状硫酸エステルを得る工程:
【化7】

(6)式IXの環状硫酸エステルを、0℃から30℃の間の温度において、1〜3モル当量の式N(R11F(式中、R11はC−Cアルキルを示す)のフッ化アンモニウムと最初に反応させ、このようにして得た反応混合物を、鉱酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、パーフルオロスルホン酸及びパーフルオロアルカンカルボン酸の群から選択される酸と反応させて式Xのエーテルを得る工程:
【化8】

(7)式Xのエーテルを、部分工程a)において、0℃〜−80℃の間の温度において、少なくとも1モル当量のハロゲン化ホウ素BY(式中、YはF、Cl又はBrを示す)の存在下において反応させ;部分工程b)において、部分工程a)において得た反応混合物を、C−Cアルカノール、アリールアルカノール及びフェノール類からなる群から選択されるアルコール成分と、脂肪族第3級アミン及びピリジン類からなる群から選択される塩基との混合物と反応させて、式XIのジオールを得る工程:
【化9】

(8)式XIのジオールを、脂肪族第3級アミン及びピリジン類の群から選択される少なくとも2モル当量の塩基の存在下において、少なくとも2モル当量の酸塩化物R−Cl又は酸無水物R−O−R(式中、Rは、−C(O)−C−Cアルキル又は−C(O)−アリールを示す)と反応させて、式XIIの化合物を得る工程:
【化10】

(9)式XIIのスルフィドを、水と式R−C(O)−R’(式中、RおよびR’は独立にC−Cアルキル、C−Cパーフルオロアルキル又はアリールを示す。)のケトンとの溶媒混合物中において、0℃から50℃の間の温度において、0.5〜1モル当量の式AHSO(式中、Aはアルカリ金属を示す)で示されるアルキル金属過硫酸塩によって酸化し、式XIIIのスルホキシドを得る工程:
【化11】

(10)式XIIIのスルホキシドを、30℃〜100℃の間の温度において、鉱酸、アルカンスルホン酸、アリールスルホン酸、パーフルオロスルホン酸及びパーフルオロアルカンカルボン酸から選択される0.01〜2モル当量のプロトン酸の存在下において、又は0.01〜2モル当量のルイス酸又はアリールメチレンの存在下において、少なくとも1モル当量の酸無水物R−C(O)−O−C(O)−R(式中、RはC−C−アルキル、C−C−パーフルオロアルキル又はアリールを示す)と反応させる工程。
【請求項2】
がベンゾイルを示し、Rがメチルを示す式Iの化合物を製造するための、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式IIβの化合物を製造するための請求項2に記載の方法。
【化12】

(式中、R、R及びRはメチルを示し、Rはベンジルを示す)
【請求項4】
工程(1)において、0.5〜1.5モル当量の水素化{すいそか}アルミニウムリチウム(LiAIH)を使用する、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項5】
工程(1)及び/又は工程(2)を0℃〜30℃の間の温度で行う、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項6】
工程(2)において、2〜5モル当量のメタンスルホニルクロリド及び2〜5モル当量のトリエチルアミンを使用する、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項7】
工程(3)の反応を、N−メチルピロリドン中において50℃〜100℃の間の温度で行う、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項8】
工程(4)の反応を、テトラヒドロフラン(THF)及び水の混合物中において0.01〜5モル当量のHSOを用いて20℃〜100℃の間の温度で行う、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項9】
工程(4)において、ジオールVIIIの単離を、ヘプタンと、酢酸イソプロピル又は酢酸エチルとの溶媒混合物からの結晶化によって行う、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項10】
工程(5)において、0.2〜3モル当量の水素化ナトリウム及び1〜2モル当量のスルホニルジイミダゾールを、−5℃から20℃の間の温度で使用する、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項11】
工程(6)において、1〜3モル当量のテトラブチルアンモニウムフルオリドを使用する、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項12】
工程(6)において、第一の部分工程において得た反応混合物を硫酸(HSO)と20℃〜70℃の間の温度において反応させる、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項13】
工程(7)の部分工程a)において、1〜4モル当量の三塩化ホウ素を使用する、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項14】
工程(7)の部分工程b)において、部分工程a)において得たメタノール及びピリジンの反応混合物を反応させる、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項15】
工程(7)の部分工程を、0℃〜−80℃の間の温度において行う、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項16】
工程(8)を、2〜5モル当量の塩化ベンゾイルを用いて2〜10モル当量のピリジンの存在下において行う、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項17】
工程(9)を、0.5〜1モル当量のオキソンを用いて水及びアセトンの溶媒混合物中において行う、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項18】
工程(9)において、スルホキシドXIIIをメチルtert−ブチルエーテルからの結晶化により単離する、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項19】
工程(10)を、少なくとも5モル当量の無水酢酸を用いて、0.01〜2モル当量の硫酸水素カリウムの存在下において行う、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項20】
工程(10)において、生成物Iをエタノールからの結晶化により単離する、前記請求項の何れかに記載の方法。
【請求項21】
式Iの化合物の製造方法であって、
【化13】

(式中、
は、−C(O)−C−Cアルキル又は−C(O)−アリールを示し、
は、C−Cアルキル、C−Cパーフルオロアルキル又はアリールを示す。)
式XIIIのスルホキシドを、
【化14】

(式中、Rはベンゾイルを示す)
30℃〜100℃の間の温度において、鉱酸、アルカンスルホン酸、アリールスルホン酸、パーフルオロスルホン酸及びパーフルオロアルカンカルボン酸の群から選択される0.01〜2モル当量のプロトン酸の存在下において、又は0.01〜2モル当量のルイス酸(式中、R13はC−C−アルキル又はアリールメチレンを示す)の存在下において、少なくとも1モル当量の酸無水物R−C(O)−O−C(O)−R(式中、RはC−Cアルキル、C−Cパーフルオロアルキル又はアリールを示す)と反応させることを含む、上記の方法。
【請求項22】
反応を、少なくとも5モル当量の無水酢酸を使用して0.01〜2モル当量の硫酸水素カリウムの存在下において行う、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
生成物IIβをエタノールからの結晶化によって単離する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
式Xの化合物の製造方法であって、
【化15】

(式中、Rは、C−Cアルキル、アリールメチレンを示す)
以下の工程を含む、上記の方法。
(a)式IXの環状硫酸エステルを、0℃から30℃の間の温度において、1〜3モル当量の式N(R11F(式中、R11はC−Cアルキルを示す)のフッ化アンモニウムと最初に反応させる工程;
【化16】

(b)このようにして得た反応混合物を、鉱酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、パーフルオロスルホン酸及びパーフルオロアルカンカルボン酸の群から選択される酸と反応させる工程。
【請求項25】
1〜3モル当量のテトラブチルアンモニウムフルオリドを使用する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第1部分工程で得られる反応混合物を、20℃〜70℃の間の温度で硫酸(HSO)と反応させる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
1−O−ベンジル−3,4−O−イソプロピリデン−L−アラビニトール;
1−O−ベンジル−3,4−O−イソプロピリデン−2,5−ジ−O−メタンスルホニル−L−アラビニトール;
1,4−アンヒドロ−5−O−ベンジル−2,3−O−イソプロピリデン−4−チオ−D−リビトール;
1,4−アンヒドロ−5−O−ベンジル−2,3−O−スルホニル−4−チオ−D−リビトール;及び
1,4−アンヒドロ−5−O−ベンジル−2−デオキシ−2−フルオロ−4−チオ−D−アラビニトールから選択される、前記請求項の何れかに記載の方法により製造される中間体。


【公表番号】特表2013−514260(P2013−514260A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527135(P2012−527135)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【国際出願番号】PCT/JP2010/072182
【国際公開番号】WO2011/074484
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512021542)株式会社リブラメディシーナ (1)
【Fターム(参考)】