説明

置換フェニル硫黄トリフルオリドおよびその他の同様なフッ素化剤

【課題】フッ素化剤として作用する新規な置換フェニル硫黄トリフルオリド、その製造方法及びその使用方法並びに当該置換フェニル硫黄トリフルオリドに用いる中間化合物を提供する。
【解決手段】フッ素化剤として作用する下式で表される新規な置換フェニル硫黄トリフルオリドを利用して、フッ素含有化合物を製造することができる。


(式中、R1aおよびR1bは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基を、R2a、R2bは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基を、Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化剤、さらに詳しくは、フッ素化剤として作用する新規な置換フェニル硫黄トリフルオリドに関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素含有化合物は医療、農業、電子材料等の産業で広く用いられてきた(Chemical & Engineering News、6月5日、15〜32頁(2006));Angew. Chem. Ind. Ed.、第39巻、4216〜4235頁(2000)参照)。これらの化合物は1つ以上のフッ素原子の存在に基づく特異的な生物学的活性または物理的性質を示す。それらの有用性において特有な欠点は、天然のフッ素含有化合物が希少であり、たいていのそのような化合物は有機合成により製造する必要があることである。
【0003】
フッ素化剤は、1つ以上の化学反応によりフッ素原子を標的化合物へ選択的に導入してフッ素含有化合物を生成する化合物である。特に有用なフッ素化剤は、標的化合物中の酸素または酸素含有基をフッ素で置き代える能力を有する。多くのフッ素化剤が見出されてきた;しかしながら、以下に詳しく論じるように、これらの薬剤の全ては安全性、反応性、貯蔵安定性、および/または廃棄性に基づく重大な欠点を有する。
【0004】
公知のフッ素化剤の例には次のものがある:加圧下でしばしば用いられる非常に毒性のガスである四フッ化硫黄(SF)[J. Am. Chem. Soc.、第82巻、543〜551頁(1960)]:非常に爆発性の、すなわち、熱安定性が低く、分解時の熱エネルギーが大量である不安定な液体薬剤である、N,N−ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(DAST)[J. Org. Chem. 第40巻、574−578頁(1975)およびChem. & Eng. News、第57巻、No.19、4頁(1979)];DASTより熱安定性が高いがDASTと似た出発分解温度を有する製品であるビス(メトキシエチル)アミノ硫黄トリフルオリド(Deoxo−Fluor(登録商標))[Chemical Communications、215〜216頁(1999)];非常に毒性のセレン化合物である四フッ化セレン[J. Am. Chem. Soc.、第96巻、925〜927頁(1974)];および安全性はより高いが反応性および収率がかなり減少する他の設計された各種フッ素化剤:フェニルフルオロホスファン剤[PhPF5−n(n=1〜3)、Chem. Pharm. Bull. 第16巻、1009頁(1968)]、α,α−ジフルオロアルキルアミノ試薬[ClCFHCFNEt、Organic Reactions、第21巻、158〜173(1974);CFCFHCFNEt、Bull. Chem. Soc. Jpn、第52巻、3377〜3380頁(1979);CFHCFNMe、J. Fluorine Chem.、第109巻、25〜31頁(2001)]、2,2−ジフルオロ−1,3−ジメチルイミダゾリジン[日本特許出願公開公報JP2000 38,370;Chemical Communications、1618〜1619頁(2002)]、および[(m−メチルフェニル)ジフルオロメチル]ジエチルアミン(Tetrahedron、第60巻、6923〜6930)。
【0005】
さらに、フェニル硫黄トリフルオリドも合成され、フッ素化剤として用いられてきたが、そのフッ素化収率は低く、その応用性は狭い[J. Am.Chem. Soc.、第84巻、3058〜3063頁(1962);Acta Chimica Sinica、第39巻、第1号、63〜68頁(1981);および表5の比較例1参照]。ペンタフルオロフェニル硫黄トリフルオリドも合成され、フッ素化剤として用いられてきたが、その出発材料が高価であり、分子中にある8個のうち2個だけが反応性フッ素原子であるので、経費がかかることが分かっている[J. Fluorine Chem.、第2巻、53〜62頁(1972/73)]。さらに最近では、p−ニトロフェニル硫黄トリフルオリドが試験され、フッ素化能力がほとんどまたは全くないことが示された[Acta Chimica Sinica、第39巻、第1号、63〜68頁(1981)]。
【0006】
これらの一般に例示されているフッ素化剤のそれぞれは、これら重要なフッ素含有化合物の製造に用いるためのより効果的で安全な試薬の提供に改善の余地を必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−38370号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chemical & Engineering News、6月5日、15〜32頁(2006)
【非特許文献2】Angew. Chem. Ind. Ed.、第39巻、4216〜4235頁(2000)
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc.、第82巻、543〜551頁(1960)
【非特許文献4】J. Org. Chem. 第40巻、574−578頁(1975)
【非特許文献5】Chem. & Eng. News、第57巻、No.19、4頁(1979)
【非特許文献6】Chemical Communications、215〜216頁(1999)
【非特許文献7】J. Am. Chem. Soc.、第96巻、925〜927頁(1974)
【非特許文献8】Chem. Pharm. Bull. 第16巻、1009頁(1968)
【非特許文献9】Organic Reactions、第21巻、158〜173(1974)
【非特許文献10】Bull. Chem. Soc. Jpn、第52巻、3377〜3380頁(1979)
【非特許文献11】J. Fluorine Chem.、第109巻、25〜31頁(2001)
【非特許文献12】Chemical Communications、1618〜1619頁(2002)
【非特許文献13】Tetrahedron、第60巻、6923〜6930
【非特許文献14】J. Am.Chem. Soc.、第84巻、3058〜3063頁(1962)
【非特許文献15】Acta Chimica Sinica、第39巻、第1号、63〜68頁(1981)
【非特許文献16】J. Fluorine Chem.、第2巻、53〜62頁(1972/73)
【非特許文献17】Acta Chimica Sinica、第39巻、第1号、63〜68頁(1981)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、この分野では、安全で、反応性であり、危険性がより少なく、原価効率がよいフッ素化剤、特に、酸素または酸素含有基をフッ素原子で置き代えることによってフッ素原子を化合物に選択的に導入するフッ素化剤が求められている。これらのフッ素化剤は高収率をもたらし、そして安全に取り扱いおよび貯蔵することができるのが理想的である。
【0010】
本発明は上記の1つ以上の問題を解消するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本発明は、フッ素原子の標的化合物への導入に用いるための新規なフッ素化剤を提供する。得られた標的化合物、すなわち、フッ素含有化合物は医療、農業、電子材料等の用途に途方もなく大きい可能性を有することが示されてきた。
【0012】
概して、本発明のフッ素化剤は新規な置換フェニル硫黄トリフルオリド化合物である。置換フェニル硫黄トリフルオリド化合物は一般的なフッ素化剤よりもかなり機能的かつ安全であるという利点を有することが示される。
【0013】
本発明はまた、新規な置換フェニル硫黄トリフルオリドの合成に用いるための新しい中間化合物も提供する。
最後に、本発明は、本発明の新規化合物の合成スキーム、およびこれらの薬剤の各種フッ素含有化合物製造における使用を説明するデータを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、フッ素原子の標的化合物への導入に用いるための新規なフッ素化剤を提供する。本発明において、「標的化合物」という用語は、フッ素化されると医療、農業、生物学、電子材料等の分野において有用なあらゆる基質、すなわち、フッ素含有化合物を含む。好ましい場合では、本発明の標的化合物は、フッ素原子による選択的置き代えのための、1つ以上の酸素原子および/または1つ以上の酸素含有基、および/または1つ以上の硫黄原子および/または1つ以上の硫黄含有基を含む。標的化合物の例は、アルコール、アルデヒド、ケトン,カルボン酸、酸ハライド、エステル、酸無水物、アミド、イミド、エポキシド、ラクトン、ラクタム、スルホン酸、スルフィン酸、スルフェン酸、チオール、スルフィド、スルホキシド、チオケトン、チオエステル、ジチオエステル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、チオカーボネート、ジチオカーボネート、トリチオカーボネート、チオケタール、ジチオケタール、チオアセタール、ジチオアセタール、チオアミド、チオカルバメート、ジチオカルバメート、オルトチオエステル、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド、およびホスホン酸である。
【0015】
本発明の態様は新規な置換フェニル硫黄トリフルオリドを含む。新規な置換フェニル硫黄トリフルオリドは、フッ素原子の標的化合物への選択的導入に有効な薬剤であり、それによってフッ素含有化合物が生成されることを本発明で示す。
【0016】
本発明のフッ素化剤は、一般的な有用な薬剤、DASTおよびDeoxy−Fluor(登録商標)と比較して、高い熱安定性を示し、高い分解温度および低い発熱(−ΔH)値を有する(以下の実施例参照)。さらに、本発明のフッ素化剤は多くの様々な標的化合物と非常に反応性であり、フッ素含有生成化合物の収率は一般に高い。公知の化合物、フェニル硫黄トリフルオリド(PhSF)およびp−メチルフェニル硫黄トリフルオリド(p−CHSF)(J. Am. Chem. Soc.、第84巻、3058〜3063頁(1962))は高い分解温度を有するが、それらの発熱は高く、そしてそれらのフッ素化反応性は低い(以下の実施例参照)。本発明の化合物の高い安定性および反応性は、一般的なフッ素化剤、すなわち、DAST、Deoxo−Fluor(登録商標)、PhSF等のそれらと比較すると予想外のことである。
【0017】
本発明の態様はまた、フッ素化剤の製造法およびフッ素化剤をフッ素含有化合物の製造に用いる方法を提供する。
本発明は、式(I)の化合物を提供し:
【0018】
【化1】

【0019】
式中、
1aおよびR1bは独立して、水素原子;1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基;または1〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;
2a、R2bおよびRは独立して、水素原子;ハロゲン原子;1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基;または1〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;
ただし、Rが水素原子であるとき、R1a、R1b、R2aおよびR2bの少なくとも2つはそれぞれ独立して、ハロゲン原子;1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であるか;あるいはR1a、R1b、R2aおよびR2bの少なくとも1つは2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基である。
【0020】
さらに、Rが1〜8個の炭素原子を有する第1アルキルであるとき、R1a、R1b、R2aおよびR2bの少なくとも1つは、ハロゲン原子;1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
2aおよびR2bおよびRの少なくとも2つが第3アルキル基であるとき、第3アルキル基は隣接していない。
【0021】
式(I)の好ましい態様では、アルキル基は1〜4個の炭素原子を有し、エーテル結合を有するアルキル基は2〜5個の炭素原子を有する。Rのより好ましいアルキル基は第3アルキル基であり、Rの最も好ましいアルキル基はt−ブチル基である。
【0022】
本発明のいくつかの態様は、1〜8個の炭素原子を有するR1aおよびR1bの第1または第2アルキル基が、CH、CHCH、CH(CHCH(n=1〜6)、CHCH(CH、およびCHC(CHのような第1アルキル基、そしてCH(CH、CH(CH)CHCH、およびCH(CH)CH(CHCH(n=1〜4)のような第2アルキル基を含む式(I)の化合物である。R1aおよびR1bのより好ましい第1または第2アルキル基は、CH、CHCH、CH(CHCH(n=1または2)、CHCH(CH)CH、およびCH(CH、を含み、最も好ましい第1または第2アルキル基はCHおよびCH(CHである。
【0023】
本発明の他の態様は、R2aおよびR2bの1〜8個の炭素原子を有する第1、第2または第3アルキル基が、CH、CHCH、CH(CHCH(n=1〜6)、CHCH(CH、およびCHC(CHのような第1アルキル基、CH(CH、CH(CH)CHCH、およびCH(CH)CH(CHCH(n=1〜4)のような第2アルキル基、そしてC(CH、C(CHCHCH、およびC(CHCH(CHCH(n=1〜3)のような第3アルキル基を含む。R2aおよびR2bの1〜8個の炭素原子を有するより好ましい第1、第2または第3アルキル基は、CH、CHCH、CH(CHCH(n=1、2)、CHCH(CH、CH(CH、CH(CH)CHCH、およびC(CHを含み、最も好ましい第1、第2または第3アルキル基は、CH、CH(CH、およびC(CHである。
【0024】
本発明の他の態様は、1〜8個の炭素原子を有するRの第1、第2または第3アルキル基が、CH、CHCH、CH(CHCH(n=1〜6)、CHCH(CH、およびCHC(CHのような第1アルキル基、CH(CH、CH(CH)CHCH、およびCH(CH)CH(CHCH(n=1〜4)のような第2アルキル基、そしてC(CH、C(CHCHCH、およびC(CHCH(CHCH(n=1〜3)のような第3アルキル基を含むフッ素化剤である。1〜8個の炭素原子を有するRのより好ましい第1、第2または第3アルキル基は、CH、CHCH、CH(CHCH(n=1、2)、CHCH(CH、CH(CH、CH(CH)CHCH、およびC(CHを含み、Rの最も好ましい第1、第2または第3アルキル基は、CH、CH(CH、およびC(CHである。
【0025】
本発明のいくつかの態様は、2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有するR1a、R1b、R2a、R2bおよびRの第1、第2または第3アルキル基が、CHOCH、CHOCHCH、CHOCH(CHCH(n=1〜5)、CHOCH(CH、CHOCH(CH)CHCH、CHOCHCH(CH、CHOC(CH、CHCHOCH、CHCHOCHCHOCH、CHO(CHCHO)CHCH(n=1、2)、CHO(CHCHO)CH(n=1〜3)、CHO(CHCHCHO)CH(n=1、2)、CHO[CH(CH)CHO]CH(n=1、2)、およびCHO[CHCH(CH)O]CH(n=1、2)のような第1アルキル基;CH(CH)OCH、CH(CH)OCHCH、およびCH(CH)CHOCHのような第2アルキル基;そしてC(CHOCH、C(CHOCHCH、およびC(CHCHOCHのような第3アルキル基を含む式(I)の化合物である。少なくとも1つのエーテル結合を有するR1a、R1b、R2a、R2bおよびRのより好ましい第1、第2または第3アルキル基は、CHOCH、CHOCHCH、CHOCHCHCH、CHOCH(CH、CHOCH(CHCH、CHOCH(CH)CHCH、CHOCHCH(CH、CHOC(CH、CHOCHC(CH、CHOCHCHOCH、CHOCHCHOCHCH、CHOCHCHCHOCH、CHCHOCH、CHCHOCHCH、CHCHOCH(CH、CHCHOCHCHOCH、CH(CH)OCH、CH(CH)OCHCH、C(CHOCH、およびC(CHOCHCHを含み;少なくとも1つのエーテル結合を有する最も好ましいアルキル基は、CHOCH、CHOCHCH、CHOCH(CH、およびCHOCHCH(CHである。
【0026】
「ハロゲン原子」または「ハロ」という用語を本明細書で用いるとき、それぞれフッ素、塩素、臭素およびヨウ素並びにフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含む。
2a、R2bおよびRの好ましいハロゲン原子の例は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子であり、これらのハロゲンの中で、フッ素、塩素または臭素がより好ましく、フッ素および塩素がさらに好ましく、塩素が最も好ましい。
【0027】
「アルキル」という用語を本明細書で用いるとき、それは全ての直鎖および分枝鎖異性体を含む。アルキル基の代表的な例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチルである。アルキルは、CHClおよびCHFのような塩素原子および/またはフッ素原子で置換されたアルキルを含む。
【0028】
「エーテル結合」という用語を本明細書で用いるとき、それは炭素原子−酸素原子−炭素原子結合(C−O−C)である。
【0029】
【表1−1】

【0030】
【表1−2】

【0031】
【表1−3】

【0032】
【表1−4】

【0033】
【表1−5】

【0034】
式(I)の態様は式(Ia)で表される化合物でありうる:
【0035】
【化2】

【0036】
(式中、
1aおよびR1bは独立して、水素原子;1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
2a´およびR2b´は独立して、水素原子またはハロゲン原子であり;そして
は、水素原子;ハロゲン原子;1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;
ただし、Rが水素原子であるとき、R1aおよびR1bは独立して、1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基であるか;あるいはR1aおよびR1bの少なくとも1つは2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
が1〜8個の炭素原子を有する第1アルキルであるとき、R1aおよびR1bの少なくとも1つは、1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基である)。
【0037】
1a、R1bおよびRのアルキル基の例は上記と同じである。Rの好ましいハロゲン原子の例は前に記載した。R2a´およびR2b´の好ましいハロゲン原子の例はRのハロゲン原子と同じである。
【0038】
好ましい態様では、式(Ia)のアルキル基は1〜4個の炭素原子を有し;少なくとも1つのエーテル結合を有するアルキル基は2〜5個の炭素原子を有する。Rの好ましいアルキル基は第3アルキル基であり、Rの最も好ましいアルキル基はt−ブチル基である。
【0039】
式(Ia)に含まれるR1a、R1b、R2a´、R2b´およびRの組み合わせの例を表1a
に示す。
【0040】
【数1】

【0041】
【数2】

【0042】
【数3】

【0043】
式(Ia)の好ましい態様は式(II)を有する化合物である:
【0044】
【化3】

【0045】
(式中、
1a´よびR1b´は独立して、水素原子または1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基であり;
3´は、水素原子、ハロゲン原子、または1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;
ただし、R3´が水素原子であるとき、R1a´およびR1b´は独立して、1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基であり、そして
3´が1〜8個の炭素原子を有する第1アルキルであるとき、R1a´およびR1b´の少なくとも1つは、1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基である)。
【0046】
1〜8個の炭素原子を有するR1a´およびR1b´の第1および第2アルキル基の例は、上記の1〜8個の炭素原子を有するR1aおよびR1bの第1および第2アルキル基の例と同じである。1〜8個の炭素原子を有するR3´の第1、第2もしくは第3アルキル基の例は、上記の1〜8個の炭素原子を有するRの第1、第2若しくは第3アルキル基の例と同じである。R3´のハロゲン原子の例は、上記Rのハロゲン原子の例と同じである。好ましい態様では、式(II)のアルキル基は1〜4個の炭素原子を有する。R3´のより好ましいアルキル基は第3アルキル基であり、R3´の最も好ましいアルキル基はt−ブチル基である。
【0047】
式(II)のR1a´、R1b´およびR3´の組み合わせの例を表2に示す。
【0048】
【表2−1】

【0049】
【表2−2】

【0050】
式(Ia)の別の好ましい態様は式(Ib)を有する化合物である:
【0051】
【化4】

【0052】
(式中、
3´は、水素原子、ハロゲン原子、または1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;
は、第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
およびRは独立してアルキレン基であり;R、RおよびRの炭素原子の合計は8以下であり、そしてmは0または1である)。
【0053】
好ましい態様では、式(Ib)のアルキル基は4個以下の炭素原子を有し;式(Ib)のアルキレン基は4個以下の炭素原子を有し;そしてmは0である。好ましいR3´は水素原子または第3アルキル基であり、より好ましいR3´は第3アルキル基であり、最も好ましいR3´はt−ブチル基である。
【0054】
1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基を有するR3´のアルキル基の例は上記と同じである。R3´のハロゲン原子の例は上記と同じである。
の第1、第2もしくは第3アルキル基は、CH、CHCH、CH(CHCH(n=1〜5)、CHCH(CH、およびCHC(CHのような第1アルキル基、CH(CH、CH(CH)CHCH、およびCH(CH)CH(CHCH(n=1〜3)のような第2アルキル基、並びにC(CH、C(CHCHCH、およびC(CHCH(CHCH(n=1、2)のような第3アルキル基を含む。式(Ib)を有する化合物の安定性の観点から、Rは第1または第2アルキル基であるのが好ましい。Rの好ましい第1アルキル基は、CH、CHCH、CH(CHCH(n=1、2)、CHCH(CH、およびCHC(CHを含み、Rの好ましい第2アルキル基は、CH(CHおよびCH(CH)CHCHを含む。Rの1つの好ましい第1アルキル基はCHであり、Rの最も好ましい第2アルキル基はCH(CHである。
【0055】
およびRのアルキレン基はCH、CHCH、CH(CHCH(n=1、2)、CH(CH)、CH(CHCH)、CHCH(CH)、CH(CH)CH、C(CH、CHC(CH、C(CHCH、およびCH[CH(CH]を含む。Rの好ましいアルキレン基はCH、CHCH、およびCHCHCHであり、Rの最も好ましいアルキレン基はCHである。Rの好ましいアルキレン基はCHCH、CHCH(CH)、CH(CH)CH、およびCHCHCHであり、Rの最も好ましいアルキレン基はCHCHである。
【0056】
式(Ib)のR3´、R、R、Rおよびmの組み合わせの例を表2aに示す。
【0057】
【数4】

【0058】
【数5】

【0059】
本発明のフッ素化剤は実質的に純粋な形、例えば、純度が少なくとも50%、より一般的には少なくとも60%、有利には少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%または90%の純度で一般に提供される。%は全て重量/重量に基づいて計算される。
【0060】
本発明のフッ素化剤はまた、本明細書に記載の2つ以上のフッ素化剤の組み合わせでもよい(表5の実施例を参照)。
本発明の特定の化合物が1つ以上のキラル中心を含み、そのため化合物がジアステレオマーおよび鏡像異性体を含む立体異性体として存在しうることは、本技術分野における当業者には理解されるであろう。全てのそのような立体異性体、およびラセミ化合物を含むそれらの混合物を含むそのような化合物は全て本発明の範囲に入る。
【0061】
本発明のフッ素化剤は以下の実施例に記載のような方法により製造しうる。特に、実施例2、3、3a−c、4−15、および15a−g参照。さらに、文献で報告されている方法を変形して、表1、1a、2および2aに記載の各種薬剤を製造することができる[J. Am. Chem. Soc.、第84巻、3058〜3063頁(1962);Synthetic Communications、第33巻、14号、2505〜2509(2003)参照]。
【0062】
一般に、本発明の置換フェニル硫黄トリフルオリドを合成するための出発材料は、相当する置換チオフェノールの酸化によって製造される、相当する置換ベンゼンスルホニルハライドから製造される(例えば、実施例1、1a、1cおよび1dに示されるような方法参照)、あるいは相当する置換フェニルハライドから製造される(例えば、実施例1b、1e、1f、1g、1hおよび1j示されるような方法参照)いずれかの商業的に入手しうる相当する置換ビフェニルジスルフィドである。
【0063】
本発明は、本発明の新規な置換フェニル硫黄トリフルオリドの合成に有用な中間体であるビス(2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドおよびビス(2,6−ジメチル−3,5−ジクロロ−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドを提供する。
【0064】
本発明はまた式(Ic)の化合物を提供する:
【0065】
【化5】

【0066】
(式中、
は1〜4個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
は、水素原子または1〜4個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基である)。
【0067】
式(Ic)の化合物は本発明の新規な置換フェニル硫黄トリフルオリドの合成に有用な中間体である。
本発明のいくつかの態様は、1〜4個の炭素原子を有するRの第1、第2もしくは第3アルキル基が、CH、CHCH、CH(CHCH(n=1、2)、およびCHCH(CHのような第1アルキル基、CH(CHおよびCH(CH)CHCHのような第2アルキル基、およびC(CHのような第3アルキル基を含む、式(Ic)の化合物である。Rのさらに好ましいアルキル基は、CH、CHCH、CH(CH、CH(CH)CHCH、CHCH(CH、およびC(CHを含み、Rの最も好ましいアルキル基は、CH、CHCH、CH(CH、CHCH(CH、およびC(CH)を含む。
【0068】
本発明の他の態様は、Rの1〜4個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基が、CH、CHCH、CH(CHCH(n=1、2)、CH(CH、CH(CH)CHCH、CHCH(CH、およびC(CHを含む式(Ic)の化合物である。Rの1〜4個の炭素原子を有するさらに好ましいアルキル基は、CH、CHCH、CH(CH、およびC(CHを含み、Rの非常に好ましいアルキル基はC(CHを含む。
【0069】
特定のメカニズムに結び付けるのではないが、本発明の新規な置換フェニル硫黄トリフルオリドの予想外の機能活性は、少なくとも一部は、それらの比較的高い安定性による。これらの置換フェニル硫黄トリフルオリドの高い安定性は、少なくとも一部は、より一般的なフッ素化剤と比べて分解温度が高く、発熱(−ΔH)が低いことによる(実施例16、16a、b、17−25、および25a、b参照)。これらの値は他の一般的なフッ素化剤の値と比較することができ(表4参照)、分解温度が約175〜320℃、発熱値が350〜700J/gであることが一般的である本発明の化合物と比較して、DASTおよびDeoxo−Fluor(登録商標)の分解温度は約140℃、発熱値は1100〜1700J/gである(表4参照)。
【0070】
本発明の新規な置換フェニル硫黄トリフルオリドはまた、一般的なフッ素化剤、例えば、DASTおよびDeoxo−Fluor(登録商標)(これらは水と接触したとき激しく反応するので危険であることが知られている(表6参照))と比べて、水中での安定性が高い。フェニル硫黄トリフルオリド(PhSF)およびp−メチルフェニル硫黄トリフルオリド(p−CHSF)はDASTおよびDeoxo−Fluorに類似していることに注目すべきである。予想外かつ驚いたことには、本発明の置換フェニル硫黄トリフルオリド、例えば、2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド、2,6−ジメチル−3,5−ジクロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド、2,6−ビス(メトキシメチル)フェニル硫黄トリフルオリド、2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド、2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド、2,6−ビス(イソプロポキシシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド、2,6−ビス(イソブトキシシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド、および2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドと2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドとの混合物は、水と接触したときほとんどまたは全く反応しない。t−ブチル基および少なくとも1つのエーテル結合を有するアルキル基のようなアルキル基は、水および湿分に対して予想外かつ驚くほど高い安定性をもたらす。従って、本発明のフェニル硫黄トリフルオリドは、多くの一般的な薬剤と比べて、安定性、貯蔵安定性、および安全性が高く、取り扱いおよび廃棄に安全である。
【実施例】
【0071】
実施例
以下の実施例は、本発明を説明する目的で提供するにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。以下の実施例を検討するときの参考のために構造名および式を表3に示す。
【0072】
【表3−1】

【0073】
【表3−2】

【0074】
【表3−3】

【0075】
【表3−4】

【0076】
【表3−5】

【0077】
実施例1: ビス(2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドの製造
反応スキームは次のとおりである
【0078】
【化6】

【0079】
2リットル3口フラスコを用意した。乾燥管を備えた冷却器(コンデンサー)、温度計、および滴下漏斗をフラスコにそれぞれ取り付けた。亜鉛末(<10ミクロン、43.6g、0.667モル)および無水テトラヒドロフラン(400mL)をフラスコへ加えた。混合物を攪拌し、氷−水浴で冷却し、58.6mL(0.534ミリモル)の四塩化チタンを滴加した(〜45分)。四塩化チタンを全て加える間、混合物の温度は25℃より下に維持した。添加が完了したら、2,6−ジメチル−4−t−ブチルベンゼンスルホニルクロリド(69.48g、0.267モル)の無水テトラヒドロフラン200mL中の溶液を滴加した(〜60分)。この物質を全て加える間、混合物の温度は20℃より下に維持した。2,6−ジメチル−4−t−ブチルベンゼンスルホニルクロリド添加の最後に、氷−水浴を除き、混合物をさらに30分間攪拌した。次に、混合物を60℃の油浴で4時間加熱した。次に、混合物を室温に冷却し、800mLの1N塩酸および300mLの氷水を加えた。得られた淡黄色沈殿物を濾過により集め、水で洗浄した(300mL×3)。次に、沈殿物を真空乾燥し、ヘキサンから再結晶して、33.1gの ビス(2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドを得た(式III、表3参照)。反応収率は70%であり、この物質は次のスペクトルデータを有していた:H NMR(CDCl)δ7.04(s,4H,芳香族プロトン(Ar−H)),2.23(s,12H,CH),1.30(s,18H,C(CH)。
【0080】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の製造用中間体を合成するのに本発明が有用であることを示している。
【0081】
実施例1a: ビス(2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドの別の製造
【0082】
【化7】

【0083】
5リットル3口ジャケット付き丸底フラスコに、機械攪拌器、内部温度計、およびプラスチック管を経て酸トラップへ通じるガス出口を有する還流冷却器を取り付けた。フラスコに885.8g(3.40モル)の2,6−ジメチル−4−t−ブチルベンゼンスルホニルクロリド、388g(4.12モル)のフェノール、および1000mLの氷酢酸を入れた。全ての反応体が溶解するまで攪拌しながら反応混合物を35〜40℃に加熱した。溶液に、1600mLの33重量%臭化水素/酢酸溶液を一度に、しかしゆっくり、注意深く加えた。溶液はすぐに薄黒くなり、酸性ガスのかなりの初期放出が始まったように見えた。ジャケットを35℃に保った状態で、強いが安定した発熱が内部温度を最高47℃に20分にわたって上昇させた。温度がおさまったとき、加熱してジャケットを60℃に上げ、合計約6時間保った。次に、簡単な真空蒸留を行ってできるだけ多くの酸溶媒を除去した。合計2350mL除去すると、黒みがかった濃いスラリーがフラスコに残った。水(1000〜1500mL)、次いで水酸化ナトリウムを加えて、溶液をpHが約10のアルカリ性にし、酢酸および他の生成物、臭素化フェノール、例えばブロモフェノールおよび2,4−ジブロモフェノールを除いた。次に、黒みがかった二相スラリーを2:1のエーテル/ペンタンで抽出した。有機層を分離し、回転蒸発器で濃縮すると、黒みがかったスラッシが得られ、これを冷却すると固化した。固体をイソプロパノール(650mL)と水(35mL)の混合物から再結晶して、512.1g(収率78%)のビス(2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィド(式III、表3)を得た。TLCおよびNMRにより純粋であることが示された。H NMR(CDCl)δ7.02(s,4H,Ar−H),2.21(s,12H,CH),1.29(s,18H,C(CH)。
【0084】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の製造用中間体を合成するのに本発明が有用であることを示している。
【0085】
実施例1b: ビス(2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドの製造
【0086】
【化8】

【0087】
水コンデンサーを備えた3口乾燥フラスコ中で、33g(0.12モル)の2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニルブロミドおよび2.8g(0.12モル)のマグネシウムを無水THF(200mL)中で混合した。触媒量のヨウ素を加え、混合物を80℃に加熱した。混合物を2時間還流し、氷浴で冷却した。硫黄粉末3.8g(0.12モル)を滴加した。混合物を80℃に2時間加熱し、氷浴で冷却した。ヘキサシアノ鉄酸カリウム239.48g(0.12モル)の水(300mL)中の溶液を加えた。十分に混合した後、生成物をエーテル(200mL)で抽出した。エーテル抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。減圧下で溶媒を除去して粘性固体を得た。これをエタノールから結晶化して、13.6g(50%)のビス(2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィド(式IIIa、表3)を得た:融点128〜129℃;H NMR(CDCl)δ1.49(s,18H,C(CH),2.245(s,6H,CH),2.252(s,6H,CH),7.14(s,2H,Ar−H)。
【0088】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の製造用中間体を合成するのに本発明が有用であることを示している。
【0089】
実施例1c: ビス(2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドの製造
【0090】
【化9】

【0091】
フラスコに、15.6g(53ミリモル)の2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルベンゼンスルホニルクロリド、6.0g(64ミリモル)のフェノールおよび20mLの氷酢酸を入れた。フラスコを35℃の浴で加熱した。約30mL(165ミリモルのHBr)の33重量%臭化水素/酢酸溶液をフラスコへ加えた。反応混合物を60℃でゆっくり加熱した。強酸性ガスが反応混合物から発生した。反応混合物を60℃で4.5時間攪拌し、室温に冷却した。反応混合物へ、250mLの水を加え、反応混合物を濾過して沈殿物を得た。沈殿物は水で洗浄した。得られた沈殿物を100mLのイソプロパノールへ加え、混合物を攪拌し、沈殿物を濾過によって集めて、10.3g(86%)のビス(2,6−ジメチル−3,5−ジクロロ−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィド(式IIIa、表3)を得た。スペクトルデータは実施例1bのデータとよく一致した。
【0092】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の製造用中間体を合成するのに本発明が有用であることを示している。
【0093】
実施例1d: ビス(2,6−ジメチル−3,5−ジクロロ−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドの製造
【0094】
【化10】

【0095】
実施例1cに記載の合成手順と似た手順を用いて、ビス(2,6−ジメチル−3,5−ジクロロ−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドを製造した。しかしながら、実施例1cとは異なり、2,6−ジメチル−3,5−ジクロロ−4−t−ブチルベンゼンスルホニルクロリドを2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルベンゼンスルホニルクロリドの代わりに用いた。
【0096】
上記の合成手順で2,6−ジメチル−3,5−ジクロロ−4−t−ブチルベンゼンスルホニルクロリド(式IIIb、表3参照)を生成した。収率は73%であった。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:融点147.5〜148.5℃(CHClから再結晶);H NMR(CDCl)δ1.72(s,18H,C(CH),2.31(s,6H,CH)。元素分析:C2430として計算された理論値:C,54.97%;H,5.77%。実験値:C,55.02%;H,5.81%。
【0097】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の製造用中間体を合成するのに本発明が有用であることを示している。
【0098】
実施例1e: ビス[2,6−ビス(メトキシメチル)フェニル]ジスルフィドの製造
【0099】
【化11】

【0100】
水コンデンサーを備えた3口乾燥フラスコ中で、15g(0.061モル)の1−ブロモ−2,6−ビス(メトキシメチル)ベンゼンおよび1.7g(0.07モル)のマグネシウムを無水THF(200mL)中で混合した。触媒量のヨウ素を加え、混合物を加熱還流した。2時間還流した後、混合物を氷浴で冷却し、硫黄をつまんで加えた。混合物をさらに2時間還流し、氷浴で冷却した。ヘキサシアノ鉄酸カリウム2.0g(0.07モル)の水(200mL)中の溶液を加えた。十分に混合した後、生成物をエーテル(200mL)で抽出した。エーテル抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した。減圧下で溶媒を除去して粘性固体を得た。これをエタノールから結晶化して、8.3g(65%)のビス[2,6−ビス(メトキシメチル)フェニル]ジスルフィド(式IIId、表3)を得た:融点89〜90℃;H NMR(CDCl)δ3.27(s,6H,OCH),4.36(br.s,4H,CH),7.39(s,3H,Ar−H)。元素分析:C2026として計算された理論値:C,60.88%;H,6.64%。実験値:C,60.56%;H,6.64%。
【0101】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の製造用中間体を合成するのに本発明が有用であることを示している。
【0102】
実施例1f:ビス[2,6−ジ(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィドの製造
【0103】
【化12】

【0104】
実施例1cに記載の合成手順と似た手順を用いて、ビス[2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィドを製造した。しかしながら、実施例1eとは異なり、1−ブロモ−2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルベンゼンを1−ブロモ−2,6−ビス(メトキシメチル)ベンゼンの代わりに用いた。
【0105】
上記の合成手順でビス[2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド(式IIId、表3参照)を生成した。収率は65%であった。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:融点94〜95℃(エタノールから再結晶);H−NMR(CDCl)δ1.32(s,9H,C(CH),3.25(s,6H,OCH),4.37(br.s,4H,CH),7.41(s,2H,Ar−H)。13C−NMR(CDCl)δ31.3,35.1,58.4,72.5,124.0,128.6,142.4,153.7。
【0106】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の製造用中間体を合成するのに本発明が有用であることを示している。
【0107】
実施例1g:ビス[2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィドの製造
【0108】
【化13】

【0109】
実施例1eに記載の合成手順と似た手順を用いて、ビス[2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィドを製造した。しかしながら、実施例1eとは異なり、1−ブロモ−2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルベンゼンを1−ブロモ−2,6−ビス(メトキシメチル)ベンゼンの代わりに用いた。
【0110】
上記の合成手順でビス[2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド(式IIIe、表3参照)を生成した。収率は66%であった。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:融点62〜63℃(メタノールから再結晶);H−NMR(CDCl)δ1.18(t,12H,CHCH),1.31(s,9H,C(CH),3.38(q,8H,OCH),4.40((br.s,8H,CH),7.42(s,2H,Ar−H)。13C−NMR(CDCl)δ15.34,31.31,35.04,66.05,70.52,124.03,128.93,142.78,153.57。元素分析:C3250として計算された理論値:C,68.28%;H,8.95%。実験値:C,68.30%;H,8.83%。
【0111】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の製造用中間体を合成するのに本発明が有用であることを示している。
【0112】
実施例1h:ビス[2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィドの製造
【0113】
【化14】

【0114】
実施例1eに記載の合成手順と似た手順を用いて、ビス[2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィドを製造した。しかしながら、実施例1eとは異なり、1−ブロモ−2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルベンゼンを1−ブロモ−2,6−ビス(メトキシメチル)ベンゼンの代わりに用い、そして生成物(IIIf)は酢酸エチルおよびヘキサンの3:97混合物を溶離剤として用いるカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0115】
上記の合成手順でビス[2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド(式IIIf、表3参照)を生成した。収率は50%であった。この物質のスペクトルデータは次のとおりである:H NMR(CDCl)δ1.12(d,J=6Hz,24H,CH),1.31(s,18H,C(CH),3.48(septet,J=6.0Hz,4H,CH),4.39((br.s,8H,CH),7.45(s,4H);13C NMR(CDCl)δ22.28,31,30,35.05,68.22,71.57,124.30,129.16,143.14,153.38。
【0116】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の製造用中間体を合成するのに本発明が有用であることを示している。
【0117】
実施例1i:ビス[2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィドの製造
【0118】
【化15】

【0119】
実施例1eに記載の合成手順と似た手順を用いて、ビス[2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィドを製造した。しかしながら、実施例1eとは異なり、4−t−ブチル−2,6−ビス(イソブトキシメチル)−1−ブロモベンゼンを1−ブロモ−2,6−ビス(メトキシメチル)ベンゼンの代わりに用いた。
【0120】
上記の合成手順でビス[2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド(式IIIg、表3参照)を生成した。収率は60%であった。生成物は酢酸エチルおよびヘキサンの3:97(v/v)混合物を溶離剤として用いる薄層クロマトグラフィーによって精製した。この物質のスペクトルデータは次のとおりである:H NMR(CDCl)δ0.91(d,24H,J=6Hz,CH),1.32(s,18H,C(CH),1.90(m,4H,C(CH),4.40(br.s,8H,CH),7.45(s,4H,Ar−H);13C NMR(CDCl)δ19.60,28.62,31.32,35.06,76.69,77.64,123.78,128.70,142.86,143.50。
【0121】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の製造用中間体を合成するのに本発明が有用であることを示している。
【0122】
実施例1j:ビス[2,6−ビス(t−ブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィドの製造
【0123】
【化16】

【0124】
実施例1eに記載の合成手順と似た手順を用いて、ビス[2,6−ビス(t−ブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィドを製造した。しかしながら、実施例1eとは異なり、1−ブロモ−2,6−ビス(t−ブトキシメチル)−4−t−ブチルベンゼンを1−ブロモ−2,6−ビス(メトキシメチル)ベンゼンの代わりに用いた。
【0125】
上記の合成手順でビス[2,6−ビス(t−ブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド(式IIIh、表3参照)を生成した。収率は80%であった。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:融点120〜121℃(メタノールから再結晶);H NMR(CDCl)δ1.15(s,36H),1.31(s,18H),4.38(br.s,8H),7.47(s,4H);13C NMR(CDCl)δ27.82,31.34,35.07,62.28,73.53,124.10,128.32,143.84。元素分析:C4066として計算された理論値:C,71.17%;H,9.85%。実験値:C,71.25%;H,9.84%。
【0126】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の製造用中間体を合成するのに本発明が有用であることを示している。
【0127】
実施例2: 2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
次の反応スキームはこの実施例を説明するものである:
【0128】
【化17】

【0129】
磁気攪拌器、温度計および乾燥管へ接続された固体添加漏斗を備えた100mLフルオロポリマー(PFA)−丸底フラスコを、乾燥窒素でフラッシュし、16.08g(111ミリモル)の二フッ化銀および20mLの無水1,1,2−トリクロロトリフルオロエタンを入れた。固体添加漏斗に入れたビス(2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィド(6.03g、16.3ミリモル)を攪拌スラリーへ少量加えて、反応混合物の温度を35〜40℃に維持した。ジスルフィドの添加には約20分必要であった。
【0130】
反応混合物をさらに30分間室温で攪拌し、次に、約5分間加熱還流した。反応混合物を乾燥窒素のガスシール下で濾過した。溶媒の蒸発後、残留物を減圧下で蒸留して式(IV)、表4として示される2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドを得た(沸点92〜93℃/0.5mmHg、mp59.1℃(DSCによる))。化合物は白色固体であり、5.20g(64%)の収量であった。
【0131】
この物質のスペクトルデータは次のとおりである:19F NMR(THF−d)δ53.90(d,J=60.7Hz,2F),−57.03(t,J=60.7Hz,1F);H NMR(CDCN)δ7.25(s,2H),2.60(s,6H),1.30(s,9H);13C NMR(CDCN)δ155.37(s),141.61(s),133.74(s),127.56(s),34.45(s),30.25(s),19.09(s):MS(EI)m/z149.0(M+1−2F,100.0),250.1(M,1.8);C11S(M)としてのHRMS(EI):実験値250.101491、計算値250.100307。
【0132】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0133】
実施例3: 2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
次の反応スキームはこの実施例を説明するものである:
【0134】
【化18】

【0135】
塩素(Cl)を23mL/分で、氷浴で冷却した5.79g(15.0ミリモル)のビス(2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドおよび8.7g(58.1ミリモル)の噴霧乾燥したフッ化カリウム(KF)の乾燥アセトニトリル30mL中の攪拌混合物に通した。1.18L(52.5ミリモル)の塩素を通した後、窒素を25mL/分で2時間通した。反応混合物を乾燥雰囲気中で濾過した。濾液を20℃で真空(10〜20mmHg)蒸発させて、残留物を減圧下で蒸留して2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IV、表4参照)(沸点68〜70℃/0.1mmHg(4.1g、収率55%、純度>97.4%)を得た。スペクトルデータは実施例2に示すのと同じであった。
【0136】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0137】
実施例3a: 2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドおよび2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドの混合物の合成例、本発明のフッ素化剤
【0138】
【化19】

【0139】
乾燥ボックス内で、2000mLフルオロポリマー(PFA)容器に40gのビス[2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド(0.104モル)および60gの乾燥フッ化カリウム(1.04モル、真空下、250℃で3日間乾燥した)を入れた。容器を乾燥ボックスから取り出し、ガス流システムへ接続した。Nを容器へ64mL/分で約30分間通した。次に、約200mLの乾燥CHCNを混合物へ加え、そしてNを流し続けながら(64mL/分)混合物を約−10℃の浴で冷却した。次に、反応混合物を55mL/分の速度のClで発泡させた。Cl発泡は148分後に停止した(8154mLのCl(0.364モル)を発泡させた)。反応混合物は薄い黄色からオレンジ色へ、そして淡黄色へ変化した。Nを流しながら(16mL/分)、反応混合物を室温にゆっくり温め、一晩攪拌した。次に、反応混合物を乾燥ボックスへ入れ、濾過した。濾液を真空乾燥して薄い黄色の固体を得た。真空(〜0.4mmHg、油浴は120〜130℃)下で蒸留して43gの生成物を得た。これはNMR分析で2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IV、表3)および2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IVa、表3)の93:7(モル比)混合物であることが分かった。
【0140】
2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド:収率76%;H NMR(CDCN/EtO(1/1,v/v)),7.29(s,1H,Ar−H),7.25(s,1H,Ar−H),2.69(d,J=5.5Hz,3H,CH),2.57(br.s,3H,CH),1.33(s,9H,C(CH):19F NMR(CDCN/EtO(1/1,v/v)),53.2(d,J=67Hz,2F,SF),−57.5(t,J=67Hz,1F,SF)。
【0141】
2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド:収率5.7%;H NMR(CDCN/EtO=1/1(v/v)),7.39(s,1H,Ar−H),より少ない生成物のCHプロトンは主な生成物のCHプロトンによってオーバーラップされた,1.52(s,9H,C(CH),19F NMR(CDCN/EtO(1/1,v/v)),54.2(d,J=63Hz,1.6F,SF),53.6(d,J=56Hz,0.4F,SF),−53.4(t,J=56Hz,0.2F,SF)、−56.0(t,J=63Hz,0.4F,SF)。
【0142】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0143】
実施例3b: 2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
【0144】
【化20】

【0145】
磁気攪拌棒およびフルオロポリマー冷却器を備えた100mLフルオロポリマーフラスコ中で、4.89g(0.01モル)のビス(2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドを20mLの無水1,1,2−トリクロロトリフルオロエタンに窒素雰囲気下で懸濁させた。AgF(9.92g、0.13モル)を分けて加えた。反応が始まり、AgFの添加の間、熱が発生した。AgFの添加完了後、40℃に5分間加熱し、そして室温で0.5時間攪拌した。AgFの黒い粉末は全て黄色粉末(AgF)に変わった。窒素雰囲気下で、溶液を50mLのガラス蒸留フラスコへ移し、黄色粉末を15mLの無水1,1,2−トリクロロトリフルオロエタンで洗浄した。減圧下での蒸留で4.7gの2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IVa、表3)を得た:収量:4.7g(78%);沸点105〜106℃/0.4mmHg(浴温度125℃);H NMR(CDCl)δ1.50(s,9H,C(CH),2.67(s,6H,CH),7.23(s,1H,Ar−H);19F NMR(THF−d)δ49.95(1.6F,d,J=63Hz,SF),47.45(0.4F,d,J=54Hz,SF),−59.68(0.4F,t,J=54Hz,SF),−60.27(1.6F,t,J=63Hz,SF);13C NMR(CDCl)δ18.00,32.37,41.28,131.90,135.84,144.85,148.67。
【0146】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0147】
実施例3c: 2,6−ジメチル−3,5−ジクロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
【0148】
【化21】

【0149】
フルオロポリマーフラスコに5.24g(0.01モル)のビス(2,6−ジメチル−3,5−ジクロロ−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィド、5.8g(0.1モル)の乾燥フッ化カリウムおよび30mLの無水アセトニトリルを入れた。塩素ガス(0.035モル、784mL)を氷水温度にて20mL/分の速度で混合物に発泡させた。氷浴を除き、反応混合物を室温で2時間攪拌した。反応混合物を濾過し、アセトニトリルを減圧下で除去した。生成物の減圧蒸留で5.05g(80%)の2,6−ジメチル−3,5−ジクロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IVb、表3)を無色液体として得た:沸点113〜115℃/0.4mmHg(浴温度130℃);H NMR(CDCl)δ1.73(s,9H,C(CH),2.69(s,6H,CH);19F NMR(CDCl)δ53.80(br.s,2F,SF),−51.49(br.s,1F,SF);13C NMR(CDCl)δ18.00,32.37,41.28,131.90,135.84,144.85,148.67。
【0150】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0151】
実施例4: 4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
次の反応スキームはこの実施例を説明するものである:
【0152】
【化22】

【0153】
実施例2に記載の合成手順と似た手順を用いて、4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドを製造した。しかしながら、実施例2とは異なり、ビス(4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドをビス(2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドの代わりにスラリーへ加えた。
【0154】
上記の合成手順で4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式V、表3参照)を生成した。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:沸点76℃/1mmHg;19F NMR(CDCN)δ56.57(br.s,2F),−39.24(br.s,1F);H NMR(CDCN)δ7.95(d,J=8.3Hz,2H),7.67(d,J=8.3Hz,2H),1.33(s,9H);13C NMR(CDCN)δ158.17(s),143.11(s),126.46(s),124.24(s),35.07(s),30.31(s);MS(EI)m/z222.1(M,0.4),203.1(M−F,8.8),137.1(M−SF−CH,100.0);C1013S(M)としてのHRMS(EI):実験値222.068288、計算値222.069007。
【0155】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0156】
実施例5: 4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
次の反応スキームはこの実施例を説明するものである:
【0157】
【化23】

【0158】
実施例3に記載の合成手順と似た手順を用いて、4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドを製造した。しかしながら、実施例3とは異なり、ビス(4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドを出発物質として用いた。収率は67%であった。
【0159】
この実施例で生成された生成物の物理的およびスペクトルデータは実施例4に示したのと同じであった。
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0160】
実施例6: 2,4,6−トリメチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
次の反応スキームはこの実施例を説明するものである:
【0161】
【化24】

【0162】
実施例2に記載の合成手順と似た手順を用いて、2,4,6−トリメチルフェニル硫黄トリフルオリドを製造した。しかしながら、実施例2とは異なり、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)ジスルフィドをビス(2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドの代わりにスラリーへ加えた。
【0163】
上記の合成手順で2,4,6−トリメチルフェニル硫黄トリフルオリド(式VI、表3参照)を生成した。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:沸点58〜59℃/1mmHg;19F NMR(THF−d)δ53.13(d,J=52.0Hz,2F),−57.40(t,J=43.4Hz,1F);H NMR(CDCN/THF−d)δ6.97(s,1H),6.94(s,1H),2.59(s,3H),2.47(s,3H),2.24(s);13C NMR(THF−d)δ142.33(s),141.83(s),134.20(s),133.03(s),130.86(s),129.99(s),20.07(s),18.83(s),18.70(s);MS(EI)m/z208.0(M,5.0),189.0(M−F,15.4),138.0(M−SF,100.0);C11S(M)としてのHRMS(EI):実験値208.052377、計算値208.053357。
【0164】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0165】
実施例7: 2,4,6−トリメチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
次の反応スキームはこの実施例を説明するものである:
【0166】
【化25】

【0167】
実施例3に記載の合成手順と似た手順を用いて、2,4,6−トリメチルフェニル硫黄トリフルオリドを製造した。しかしながら、実施例2とは異なり、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)ジスルフィドを出発物質として用いた。収率は58%であった。
【0168】
この実施例で生成された生成物の物理的およびスペクトルデータは実施例6に示したのと同じであった。
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0169】
実施例8: 2,4−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
次の反応スキームはこの実施例を説明するものである:
【0170】
【化26】

【0171】
実施例2に記載の合成手順と似た手順を用いて、2,4−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリドを製造した。しかしながら、実施例2とは異なり、ビス(2,4−ジメチルフェニル)ジスルフィドをビス(2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィドの代わりにスラリーへ加えた。収率は59%であった。
【0172】
上記の合成手順で2,4−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリド(式VII、表3参照)を生成した。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:沸点56℃/1mmHg;19F NMR(CDCN/THF−d)δ52.44(d,J=60.7Hz,2F),−57.75(t,J=60.7Hz,1F);H NMR(CDCN)δ7.90(d,J=8.2Hz,1H),7.29(d,J=8.2Hz,1H),7.18(s,1H),2.62(s,3H),2.42(s,3H);13C NMR(CDCN/THF−d)δ144.76(s),134.30(s),133.80(s),131.92(s),131,70(s),129.79(s),19.09(s),18.92(s);MS(EI)m/z194.0(M,6.9),175.0(M−F,22.4),124.0(M−SF,100.0);CS(M)としてのHRMS(EI):実験値194.036951、計算値194.037707。
【0173】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0174】
実施例9: 2,4−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
次の反応スキームはこの実施例を説明するものである:
【0175】
【化27】

【0176】
実施例3に記載の合成手順と似た手順を用いて、2,4−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリドを製造した。しかしながら、実施例3とは異なり、ビス(2,4−ジメチルフェニル)ジスルフィドを出発物質として用いた。収率は71%であった。
【0177】
この実施例の生成物の物理的およびスペクトルデータは実施例8に示したのと同じであった。
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0178】
実施例10: 2,5−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
次の反応スキームはこの実施例を説明するものである:
【0179】
【化28】

【0180】
実施例3に記載の合成手順と似た手順を用いて、2,5−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリドを製造した。しかしながら、実施例3とは異なり、ビス(2,5−ジメチルフェニル)ジスルフィドを出発物質として用いた。収率は60%であった。
【0181】
上記の合成手順で2,5−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリド(式VIII、表3参照)を生成した。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:沸点76〜79℃/3mmHg;19F NMR(CDCN)δ60.89(br.s,2F),−57.15(br.s,1F);H NMR(CDCN)δ7.90(s,1H),7.36(d,J=7.7Hz,1H),7.26(d,J=7.7Hz,1H),2.66(s,3H),2.49(s,3H);MS(EI)m/z105.1(M−SF,100.0),194.0(M,8.0);CS(M)としてのHRMS(EI):実験値194.037412、計算値194.037707。
【0182】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0183】
実施例11: 2,6−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
次の反応スキームはこの実施例を説明するものである:
【0184】
【化29】

【0185】
実施例3に記載の合成手順と似た手順を用いて、2,6−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリドを製造した。しかしながら、実施例3とは異なり、ビス(2,6−ジメチルフェニル)ジスルフィドを出発物質として用いた。収率は75%であった。
【0186】
上記の合成手順で2,6−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IX、表3参照)を生成した。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:沸点73〜75℃/3.5mmHg;19F NMR(CDCN)δ53.51(br.s,2F),−55.99(br.s,1F);H NMR(CDCN)δ7.41(t,J=7.7Hz,1H),7.23(br.s,2H),2.86(s,3H),2.70(s,3H);MS(EI)m/z105.1(M−SF,100.0),194.0(M,7.0);CS(M)としてのHRMS(EI):実験値194.037035、計算値194.037707。
【0187】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0188】
実施例12: 4−フルオロフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
次の反応スキームはこの実施例を説明するものである:
【0189】
【化30】

【0190】
実施例2に記載の合成手順と似た手順を用いて、4−フルオロフェニル硫黄トリフルオリドを製造した。しかしながら、実施例2とは異なり、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィドを出発物質として用いた。収率は56%であった。
【0191】
上記の合成手順で4−フルオロフェニル硫黄トリフルオリド(式X、表3参照)を生成した。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:沸点39〜40℃/2mmHg;19F NMR(CDCN/THF−d)δ58.14(d,J=60.7Hz,2F),−37.28(t,J=32.0Hz,1F),−104.42(s,1F);H NMR(CDCN/THF−d)δ8.40(dd,J=5.8,8.6Hz,2H),7.66(t,J=8.6Hz,2H);13C NMR(CDCN/THF−d)δ165.98(d,J=255.0Hz),142.41(d,J=15.2Hz),130.66(d,J=8.0Hz),116.69(d,J=23.1Hz);MS(EI)m/z184.0(M−F,0.1),165.0(M−F,18.5),114.0(M−SF,100.0);CS(M)としてのHRMS(EI):実験値183.996675、計算値183.996985。
【0192】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0193】
実施例13: 4−クロロフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
次の反応スキームはこの実施例を説明するものである:
【0194】
【化31】

【0195】
実施例2に記載の合成手順と似た手順を用いて、4−クロロフェニル硫黄トリフルオリドを製造した。しかしながら、実施例2とは異なり、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィドを出発物質として用いた。収率は32%であった。
【0196】
上記の合成手順で4−クロロフェニル硫黄トリフルオリド(式XI、表3参照)を生成した。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:沸点55〜56℃/1mmHg;19F NMR(CDCN/THF−d)δ58.20(d,J=60.7Hz,2F),−39.44(t,J=60.7Hz,1F);H NMR(CDCN/THF−d)δ8.19(d,J=7.6Hz,2H),7.82(d,J=7.6Hz,2H);13C NMR(CDCN)δ144.65(s),140.00(s),129.56(s),128.38(s);MS(EI)m/z201.9(M,0.3),199.9(M,0.9),130.0(M−SF,100.0);CClFS(M)としてのHRMS(EI):実験値201.965496、計算値201.964484および実験値199.967032、計算値199.967434。
【0197】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0198】
実施例14: 3−メチル−4−クロロフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
次の反応スキームはこの実施例を説明するものである:
【0199】
【化32】

【0200】
塩素(Cl)を30mL/分で、4.44g(18ミリモル)のビス(3−メチルフェニル)ジスルフィドおよび15.7g(270ミリモル)の噴霧乾燥したKFの攪拌混合物に通した。攪拌混合物は100mLの乾燥アセトニトリルも含んでいた。混合物を氷浴上で攪拌した。1.92L(85.7ミリモル)の塩素を混合物に通した後、窒素を室温で3時間通した。次に、反応混合物を乾燥雰囲気中で濾過し、濾液を加熱せずに減圧下で蒸発させた。
【0201】
残留物を減圧蒸留して4.71gの式XII、表3に示す化合物を得た。収率は61%であった。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:沸点72〜75℃/4mmHg;19F NMR(CDCl)δ57.9(br.s,2F),−37.7(br.s,1F);H NMR(CDCl)δ7.85(br.s,1H),7.73(d,J=8.6Hz,1H),7.46(d,J=8.6Hz,1H),2.30(s,2H);MS(EI)m/z125.0(M−SF,100.0),214(M,1.2);CClFS(M)としてのHRMS(EI):実験値215.980817、計算値215.980134および実験値213.983426、計算値213.983085。
【0202】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0203】
実施例15: 2,4,6−トリ(イソプロピル)フェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
次の反応スキームはこの実施例を説明するものである:
【0204】
【化33】

【0205】
実施例2と同様な方法で、2,4,6−トリ(イソプロピル)フェニル硫黄トリフルオリドをビス[2,4,6−トリ(イソプロピル)フェニル]ジスルフィドから合成した。収率は79%であった。この化合物の精製は70℃/0.1mmHgでの昇華により行った。式は式XIII、表3に示すとおりである。
【0206】
この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:融点87.3℃(DSCによる);19F NMR(THF−d)δ60.68(d,J=52.0Hz,2F),−53.88(t,J=52.0Hz,1F);H NMR(CDCN)δ7.33(s,1H),7.27(s,1H),3.89(m,1H),3.44(m,1H),2.95(septet,J=7.1Hz,1H),1.29(d,J=6.6Hz,12H),1.24(d,J=7.1Hz,6H);MS(EI)m/z149.0(M+1−2F,100.0),292.2(M,1.2);C1523S(M)としてのHRMS(EI):実験値292.145944、計算値292.147257。
【0207】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0208】
実施例15a: 2,6−ジ(メトキシメチル)フェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
【0209】
【化34】

【0210】
実施例3bに記載の合成手順と似た手順を用いて、2,6−ビス(メトキシメチル)フェニル硫黄トリフルオリド(式XIV、表3)を製造した。しかしながら、実施例3bとは異なり、ビス[2,6−ビス(メトキシメチル)フェニル]ジスルフィドを出発物質として用いた。収率は77%であった。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:沸点110℃/0.4mmHg(浴温度130℃);H NMR(CDCl)δ3.41(s,6H,OCH),4.83(br.s,4H,CH),7.42(m,3H,Ar−H);19F NMR(CDCl)δ50.37(br.s,2F,SF),−53.1(br.s,1F,SF);13C NMR(CDCl)δ58.4,71.7,128.3,131.4,136.4,144.6。元素分析:C1013Sとしての計算値:C,47.24%;H,5.15%。実験値C,47.02%;H,5.12%。
【0211】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0212】
実施例15b: 2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
【0213】
【化35】

【0214】
実施例3bに記載の合成手順と似た手順を用いて、2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式XV、表3)を製造した。しかしながら、実施例3bとは異なり、ビス[2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィドを出発物質として用いた。収率は75%であった。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:沸点128〜130℃/0.4mmHg(浴温度150℃);H NMR(CDCl)δ1.34(s,9H,C(CH),3.46(s,6H,OCH),4.82(br.s,4H,CH),7.41(s,2H,Ar−H);19F NMR(CDCl)δ48.68(br.s,2F,SF),−53.37(br.s,1F,SF);13C NMR(CDCl)δ31.0,35.1,58.5,76.7,125.4,136.2,141.5,155.0。元素分析:C1421Sとしての計算値:C,54.18%;H,6.82%。実験値C,54.31%;H,6.86%。
【0215】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0216】
実施例15c: 2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
【0217】
【化36】

【0218】
500mLフルオロポリマーフラスコに22.4g(0.044モル)のビス[2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド、25.5g(0.44モル)の乾燥フッ化カリウムおよび100mLの無水アセトニトリルを入れた。混合物を0℃に冷却し、塩素ガス(0.15モル、3360mL)を35mL/分の速度で発泡させた。反応混合物を0℃でさらに1時間攪拌し、次いで、室温で1時間攪拌した。反応混合物を濾過し、アセトニトリルを減圧下、室温で除去した。得られた液体を減圧蒸留して24gの2,6−ジ(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式XV、表3)を得た。収率88%。スペクトルデータは実施例15bに示したのと同じである。
【0219】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0220】
実施例15d: 2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
【0221】
【化37】

【0222】
フルオロポリマーフラスコに3.14g(6.0ミリモル)のビス[2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド、18.2g(120ミリモル)の乾燥フッ化セシウムおよび35mLの無水アセトニトリルを入れた。塩素ガス(16.00ミリモル、538mL)を20℃(水浴温度)にて15mL/分の速度で発泡させた。塩素を通した後、水浴を除き、反応混合物を室温で1時間攪拌した。窒素雰囲気下でのデカンテーションによって溶液を移し、次に15mLの無水アセトニトリルで洗浄した。アセトニトリルを室温で除去し、生成物を減圧蒸留により精製して2.5g(65%)の2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式XVI、表3)を薄い黄色の液体として得た。:沸点118℃/0.2mmHg(浴温度140℃);H NMR(CDCl)δ1.32(6H,CHCH),1.32(s,9H,C(CH),3.60(q,4H),4.89(s,4H),7.54(s,2H,Ar−H);19F NMR(CDCl)δ48.77(br.s,2F,SF),−53.11(br.s,1F,SF);13C NMR(CDCl)δ15.12,31.02,35.05,66.29,66.48,125.33,136.71,154.89,156.97。
【0223】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0224】
実施例15e: 2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
【0225】
【化38】

【0226】
実施例15dに記載の合成手順と似た手順を用いて、2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式XVII、表3)を製造した。しかしながら、実施例15dとは異なり、ビス[2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィドを出発物質として用いた。収率は61%であった。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:無色液体;沸点120℃/0.2mmHg(浴温度145℃);H NMR(CDCl)δ1.24(d,J=6Hz,12H,CH),1.32(s,9H,C(CH),3.75(septet,J=6.0Hz,2H,CH),4.80((br.s,4H,CH),7.55(s,2H,Ar−H);19F NMR(CDCl)δ48.73(br.s,2F,SF),−52.86(br.s,1F,SF);13C NMR(CDCl)δ21.99,31.02,35.05,66.51,71.93,125.76,139.50,141.75,154.62。
【0227】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0228】
実施例15f: 2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
【0229】
【化39】

【0230】
実施例15dに記載の合成手順と似た手順を用いて、2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式XVIII、表3)を製造した。しかしながら、実施例15dとは異なり、ビス[2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィドを出発物質として用いた。収率は60%であった。この物質の物理的およびスペクトルデータは次のとおりである:無色の油;沸点130℃/0.2mmHg(浴温度150℃);H NMR(CDCl)δ0.97(d,12H,J=6Hz,CH),1.33(s,9H,C(CH),1.97(m,2H,CH),3.33(m,4H,OCH),4.89(br.s,4H,ArCH),7.56(ブロードピーク,2H,Ar−H);19F NMR(CDCl)δ47.42(ブロードピーク,2F,SF),−53.15(ブロードピーク,1F,SF);13C NMR(CDCl)δ19.31,28.62,31.39,35.08,69.22,77.90,125.63,139.14,154.82,156.94。
【0231】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0232】
実施例15g: 2,6−ビス(t−ブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドの合成例、本発明のフッ素化剤
【0233】
【化40】

【0234】
フルオロポリマーフラスコに4.05g(6.0ミリモル)のビス[2,6−ビス(t−ブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド、18.2g(120ミリモル)の乾燥フッ化セシウムおよび35mLの無水アセトニトリルを入れた。塩素ガス(16.00ミリモル、1.70g、538mL)を20℃(水浴温度)にて15mL/分の速度で発泡させた。塩素を通した後、水浴を除き、反応混合物を室温で1時間攪拌した。窒素雰囲気下でのデカンテーションによって溶液を移し、次に15mLの無水アセトニトリルで洗浄した。アセトニトリルを室温で除去して残留物を得た。これを無水ヘキサンで抽出した。ヘキサン抽出物を蒸発乾燥して、3.3g(70%)の2,6−ビス(t−ブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式XIX、表3)を薄い黄色の油として得た。:H NMR(CDCl)δ1.27(s,9H),1.32(s,9H),1.36(s,9H),4.72(s,2H),5.00(s,2H),7.20(s,1H),7.93(s,1H);19F NMR(CDCl)δ47.38(br.s,2F,SF),−53.20(br.s,1F,SF);19F NMR(CDCl+THF(1:1))δ48.50(2F,J=79Hz,SF),−53.20(1F,t,J=79Hz,SF)。
【0235】
この実施例は、フッ素含有化合物の製造に用いうるフッ素化剤の合成に本発明が有用であることを示している。
【0236】
実施例16−25d: 置換フェニル硫黄トリフルオリドの熱分析
熱分析は本発明の化合物IV、IVa、IVb、V−XV並びにPhSFおよびp−CHSF(表4)について行った。各化合物の分解温度および発熱(−ΔH)は示差走査分光分析法を用いて、すなわち、示差走査分光光度計(DSC)を使用して測定した。
【0237】
分解温度は分解が始まる温度であり、発熱は化合物分解から生じる熱の量である。一般に、分解温度がより高くそして発熱値がより低いと熱安定性がより高い化合物となり、安定性がより高くなる。
【0238】
表4から、本発明の化合物、アルキル基、ハロゲン原子、および/またはエーテル結合を有するアルキル基で置換されたフェニル硫黄トリフルオリドが、有用な一般的なフッ素化剤(DASTおよびDeoxo−Fluor(登録商標))よりまさる、分解温度および発熱値の予想外で著しい改善を示すことは明らかである。このデータは、本発明の化合物の熱安定性が改善されたこと、そしてその結果、他の有用な一般的なフッ素化剤よりも本発明の化合物の安全性が改善されたことを示している。フェニル硫黄トリフルオリド(PhSF)およびp−メチルフェニル硫黄トリフルオリド(p−CHSF)は高い分解温度を有するが、それらは高い発熱を有し、それらのフッ素化反応性は低い(以下の実施例参照)。
【0239】
【表4】

【0240】
実施例26−55: 本発明の化合物を用いる標的化合物のフッ素化
本発明のフッ素化剤を用いる標的化合物のフッ素化には多くの手順がある。手順A−Jとして10の手順について説明する:
手順A: 10mLフルオロポリマー(PFA)ボトル(N送入管、隔膜および磁気攪拌棒を備えている)において、65mgのベンジルアルコール(0.604ミリモル)を、166mg2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IV)(0.664ミリモル)の3mL無水CHCl中の溶液へ加えた。添加はN流の下、室温で行った。混合物を室温で攪拌した。反応の進行はガスクロマトグラフィー(GC)によってモニターした。2時間後、19F NMR分析を行ったところ、フッ化ベンジルが得られたことを示した(収率88%)。
【0241】
手順B: 5mLフルオロポリマーボトル(N送入管、隔膜および磁気攪拌棒を備えている)において、42mgのイソバレルアルデヒド(0.491ミリモル)を、135mg2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IV)(0.540ミリモル)の0.5mL無水CHCl中の溶液へ加えた。添加はN流の下、室温で行った。混合物を室温で攪拌した。反応の進行はGCによってモニターした。24時間後、19F NMR分析を行ったところ、1,1−ジフルオロ−3−メチルブタンが得られたことを示した(収率95%)。
【0242】
手順C: 5mLフルオロポリマーボトル(N送入管、隔膜および磁気攪拌棒を備えている)において、40mgのシクロヘキサノン(0.405ミリモル)を、172mg2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IV)(0.688ミリモル)の0.5mL無水CHCl中の溶液へ加えた。添加はN流の下、室温で行った。エタノール(3.7mg、0.08ミリモル)を加えて、混合物を室温で攪拌した。反応の進行はGCによってモニターした。24時間後、19F NMR分析を行ったところ、1,1−ジフルオロシクロヘキサンが得られたことを示した(収率74%)。
【0243】
手順Cでエタノールを加えた目的はフッ化水素(HF)をつくるためであり、これは触媒としてフッ素化反応を促進する。エタノールはSFフッ素化剤と反応して、フッ化エチルと共にHFとなる。
【0244】
手順D: 1mLフルオロポリマーチューブにおいて、21mgの安息香酸(0.170ミリモル)を、106mg2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IV)(0.424ミリモル)へ加えた。添加はN流の下、室温で行った。次に、管を封じ、100℃に加熱した。反応の進行はGCによってモニターした。2時間後、19F NMR分析を行ったところ、α,α,α−トリフルオロトルエンが得られたことを示した(収率88%)。
【0245】
手順E: 乾燥ボックス内で、5mLフルオロポリマー容器に1.0g(4.55ミリモル)のp−ヘプチル安息香酸および3.4g(13.65ミリモル)の2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IV)と2,4−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IVa)との93:7(モル比)混合物を入れた。次に、反応容器を乾燥ボックスから取り出した。1.0mLのフッ化水素ピリジン(〜70%のHFと〜30%のピリジンとの混合物)を窒素下で反応混合物へゆっくり加えた。反応混合物を50℃にゆっくり加熱し、その温度に22時間保った。NMR分析はp−ヘプチルベンゾトリフルオリドが74%の収率で生成したことを示した。
【0246】
手順F: 乾燥ボックス内で、0.500g(2.72ミリモル)のO−フェニルS−メチルジチオカーボネートおよび3.4g(13.6ミリモル)の2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IV)と2,4−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IVa)との93:7(モル比)混合物を5mLフルオロポリマー容器に入れた。反応混合物を80℃にゆっくり加熱し、その温度に19時間保った。NMR分析はフェニルトリフルオロメチルエーテルが92%の収率で生成したことを示した。PhOCF19F NMR(CDCl):−58.22(s,3F,CF)。
【0247】
手順G: 乾燥ボックス内で、0.912g(6ミリモル)のO−メチルチオベンゾエートおよび1.8g(7.2ミリモル)の2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IV)と2,4−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IVa)との93:7(モル比)混合物を5mLフルオロポリマー容器に入れた。次に、反応混合物をN下で100℃に2時間加熱した。反応混合物は初めの薄い緑色からピンクへ変化した。NMR分析は、メチルフェニルジフルオロメチルエーテルが95%の収率で生成されたことを示した。PhCFOCH19F NMR(CDCl)δ−72.17(s,2F,CF)。
【0248】
手順H: 乾燥ボックス内で、0.304g(2ミリモル)のO−メチルチオベンゾエートを5mLフルオロポリマー容器内の2mlの乾燥CHClに溶解した。次に、0.6g(2.4ミリモル)の2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IV)と2,4−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IVa)との93:7(モル比)混合物を溶液へ加え、そして15mg(0.066ミリモル)のSbClを反応混合物へ加えた。反応混合物はNの下で室温にて26時間攪拌した。NMR分析はメチルフェニルジフルオロメチルエーテルが78%の収率で生成されたことを示した。
【0249】
手順I: 乾燥ボックス内で、0.31g(1.58ミリモル)の2−フェニル−1,3−ジチアンを5mLフルオロポリマー容器内の2mL無水CHClに溶解した。次に、1.0g(4.0ミリモル)の2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IV)と2,4−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IVa)との93:7(モル比)混合物を反応混合物へ加えた。発熱反応がわずかに生じた。次に、反応混合物をNの下で室温にて2時間攪拌した。NMR分析はジフルオロメチルベンゼンが82%の収率で生成されたことを示した。PhCFHの19F NMR(CDCl)δ−110.54(d、J=60.7Hz,CF)。
【0250】
手順J: 15mLフルオロポリマーフラスコ内で、2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(0.625g、2.5ミリモル)を5mLの無水CHClに溶解した。メソ−1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオール(0.214g、1.0ミリモル)の5mL無水CHCl中の溶液を上記攪拌溶液へ室温で加えた。3時間後、C1226Fを標準として加えた。19F NMR分析は、1,2−ジフルオロ−1,2−ジフェニルエタン(PhCHFCHFPh)が97%の収率で生成し、そして微量の(〜0.03%)1,1−ジフルオロ−2,2−ジフェニルエタン(PhCHCFH)が形成されたことを示した。生成物は文献中の分光データと比較することによって特性決定した(Journal of Fluorine Chem. 第125巻、1869−1872頁(2004)参照)。
【0251】
表5参照:実施例26−28、28a、29−32、32a−f、33−44、44a、54、55並びに公知のフッ素化剤(PhSF)(比較実施例1)及び公知で類似の化合物(p−CHSF)[J. Am. Chem. Soc.,第84巻、3058−3063頁(1962)](比較実施例2)との反応は、表5に示す反応条件下および手順Aに従って行い;実施例45、45a−c、48、48a、b、49、49a、bおよび50は表5に示す反応条件下および手順Bに従って行い;実施例46、46a、b,47および47a、bは表5に示す反応条件下および手順Cに従って行い;そして実施例51、51a、52、52a、53および53aは表5に示す反応条件下および手順Dに従って行った。手順E、F、G、HおよびIはそれぞれ実施例49c、55a、55b、55cおよび55dに対するものである。手順Jは実施例55eおよび55f並びに比較実施例3および4に対するものである。
【0252】
【表5−1】

【0253】
【表5−2】

【0254】
【表5−3】

【0255】
表5のデータから分かるように、本発明の新規な置換フェニル硫黄トリフルオリド、アルキル基、ハロゲン原子、および/またはエーテル結合を有するアルキル基で置換されたフェニル硫黄トリフルオリドが、公知のおよび類似のPhSF(比較実施例1)およびp−CHSF(比較実施例2)よりもはるかに効果的なフッ素化剤であることが意外にも示された。さらに、実施例55eおよび55fと比較実施例3および4との比較から分かるように、本発明の新規な置換フェニル硫黄トリフルオリドはDASTおよびDeoxo−Fluor(登録商標)のような一般的なフッ素化剤と比較してフッ素化の収率が高くかつ選択性が高い。さらに、これらの実施例は、本発明の新規化合物が高い収率で広い範囲の標的化合物をフッ素化することができることを示している。実施例54は、硫黄原子のgem−位置にある水素原子をフッ素に置き代えるのに本発明が有用であることを示している。さらに、実施例55も水素原子のフッ素での置き代えを例証している。
【0256】
実施例56−63および比較実施例5−8、置換フェニル硫黄トリフルオリドおよび一般的な硫黄トリフルオリドの安定性、安全性および廃棄性
置換フェニル硫黄トリフルオリド、IV、IVa、XIV−XVIII、並びに一般的な硫黄トリフルオリド、例えばDAST、Deoxo−Fluor(登録商標)、フェニル硫黄トリフルオリド(PhSF)、およびp−メチルフェニル硫黄トリフルオリド(p−CHSF)の安定性、安全性および廃棄性を、加水分解安定性に対して試験した。目視加水分解安定性試験は、約10〜50mgの硫黄トリフルオリド(「液滴状」)をビーカー中の大量の水へ室温で加えることによって行った。各試験化合物は1〜10の評価に従って評価した:
A. 滴下したときの反応 −
10=すぐに激しい反応が生じる;
5=すぐに穏やかな反応が生じる;および
1=すぐに反応は生じない。
B. 滴下したときの音の発生 −
10=すぐに非常に大きな音が生じる;
5=すぐに穏やかな音が生じる;および
1=音は生じない。
C. 滴下したときの煙の発生 −
10=すぐに強い発煙が生じる;
5=すぐに穏やかな発煙が生じる;および
1=発煙は生じない。
【0257】
結果は表6にまとめる。「すぐに反応は生じない」は、試験物質を水に滴下したとき、硫黄トリフルオリドの明らかな変化が観察されなかったことを意味する。
【0258】
【表6】

【0259】
DASTおよびDeoxo−Fluor(登録商標)のような一般的なフッ素化剤は湿分に極めて敏感であり、容易に加水分解し、従って、水と接触したとき危険であることは知られている(表6から分かるように水と極めて激しく反応する)。フェニル硫黄トリフルオリドおよびp−メチルフェニル硫黄トリフルオリドはこの点でDASTおよびDeoxo−Fluor(登録商標)と似ている。これに対して、本発明の置換フェニル硫黄トリフルオリド、アルキル基、ハロゲン原子、および/またはエーテル結合を有するアルキル基で置換されたフェニル硫黄トリフルオリド、例えばIV、IVa、b、およびXIV−XVIIIは水に対して比較的高い安定性を有する。このことは、置換フェニル硫黄トリフルオリドが高い安定性、貯蔵安定性、安全性、安全な取り扱い性、および安全な廃棄性を有することを示している。実施例56〜58と比較実施例7および8との比較から、本発明のアルキル基およびハロゲン置換基は、本発明の化合物の加水分解に対する安定性を予想外にかつ驚くほど改善する。実施例59と比較実施例7との比較から、1つ以上のエーテル結合を有するアルキル基は高い安定性を有する。これはまた、少なくとも1つのエーテル結合を有するアルキル基が本発明のフェニル硫黄トリフルオリドの安定性を予想外にかつ驚くほど改善することを証明している。
【0260】
実施例64: 2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(IV)および2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(IVa)の93:7(モル比)混合物のメタノリシス実験
【0261】
【化41】

【0262】
乾燥ボックス内で、フルオロポリマー容器に5gの2,4−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IV)および2,4−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド(式IVa)の93:7(モル比)混合物を入れた。10mLの無水CHOHをこの混合物へゆっくり加えた。添加の間、発熱反応が生じた。添加後、反応混合物をN下で30分間攪拌した。反応混合物を20mLの冷水性NaCO溶液に注ぎ、そしてエーテルで抽出した。有機層を分離し、無水MgSOで乾燥し、蒸発させて、薄い黄色の生成物を得た。冷ヘキサンからの再結晶で白色固体(4.2g)を得た。固体のH NMR分析は、固体が、92%の化合物IV−2と8%の化合物IVa−2との混合物であることを示した。
【0263】
化合物IV−2:H NMR(CDCl)δ7.04(s,2H,Ar−H),3.80(s,3H,S(O)OCH),2.62(s,6H,Ar−CH),1.28(s,9H,C(CH);GC−Mass240(M)。
【0264】
化合物IVa−2:H NMR(CDCl)δ7.12(s,1H,Ar−H),3.83(s,3H,S(O)OCH),2.66(s,6H,Ar−CH),1.47(s,9H,C(CH);GC−Mass276(M),274(M)。
【0265】
これらの化合物の形成は下記のスキームに示すようなメカニズムで説明することができる。メタノリシスは2工程からなり、第1メタノリシスの後に第2メタノリシスが続く。式IVおよびIVaの化合物の第1メタノリシスでフッ化スルフィニル、IV−1およびIVa−1、フッ化メチル(CHF)およびフッ化水素(HF)が得られ、第2メタノリシスで最終生成物、IV−2およびIVa−2となる。
【0266】
【化42】

【0267】
第1メタノリシス反応は酸素原子を含有する標的化合物のフッ素化反応に相当する。これは、標的化合物のフッ素化反応で、フッ素化生成物の他に、IV−1およびIVa−1のようなフッ化スルフィニルがもたらされることを示している。フッ化スルフィニルが水、水性の酸性溶液または塩基性溶液でさらに加水分解されると、相当するスルフィン酸またはそれらの塩が形成される。
【0268】
本発明の各種態様は以下の通りである。
1. 式(I)の化合物:
【0269】
【化43】

【0270】
(式中、
1aおよびR1bは独立して、水素原子;1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
2a、R2bおよびRは独立して、水素原子;ハロゲン原子;1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
ここで、Rが水素原子であるとき、R1a、R1b、R2aおよびR2bの少なくとも2つはそれぞれ独立して、ハロゲン原子;1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であるか;あるいはR1a、R1b、R2aおよびR2bの少なくとも1つは2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
ここで、Rが1〜8個の炭素原子を有する第1アルキル基であるとき、R1a、R1b、R2aおよびR2bの少なくとも1つは、ハロゲン原子;1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
ここでR2aおよびR2bおよびRの少なくとも2つが第3アルキル基であるとき、第3アルキル基は隣接していない)。
2. 1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基が1〜4個の炭素原子を有する、上記1に記載の化合物。
3. 2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基が、2〜5個の炭素原子および1または2個のエーテル結合を有する、上記1に記載の化合物。
4. Rが第3アルキル基である、上記1に記載の化合物。
5. 第3アルキル基がt−ブチル基である、上記4に記載の化合物。
6. 化合物が、2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ジメチル−3,5−ジクロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,4,6−トリメチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,4−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,5−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリド;4−フルオロフェニル硫黄トリフルオリド;4−クロロフェニル硫黄トリフルオリド;3−メチル−4−クロロフェニル硫黄トリフルオリド;2,4,6−トリ(イソプロピル)フェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(メトキシメチル)フェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;および2,6−ビス(t−ブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドよりなる群から選択される、上記1に記載の化合物。
7. 化合物が、2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ジメチル−3,5−ジクロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(メトキシメチル)フェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;および2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドよりなる群から選択される、上記1に記載の化合物。
8. 式(Ia)の化合物:
【0271】
【化44】

【0272】
(式中、
1aおよびR1bは独立して、水素原子;1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;
2a´およびR2b´は独立して、水素原子またはハロゲン原子であり;そして
は、水素原子;ハロゲン原子;1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;
ここで、Rが水素原子であるとき、R1aおよびR1bは独立して、1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基であるか;あるいはR1aおよびR1bの少なくとも1つは2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
ここで、Rが1〜8個の炭素原子を有する第1アルキルであるとき、R1aおよびR1bの少なくとも1つは、1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基である)。
9. 1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基が1〜4個の炭素原子を有する、上記8に記載の化合物。
10. 2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有するアルキル基が、2〜5個の炭素原子および1または2個のエーテル結合を有する、上記8に記載の化合物。
11. アルキル基が、CHOCH、CHOCHCH、CHOCHCHCH、CHOCH(CH、CHOCH(CHCH、CHOCH(CH)CHCH、CHOCHCH(CH、CHOC(CH、CHOCHC(CH、CHOCHCHOCH、CHOCHCHCHOCH、CHOCHCHOCHCH、CHCHOCH、CHCHOCHCH、CHCHOCH(CH、CHCHOCHCHOCH、CH(CH)OCH、CH(CH)OCHCH、C(CHOCH、およびC(CHOCHCHよりなる群から選択される、上記10記載の化合物。
12. アルキル基が、CHOCH、CHOCHCH、CHOCH(CH、およびCHOCHCH(CHよりなる群から選択される、上記11に記載の化合物。
13. Rが第3アルキル基である、上記8に記載の化合物。
14. 第3アルキル基がt−ブチル基である、上記13に記載の化合物。
15. 式(II)の化合物:
【0273】
【化45】

【0274】
(式中、
1a´およびR1b´は独立して、水素原子または1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基であり;
3´は、水素原子、ハロゲン原子、または1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;
ここで、R3´が水素原子であるとき、R1a´およびR1b´は独立して、1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基であり、そして
ここで、R3´が1〜8個の炭素原子を有する第1アルキルであるとき、R1a´およびR1b´の少なくとも1つは、1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基である)。
16. 第1、第2もしくは第3アルキル基が1〜4個の炭素原子を有する、上記15に記載の化合物。
17. R3´が第3アルキル基である、上記15に記載の化合物。
18. 第3アルキル基がt−ブチル基である、上記17に記載の化合物。
19. 式(Ib)の化合物:
【0275】
【化46】

【0276】
(式中、
3´は、水素原子、ハロゲン原子、または1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;
は、第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
およびRは独立してアルキレン基であり;R、RおよびRの炭素原子の合計は8以下であり、そしてmは0または1である)。
20. 第1、第2もしくは第3アルキル基が4個以下の炭素原子を有する、上記19に記載の化合物。
21. R3´が水素原子または第3アルキル基である、上記19に記載の化合物。
22. 第3アルキル基がt−ブチル基である、上記21に記載の化合物。
23. Rが第1もしくは第2アルキル基である、上記19に記載の化合物。
24. mが0である、上記19に記載の化合物。
25. Rがメチレン基である、上記19に記載の化合物。
26. 1つ以上のフッ素原子を標的化合物へ導入する方法であって、
1つ以上のフッ素原子の標的化合物への導入を可能にする条件下で、上記1に記載の式(I)のフッ素化剤を標的化合物と接触させること
を含む方法。
27. 標的化合物が、1つ以上のフッ素原子の導入によって置き代えられる1つ以上の酸素または酸素含有基を有する、上記26に記載の方法。
28. 標的化合物が、1つ以上のフッ素原子の導入によって置き代えられる1つ以上の硫黄または硫黄含有基を有する、上記26に記載の方法。
29. フッ素化剤が、2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ジメチル−3,5−ジクロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,4,6−トリメチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,4−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,5−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ジメチルフェニル硫黄トリフルオリド;4−フルオロフェニル硫黄トリフルオリド;4−クロロフェニル硫黄トリフルオリド;3−メチル−4−クロロフェニル硫黄トリフルオリド;2,4,6−トリ(イソプロピル)フェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(メトキシメチル)フェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;および2,6−ビス(t−ブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドよりなる群から選択される、上記26に記載の方法。
30. フッ素化剤が、2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ジメチル−3,5−ジクロロ−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(メトキシメチル)フェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;および2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドよりなる群から選択される、上記26に記載の方法。
31. 1つ以上のフッ素原子を標的化合物へ導入する方法であって、
1つ以上のフッ素原子の標的化合物への導入を可能にする条件下で、上記8に記載の式(Ia)のフッ素化剤を標的化合物と接触させること
を含む方法。
32. 標的化合物が、1つ以上のフッ素原子の導入によって置き代えられる1つ以上の酸素または酸素含有基を有する、上記31に記載の方法。
33. 標的化合物が、1つ以上のフッ素原子の導入によって置き代えられる1つ以上の硫黄または硫黄含有基を有する、上記31に記載の方法。
34. 1つ以上のフッ素原子を標的化合物へ導入する方法であって、
1つ以上のフッ素原子の標的化合物への導入を可能にする条件下で、上記15に記載の式(II)のフッ素化剤を標的化合物と接触させること
を含む方法。
35. 標的化合物が、1つ以上のフッ素原子の導入によって置き代えられる1つ以上の酸素または酸素含有基を有する、上記34に記載の方法。
36. 標的化合物が、1つ以上のフッ素原子の導入によって置き代えられる1つ以上の硫黄または硫黄含有基を有する、上記34に記載の方法。
37. 1つ以上のフッ素原子を標的化合物へ導入する方法であって、
1つ以上のフッ素原子の標的化合物への導入を可能にする条件下で、上記19に記載の式(Ib)のフッ素化剤を標的化合物と接触させること
を含む方法。
38. 標的化合物が、1つ以上のフッ素原子の導入によって置き代えられる1つ以上の酸素または酸素含有基を有する、上記37に記載の方法。
39. 標的化合物が、1つ以上のフッ素原子の導入によって置き代えられる1つ以上の硫黄または硫黄含有基を有する、上記37に記載の方法。
40. 式(Ic)の化合物:
【0277】
【化47】

【0278】
(式中、
は1〜4個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
は、水素原子または1〜4個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基である)。
41. Rが水素原子またはt−ブチル基である、上記40に記載の化合物。
42. 化合物が、ビス[2,6−ビス(メトキシメチル)フェニル]ジスルフィド;ビス[2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド;ビス[2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド;ビス[2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド;ビス[2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド;およびビス[2,6−ビス(t−ブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィドよりなる群から選択される、上記40に記載の方法。
43. ビス(2,6−ジメチル−3−クロロ−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィド。
44. ビス(2,6−ジメチル−3,5−ジクロロ−4−t−ブチルフェニル)ジスルフィド。
【0279】
説明のために本発明の範囲内で様々な変更を行いうることは無論のことである。本明細書に記載のおよび請求の範囲で限定される本発明の精神に包含されるもので本技術分野の当業者に容易に示唆を与える多くの他の変更は可能である。
【0280】
この明細書には特許、特許出願および公報のような多くの引例が挙げられている。それらは参照することによって全て本明細書に組み入れられたものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

(式中、
1aおよびR1bは独立して、水素原子;1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
2a、R2bは独立して、水素原子;ハロゲン原子;1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
は、水素原子;1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
ここで、Rが水素原子であるとき、R1a、R1b、R2aおよびR2bの少なくとも1つは、2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
ここで、Rが1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であるとき、R1a、R1b、R2aおよびR2bの少なくとも1つは、2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基である。)
【請求項2】
2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基が、2〜5個の炭素原子および1または2個のエーテル結合を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
化合物が、2,6−ビス(メトキシメチル)フェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;および2,6−ビス(t−ブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドよりなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
化合物が、2,6−ビス(メトキシメチル)フェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;および2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドよりなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式(Ia)の化合物:
【化2】

(式中、
1aおよびR1bは独立して、水素原子;1〜8個の炭素原子を有する第1もしくは第2アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;
2a´およびR2b´は独立して、水素原子またはハロゲン原子であり;そして
は、水素原子;1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基;または2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;
ここで、Rが水素原子であるとき、R1aおよびR1bの少なくとも1つは2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
ここで、Rが1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であるとき、R1aおよびR1bの少なくとも1つは、2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有する第1、第2もしくは第3アルキル基である)。
【請求項6】
2〜8個の炭素原子および少なくとも1つのエーテル結合を有するアルキル基が、2〜5個の炭素原子および1または2個のエーテル結合を有する、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
アルキル基が、CHOCH、CHOCHCH、CHOCHCHCH、CHOCH(CH、CHOCH(CHCH、CHOCH(CH)CHCH、CHOCHCH(CH、CHOC(CH、CHOCHC(CH、CHOCHCHOCH、CHOCHCHCHOCH、CHOCHCHOCHCH、CHCHOCH、CHCHOCHCH、CHCHOCH(CH、CHCHOCHCHOCH、CH(CH)OCH、CH(CH)OCHCH、C(CHOCH、およびC(CHOCHCHよりなる群から選択される、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
アルキル基が、CHOCH、CHOCHCH、CHOCH(CH、およびCHOCHCH(CHよりなる群から選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
式(Ib)の化合物:
【化3】

(式中、
3´は、水素原子、または1〜8個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;
は、第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
およびRは独立してアルキレン基であり;R、RおよびRの炭素原子の合計は8以下であり、そしてmは0または1である)。
【請求項10】
第1、第2もしくは第3アルキル基が4個以下の炭素原子を有する、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
3´が水素原子または第3アルキル基である、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
第3アルキル基がt−ブチル基である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
が第1もしくは第2アルキル基である、請求項9に記載の化合物。
【請求項14】
mが0である、請求項9に記載の化合物。
【請求項15】
がメチレン基である、請求項9に記載の化合物。
【請求項16】
1つ以上のフッ素原子を標的化合物へ導入する方法であって、
1つ以上のフッ素原子の標的化合物への導入を可能にする条件下で、請求項1に記載の式(I)のフッ素化剤を標的化合物と接触させること
を含む方法。
【請求項17】
標的化合物が、1つ以上のフッ素原子の導入によって置き代えられる1つ以上の酸素または酸素含有基を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
標的化合物が、1つ以上のフッ素原子の導入によって置き代えられる1つ以上の硫黄または硫黄含有基を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
フッ素化剤が、2,6−ビス(メトキシメチル)フェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;および2,6−ビス(t−ブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドよりなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
フッ素化剤が、2,6−ビス(メトキシメチル)フェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリド;および2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル硫黄トリフルオリドよりなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
1つ以上のフッ素原子を標的化合物へ導入する方法であって、
1つ以上のフッ素原子の標的化合物への導入を可能にする条件下で、請求項5に記載の式(Ia)のフッ素化剤を標的化合物と接触させること
を含む方法。
【請求項22】
標的化合物が、1つ以上のフッ素原子の導入によって置き代えられる1つ以上の酸素または酸素含有基を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
標的化合物が、1つ以上のフッ素原子の導入によって置き代えられる1つ以上の硫黄または硫黄含有基を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
1つ以上のフッ素原子を標的化合物へ導入する方法であって、
1つ以上のフッ素原子の標的化合物への導入を可能にする条件下で、請求項9に記載の式(Ib)のフッ素化剤を標的化合物と接触させること
を含む方法。
【請求項25】
標的化合物が、1つ以上のフッ素原子の導入によって置き代えられる1つ以上の酸素または酸素含有基を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
標的化合物が、1つ以上のフッ素原子の導入によって置き代えられる1つ以上の硫黄または硫黄含有基を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
式(Ic)の化合物:
【化4】

(式中、
は1〜4個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基であり;そして
は、水素原子または1〜4個の炭素原子を有する第1、第2もしくは第3アルキル基である)。
【請求項28】
が水素原子またはt−ブチル基である、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
化合物が、ビス[2,6−ビス(メトキシメチル)フェニル]ジスルフィド;ビス[2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド;ビス[2,6−ビス(エトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド;ビス[2,6−ビス(イソプロポキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド;ビス[2,6−ビス(イソブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィド;およびビス[2,6−ビス(t−ブトキシメチル)−4−t−ブチルフェニル]ジスルフィドよりなる群から選択される、請求項27に記載の方法。

【公開番号】特開2010−195811(P2010−195811A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96950(P2010−96950)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【分割の表示】特願2009−521991(P2009−521991)の分割
【原出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(509025625)アイエム・アンド・ティー・リサーチ・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】