美容装置
【課題】施術対象箇所が凹凸を有する顔等であっても、薬液を含浸する部分を施術対象箇所の皮膚に確実に接触させることができ、これにより、イオン導入法による施術を施術対象箇所全体に短時間で効果的に行う美容装置を提供する。
【解決手段】イオン導入法により薬液の有効成分を施術対象箇所の皮膚の深部に浸透させるための美容装置は、使用時に顔の皮膚に接触して配置される施術部材5を備える。この施術部材5は、電極2を有し、薬液に電流を流すための導電体50と、導電体50の一側に、薬液を含浸するため、電極2に対応する部分を除く部分の少なくとも一部が発泡性の低反発素材からなる薬液含浸部51とを備えている。
【解決手段】イオン導入法により薬液の有効成分を施術対象箇所の皮膚の深部に浸透させるための美容装置は、使用時に顔の皮膚に接触して配置される施術部材5を備える。この施術部材5は、電極2を有し、薬液に電流を流すための導電体50と、導電体50の一側に、薬液を含浸するため、電極2に対応する部分を除く部分の少なくとも一部が発泡性の低反発素材からなる薬液含浸部51とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン導入法により、例えば化粧水等の水溶液(以下、「薬液」と言う。)の有効成分を顔等の施術対象箇所の皮膚の深部に浸透させるための美容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン導入法は、人体に電流が流れることを利用した美容方法の一種で、薬液を皮膚表面に塗布し、陽極(+極)と陰極(−極)のいずれか一方の電極導子を上記水溶液に接触させるとともに、他方の電極導子を離間させた位置の皮膚(例えば手指)に接触させ、両電極導子間に微弱な電流(例えば数mAの直流)を数分間流すようにして、薬液を皮膚の深部にまで浸透させるものである。イオン導入法は、医学的にも効果が認められている美容方法である。
【0003】
このようなイオン導入法を実現する従来の美容装置として、特許文献1に示すように、金・銀・カーボン等の導電体を不織布・紙・コットン等から成る薬液(薬剤)含浸シートに接着、溶着、圧着等の方法で張り付け、それを顔に密着させる構造のものが知られている。
【0004】
この様な構造の場合、電極が確実に顔に接触もしくは導通しているかが不確実である。また、顔には凹凸があり人それぞれその凹凸具合が異なる。その凹凸具合によっては薬液含侵シート単体や導電体と接触した薬液含侵シートが顔から浮いていたり、接触していない部分が発生していたりする。この様な場合、接触していない部分の施術をあきらめるか、別の装置を使用して接触していない部分をさらに施術する必要がある。
【0005】
また、特許文献2に示すように、薬液入りの容器とイオン導入装置部分(電気回路・電池等)を一体型に組み込んで、上記容器から薬液を含浸させるスポンジ様の薬液塗布部をイオン導入器の先端に設け、局所的に施術する構造も知られている。
【0006】
しかし、このような構造では、特に施術したい部分のみに施術することは可能だが、広範囲にわたって施術したい場合に均一に皮膚に施術し効果を得ることは困難である。また、装置を手に持ちながら施術する必要があるため、手が疲れて施術し続けるのが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−38660号公報
【特許文献2】特開平8−266328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
つまり、特許文献1に開示された構造であれば、薬液含浸シートは人の顔の形に完全に合う事が無く、効果が得られない部分が発生し、部分的に小型の装置で再度施術を行う必要がある。この施術は長時間使用すると皮膚のトラブルにつながる危険性もあり、想定時間(小型のイオン導入装置で、10分程度と言われている。)施術したところを再びすることはできない。ゆえに顔全体を短時間(例えば5分)で済まし、接触していなかった部分に短時間(例えば5分)の部分施術を追加するか、想定時間の少し前に顔全体を止め、あと少しだけ部分施術を追加するかであり、いずれにしても十分な施術ができない。
【0009】
また、別の装置部分を用いて部分施術をするという手間が必要となる。その部分施術を行う装置であるが、気になる部分だけ施術したくとも、顔は凸凹が激しいため、上手くできない。満足できるまで施術を行うと、かえって皮膚を傷つける可能性がある。
【0010】
また、うつ伏せ等の楽な姿勢で施術を行えることが望ましいが、既存の装置は顔を支える構造を持たず、小型の装置も自分で持って支える必要がある。また、既存の構造では、電極導子を施術中は絶えず握る、もしくは手指にベルトなどで固定する等して保持する必要があり、施術中のストレスが高くなる。
【0011】
また、薬液をできるだけ少なく使用したいという要求もある。
【0012】
そこで、本発明の主たる目的は、施術対象箇所が凹凸を有する顔等であっても、薬液を含浸する部分を施術対象箇所の皮膚に確実に接触させることができ、これにより、イオン導入法による施術を施術対象箇所全体に短時間で効果的に行うことができ、さらには、局所のみへの部分施術も可能とする美容装置を提供することにある。
【0013】
また、本発明の更なる目的の一つは、イオン導入法によるこのような効果的な施術を、楽な姿勢で、できるだけストレスなく、快適に行うことを可能とする美容装置を提供することにある。
【0014】
さらに、本発明の別の更なる目的は、イオン導入法による効果的な施術を行うに際して、薬液の使用量を少量に抑えることのできる美容装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の主たる目的を達成するために、本発明の美容装置は、
イオン導入法により薬液の有効成分を施術対象箇所の皮膚の深部に浸透させるための美容装置において、
使用時に上記皮膚に接触して配置される少なくとも1つの施術部材を備え、
上記施術部材は、
第1の電極を有し、上記薬液に電流を流すための導電体と、
上記薬液を含浸するために上記導電体の第1の側に位置し、上記第1の電極に対応する部分を除く部分の少なくとも一部が発泡性の低反発素材からなる薬液含浸部と
を備えたことを特徴としている。
【0016】
本発明によれば、薬液含浸部の少なくとも一部の部分(例えば、施術対象箇所における凹凸の有る箇所やその周辺部に対応する部分)を発泡性の低反発性の素材としたことにより、薬液含浸部は、薬液成分の保持に優れ、施術対象箇所が例えば顔のように凹凸を含んでいても、その形状に合わせて変形し、その変形が保持される。その結果、施術中、薬液含浸部を施術対象箇所全体に良好に密着させ続けることが可能となる。したがって、イオン導入法による施術を施術対象箇所全体に短時間で効果的に行うことができ、施術を再度行う必要性をなくすことが可能となる。
【0017】
本発明では、勿論、薬液含浸部の上記第1の電極に対応する部分を除く部分の全てを発泡性の低反発性の素材としてもよい。この場合は、薬液含浸部の形状を極めて良好に施術対象箇所の形状に合わせることが可能となるため、イオン導入法による施術効果を一層高めることが可能となる。
【0018】
本発明の一実施形態では、上記少なくとも1つの施術部材は、顔全体に施術を行うための第1の施術部材を含んでいる。
【0019】
この実施形態では、第1の施術部材の薬液含浸部が低反発素材からなリ、この低反発素材が顔の形状に合わせて凹むために、薬液含浸部を顔に沿った形状とすることができる。そして、このように顔に沿った形状となることで、薬液含浸部は顔全体に良好に密着する。この結果、イオン導入法による1回の施術で、したがって、短時間(たとえば2分程度)で、顔全体に薬液を良好に浸透させることが可能となる。
【0020】
本発明の一実施形態では、上記第1の施術部材における薬液含浸部は、上記発泡性の低反発素材が、少なくとも顔の凹凸部分またはその周辺に対応する箇所に、局所的に設けられている。ここで、顔の「凹凸部分またはその周辺」とは、例えば、鼻や頬、あるいは、顎周辺等である。
【0021】
顔全体にイオン導入を行うとき、一番密着性が難しいのが凹凸の激しい部分で、ここに低反発素材を用いることで密着力が良くなり、イオン導入できない部分を除くことができる。この実施形態では、上記低反発素材を、一番密着させるのが困難な顔の凹凸部分またはその周辺に対応する箇所に局所的に設けているため、低反発素材の使用量をできるだけ抑えつつ、薬液含浸部の皮膚への高い密着効果を維持することが可能である。
【0022】
また、凹凸部分だけでなく、顔でしわが気になるほうれい線や、額、目の周辺などに薄く低反発素材を設けてもよい。
【0023】
本発明の一実施形態では、上記少なくとも1つの施術部材は、さらに、顔の一部分のみに施術を行うための1種類以上の第2の施術部材を含み、上記第1の施術部材と上記第2の施術部材とを代替的に使用可能としている。
【0024】
この実施形態では、1種類以上の第2の施術部材を使用することで、気になる部分のみ重点的に施術を行うことができる。そして、第2の施術部材の薬液含浸部の低反発素材による高い密着性により、イオン導入法により薬液を良好に皮膚に浸透させることができる。なお、気になりやすい部分には、例えば鼻周辺の毛穴、口周り周辺のほうれい線、目周辺の小じわ、額や眉間のしわなどが挙げられる。
【0025】
本発明の一実施形態では、上記第1の施術部材は、上記導電体の上記第1の側とは反対の第2の側に、剛性を有するカバー部を備えている。
【0026】
この実施形態では、カバー部が剛性を備えていることにより、カバー部の外側から与えられた圧力を均質に薬液含浸部に伝えることが可能となる。したがって、少しの力で薬液含浸部を顔全体に接触させることができ、密着性ひいては顔全体の施術効果について、より確実性が増す。また、顔に部分的な強い圧力が伝わらないことで、快適な施術が可能となる。
【0027】
また、前述のさらなる目的の一つを達成するため、本発明の一実施形態では、上記第1の施術部材は、上記カバー部の上記導電体とは反対側に、ある面に対して上記カバー部を支持する支持部を備えている。
【0028】
この実施形態では、或る面(例えば、机の面)に対してカバー部が支持部によって支えられる。そして、このようにカバー部が支えられた状態で施術を行うと、うつ伏せ状態で施術を受けることが可能で、快適に施術を受けることが出来る。また、うつ伏せでの施術は、頭の自重で薬液含浸部を構成している低反発素材が圧縮され自然に顔の形状にフィットすることになるため、確実な施術が可能となる。
【0029】
また、本発明の一実施形態では、上記支持部が設置される上記面に対する上記カバー部の角度が調整可能となるよう、上記支持部の高さが変更可能である。
【0030】
この実施形態では、施術を行う場所に合わせたカバー部の角度設定が可能で、施術場所に合わせた角度での施術が可能となる。
【0031】
つまり、上記カバー部の角度が一定で、調整可能となっていなければ、カバー部の角度に合わせて顔を乗せるような施術となり、カバー部の置き場所によっては、不自然な姿勢で施術を行うこととなる場合がある。上記実施形態では、カバー部をその置き場所に応じて所望の角度に変更することができるため、このような不都合はなく、無理のない姿勢での快適な施術が可能となる。
【0032】
また、本発明の一実施形態では、上記第1の施術部材は、上記カバー部の上記導電体と反対側に、クッション性を有する部材を備えている。
【0033】
この場合も、うつ伏せ状態での施術が行われる。その際、このクッション性を有する部材によりある程度の角度や凸凹を吸収し、楽に施術をすることができる。
【0034】
上記クッション性を有する部材は、上記支持部材であってもよく、また、支持部材とは別の部材であってもよい。
【0035】
また、本発明の一実施形態では、上記第1の施術部材は、顔に接触しない面に、上記第1の電極の対極の第2の電極を備えている。
【0036】
通常、うつ伏せで寝るときなどは手を枕にしたり、枕の付近に手を持ってくるなど、手を顔の付近に持って来る事は違和感が無い。そこで、上記第1の施術部材の顔に接触しない面、たとえば、上記支持部あるいはクッション性を有する部材に第2の電極を備えることで、違和感のない姿勢で、負担無く、顔付近にある手で第2の電極に接触することができ、第2の電極を握ったり手指にベルトなどで固定する場合に比して、ストレスが緩和され、よりリラックスした状態での施術が可能となる。
【0037】
また、上述の別のさらなる目的を達成するため、本発明の一実施形態では、上記薬液含浸部は、皮膚に近い側にあって吸水性がある低反発素材と、皮膚から遠い側にあって防水処理を施された低反発素材とを備えている。
【0038】
この実施形態では、薬液含浸部をこのように2層構造とすることにより、吸水性がある低反発素材を薄いものとすることができる。したがって、薬液含浸部全体として吸収し得る薬液量が抑えられるため、薬液の使用量を必要最小限に抑えることができる。
【0039】
また、本発明の一実施形態では、上記薬液含浸部は、皮膚に近い側にあって吸水性がある低反発素材と、皮膚から遠い側にあって防水処理を施された高反発素材とを備えている。この構成は、施術部材が剛性を有するカバー部とこれを支持する支持部またはクッション性を有する部材とを備えている実施形態に適用されれば好適なものである。
【0040】
この実施形態では、前述の実施形態と同様に、薬液含浸部を2層構造とすることにより、吸水性がある低反発素材を薄いものとすることができる。したがって、薬液含浸部全体として吸収し得る薬液量が抑えられるため、薬液の使用量を必要最小限に抑えることができる。
【0041】
また、低反発素材は凹凸のある顔への密着性が高いが、荷重の変化に対してゆっくりと変形・回復するため、うつ伏せで施術中に顔の位置が移動した際に対応が遅れる恐れがある。しかし、皮膚から遠い側に高反発素材があることにより、素材の反発性で早い対応が可能になる。したがって、特にうつ伏せで施術する場合に、顔が動いても、薬液含浸部を顔からずれにくくすることができる。
【発明の効果】
【0042】
以上より明らかなように、本発明の美容装置は、施術部材における薬液含浸部の少なくとも一部の部分(例えば、施術対象箇所における凹凸の有る箇所やその周辺部に対応する部分)を発泡性の低反発性の素材としたことにより、薬液含浸部は、薬液成分の保持に優れ、施術対象箇所が例えば顔のように凹凸を含んでいても、その形状に合わせて変形し、その変形が保持される。その結果、施術中、薬液含浸部を施術対象箇所全体に確実に接触させ続けることが可能となる。したがって、イオン導入法による施術を施術対象箇所全体、例えば、顔全体、に短時間で効果的に行うことができ、施術を再度行う必要性をなくすことが可能となる。
【0043】
また、本発明の美容装置は、顔全体を施術するための第1の施術部材の他、顔の一部分のみに接触し施術を行う第2の施術部材を備え、上記第1の施術部材と上記第2の施術部材とを代替的に使用可能としていることにより、気になる部分のみ重点的に局所的に施術を行うことができる。
【0044】
また、本発明の美容装置は、顔全体を施術するための第1の施術部材が剛性を有するカバー部と、このカバー部を支持するための支持部やクッション性を有する部材とを備えたことにより、うつ伏せ状態での施術が可能となり、楽な姿勢で、快適な施術を実現できる。また、上記第1の施術部材が、顔に接触しない面に、第2の電極を備えたことにより、第2の電極を握ったり手指にベルトなどで固定する場合に比して、ストレスが緩和され、よりリラックスした状態での快適な施術が可能となる。
【0045】
さらに、本発明の美容装置は、薬液含浸部を、皮膚に近い側にあって吸水性がある低反発素材と、皮膚から遠い側にあって防水処理を施された低反発素材との2層構造とすることにより、含ませる薬液を少なくすることが出来る。また、施術部材が剛性を有するカバー部とこれを支持する支持部またはクッション性を有する部材とを備えている場合には、皮膚から遠い側にあって防水処理を施された素材を、低反発素材に代えて、高反発素材とすることにより、含ませる薬液を少なくすることが出来る効果に加えて、特にうつ伏せで施術する場合に顔から薬液含浸部をずれにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態における美容装置の基本構成を示す概略図である。
【図2】上記実施形態における美容装置の施術部材の主要部の概略図である。
【図3】図2に示す施術部材の一部を構成するカバー部の概略平面図である。
【図4】他の実施形態におけるカバー部の概略平面図である。
【図5】本発明の一実施形態における施術部材の一部を構成する薬液含浸部の一例を示す概略平面図である。
【図6】目の下付近を施術する局所用施術部材を接続した時の美容装置の動作例を示す説明図である。
【図7】鼻付近を施術する局所用施術部材を接続した時の美容装置の動作例を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る施術部材のカバー部と支持部(脚)を示す概略断面図である。
【図9】図8における支持部(脚)の長さが変更されることにより、カバー部の角度が変更された状態を示す図であり、(a)はカバー部の傾斜角度が大きい場合を、(b)はカバー部の傾斜角度が小さい場合を示す。
【図10】支持部(脚)の長さを変更する構造の一例を示す概略図である。
【図11】カバー部にドーナツ状のクッションを備えた施術部材の概略平面図である。
【図12】図12の概略断面図である。
【図13】内部にばねが組み込まれた支持部(脚)を示す図である。
【図14】クッション性を備えた支持部(脚)の先端にクッションを備えた施術部材の一例を示す図である。
【図15】カバー部に枕のようなクッションを備えた施術部材の概略平面図である。
【図16】カバー部にクッションが取り付けられた施術部材の概略断面図であり、(a)はクッションが変形する前の状態を、(b)はクッションが変形した状態を示す。
【図17】第2の電極としての身体用電極をクッションに設けた施術部材を示す概略図であり、(a)は身体用電極を中空の枕状のクッションに設けた例を、(b)は身体用電極をドーナツ状のクッションに設けた例を示す。
【図18】本発明の美容装置の施術部材におけるカバー部と薬液含浸部とカバー部施術対象である顔との位置関係を示す概略端面図であり、(a)は薬液含浸部と顔との間に紙シートが有る場合、(b)は薬液含浸部と顔との間に紙シートが無い場合を示す。
【図19】本発明の美容装置の施術部材における2層構造の薬液含浸部とカバー部と施術対象である顔との位置関係を示す概略端面図であり、(a)はカバー部に支持部(脚)が設けられていない場合、(b)はカバー部に支持部(脚)が設けられている場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面及び以下の説明において、同一または類似の基本的機能を有する部分及び部材は、形状や材質の異同に拘わらず、共通の参照番号を使用することとする。
【0048】
(第1の実施形態)
まず、本発明の美容装置の基本構成を図1に従って説明する。
【0049】
本発明の美容装置は、操作つまみ等を備えた電気回路部1と、複数(図では2個のみを示しているが、これ以上であってもよい。)の第1の電極2を有し電気経路(ワイヤ)3を介して電気回路部1に接続される施術部材5と、上記第1の電極2とは対極の電極であって、別系統の電気経路(ワイヤ)3を介して電気回路部1に接続される第2の電極6を有する。この第2の電極6は、手指7で握り易い形状を有しており、以下、身体用電極6と言う。
【0050】
電気回路部1は、微弱電流(数mA程度)を流す機能が備わっており、直流電流や交流電流、パルス電流などを流すことができる。また、電池などのバッテリー機能を備えており、交流電源から電源を取ることもできる。
【0051】
施術部材5は、顔全体に施術を行うための第1の施術部材の一例であり、薬液に電流を流すための導電体50と、導電体50の施術対象箇所に近い側(第1の側)に位置し、薬液を含浸するための薬液含浸部51と、導電体50の施術対象箇所から遠い側(第2の側)にあって、施術対象箇所である顔全体を覆うカバー部52(図3,4参照)を有する。そして、これら薬液含浸部51、導電体50、カバー部52は相互に付着しており、それぞれ、目、鼻、口に対応する位置に開口部53が設けられている。薬液含浸部51はカバー部52に付着している。なお、上記第1の電極2は導電体50に形成されており、以下、導電体用電極2と言う。
【0052】
上記薬液含浸部51は、導電体用電極2に対応する部分を除く部分の少なくとも一部が発泡性の低反発素材からなるものである。図1に示す例では、導電体用電極2に対応する部分を除く部分全体が発泡性の低反発素材からなり、それに応じて、導電体50も薬液含浸部51の外周部を除く略全領域に設けられている。
【0053】
顔に接触する部分に低反発素材を用いることで、低反発素材が顔の形状に合わせて変形するために、薬液含浸部51を顔に沿った形状にすることができる。顔に沿った形状となることでイオン導入できない部分を無とすることが可能となるため、顔全体のイオン導入が1回の施術で可能となる。これに対して、薬液含浸部51の材料が、通常のスポンジのように反発性があると、反発力によって、カバー部52が全体で持ち上げられたり、一部が持ち上がったりする。また、鼻のように凹凸が激しい部分の一部にイオン導入できない部分などができる可能性が高い。本発明においては、このような問題を回避することが可能となる。また、イオン導入時間について、通常小型の美容装置で施術を行う時間が10分程度と言われているが、小型の美容装置は部分的なイオン導入を顔全体に行うもので、本発明のように顔全体にイオン導入を行う場合は2分程度での施術も可能である。
【0054】
薬液含浸部51を構成している低反発素材は発泡性素材の形態をしている場合が多い。例えば、軟質ウレタンフォーム(参考文献1)、スチレン系エラストマーの架橋発泡体(参考文献2)、低反発弾性フォームと呼ばれ、一般的なウレタンフォームと同様に、ポリオールとポリイソシアネ―トを主成分として発泡剤、整泡剤、触媒等を撹拌混合して発泡する材料(参考文献3)が望ましい。いずれの材質もやわらかで感触が良く、伸縮性に優れ、伸びても破れにくく、通気性とクッション性を兼ねそろえ、柔軟性に優れている素材であるため、本発明の薬液含浸部51に適している。このような素材は低反発を特長としており、一度顔形状に押し付けると、電極部分2を含む導電体50やカバー部52の自重により、同じ形状を保つことができる。
【参考文献1】
【0055】
"低反発ウレタンフォーム UBZO" 富士ゴム産業株式会社、[online]、[2011年9月6日検索]、インターネット<URL:http://www.fujigomu.co.jp/simulation/items/u601ea.php>
【参考文献2】
【0056】
"低反発軟質発泡体ピタフォーム15" ゴム通信、[online]、[2011年9月6日検索]、インターネット<URL:http://gomu.jp/item/10705>
【参考文献3】
【0057】
"低反発弾性フォームとは" ブリジストン化成品株式会社、[online]、[2011年9月6日検索]、インターネット<URL:http://www.bridgestone-dcp.co.jp/qa02.html>
【0058】
薬液含浸部51は、特別に薬液含浸シートを設けなくても、顔に接触する部分に薬液を含ませることができる。
【0059】
導電体50は薬液含浸部1の顔に接触する部分に設けられていても良いが、カバー部52に設けておいて、薬液含浸部1に浸透した美容液に接触するようにしておいても良い。カバー部52のどの部分でも良いが、導電体50を確実に美容液に接触させるためには、薬液含浸部1を構成している低反発素材が薄い部分が望ましい。例えば、図1に示すように、頬に対応する位置にある低反発素材部分である。
【0060】
顔と導電体用電極2が接触する部分は、含浸性の高く電流の流れやすい材質(例えば不織布や綿など)が望ましく、導電体50は電気伝導率が高く、含浸させる薬液の変質を起こさない材質(例えばチタン・白金・カーボン等)が望ましい。
【0061】
上記カバー部52は絶縁素材で形成されており吸水性は無い。ゆえに、薬液含浸部51で吸水された薬液は、薬液含浸部51が付着しているカバー部52の反対面には染み出さない。このようなカバー部52にはたとえばシリコンゴムなどのゴム素材などが利用可能である。また、厚みは必ずしも薄いシート状である必要はなく、ある程度の厚みがある方が低反発素材を押しつけて低反発素材の形状を保つのに良い。
【0062】
上記施術部材5を構成する薬液含浸部51、導電体50、カバー部52をより顔の構造に近い形状に合わせるために、図2,3に示すように、これらの部分に、切り込み54を入れてもよい。
【0063】
上記構成の美容装置を使用する際には、導電体用電極2を電気経路3を介して電気回路部1に接続するとともに、身体用電極6を電気回路部1に接続し、使用者(被施術者)本人の手指7を身体用電極6に固定する。固定方法としては、ベルトなどで固定しても良いし、図1のように使用者本人が握っていても良い。図1において、手指7から延びている波線は身体を流れている回路を想定しており、上述のように接続すれば、使用者の体を抵抗体と考えた時に一つの回路が成立する。また、美容液を効率よく浸透させる電流の流し方は色々と考えられているが、人それぞれに合う方法があり、一概にどの方法が良いなどは言えない。一例として、身体用電極6にプラスの電荷がかかっていれば導電体50にはマイナスの電荷がかかっている。仮に今、身体用電極6にプラスの電荷がかかっていたとしたときに、顔付近をマクロな視点で見てみる。顔は、身体用電極6からのプラスの電荷を帯びている。一方、紙シートに含まれた美容液は、導電体50からのマイナスの電荷を帯びている。この双極の電荷がお互い引き合って美容液が皮膚に深く浸透していく。
【0064】
上記構成の美容装置は、顔全体にイオン導入を行うことができ、非常に便利である。図1に示した美容装置は、薬液含浸部51の、導電体用電極2を除く部分全てを発泡性の低反発性の素材としたことにより、薬液含浸部51は、薬液成分の保持に優れ、施術対象箇所である凹凸部分の多い顔の形状に合わせて変形し、その変形が保持される。その結果、顔の施術中、薬液含浸部51を顔全体に良好に密着させ続けることが可能となる。したがって、イオン導入法による1回の施術を行うだけで、顔全体に薬液を良好に浸透させることが可能となる。つまり、イオン導入法による施術を顔全体に短時間(たとえば2分程度)で効果的に行うことができ、施術を再度行う必要性をなくすことが可能となる。したがって、顔の皮膚のトラブルの発生を回避することが可能となる。
【0065】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、施術部材5の薬液含浸部51は、導電体用電極2を除く全領域に低反発素材を備えており、顔全体の形状に合わせて形が作られるようになっている。これに対して、第2の実施形態では、できるだけこの低反発素材を用いる量を減らすために、顔の中での凹凸が大きな鼻や頬、顎周辺に対応する箇所(局部)511に局所的に低反発素材を用いている。
【0066】
顔全体にイオン導入を行うとき、一番密着性が難しいのが凹凸の激しい部分で、ここに低反発素材を用いることで密着力が良くなりイオン導入できない部分を除くことができる。この第2の実施形態では、上記薬液含浸部51における低反発素材を、一番密着させるのが困難な顔の凹凸部分またはその周辺に対応する箇所511に局所的に設けているため、低反発素材の使用量をできるだけ抑えつつ、薬液含浸部の皮膚への高い密着効果を維持することが可能である。
【0067】
また、凹凸部分だけでなく、顔でしわが気になるほうれい線や、額、目の周辺などに対応する箇所511にも薄く低反発素材を設けている。
【0068】
第2の実施形態においては、薬液含浸部51の材料として、低反発素材と反発性のスポンジなどを組み合わせることができる。反発性素材は反発力でカバー部52を持ち上げるなどのおそれがあるが、使用する量を少なくしてやれば、反発力よりもカバー部52の重さなどのために、変形したままの状態を保つことができる。
【0069】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る美容装置は、第1の実施形態に係る美容装置における顔全体を施術するための第1の施術部材としての施術部材5(図1〜3参照)に加えて、顔の一部分のみに接触し施術を行う第2の施術部材としての局所用施術部材を1種類以上備え、顔全体に施術を行う施術部材5とつなぎ換えて使用する事を特長とする美容装置である。ここでは、前述した施術部材5についての説明は省略する。
【0070】
この美容装置は顔の一部を施術するものであるが、特許文献2に開示されたような従来の小型美容装置とは異なる。従来の小型美容装置は顔の形状に合わせて美容装置を動かし、施術するもので施術面もほぼ平らな面となっている。このような施術は美容装置を動かすのが大変であるのと、顔の凹凸の細かい部分に施術面を合わせ、確実に施術をするのは難しい。これに対して、第3の実施形態に係る美容装置は、気になりやすい部分の周辺に施術を行うもので、例えば鼻周辺の毛穴、口周り周辺のほうれい線、目周辺の小じわ、額や眉間のしわなどそれぞれに施術を行うことができる。
【0071】
図6と図7はそれぞれ、目の下付近や鼻付近を施術する局所用施術部材5aを接続した時の美容装置の動作例を示している。
【0072】
局所用施術部材5aの構成は、基本的に、図1に示す施術部材5の構成と同じであり、薬液含浸部51と、1以上の導電体用電極2を含む導電体50と、カバー部52(図6,7には示さず。)とを備えている。これらの部分についての詳細な説明は、上記第1の実施形態における説明を適宜適用するものとし、ここでは省略する。
【0073】
局所用施術部材5aは、施術部材5とは別体の部品として備えていてもよいし、施術部材5を分割可能に構成し、分割された部分を局所用施術部材5aとして使用してもよい。
【0074】
各局所用施術部材5aにおいて、図6,7からは明らかではないが、薬液含浸部51の寸法は、カバー部52よりも少し大きくて、薬液含浸部51の外周部がカバー部52のエッジから僅かにはみ出すようになっている。これにより、局所用施術部材5aを接続したときに、薬液含浸部51に隙間が生じないような構造となっている。
【0075】
施術部材5が分割可能な場合は、電気回路部1に接続された電気経路3の端末をそれぞれの局所用施術部材5aの導電体50に接続することで美容装置を構成する。局所用施術部材5aの部品を別途備えている場合は、電気回路部1に接続された電気経路3の端末をそれぞれの局所用施術部材5aの導電体50に接続してもいいし、局所用施術部材5aの導電体50に接続された電気経路3の端末を電気回路部1につなぎ変えても良い。
【0076】
この第3の実施形態においては、局所用施術部材5aを備えることで、気になる部分だけを施術したいときに、気になる部分を確実に施術する事が可能となる。
【0077】
ここで、図5は上記第2の実施形態に関して薬液含浸部51の低反発部材が設けられることが実際に必要と思われる局部511を示したものであるが、便宜上この図を借用して説明すると、この第3の実施形態では、これら局部511のみを施術するための複数種類の局所用施術部材5aが用意される。したがって、これらの局所用施術部材5aを用いることで、図5に示すような気になる部分だけに集中した施術が可能である。施術方法は各部分のみ施術したり、複数個所を同時に施術することも可能である。複数個所行うときは、局部511それぞれに電気経路3が接続できるようになっている。また、電気回路部1も複数の電気経路3を接続可能な構造である。
【0078】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、上記第1〜第3の実施形態とは、上記第1〜3の実施形態の施術部材5のカバー部52がシリコンゴム等の軟質材料からなるのに対して、第4の実施形態ではカバー部52が樹脂などの固い素材で構成されて剛性を有する点において、異なるものである。以下、軟質のカバー部52と区別をつけるために、第4の実施形態における硬質の(つまり、剛性を有する)カバー部52を、便宜上、樹脂カバー52と称する。但し、この名称は、硬質のカバー部52の材料を限定するものではない。他の構成は、第1の実施形態または第3の実施形態と基本的に同じであるので、説明を省略する。
【0079】
このようにカバー部52が硬質な樹脂カバー52で構成されることで、樹脂カバー52の薬液含浸部51が備わっていない側、いわゆる外側から与えられた圧力を均質に薬液含浸部51に伝えることが可能となる。したがって、少しの力で薬液含浸部を顔全体に接触させることができ、密着性ひいては顔全体の施術効果について、より確実性が増す。これに対して、カバー部52が軟質なものであれば、いわゆる外側から与えられた圧力は部分的に伝わる。例えば、指1本で押さえると、その押した部分もしくはその周辺だけに圧力は伝わり、遠ざかるほど圧力は伝わらない。ところが、樹脂カバー52の場合、指1本で圧力を伝えると全体に均質に圧力を伝えることができる。実際には指1本であればバランスを取ることが難しいため、複数個所から圧力を与える事が望ましい。このように、均質な圧力が与えられるだけでなく、顔に部分的な強い圧力が伝わらないことで、快適な施術が可能となる。この樹脂カバー52は例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、PS(ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)など、剛性・強度・加工性に優れたものが望ましい。また、樹脂と金属の積層板のように樹脂に金属を挟み込んだ素材や、金属の片側にシートをラミネートしたものであってもよく、塗装などのように片側に絶縁処理がされていれば金属素材を用いても問題ない。片側が金属であれば導電体50の役割を金属部分で担うことができる。
【0080】
図4は第4の実施形態の樹脂カバー52の概略図で、図2に示す軟質のカバー部52には顔の形状に合わせるために切り込みが必要であったが、この樹脂カバー52は樹脂カバー52自体がお面のように立体的な作りをしているために切り込み等は必ずしも必要ではない。
【0081】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る美容装置の要部を図8に示す。この第5の実施形態は、上記第4の実施形態の美容装置において、樹脂カバー52の薬液含浸部51が備わっていない側、いわゆる外側に、樹脂カバー52を支える支持部としての脚56を設けたことを特長とする。以下、第4の実施形態と異なる構成を重点的に説明する。
【0082】
この脚56は樹脂カバー52を支えることを目的に備えているのであって、樹脂カバー52の外側にテーブルの脚のように4ヶ所以上設けても良いし、ドーナツ状の脚であっても良い。また、脚56は樹脂カバー52に一体に接続されていても良いし、取り外し可能であってもよい。
【0083】
このように脚56を設けることで、樹脂カバー52を支えることが可能となる。このように支えられた状態で施術を行うと、机などの面上にうつ伏せ状態で施術を受けることが可能で、快適に施術を受けることが出来る。また、うつ伏せの施術は、頭の自重で薬液含浸部51を構成している低反発素材が圧縮され自然に顔の形状にフィットするため、確実な施術が可能となる。
【0084】
なお、樹脂カバー52は通常、立体形状を有するが、図8の概略断面図(ハッチング省略)では、簡略化するために平板1枚で図示している。
【0085】
(第6の実施形態)
第6の実施形態は、上記第5の実施形態に係る美容装置において、脚56の長さ(高さ)を変更可能つまり伸縮可能とし、もって、設置面に対する樹脂カバー52の角度が任意の角度に調整可能となるようにしたものである。
【0086】
図9は第6の実施形態に係る美容装置の要部(図8に示した部分に対応する部分)の概略断面図(ハッチング省略)で、同図(a)(b)に示すように、脚56の一方の側の長さを変更して、設置面に対する樹脂カバー52の角度を自由に変更することができる。
【0087】
このように樹脂カバー52の角度が任意の角度に変更できるため、使用者にとって快適な設定角度でうつ伏せに施術することが可能となる。これに対して、脚56の長さを伸縮可能とできない場合は、樹脂カバー52の置き場所に拘わらず、樹脂カバー52の角度に合わせて顔をのせるような施術となり、不自然な姿勢で施術を行うこととなる場合がある。
【0088】
図10は脚56の長さを変更する構造の一例を示す。この例においては、脚56は、複数のピン挿入口Cを等間隔に有する下部Aと、この下部を移動可能に収納する筒状の上部Bとを備え、ピンDを差す位置によって長さを変更することができる。
【0089】
脚56の長さを変更する構造は色々あり、どのような構造であってもよい。
【0090】
(第7の実施形態)
第7の実施形態に係る美容装置は、上記第5の実施形態に係る美容装置(施術部材5が樹脂カバー52を備えたもの)において、上記樹脂カバー52の導電体50とは反対側に、クッション性を有する部材を備えたものである。以下、図11〜図16を参照して、上記第5の実施形態と異なる点を重点的に説明する。
【0091】
図11は、クッション性を有する部材として、樹脂カバー52の外側(顔と反対側)面の外周部に取り付けられた中空または中実のドーナツ状のクッション57を示している。図12はその概略断面図である。
【0092】
図13は、樹脂カバー52を支持するための脚56(第5,6の実施形態参照)がクッション性を備えたものの一例を示している。この脚56はバネを内蔵しており、脚56自体が上下左右にある程度動くことができる。このようなバネに代えて、脚56をゴムなどで構成することで、脚56自体にクッション性を持たせることもできる。脚56にクッション性があるため、土台の小さな凸凹を吸収する事ができ、脚56のガタつき防止となる。
【0093】
ある程度の角度の調整も可能となる樹脂カバー52に脚56を設けた構造は、樹脂カバー52に顔を載せた状態でうつ伏せに施術を行う。非常に楽な施術を行う事ができるが、うつ伏せであることで、敏感な顔に振動や凹凸によるガタつきを感じやすく、不快感を覚える。本実施形態のように脚56にクッション性を備え、使用者が施術し易い状態を保ち、土台(設置面)の凹凸に影響されないことで、より快適な施術が可能となる。
【0094】
図14は、脚56自体がクッション性を有し、その脚56の先端にクッション57をさらに備えたものを示している。具体的には、脚56は、蛇腹構造を備えており、ある程度自由に上下左右の調整が可能となる。この構成は、クッション性がある脚56で顔の角度などを調整でき、クッション57で土台の凹凸を吸収することができる。
【0095】
また、図15に示すように、施術部材5は樹脂カバー52の外側に、枕のようなクッション57を備えていても良い。ただし、この場合には、クッション57の一部に穴を設けるなど、呼吸が可能なように構成されている。
【0096】
図16は、枕状のクッション57もしくは例えばゴム素材を円筒状にしたクッション57の断面図で、中空状のクッション57の中に手を入れられたりする。また、クッション57により、施術を好みの角度ですることができる。
【0097】
(第8の実施形態)
第8の実施形態は、樹脂カバー52の角度を変更可能とした第6または第7の実施形態において、上記第1の施術部材である顔全体用の施術部材5が、顔に接触しない面に、身体用電極6を備えたものである。
【0098】
第6または第7の実施形態では、図1に示す第1の実施形態と同様、身体用電極6を手指7で握ったり、その手指7にベルトなどで身体用電極6を固定するようにするものである。このような身体用電極6の固定方法では、施術中、身体用電極6をずっと握り続けるか、ベルトの違和感があり、これが、ストレスとなり得る。通常、うつ伏せで寝るときなどは手を枕にしたり、枕の付近に手を持ってくるなど、手を顔の付近に持って来る事は違和感が無い。そこで、この第8の実施形態では、うつ伏せに施術するものの脚56やクッション57などに身体用電極6を備えることで、顔付近にある手で身体用電極6に接触することができるようにしている。図を説明しながら使用形態の説明を行う。
【0099】
図17(a)は中空の枕状のクッション57を備えた施術部材5の要部の概略断面図で、クッション57内に手を中に入れられるようになっている。クッション57は、その手を置く付近に身体用電極6を備えるので、そこに手を置いておくだけで身体用電極6と接触することができる。また、図17(b)はドーナツ状のクッション57を備えた施術部材5の要部の概略断面図で、クッション57の一部に身体用電極6を備えている。クッション57が柔らかければそのままでも良いが、少し固ければ身体用電極6を備えている部分は手指7や手首が入るように窪ませばよい。この身体用電極6の部分に手指7や手首を差し込むことで、身体用電極6と接触できる。
【0100】
このように、この第8の実施形態では、違和感のない姿勢で、負担無く身体用電極6との接触が可能となり、ストレスなく、よりリラックスした状態での施術が可能となる。
【0101】
(第9の実施形態)
図18,19は本発明の施術部材5,5aにおける薬液含浸部51とカバー部52の位置関係の具体例を示す断面図である。
【0102】
図18(a)に示す例では、本発明の美容装置より詳しくは施術部材5,5aの基台となるカバー部52があり、その上に薬液含浸部51、紙シートSが取り付けられている。薬液含浸部51は低反発素材であり、顔に密着させるときに濡れた低反発素材を顔に押しつけると、導電体50から水分を介して皮膚に薬液を浸透させるようになっている。したがって、カバー部52が導電性を有していると、カバー部52に手を押しつけたとき、回路がショートカットして顔に薬液が浸透しないため、このような事態を防止するために、カバー部52は絶縁性が必要となる。基本はこのカバー部52に導電体50を備えている。絶縁性のカバー部52がある上で、薬液含浸部51の顔に近い部分に導電体を備え、紙シートSがあると薬液が少なくて済むという利点がある。
【0103】
図18(b)のように紙シートSはなくても良く、その場合は低反発素材の薬液含浸部51に美容液を直接含ませて顔に密着させる。
【0104】
図19(a)のように、低反発素材で構成されている薬液含浸部51を2層構造とし、カバー部52に近い側の低反発素材51aには防水処理を行い、顔に近い側の低反発素材51bに吸水性の高い素材を薄く備えることにより、紙シートSがなくても含ませる薬液を少なくすることができる。防水処理は例えば、防水塗料もしくは撥水塗料でコーティング処理をしたり、ビニールなど水を通さない材料を被せたりすることが考えられる。吸水性の高い素材としては、例えば、高吸水ウレタン樹脂などを使用するのが望ましい。
【0105】
図8〜17に示すように、施術部材5が樹脂カバー52を支持する脚(支持部)56やクッション57を備え、うつ伏せで施術可能な美容装置においては、図19(b)に示すように、薬液含浸部51が、カバー部52に近い側に防水処理を行った高反発素材51cを備え、顔に近い側には吸水性の高い低反発素材51bを備えることにより、特にうつ伏せで施術する場合に、顔から施術部材がずれにくい。高反発素材としては、例えば、発泡性のゴム素材など反発性があっても軟らかい感触のものや、高密度ウレタンなど、高反発・高弾性・硬めのウレタンスポンジでもよく、低反発でない軟質ウレタン・普通のウレタンスポンジでもよい。
【0106】
顔に近い側には吸水性の高い低反発素材51bを備えることで、顔の凹凸に関係なく顔全体に密着する。但し、うつ伏せで施術を行うとき、若干体や顔を動かしてしまうことがある。低反発素材は凹凸のある顔に密着性が高いが、荷重の変化に対してゆっくりと変形・回復するため、うつ伏せで施術中に顔の位置が移動した際に対応が遅れる恐れがある。しかし、カバー部52に近い側に防水処理を行った高反発素材51cを備えることにより、高反発素材51cの弾力性が高いため、顔がずれた時の動きに対し、素材の反発性で早い対応が可能になる。
【0107】
また、うつ伏せで施術する場合においては、顔の自重で自然と薬液含浸部側へ押しつけていく状態になるため、吸水性の高い素材51bに高反発性の材料を使用してもかまわない。
【0108】
以上説明した仕様により、本発明の課題を解決できる美容装置を実現できる。
【0109】
上述の種々の実施形態は、限定的なものでなく、形状、材料等を種々変更できるものである。また、上述の種々の実施形態は、顔を施術対象とするものであったが、本発明の美容装置は、顔以外、例えば、手の甲や、脚、足などにも使用して美容効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0110】
1 電気回路部
2 導電体用電極
3 電気経路
5 施術部材
5a 局所用施術部材
50 導電体
51 薬液含浸部
511 局部
51a 薬液含浸部51の、カバー部に近い側(低反発素材)
51b 薬液含浸部51の、顔に近い側
51c 薬液含浸部51の、カバー部に近い側(高反発素材)
52 カバー部
53 開口部
54 切り込み
56 脚
57 クッション
6 身体用電極
7 手指
A 脚56の下部
B 脚56の上部
C 下部Aのピン挿入口
D ピン
S 紙シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン導入法により、例えば化粧水等の水溶液(以下、「薬液」と言う。)の有効成分を顔等の施術対象箇所の皮膚の深部に浸透させるための美容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン導入法は、人体に電流が流れることを利用した美容方法の一種で、薬液を皮膚表面に塗布し、陽極(+極)と陰極(−極)のいずれか一方の電極導子を上記水溶液に接触させるとともに、他方の電極導子を離間させた位置の皮膚(例えば手指)に接触させ、両電極導子間に微弱な電流(例えば数mAの直流)を数分間流すようにして、薬液を皮膚の深部にまで浸透させるものである。イオン導入法は、医学的にも効果が認められている美容方法である。
【0003】
このようなイオン導入法を実現する従来の美容装置として、特許文献1に示すように、金・銀・カーボン等の導電体を不織布・紙・コットン等から成る薬液(薬剤)含浸シートに接着、溶着、圧着等の方法で張り付け、それを顔に密着させる構造のものが知られている。
【0004】
この様な構造の場合、電極が確実に顔に接触もしくは導通しているかが不確実である。また、顔には凹凸があり人それぞれその凹凸具合が異なる。その凹凸具合によっては薬液含侵シート単体や導電体と接触した薬液含侵シートが顔から浮いていたり、接触していない部分が発生していたりする。この様な場合、接触していない部分の施術をあきらめるか、別の装置を使用して接触していない部分をさらに施術する必要がある。
【0005】
また、特許文献2に示すように、薬液入りの容器とイオン導入装置部分(電気回路・電池等)を一体型に組み込んで、上記容器から薬液を含浸させるスポンジ様の薬液塗布部をイオン導入器の先端に設け、局所的に施術する構造も知られている。
【0006】
しかし、このような構造では、特に施術したい部分のみに施術することは可能だが、広範囲にわたって施術したい場合に均一に皮膚に施術し効果を得ることは困難である。また、装置を手に持ちながら施術する必要があるため、手が疲れて施術し続けるのが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−38660号公報
【特許文献2】特開平8−266328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
つまり、特許文献1に開示された構造であれば、薬液含浸シートは人の顔の形に完全に合う事が無く、効果が得られない部分が発生し、部分的に小型の装置で再度施術を行う必要がある。この施術は長時間使用すると皮膚のトラブルにつながる危険性もあり、想定時間(小型のイオン導入装置で、10分程度と言われている。)施術したところを再びすることはできない。ゆえに顔全体を短時間(例えば5分)で済まし、接触していなかった部分に短時間(例えば5分)の部分施術を追加するか、想定時間の少し前に顔全体を止め、あと少しだけ部分施術を追加するかであり、いずれにしても十分な施術ができない。
【0009】
また、別の装置部分を用いて部分施術をするという手間が必要となる。その部分施術を行う装置であるが、気になる部分だけ施術したくとも、顔は凸凹が激しいため、上手くできない。満足できるまで施術を行うと、かえって皮膚を傷つける可能性がある。
【0010】
また、うつ伏せ等の楽な姿勢で施術を行えることが望ましいが、既存の装置は顔を支える構造を持たず、小型の装置も自分で持って支える必要がある。また、既存の構造では、電極導子を施術中は絶えず握る、もしくは手指にベルトなどで固定する等して保持する必要があり、施術中のストレスが高くなる。
【0011】
また、薬液をできるだけ少なく使用したいという要求もある。
【0012】
そこで、本発明の主たる目的は、施術対象箇所が凹凸を有する顔等であっても、薬液を含浸する部分を施術対象箇所の皮膚に確実に接触させることができ、これにより、イオン導入法による施術を施術対象箇所全体に短時間で効果的に行うことができ、さらには、局所のみへの部分施術も可能とする美容装置を提供することにある。
【0013】
また、本発明の更なる目的の一つは、イオン導入法によるこのような効果的な施術を、楽な姿勢で、できるだけストレスなく、快適に行うことを可能とする美容装置を提供することにある。
【0014】
さらに、本発明の別の更なる目的は、イオン導入法による効果的な施術を行うに際して、薬液の使用量を少量に抑えることのできる美容装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の主たる目的を達成するために、本発明の美容装置は、
イオン導入法により薬液の有効成分を施術対象箇所の皮膚の深部に浸透させるための美容装置において、
使用時に上記皮膚に接触して配置される少なくとも1つの施術部材を備え、
上記施術部材は、
第1の電極を有し、上記薬液に電流を流すための導電体と、
上記薬液を含浸するために上記導電体の第1の側に位置し、上記第1の電極に対応する部分を除く部分の少なくとも一部が発泡性の低反発素材からなる薬液含浸部と
を備えたことを特徴としている。
【0016】
本発明によれば、薬液含浸部の少なくとも一部の部分(例えば、施術対象箇所における凹凸の有る箇所やその周辺部に対応する部分)を発泡性の低反発性の素材としたことにより、薬液含浸部は、薬液成分の保持に優れ、施術対象箇所が例えば顔のように凹凸を含んでいても、その形状に合わせて変形し、その変形が保持される。その結果、施術中、薬液含浸部を施術対象箇所全体に良好に密着させ続けることが可能となる。したがって、イオン導入法による施術を施術対象箇所全体に短時間で効果的に行うことができ、施術を再度行う必要性をなくすことが可能となる。
【0017】
本発明では、勿論、薬液含浸部の上記第1の電極に対応する部分を除く部分の全てを発泡性の低反発性の素材としてもよい。この場合は、薬液含浸部の形状を極めて良好に施術対象箇所の形状に合わせることが可能となるため、イオン導入法による施術効果を一層高めることが可能となる。
【0018】
本発明の一実施形態では、上記少なくとも1つの施術部材は、顔全体に施術を行うための第1の施術部材を含んでいる。
【0019】
この実施形態では、第1の施術部材の薬液含浸部が低反発素材からなリ、この低反発素材が顔の形状に合わせて凹むために、薬液含浸部を顔に沿った形状とすることができる。そして、このように顔に沿った形状となることで、薬液含浸部は顔全体に良好に密着する。この結果、イオン導入法による1回の施術で、したがって、短時間(たとえば2分程度)で、顔全体に薬液を良好に浸透させることが可能となる。
【0020】
本発明の一実施形態では、上記第1の施術部材における薬液含浸部は、上記発泡性の低反発素材が、少なくとも顔の凹凸部分またはその周辺に対応する箇所に、局所的に設けられている。ここで、顔の「凹凸部分またはその周辺」とは、例えば、鼻や頬、あるいは、顎周辺等である。
【0021】
顔全体にイオン導入を行うとき、一番密着性が難しいのが凹凸の激しい部分で、ここに低反発素材を用いることで密着力が良くなり、イオン導入できない部分を除くことができる。この実施形態では、上記低反発素材を、一番密着させるのが困難な顔の凹凸部分またはその周辺に対応する箇所に局所的に設けているため、低反発素材の使用量をできるだけ抑えつつ、薬液含浸部の皮膚への高い密着効果を維持することが可能である。
【0022】
また、凹凸部分だけでなく、顔でしわが気になるほうれい線や、額、目の周辺などに薄く低反発素材を設けてもよい。
【0023】
本発明の一実施形態では、上記少なくとも1つの施術部材は、さらに、顔の一部分のみに施術を行うための1種類以上の第2の施術部材を含み、上記第1の施術部材と上記第2の施術部材とを代替的に使用可能としている。
【0024】
この実施形態では、1種類以上の第2の施術部材を使用することで、気になる部分のみ重点的に施術を行うことができる。そして、第2の施術部材の薬液含浸部の低反発素材による高い密着性により、イオン導入法により薬液を良好に皮膚に浸透させることができる。なお、気になりやすい部分には、例えば鼻周辺の毛穴、口周り周辺のほうれい線、目周辺の小じわ、額や眉間のしわなどが挙げられる。
【0025】
本発明の一実施形態では、上記第1の施術部材は、上記導電体の上記第1の側とは反対の第2の側に、剛性を有するカバー部を備えている。
【0026】
この実施形態では、カバー部が剛性を備えていることにより、カバー部の外側から与えられた圧力を均質に薬液含浸部に伝えることが可能となる。したがって、少しの力で薬液含浸部を顔全体に接触させることができ、密着性ひいては顔全体の施術効果について、より確実性が増す。また、顔に部分的な強い圧力が伝わらないことで、快適な施術が可能となる。
【0027】
また、前述のさらなる目的の一つを達成するため、本発明の一実施形態では、上記第1の施術部材は、上記カバー部の上記導電体とは反対側に、ある面に対して上記カバー部を支持する支持部を備えている。
【0028】
この実施形態では、或る面(例えば、机の面)に対してカバー部が支持部によって支えられる。そして、このようにカバー部が支えられた状態で施術を行うと、うつ伏せ状態で施術を受けることが可能で、快適に施術を受けることが出来る。また、うつ伏せでの施術は、頭の自重で薬液含浸部を構成している低反発素材が圧縮され自然に顔の形状にフィットすることになるため、確実な施術が可能となる。
【0029】
また、本発明の一実施形態では、上記支持部が設置される上記面に対する上記カバー部の角度が調整可能となるよう、上記支持部の高さが変更可能である。
【0030】
この実施形態では、施術を行う場所に合わせたカバー部の角度設定が可能で、施術場所に合わせた角度での施術が可能となる。
【0031】
つまり、上記カバー部の角度が一定で、調整可能となっていなければ、カバー部の角度に合わせて顔を乗せるような施術となり、カバー部の置き場所によっては、不自然な姿勢で施術を行うこととなる場合がある。上記実施形態では、カバー部をその置き場所に応じて所望の角度に変更することができるため、このような不都合はなく、無理のない姿勢での快適な施術が可能となる。
【0032】
また、本発明の一実施形態では、上記第1の施術部材は、上記カバー部の上記導電体と反対側に、クッション性を有する部材を備えている。
【0033】
この場合も、うつ伏せ状態での施術が行われる。その際、このクッション性を有する部材によりある程度の角度や凸凹を吸収し、楽に施術をすることができる。
【0034】
上記クッション性を有する部材は、上記支持部材であってもよく、また、支持部材とは別の部材であってもよい。
【0035】
また、本発明の一実施形態では、上記第1の施術部材は、顔に接触しない面に、上記第1の電極の対極の第2の電極を備えている。
【0036】
通常、うつ伏せで寝るときなどは手を枕にしたり、枕の付近に手を持ってくるなど、手を顔の付近に持って来る事は違和感が無い。そこで、上記第1の施術部材の顔に接触しない面、たとえば、上記支持部あるいはクッション性を有する部材に第2の電極を備えることで、違和感のない姿勢で、負担無く、顔付近にある手で第2の電極に接触することができ、第2の電極を握ったり手指にベルトなどで固定する場合に比して、ストレスが緩和され、よりリラックスした状態での施術が可能となる。
【0037】
また、上述の別のさらなる目的を達成するため、本発明の一実施形態では、上記薬液含浸部は、皮膚に近い側にあって吸水性がある低反発素材と、皮膚から遠い側にあって防水処理を施された低反発素材とを備えている。
【0038】
この実施形態では、薬液含浸部をこのように2層構造とすることにより、吸水性がある低反発素材を薄いものとすることができる。したがって、薬液含浸部全体として吸収し得る薬液量が抑えられるため、薬液の使用量を必要最小限に抑えることができる。
【0039】
また、本発明の一実施形態では、上記薬液含浸部は、皮膚に近い側にあって吸水性がある低反発素材と、皮膚から遠い側にあって防水処理を施された高反発素材とを備えている。この構成は、施術部材が剛性を有するカバー部とこれを支持する支持部またはクッション性を有する部材とを備えている実施形態に適用されれば好適なものである。
【0040】
この実施形態では、前述の実施形態と同様に、薬液含浸部を2層構造とすることにより、吸水性がある低反発素材を薄いものとすることができる。したがって、薬液含浸部全体として吸収し得る薬液量が抑えられるため、薬液の使用量を必要最小限に抑えることができる。
【0041】
また、低反発素材は凹凸のある顔への密着性が高いが、荷重の変化に対してゆっくりと変形・回復するため、うつ伏せで施術中に顔の位置が移動した際に対応が遅れる恐れがある。しかし、皮膚から遠い側に高反発素材があることにより、素材の反発性で早い対応が可能になる。したがって、特にうつ伏せで施術する場合に、顔が動いても、薬液含浸部を顔からずれにくくすることができる。
【発明の効果】
【0042】
以上より明らかなように、本発明の美容装置は、施術部材における薬液含浸部の少なくとも一部の部分(例えば、施術対象箇所における凹凸の有る箇所やその周辺部に対応する部分)を発泡性の低反発性の素材としたことにより、薬液含浸部は、薬液成分の保持に優れ、施術対象箇所が例えば顔のように凹凸を含んでいても、その形状に合わせて変形し、その変形が保持される。その結果、施術中、薬液含浸部を施術対象箇所全体に確実に接触させ続けることが可能となる。したがって、イオン導入法による施術を施術対象箇所全体、例えば、顔全体、に短時間で効果的に行うことができ、施術を再度行う必要性をなくすことが可能となる。
【0043】
また、本発明の美容装置は、顔全体を施術するための第1の施術部材の他、顔の一部分のみに接触し施術を行う第2の施術部材を備え、上記第1の施術部材と上記第2の施術部材とを代替的に使用可能としていることにより、気になる部分のみ重点的に局所的に施術を行うことができる。
【0044】
また、本発明の美容装置は、顔全体を施術するための第1の施術部材が剛性を有するカバー部と、このカバー部を支持するための支持部やクッション性を有する部材とを備えたことにより、うつ伏せ状態での施術が可能となり、楽な姿勢で、快適な施術を実現できる。また、上記第1の施術部材が、顔に接触しない面に、第2の電極を備えたことにより、第2の電極を握ったり手指にベルトなどで固定する場合に比して、ストレスが緩和され、よりリラックスした状態での快適な施術が可能となる。
【0045】
さらに、本発明の美容装置は、薬液含浸部を、皮膚に近い側にあって吸水性がある低反発素材と、皮膚から遠い側にあって防水処理を施された低反発素材との2層構造とすることにより、含ませる薬液を少なくすることが出来る。また、施術部材が剛性を有するカバー部とこれを支持する支持部またはクッション性を有する部材とを備えている場合には、皮膚から遠い側にあって防水処理を施された素材を、低反発素材に代えて、高反発素材とすることにより、含ませる薬液を少なくすることが出来る効果に加えて、特にうつ伏せで施術する場合に顔から薬液含浸部をずれにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態における美容装置の基本構成を示す概略図である。
【図2】上記実施形態における美容装置の施術部材の主要部の概略図である。
【図3】図2に示す施術部材の一部を構成するカバー部の概略平面図である。
【図4】他の実施形態におけるカバー部の概略平面図である。
【図5】本発明の一実施形態における施術部材の一部を構成する薬液含浸部の一例を示す概略平面図である。
【図6】目の下付近を施術する局所用施術部材を接続した時の美容装置の動作例を示す説明図である。
【図7】鼻付近を施術する局所用施術部材を接続した時の美容装置の動作例を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る施術部材のカバー部と支持部(脚)を示す概略断面図である。
【図9】図8における支持部(脚)の長さが変更されることにより、カバー部の角度が変更された状態を示す図であり、(a)はカバー部の傾斜角度が大きい場合を、(b)はカバー部の傾斜角度が小さい場合を示す。
【図10】支持部(脚)の長さを変更する構造の一例を示す概略図である。
【図11】カバー部にドーナツ状のクッションを備えた施術部材の概略平面図である。
【図12】図12の概略断面図である。
【図13】内部にばねが組み込まれた支持部(脚)を示す図である。
【図14】クッション性を備えた支持部(脚)の先端にクッションを備えた施術部材の一例を示す図である。
【図15】カバー部に枕のようなクッションを備えた施術部材の概略平面図である。
【図16】カバー部にクッションが取り付けられた施術部材の概略断面図であり、(a)はクッションが変形する前の状態を、(b)はクッションが変形した状態を示す。
【図17】第2の電極としての身体用電極をクッションに設けた施術部材を示す概略図であり、(a)は身体用電極を中空の枕状のクッションに設けた例を、(b)は身体用電極をドーナツ状のクッションに設けた例を示す。
【図18】本発明の美容装置の施術部材におけるカバー部と薬液含浸部とカバー部施術対象である顔との位置関係を示す概略端面図であり、(a)は薬液含浸部と顔との間に紙シートが有る場合、(b)は薬液含浸部と顔との間に紙シートが無い場合を示す。
【図19】本発明の美容装置の施術部材における2層構造の薬液含浸部とカバー部と施術対象である顔との位置関係を示す概略端面図であり、(a)はカバー部に支持部(脚)が設けられていない場合、(b)はカバー部に支持部(脚)が設けられている場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面及び以下の説明において、同一または類似の基本的機能を有する部分及び部材は、形状や材質の異同に拘わらず、共通の参照番号を使用することとする。
【0048】
(第1の実施形態)
まず、本発明の美容装置の基本構成を図1に従って説明する。
【0049】
本発明の美容装置は、操作つまみ等を備えた電気回路部1と、複数(図では2個のみを示しているが、これ以上であってもよい。)の第1の電極2を有し電気経路(ワイヤ)3を介して電気回路部1に接続される施術部材5と、上記第1の電極2とは対極の電極であって、別系統の電気経路(ワイヤ)3を介して電気回路部1に接続される第2の電極6を有する。この第2の電極6は、手指7で握り易い形状を有しており、以下、身体用電極6と言う。
【0050】
電気回路部1は、微弱電流(数mA程度)を流す機能が備わっており、直流電流や交流電流、パルス電流などを流すことができる。また、電池などのバッテリー機能を備えており、交流電源から電源を取ることもできる。
【0051】
施術部材5は、顔全体に施術を行うための第1の施術部材の一例であり、薬液に電流を流すための導電体50と、導電体50の施術対象箇所に近い側(第1の側)に位置し、薬液を含浸するための薬液含浸部51と、導電体50の施術対象箇所から遠い側(第2の側)にあって、施術対象箇所である顔全体を覆うカバー部52(図3,4参照)を有する。そして、これら薬液含浸部51、導電体50、カバー部52は相互に付着しており、それぞれ、目、鼻、口に対応する位置に開口部53が設けられている。薬液含浸部51はカバー部52に付着している。なお、上記第1の電極2は導電体50に形成されており、以下、導電体用電極2と言う。
【0052】
上記薬液含浸部51は、導電体用電極2に対応する部分を除く部分の少なくとも一部が発泡性の低反発素材からなるものである。図1に示す例では、導電体用電極2に対応する部分を除く部分全体が発泡性の低反発素材からなり、それに応じて、導電体50も薬液含浸部51の外周部を除く略全領域に設けられている。
【0053】
顔に接触する部分に低反発素材を用いることで、低反発素材が顔の形状に合わせて変形するために、薬液含浸部51を顔に沿った形状にすることができる。顔に沿った形状となることでイオン導入できない部分を無とすることが可能となるため、顔全体のイオン導入が1回の施術で可能となる。これに対して、薬液含浸部51の材料が、通常のスポンジのように反発性があると、反発力によって、カバー部52が全体で持ち上げられたり、一部が持ち上がったりする。また、鼻のように凹凸が激しい部分の一部にイオン導入できない部分などができる可能性が高い。本発明においては、このような問題を回避することが可能となる。また、イオン導入時間について、通常小型の美容装置で施術を行う時間が10分程度と言われているが、小型の美容装置は部分的なイオン導入を顔全体に行うもので、本発明のように顔全体にイオン導入を行う場合は2分程度での施術も可能である。
【0054】
薬液含浸部51を構成している低反発素材は発泡性素材の形態をしている場合が多い。例えば、軟質ウレタンフォーム(参考文献1)、スチレン系エラストマーの架橋発泡体(参考文献2)、低反発弾性フォームと呼ばれ、一般的なウレタンフォームと同様に、ポリオールとポリイソシアネ―トを主成分として発泡剤、整泡剤、触媒等を撹拌混合して発泡する材料(参考文献3)が望ましい。いずれの材質もやわらかで感触が良く、伸縮性に優れ、伸びても破れにくく、通気性とクッション性を兼ねそろえ、柔軟性に優れている素材であるため、本発明の薬液含浸部51に適している。このような素材は低反発を特長としており、一度顔形状に押し付けると、電極部分2を含む導電体50やカバー部52の自重により、同じ形状を保つことができる。
【参考文献1】
【0055】
"低反発ウレタンフォーム UBZO" 富士ゴム産業株式会社、[online]、[2011年9月6日検索]、インターネット<URL:http://www.fujigomu.co.jp/simulation/items/u601ea.php>
【参考文献2】
【0056】
"低反発軟質発泡体ピタフォーム15" ゴム通信、[online]、[2011年9月6日検索]、インターネット<URL:http://gomu.jp/item/10705>
【参考文献3】
【0057】
"低反発弾性フォームとは" ブリジストン化成品株式会社、[online]、[2011年9月6日検索]、インターネット<URL:http://www.bridgestone-dcp.co.jp/qa02.html>
【0058】
薬液含浸部51は、特別に薬液含浸シートを設けなくても、顔に接触する部分に薬液を含ませることができる。
【0059】
導電体50は薬液含浸部1の顔に接触する部分に設けられていても良いが、カバー部52に設けておいて、薬液含浸部1に浸透した美容液に接触するようにしておいても良い。カバー部52のどの部分でも良いが、導電体50を確実に美容液に接触させるためには、薬液含浸部1を構成している低反発素材が薄い部分が望ましい。例えば、図1に示すように、頬に対応する位置にある低反発素材部分である。
【0060】
顔と導電体用電極2が接触する部分は、含浸性の高く電流の流れやすい材質(例えば不織布や綿など)が望ましく、導電体50は電気伝導率が高く、含浸させる薬液の変質を起こさない材質(例えばチタン・白金・カーボン等)が望ましい。
【0061】
上記カバー部52は絶縁素材で形成されており吸水性は無い。ゆえに、薬液含浸部51で吸水された薬液は、薬液含浸部51が付着しているカバー部52の反対面には染み出さない。このようなカバー部52にはたとえばシリコンゴムなどのゴム素材などが利用可能である。また、厚みは必ずしも薄いシート状である必要はなく、ある程度の厚みがある方が低反発素材を押しつけて低反発素材の形状を保つのに良い。
【0062】
上記施術部材5を構成する薬液含浸部51、導電体50、カバー部52をより顔の構造に近い形状に合わせるために、図2,3に示すように、これらの部分に、切り込み54を入れてもよい。
【0063】
上記構成の美容装置を使用する際には、導電体用電極2を電気経路3を介して電気回路部1に接続するとともに、身体用電極6を電気回路部1に接続し、使用者(被施術者)本人の手指7を身体用電極6に固定する。固定方法としては、ベルトなどで固定しても良いし、図1のように使用者本人が握っていても良い。図1において、手指7から延びている波線は身体を流れている回路を想定しており、上述のように接続すれば、使用者の体を抵抗体と考えた時に一つの回路が成立する。また、美容液を効率よく浸透させる電流の流し方は色々と考えられているが、人それぞれに合う方法があり、一概にどの方法が良いなどは言えない。一例として、身体用電極6にプラスの電荷がかかっていれば導電体50にはマイナスの電荷がかかっている。仮に今、身体用電極6にプラスの電荷がかかっていたとしたときに、顔付近をマクロな視点で見てみる。顔は、身体用電極6からのプラスの電荷を帯びている。一方、紙シートに含まれた美容液は、導電体50からのマイナスの電荷を帯びている。この双極の電荷がお互い引き合って美容液が皮膚に深く浸透していく。
【0064】
上記構成の美容装置は、顔全体にイオン導入を行うことができ、非常に便利である。図1に示した美容装置は、薬液含浸部51の、導電体用電極2を除く部分全てを発泡性の低反発性の素材としたことにより、薬液含浸部51は、薬液成分の保持に優れ、施術対象箇所である凹凸部分の多い顔の形状に合わせて変形し、その変形が保持される。その結果、顔の施術中、薬液含浸部51を顔全体に良好に密着させ続けることが可能となる。したがって、イオン導入法による1回の施術を行うだけで、顔全体に薬液を良好に浸透させることが可能となる。つまり、イオン導入法による施術を顔全体に短時間(たとえば2分程度)で効果的に行うことができ、施術を再度行う必要性をなくすことが可能となる。したがって、顔の皮膚のトラブルの発生を回避することが可能となる。
【0065】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、施術部材5の薬液含浸部51は、導電体用電極2を除く全領域に低反発素材を備えており、顔全体の形状に合わせて形が作られるようになっている。これに対して、第2の実施形態では、できるだけこの低反発素材を用いる量を減らすために、顔の中での凹凸が大きな鼻や頬、顎周辺に対応する箇所(局部)511に局所的に低反発素材を用いている。
【0066】
顔全体にイオン導入を行うとき、一番密着性が難しいのが凹凸の激しい部分で、ここに低反発素材を用いることで密着力が良くなりイオン導入できない部分を除くことができる。この第2の実施形態では、上記薬液含浸部51における低反発素材を、一番密着させるのが困難な顔の凹凸部分またはその周辺に対応する箇所511に局所的に設けているため、低反発素材の使用量をできるだけ抑えつつ、薬液含浸部の皮膚への高い密着効果を維持することが可能である。
【0067】
また、凹凸部分だけでなく、顔でしわが気になるほうれい線や、額、目の周辺などに対応する箇所511にも薄く低反発素材を設けている。
【0068】
第2の実施形態においては、薬液含浸部51の材料として、低反発素材と反発性のスポンジなどを組み合わせることができる。反発性素材は反発力でカバー部52を持ち上げるなどのおそれがあるが、使用する量を少なくしてやれば、反発力よりもカバー部52の重さなどのために、変形したままの状態を保つことができる。
【0069】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る美容装置は、第1の実施形態に係る美容装置における顔全体を施術するための第1の施術部材としての施術部材5(図1〜3参照)に加えて、顔の一部分のみに接触し施術を行う第2の施術部材としての局所用施術部材を1種類以上備え、顔全体に施術を行う施術部材5とつなぎ換えて使用する事を特長とする美容装置である。ここでは、前述した施術部材5についての説明は省略する。
【0070】
この美容装置は顔の一部を施術するものであるが、特許文献2に開示されたような従来の小型美容装置とは異なる。従来の小型美容装置は顔の形状に合わせて美容装置を動かし、施術するもので施術面もほぼ平らな面となっている。このような施術は美容装置を動かすのが大変であるのと、顔の凹凸の細かい部分に施術面を合わせ、確実に施術をするのは難しい。これに対して、第3の実施形態に係る美容装置は、気になりやすい部分の周辺に施術を行うもので、例えば鼻周辺の毛穴、口周り周辺のほうれい線、目周辺の小じわ、額や眉間のしわなどそれぞれに施術を行うことができる。
【0071】
図6と図7はそれぞれ、目の下付近や鼻付近を施術する局所用施術部材5aを接続した時の美容装置の動作例を示している。
【0072】
局所用施術部材5aの構成は、基本的に、図1に示す施術部材5の構成と同じであり、薬液含浸部51と、1以上の導電体用電極2を含む導電体50と、カバー部52(図6,7には示さず。)とを備えている。これらの部分についての詳細な説明は、上記第1の実施形態における説明を適宜適用するものとし、ここでは省略する。
【0073】
局所用施術部材5aは、施術部材5とは別体の部品として備えていてもよいし、施術部材5を分割可能に構成し、分割された部分を局所用施術部材5aとして使用してもよい。
【0074】
各局所用施術部材5aにおいて、図6,7からは明らかではないが、薬液含浸部51の寸法は、カバー部52よりも少し大きくて、薬液含浸部51の外周部がカバー部52のエッジから僅かにはみ出すようになっている。これにより、局所用施術部材5aを接続したときに、薬液含浸部51に隙間が生じないような構造となっている。
【0075】
施術部材5が分割可能な場合は、電気回路部1に接続された電気経路3の端末をそれぞれの局所用施術部材5aの導電体50に接続することで美容装置を構成する。局所用施術部材5aの部品を別途備えている場合は、電気回路部1に接続された電気経路3の端末をそれぞれの局所用施術部材5aの導電体50に接続してもいいし、局所用施術部材5aの導電体50に接続された電気経路3の端末を電気回路部1につなぎ変えても良い。
【0076】
この第3の実施形態においては、局所用施術部材5aを備えることで、気になる部分だけを施術したいときに、気になる部分を確実に施術する事が可能となる。
【0077】
ここで、図5は上記第2の実施形態に関して薬液含浸部51の低反発部材が設けられることが実際に必要と思われる局部511を示したものであるが、便宜上この図を借用して説明すると、この第3の実施形態では、これら局部511のみを施術するための複数種類の局所用施術部材5aが用意される。したがって、これらの局所用施術部材5aを用いることで、図5に示すような気になる部分だけに集中した施術が可能である。施術方法は各部分のみ施術したり、複数個所を同時に施術することも可能である。複数個所行うときは、局部511それぞれに電気経路3が接続できるようになっている。また、電気回路部1も複数の電気経路3を接続可能な構造である。
【0078】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、上記第1〜第3の実施形態とは、上記第1〜3の実施形態の施術部材5のカバー部52がシリコンゴム等の軟質材料からなるのに対して、第4の実施形態ではカバー部52が樹脂などの固い素材で構成されて剛性を有する点において、異なるものである。以下、軟質のカバー部52と区別をつけるために、第4の実施形態における硬質の(つまり、剛性を有する)カバー部52を、便宜上、樹脂カバー52と称する。但し、この名称は、硬質のカバー部52の材料を限定するものではない。他の構成は、第1の実施形態または第3の実施形態と基本的に同じであるので、説明を省略する。
【0079】
このようにカバー部52が硬質な樹脂カバー52で構成されることで、樹脂カバー52の薬液含浸部51が備わっていない側、いわゆる外側から与えられた圧力を均質に薬液含浸部51に伝えることが可能となる。したがって、少しの力で薬液含浸部を顔全体に接触させることができ、密着性ひいては顔全体の施術効果について、より確実性が増す。これに対して、カバー部52が軟質なものであれば、いわゆる外側から与えられた圧力は部分的に伝わる。例えば、指1本で押さえると、その押した部分もしくはその周辺だけに圧力は伝わり、遠ざかるほど圧力は伝わらない。ところが、樹脂カバー52の場合、指1本で圧力を伝えると全体に均質に圧力を伝えることができる。実際には指1本であればバランスを取ることが難しいため、複数個所から圧力を与える事が望ましい。このように、均質な圧力が与えられるだけでなく、顔に部分的な強い圧力が伝わらないことで、快適な施術が可能となる。この樹脂カバー52は例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、PS(ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)など、剛性・強度・加工性に優れたものが望ましい。また、樹脂と金属の積層板のように樹脂に金属を挟み込んだ素材や、金属の片側にシートをラミネートしたものであってもよく、塗装などのように片側に絶縁処理がされていれば金属素材を用いても問題ない。片側が金属であれば導電体50の役割を金属部分で担うことができる。
【0080】
図4は第4の実施形態の樹脂カバー52の概略図で、図2に示す軟質のカバー部52には顔の形状に合わせるために切り込みが必要であったが、この樹脂カバー52は樹脂カバー52自体がお面のように立体的な作りをしているために切り込み等は必ずしも必要ではない。
【0081】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る美容装置の要部を図8に示す。この第5の実施形態は、上記第4の実施形態の美容装置において、樹脂カバー52の薬液含浸部51が備わっていない側、いわゆる外側に、樹脂カバー52を支える支持部としての脚56を設けたことを特長とする。以下、第4の実施形態と異なる構成を重点的に説明する。
【0082】
この脚56は樹脂カバー52を支えることを目的に備えているのであって、樹脂カバー52の外側にテーブルの脚のように4ヶ所以上設けても良いし、ドーナツ状の脚であっても良い。また、脚56は樹脂カバー52に一体に接続されていても良いし、取り外し可能であってもよい。
【0083】
このように脚56を設けることで、樹脂カバー52を支えることが可能となる。このように支えられた状態で施術を行うと、机などの面上にうつ伏せ状態で施術を受けることが可能で、快適に施術を受けることが出来る。また、うつ伏せの施術は、頭の自重で薬液含浸部51を構成している低反発素材が圧縮され自然に顔の形状にフィットするため、確実な施術が可能となる。
【0084】
なお、樹脂カバー52は通常、立体形状を有するが、図8の概略断面図(ハッチング省略)では、簡略化するために平板1枚で図示している。
【0085】
(第6の実施形態)
第6の実施形態は、上記第5の実施形態に係る美容装置において、脚56の長さ(高さ)を変更可能つまり伸縮可能とし、もって、設置面に対する樹脂カバー52の角度が任意の角度に調整可能となるようにしたものである。
【0086】
図9は第6の実施形態に係る美容装置の要部(図8に示した部分に対応する部分)の概略断面図(ハッチング省略)で、同図(a)(b)に示すように、脚56の一方の側の長さを変更して、設置面に対する樹脂カバー52の角度を自由に変更することができる。
【0087】
このように樹脂カバー52の角度が任意の角度に変更できるため、使用者にとって快適な設定角度でうつ伏せに施術することが可能となる。これに対して、脚56の長さを伸縮可能とできない場合は、樹脂カバー52の置き場所に拘わらず、樹脂カバー52の角度に合わせて顔をのせるような施術となり、不自然な姿勢で施術を行うこととなる場合がある。
【0088】
図10は脚56の長さを変更する構造の一例を示す。この例においては、脚56は、複数のピン挿入口Cを等間隔に有する下部Aと、この下部を移動可能に収納する筒状の上部Bとを備え、ピンDを差す位置によって長さを変更することができる。
【0089】
脚56の長さを変更する構造は色々あり、どのような構造であってもよい。
【0090】
(第7の実施形態)
第7の実施形態に係る美容装置は、上記第5の実施形態に係る美容装置(施術部材5が樹脂カバー52を備えたもの)において、上記樹脂カバー52の導電体50とは反対側に、クッション性を有する部材を備えたものである。以下、図11〜図16を参照して、上記第5の実施形態と異なる点を重点的に説明する。
【0091】
図11は、クッション性を有する部材として、樹脂カバー52の外側(顔と反対側)面の外周部に取り付けられた中空または中実のドーナツ状のクッション57を示している。図12はその概略断面図である。
【0092】
図13は、樹脂カバー52を支持するための脚56(第5,6の実施形態参照)がクッション性を備えたものの一例を示している。この脚56はバネを内蔵しており、脚56自体が上下左右にある程度動くことができる。このようなバネに代えて、脚56をゴムなどで構成することで、脚56自体にクッション性を持たせることもできる。脚56にクッション性があるため、土台の小さな凸凹を吸収する事ができ、脚56のガタつき防止となる。
【0093】
ある程度の角度の調整も可能となる樹脂カバー52に脚56を設けた構造は、樹脂カバー52に顔を載せた状態でうつ伏せに施術を行う。非常に楽な施術を行う事ができるが、うつ伏せであることで、敏感な顔に振動や凹凸によるガタつきを感じやすく、不快感を覚える。本実施形態のように脚56にクッション性を備え、使用者が施術し易い状態を保ち、土台(設置面)の凹凸に影響されないことで、より快適な施術が可能となる。
【0094】
図14は、脚56自体がクッション性を有し、その脚56の先端にクッション57をさらに備えたものを示している。具体的には、脚56は、蛇腹構造を備えており、ある程度自由に上下左右の調整が可能となる。この構成は、クッション性がある脚56で顔の角度などを調整でき、クッション57で土台の凹凸を吸収することができる。
【0095】
また、図15に示すように、施術部材5は樹脂カバー52の外側に、枕のようなクッション57を備えていても良い。ただし、この場合には、クッション57の一部に穴を設けるなど、呼吸が可能なように構成されている。
【0096】
図16は、枕状のクッション57もしくは例えばゴム素材を円筒状にしたクッション57の断面図で、中空状のクッション57の中に手を入れられたりする。また、クッション57により、施術を好みの角度ですることができる。
【0097】
(第8の実施形態)
第8の実施形態は、樹脂カバー52の角度を変更可能とした第6または第7の実施形態において、上記第1の施術部材である顔全体用の施術部材5が、顔に接触しない面に、身体用電極6を備えたものである。
【0098】
第6または第7の実施形態では、図1に示す第1の実施形態と同様、身体用電極6を手指7で握ったり、その手指7にベルトなどで身体用電極6を固定するようにするものである。このような身体用電極6の固定方法では、施術中、身体用電極6をずっと握り続けるか、ベルトの違和感があり、これが、ストレスとなり得る。通常、うつ伏せで寝るときなどは手を枕にしたり、枕の付近に手を持ってくるなど、手を顔の付近に持って来る事は違和感が無い。そこで、この第8の実施形態では、うつ伏せに施術するものの脚56やクッション57などに身体用電極6を備えることで、顔付近にある手で身体用電極6に接触することができるようにしている。図を説明しながら使用形態の説明を行う。
【0099】
図17(a)は中空の枕状のクッション57を備えた施術部材5の要部の概略断面図で、クッション57内に手を中に入れられるようになっている。クッション57は、その手を置く付近に身体用電極6を備えるので、そこに手を置いておくだけで身体用電極6と接触することができる。また、図17(b)はドーナツ状のクッション57を備えた施術部材5の要部の概略断面図で、クッション57の一部に身体用電極6を備えている。クッション57が柔らかければそのままでも良いが、少し固ければ身体用電極6を備えている部分は手指7や手首が入るように窪ませばよい。この身体用電極6の部分に手指7や手首を差し込むことで、身体用電極6と接触できる。
【0100】
このように、この第8の実施形態では、違和感のない姿勢で、負担無く身体用電極6との接触が可能となり、ストレスなく、よりリラックスした状態での施術が可能となる。
【0101】
(第9の実施形態)
図18,19は本発明の施術部材5,5aにおける薬液含浸部51とカバー部52の位置関係の具体例を示す断面図である。
【0102】
図18(a)に示す例では、本発明の美容装置より詳しくは施術部材5,5aの基台となるカバー部52があり、その上に薬液含浸部51、紙シートSが取り付けられている。薬液含浸部51は低反発素材であり、顔に密着させるときに濡れた低反発素材を顔に押しつけると、導電体50から水分を介して皮膚に薬液を浸透させるようになっている。したがって、カバー部52が導電性を有していると、カバー部52に手を押しつけたとき、回路がショートカットして顔に薬液が浸透しないため、このような事態を防止するために、カバー部52は絶縁性が必要となる。基本はこのカバー部52に導電体50を備えている。絶縁性のカバー部52がある上で、薬液含浸部51の顔に近い部分に導電体を備え、紙シートSがあると薬液が少なくて済むという利点がある。
【0103】
図18(b)のように紙シートSはなくても良く、その場合は低反発素材の薬液含浸部51に美容液を直接含ませて顔に密着させる。
【0104】
図19(a)のように、低反発素材で構成されている薬液含浸部51を2層構造とし、カバー部52に近い側の低反発素材51aには防水処理を行い、顔に近い側の低反発素材51bに吸水性の高い素材を薄く備えることにより、紙シートSがなくても含ませる薬液を少なくすることができる。防水処理は例えば、防水塗料もしくは撥水塗料でコーティング処理をしたり、ビニールなど水を通さない材料を被せたりすることが考えられる。吸水性の高い素材としては、例えば、高吸水ウレタン樹脂などを使用するのが望ましい。
【0105】
図8〜17に示すように、施術部材5が樹脂カバー52を支持する脚(支持部)56やクッション57を備え、うつ伏せで施術可能な美容装置においては、図19(b)に示すように、薬液含浸部51が、カバー部52に近い側に防水処理を行った高反発素材51cを備え、顔に近い側には吸水性の高い低反発素材51bを備えることにより、特にうつ伏せで施術する場合に、顔から施術部材がずれにくい。高反発素材としては、例えば、発泡性のゴム素材など反発性があっても軟らかい感触のものや、高密度ウレタンなど、高反発・高弾性・硬めのウレタンスポンジでもよく、低反発でない軟質ウレタン・普通のウレタンスポンジでもよい。
【0106】
顔に近い側には吸水性の高い低反発素材51bを備えることで、顔の凹凸に関係なく顔全体に密着する。但し、うつ伏せで施術を行うとき、若干体や顔を動かしてしまうことがある。低反発素材は凹凸のある顔に密着性が高いが、荷重の変化に対してゆっくりと変形・回復するため、うつ伏せで施術中に顔の位置が移動した際に対応が遅れる恐れがある。しかし、カバー部52に近い側に防水処理を行った高反発素材51cを備えることにより、高反発素材51cの弾力性が高いため、顔がずれた時の動きに対し、素材の反発性で早い対応が可能になる。
【0107】
また、うつ伏せで施術する場合においては、顔の自重で自然と薬液含浸部側へ押しつけていく状態になるため、吸水性の高い素材51bに高反発性の材料を使用してもかまわない。
【0108】
以上説明した仕様により、本発明の課題を解決できる美容装置を実現できる。
【0109】
上述の種々の実施形態は、限定的なものでなく、形状、材料等を種々変更できるものである。また、上述の種々の実施形態は、顔を施術対象とするものであったが、本発明の美容装置は、顔以外、例えば、手の甲や、脚、足などにも使用して美容効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0110】
1 電気回路部
2 導電体用電極
3 電気経路
5 施術部材
5a 局所用施術部材
50 導電体
51 薬液含浸部
511 局部
51a 薬液含浸部51の、カバー部に近い側(低反発素材)
51b 薬液含浸部51の、顔に近い側
51c 薬液含浸部51の、カバー部に近い側(高反発素材)
52 カバー部
53 開口部
54 切り込み
56 脚
57 クッション
6 身体用電極
7 手指
A 脚56の下部
B 脚56の上部
C 下部Aのピン挿入口
D ピン
S 紙シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン導入法により薬液の有効成分を施術対象箇所の皮膚の深部に浸透させるための美容装置において、
使用時に上記皮膚に接触して配置される少なくとも1つの施術部材を備え、
上記施術部材は、
第1の電極を有し、上記薬液に電流を流すための導電体と、
上記薬液を含浸するために上記導電体の第1の側に位置し、上記第1の電極に対応する部分を除く部分の少なくとも一部が発泡性の低反発素材からなる薬液含浸部と
を備えたことを特徴とする美容装置。
【請求項2】
請求項1に記載の美容装置において、
上記少なくとも1つの施術部材は、顔全体に施術を行うための第1の施術部材を含んでいることを特徴とする美容装置。
【請求項3】
請求項2に記載の美容装置において、
上記第1の施術部材における薬液含浸部は、上記発泡性の低反発素材が、少なくとも顔の凹凸部分またはその周辺に対応する箇所に、局所的に設けられていることを特徴とする美容装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の美容装置において、
上記少なくとも1つの施術部材は、さらに、顔の一部分のみに施術を行うための1種類以上の第2の施術部材を含み、
上記第1の施術部材と上記第2の施術部材とを代替的に使用可能としたことを特徴とする美容装置。
【請求項5】
請求項2から4までのいずれか1に記載の美容装置において、
上記第1の施術部材は、上記導電体の上記第1の側とは反対の第2の側に、剛性を有するカバー部を備えたことを特徴とする美容装置。
【請求項6】
請求項5に記載の美容装置において、
上記第1の施術部材は、上記カバー部の上記導電体とは反対側に、ある面に対して上記カバー部を支持する支持部を備えたことを特徴とする美容装置。
【請求項7】
請求項6に記載の美容装置において、
上記支持部が設置される上記面に対する上記カバー部の角度が調整可能となるよう、上記支持部の高さが変更可能であることを特徴とする美容装置。
【請求項8】
請求項5から7までのいずれか1に記載の美容装置において、
上記第1の施術部材は、上記カバー部の上記導電体と反対側に、クッション性を有する部材を備えたことを特徴とする美容装置。
【請求項9】
請求項2から8までのいずれか1に記載の美容装置において、
上記第1の施術部材は、顔に接触しない面に、上記第1の電極の対極の第2の電極を備えたことを特徴とする美容装置。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか1に記載の美容装置において、
上記薬液含浸部は、皮膚に近い側にあって吸水性がある低反発素材と、皮膚から遠い側にあって防水処理を施された低反発素材とを備えていることを特徴とする美容装置。
【請求項11】
請求項6から9までの何れか1に記載の美容装置において、
上記薬液含浸部は、皮膚に近い側にあって吸水性がある低反発素材と、皮膚から遠い側にあって防水処理を施された高反発素材とを備えていることを特徴とする美容装置。
【請求項1】
イオン導入法により薬液の有効成分を施術対象箇所の皮膚の深部に浸透させるための美容装置において、
使用時に上記皮膚に接触して配置される少なくとも1つの施術部材を備え、
上記施術部材は、
第1の電極を有し、上記薬液に電流を流すための導電体と、
上記薬液を含浸するために上記導電体の第1の側に位置し、上記第1の電極に対応する部分を除く部分の少なくとも一部が発泡性の低反発素材からなる薬液含浸部と
を備えたことを特徴とする美容装置。
【請求項2】
請求項1に記載の美容装置において、
上記少なくとも1つの施術部材は、顔全体に施術を行うための第1の施術部材を含んでいることを特徴とする美容装置。
【請求項3】
請求項2に記載の美容装置において、
上記第1の施術部材における薬液含浸部は、上記発泡性の低反発素材が、少なくとも顔の凹凸部分またはその周辺に対応する箇所に、局所的に設けられていることを特徴とする美容装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の美容装置において、
上記少なくとも1つの施術部材は、さらに、顔の一部分のみに施術を行うための1種類以上の第2の施術部材を含み、
上記第1の施術部材と上記第2の施術部材とを代替的に使用可能としたことを特徴とする美容装置。
【請求項5】
請求項2から4までのいずれか1に記載の美容装置において、
上記第1の施術部材は、上記導電体の上記第1の側とは反対の第2の側に、剛性を有するカバー部を備えたことを特徴とする美容装置。
【請求項6】
請求項5に記載の美容装置において、
上記第1の施術部材は、上記カバー部の上記導電体とは反対側に、ある面に対して上記カバー部を支持する支持部を備えたことを特徴とする美容装置。
【請求項7】
請求項6に記載の美容装置において、
上記支持部が設置される上記面に対する上記カバー部の角度が調整可能となるよう、上記支持部の高さが変更可能であることを特徴とする美容装置。
【請求項8】
請求項5から7までのいずれか1に記載の美容装置において、
上記第1の施術部材は、上記カバー部の上記導電体と反対側に、クッション性を有する部材を備えたことを特徴とする美容装置。
【請求項9】
請求項2から8までのいずれか1に記載の美容装置において、
上記第1の施術部材は、顔に接触しない面に、上記第1の電極の対極の第2の電極を備えたことを特徴とする美容装置。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか1に記載の美容装置において、
上記薬液含浸部は、皮膚に近い側にあって吸水性がある低反発素材と、皮膚から遠い側にあって防水処理を施された低反発素材とを備えていることを特徴とする美容装置。
【請求項11】
請求項6から9までの何れか1に記載の美容装置において、
上記薬液含浸部は、皮膚に近い側にあって吸水性がある低反発素材と、皮膚から遠い側にあって防水処理を施された高反発素材とを備えていることを特徴とする美容装置。
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図15】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図15】
【公開番号】特開2013−81606(P2013−81606A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223238(P2011−223238)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]