説明

美顔器

【課題】電極に化粧品などの電解質溶液を接触させた状態で通電しても電極の腐蝕や酸化を生じることが無く、安全性の高い電極を備えた美顔器の提供。
【解決手段】電池と該電池を電源として所定の電圧及び周波数の電気パルスを発生させる電気回路が内蔵された本体部と、該本体部に設けられ前記電気回路に接続された平坦な接触面を有する第一電極と、該第一電極と離間して前記本体部に設けられ前記電気回路に接続された第二電極と、該本体部に設けられ前記電気回路による電気パルスのON/OFFの切替を行うスイッチとを有する美顔器であって、前記第一電極及び第二電極が、導電性樹脂で構成されていることを特徴とする美顔器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細電流によるイオントフォレシス(iontophoresis)の原理を利用した携帯型の美顔器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微細電流によるイオントフォレシスの原理を利用した携帯型の美顔器(イオン導入器とも称される。)としては、例えば、特許文献1,2に開示されたものが提案されている。
【0003】
特許文献1(特開2010−148979号公報)には、患部に電流を出力する電極部と、当該電極部にパルスを出力するパルス出力部と、前記パルス出力部に各種電流を供給する電源部とを備え、イオン化溶液中に含まれるイオン化成分を前記パルス出力部からのパルスによって生体へ導入するイオン導入器において、前記パルス出力部がパルスを出力した後パルス毎に逆の極性のパルスを出力することを特徴とするイオン導入器が開示されている。
【0004】
特許文献2(特表2010−502263号公報)には、活性物質の皮膚吸収を促進するためのイオン導入装置であって、内部空間を備えるハウジングと、前記ハウジング内部に装着されて電源を供給する電池と、前記電池から出力される電流を制御する電流制御回路と、前記電池に電気的に連結され、皮膚に接触する第1接触部と、前記電池に電気的に連結され、前記ハウジングに位置する第2接触部と、及び前記電源のオン/オフのための操作部を備えてなる、イオン導入装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−148979号公報
【特許文献2】特表2010−502263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1,2に開示された従来技術には、次のような問題があった。
特許文献1に開示されたイオン導入器は、皮膚に接触する電極部が金属で作られており、この電極部に化粧水などの電解質溶液を接触させた状態で通電すると、前記電極部に腐蝕を生じ易かった。そしてこの腐蝕により生じた金属イオンは、皮膚に接触することによって金属アレルギーを発現させる可能性があり、使用者に対する安全性を確保することが難しいという問題があった。
【0007】
特許文献2に開示されたイオン導入装置は、その請求項19,20に記載してある通り、皮膚に接触する第1接触部が、ステンレス鋼からなること、及び第1接触部の表面に窒化チタン(TiN)からなるコーティング膜が形成されることが記載されている。しかし、窒化チタン膜は、化粧品などの電解質溶液を接触させた状態で通電すると、酸化されて不動体化し易く、表面に酸化被膜が形成された該コーティング膜は導電率が低下して、イオン導入装置の働きが悪くなってしまう問題があった。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、電極に化粧品などの電解質溶液を接触させた状態で通電しても電極の腐蝕や酸化を生じることが無く、安全性の高い電極を備えた美顔器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、電池と該電池を電源として所定の電圧及び周波数の電気パルスを発生させる電気回路が内蔵された本体部と、該本体部に設けられ前記電気回路に接続された平坦な接触面を有する第一電極と、該第一電極と離間して前記本体部に設けられ前記電気回路に接続された第二電極と、該本体部に設けられ前記電気回路による電気パルスのON/OFFの切替を行うスイッチとを有する美顔器であって、前記第一電極及び第二電極が、導電性樹脂で構成されていることを特徴とする美顔器を提供する。
【0010】
本発明の美顔器において、前記第一電極の前記接触面に磁石が設けられている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の美顔器は、電池と該電池を電源として所定の電圧及び周波数の電気パルスを発生させる電気回路が内蔵された本体部と、該本体部に設けられ前記電気回路に接続された平坦な接触面を有する第一電極と、該第一電極と離間して前記本体部に設けられ前記電気回路に接続された第二電極と、該本体部に設けられ前記電気回路による電気パルスのON/OFFの切替を行うスイッチとを有する美顔器であって、前記第一電極及び第二電極が、導電性樹脂で構成されているものなので、電極に化粧品などの電解質溶液を接触させた状態で通電しても電極の腐蝕や酸化を生じることが無く、溶出した金属イオンによる金属アレルギーを発現することがなく、安全性の高い美顔器を提供することができる。
また、電極に化粧品などの電解質溶液を接触させた状態で通電しても電極の酸化を生じることがなく、電極の酸化等の劣化による通電不良が生じ難くなり、耐久性の高い美顔器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る美顔器の一例を示す平面図である。
【図2】本発明に係る美顔器の一例を示す正面図である。
【図3】本発明に係る美顔器に用いた第一電極の一例を示す平面図である。
【図4】本発明に係る美顔器に用いた第一電極の一例を示す側面図である。
【図5】本発明に係る美顔器に用いた第一電極の一例を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の美顔器の実施形態を説明する。
なお、以下の実施形態に関する記載は、本発明の一例に過ぎず、本発明は以下の実施形態の記載内容に限定されない。
【0014】
図1は、本発明に係る美顔器の一例を示す平面図であり、図2は同じ美顔器の正面図である。
図1及び図2に示した美顔器1は、図示していない電池と該電池を電源として所定の電圧及び周波数の電気パルスを発生させる図示していない電気回路が内蔵された本体部2と、該本体部に設けられ前記電気回路に接続された平坦な接触面4を有する第一電極3と、該第一電極3と離間して前記本体部2に設けられ前記電気回路に接続された第二電極5と、本体部2に設けられ前記電気回路による電気パルスのON/OFFの切替を行うスイッチ6とを有し、前記第一電極3及び第二電極5が、導電性樹脂で構成されていることを特徴としている。
【0015】
前記本体部2は、合成樹脂成形体等からなり、本例示では片手で持つのに適当な大きさ、例えば、携帯電話と同程度の大きさであり、その長手方向の一端側の上面に第一電極3が突出形成され、また他端側の両側面には、該本体部2を手で持つ際に、掌と接触する第二電極5が設けられている。
【0016】
前記本体部2に内蔵させる電池としては、特に限定されないが、美顔器1の重量をなるべく低減するために、コイン型電池(ボタン型電池とも称される)、単3形〜単6形乾電池又は充電式電池などを用いることが好ましい。
【0017】
前記電気回路は、電池を電源として、スイッチ6の操作によって所定電圧の電気パルスを第一電極3と第二電極5との間に出力するようになっている。この電気パルスの周波数は、200〜50000Hzの範囲で設定することが好ましく、500〜10000Hzの範囲で設定することがより好ましい。
電気パルスのON/OFFは、スイッチ6の切替操作、例えば、OFF状態からスイッチ6を一度押してONとし、もう一度押してOFFとする切替方式や、OFF状態からスイッチ6を一度押してONとし、予め設定された所定時間経過後に、自動的に電源をOFFとする切替方式を採用し得る。
また、前記電気回路には、電気パルスのON状態時、一定秒数(例えば5秒程度)毎に電子音を発する機能を持たせることもできる。このようにすれば、電子音の鳴るタイミングで第一電極3を当てる部位を変えるように操作できる。
【0018】
前記スイッチ6は、本例示では[+]ボタン、[−]ボタンの2つが並設されている。そして、[+]ボタンを押すと、第一電極3と第二電極5との間にプラス側の電気パルスが出力され、[−]ボタンを押すと、第一電極3と第二電極5との間にマイナス側の電気パルスが出力されるようになっている。これらのスイッチ6は、前述したように、1回押す度にON/OFFを切り替える方式でもよいし、ONとした後、一定時間経過後に自動的にOFFになる方式でもよい。
なお、スイッチ6の形態は本例示に限定されず、1つのスイッチによって電源のON/OFFと出力する電気パルスの+/−とを切り替え可能なタイプのスイッチでもよい。
【0019】
前記第一電極3は、導電性樹脂の一体成形品であり、図3〜図5に示す例示において、該第一電極3は、平坦な接触面4と、その周縁から垂下した側壁部9と、該側壁部9の先端が折曲げられ外側に延びたフランジ部10とを有するキャップ形状になっている。前記接触面4の大きさは、少なくとも1cm×1cm以上あればよいが、該接触面4にコットンを乗せて安定に固定できるように2cm×2cm以上とすることが好ましい。
【0020】
前記導電性樹脂は、合成樹脂やゴムなどにカーボンや炭素繊維などを含有させて導電性を付与した材料である。本発明において、導電性樹脂としては、導電性ABS樹脂が好ましい。
前記導電性ABS樹脂は、ABS樹脂にカーボン(ケッチンブラック、グラファイト等)や炭素繊維を含有させて導電性を付与したものである。第一電極3に好適な導電性ABS樹脂としては、体積抵抗率が10−2〜10Ω・cmの範囲のものが好ましい。本発明において第一電極3及び第二電極5を形成するために好ましい導電性ABS樹脂の市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製の「IC10E」、同「IC10N」などが挙げられる。
【0021】
導電性ABS樹脂から第一電極3を成形する方法としては、従来より樹脂成形の分野で周知の成形法、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法などが挙げられる。
【0022】
前記第二電極5は、本例示では本体部2の両方の側面部の一部を構成するように本体部2に固定されている。この第二電極5も前記導電性ABS樹脂などの導電性樹脂によって作られ、本体部2に内蔵された前記電気回路に接続されている。
【0023】
本体部2の第一電極3とスイッチ6との間には、カバー操作ボタン7が設けられている。このカバー操作ボタン7を押すことで、本体部2の側面部に開閉可能に取り付けられたカバー8が開いて第一電極3の上面が露出するようになっている。このカバー8は、開いた状態として第一電極3を覆うようにコットンを乗せ、該カバー8を閉じて本体部2の係止することで、コットンを該カバー8と第一電極3との間に挟んで固定できるようになっている。
【0024】
この美顔器1は、本体部2の第二電極5側を手で持ち、第一電極3の接触面4を直接、又は前述したようにコットンなどを固定した状態で、肌に接触させ、スイッチ6の[+]ボタン又は[−]ボタンを押す。これによって[+]又は[−]の電気パルスが接触部分に流れる。前記コットンに精製水、化粧水などを染み込ませておくことで、イオントフォレシスの原理によって、肌とコットン中の電解液との間でイオン性物質の付与、除去又は交換が起こる。ここで、イオントフォレシス(iontophoresis)とは、電気エネルギーを利用して主にイオン性物質の生体膜透過性を促進させる方法である。
すなわち、コットンに精製水を染み込ませておけば、肌に付着していた老廃物がコットン側に除去されて肌を清浄化するイオンクレンジングを行うことができる。
また、コットンに、例えば、ビタミンC、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビン酸2−グルコシド、アミノ酸、ペプチドなどの1種又は2種以上の活性物質を含有する化粧水やローションを染み込ませておけば、これらの活性物質を肌に効率よく付与でき、肌を活性化させるイオントリートメントを行うことができる。
この美顔器1を用いたイオンクレンジング及びイオントリートメントの手順の一例を次に記す。
【0025】
(イオンクレンジング)
1.水道水又は精製水を十分に含ませたコットンを第一電極にセットする。
2.コットンを介して第一電極を肌に接触させ、[−]又は[+]ボタンを押してイオンクレンジングを開始する。汚れの種類によって、帯電する極性が異なるので、より高いクレンジング効果を望む場合には[−]で3〜7分程度、[+]で3〜7分程度のイオンクレンジングを行う。
3.一定秒数(例えば5秒程度)毎に鳴る電子音に合わせて第一電極を別な位置に移動させる。
4.イオンクレンジング開始から所定時間(例えば、5〜15分)経過後、自動的に電源がOFFになったらイオンクレンジング終了となる。
【0026】
(イオントリートメント)
1.イオントリートメント用ローションを十分に含ませたコットンを第一電極にセットする。
2.コットンを介して第一電極を肌に接触させ、[−]ボタンを押してイオントリートメントを開始する。
3.一定秒数(例えば5秒程度)毎に鳴る電子音に合わせて第一電極を別な位置に移動させる。
4.イオントリートメント開始から所定時間(例えば、5〜15分)経過後、自動的に電源がOFFになったらイオントリートメント終了となる。
【0027】
前記イオントリートメント用ローションは、特に限定されず、各種の市販品の中から選択して使用できる。好適な市販品としては、例えば、株式会社ジェイメック製の「アミノシナジー」などが挙げられる。
【0028】
本発明の美顔器は、第一電極3及び第二電極5が、導電性樹脂で構成されているものなので、電極に化粧品などの電解質溶液を接触させた状態で通電しても電極の腐蝕や酸化を生じることが無く、溶出した金属イオンによる金属アレルギーを発現することがなく、安全性の高い美顔器を提供することができる。
また、電極に化粧品などの電解質溶液を接触させた状態で通電しても電極の酸化を生じることがなく、電極の酸化等の劣化による通電不良が生じ難くなり、耐久性の高い美顔器を提供することができる。
【0029】
本発明の美顔器1において、前記第一電極3に磁石を設けた構成としてもよい。この磁石は、磁気治療効果が期待できる高強度の磁力線を出すことができる強力永久磁石が用いられ、例えば、フェライト磁石、アルニコ磁石、サマリウムコバルト磁石のような希土類磁石が挙げられる。この磁石の形状、大きさ、配置個数等は特に限定されず、例えば、円盤状の磁石を第一電極3の接触面下に埋め込んだり、小粒子状の磁石を第一電極3の接触面下に埋め込む構造が挙げられる。
【0030】
このように、前記第一電極3に磁石を設けた構成とすることで、前述したイオントフォレシスによるイオンクレンジングやイオントリートメントの効果に加え、第一電極3から発せられる磁力線が肌を通して皮下組織や毛細結果に作用し、血行促進や老廃物の排出促進などの効果を発揮し、イオンクレンジングやイオントリートメントの効果を増強することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 美顔器
2 本体部
3 第一電極
4 接触面
5 第二電極
6 スイッチ
7 カバー操作ボタン
8 カバー
9 側壁部
10 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と該電池を電源として所定の電圧及び周波数の電気パルスを発生させる電気回路が内蔵された本体部と、該本体部に設けられ前記電気回路に接続された平坦な接触面を有する第一電極と、該第一電極と離間して前記本体部に設けられ前記電気回路に接続された第二電極と、該本体部に設けられ前記電気回路による電気パルスのON/OFFの切替を行うスイッチとを有する美顔器であって、
前記第一電極及び第二電極が、導電性樹脂で構成されていることを特徴とする美顔器。
【請求項2】
前記第一電極の前記接触面に磁石が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の美顔器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−100693(P2012−100693A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249055(P2010−249055)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(501079831)株式会社ジェイメック (2)
【Fターム(参考)】