説明

耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材及びその製造方法、並びに自動車熱交換器

【課題】ろう付後の強度及び熱伝導率が高く、犠牲陽極効果に優れ、耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材及びその製造方法、並びに自動車熱交換器を提供する。
【解決手段】質量%で、Si:0.3%以上1.2%以下、Fe:0.05%以上2.0%以下、Mn:0.20%以上2.0%以下、Zn:0.05%以上8.0%以下を含有し、残部Alと不可避不純物からなり、ろう付後のテイラー因子が2.0〜4.5/mmの範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ろう付によって製造されるラジエータやカーヒータ、カーエアコン等の自動車熱交換器に用いられる、ろう付後の強度及び熱伝導率が高く、犠牲陽極効果に優れ、耐エロージョン性(耐ろう侵食性)に優れた高強度アルミニウム合金フィン材及びその製造方法、並びに自動車熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アルミニウム合金材からなる熱交換器は、自動車のラジエータやカーヒータ、オイルクーラ、インタークーラ、カーエアコンのエバポレータやコンデンサ等の他、油圧機器や産業機械用の熱交換器として、幅広く使用されている。このようなアルミニウム製熱交換器は、一般的にろう付によって製造され、冷媒等の作動流体が流れるチューブとフィン材が接合されてなる。このため、熱交換器に用いられるアルミニウム材料としては、ろう付時の高温変形や溶融ろうによるエロージョン(ろう侵食)を防止するため、耐高温座屈性が要求される。
【0003】
一般に、自動車用熱交換器において、ラジエータ用のフィン材等の材料としては、AA3003合金等のAl−Mn系合金やAl−Mn−Si系合金が用いられており、さらに、Zn、In、Sn等を添加して電気化学的に卑にすることにより、フィン材に犠牲陽極効果を付与する方法が採用されている。
【0004】
また、近年、自動車の軽量化により、自動車熱交換器もまた軽量化が求められており、これに対応すべくフィン材にも薄肉化、高強度化が求められている。このような要求の中で、自動車熱交換器に用いられるアルミニウム合金材の耐垂下性や犠牲陽極効果を向上させるため、例えば、Mnを0.8〜1.3%、Siを0.2〜0.7%の範囲で含有し、熱間圧延温度や中間焼鈍温度、又は最終冷間圧延率を規定する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。また、この他にも、MnやSiを含有したアルミニウム合金材の製造方法の規定により、強度や耐垂下性を向上させる方法が各種提案されている。
【0005】
さらに、上述のような自動車熱交換器用のアルミニウム合金材に関し、Si、Mn、Fe、Cr、Ti、Zr、V、Cuの各成分の内の1種又は2種以上を規定量含有し、連続鋳造圧延法によって得られる、金属間化合物の析出が抑制された特有の組織を活かして、アルミニウム材料の高強度化を図る方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0006】
また、Fe、Si、Mnの各成分を規定量含有し、冷却速度を適正値として冷却した後、冷間圧延及びアニーリングを行ない、次いで、最終冷間圧延を行なうことにより、アルミニウム合金材のろう付後の強度及びろう付後の熱伝導性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【0007】
また、Mn、Si、Ce、Fe、Cu及びNiの各成分を規定量含有した溶湯を鋳造して板材を作製し、冷間圧延を行なった後に中間焼鈍を行ないさらに、最終圧延を行うことにより、フィン材を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献4)。
【特許文献1】特開平2−115334号公報
【特許文献2】特開平8−143998号公報
【特許文献3】特表2002−521564号公報
【特許文献4】特開2002−256364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1〜4の何れの方法においても、アルミニウム合金材の更なる高強度化は困難であり、また、軽量化や薄肉化において限界があった。
まず、特許文献1〜4に記載のアルミニウム合金材では、例えば、板厚が0.1mm以下に薄肉化されてフィン材に用いられた場合、フィン材の成形性や溶融ろうによるエロージョンが発生するという問題がある。通常、自動車熱交換器用のフィン材は、コルゲート成形によって波形に成形され、チューブ材にろう付されて用いられる。フィン材が薄肉化されると、コルゲート加工後のフィン材の山高さが不揃いになりやすく、また、ろうによる侵食が顕著になるので、例えば、ろう侵食がフィン材を貫通すると、熱交換器として必要な強度が得られず、ひいては熱交換器としての構造を保持するのが困難になるという問題がある。
【0009】
上述のようなアルミニウム合金材が用いられたフィン材のろう付後の強度を改善する方法としては、ろう付後結晶粒の微細化が効果的であるが、ろう付後結晶粒を微細化すると、粒界からのエロージョンが促進されてしまうという問題がある。一方、溶融ろうによるエロージョンを抑制する場合には、ろう付後の結晶粒径を粗大化し、粒界からのろう侵食を防ぐ必要があることから、ろう付後の強度向上と、耐エロージョン性の改善の両立が困難であるという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、ろう付後の強度及び熱伝導率が高く、犠牲陽極効果に優れ、耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材及びその製造方法、並びに自動車熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人は、高い強度特性と耐エロージョン性を併せ持つ高強度アルミニウム合金フィン材について鋭意研究した結果、Si、Zn、Mn、Feの各成分をそれぞれ規定量含有するとともに、ろう付後のテイラー因子を適正範囲に制御することにより、ろう付後の強度と耐エロージョン性を両立できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下に関する。
【0012】
(1)請求項1に記載の発明
質量%で、Si:0.3%以上1.2%以下、Fe:0.05%以上2.0%以下、Mn:0.20%以上2.0%以下、Zn:0.05%以上8.0%以下を含有し、残部Alと不可避不純物からなる高強度アルミニウム合金フィン材であって、ろう付後のテイラー因子が2.0〜4.5/mmの範囲であることを特徴とする、耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材。
(2)請求項2に記載の発明
質量%で、Si:0.3%以上1.2%以下、Fe:0.05%以上2.0%以下、Mn:0.20%以上2.0%以下、Zn:0.05%以上8.0%以下を含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金溶湯を用い、鋳造及び圧延処理を施すことによって板材とする高強度アルミニウム合金フィン材の製造方法であって、前記アルミニウム合金溶湯を鋳造する際の凝固速度を15〜1000℃/secの範囲とし、少なくとも1回以上の中間焼鈍を180〜600℃の温度範囲で行い、圧延率を5〜50%の範囲として最終圧延を行なうことすることを特徴とする、耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材の製造方法。
(3)請求項3に記載の発明
前記最終圧延に次いで、100〜500℃の温度範囲で最終焼鈍を行なうことを特徴とする、請求項2に記載の耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材の製造方法。
(4)請求項4に記載の発明
請求項1に記載の、耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材が用いられてなる自動車熱交換器。
【発明の効果】
【0013】
本発明の耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材によれば、質量%で、Si:0.3%以上1.2%以下、Fe:0.05%以上2.0%以下、Mn:0.20%以上2.0%以下、Zn:0.05%以上8.0%以下を含有し、残部Alと不可避不純物からなり、ろう付後のテイラー因子が2.0〜4.5/mmの範囲とされた構成により、ろう付熱処理時に微細な析出物を分散させることができ、ろう付後の強度が向上するとともに、フィン材中に微細な孔食の起点が増えることで孔食が生じにくくなるので、例えばフィン材を薄肉とした場合であっても、このフィン材を用いて構成される自動車熱交換器の耐腐食性が格段に向上する。また、ろう付熱処理時のフィン材の再結晶粒径に影響する、ろう付前の析出物の大きさと数が適正に制御されるので、ろう付後の再結晶の核が制御されるとともに、再結晶粒成長時のピン止め効果等により、粗大な結晶粒径を得ることが可能となり、耐エロージョン性が向上する。従って、ろう付後の強度と耐エロージョン性を両立可能な高強度アルミニウム合金フィン材が実現できる。
【0014】
また、本発明の耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材の製造方法によれば、上記範囲の成分を含有するアルミニウム合金溶湯を用い、鋳造及び圧延処理を施すことによって板材とする方法であり、アルミニウム合金溶湯を鋳造する際の凝固速度を15〜1000℃/secの範囲とし、少なくとも1回以上の中間焼鈍を180〜600℃の温度範囲で行い、圧延率を5〜50%の範囲として最終圧延を行なう方法により、上述したような、ろう付後の強度及び熱伝導率が高く、犠牲陽極効果に優れ、ろう付後の強度と耐エロージョン性を両立させることが可能な高強度アルミニウム合金フィン材を製造することが可能となる。
また、本発明の自動車熱交換器によれば、上述した本発明に係る耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材が用いられてなるものなので、耐久強度に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材(以下、アルミニウム合金フィン材、あるいはフィン材と略称することがある)、及びその製造方法、並びに自動車熱交換器の実施の形態について説明する。
【0016】
[高強度アルミニウム合金フィン材]
本発明に係る高強度アルミニウム合金フィン材は、質量%で、Si:0.3%以上1.2%以下、Fe:0.05%以上2.0%以下、Mn:0.20%以上2.0%以下、Zn:0.05%以上8.0%以下を含有し、残部Alと不可避不純物からなり、ろう付後のテイラー因子が2.0〜4.5/mmの範囲とされ、概略構成されている。
【0017】
<成分組成>
以下、本発明で規定するアルミニウム合金フィン材の成分組成の数値限定理由について詳述する。
【0018】
「Si:0.3%以上1.2%以下(より好ましくは0.6%以上1.0%以下)」
ケイ素(Si)は、Mnと共存してAl−Mn−Si系化合物として分散あるいはマトリックスに固溶することにより、アルミニウム合金フィン材の強度を向上させる効果を有する。
Siの含有量は、質量%で0.3%以上1.2%以下の範囲とすることが好ましく、0.6%以上1.0%以下の範囲とすることがより好ましい。
Siの含有量が1.2%を超えると、アルミニウム合金フィン材の融点が低下し、ろう付処理工程において溶融してしまう虞があるとともに、熱伝導性が低下する。また、Siの含有量が0.3%未満だと、上述の強度向上効果が充分に得られなくなる。
【0019】
「Fe:0.05%以上2.0%以下(より好ましくは1.0%以上1.8%以下)」
鉄(Fe)は、金属間化合物として晶出又は析出し、ろう付後のアルミニウム合金フィン材の強度を向上させる効果を有する。また、Al−Mn−Fe、Al−Fe−Si、Al−Mn−Fe−Si系化合物を形成して、マトリックス中のMnやSi固溶度が低下するため、ろう付後の電気伝導度が低下することなく強度を向上させることができ、マトリックスの融点を上昇させることができる。
Feの含有量は、質量%で0.05%以上2.0%以下の範囲とすることが好ましく、1.0%以上1.8%以下の範囲とすることがより好ましい。
Feの含有量が2.0%を超えると、アルミニウム合金フィン材の腐食速度が速くなりすぎるとともに、巨大晶出物を出現させ、鋳造性や圧延性を低下させてしまう虞がある。また、Feの含有量が0.05%未満だと、上述のような強度向上及び融点上昇の効果が充分に得られなくなる。
【0020】
「Mn:0.20%以上2.0%以下(より好ましくは0.4%以上0.9%以下)」
マンガン(Mn)は、金属間化合物として晶出又は析出し、ろう付後のアルミニウム合金フィン材の強度を向上させる効果を有する。また、Al−Mn−Si系化合物を形成してマトリックス中のSi固溶度を低下させ、マトリックスの融点を上昇させることができる。
Mnの含有量は、質量%で0.20%以上2.0%以下の範囲とすることが好ましく、0.4%以上0.9%以下の範囲とすることがより好ましい。
Mnの含有量が2.0%を超えると、アルミニウム合金フィン材の鋳造性や加工性(圧延性)が低下する虞が有る。また、Mnの含有量が0.20%未満だと、上述のような強度向上及び融点上昇の効果が充分に得られなくなる。
【0021】
「Zn:0.05%以上8.0%以下(より好ましくは0.2%以上0.7%以下)」
亜鉛(Zn)は、アルミニウム合金フィン材の電位を卑(マイナス)にすることにより、チューブ材に対する犠牲陽極効果を向上させる。
Znの含有量は、質量%で0.05%以上8.0%以下の範囲とすることが好ましく、0.2%以上0.7%以下の範囲とすることがより好ましい。
Znの含有量が8.0%を超えると、腐食速度が速くなりすぎて自己耐食性が低下する。また、Znの含有量が0.05%未満だと、上述のような犠牲陽極効果が充分に得られなくなる。
【0022】
<ろう付後のテイラー因子>
本発明に係る耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材においては、ろう付後のテイラー因子が2.0〜4.5/mmの範囲となるように規定し、合金組織を制御している。
ここで、本発明において説明するテイラー因子Mとは、多結晶体におけるシュミット因子の逆数に相当する方位因子であり、下記一般式(1)によって表すことができる。
τ=σ/M ・・・・・ (1)
但し、上記一般式(1)中において、τは、多結晶体において多重すべりを起すのに必要な平均的分解せん断応力であり、σは、引張変形によって得られる単軸降伏応力である。
【0023】
本発明においては、詳細を後述する製造方法において、合金成分組成、溶湯の凝固速度、凝固後の冷却速度を適正化し、また、冷間圧延の前や途中の各板厚の段階において、適宜、上記条件の中間焼鈍を行ない、また、必要に応じて最終圧延率や最終焼鈍の条件を調整することにより、ろう付後のテイラー因子を2.0〜4.5/mmの範囲に制御可能な合金組織とされたアルミニウム合金フィン材が得られる。
【0024】
本発明では、ろう付後の結晶粒のテイラー因子を2.0〜4.5/mmの範囲に規定することで、結晶粒間のテイラー因子の差(ばらつき)が小さくなり、粒界のエネルギー差が小さくなるので、優れた耐エロージョン性を有するフィン材を実現することが可能となる。また、結晶粒間におけるテイラー因子の差が小さいことで、例えば、テイラー因子の低い結晶粒がテイラー因子の高い結晶粒に拘束され、破断に至るというような現象が抑制されるので、伸びが向上し、高強度のフィン材が実現できる。またさらに、テイラー因子の差が小さいことで、粒界での熱移動がスムーズになり、熱伝導の代替特性である電気伝導率が向上するので、本発明のフィン材で自動車熱交換器を構成した際の、コアの熱交換性能が向上する。
【0025】
また、本発明のアルミニウム合金フィン材においては、テイラー因子の範囲が上記2.0〜4.5/mmの範囲に制御されているとともに、このテイラー因子のばらつきが、1.6/mm以下であることが、上記効果が一層顕著となる点で、より好ましい。
なお、本発明において説明するテイラー因子間の差(ばらつき)とは、当該結晶粒のテイラー因子のばらつき幅を指し、例えば、テイラー因子が2.0〜4.5/mmである結晶粒のばらつきは、2.5/mmとなる。
【0026】
また、上述のようなテイラー因子は、例えば、アルミニウム合金材料を所定板厚まで圧延して得られる試験片、あるいは、アルミニウム合金材料をそのまま用いてろう付相当熱処理を施した後、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)法を用いて測定することが可能である。
【0027】
<ろう付後の結晶粒径>
本発明のアルミニウム合金フィン材では、アルミニウム合金フィン材をろう付した後(つまり、自動車熱交換器部材の製造後)の、再結晶組織の結晶粒径が200μm以上と粗大化されていることが好ましい。ろう付後の結晶粒径を200μm以上と粗大化することにより、粒界からのエロージョンを抑制することができ、溶融ろうに対する耐エロージョン性を確保することができる。
アルミニウム合金フィン材をろう付した後の再結晶組織の結晶粒径が200μm未満だと、ろうの侵食により、フィン材の座屈等が生じる虞がある。
【0028】
<電気伝導度>
アルミニウム合金フィン材がろう付される前の電気伝導度は、43〜53%(IACS:International Annealed Copper Standerd)の範囲であることが好ましい。電気伝導度を上記範囲として合金材の固溶度を高く保持することにより、ろう付熱処理時に微細な析出物を合金材内に分散させることができ、ろう付後の強度を向上させる効果がある。
また、アルミニウム合金フィン材がろう付された後の電気伝導度は、45〜55%(IACS)の範囲であることが好ましい。本発明のアルミニウム合金フィン材では、成分組成を上述の範囲に規定することにより、ろう付熱処理時に元素の析出が進行するので、ろう付後に高い電気伝導度が得られ、アルミニウム合金フィン材が用いられる熱交換器の熱交換性能を向上させることが可能となる。
【0029】
以上説明したような、本発明に係る耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材によれば、質量%で、Si:0.3%以上1.2%以下、Fe:0.05%以上2.0%以下、Mn:0.20%以上2.0%以下、Zn:0.05%以上8.0%以下を含有し、残部Alと不可避不純物からなり、ろう付後のテイラー因子が2.0〜4.5/mmの範囲とされた構成により、ろう付熱処理時に微細な析出物を分散させることができ、ろう付後の強度が向上するとともに、フィン材中に微細な孔食の起点が増えることで孔食が生じにくくなるので、例えばフィン材を薄肉とした場合であっても、このフィン材を用いて構成される自動車熱交換器の耐腐食性が格段に向上する。また、ろう付熱処理時のフィン材の再結晶粒径に影響する、ろう付前の析出物の大きさと数が適正に制御されるので、ろう付後の再結晶の核が制御されるとともに、再結晶粒成長時のピン止め効果等により、粗大な結晶粒径を得ることが可能となり、耐エロージョン性が向上する。従って、ろう付後の強度と耐エロージョン性を両立可能な高強度アルミニウム合金フィン材が実現できる。
【0030】
[高強度アルミニウム合金フィン材の製造方法]
本発明に係る耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材の製造方法は、質量%で、Si:0.3%以上1.2%以下、Fe:0.05%以上2.0%以下、Mn:0.20%以上2.0%以下、Zn:0.05%以上8.0%以下を含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金溶湯を用い、鋳造及び圧延処理を施すことによって板材とする方法であり、アルミニウム合金溶湯を鋳造する際の凝固速度を15〜1000℃/secの範囲とし、少なくとも1回以上の中間焼鈍を180〜600℃の温度範囲で行い、圧延率を5〜50%の範囲として最終圧延を行なう方法である。
【0031】
「アルミニウム合金溶湯の鋳造及び圧延」
本発明のアルミニウム合金フィン材の製造方法では、まず、上記成分組成とされたアルミニウム合金溶湯を用い、例えば、連続鋳造圧延法を用いて所定の厚さ、例えば2〜15mmの板材とする。この際、鋳造後の板材の板厚が2mm未満だと、実質的に安定的な板形状となる合金材が得られなくなる虞がある。また、鋳造後の板材の板厚が15mmを超えると、詳細を後述する凝固速度が低下するとともに、冷却速度が低下する虞がある。
【0032】
上述した連続鋳造圧延法としては、例えば、双ロール法や双ベルト法、双ブロック法等の方法を用いることができ、溶湯を急速に凝固させることが可能である。また、上記方法で連続的に鋳造した高温の板材は、通常、コイル状に巻き取られ、このような巻回された状態で後工程の処理を施したり、運搬したりする方法が用いられる。
【0033】
「凝固速度:15〜1000℃/sec」
アルミニウム合金溶湯を急冷して鋳造する際の凝固速度は、15〜1000℃/secの範囲とすることが好ましい。
凝固速度が15℃/sec未満だと、晶出物が粗大化する虞がある。一方、凝固速度を1000℃/sec超とした場合でも、本発明の製造方法によって得られる効果が飽和する。
また、凝固速度は、100〜250℃/secの範囲とすることがより好ましい。
【0034】
「凝固後の冷却速度:20℃/hr以上(550℃から150℃に冷却)」
本発明に係るアルミニウム合金フィン材の製造方法では、凝固後の冷却速度を、550℃から150℃の温度まで冷却する際の冷却速度を、20℃/hr以上とすることが好ましく、25℃/hr以上とすることがより好ましい。
上記温度範囲における凝固後の冷却速度が20℃/hr未満だと、アルミニウム合金フィン材が適正な合金組織となり難く、本発明の効果が得られず、また、生産効率の低下を招く虞がある
【0035】
「中間焼鈍温度:180〜600℃」
本発明のアルミニウム合金フィン材の製造方法では、連続鋳造圧延法によって板材としたアルミニウム合金フィン材を冷却した後、少なくとも1回以上の中間焼鈍を180〜600℃の温度範囲で行なうことが好ましい。
本発明では、晶出物や析出物の大きさを制御するため、板材とした後、最終圧延処理の前に行なう中間焼鈍(熱処理)の上限温度を600℃に規定した。また、中間焼鈍温度が180℃未満だと、アルミニウム合金フィン材がほとんど軟化せず、焼鈍を行なっても圧延性がほとんど向上しないため、下限温度を180℃とした。
なお、アルミニウム合金フィン材の調質がH14である場合には、1回目に行なう中間焼鈍温度を480℃超とすることが好ましい。
【0036】
また、アルミニウム合金フィン材に対して上記温度範囲の焼鈍を施す処理時間は、1〜10hrの範囲とすることが好ましい。
また、本発明の製造方法では、アルミニウム合金フィン材を冷間圧延する際、途中の各板厚において、適宜、180〜600℃の温度範囲で中間焼鈍を行うことにより、適正な合金組織とされたアルミニウム合金フィン材を、0.1mm以下の最終板厚で得ることができる。
【0037】
「最終圧延率:5〜50%」
本発明に係るアルミニウム合金フィン材の製造方法では、冷間圧延処理によって最終圧延を行なう際の圧延率、つまり最終圧延率を5〜50%の範囲とすることが好ましい。
最終圧延率は、アルミニウム合金フィン材の成形性等を考慮しながら、適宜調整することが可能であるが、最終圧延率が50%を超えると強度が高くなりすぎる虞がある。
また、板厚が0.1mm以下の材料において、焼鈍後の圧延率を5%未満とすることは実質的に困難であること等から、最終圧延率を5〜50%の範囲とすることがより好ましい。
【0038】
本発明のアルミニウム合金フィン材の製造方法では、溶湯からの製造条件において、合金成分組成、溶湯の凝固速度、凝固後の冷却速度を適正化し、またさらに、冷間圧延の前や途中の各板厚の段階において、適宜、上記条件の中間焼鈍を行なうことにより、ろう付後のテイラー因子が2.0〜4.5/mmの範囲となる、本発明のアルミニウム合金フィン材の合金組織が得られる。
【0039】
「最終焼鈍温度:100〜500℃」
本発明のアルミニウム合金フィン材の製造方法では、上記圧延率で最終圧延処理を施した後、100〜500℃の温度で最終焼鈍を行なうことがより好ましい。また、最終焼鈍を行なう場合の処理時間は、1〜10hの範囲とすることが好ましい。
本発明では、上述したような条件の中間焼鈍を、冷間圧延の際の途中の各板厚において適宜行なうとともに、最終圧延処理によって最終板厚とされたフィン材に対し、さらに、上記条件の最終焼鈍を行なうことにより、アルミニウム合金フィン材の合金組織をより適正に制御することが可能となる。
【0040】
以上説明したような、本発明の耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材の製造方法によれば、上記範囲の成分組成とされたアルミニウム合金溶湯を用い、鋳造及び圧延処理を施すことによって板材とする方法であり、アルミニウム合金溶湯を鋳造する際の凝固速度を15〜1000℃/secの範囲とし、少なくとも1回以上の中間焼鈍を180〜600℃の温度範囲で行い、圧延率を5〜50%の範囲として最終圧延を行なう方法により、上述したような、ろう付後の強度及び熱伝導率が高く、犠牲陽極効果に優れ、ろう付後の強度と耐エロージョン性を両立させることが可能な高強度アルミニウム合金フィン材を製造することが可能となる。
【0041】
[自動車熱交換器]
図1に、本発明のアルミニウム合金フィン材が用いられる一例として、自動車用のラジエータ(自動車熱交換器)10の分解斜視図を示す。
図1において、符号1はフィン材、符号12はチューブ、符号13はヘッダ、符号14はサイドサポートである。図1に示すラジエータ10は、ろう付接合によってチューブ12、フィン1およびヘッダ13が各々一体化され、更に樹脂タンクが機械的接合(かしめ加工)により取り付けられて製造される。
本実施形態のラジエータ10は、本発明に係るアルミニウム合金フィン材1が用いられてなるものなので、耐久強度に優れたものとなる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を示して、本発明の耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材及びその製造方法並びに熱交換器について、更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
以下に、アルミニウム合金フィン材の作製工程及び評価試験項目について説明する。
【0043】
[作製工程]
本実施例では、下記表1に示す成分組成のアルミニウム合金を用い、下記表2に示すような鋳造板厚、巻取り前温度、コイル冷却速度及び中間焼鈍の各製造条件により、アルミニウム合金フィン材のサンプルを作製した。
【0044】
まず、各成分組成のアルミニウム合金を溶解し、得られたアルミニウム合金溶湯に、脱ガスやフィルターによる介在物除去等の溶湯処理を施した。そして、ロール径が600mm(直径)の双ロール式連続鋳造圧延機を用い、アルミニウム合金溶湯を幅1000mmの板材に鋳造した。この際の凝固速度は、水冷ロール内における水の流量によって制御した。
また、鋳造後の板材の巻取り装置までの間に、空冷ファン及びミスト供給部を設置し、巻回される前の板材の温度を制御した。
また、巻回後の冷却速度としては、500kgの板材を巻き取った後、巻取り装置からコイル状の巻回板材を取り外し、ファンで空冷することにより、150℃までの平均冷却速度を制御した。
そして、調質H14材を用いた工程では、最終工程として圧延率14.0%の最終冷間圧延処理を行い、また、調質H24材を用いた工程では、最終工程として250〜500℃の温度で最終焼鈍を行うことにより、0.05mmの最終板厚とされた各実施例及び比較例のアルミニウム合金フィン材サンプルを作成した。
【0045】
次いで、アルミニウム合金フィン材の各サンプルを用い、図1の概略図に示す例のような自動車熱交換器用のフィン材(符号1参照)を作製した。
【0046】
[評価方法]
上記作製工程で得られた本発明に係るアルミニウム合金フィン材、及び従来のフィン材(比較例)を用い、以下のような評価試験を行った。
【0047】
「ろう付後の強度」
上記フィン材単体にろう付熱処理を施した後、引張試験を行うことにより、フィン材の強度を測定した。このフィン材は、JIS5号引張試験片(幅25mm×長さ60mm)であり、これを試験片として用い、引張試験機として島津社製:AG−GI 10kNを使用して、引張速度2mm/分で引張試験を行うことにより、ろう付後の引張強度(耐力:MPa)を測定した。
【0048】
「耐エロージョン性」
上述のようにして得られたフィン材を、以下に示す仕様のブレージングシート(チューブ材)のろう材面に組み付け、フラックスを塗布した後、高純度窒素ガス雰囲気中においてろう付相当熱処理を行った。この、ろう付相当熱処理は、590〜600℃の温度で5分間保持して行った。
上記ろう付処理後に、コア(フィン材/チューブ材)断面を、光学顕微鏡を用いて観察し、ろうによる最大侵食深さを測定し、耐エロージョン性を評価した。
【0049】
(ブレージングシート仕様)
(1)板厚:0.30mm
(2)クラッド率:ろう材…10%、芯材…90%
(3)調質:H14及びH24
【0050】
「耐食性」
以下に示すような仕様のチューブ材用合金、ヘッダプレート用合金、サイドサポート用合金をそれぞれ成形し、フィン材と組み合わせた後、フラックスを塗布して、高純度窒素ガス雰囲気中においてろう付処理を行った。そして、樹脂製のタンクと組み合わせることにより、チューブ幅が16mm、コアサイズが320mm(L)×350mm(W)とされたラジエータを作製した。
このラジエータについて、ろう付処理の後、特に何も処理を施さなかったサンプル、及び、20日間の腐食試験SWAAT(ASTM G85−02)を施したサンプルに対し、それぞれ繰り返し耐圧試験を行い、破断が生じるまでの回数の低下率を測定した。なお、耐圧試験は、水圧によって繰り返し圧力を付加できる耐圧試験装置を用い、水圧を0〜1.8kg/cmの範囲、圧力の繰り返し付加周期を0.1Hzとして行なった。
【0051】
(各部材の仕様)
(1)チューブ材
a.合金:Al−10%Si(4045)/Al−1%Mn−0.15%Cu(3003)/Al−1%Zn(7072)
b.板厚:0.30mm
c.クラッド率:ろう材…10%、芯材…80%、犠牲材…10%、
d.調質:H14
(2)ヘッダプレート材
a.合金:Al−10%Si(4045)/Al−1%Mn−0.15%Cu(3003)/Al−1%Zn(7072)
b.板厚:1.6mm
c.クラッド率:ろう材…10%、芯材…80%、犠牲材…10%、
d.調質:O材
(3)サイドサポート材
a.合金:Al−10%Si(4045)/Al−1%Mn−0.15%Cu(3003)
b.板厚:1.2mm
c.クラッド率:ろう材…10%、芯材…90%
d.調質:O材
【0052】
「ろう付前及びろう付後のアルミニウム合金フィン材特性」
ろう付前及びろう付後のアルミニウム合金フィン材特性について、以下の方法によって測定した。
まず、テイラー因子は、ろう付前及びろう付後のフィン材を用いて、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)法により、各サンプル単体の圧延方向で測定し、1mmの範囲(10視野)でテイラー因子のばらつきが2.5以内であることを確認した。
また、ろう付後の結晶粒径については、短冊状に切り出したフィン材単体に600℃×3minのろう付相当熱処理を施した後、50℃の温度とされた15%HCl:15%HNO:5%HFを混合した水溶液中でエッチングし、この組織を8倍の実体顕微鏡写真で撮影し、切断法によって圧延方向の結晶粒径を測定した。
また、電気伝導度については、アルミニウム合金フィン材を所定板厚まで圧延後、ダブルブリッジ法を用いてろう付前の電気伝導度を測定し、また、フィン材単体で600℃×3minのろう付相当熱処理を施した後、同様にして電気伝導度を測定した。
【0053】
各サンプルにおいて、フィン材に用いたアルミニウム合金フィン材の成分組成及びろう付前のテイラー因子の一覧を表1に示し、製造条件及び評価結果の一覧を表2に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
[評価結果]
表2に示すように、本発明で規定する成分組成を有するアルミニウム合金溶湯を用い、本発明で規定する製造条件で作製され、ろう付後のテイラー因子が規定範囲内とされた実施例1〜21のアルミニウム合金フィン材は、ろう付後の引張強さが全て108MPa以上であり、ろう付強度に優れていることが明らかとなった。また、実施例1〜21のフィン材は、ろう侵食深さが全て14μm以下と耐エロージョン性に優れ、またさらに、コア耐久性低下率が全て19%以下と耐食性に優れることが明らかとなった。
【0057】
これに対し、アルミニウム合金溶湯の成分組成又はアルミニウム合金フィン材の製造条件の何れかが本発明の規定範囲外であり、ろう付後のテイラー因子が本発明の規定範囲外となった比較例1〜8のアルミニウム合金フィン材は、上述したろう付後の引張強さ、ろう侵食深さ又はコア耐久性低下率の何れかの評価が劣る結果となった。
【0058】
比較例1は、アルミニウム合金溶湯の成分組成において、Mnの含有量が本発明の規定範囲を下回っているため、テイラー因子が1.7〜4.5/mmと、本発明の規定範囲の上限及び下限から外れており、また、ばらつきが2.8/mmと、やや大きめとなった例である。このため、比較例1のアルミニウム合金フィン材は、ろう侵食深さは8μmと小さめであるものの、ろう付後引張強さが98MPa、コア耐久性低下率が40%と、実施例1〜21のアルミニウム合金フィン材に比べて劣る結果となった。
また、比較例2は、アルミニウム合金溶湯の成分組成において、Mnの含有量が本発明の規定範囲を超えているため、テイラー因子が1.6〜4.8/mmと、本発明の規定範囲の上限及び下限から外れており、また、ばらつきが3.2/mmと大きめになった例である。このため、比較例2のアルミニウム合金フィン材は、ろう付後引張強さは125MPaと高いものの、ろう侵食深さが22μm、コア耐久性低下率が36%と、実施例1〜21のアルミニウム合金フィン材に比べて劣る結果となった。
【0059】
比較例3は、鋳造時の凝固速度が本発明の規定範囲を下回っているため、テイラー因子が1.4〜4.2/mmと、本発明の規定範囲の下限から外れており、また、ばらつきが2.8/mmとやや大きめになった例である。このため、比較例3のアルミニウム合金フィン材は、ろう付後引張強さが92MPa、ろう侵食深さが28μm、コア耐久性低下率が42%と、実施例1〜21のアルミニウム合金フィン材に比べて劣る結果となった。
また、比較例4は、鋳造時の凝固速度が本発明の規定範囲を超えているため、テイラー因子が2.0〜5.0/mmと、本発明の規定範囲の上限から外れており、また、ばらつきが3.0/mmと大きめになった例である。このため、比較例4のアルミニウム合金フィン材は、ろう付後引張強さは111MPaと高いものの、ろう侵食深さが18μm、コア耐久性低下率が30%と、実施例1〜21のアルミニウム合金フィン材に比べて劣る結果となった。
【0060】
比較例5は、中間焼鈍の温度が本発明の規定範囲を下回っているため、テイラー因子が1.4〜4.6/mmと、本発明の規定範囲の下限及び上限から外れており、また、ばらつきが3.2/mmと大きめになった例である。このため、比較例5のアルミニウム合金フィン材は、ろう付後引張強さは115MPaと高いものの、ろう侵食深さが20μm、コア耐久性低下率が28%と、実施例1〜21のアルミニウム合金フィン材に比べて劣る結果となった。
また、比較例6は、中間焼鈍の温度が本発明の規定範囲を超えているため、テイラー因子が1.5〜4.9/mmと、本発明の規定範囲の下限及び上限から外れており、また、ばらつきが3.4/mmと大きめになった例である。このため、比較例6のアルミニウム合金フィン材は、ろう付後引張強さが90MPa、ろう侵食深さが30μm、コア耐久性低下率が41%と、実施例1〜21のアルミニウム合金フィン材に比べて劣る結果となった。
【0061】
比較例7は、最終圧延率が本発明の規定範囲を下回っているため、テイラー因子が1.6〜4.4/mmと、本発明の規定範囲の下限から外れており、また、ばらつきが2.8/mmとやや大きめになった例である。このため、比較例7のアルミニウム合金フィン材は、ろう侵食深さは12μmとやや小さめであるものの、ろう付後引張強さが99MPa、コア耐久性低下率が31%と、実施例1〜21のアルミニウム合金フィン材に比べて劣る結果となった。
また、比較例8は、最終圧延率が本発明の規定範囲を超えているため、テイラー因子が1.6〜5.1/mmと、本発明の規定範囲の下限及び上限から外れており、また、ばらつきが3.5/mmと大きめになった例である。このため、比較例8のアルミニウム合金フィン材は、ろう付後引張強さは110MPaと高いものの、ろう侵食深さが31μm、コア耐久性低下率が43%と、実施例1〜21のアルミニウム合金フィン材に比べて劣る結果となった。
【0062】
上記結果により、本発明の高強度アルミニウム合金フィン材が、ろう付後の強度、犠牲陽極効果、及び耐エロージョン性等の各特性に優れていることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材の一例を模式的に説明する図であり、高強度アルミニウム合金フィン材が用いられてなるラジエータ(自動車熱交換器)を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
1…フィン材(自動車熱交換器部材)、12…チューブ、13…ヘッダ、14…サイドサポート、10…ラジエータ(自動車熱交換器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
Si:0.3%以上1.2%以下、
Fe:0.05%以上2.0%以下、
Mn:0.20%以上2.0%以下、
Zn:0.05%以上8.0%以下
を含有し、残部Alと不可避不純物からなる高強度アルミニウム合金フィン材であって、
ろう付後のテイラー因子が2.0〜4.5/mmの範囲であることを特徴とする、耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材。
【請求項2】
質量%で、
Si:0.3%以上1.2%以下、
Fe:0.05%以上2.0%以下、
Mn:0.20%以上2.0%以下、
Zn:0.05%以上8.0%以下
を含有し、残部Alと不可避不純物からなるアルミニウム合金溶湯を用い、鋳造及び圧延処理を施すことによって板材とする高強度アルミニウム合金フィン材の製造方法であって、
前記アルミニウム合金溶湯を鋳造する際の凝固速度を15〜1000℃/secの範囲とし、少なくとも1回以上の中間焼鈍を180〜600℃の温度範囲で行い、圧延率を5〜50%の範囲として最終圧延を行なうことすることを特徴とする、耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材の製造方法。
【請求項3】
前記最終圧延に次いで、100〜500℃の温度範囲で最終焼鈍を行なうことを特徴とする、請求項2に記載の耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の、耐エロージョン性に優れた高強度アルミニウム合金フィン材が用いられてなる自動車熱交換器。

【図1】
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