説明

耐候性フィルム

【課題】耐候性ポリマーフィルムの提供。
【解決手段】アクリル樹脂フィルムまたは塩化ビニルフィルムの第1の外面をUV線硬化性組成物で被覆して、1つ以上の非被覆領域と1つ以上の被覆領域を有するアクリル樹脂フィルムまたは塩化ビニルフィルムフィルムを形成する工程および230nm〜265nmの波長を実質的に含まない有効量のUV線に、被覆された前記第1の外面を暴露し、前記UV線硬化性組成物を硬化させる工程を含む方法によって製造された耐候性被覆アクリル樹脂フィルムまたは塩化ビニルフィルムフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆された耐候性ポリマーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーフィルム、特にポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびポリ(塩化ビニル)(PVC)から製造されたポリマーフィルムは、屋外耐久性を有する構造を作るために用いられてきた。こうした構造は、交通標識、建築標識、車両マーキングおよびライセンスプレートなどの様々な用途のために用いられてきた。典型的には、これらのポリマーフィルムは、通常、インキまたは他の塗料で部分的に被覆または印刷される。理想的には、これらの印刷されたポリマーフィルムまたは被覆されたポリマーフィルムは、数ヶ月から10年あるいはそれ以上でさえある有効寿命を有する。構造の各成分は、日光、雨、風および他の環境要素などの潜在的に損傷を与える要素に耐えることが可能でなければならない。
【0003】
紫外(UV)線硬化済みインキおよび塗料は、こうしたフィルム上の被覆または印刷の速い速度および硬化済み塗料または架橋済み塗料が従来の他の塗料またはインキより耐久性であるという信念のゆえに人気が高まりつつある。典型的には、これらの材料は、「貫通硬化」と「表面硬化」の品質を均衡させるように配合される。「貫通硬化」とは、塗料の厚さ全体を通したかなり均一な反応性に関連し、約320〜約380nmの波長によって最も影響される。「表面硬化」とは、塗料表面または塗料表面近辺での広範な反応に関連し、約240〜270nmの波長によって最も影響される。両方の硬化タイプの間のバランスは、光開始剤の釣合の取れた混合物を有する配合物を通して、および有効強度でUV線の広いスペクトルを提供するUV線源を用いて達成される。典型的には、有効強度におけるこうした広いUV線スペクトルは、中圧水銀ランプによって提供することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
UV硬化性インキ組成物またはUV硬化性塗料組成物の使用を通して、より耐久性の標識の製造を追求して、本願出願人は、従来のUV硬化プロセス中にUV線にポリマーフィルム基材を暴露すると、暴露されたポリマーフィルムを比較的短期間で劣化させるか、または劣化させる場合があることを発見した。しかし、驚くべきことに、こうしたフィルム劣化の証拠は直ちに明らかではない。UV硬化プロセス中にUV線に暴露されたポリマーフィルムの非被覆部分は、日光および他の要素にさらされた時に約4年以内に曇った外観を発現する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による被覆されたポリマーフィルムを製造する新規方法は、約230nm〜約265nmの波長を実質的に含まず、ポリマーフィルムの外面の一部上にUV硬化性組成物を硬化させるのに十分であるが、しかしポリマーフィルムの非被覆部分に悪影響を及ぼさない有効量のUV線に、被覆されたポリマーフィルムを暴露することにより従来のポリマーフィルムの上述した問題を除く。得られた被覆されたポリマーフィルムは、従来の方式で調製された被覆されたポリマーフィルムと比べた時に優れた耐候性を有する。
【0006】
本明細書で用いられる「有効量」は、UV硬化性組成物を硬化させるのに十分な所定の強度で送出された放射線の全線量に関連する。
【0007】
「約230nm〜約265nmの波長を実質的に含まない」とは、当該波長領域の光子強度が「EITウビキュアパワーパック(EIT Uvicure Power Puck)」(バージニア州スターリングのEIT Inc.(Sterling,VA))積算放射計を用いて検出できないことを意味する。
【0008】
本明細書で用いられる「高分子フィルム」とは、UV硬化性組成物の従来の硬化に対する有効量の全スペクトルUV線に暴露された後に耐候性試験に供された時に耐候性能の低下を示す高分子フィルムを意味する。
【0009】
本明細書で用いられる「UV−A」とは、370nmのピークで約320nm〜約400nmの波長を意味する。「UV−B」とは、305nmのピークで約275nm〜約320nmの波長を意味する。「UV−C」とは、250nmのピークで約230nm〜約265nmの波長を意味する。
【0010】
従って、本発明は、被覆されたポリマーフィルムを製造する方法であって、ポリマーフィルムの外面の少なくとも一部をUV線硬化性インキ組成物で被覆する工程および前記ポリマーフィルムの被覆された外面を特定の波長のない有効量のUV線に暴露する工程を含む方法に関する。UV線の線量は、UV線硬化性組成物を硬化させるのに十分であるが、しかしポリマーフィルムの非被覆部分に悪影響を及ぼさない。
【0011】
本発明は、上述した方法によって製造された被覆されたポリマーフィルムを含む製造の物品に更に関連する。
【0012】
本発明のこれらの特徴および利点は、開示された実施形態の以下の詳細な説明および添付した特許請求の範囲の精査後に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、優れた耐候性を有する被覆された高分子フィルムを製造する方法に関する。得られた被覆された高分子フィルムは、少なくとも約2000時間にわたる促進耐候試験条件に供された後でさえ望ましい表面外観を保持する。高分子フィルムの成分は、得られたフィルムが望ましい耐候性の特性を有するような方法で選択され、組み合わされ、処理される。
【0014】
一実施形態において、本発明は、高分子フィルムの第1の外面をUV線硬化性組成物で被覆して、1つ以上の非被覆領域と1つ以上の被覆領域を有する高分子フィルムを形成する工程およびフィルムの非被覆領域の表面特性および耐候性に悪影響を及ぼす波長を実質的に含まない有効量のUV線に第1の外面を暴露し、前記UV硬化性組成物を硬化させる工程を含む方法を提供する。
【0015】
高分子フィルムは、1つ以上の被覆工程および被覆方法を用いてUV硬化性組成物で被覆してもよい。適する被覆方法には、ブラシ塗装、噴霧塗装、熱転写塗装、ドローイング、スクリーン塗装、フレキソ印刷、インクジェット印刷、転写被覆、グラビア被覆、スロット被覆、カーテン被覆、平版印刷およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。望ましくは、被覆方法は、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷またはそれらの組み合わせを含む1つ以上の印刷工程を含む。
【0016】
光硬化性組成物を高分子フィルムの表面上に被着させるために、従来のいかなる被覆装置も使用してよい。適する被覆装置には、ペイントブラシ、ペイント噴霧器、筆記用具(すなわち、ペン、マーカーなど)、スクリーンプリンタ、フレキソプリンタ、ピエゾインクジェットプリンタ、熱インクジェットプリンタおよび転写被覆装置が挙げられるが、それらに限定されない。
【0017】
高分子フィルムの外面の1つ以上の被覆領域に被着されるUV硬化性組成物の量は、特定の被覆方法、被着される特定の塗料組成物および被覆された高分子フィルムの最終用途に限定されないが、それらを含む多くの要素に応じて異なってもよい。典型的には、高分子フィルムの外面の1つ以上の被覆領域に被着される塗料の量は、被覆領域の表面領域を基準にして約0.1グラム/平方メートル(gsm)〜約200gsmである。しかし、塗料が1つ以上の被覆領域で望ましい被膜を形成する限り、塗料のいかなる量も使用してよい。
【0018】
一旦高分子フィルムがUV線硬化性組成物で被覆されると、フィルムの被覆面は、フィルムの非被覆領域の耐候性に悪影響を及ぼす波長を実質的に含まない有効量のUV線に暴露され、UV硬化性組成物を硬化させる。典型的には、UV線硬化性組成物を硬化させるために必要な有効量の光は約100mJ/cm2UV−A〜約3000mJ/cm2UV−Aの範囲である。
【0019】
UV硬化性組成物を硬化させるために用いられる光の波長は、高分子フィルムのタイプに限定されないが、それを含む多くの要素に応じて異なってもよい。換言すると、所定の高分子フィルムについて、損傷を与える波長の特定の範囲は、優れた耐候性の特性を有する被覆された高分子フィルムを提供するために、線源に存在しないか、または光源から除去されるかのいずれかであってもよい。例えば、例えばアクリル樹脂、例えばメチルメタクリレートのコポリマーを含むフィルムの場合、約280nm未満の波長を有する光を提供しないか、または除去することが望ましい。もう一つの例において、ポリ(塩化ビニル)などの塩化ビニル樹脂を含むフィルムの場合、約280nm未満の波長はUV線中に存在するべきでない。他の高分子フィルムについては、光は、光源に存在しないか、またはさもなくば光源から除去された波長の異なる範囲を有してもよい。
【0020】
UV線から特定の波長を除去する一方法はフィルタリングによる。有用なフィルタリング媒体は、高分子フィルム材料および光スペクトルから除去されるべき波長に限定されないが、それらを含む多くの要素に応じて異なってもよい。適するフィルタリング媒体には、ニューヨーク州コーニングのコーニング社(Corning,Inc.(Corning,NY))から入手でき約0.125インチ(0.32cm)の厚さを有し、光源スペクトルからUV−B(275〜320nm、ピーク305nm)帯とUV−C(230〜265nm、ピーク250nm)帯の両方を除去する一枚の二重強度ソーダ石灰窓ガラス、両方ともニューヨーク州コーニングのコーニング社(Corning,Inc.(Corning,NY))から入手でき、UV−B帯強度の若干の低下と合わせて光源スペクトルからUV−C帯光子のみを除去する「パイレックス(登録商標)(PYREX(登録商標))」(登録商標)7740および「コレックス(COREX)(登録商標)7058が挙げられるが、それらに限定されない。
【0021】
本発明の更なる実施形態において、上述した方法は、高分子フィルムの第1の外面とは反対側である第2の外面に1種以上の基材を付着させることを更に含んでもよい。1種以上の基材は、接着、積層、縫合、およびリベットなどのファスナーに限定されないが、それらを含む従来のいかなる付着方法によっても高分子フィルムに付着させてもよい。望ましくは、1種以上の基材は高分子フィルムに接着で付着される。高分子フィルムに付着させるために適する基材には、高分子フィルムなどのフィルム、金属フォイルまたは金属シート、一切の紙製品、プライウッドおよびファイバボードなどの一切の木材製品、石膏ボード、コンクリートおよび発泡ボードなどの他の建築製品、発泡シート;、織布、不織布およびメリヤス生地を含む一切のタイプの布地、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0022】
高分子材料は、フィルム状をした市販されているいかなるポリマーまたはコポリマーであってもよい。例には、メチルメタクリレートのポリマーおよびコポリマーを含むアクリル樹脂を含むフィルム、PVCなどの塩化ビニル樹脂を含むフィルムが挙げられる。「アクリル樹脂」は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステルまたはアクリロニトリルの熱可塑性ポリマーまたはコポリマーである。
【0023】
高分子フィルム層は、フィルム層の重量および/またはコストを下げ、粘度を調節し、および/または追加の強化を提供するか、またはフィルム層の熱伝導性を改良するために、充填剤、紫外線(UV)安定剤、可塑剤、粘着性付与剤、流動調節剤、補助剤、耐衝撃性改良剤、膨張性微小球、熱伝導性粒子および導電性粒子など、シリカ、ガラス、クレー、タルク、顔料、着色剤、ガラスビーズまたはガラスバブルおよび酸化防止剤などの種々の添加剤を約50重量%まで、望ましくは約10%まで含んでもよい。
【0024】
高分子フィルムは、いずれかのUV線硬化性組成物で少なくとも部分的に被覆してもよい。適するUV線硬化性組成物には、米国特許公開第02−0086914−A1号(リー(Lee)ら)、米国特許第6,5587,5309号(イリタロ(Ylitalo)ら)および同第6,467,897号(ウー(Wu)ら)で開示されたUV線硬化性インキ組成物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0025】
高分子フィルムの1つの外面の少なくとも一部は、UV線硬化性組成物、望ましくはUV線硬化性インキ組成物で被覆される。被覆された得られた高分子フィルムは、1つ以上の非被覆領域および1つ以上の被覆領域を有する少なくとも1つの外面を有する。被覆された高分子フィルムが1つの外面上に、UV線硬化性組成物以外の被覆材料で被覆されている1つ以上の被覆領域も有してよいことが注意されるべきである。外面の1つ以上の非被覆領域によって占められる表面積は、被覆された高分子フィルムの最終用途に応じて異なってもよい。望ましくは、1つ以上の非被覆領域は、1つの外面の全表面積の約1〜約99%を占める。被覆された得られた高分子フィルムは、従来の方法(すなわち、光の全スペクトルに暴露される)によって製造され被覆された高分子フィルムと比べて格段に優れた耐候性を有する。
【0026】
被覆された高分子フィルムの耐候性を測定する1つの方法は、ASTM G154−00a、サイクル2などの促進耐候試験プロトコルまたはASTM G7などの屋外耐候試験プロトコルにフィルムを供した後にフィルムの非被覆部分の光沢保持を監視することによる。
【0027】
本発明の一実施形態において、被覆されたアクリル樹脂フィルムの1つ以上の非被覆領域は、促進耐候試験プロトコルASTM G154−00a、サイクル2に約2000時間にわたって供された後に初期60度光沢値の少なくとも90%の保持された60度光沢値を有する。望ましくは、被覆されたアクリル樹脂フィルムの1つ以上の非被覆領域は、促進耐候試験プロトコルASTM G154−00a、サイクル2に約2000時間にわたって供された後に初期60度光沢値の少なくとも95、96、97、98または99%の保持された60度光沢値を有する。
【0028】
本発明の一実施形態において、被覆されたPVCフィルムの1つ以上の非被覆領域は、促進耐候試験プロトコルASTM G154−00a、サイクル2に約2500時間にわたって供された後に初期60度光沢値の少なくとも80%の保持された60度光沢値を有する。望ましくは、被覆されたPVCフィルムの1つ以上の非被覆領域は、促進耐候試験プロトコルASTM G154−00a、サイクル2に約2500時間にわたって供された後に初期60度光沢値の少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の保持された60度光沢値を有する。
【0029】
本発明の更なる実施形態において、被覆されたアクリル樹脂フィルムの1つ以上の非被覆領域は、屋外耐候試験プロトコルASTM G7に約365日にわたって供された後に初期60度光沢値の少なくとも90%の保持された60度光沢値を有する。望ましくは、被覆されたアクリル樹脂フィルムの1つ以上の非被覆領域は、屋外耐候試験プロトコルASTM G7に約365日にわたって供された後に初期60度光沢値の少なくとも95、96、97、98または99%の保持された60度光沢値を有する。
【0030】
再帰反射物品の暴露された表面である被覆されたポリマーフィルムの耐候性を測定するもう一つの方法は、ASTM G154−00a、サイクル2などの促進耐候試験プロトコルまたはASTM G7などの屋外耐候試験プロトコルに物品を供した後に物品の非被覆部分の再帰反射率保持を監視することによる。
【0031】
本発明の更なる実施形態において、再帰反射構造の被覆されたアクリル樹脂フィルムの1つ以上の非被覆領域は、促進耐候試験プロトコルASTM G154、サイクル2に約2000時間にわたって供された後に初期再帰反射率値の少なくとも95%の再帰反射率値を有する。望ましくは、被覆されたアクリル樹脂フィルムの1つ以上の非被覆領域は、促進耐候試験プロトコルASTM G154−00a、サイクル2に約2000時間にわたって供された後に初期再帰反射率値の少なくとも96、97、98または99%の再帰反射率値を有する。
【0032】
本発明の更なる実施形態において、再帰反射構造の被覆されたPVCフィルムの1つ以上の非被覆領域は、促進耐候試験プロトコルASTM G154、サイクル2に約2500時間にわたって供された後に初期再帰率反射値の少なくとも80%の再帰反射率値を有する。望ましくは、被覆されたPVCフィルムの1つ以上の非被覆領域は、促進耐候試験プロトコルASTM G154−00a、サイクル2に約2500時間にわたって供された後に初期再帰反射率値の少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の再帰反射率値を有する。
【0033】
本発明の更なる実施形態において、被覆されたPVCフィルムの1つ以上の非被覆領域は、屋外耐候試験プロトコルASTM G7に約365日にわたって供された後に初期60度光沢値の少なくとも80%の%保持された60度光沢値を有する。望ましくは、被覆されたPVCフィルムの1つ以上の非被覆領域は、屋外耐候試験プロトコルASTM G7に約365日にわたって供された後に初期%保持された60度光沢値の少なくとも、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の再帰反射率値を有する。
【0034】
本発明の更なる実施形態において、再帰反射構造の被覆されたアクリル樹脂フィルムの1つ以上の非被覆領域は、屋外耐候試験プロトコルASTM G7に約365日にわたって供された後に初期再帰反射率値の少なくとも90%の再帰反射率値を有する。望ましくは、被覆されたアクリル樹脂フィルムの1つ以上の非被覆領域は、屋外耐候試験プロトコルASTM G7に約365日にわたって供された後に初期再帰反射率値の少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98または99%の再帰反射率値を有する。
【0035】
本発明の更なる実施形態において、再帰反射構造の被覆されたPVCフィルムの1つ以上の非被覆領域は、屋外耐候試験プロトコルASTM G7に約365日にわたって供された後に初期再帰反射率値の少なくとも80%の再帰反射率値を有する。望ましくは、被覆されたPVCフィルムの1つ以上の非被覆領域は、屋外耐候試験プロトコルASTM G7に365日にわたって供された後に初期再帰反射率値の少なくとも85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の再帰反射率値を有する。
【0036】
本発明の被覆された高分子フィルムは、様々な物品を形成するために1種以上の追加の層と組み合わせてもよい。適する追加の層は上で記載されており、フィルム、金属フォイルまたは金属シート、紙製品、木材製品、石膏ボード、コンクリート、発泡ボード、発泡シート、布地の一切のタイプおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
本発明は上で記載されており、実施例を用いて以下で更に例示する。実施例は本発明の範囲に限定を課すと決して解釈されるべきではない。それに反して、本明細書の説明を読んだ後に、本発明の精神および/または添付した特許請求の範囲から逸脱せずに当業者に対して示唆することができる種々の他の実施形態、修正およびそれらの均等物に訴えることができることは明確に理解されるべきである。
【0038】
試験方法
ASTM G154−00a、サイクル2
蛍光UV線および試験方法において記載された水装置を用いてサンプルパネルをASTM試験法G154−00a、サイクル2に供した。
【0039】
暴露の前に、初期60度光沢を各パネル上で測定した。光沢測定はASTM D523に準拠して行った。パネルごとの初期60度光沢値は光沢保持を計算するための初期光沢として用いた。後続の60度光沢値を各暴露増加後に各パネル上で測定した。
【0040】
さらに、暴露の前に、再帰反射率値をASTM E810に準拠して各パネル上で測定した。各パネルの再帰反射率を測定するために用いられた幾何学的配置を以下で示す。
入口角度:−4度
観察角度:0.2度
配向角度:0度
【0041】
パネルごとの初期再帰反射率値は再帰反射保持を計算するための初期再帰反射率として用いた。後続の再帰反射率値を各暴露増加後に各パネル上で測定した。
【0042】
ASTM G7
暴露の前に、初期60度光沢値および再帰反射率値を上述したように各パネル上で測定した。屋外耐候試験の継続期間は365日であった。「スコッチライト(SCOTCHLITE)(商標)3870および3970再帰反射性パネル(以下で説明する)の屋外耐候試験を、サンプルパネルをプライウッド裏地に取り付け、水平から5度傾けて北緯26度のフロリダ州マイアミで行ったのに対して、「スコッチライト(SCOTCHLITE)(商標)690−10Uパネル(以下で説明する)の屋外耐候試験を、サンプルパネルをプライウッド裏地に取り付け、水平から45度傾けて北緯34度のアリゾナ州フェニックスで行った。365日後に、屋外耐候試験を打ち切り、比較サンプルパネルの再帰反射率および60度光沢を上述したように評価した。
【0043】
UV線量測定
バージニア州スターリングのEIT社(EIT Inc.,Sterling,VA)から入手できる「EITウビキュアパワーパック(EIT Uvicure Power Puck)」積算放射計でUV線強度および線量を測定した。EITスペクトル応答曲線によって報告されたようにUV−A(320〜400nm、ピーク370nm)帯、UV−B(275〜320nm、ピーク305nm)帯、UV−C(230〜265nm、ピーク250nm)帯およびUV−V(375〜450nm、ピーク415)帯においてピーク強度と積算線量の両方を追跡した。報告した線量および強度は、暴露プロトコルを通した少なくとも5回の測定の平均である。
【0044】
UV硬化プロトコル
2個の中圧水電球が装着されたイリノイ州プレインフィールドのRPCインダストリーズ(RPC Industries(Plainfield,IL))から入手できるRPC UVプロセッサーを用いてUV線にサンプルを暴露した。出力設定を「高」出力に設定し、暴露を空気の雰囲気内で行った。
【実施例】
【0045】
ポリマー構造
【0046】
「スコッチライト(SCOTCHLITE)」(商標)3870は、メチルメタクリレートのコポリマーを含むPMMAタイプのポリマーフィルムの上層を含む再帰反射構造を指し、ミネソタ州セントポールのスリーエム(3M Company(St.Paul,MN))から市販されている。
【0047】
「スコッチライト(SCOTCHLITE)」(商標)3970は、メチルメタクリレートのコポリマーを含むPMMAタイプのポリマーフィルムの上層を含む再帰反射構造を指し、ミネソタ州セントポールのスリーエム(3M Company(St.Paul,MN))から市販されている。
【0048】
「スコッチライト(SCOTCHLITE)」(商標)690−10Uは、PVCを含むポリマーフィルムの上層を含む再帰反射構造を指し、ミネソタ州セントポールのスリーエム(3M Company(St.Paul,MN))から市販されている。
【0049】
フィルタリング媒体
「コレックス(COREX)」(登録商標)7058」は、ニューヨーク州コーニングのコーニング・ガラス・ワークス(Corning Glass Works(Corning,NY))から入手できるガラスを指す。
【0050】
比較例1〜6
「スコッチライト(SCOTCHLITE)」(商標)3870、3970および690−10Uの比較サンプルパネルの第1の組を2個の中圧水銀電球が装着されたRPC UVプロセッサーを用いてUV線に暴露した。出力を「高」に設定し、暴露を空気の雰囲気下で行った。比較サンプルパネルを100ft/分(30.5m/分)の速度でRPC UVプロセッサーを通してウェブ上に反復して8回通した。UV線の線量および強度を「EITウビキュアパワーパック(EIT Uvicure Power Puck)」積算放射計で測定した。比較サンプルパネル暴露ごとに、UV−A線の線量は、796mW/cm2/パスの強度で295mJ/cm2/パスであった。UV−C線の対応する線量は、54mW/cm2/パスの強度で23.7mJ/cm2/パスであった。従って、各パネルが受けた累積線量は2360mJ/cm2のUV−Aおよび189.6mJ/cm2のUV−Cであった。
【0051】
各パネルの初期再帰反射率をASTM E810の試験法に準拠して測定した。各パネルの初期60度光沢をASTM D523の試験法に準拠して測定した。初期再帰反射率および60度光沢は、それぞれ表1および2の比較例1〜3および4〜6について0時間(HRS)で保持された値の100%として定義される。その後、比較サンプルパネルをASTM G154−00a、サイクル2の方法に準拠して促進UV線耐候試験に供した。周期的に促進耐候試験を中断し、比較サンプルパネルの再帰反射率および60度光沢を上述したように評価した。表1および表2は、比較例1〜6に関する保持された再帰反射率および保持された60度光沢をそれぞれ示している。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
比較例7〜12
「スコッチライト(SCOTCHLITE)」(商標)3870、3970および690−10Uの比較サンプルパネルの第2の組を比較サンプルパネルの第1の組のために用いられた方法と同じ方式でUV線に暴露した。これらの比較サンプルパネルの各々の初期再帰反射率および60度光沢を上述したように測定した。初期再帰反射率および60度光沢は、それぞれ表3および4の比較例7〜9および10〜12について0日での保持された値の100%として定義される。その後、これらの比較サンプルパネルをASTM G7の方法に準拠して屋外耐候試験に供した。表3および表4は、保持された再帰反射率および保持された60度光沢をそれぞれ示している。表3および4において、屋外暴露場所の名称は、フロリダ州マイアミ位置について「FL」およびアリゾナ州フェニックス位置について「AZ」である。
【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
実施例1〜6
ニューヨーク州コーニングのコーニング・ガラス・ワークス(Corning Glass Works(Corning,NY))から入手できる厚さ2mmの「コレックス(Corex)」(商標)7058ガラスフィルタを通して光を最初に通したことを除き、「スコッチライト(SCOTCHLITE)」(商標)3870、3970および690−10Uの例証的サンプルパネルの第1の組を比較サンプルパネルの第1の組のために用いられた方法と似た方式でUV線に暴露した。これらの例証的サンプルパネル暴露の各々ごとに、UV−A線の線量/パス、強度/パスおよび累積線量は対応する比較サンプル暴露のものと同じであった。UV−C線の線量および強度は両方とも零であった。すなわち、「コレックス(Corex)」(商標)7058ガラスを通過した光は、「EITウビキュアパワーパック(EIT Uvicure Power Puck)」で測定して測定可能な量のUV−C線を含んでいなかった。上述したように測定された初期再帰反射率および60度光沢は、0HRSでの保持された値の100%として定義され、それぞれ表7および8に示されている。その後、これらの例証的サンプルパネルをASTM G−154−00a、サイクル2の方法に準拠してUV線耐候試験に供した。周期的に耐候試験を中断し、比較サンプルパネルの保持された再帰反射率および60度光沢を上述したように評価した。表5および表6は、実施例1〜6に関する保持された再帰反射率および保持された60度光沢をそれぞれ示している。
【0058】
【表5】

【0059】
【表6】

【0060】
実施例7〜12
ニューヨーク州コーニングのコーニング・ガラス・ワークス(CorningGlass Works(Corning,NY))から入手できる厚さ2mmの「コレックス(Corex)(商標)7058ガラスフィルタを通して光を最初に通したことを除き、「スコッチライト(Scotchlite)」(商標)3870、3970および690−10Uの例証的サンプルパネルの第2の組を比較サンプルパネルの第2の組のために用いられた方法と似た方式でUV線に暴露した。これらの例証的サンプルパネル暴露の各々ごとに、UV−A線の線量/パス、強度/パスおよび累積線量は対応する比較サンプル暴露のものと同じであった。UV−C線の線量および強度は両方とも零であった。すなわち、「コレックス(Corex)(商標)7058ガラスを通過した光は、「EITウビキュアパワーパック(EIT Uvicure Power Puck)」で測定して測定可能な量のUV−C線を含んでいなかった。上述したように測定された初期再帰反射率および60度光沢は、0日での保持された値の100%として定義され、実施例7〜9および10〜12に関してそれぞれ表7および8に示されている。その後、これらの例証的サンプルパネルを対応する比較サンプルパネルのそれと同じ方式および場所でASTM G7の方法に準拠して屋外耐候試験に供した。365日後に、屋外耐候試験を打ち切り、比較サンプルパネルの保持された再帰反射率および60度光沢を上述したように評価した。表7および表8は、それぞれ保持された再帰反射率および保持された60度光沢に関する結果を示している。表7および8において、屋外暴露場所の名称は、フロリダ州マイアミ位置について「FL」およびアリゾナ州フェニックス位置について「AZ」である。
【0061】
【表7】

【0062】
【表8】

【0063】
本明細書が特定の実施形態に関して詳細に記載してきた一方で、前述した内容の理解を達成すると、当業者が、これらの実施形態の変更、変形および均等物を容易に思いつくことができることが認められるであろう。従って、本発明の範囲は、添付した特許請求の範囲および特許請求の範囲の一切の均等物の範囲として決定されるべきである。
本願発明に関連する発明の実施形態を以下に列挙する。
実施形態1
耐候性被覆高分子フィルムを製造する方法であって、
高分子フィルムの第1の外面をUV線硬化性組成物で被覆して、1つ以上の非被覆領域と1つ以上の被覆領域を有する高分子フィルムを形成する工程および
約230nm〜約265nmの波長を実質的に含まない有効量のUV線に、被覆された前記第1の外面を暴露し、前記UV線硬化性組成物を硬化させる工程
を含む方法。
実施形態2
前記UV線はフィルタによって提供される、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記UV線はUV線源から前記波長を実質的に含まずに提供される、実施形態1に記載の方法。
実施形態4
前記ポリマーフィルムはアクリル樹脂を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態5
前記ポリマーフィルムは塩化ビニル樹脂を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態6
前記1つ以上の非被覆領域は促進耐候試験プロトコルASTM G154−00a、サイクル2に約2000時間にわたって供された後に少なくとも90%の保持された60度光沢値を有する、実施形態4に記載の方法。
実施形態7
前記1つ以上の非被覆領域は促進耐候試験プロトコルASTM G154−00a、サイクル2に約2000時間にわたって供された後に少なくとも80%の保持された60度光沢値を有する、実施形態5に記載の方法。
実施形態8
前記1つ以上の非被覆領域は屋外耐候試験プロトコルASTM G7に約365日にわたって供された後に少なくとも90%の保持された60度光沢値を有する、実施形態4に記載の方法。
実施形態9
前記1つ以上の非被覆領域は屋外耐候試験プロトコルASTM G7に約365日にわたって供された後に少なくとも80%の保持された60度光沢値を有する、実施形態5に記載の方法。
実施形態10
前記UV線硬化性組成物はインクジェットプリンタによって被覆される、実施形態1に記載の方法。
実施形態11
前記UV線硬化性組成物は、スクリーン印刷、フレキソ印刷、噴霧、転写被覆、グラビア被覆、スロット被覆、カーテン被覆、平版印刷およびそれらの組み合わせからなる群から選択された手段によって被覆される、実施形態1に記載の方法。
実施形態12
前記フィルタはガラスを含む、実施形態2に記載の方法。
実施形態13
高分子フィルムの第1の外面をUV線硬化性組成物で被覆して、1つ以上の非被覆領域と1つ以上の被覆領域を有する高分子フィルムを形成する工程および
約230nm〜約265nmの波長を実質的に含まない有効量のUV線に、被覆された前記第1の外面を暴露し、前記UV線硬化性組成物を硬化させる工程
を含む方法によって製造された耐候性被覆高分子フィルム。
実施形態14
暴露されたポリマーフィルムを有する耐候性再帰反射物品を製造する方法であって、
前記再帰反射物品の第1の外面をUV線硬化性組成物で被覆して、1つ以上の非被覆領域と1つ以上の被覆領域を有する再帰反射物品を形成する工程および
約230nm〜約265nmの波長を実質的に含まない有効量のUV線に、被覆された前記第1の外面を暴露して、前記UV線硬化性組成物を硬化させる工程
を含む方法。
実施形態15
前記UV線はフィルタによって提供される、実施形態14に記載の方法。
実施形態16
前記UV線はUV線源から前記波長を実質的に含まずに提供される、実施形態14に記載の方法。
実施形態17
前記ポリマーフィルムはアクリル樹脂を含む、実施形態14に記載の方法。
実施形態18
前記ポリマーフィルムは塩化ビニル樹脂を含む、実施形態14に記載の方法。
実施形態19
前記1つ以上の非被覆領域は促進耐候試験プロトコルASTM G154−00a、サイクル2に約2000時間にわたって供された後に少なくとも95%の保持された再帰反射率値を有する、実施形態17に記載の方法。
実施形態20
前記1つ以上の非被覆領域は促進耐候試験プロトコルASTM G154−00a、サイクル2に約2000時間にわたって供された後に少なくとも80%の保持された再帰反射率値を有する、実施形態18に記載の方法。
実施形態21
前記1つ以上の非被覆領域は屋外耐候試験プロトコルASTM G7に約365日にわたって供された後に少なくとも90%の保持された再帰反射率値を有する、実施形態17に記載の方法。
実施形態22
前記1つ以上の非被覆領域は屋外耐候試験プロトコルASTM G7に約365日にわたって供された後に少なくとも80%の保持された再帰反射率値を有する、実施形態18に記載の方法。
実施形態23
前記UV線硬化性組成物はインクジェットプリンタによって被覆される、実施形態14に記載の方法。
実施形態24
前記UV線硬化性組成物は、スクリーン印刷、フレキソ印刷、噴霧、転写被覆、グラビア被覆、スロット被覆、カーテン被覆、平版印刷およびそれらの組み合わせからなる群から選択された手段によって被覆される、実施形態14に記載の方法。
実施形態25
前記フィルタはガラスを含む、実施形態15に記載の方法。
実施形態26
暴露されたポリマーフィルムを有する耐候性再帰反射物品であって、
前記再帰反射物品の第1の外面をUV線硬化性組成物で被覆して、1つ以上の非被覆領域と1つ以上の被覆領域を有する再帰反射物品を形成する工程および
約230nm〜約265nmの波長を実質的に含まない有効量のUV線に、被覆された前記第1の外面を暴露して、前記UV線硬化性組成物を硬化させる工程
を含む方法によって製造された物品。
実施形態27
前記UV線硬化性組成物は光硬化性インキ組成物である、実施形態1に記載の方法。
実施形態28
前記UV線硬化性組成物は光硬化性インキ組成物である、実施形態14に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂フィルムまたは塩化ビニルフィルムの第1の外面をUV線硬化性組成物で被覆して、1つ以上の非被覆領域と1つ以上の被覆領域を有するアクリル樹脂フィルムまたは塩化ビニルフィルムフィルムを形成する工程および
230nm〜265nmの波長を実質的に含まない有効量のUV線に、被覆された前記第1の外面を暴露し、前記UV線硬化性組成物を硬化させる工程
を含む方法によって製造された耐候性被覆アクリル樹脂フィルムまたは塩化ビニルフィルムフィルム。

【公開番号】特開2010−116569(P2010−116569A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37198(P2010−37198)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【分割の表示】特願2004−525990(P2004−525990)の分割
【原出願日】平成15年6月5日(2003.6.5)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】