説明

耐候性試験装置

【課題】降雨による暴露を可能とし、また、試料台を室内に設置した場合には、台風などの強風から試料を守ることができる。更に試料が上向きの為安定した水スプレーモード設定も可能となる耐候性試験装置を提供すること。
【解決手段】太陽光を集光し、光ファイバーを通じて装置内の試料に照射する耐候性試験装置であって、前記集光レンズと光ファイバーが紫外線を遮断しない材料を用いること、また前記集光レンズがシリカガラス、又は紫外線吸収剤を含まないアクリル系樹脂よりなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性を評価する為に屋外暴露試験を行う際の耐候性試験装置であって、特に集光レンズを用いて集光した太陽光を照射することで屋外暴露試験の促進性を高めた太陽光集光型の耐候性試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光による暴露試験装置としては、南面45°に傾けて資料を配置したダイレクト暴露台やアンダーグラス暴露台、暴露台が常に太陽の方向を向くように設計された太陽追跡暴露装置などが知られているが、いずれも暴露試験片を単に太陽に暴露する方法で促進性の高い方法では無かった。また、唯一促進性があるといわれる集光暴露装置は、太陽光を反射させて、その焦点近くに暴露試験片を固定する方法なので、試験片は下向きで降雨による暴露は事実上できず、また反射光であるため太陽光そのものの暴露とは言い難かった。さらに暴露試験片の固定の調整など煩雑なものが多く、操作性が良く暴露促進性の高い屋外暴露試験機は無かった。
【0003】
従来の促進性を高めた耐候性試験装置では、メタルハライドランプ、キセノンランプ、水銀燈などを用いたものが知られているが、完全に太陽光の分光分布と同じものではなく、正確なものではなかった。また、野外暴露試験のように降雨などに対する試験は水スプレーモードなどを用いたものがあるが、正確なものではなかった。
【特許文献1】特開平10−148720号公報
【特許文献2】特開平11−053914号公報
【特許文献3】特開2003−116349号公報
【特許文献4】特開2004−251811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、太陽の分光波長とほぼ同等の分光波長を持ち、あわせて放射エネルギーの高い太陽集光型耐候性試験装置を提供することにある。また暴露試験台を屋内に設置した場合は強風や降雨があっても試験片に影響なく安定した暴露試験を可能とし、試験片の固定の調整などの必要がなく、さらに安定した水スプレーモード設定なども可能となる、耐候性試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その請求項1記載の発明は、太陽光を集光して暴露試験を行う耐候性試験装置において、集光レンズを有する集光部と暴露試験台に集光を照射する照射部との間に光ファイバーを設けてなることを特徴とする耐候性試験装置である。
【0006】
また、その請求項2記載の発明は、前記光ファイバーと集光レンズは、紫外線を遮断しない材料からなることを特徴とする、請求項1記載の候性試験装置である。
【0007】
また、その請求項3記載の発明は、前記光ファイバーは、石英および/またはその混合物からなることを特徴とする、請求項1または2のいずれか記載の耐候性試験装置である。
【0008】
また、その請求項4記載の発明は、前記集光レンズは、紫外線吸収剤を含まないアクリル系樹脂からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか記載の耐候性試験装置である。
【0009】
また、その請求項5記載の発明は、前記照射部は、前記暴露試験台より上部に設けられ、暴露試験台に固定される試験片は上向きに設置可能であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか記載の耐候性試験装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明により、促進性を高めた暴露試験を行うことが可能となった。また、集光部と照射部の間をフレキシブルな光ファイバーケーブルを使うことにより暴露試験台が任意の場所に設置できるようになった。さらに暴露試験台を屋外に設置した場合は、屋外での自然降雨試験を行いつつ集光による促進性を高めた試験が可能となった。
【0011】
また請求項2記載の発明により、太陽の分光波長とほぼ同等の分光波長を持ち、あわせて照射エネルギーの高い促進性を高めた試験が可能となった
【0012】
また請求項3記載の発明により、光ファイバーの耐久性が高く、より集光した光の減衰が少なく効率の良い照射が出来るようになった。
【0013】
また請求項4記載の発明により、軽量で安価な太陽集光型耐候性試験装置の製作が可能となった。
【0014】
また請求項5記載の発明により、試験片が上向きに設置できるようになり、太陽光を暴露しつつ、さらに集光した太陽光もあわせて暴露されるが出来るようになった。このことにより、より促進性の高い試験が可能となった。また水スプレー試験も試験片が上向きのため安定して出来るようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の耐候性試験装置を詳細に説明する。図1に本発明の耐候性試験装置の一実施例の構造の概要を示す。太陽光1に対して、集光レンズからなる集光部2、光ファイバー3、暴露試験台4、照射部5、試験片6からなる。
【0016】
本発明における集光部2としては、多い方が良いが、一つ以上の集光レンズからなるものであり、太陽光の特定波長、特には紫外線を遮断しない構成材料からなるものが用いられる。具体的には、地球上に到達するといわれる波長が290〜380nmの中・近紫外線、波長380nmから800nmの可視光線を通せば良い。特には、レンズ状に成形した紫外線吸収剤を含まないアクリル系樹脂(メチル(メタ)アクリレート樹脂が好適であるが、高価ではあるが純粋なシリカガラスによる集光レンズでも良い。
【0017】
なお、一つ以上の集光レンズが取り付けられた集光部は、太陽の位置を自動的に追尾する機能を有するのが好ましく、暴露促進性を上げるために暴露試験台も同時に追尾しても良い。また太陽を追尾する場合、サンセンサーを用いて太陽からの光を感知して追尾することが望ましい。
【0018】
本発明における光ファイバー3としては、上記の集光レンズと同様、紫外線を遮断しない構成材料からなるものが用いられる。具体的には石英系によるファイバーが好適であるが、紫外線吸収剤を含まないアクリル系樹脂メチル(メタ)アクリレート樹脂をファイバー状にしたものであっても良い。
【0019】
本発明における暴露試験台4は、前記光ファイバー3を接続した照射部5を有し、照射部5より照射される光が試験片6に当たるように、試験片6を設置する箇所を有するものであれば良く、野外で分離されていたものでも良い。また集光部2と同じ架台に設置しても良い。この場合は暴露促進効率を上げるために太陽追尾することが望ましい。室内に設けるものであれば、外部からのその他の影響を防ぐために閉鎖された空間に観察用の開閉型の窓などを設けたものが好ましく、適宜槽内の温度、湿度制御、時計や記録装置、各種測定機器などを備えたものが好適である。あるいは、制御機能を一切設けないのであれば、一切エネルギーを使用しないで長期間放置可能な耐候性試験装置とすることも可能となる。
【0020】
また、特に照射部5が暴露試験台の上部に設けられ、試験片は前記暴露試験台の底部に上向きに設置可能であると試験片が上向きで動かずに屋外で行う太陽光の分光分布に近い波長による暴露試験をすることが可能となる。また、水スプレーモードを制御できる噴水装置も、水が上から下へと降雨条件に近い条件で試験片にあたるように、設置されたものが望ましい。
【実施例1】
【0021】
直径120mm焦点距離150mmの紫外線透過型アクリル樹脂製フルネルレンズを7枚並べた集光部を2連装備し、コア径200μm、クラッド径208μmの石英光ファイバーを約1200本束ねて直径8mmのチューブにして集光部とつなげた。チューブの周りにはアルミ箔を巻きつけて、らせん状のフレキシブル加工を施したステンレス部材で保護を行った。集光した太陽光円は直径120mmとなった。そこに耐候性を試験する試験片を設置して暴露試験を行った。なお、光センサーにて太陽正面に集光部が向くようにした。また、日が暮れると東の日の出位置に原点復帰するようにした。
【0022】
太陽光、集光部の放射照度を、2006年4月6日13日の13時50分と15時05分に測定した結果を図2、図3に示す。折れ線グラフの上から集光+太陽光(本耐候性試験装置)、太陽光のみ、集光のみ(太陽光カット)である。測定器はSPECTRO MULTI CHANNEL PHOTO DETECTOR MCPD−300(大塚電子株式会社製)を使用した。
測定した結果は、本発明の耐候性試験装置が各分光波長で最も放射照度が高くなった。
【0023】
試験片として、市販のグロスのコート紙(王子製紙株式会社製:「OKトップコート」)に市販のオフセットインキ(東洋インキ製造株式会社製:「TKハイユニティネオSOY」)を濃度を4段階に調整しつつインクジェット印刷機により印刷したものを用い、これを前記本発明の耐候性試験機、南向き45度の固定式暴露台、南向き鉛直面、北向き鉛直面に設置し暴露試験した。暴露期間は2006年8月14日午前11時から同年8月21日午前9時まで行った。試験後の試験片を、市販の色彩色差計(NR−3000 日本電色工業株式会社製)によって、L*、a*、b*色差(CIE:国際証明委員会 1976)により、各試験片について同じ位置を4箇所測定した。結果を表1〜4に示す。なお、測定する位置は各資料の対応する位置を測定した。結果は、本発明の耐候性試験の促進度が一番大きかった。
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明により、外装用に用いられる建材、看板のほか、繊維、食品包材など太陽光等で劣化する試験がより確実に早くできることとなり、実際の暴露に近似した耐候性試験を、屋外でも屋内でもより容易に行うことが可能となる。また、人工的な光源を使わないため、ランニングコストの安い耐候性試験が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の耐候性試験装置の一実施例の構造を示す説明図である。
【図2】放射照度測定結果(2006年4月6日 13時50分 千葉県柏市 株式会社トッパン・コスモ 柏工場敷地内)
【図3】放射照度測定結果(2006年4月6日 15時05分 千葉県柏市 株式会社トッパン・コスモ 柏工場敷地内))
【符号の説明】
【0029】
1…太陽光
2…集光レンズからなる集光部
3…光ファイバー
4…暴露試験台
5…照射部
6…試験片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を集光して暴露試験を行う耐候性試験装置において、集光レンズを有する集光部と暴露試験台に集光を照射する照射部との間に光ファイバーを設けてなることを特徴とする耐候性試験装置。
【請求項2】
前記光ファイバーと集光レンズは、紫外線を遮断しない材料からなることを特徴とする、請求項1記載の候性試験装置。
【請求項3】
前記光ファイバーは、石英および/またはその混合物からなることを特徴とする、請求項1または2のいずれか記載の耐候性試験装置。
【請求項4】
前記集光レンズは、紫外線吸収剤を含まないアクリル系樹脂からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか記載の耐候性試験装置。
【請求項5】
前記照射部は、前記暴露試験台より上部に設けられ、暴露試験台に固定される試験片は上向きに設置可能であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか記載の耐候性試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−114194(P2007−114194A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256489(P2006−256489)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】