説明

耐切断性糸

少なくとも1本の単糸を含み、その単糸が高性能フィラメントおよび/または高性能ステープルファイバーを含む耐切断性糸であって、高性能フィラメントおよび/または高性能ステープルファイバーを含む単糸の自由体積が少なくとも15%であることを特徴とする耐切断性糸。この糸は、手袋などのような防護服の製造に適している。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、高性能フィラメントおよび/または高性能ステープルファイバーを含む少なくとも1本の単糸を含む、耐切断性糸に関する。本発明はまた、耐切断性糸を含む防護服および耐切断性糸を製造する方法に関する。
【0002】
高性能繊維を含む耐切断性糸およびその糸を含む衣服は公知である。耐切断性糸は、例えば、食肉産業、金属工業および木材工業で働く人々が切り傷を負わないように防護することを意図した衣服に使用される。そのような衣服の例として、手袋、エプロン、ズボン、袖口、袖などがある。
【0003】
耐切断性糸に使用される高性能繊維の例として、アラミド繊維および超高分子量ポリオレフィン繊維がある。特に、超高分子量ポリオレフィンの繊維を含む糸から製造される衣服は、際立った着用快適性を示す。
【0004】
欧州特許第445872号明細書には、少なくとも1本の単糸を含む耐切断性糸が開示されており、その単糸は超高分子量ポリエチレンのステープルファイバーから紡績され、その単糸は少なくとも1本の金属線と一緒に撚られている。この糸を含む衣服は切断抵抗が改善されるが、着用者の快適性に関してはさらに改善の余地がある。衣服が良好な着用快適性を示すことは非常に重要である。なぜなら関係する業界の人々は、高い生産性を維持しながら、かなり長期にわたって衣服を着用しなければならないからである。快適性が不十分であると、人々は疲労しやいか、または防護服の着用をやめることにさえなる。そうなると、事故が起こり、けがをする危険性が増大する。
【0005】
したがって本発明の目的は、着用者にとって快適さが向上した防護服を製造することが可能な耐切断性糸を提供することである。
【0006】
意外にも、この目的は、少なくとも1本の単糸を含む耐切断性糸であって、その単糸が高性能フィラメントおよび/または高性能ステープルファイバーを含み、その単糸の自由体積が少なくとも15%である耐切断性糸によって達成される。
【0007】
単糸の自由体積が大きいため、単糸は(したがって本発明による糸も)密度が低くなる。多くの用途において、本発明による糸は、既知の糸と同等の単位長さ当たりの重量で造られるであろう。その場合、本発明による糸は既知の糸よりも体積が大きくなるであろう。
【0008】
自由体積は、単糸のフィラメントやステープルファイバーや他の成分によって占有されておらず、空気によって占有されている単糸中の空間によって決まる。
【0009】
したがって、単糸の密度は以下よりも小さい。
【数1】


(式中、φは糸中のx番目のフィラメント、ステープルファイバーまたは更なる成分(存在している場合)の体積分率であり、δは単糸中のx番目のフィラメント、ステープルファイバーまたは更なる成分の密度であり、C=0.85である)
【0010】
単糸の密度は(したがって本発明による新規の糸の密度も)既知の糸の密度より低い。自由体積を大きくし密度を低くするには、例えば単糸の製造時に特別な処置を講じなければならない。
【0011】
国際公開第94/00627号パンフレットは、超高分子量ポリエチレンのステープルファイバーおよびアラミドのステープルファイバーを含む紡績糸を開示している。超高分子量ポリエチレン繊維は滑りやすいため、糸の紡績に関連した問題を克服するのにアラミドのステープルファイバーが使用されている。糸の密度を低下させるための特別な処理は示されていない。
【0012】
米国特許出願公開第2003/0129395号明細書では、アラミド繊維と200〜300℃の間の溶融温度を有する合成ポリマーの繊維とを含む糸が開示されている。繊維間の抱合を高めるために糸に対して熱処理が施されている。このため、糸の剛さおよび耐摩耗性が増大する。密度の低下は生じない。
【0013】
本発明による耐切断性糸を含む衣服は、着用者にとって快適さが向上する。その衣服は非常に柔軟性があり、体の輪郭に申し分なくフィットする。
【0014】
本発明による耐切断性糸の別の利点は、切断抵抗が向上するという点である。
【0015】
さらに別の利点は、本発明による耐切断性糸は寿命が向上し、そのためより長い期間にわたって衣服の防護レベルも向上するという点である。
【0016】
耐切断性糸は、高性能フィラメントおよび/または高性能ステープルファイバーを含む1本または複数本の単糸から構成されているのが好ましい。そのような耐切断性糸から製造される衣服は、着用快適性と切断抵抗の組合わせが最適なものとなる。耐切断性糸が1本の単糸から構成される場合、耐切断性糸はその1本の単糸と同等である。
【0017】
しかし、必要とされる低密度を有する少なくとも1本の単糸を糸が含む限り、あらゆる種類の構造を有する本発明による耐切断性糸を製造できる。例えば、耐切断性糸は、糸の中心を通っているガラスフィラメントまたは1本または複数本の金属線を含むことが可能であり、金属線は、高性能フィラメントおよび/または高性能ステープルファイバーを含む1本または複数本の単糸で覆われている。1本または複数本の単糸を、金属線またはガラスフィラメントと撚り合わせること、または別のポリマー(例えば、ポリエステルまたはナイロン)のフィラメントまたはステープルファイバーを含む(またはそれから構成される)単糸と撚り合わせることも可能である。
【0018】
本発明による糸で使用してよい金属線の例としては、銅線、鋼線、青銅線(bronze wire)およびアルミニウム線がある。焼きなましステンレス鋼(annealed stainless steel)線を使用するのが好ましい。
【0019】
高性能フィラメントおよびステープルファイバーの引張強さは、好ましくは少なくとも0.5GPa、より好ましくは少なくとも1GPa、さらにより好ましくは少なくとも1.5GPa、もっとも好ましくは少なくとも2GPaである。そのようなフィラメントおよびステープルファイバーの好例は、ポリアラミド、超高分子量ポリオレフィンおよび液晶高分子(LCP)のフィラメントおよびステープルファイバーである。
【0020】
フィラメントおよびステープルファイバーは、好ましくは超高分子量ポリオレフィン、より好ましくは超高分子量ポリエチレンである。そのようなフィラメントおよびステープルファイバーは、好ましくは、例えば欧州特許出願公開第0205960A号明細書、欧州特許出願公開第0213208A1号明細書、米国特許第4413110号明細書、英国特許出願公開第2042414A号明細書、欧州特許第0200547B1号明細書、欧州特許第0472114B1号明細書、国際公開第01/73173A1号パンフレット、およびAdvanced Fiber Spinning Technology,Ed.T.Nakajima,Woodhead Publ.Ltd(1994),ISBN 1−855−73182−7、およびそれらに引用されている文献に記載されているいわゆるゲル紡糸法(gel−spinning process)によって製造される。ゲル紡糸は、紡糸溶媒(spin solvent)中に超高分子量ポリエチレンを含んだ溶液から少なくとも1本のフィラメントを紡糸するステップ;得られたフィラメントを冷却してゲルフィラメント(gel filament)を形成するステップ;ゲルフィラメントから少なくとも一部の紡糸溶媒を除去するステップ;および紡糸溶媒の除去の前、その間またはその後に少なくとも1つの引伸ばしステップでフィラメントを引き伸ばすステップを含むものと理解されている。好適な紡糸溶媒としては、例えば、パラフィン、鉱油、ケロシンまたはデカリンがある。紡糸溶媒は、蒸発、抽出、または蒸発手段と抽出手段の組合わせによって除去できる。
【0021】
フィラメントの調製に使用する超高分子量線状ポリエチレンの重量平均分子量は好ましくは少なくとも400,000g/molである。
【0022】
フィラメントは、周知の手法に従って、例えば、けん切によってステープルファイバーに変えることができる。
【0023】
単糸は高性能ステープルファイバーを含むことが好ましい。
【0024】
単糸の自由体積は、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも35%、さらにより好ましくは少なくとも40%、もっとも好ましくは少なくとも45%である。
【0025】
したがって、高性能フィラメントおよび/またはステープルファイバーを含む単糸の密度は、好ましくは以下より小さい。
【数2】


(式中、φは単糸中のx番目のフィラメント、ステープルファイバーまたは更なる成分の体積分率であり、δは単糸中のx番目のフィラメント、ステープルファイバーまたは更なる成分の密度であり、C=0.8である)
【0026】
好ましくはC=0.75、より好ましくはC=0.7、さらにより好ましくはC=0.65、さらにより好ましくはC=0.6、もっとも好ましくはC=O.55である。
【0027】
本発明による耐切断性糸の単糸は、高性能フィラメントおよび/またはステープルファイバーに隣接して、第2フィラメントまたはステープルファイバー、第3フィラメントまたはステープルファイバー、あるいはさらには第n番目のフィラメントまたはステープルファイバーを含んでいてよい。
【0028】
単糸が1種類のフィラメントまたはステープルファイバーから構成されている場合、n=1であり、単糸の密度は以下より小さい。
C.δ 式II
(式中、δはフィラメントまたはステープルファイバーの密度であり、Cの意味は前述のとおりである。)
【0029】
単糸は、高性能フィラメントおよび/または高性能ステープルファイバー、および物理的処理または化学処理(好ましくは熱処理)によって収縮またはカールしうる更なる成分を含むことが好ましい。更なる成分は、好ましくはフィラメントまたはステープルファイバー、もっとも好ましくはステープルファイバーである。
【0030】
好ましい実施態様では、単糸は、高性能ステープルファイバーおよび(熱処理によって収縮またはカールしうる第2構成成分として)第2ステープルファイバーを含む。
【0031】
その場合、単糸の密度は以下より小さい。
C.(φδ+φδ) 式III
(式中、φは高性能ステープルファイバーの体積分率であり、δは高性能ステープルファイバーの密度であり、φは第2ステープルファイバーの体積分率であり、δは第2ステープルファイバーの密度であり、Cの意味は前述のとおりである。)
【0032】
本発明はまた、
a)高性能フィラメントまたは高性能ステープルファイバーを用意するステップと、
b)物理的処理または化学処理によって収縮またはカールしうるフィラメントまたはステープルファイバーを用意するステップと、
c)ステップa)のフィラメントまたはステープルファイバーおよびステップb)のフィラメントまたはステープルファイバーを含む前駆単糸を紡績するステップと、
d)任意選択的に、ステップc)の少なくとも1本の前駆単糸を含む前駆糸を紡績するステップと、
e)ステップc)で得られた前駆単糸に処理を施すか、または前駆糸がステップd)で得られた場合にはその前駆糸に処理を施して、ステップb)のフィラメントまたはステープルファイバーを長さ方向に収縮させるかまたはフィラメントまたはステープルファイバーをカールさせるステップと
を含む、本発明による糸を製造する方法に関する。
【0033】
本発明はまた、好ましくは、
a)高性能ステープルファイバーのスライバーを製造するステップと、
b)物理的処理または化学処理によって収縮またはカールしうる第2ステープルファイバーのスライバーを製造するステップと、
c)ステップa)およびb)で得られたスライバーをその2種類のステープルファイバーの混合物を含むフライヤに混ぜるステップと、
d)高性能ステープルファイバーと第2ステープルファイバーとを含む前駆単糸をフライヤから紡績するステップと、
e)任意選択的に、ステップd)で得られた少なくとも1本の前駆単糸を含む前駆糸を紡績するステップと、
f)ステップd)で得られた前駆単糸に処理を施すか、または前駆糸が製造された場合にはその前駆糸に処理を施して、第2ステープルファイバーを長さ方向に収縮させるかまたは第2ステープルファイバーをカールさせるステップと
を含む、糸の製造方法に関する。
【0034】
高性能ステープルファイバーのスライバーおよび第2ステープルファイバーのスライバーは、対応する連続フィラメントの糸をけん切することによって製造できる。本発明による方法のステップf)を実施するために、ステープルファイバーを長さ方向に収縮させるかまたはステープルファイバーをカールさせることができる限り、第2ステープルファイバーとして、あらゆる種類のステープルファイバーを使用してよい。
【0035】
1つの好ましい実施態様では、収縮またはカールしうるフィラメントまたはステープルファイバーとして、ポリアクリロニトリルのフィラメントまたはステープルファイバーが使用される。このようにして、非常に低密度でありそれゆえに高体積である単糸を含む耐切断性糸を得ることができる。さらに、耐切断性糸はあらゆる種類の色のものを容易に得ることができる。
【0036】
別の好ましい実施態様では、収縮またはカールしうるフィラメントまたはステープルファイバーとして、2成分(bi−component)のフィラメントまたはステープルファイバー、例えば、2成分ナイロンまたは2成分ポリエステルのフィラメントまたはステープルファイバーを使用する。2成分ポリエステルのフィラメントまたはステープルファイバーを使用するのが好ましい。そのようなステープルフィラメントおよびファイバーは、例えば、Invistaから供給されている。そのようなフィラメントまたはファイバーは、2種類のフィラメント要素またはファイバー要素を含み、各要素の1つの面で一体的に結合されているフィラメントまたはファイバーの長さ方向に伸びている。一方の要素はPETであり、他方の要素はコポリエステルであることが好ましい。
【0037】
好ましい実施態様では、どちらのスライバーもこの目的用のよく知られている装置、例えば、混合・引張装置(blending and drafting machine)を使用して混ぜることができる。このようにして、高性能ステープルファイバーと第2ステープルファイバーの均質ブレンド(intimate blend)を含むスライバーを得る。
【0038】
前駆単糸は、この目的用のよく知られている装置、例えば、梳毛糸中空紡績機(worsted hollow spinning equipment)またはリング精紡機(ring spinning equipment)を使用して紡いでよい。単糸がフィラメントとステープルファイバーを含む場合には、ドレフ紡績機(dreff spinning equipment)を使用してよい。
【0039】
フィラメントまたは第2ステープルファイバーを収縮またはカールさせる処理として、好ましくは熱処理を使用する。この処理は、熱空気、熱蒸気または温液を、前駆単糸に施すか、あるいは(前駆糸を製造した場合には)前駆糸に施すことによって実施してよい。糸を染色する場合には、熱い染色浴(dying bath)中で行われる染色工程のときに熱処理を行うのが有利である。当然だが、高性能ステープルファイバーの性質を劣化させないよう、熱処理が十分低い温度であることは重要である。ポリアクリロニトリルのフィラメントまたはステープルファイバーを使用する場合、好ましくは80〜120℃の間の温度で処理を実施する。処理の所要時間は、とりわけ前駆単糸の太さに依存するか、または(前駆糸が製造された場合は)前駆糸の太さに依存し、これは当業者が容易に決定できる。2成分ポリエステルまたは2成分ナイロンのフィラメントまたはステープルファイバーを使用する場合、好ましくは100〜120℃の間の温度で処理を行う。
【0040】
本発明による方法では、ステップe)を実施し、少なくとも1本の前駆単糸を含む前駆糸を紡績するのが好ましい。その場合、ステップf)の処理の後、本発明による耐切断性糸が得られる。
【0041】
しかし、本発明による方法からステップe)を取り除くことも可能である。例えば、本発明による糸が1本の単糸から構成される場合にそうなるであろう。その場合には、糸はステップf)の後に直ちに得られる。しかし、ステップe)を取り除き、前駆単糸に対するステップf)の処理の後に、更なる要素を任意選択的に含む耐切断性糸に単糸を組み込むことにより、本発明による耐切断性糸を製造することもできる。これは、例えば、こうして得られた単糸を2本以上撚り合わせるか、金属線を中心にして1本または複数本の単糸を撚るか、金属線などと一緒に単糸を撚り合わせることによって達成できる。
【0042】
本発明による耐切断性糸の単糸は、95〜30重量%の高性能フィラメントまたは高性能ステープルファイバーを含んでよい。
【0043】
本発明による糸の単糸は、95重量%〜50重量%の間の高性能フィラメントまたは高性能ステープルファイバー、および物理的処理または化学処理が行われると収縮またはカールしうる5重量%〜50重量%の間のフィラメントまたはステープルファイバーを含むのが好ましい。
【0044】
本発明による糸の単糸は、90重量%〜55重量%の間の高性能フィラメントまたは高性能ステープルファイバー、および収縮またはカールしうる10重量%〜45重量%の間のフィラメントまたはステープルファイバーを含むのがより好ましい。
【0045】
本発明による糸の単糸は、80重量%〜60重量%の間の高性能フィラメントまたは高性能ステープルファイバー、および収縮またはカールしうる20重量%〜40重量%の間のフィラメントまたはステープルファイバーを含むのがもっとも好ましい。
【0046】
単糸は、超高分子量ポリエチレンのステープルファイバーおよびポリアクリロニトリルのステープルファイバーを含むのが好ましい。
【0047】
本発明による耐切断性糸は、例えば、人々(例えば食肉産業、金属工業および木材工業で働く人々)が切り傷を負わないよう防護することを意図した衣服に使用される。本発明はまたそのような衣服に関する。そのような衣服の好例として、手袋、エプロン、ズボン、袖口、袖などがある。
【0048】
[比較実験A]
超高分子量ポリエチレンの高性能ステープルファイバーを含むスライバーは、標準的なけん切機を使用して、ダイニーマ(Dyneema(商標))SK75糸1760dtex(オランダ国のDMダイニーマ(Dyneema)が提供している超高分子量ポリエチレンのフィラメントを含む糸)をけん切することによって得た。スライバーを紡績して単糸にした。最終的に2本の単糸を撚り合わせて、最終糸カウント(final yarn count)がNm34/2(メートル番手(Number metric)が34km/kg、2本の単糸である)である耐切断性糸にした。
【0049】
単糸の密度は830kg/mであった。密度は、1メートルの単糸の重量を測定し、写真乾板での単糸の射影から糸の直径を測定してから計算した。
【0050】
超高分子量ポリエチレンの密度は970kg/mである。式IIを使用すると、単糸の自由体積は14%となる。式II中の定数Cの対応値は0.86である。
【0051】
[実施例I]
超高分子量ポリエチレンの高性能ステープルファイバーを含むスライバーは、標準的なけん切機を使用して、ダイニーマ(商標)SK75糸1760dtexをけん切することによって得た。さらに、ポリアクリロニトリルのステープルファイバーを含むスライバーは、標準的なけん切機を使用して、タイター(titer)がフィラメント当たり2.2dtexであるPANフィラメント(ドイツ国のバイエル(Bayer)から提供されているドラロン(Dralon(商標))フィラメント)をけん切することによって得た。両方のスライバーを、フランス国のNSCが提供しているNSCドラフティング・マシン(drafting machine)を使用して混合した。80重量%の超高分子量ポリエチレンステープルファイバーと20重量%のポリアクリロニトリルステープルファイバー(第2ステープルファイバーとして)との均質混合物を含むフライヤを得た。を用いてフライヤを紡績して前駆単糸にした。
【0052】
前駆糸は2本の前駆単糸を撚り合わせて製造した。前駆糸はHacoba(商標)装置を使用して熱処理した。温度が100°の蒸気を60秒間当てた。こうして得られた本発明による耐切断性糸の最終糸カウントは、Nm31/2(メートル番手が31km/kg、2本の単糸である)である。単糸の密度は740kg/mであった。この糸を編むことにより、この糸から手袋を作った。手袋は重量が軽く、柔らかくて非常に柔軟性があった。
【0053】
超高分子量ポリエチレンステープルファイバーおよびPANステープルファイバーの密度は、対応するポリマーの密度と等しいと見なされ、それは、超高分子量ポリエチレンの場合は970kg/m、PANの場合は1300kg/mである。超高分子量ポリエチレンステープルファイバーの体積分率を計算すると0.843になり、PANステープルファイバーの体積分率を計算すると0.157になる。式IIIに代入すると次のようになる。
【0054】
単糸の密度は以下より小さい。
C.(φδ+φδ)=C.(0.843×970+0.153×1300)=1017.C.
【0055】
したがって、この場合、単糸の密度が740kg/mでは、Cを計算すると値が少なくとも740/1017=0.73となる。これは27%の自由体積と一致する。
【0056】
[実施例II]
実施例Iを繰り返したが、ただし、単糸は60重量%の超高分子量ポリエチレンステープルファイバーおよび40重量%のPanステープルファイバーを含んでいた。
【0057】
単糸の密度は480kg/mである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の単糸を含み、前記単糸が高性能フィラメントおよび/または高性能ステープルファイバーを含む耐切断性糸であって、前記高性能フィラメントおよび/または高性能ステープルファイバーを含む前記単糸の自由体積が少なくとも15%であることを特徴とする耐切断性糸。
【請求項2】
前記高性能フィラメントおよび/または高性能ステープルファイバーが超高分子量ポリオレフィンのフィラメントおよび/またはステープルファイバーであることを特徴とする、請求項1に記載の耐切断性糸。
【請求項3】
前記単糸の自由体積が少なくとも20%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の耐切断性糸。
【請求項4】
前記単糸の自由体積が少なくとも25%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の耐切断性糸。
【請求項5】
前記単糸の自由体積が少なくとも30%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の耐切断性糸。
【請求項6】
前記単糸が高性能フィラメントおよび/または高性能ステープルファイバー、および物理的処理または化学処理によって収縮またはカールしうる更なる構成成分を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の耐切断性糸。
【請求項7】
前記更なる構成成分がフィラメントまたはステープルファイバーであることを特徴とする、請求項6に記載の耐切断性糸。
【請求項8】
前記単糸が95重量%〜30重量%の間の高性能フィラメントおよび/またはステープルファイバーを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の耐切断性糸。
【請求項9】
前記更なる構成成分としてポリアクリロニトリルのフィラメントまたはステープルファイバーが使用されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の耐切断性糸。
【請求項10】
a)高性能フィラメントまたは高性能ステープルファイバーを用意するステップと、
b)物理的処理または化学処理によって収縮またはカールしうるフィラメントまたはステープルファイバーを用意するステップと、
c)ステップa)の前記フィラメントまたはステープルファイバーおよびステップb)の前記フィラメントまたはステープルファイバーを含む前駆単糸を紡績するステップと、
d)任意選択的に、ステップc)の少なくとも1本の前駆単糸を含む前駆糸を紡績するステップと、
e)ステップc)で得られた前記前駆単糸に物理的処理または化学処理を施すか、または前駆糸がステップd)で製造された場合には前記前駆糸に前記処理を施して、ステップb)の前記フィラメントまたはステープルファイバーを長さ方向に収縮させるかまたは前記フィラメントまたはステープルファイバーをカールさせるステップと
を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の糸を製造する方法。
【請求項11】
a)前記高性能ステープルファイバーのスライバーを製造するステップと、
b)物理的処理または化学処理によって収縮またはカールしうる第2ステープルファイバーのスライバーを製造するステップと、
c)ステップa)およびb)で得られた前記スライバーを前記2種類のステープルファイバーの混合物を含むフライヤに混ぜるステップと、
d)前記高性能ステープルファイバーと前記第2ステープルファイバーとを含む前駆単糸を前記フライヤから紡績するステップと、
e)任意選択的に、ステップd)で得られた少なくとも1本の前駆単糸を含む前駆糸を紡績するステップと、
f)ステップd)で得られた前記前駆単糸に物理的処理または化学処理を施すか、または前駆糸が製造された場合には前記前駆糸に前記処理を施して、前記第2ステープルファイバーを長さ方向に収縮させるかまたは前記第2ステープルファイバーをカールさせるステップ。
【請求項12】
前記フィラメントおよび/またはステープルファイバーを収縮またはカールさせる前記処理が熱処理であることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の糸を含む衣服。

【公表番号】特表2009−538995(P2009−538995A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512485(P2009−512485)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004758
【国際公開番号】WO2007/140905
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】