説明

耐圧防爆型ガス検知器

【課題】 高いガス検知の応答性が得られ、しかもガス吸引手段に対する負荷が軽減される耐圧防爆型ガス検知器を提供すること。
【解決手段】 この耐圧防爆型ガス検知器は、ガス透過性を有する金属焼結体よりなる火炎逸走防止部材を有するフレームアレスタがガスセンサと火炎逸走防止部材との間にガス導入空間を区画するようガスセンサを囲んで設けられると共にガード部材がフレームアレスタを囲むよう設けられ、更にカバー部材がガード部材を覆うよう設けられ、ガス吸引手段によって導入される被検査ガスを火炎逸走防止部材を介してガス導入空間に供給するスリーブ状のガス導入ノズルがカバー部材を気密に貫通してガード部材に螺合されて装着されており、ガス導入ノズルは、先端部が軸方向に弾性的に変位されてガス噴出口が開口する先端面が火炎逸走防止部材の表面に押圧された状態で密着して、設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧防爆型ガス検知器に関し、詳しくは、例えば、洞道、地下等の土木工事における酸素濃度監視、閉鎖場所での酸素濃度監視、酸素消費設備での酸素漏洩監視、化学工場での酸素濃度監視など酸欠事故の発生を防止するためなどに用いられる耐圧防爆型ガス検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
可燃性のガスや蒸気を含む爆発性雰囲気の存在により、引火、爆発が発生し得る環境で使用されるガス検知器においては、所定の防爆性能を有した防爆構造を具備していることが要求されており、例えば、ガス透過性を有する金属焼結体が火炎逸走防止部材として用いられて防爆構造が形成された構成のものが提案されている(例えば特許文献1参照)。 このような金属焼結体を用いた防爆構造を有するガス検知器においては、例えば、ガス吸引手段によって吸引された被検査ガスがガス導入ノズルによって金属焼結体を介してガスセンサに供給される。
【0003】
しかしながら、このようなガス検知器においては、金属焼結体の通気抵抗のため、応答時間(応答速度)が遅くなりやすいという、問題がある。
【0004】
このような問題に対して、ガス導入ノズルのガス噴出口が金属焼結体の表面に密着された状態とされていれば、良好なガス検知の応答性が得られることが期待される。しかし、実際には、金属焼結体の厚みについての寸法精度の誤差が大きく、しかも、各構成部品の寸法精度の誤差が累積される結果、ガス導入ノズルを金属焼結体に過大な圧力を作用させずに金属焼結体に密着した状態を得ることはきわめて困難である。
そして、ガス導入ノズルのガス噴出口が金属焼結体の表面に密着していない場合には、ガス導入ノズルのガス噴出口から噴出された被検査ガスが拡散してしまい、必要な流量の被検査ガスをフレームアレスタを通過させてガスセンサに供給するために時間がかかるので、ガス検知の応答性が低くなる。一方、ガス導入ノズルと金属焼結体との密着状態を得るために、ガス導入ノズルによって過大な押圧力が金属焼結体に作用された状態とされた場合には、金属焼結体の変形あるいは破損により、所期の防爆性能が得られなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−260686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、ガス導入用ノズルを火炎逸走防止部材に過大な圧力を作用させずに当該火炎逸走防止部材に密着した状態を容易にかつ確実に得ることができ、高いガス検知の応答性を得ることができる耐圧防爆型ガス検知器を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、ガス吸引手段に対する負荷を軽減することができると共に信頼性の高い出力を得ることのできる耐圧防爆型ガス検知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の耐圧防爆型ガス検知器は、ガス透過性を有する金属焼結体よりなる火炎逸走防止部材を有し、ガスセンサを囲むよう設けられて当該ガスセンサと前記火炎逸走防止部材との間にガス導入空間を区画するフレームアレスタと、当該フレームアレスタを囲むよう設けられたガード部材と、当該ガード部材を覆うよう設けられたカバー部材と、当該カバー部材を気密に貫通して前記ガード部材に螺合されて装着された、ガス吸引手段によって導入される被検査ガスを前記火炎逸走防止部材を介して前記ガス導入空間に供給するスリーブ状のガス導入ノズルとを備えてなり、
前記ガス導入ノズルは、先端部が当該ガス導入ノズルの軸方向に弾性的に変位されて、ガス噴出口が開口する先端面が前記火炎逸走防止部材の表面に押圧された状態で密着して設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の耐圧防爆型ガス検知器においては、前記ガス導入ノズルの先端面には、前記ガス噴出口から径方向外方に伸びる余剰圧力開放用凹状部が形成されており、当該余剰圧力開放用凹状部が形成された領域以外の先端面領域が前記火炎逸走防止部材の表面に接触された構成とされていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の耐圧防爆型ガス検知器においては、前記ガス導入ノズルは、前記ガード部材に螺合されて装着されるノズル本体と、当該ノズル本体の先端部に当該ノズル本体の軸方向にスライド可能に設けられた先端筒状部材と、当該先端筒状部材と前記ノズル本体との間に介挿された、前記先端筒状部材の変位に伴って軸方向に弾性的に変形する伸長スプリングとにより構成されたもの、あるいは、前記ガード部材に螺合されて装着されるノズル本体と、当該ノズル本体の先端部に設けられた、軸方向に弾性的に縮小可能なベローズとにより構成されたものを用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の耐圧防爆型ガス検知器によれば、ガス導入ノズルがガード部材を気密に貫通してカバー部材に螺合されて装着されるに際して、ガス導入ノズルの先端面が火炎逸走防止部材の表面に対接された状態においてさらに螺合により火炎逸走部材を押圧する方向に変位された場合に、当該ガス導入ノズルの先端部が軸方向に弾性的に変位される構成とされていることにより、火炎逸走防止部材およびその他の構成部材の寸法精度の誤差が補償されると共に火炎逸走防止部材に作用される押圧力が緩和されるので、ガス導入ノズルの先端面が火炎逸走防止部材の表面に適正な大きさの押圧力で密着した状態を確実にかつ容易に得ることができる。従って、被検査ガスが火炎逸走防止部材を介してガス導入空間に速やかに供給されることとなるため、高いガス検知の応答性を得ることができる。
【0011】
また、ガス導入ノズルの先端面に、ガス噴出口から径方向外方に伸びる余剰圧力開放用凹状部が形成されており、当該余剰圧力開放用凹状部以外の先端面領域が火炎逸走防止部材の表面に接触された構成とされていることにより、被検査ガスがガス噴出口から噴出される際の火炎逸走防止部材の通気抵抗によるガス供給に係る余剰圧力が余剰圧力開放用凹状部を介して開放されるので、火炎逸走防止部材による通気性負荷を小さく低減することができ、これにより、ガス吸引手段への負荷を軽減することができると共に、ガス導入空間における内圧変化を小さく抑制することができて信頼性の高いガス検知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の耐圧防爆型ガス検知器の一例における構成の概略を示す正面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】フレームアレスタの一構成例を示す軸方向に沿った断面図である。
【図4】ガス導入ノズルの一構成例を示す軸方向に沿った断面図である。
【図5】(A)図4におけるX部の拡大断面図、(B)先端側から見た端面図である。
【図6】本発明の防爆型ガス検知器を備えたガスサンプリングシステムの一例における構成の概略を示す配管図である。
【図7】ガス導入ノズルの他の構成例を示す、軸方向に沿った部分断面図である。
【図8】実験例において構築した試験用のガスサンプリングシステムの構成の概略を示す配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の耐圧防爆型ガス検知器の一例における構成の概略を示す正面図、図2は、図1におけるA−A線断面図である。以下においては、便宜上、図2における左方を「前方」、右方を「後方」というが、耐圧防爆型ガス検知器の使用形態等を限定するものではない。
この耐圧防爆型ガス検知器(以下、単に「ガス検知器」という。)10は、ガード部材12がベース部材20に対して装着部12Aにおいてネジ止めされることにより装着されてなるハウジング11を備えており、更に、密閉された空間を区画する有底円筒状のカバー部材38がガード部材12を覆うようリング状のパッキングPを介して気密に設けられている。カバー部材38には、前壁における中央位置にノズル装着用貫通孔39が形成されていると共に外周面にガス排出用ニップル58が設けられている。図1および図2において18はケーブルグランドである。
【0014】
ガード部材12は、全体が円筒状の鳥かご型のものであって、各々前端中央位置から放射状に径方向外方に向かって伸び、他端側部分が後方に向かって伸びるよう湾曲された複数本例えば6本の柱状のビーム13を有し、各々のビーム13の一端側部分が集結されて形成された前壁部分14の中央位置には、ノズル装着部15が形成されている。ノズル装着部15は、前壁部分14に形成された貫通孔の内周面にネジ溝が形成されて構成されている。そして、各々のビーム13の後端面は円筒状部分16の前方側開口端面に一体に連結されており、円筒状部分の後端側部分がベース部材20の前方開口部に挿入される。
【0015】
ハウジング11の内部には、例えば円柱状のガスセンサ25が配置されていると共にガスセンサ25を囲むようフレームアレスタ30が設けられている。
【0016】
ガスセンサ25としては、特に限定されるものではないが、例えば、当該耐圧防爆型ガス検知器10が検知対象空間の環境雰囲気の空気における酸素濃度の監視に用いられる場合には、ガルバニ電池式酸素センサを用いることができる。
【0017】
フレームアレスタ30は、図3に示すように、全体が略円筒状のホルダー部材31と、このホルダー部材31によって保持固定された円板状の火炎逸走防止部材35とにより構成されている。ホルダー部材31は、小径筒状部分31Aとこの小径筒状部分31Aの後端に連続する大径筒状部分31Bを有し、小径筒状部分31Aの前方側開口縁部分の内周面には、径方向内方に突出する突出縁部32が内周面の全周にわたって形成されている。そして、小径筒状部分31Aの周壁および突出縁部32によって区画された凹所内に火炎逸走防止部材35が収容されてホルダー部材31の前方側開口を塞ぐようホルダー部材31に保持固定されている。
【0018】
フレームアレスタ30は、ホルダー部材31の段部31Cがガード部材12における円筒状部分16の内周面に形成されたフレームアレスタ保持部に係止された状態で、ホルダー部材31の大径筒状部分31Bの外周面がガード部材12における円筒状部分16の内周面に嵌合されて気密に装着されている。
また、ホルダー部材31の内部において、ガスセンサ25をその前端側部分が収容された状態で保持する有底円筒状のセンサホルダー26が装着されており、センサホルダー26の前壁に形成された開口部およびフレームアレスタ30のホルダー部材31における突出縁部32による開口部によって構成されたガス導入空間Sが、ガスセンサ25と火炎逸走防止部材35との間に形成されている。
【0019】
火炎逸走防止部材35は、例えばステンレス鋼粉末の焼結体や銅合金粉末の焼結体などの金属焼結体により構成されており、十分なガス透過性が得られると共に火炎逸走が確実に防止されるという理由から、気孔サイズが40〜100μm、密度が4.0〜7.0g/cm3 、厚みが3〜5mmであるものが用いられることが好ましい。
【0020】
このガス検知器10は、適宜のガス吸引手段によって導入される被検査ガスを火炎逸走防止部材35を介してガス導入空間Sに供給する全体が略スリーブ状のガス導入ノズル40を備えている。
この実施の形態に係るガス検知器10において用いられるガス導入ノズル40は、図4および図5に示すように、スリーブ状のノズル本体41と、ノズル本体41の基端部(ガス導入側前端部)に連続するノズル本体41よりも外径寸法の大きい円筒状の頭部43と、ノズル本体41の先端部(ガス噴出側後端部)を収容する状態で設けられた有底円筒状の先端筒状部材45と、先端筒状部材45の端壁の内面とノズル本体41の先端面と間に、コイル軸がノズル本体41の軸方向に伸びる状態で介挿された軸方向に弾性的に変形する伸長スプリング51とにより構成されている。
先端筒状部材45の開口部の内周面には、スリーブ部材50が設けられており、このスリーブ部材50の先端面にノズル本体41の先端に形成されたフランジ状の係止部44の後端面が係止され、これにより、先端筒状部材45がノズル本体41の軸方向(図5(A)において左右方向)にスライド可能に設けられている。
【0021】
このガス導入ノズル40は、頭部43がカバー部材38の前壁の前面に対接してノズル本体41がカバー部材38の前壁を気密に貫通する状態で、ノズル本体41の外周面に形成されたネジ部42がガード部材12におけるノズル装着部15に螺合されることによって装着されており、先端筒状部材45の先端面が火炎逸走防止部材35の表面に押圧された状態で密着して設けられている。
【0022】
先端筒状部材45の端壁には、中央位置にガス噴出口46が形成されていると共に先端面にガス噴出口46から径方向外方に伸びるスリット48よりなる余剰圧力開放用凹状部が形成されており、これにより、余剰圧力開放用凹状部以外の先端面領域が火炎逸走防止部材35の表面に接触される。この例においては、スリット48が先端筒状部材45の外周面における互いに対向する周方向位置(2箇所)に開口するよう形成されている。
【0023】
スリット48の、先端筒状部材45の外周面における開口面積は、合計で例えば0.50〜2.0mm2 であることが好ましく、これにより、火炎逸走防止部材35を構成する金属焼結体の通気抵抗によるガス噴出口46での圧力上昇を抑制することができてガス吸引手段に対する負荷を軽減させることができると共に信頼性の高い検出出力を得ることができる。
【0024】
また、先端筒状部材45の軸方向の可動距離は、例えば0.5〜2.0mmであることが好ましく、これにより、例えば火炎逸走防止部材35の厚み寸法の誤差を含むガス検知器10全体の寸法誤差を確実に補償することができると共にガス導入ノズル40の火炎逸走防止部材35に対する押圧力を適正な大きさに調整することができてガス導入ノズル40と火炎逸走防止部材35との適正な密着状態を確実に得ることができる。
【0025】
〔ガスサンプリング装置〕
上記のガス検知器10は、例えば、アスピレータや吸引ポンプなどのガス吸引手段およびその他の構成部材と共にガスサンプリングシステムを構築して用いられる。
図6は、上記の防爆型ガス検知器を備えたガスサンプリングシステムの一例における構成の概略を示すブロック図である。図6において、61は防塵フィルター、62は三方電磁弁(ガス流路切り換え手段)、63は、ガスサンプリングシステム全体を流過するガス流量を監視するバルブ付き流量計、64はニードルバルブ、65はアスピレータ(ガス吸引手段)、66は減圧弁、60Aは被検査ガス入口、60Bは校正ガス入口、60Cはガス出口、60Dは圧縮空気入口である。ここに、アスピレータ65は、十分なガス輸送能力の確保のため、ある程度大きい流量をガス検知器10に供給することのできる性能、例えば最大流量が2.6リットル/min程度である性能を有するものが用いられることが好ましい。
【0026】
このガスサンプリングシステムにおいては、三方電磁弁62の動作状態が制御されて、被検査ガス入口60Aから三方電磁弁62に至る被検査ガス導入路70Aが耐圧防爆型ガス検知器10に至る主ガス導入路71に接続されると共に、校正ガス入口60Bから三方電磁弁62に至る校正ガス導入路70Bが遮断された状態において、図示しない適宜の空気供給手段によって、圧縮空気が圧縮空気入口60Dより減圧弁66を介してアスピレータ65に供給されることによりアスピレータ65が作動されると、検知対象空間内の環境雰囲気の空気(被検査ガス)がアスピレータ65によって吸引されてガス検知器10のガス導入ノズル40に導入され、ガス導入ノズル40のガス噴出口46から噴出された被検査ガスが火炎逸走防止部材35を介してガス導入空間S内に供給されてガスセンサ25による検知対象ガス成分の濃度検出が行われる。
【0027】
一方、ガスセンサ25の校正作業を行う場合には、三方電磁弁62の動作状態が制御されて、校正ガス入口60Bから三方電磁弁62に至る校正ガス導入路70Bがガス検知器10に至る主ガス導入路71に接続されると共に被検査ガス入口60Aから三方電磁弁62に至る被検査ガス導入路70Aが遮断された状態において、アスピレータ65が作動されることにより校正ガスがガス検知器10のガス導入ノズル40に導入され、ガス導入ノズル40のガス噴出口46から噴出された校正ガスが火炎逸走防止部材35を介してガス導入空間S内に供給される。
【0028】
而して、上記の構成のガス検知器10によれば、ガス導入ノズル40がガード部材12のノズル装着部15に螺合されて装着されるに際して、ガス導入ノズル40における先端筒状部材45の先端面が火炎逸走防止部材35の表面に対接された状態からさらに螺合により火炎逸走防止部材35を押圧する方向に変位された場合に、当該ガス導入ノズル40の先端部に設けられた伸長スプリング51が弾性的に圧縮変形されることにより先端筒状部材45が軸方向にスライドして先端筒状部材45の先端面の位置が変位される構成とされていることにより、火炎逸走防止部材35およびその他の構成部材の寸法精度の誤差が補償されると共にガス導入ノズル40による火炎逸走防止部材35に作用される押圧力が緩和されるので、ガス導入ノズル40における先端筒状部材45の先端面が火炎逸走防止部材35の表面に適正な大きさの押圧力で密着した状態を確実にかつ容易に得ることができる。従って、被検査ガスが火炎逸走防止部材35を介してガス導入空間Sに速やかに供給されることとなるため、高いガス検知の応答性を得ることができる。また、所期の性能を有するものを高い生産性で得ることができる。
【0029】
しかも、ガス導入ノズル40における先端筒状部材45の先端面に、ガス噴出口46から径方向外方に伸びるスリット48が形成されており、スリット48以外の先端面領域が火炎逸走防止部材35の表面に接触された構成とされていることにより、被検査ガスがガス噴出口46から噴出される際の火炎逸走防止部材35の通気抵抗によるガス供給に係る余剰圧力がスリット48を介して開放されるので、火炎逸走防止部材35による通気性負荷を小さく低減することができ、これにより、ガス吸引手段への負荷を軽減することができると共に、ガス導入空間Sにおける内圧変化を小さく抑制することができて信頼性の高いガス検知を行うことができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
図7は、ガス導入ノズルの他の構成例を示す、軸方向に沿った部分断面図である。
このガス導入ノズル40Aは、図4および図5に示す構成のものにおいて、先端筒状部材および伸長スプリングに代えて、ノズル本体41の先端部に、軸方向に弾性的に縮小可能なベローズ55が設けられた構成とされていることの他は、図4および図5に示す構成のものと同一の構成を有する。
ベローズ55を構成する材料としては、例えばフッ素系ゴム、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、ウレタンゴムなどを例示することができ、耐ガス性を有する材料であることが好ましい。
このような構成のガス導入ノズル40Aによっても、上記の実施形態に係る耐圧防爆型ガス検知器と同様の効果を得ることができる。
【0031】
ガス導入ノズルにおいて、ガス噴出口を有する先端面に形成される余剰圧力開放用凹状部の形状、形成位置およびその他の構成は特に限定されるものでなない。
【0032】
さらにまた、例えば、本発明に係る耐圧防爆型ガス検知器を使用するに際しての配管構成は、上記において例示したものに限定されず、ガス吸引手段がガス流通方向における耐圧防爆型ガス検知器の上流側の位置に設けられていてもよい。
【0033】
以下、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
<実験例1>
図1乃至図5に示す構成に従って、互いに同一の仕様を有する5個の本発明に係る耐圧防爆型ガス検知器を作製した。この耐圧防爆型ガス検知器の仕様は次に示す通りである。〔耐圧防爆型ガス検知器仕様〕
ガスセンサ(25):ガルバニ電池式酸素センサ、
火炎逸走防止部材(35):粒径が300〜500nmの範囲内にある球状のSUS粉末の焼結体、気孔サイズが77〜85μm、密度が6.1g/cm3 、厚さが3mm、外径がφ40mm、
ガス導入空間(S):容積3600mm3
ガス導入ノズルの先端筒状部材(45):内径φ4mm、長さ6mm、ガス噴出口(46)の開口径φ2.6mm、スリット(48)の幅(w)1.0mm、スリット(48)の深さ(h)が0.5mm、開口面積1.0(=0.5+0.5)mm2
伸長スプリング(51):材質;SUS、線径φ0.26mmの線材がコイル径3.5mmで巻回されてなるもの、軸方向長さ5.5mm、
ガス導入ノズルのノズル本体(41):先端開口径φ2.6mm、全長(頭部を含む)38.8mm
【0034】
作製した耐圧防爆型ガス検知器の各々に対して、図8に示すように、マスフロー流量計「SEF−21A」(エステック社製、流量レンジ5L/min)80、容量が1リットルであるバッファ81、マノメータ(レンジ10kPa)82、および最大流量が2.6リットル/minである性能を有するポンプ83を配管することにより試験用のガスサンプリングシステムを構築し、各々の耐圧防爆型ガス検知器について、サンプルガスとしてN2 ガス(純度99.9%)を用いて、ガスサンプリングシステムに流通されるガス流量をマスフロー流量計80によって測定すると共にガス圧力をマノメータ82によって測定することにより、(イ)ガス検知の応答性の評価、および、(ロ)火炎逸走防止部材による通気性負荷の評価を行った。結果を下記表1に示す。ガス検知の応答性は、規定濃度のサンプルガスがガス導入ノズルに導入された時点から、規定濃度の90パーセントの濃度値に到達するまでの時間(ガス応答時間T90〔s〕))を測定することにより評価を行った。
【0035】
<実験例2>
実験例1において作製した耐圧防爆型ガス検知器において、ガス導入ノズルとして図7に示す構成のものを用いたことの他は、実験例1における耐圧防爆型ガス検知器と同一の仕様を有する5個の耐圧防爆型ガス検知器を作製し、上記実験例1と同様の方法により、(イ)ガス検知の応答性の評価、および、(ロ)火炎逸走防止部材による通気性負荷の評価を行った。結果を下記表1に示す。
ガス導入ノズルにおけるベローズ(55):材質;ウレタンゴム、硬度(JIS−A)50°、最大外径4.2mm、軸方向の最大縮小量2.0mm、ガス噴出口の開口径φ3.6mm、蛇腹部の最小内径φ2.6mm、スリット(48)の幅(w)1mm、スリット(48)の深さ(h)が0.5mm、開口面積1.0(=0.5+0.5)mm2
【0036】
<比較実験例1>
実験例1において作製した耐圧防爆型ガス検知器において、ガス導入ノズルとして、先端筒状部材および伸長スプリングを有さないものを用いたことの他は、実験例1における耐圧防爆型ガス検知器と同一の仕様を有する3個の比較用の耐圧防爆型ガス検知器を作製し、上記実験例1と同様の方法により、(イ)ガス検知の応答性の評価、および、(ロ)火炎逸走防止部材による通気性負荷の評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
以上の結果から明らかなように、本発明に係る実験例1および実験例2の耐圧防爆型ガス検知器によれば、高いガス検知の応答性を得ることができると共に火炎逸走防止部材による通気性負荷を軽減することができてガス吸引手段に対する負荷を軽減することができることが確認された。
一方、比較実験例1の耐圧防爆型ガス検知器においては、ガス検知の応答性が低く、また、火炎逸走防止部材による通気性負荷が高くなることが確認された。この理由は、同一設計条件であるにもかかわらず、各構成部材の寸法誤差の累積により生ずる寸法精度の個体差によって、ガス導入ノズルの先端面と火炎逸走防止部材の表面との良好な密着状態が得られないためであると考えられる。
【符号の説明】
【0039】
10 耐圧防爆型ガス検知器
11 ハウジング
12 ガード部材
12A 装着部
13 ビーム
14 前壁部分
15 ノズル装着部
16 円筒状部分
18 ケーブルグランド
20 ベース部材
25 ガスセンサ
26 センサホルダー
30 フレームアレスタ
31 ホルダー部材
31A 小径筒状部分
31B 大径筒状部分
31C 段部
32 突出縁部
35 火炎逸走防止部材
S ガス導入空間
38 カバー部材
39 ノズル装着用貫通孔
P パッキング
40,40A ガス導入ノズル
41 ノズル本体
42 ネジ部
43 頭部
44 係止部
45 先端筒状部材
46 ガス噴出口
48 スリット
50 スリーブ部材
51 伸長スプリング
55 ベローズ
58 ガス排出用ニップル
60A 被検査ガス入口
60B 校正ガス入口
60C ガス出口
60D 圧縮空気入口
61 防塵フィルター
62 三方電磁弁(ガス流路切り換え手段)
63 バルブ付き流量計
64 ニードルバルブ
65 アスピレータ(ガス吸引手段)
66 減圧弁
70A 被検査ガス導入路
70B 校正ガス導入路
71 主ガス導入路
80 マスフロー流量計
81 バッファ
82 マノメータ
83 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス透過性を有する金属焼結体よりなる火炎逸走防止部材を有し、ガスセンサを囲むよう設けられて当該ガスセンサと前記火炎逸走防止部材との間にガス導入空間を区画するフレームアレスタと、当該フレームアレスタを囲むよう設けられたガード部材と、当該ガード部材を覆うよう設けられたカバー部材と、当該カバー部材を気密に貫通して前記ガード部材に螺合されて装着された、ガス吸引手段によって導入される被検査ガスを前記火炎逸走防止部材を介して前記ガス導入空間に供給するスリーブ状のガス導入ノズルとを備えてなり、
前記ガス導入ノズルは、先端部が当該ガス導入ノズルの軸方向に弾性的に変位されて、ガス噴出口が開口する先端面が前記火炎逸走防止部材の表面に押圧された状態で密着して設けられていることを特徴とする耐圧防爆型ガス検知器。
【請求項2】
前記ガス導入ノズルの先端面には、前記ガス噴出口から径方向外方に伸びる余剰圧力開放用凹状部が形成されており、当該余剰圧力開放用凹状部が形成された領域以外の先端面領域が前記火炎逸走防止部材の表面に接触されることを特徴とする請求項1に記載の耐圧防爆型ガス検知器。
【請求項3】
前記ガス導入ノズルは、前記ガード部材に螺合されて装着されるノズル本体と、当該ノズル本体の先端部に当該ノズル本体の軸方向にスライド可能に設けられた先端筒状部材と、当該先端筒状部材と前記ノズル本体との間に介挿された、前記先端筒状部材の変位に伴って軸方向に弾性的に変形する伸長スプリングとにより構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐圧防爆型ガス検知器。
【請求項4】
前記ガス導入ノズルは、前記ガード部材に螺合されて装着されるノズル本体と、当該ノズル本体の先端部に設けられた、軸方向に弾性的に縮小可能なベローズとにより構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐圧防爆型ガス検知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−141157(P2012−141157A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292228(P2010−292228)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)