説明

耐寒耐水服

【課題】着用者の耐寒性、着用性をした耐寒耐水服を提供することにある。
【解決手段】1.少なくとも、人体の体幹後部、及び腰部の相当する部分に、通気度15cm/cm・s〜80cm/cm・s、且つ50g/cm 荷重圧縮時の厚み保持率が80%以上である網状構造体を有すること。2.前記網状構造体が、構成繊維の直径が0.3〜0.8mm、見掛け密度30〜70g/mであること。3.前記網状構造体の外層に透湿防水性を有する布帛を有すること。4.前記網状構造体又は前記透湿防水性を有する布帛の外層に酸素指数26以上の難燃性を有する単層又は複層からなる外層材を有すること。5.人体の上肢部、下肢部の相当する部分に架橋アクリル系繊維を混綿した不織布と表面摩擦係数の小さい布帛を積層した内層材を配したて構成されること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は寒冷時における海上等の事故及び災害に備えて着用する耐寒耐水服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寒冷海域においては船舶の海難事故もしくは海労作業中の海中転落事故、又は飛行機の故障による着水事故等が起こった場合、事故に遭遇した者、もしくは救助に当る者のために耐寒耐水服が使用されている。そして、耐寒耐水服は、当然防水性と保温性が重視されており、その結果、厚みの大きいかさばったものになる傾向が強い。そのため事故が起きていない通常の作業時に着用者の作業性を物理的に阻害するほか、耐寒耐水服内部と外気の流通がほぼ完全に遮断されることにより、人体から排泄される汗や水蒸気が衣服内にこもり、衣服内の湿度が高くなるため不快感を招いた。特に、長時間着用して作業を行なった時の精神的疲労及び肉体的疲労は、極めて大きくなるという問題があった。
【0003】
かかる問題を解決するため、連続気泡型発泡を有する樹脂シートを含む耐寒耐水服が提案されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、かかる耐寒耐水服は、実用における保温性能は十分とはいえず、また、上肢、下肢部にポリウレタン樹脂シートを使用しているので、耐寒耐水服の可動性が悪く、更には、浮遊姿勢をとり難くいという問題点を有していた。また、連続気泡型発泡といえども、汗等の乾き、下方への移行が遅く、更に小用時に股間部に取り付けた小用口のファスナーが開け難く、非常に、汗冷え感が大きかった。
【特許文献1】特開平6−32283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は背景技術の課題を背景になされたもので、通常の作業時の作業性に優れるほか、汗冷え感が小さく、着用感が快適であり、かつ事故時の防水性と保温性及び着用性にも優れ、浮遊姿勢がとりやすく、小用口のファスナーが開けやすい耐寒耐水服の提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決すべく鋭意検討の結果本発明に到達した。本発明に係る耐寒耐水服は、
1.少なくとも、人体の体幹後部、及び腰部の相当する部分に、通気度15cm/cm・s〜80cm/cm・s、且つ50g/cm 荷重圧縮時の厚み保持率が80%以上である網状構造体を有することを特徴とする耐寒耐水服。
2.前記網状構造体が、構成繊維の直径が0.3〜0.8mm、含気率が80%以上、見掛け密度が30〜70g/mであることを特徴とする1記載の耐寒耐水服。
3.前記網状構造体の外層に透湿防水性を有する布帛を有することを特徴とする1又は2記載の耐寒耐水服。
4.前記網状構造体又は前記透湿防水性を有する布帛の外層に酸素指数26以上の難燃性を有する単層又は複層からなる外層材を有することを特徴とする1〜3いずれかに記載の耐寒耐水服。
5.人体の上肢部、下肢部の相当する部分に架橋アクリル系繊維を混綿した不織布と表面摩擦係数の小さい布帛を積層した内層材を配したて構成されることを特徴とする1〜4いずれかに記載の耐寒耐水服。である。
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明による耐寒耐水服は、通常の作業時の作業性に優れ、汗冷え感が小さく、着用感が快適でありながら、事故時の防水性と保温性及び着用性にも優れ、浮遊姿勢がとりやすく、更には小用口のファスナーが開ける等の作業も容易となるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の耐寒耐水服少なくとも、人体の体幹後部、及び腰部の相当する部分に網状構造体を有することが好ましい。網状構造体を用いれば寒冷期の海水上で長時間浮遊し、多少の水圧がかかった場合でも空気層を保持することができ、体温を維持することができるからである。即ち従来のウレタンシート等は、地上においては優れた保温機能を有していても、実用時(着水時)は水圧により空気層の大部分が消失して保温性を失うことを知見し、網状構造体であれば、着水しても、空気層を維持し、保温性を保つことができることを本願発明者等は見出した。更に網状構造体は、表面から裏面のみならず、縦横・左右幅方向に貫通した孔を有し、閉塞した孔が殆ど存在しないため、汗等によって発生する水蒸気を外部に放出する一方、液状の汗や水は素早く下方へ移行し、浮遊体制をとった場合、胸部、背部や腰部等の人命に関わる部分の冷えを防止することができる。なお、本発明でいう網状構造体とは連続線条からなるランダムループの3次元スプリング構造体をいう。
【0008】
本発明の耐寒耐水服に用いる網状構造体は通気度15cm/cm・s〜80cm/cm・sであることが好ましい。かかる範囲であれば、通気性、通水性に優れ、発汗等による水蒸気を外部に放出し、水分を下方へ素早く移行できると共に、体温により暖められた空気を保持することができるからである。より好ましい範囲は20cm/cm・s〜70cm/cm・s、更に好ましくは25cm/cm・s〜65cm/cm・sである。
【0009】
本発明の耐寒耐水服に用いる網状構造体は、含気率80%〜95%であることが好ましい。80%未満では、保温性を保つことが出来ず、95%を超える場合は、風合いが硬くなるからである。より好ましくは83%〜93%、更に好ましくは85%〜90%である。ここで言う含気率とは、一定体積に占める樹脂骨格の体積を引いた体積を元の体積で割った数値である。
【0010】
本発明の耐寒耐水服に用いる網状構造体は、50g/cm 荷重圧縮時の厚み保持率が80%以上であることが好ましい。かかる厚み保持率であれば、着水時に水圧によって含気相を閉塞されることを防止し、保温性を維持することができるからである。より好ましい厚み保持率は85%以上、更に好ましくは90%以上である。
【0011】
本発明の耐寒耐水服に用いる網状構造体は、構成繊維の直径が0.3〜0.8mmであることが好ましい。かかる範囲の繊維径であれば、高い厚み保持率を確保でき、着水後においても通気性、通水性、保温性に優れた網状構造体を得ることができるからである。より好ましい繊維直径は0.3〜0.7mm、更に好ましくは0.4〜0.6mmである。
【0012】
本発明の耐寒耐水服に用いる網状構造体は、見掛け密度30kg/m〜70kg/mあることが好ましい。見掛け密度が30kg/m〜70kg/mであれば、快適な着心地でありながら、厚み保持率、通気性、通水性、保温性に優れた網状構造体となるからである。より好ましい見掛け密度は40kg/m〜60kg/m、更に好ましくは30kg/m〜55kg/mである。
【0013】
本発明の耐寒耐水服に用いる網状構造体は、厚みが5mm〜20mmであることが好ましい。かかる範囲であれば、優れた着心地と保温性、通気性、通水性を得ることができるからである。より好ましくは7mm〜15mm、更に好ましくは10mm〜12mmである。
【0014】
本発明の耐寒耐水服に用いる立体網状構造体を形成する熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系などの熱可塑性樹脂エラストマーが好ましく、より好ましくはポリエステル系熱可塑性エラストマーである。これらの熱可塑性樹脂エラストマーであれば、高い厚み保持率特性を有しつつも、柔軟で動き易く、更には疎水性であるため、水分の下方への移行が速やかになるからである。ポリエステル系エラストマーとしては、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリアルキレンジオールをソフトセグメントとするポリエステルエーテルブロック共重合体、または、脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステルエーテルブロック共重合体が例示できる。
【0015】
ポリエステルエーテルブロック共重合体のより具体的な事例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、琥珀酸、アジピン酸、セバチン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸または、これらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トレメチレングリコール、テトレメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクローキサンジメタノール等の脂環族ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドープロピレンオキシド共重合体等のポリアルキレンジオールのうち少なくとも1種から構成される三元ブロック共重合体である。
【0016】
ポリエステルエステルブロック共重合体としては、上記ジカルボン酸とジオール及び平均分子量が約300〜3000のポリラクトン等のポリエステルジオールのうち少なくとも各1種から構成される三元ブロック共重合体である。熱接着性、耐加水分解性、伸縮性、耐熱性等を考慮すると、ジカルボン酸としてはテレフタル酸、または、及びナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ジオール成分としては1,4−ブタンジオール、ポリアルキレンジオールとしてはポリテトラメチレングリコールの三元ブロック共重合体または、ポリエステルジオールとしてポリラクトンの三元ブロック共重合体が特に好ましい。特殊な例では、ポリシロキサン系のソフトセグメントを導入したものも使うことができる。また、上記ポリエステルエラストマーは単独または2種類以上混合して使用できる。更には、ポリエステルエラストマーに非エラストマー成分をブレンドされたもの、共重合したもの等も本発明に使用できる。
【0017】
本発明の耐寒耐水服は、網状構造体が人体の体幹後部、及び腰部の相当する部分に少なくとも配置されていることが好ましい。かかる部位は浮遊体制をとったとき、水中に位置することとなる身体の重要部分であり、保温の必要性が特に高いからである。
【0018】
本発明の耐寒耐水服に用いる網状構造体は、撥水処理することも好ましい形態の一つである。撥水処理がされていれば、水分が速やかに下方に移行し、着水時の冷え感を抑制することができるからである。撥水処理法は特に限定されるものではないが、フッ素系化合物を添加することが挙げられる。
【0019】
本発明の耐寒耐水服に用いる網状構造体は、抗菌性を有することが好ましい。外層等の存在により、使用後の乾燥が遅延しても、清潔性を保つことができるからである。抗菌性付与方法は特に限定されるものではないが、金属化合物で表面処理をする、天然性機能剤、光触媒機能剤を添加することが挙げられる。
【0020】
本発明の耐寒耐水服は、前記網状構造体を主要部とし、網状構造体に摩擦抵抗が低い布帛を積層したものを内装材とすることが好ましい。かかる構造であれば、緊急時でも素早く着用することが可能となるからである。積層の方法としては柔軟性や通気性を損なうことが少ない方法、例えばホットメルト接着樹脂を薄く粗密度に配して不織布状とした不織布状ホットメルト接着剤を用いて加熱加圧接着する方法や、網状構造体と布帛いずれか一方の接着面に溶融したホットメルト樹脂を点状に付着させるドット加工を施した後重ね合わせて加熱し加圧して接着する方法が挙げられるが、合成繊維ミシン糸を用いてキルティングする方法が得に好ましい。網状構造体は繊維直径が大きく、ミシン針が頻繁に繊維に当って加工がし難いものの、得られる内層材は、程よい凹凸が付与されて曲がり易くなり、更に、網状構造体は空隙が大きいことから、網状構造体と布帛がある程度スリップし、柔軟になるからである。
【0021】
本発明の耐寒耐水服は、網状構造体の外層に透湿防水性層を有することが好ましい。透湿防水性層があれば、着水時の水の浸入を防止して網状構造体の保温性を保つと共に、体から発する汗等を外気に放出し、陸上においては、蒸れ感、着水時においては冷え感を抑制することができるからである。具体的には、JIS L 1099−1993 A−1法において透湿度3500g/m・24hr以上,防水性はJIS L 1092−1992 A法において耐水度200g/cm以上であることが望ましい。
【0022】
本発明の耐寒耐水服は、前記網状構造体、透湿防水層の外層に難燃層を有することが好ましい。難燃層を有していれば、事故時に入水した場合や雨天の場合でも着衣内部へ水が侵入することがなく、火災が起きた場合でも火災から身を守ることができる。具体的には、難燃層がJIS K 7201−1999法において酸素指数26以上であることが好ましい。
【0023】
上記の条件を満たす外層材を非限定的に例示するならば、例えばポリウレタン湿式コーティングやポリウレタン・アクリル湿式コーティング等を施した難燃性織物、あるいは前記防水性フィルムとして多孔質テトラフルオロエチレンフィルムや多孔質ポリウレタンフィルム等をラミネート又ははり着けた難燃性織物等があげられる。難燃性織物としては素材自体が難燃性であるアラミド系繊維,フェノールホルムアルデヒド繊維,ポリクラール繊維,モダクリル繊維,難燃ポリノジック繊維等の単独あるいは混紡ないし交織織物、更には綿,羊毛等の天然繊維からなる織物に難燃加工を施したもの、あるいは上記素材自体が難燃性を有する繊維と天然性繊維との混紡若しくは交織織物に難燃加工を施したもの等が例示される。なお、更に防水機能を十分なものとする目的で外層材に撥水加工を施すこともできる。
【0024】
内層材は、架橋アクリル系繊維を含有することが好ましく、詳しくは、アクリル系繊維をヒドラジン処理により架橋結合を導入して、窒素含有量の増加を1.0〜8.0重量%、好ましくは3.0〜8.0重量%の範囲内に調整し、加水分解処理により、残存しているニトリル基量の1.0〜5.0meq/g、好ましくは2.5〜5.0meq/gにカルボキシル基を、残部にアミド基を導入し、次いで該カルボキシル基の50〜90mol%、好ましくは60〜85mol%をMg,Ca,Cu,Zn,Al,Ag,Feより選ばれる1種あるいは2種以上の金属塩型としたものである。したがって、このようにニトリル基が大きく変化したものになっているので、本発明の繊維は架橋アクリル変性繊維と称することもできるのである。該繊維の窒素含有量の増加が下限を下回る場合には、抗ピル性が付与されるが紡績、編織などの加工性を満足し得る物性の繊維が得られず、上限を越える場合には、目的とする吸湿率及び保水性、水吸上げ性、制電性が得られない。上記において、金属塩はMg,Ca,Cu,Zn,Al,Ag,Feより選ばれるが、本発明の調温・調湿・調和機能を損なわない範囲でこれら以外の金属も使用することができる。しかし、その含有量はカルボキシル基量として、5mol%以下である。
【0025】
また、加水分解反応により、ヒドラジン架橋されずに残存しているニトリル基を実質的に消失させ、1.0〜5.0meq/gのカルボキシル基部にアミド基を導入する方法としては、アルカリ金属水酸化物、アンモニア等の塩基性水溶液、或いは硝酸、硫酸、塩酸等の鉱酸の水溶液を含浸、又は該水溶液中に原料繊維を浸漬した状態で加熱処理する手段が挙げられる。尚、前記架橋結合の導入と同時に加水分解反応を行うこともできる。カルボキシル基が上記下限に満たない場合には吸湿率が低くなり、又上限を越えると吸湿率が高くなり過ぎるために衣服内気候、特に皮膚表面への保湿性を調節できない。また抗ピル性は付与できるが、紡績性、編織などの加工性を得る繊維物性も得られない。
【0026】
カルボキシル基を塩型にする方法としては、上述した加水分解繊維を下記に例示する各種の塩型の水酸化物、又は塩の水溶液に浸漬し、しかる後水洗、乾燥する方法が好適に用いられる。ここでカルボキシル基の塩型としては、50〜90mol%をMg,Ca,Cu,Zn,Al,Ag,Feより選ばれる1種或いは、2種以上の金属と塩型であることが必要である。この範囲を下回る場合には、アルカリ側のpH緩衝性が不足し、架橋構造が不十分のためアンモニアに対する消臭性が不足し、目的とする調和機能が付与できない。一方、この範囲を上回る場合には、酸側のpH緩衝性が不足し、乾燥速度が遅くなりイージーケア性が低下し、目的とする調和機能が発揮し難い。
【0027】
架橋アクリル繊維と混綿する繊維は、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリアクリル系、ウール、再生セルロース、綿繊維などが挙げられるが特に規定はない。
【0028】
本発明の耐寒耐水服を縫製する際には防水性の維持を目的として、外層材と内層材はそれぞれ単独で縫製を行なった後、重ね合わせて一体化し図2に例示されるような耐寒耐水服とすることができる。なお、外層材の縫い目は防水テープ等でシールしておくことが好ましい。
【実施例】
【0029】
次に、実施例及び比較例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例、比較例に記載する評価は以下に示す方法による。
【0030】
平均放熱量:寒冷環境下において、人体で発汗量が多い体幹部に使用している試料を、衣服内気候シミュレーション装置を用いて、環境8℃50%RH、模擬皮膚温度37℃、発汗量100g/m・hr、発汗10分間、次いで発汗停止10分間の条件で、発汗停止の10分間の平均放熱量(kcal/m・hr)を算出した。放熱量が高いほど、汗冷え感を感じる傾向である。
着用感:被験者10名が海上浮遊時を想定して、外気環境温度8℃の人工気象室内に水温3〜4℃の水槽を設け、その中に耐寒耐水服を着用し、1.5時間浸漬し、耐寒性(寒さ)、可動性(浮遊姿勢のとりやすさ、小用口の開閉しやすさ)の着用感アンケートを実施した。
耐寒性 (◎;優 ○;良 △;やや不良 ×;不良)
可動性 (◎;優 ○;良 △;やや不良 ×;不良)
【0031】
通気度:JIS L 1096−1999 8.27 A法 による。
【0032】
厚さ:JIS L 1096−1999 8.5 法による
【0033】
質量(目付):JIS L 1096−1999 8.4 による。
【0034】
含気率:一定体積に占める樹脂骨格の体積を引いた体積を元の体積で割った数値である。
【0035】
見掛け密度:試料を20℃65%RH環境下へ24時間放置して、試料重量を測定し、見掛け密度を算出した。
【0036】
繊維径:試料片を抜き取り、光学顕微鏡を用いて測定した。
【0037】
50g/cm 荷重圧縮時の厚み保持率:無荷重時の厚み、及び1cmあたり50gの荷重を試料片を置いて、厚みを測定し、厚み保持率を算出した。
【0038】
(実施例1)
外層材Aは、アラミド繊維25%と難燃加工を施した綿75%からなる織物に多孔質テトラフルオロエチレンフィルムを、接着剤を用いて接着させることにより作製し、体幹前後部、腰部の内層材Bは、網状構造体(ブレスエアー 東洋紡績社製 見掛け密度50kg/m 厚さ10mm 含気率95% 50g/cm 荷重圧縮時の厚み保持率90% 通気度50cm/cm・s) にナイロントリコット(厚さ1.0mm)を5.0cm(2インチ)四角形にキルティングして作製した。同様に、上肢部と下肢部の内層布Cは、架橋アクリルステープル繊維50%(エクス 東洋紡績社製2.8T−47mm)とポリエステルステープル繊維50%(東洋紡績社製 2.2T−51mm タイプ701)を混綿した不織布(質量120g/m 厚さ5mm 含気率98% 50g/cm荷重圧縮時の厚み保持率40% 通気度20cm/cm・s)にナイロントリコット(厚さ1.0mm)を5.0cm(2インチ)四角形にキルティングして作製した。外層材A、内層材B及び内層布Cは個別に縫製した後、重ね合わせて図2のような耐寒耐水服を作製した。
【0039】
(比較例1)
実施例1の内層材(内層布B及び内層布C)に架橋アクリルステープル繊維50%(エクス 東洋紡績社製 2.8T−47mm)とポリエステルステープル繊維50%(東洋紡績社製 2.2T−51mm タイプ701)を混綿した不織布(質量120g/m 厚さ5mm 含気率98% 50g/cm荷重圧縮時の厚み保持率40% 通気度17cm/cm・s)を用いた以外は実施例1に準じて耐寒耐水服を作製した。
【0040】
(比較例2)
実施例1の内層材(内層布B及び内層布C)にポリウレタン樹脂シート(厚さ3.2mm 含気率95% 50g/cm荷重圧縮時の厚み保持率80% 通気度3cm/cm・s)を用いた以外は実施例1に準じて耐寒耐水服を作製した。
【0041】
実施例及び比較例の耐寒耐水服の衣服内湿度、放熱性、耐寒性、可動性を評価した結果を表1、及び表2に示す。
【0042】
【表1】

【表2】

【0043】
表1に示されるように実施例1は着用感、耐寒性、可動性に優れているが、比較例1は耐寒性、比較例2は、上肢部、下肢部の可動性を有することが出来なかった。なお、実施例と比較例共に、JIS L 1092−1992 A法における耐水度は1000g/cm以上あり、難燃性はJIS K 7201−1999法で酸素指数27であった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、以上のように構成されており、汗冷え感が小さく、着用感に優れている。しかも入水時においても優れた保温性を有するので海難事故時の保命率の高く、小用口が開閉しやすい耐寒耐水服を提供することが可能であり、産業界に貢献することが大である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に使用される外層材と内層材の一例を示す図である。
【図2】本発明の耐寒耐水服の縫製例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 難燃性織物(外層材)
2 防水性フィルム
3 網状構造体、もしくは、架橋アクリル系繊維を混綿した不織布
4 表面摩擦抵抗の小さい布帛
5 外層材A
6 内層材Bもしくは内層材C
7 体幹後部
8 腰部
9 上肢部
10 下肢部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、人体の体幹後部、及び腰部の相当する部分に、通気度15cm/cm・s〜80cm/cm・s、且つ50g/cm 荷重圧縮時の厚み保持率が80%以上である網状構造体を有することを特徴とする耐寒耐水服。
【請求項2】
前記網状構造体が、構成繊維の直径が0.3〜0.8mm、含気率が80%以上、見掛け密度が30〜70g/mであることを特徴とする請求項1記載の耐寒耐水服。
【請求項3】
前記網状構造体の外層に透湿防水性を有する布帛を有することを特徴とする請求項1又は2記載の耐寒耐水服。
【請求項4】
前記網状構造体又は前記透湿防水性を有する布帛の外層に酸素指数26以上の難燃性を有する単層又は複層からなる外層材を有することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の耐寒耐水服。
【請求項5】
人体の上肢部、下肢部の相当する部分に架橋アクリル系繊維を混綿した不織布と表面摩擦係数の小さい布帛を積層した内層材を配したて構成されることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の耐寒耐水服。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−332501(P2007−332501A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166276(P2006−166276)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】