耐摩耗性チェーン
【課題】チェーンの使用環境下においても剥離が生じにくく、長期に亘って高摺動性を発揮する耐摩耗性を向上させた耐摩耗性チェーンを提供すること。
【解決手段】ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に嵌着固定され、前記ブシュ内に遊貫された連結ピンの両端が前記一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に嵌着固定されているチェーンにおいて、前記連結ピンの表面及びブシュの内表面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることにより、上記課題を解決する。
【解決手段】ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に嵌着固定され、前記ブシュ内に遊貫された連結ピンの両端が前記一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に嵌着固定されているチェーンにおいて、前記連結ピンの表面及びブシュの内表面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることにより、上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、主として自動車のタイミングチェーンとして用いられるローラチェーン、ブシュチェーン、サイレントチェーンや一般産業用チェーンなどの複数のリンクプレートがピンによって交互に屈曲可能に連結されてなるチェーンに関し、さらに詳しくは、ピン及びピンと摺接する部材の表面処理により耐摩耗性を向上したチェーンに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、自動車のタイミングチェーンのチェーン伸びの原因となるピンとブシュ又はピンとリンクプレートとの摺動による摩耗を抑制するために、ピンの表面に非常に高硬度、低摩擦係数で耐食性も良い素材として知られているＤＬＣのコーティングを施す、いわゆる、ＤＬＣ処理が試みられてきた（例えば、特許文献１参照。）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００３−２６９５４９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、一般的にＤＬＣ処理は層厚が０．５〜２μｍと小さく、長期に亘って高摺動性を維持するために層厚を大きくすると、チェーンでの使用環境下において剥離が生じていた。
【０００５】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、チェーンの使用環境下においても剥離が生じにくく、長期に亘って高摺動性を発揮する耐摩耗性を向上させた耐摩耗性チェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
まず、本請求項１に係る発明は、ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に嵌着固定され、前記ブシュ内に遊貫された連結ピンの両端が前記一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に嵌着固定されているチェーンにおいて、前記連結ピンの表面及びブシュの内表面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に該凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることによって、前記課題を解決したものである。
【０００７】
また、本請求項２に係る発明は、請求項１に係るチェーンにおいて、前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、前記凹部の幅が３Ａ以上５Ａ以下、前記凸部の幅がＡ以上３Ａ以下、前記凹部の深さが０．５Ａ以上Ａ以下であることによって、前記課題をさらに解決したものである。
【０００８】
また、本請求項３に係る発明は、請求項１に係るチェーンにおいて、前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、前記凹凸形状の表面粗さを測定したときに得られるうねり曲線の平均高さＷｃが０．５Ａ以上Ａ以下、凸部平均長さＷｓｐｍがＡ以上３Ａ以下、凹部平均長さＷｓｖｍが３Ａ以上５Ａ以下であることよって、前記課題をさらに解決したものである。
【０００９】
そして、本請求項４に係る発明は、一対の歯、一対のピン孔及び背面を有する内リンクプレートが、チェーン長手方向に交互に位置をずらせてガイド列及び非ガイド列にそれぞれ配置されるとともに、一対のピン孔を有するガイドプレートが前記ガイド列の両最外側に配置され、前記内リンクプレートの各ピン孔に連結ピンが挿通され該連結ピンの両端が前記ガイドプレートのピン孔に嵌合固定されてなるサイレントチェーンにおいて、前記連結ピンの表面及び内リンクプレートのピン孔の内周面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に該凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることによって、前記課題を解決したものである。
【００１０】
また、本請求項５に係る発明は、請求項４に係るチェーンにおいて、前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、前記凹部の幅が３Ａ以上５Ａ以下、前記凸部の幅がＡ以上３Ａ以下、前記凹部の深さが０．５Ａ以上Ａ以下であることによって、前記課題をさらに解決したものである。
【００１１】
また、本請求項６に係る発明は、請求項４に係るチェーンにおいて、前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、前記凹凸形状の表面粗さを測定したときに得られるうねり曲線の平均高さＷｃが０．５Ａ以上Ａ以下、凸部平均長さＷｓｐｍがＡ以上３Ａ以下、凹部平均長さＷｓｖｍが３Ａ以上５Ａ以下であることによって、前記課題をさらに解決したものである。
【００１２】
ここで、本発明におけるＤＬＣとは、Ｄｉａｍｏｎｄ−Ｌｉｋｅ Ｃａｒｂｏｎすなわち、ダイヤモンド状炭素として知られているダイヤモンドに類似した特性を持つ炭素被膜を意味しており、硬質薄膜の新素材の一つである。
【００１３】
なお、本発明において凹凸形状の定義に用いたうねり曲線は、ＪＩＳ Ｂ ０６０１−２００１により定義される粗さ測定器によって、ＤＬＣ被膜形成前に表面粗さを測定したときに得られる図６に示すような曲線である。図６において、水平線は測定結果から得られる平均線であり、うねり曲線と平均線の交点により、うねり幅を定義し上に凸部の幅をＷｓｐ、下に凸部（凹部）の幅をＷｓｖとする。そして、それぞれの幅より得られる平均値をそれぞれ凸部平均長さＷｓｐｍ、凹部平均長さＷｓｖｍと定義する。
【発明の効果】
【００１４】
本請求項１に係る発明によれば、ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に嵌着固定され、ブシュ内に遊貫された連結ピンの両端が一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に嵌着固定されているチェーンにおいて、連結ピンの表面及びブシュの内表面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることによって、摩耗初期〜中期〜長期に亘り、耐摩耗性が維持できるので、チェーンの耐摩耗性が向上する。
【００１５】
また、本請求項２に係る発明によれば、請求項１に係るチェーンにおいて、ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、凹部の幅が３Ａ以上５Ａ以下、凸部の幅がＡ以上３Ａ以下、凹部の深さが０．５Ａ以上Ａ以下であることによって、ＤＬＣ被膜が厚さＡだけ摩耗したとしても、母材表面上には凹部の中に形成されたＤＬＣ被膜が残っているので、母材の摩耗が抑制され、チェーンの耐摩耗性がより一層向上する。
【００１６】
また、本請求項３に係る発明は、請求項１に係るチェーンにおいて、ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、凹凸形状の表面粗さを測定したときに得られるうねり曲線の平均高さＷｃが０．５Ａ以上Ａ以下、凸部平均長さＷｓｐｍがＡ以上３Ａ以下、凹部平均長さＷｓｖｍが３Ａ以上５Ａ以下であることよって、ＤＬＣ被膜が厚さＡだけ摩耗したとしても、母材表面上には凹部の中に形成されたＤＬＣ被膜が残っているので、母材の摩耗が抑制され、チェーンの耐摩耗性がより一層向上する。
【００１７】
そして、本請求項４に係る発明によれば、一対の歯、一対のピン孔及び背面を有する内リンクプレートが、チェーン長手方向に交互に位置をずらせてガイド列及び非ガイド列にそれぞれ配置されるとともに、一対のピン孔を有するガイドプレートがガイド列の両最外側に配置され、内リンクプレートの各ピン孔に連結ピンが挿通され連結ピンの両端がガイドプレートのピン孔に嵌合固定されてなるサイレントチェーンにおいて、連結ピンの表面及び内リンクプレートのピン孔の内周面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることによって、母材とＤＬＣ被膜との密着性が向上するので、チェーンの耐摩耗性が向上する。
【００１８】
また、本請求項５に係る発明は、請求項４に係るチェーンにおいて、ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、凹部の幅が３Ａ以上５Ａ以下、凸部の幅がＡ以上３Ａ以下、凹部の深さが０．５Ａ以上Ａ以下であることによって、ＤＬＣ被膜が厚さＡだけ摩耗したとしても、母材表面上には溝の中に形成されたＤＬＣ被膜が残っているので、母材の摩耗が抑制され、サイレントチェーンの耐摩耗性がより一層向上する。
【００１９】
また、本請求項６に係る発明は、請求項４に係るチェーンにおいて、ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、凹凸形状の表面粗さを測定したときに得られるうねり曲線の平均高さＷｃが０．５Ａ以上Ａ以下、凸部平均長さＷｓｐｍがＡ以上３Ａ以下、凹部平均長さＷｓｖｍが３Ａ以上５Ａ以下であることによって、ＤＬＣ被膜が厚さＡだけ摩耗したとしても、母材表面上には溝の中に形成されたＤＬＣ被膜が残っているので、母材の摩耗が抑制され、サイレントチェーンの耐摩耗性がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【００２０】
【図１】本発明の実施例１であるローラチェーンの斜視図。
【図２】実施例１のローラチェーンのピン表面の断面図。
【図３】実施例１のピン表面の凹凸形状とＤＬＣの面積比率との関係を示す表。
【図４】実施例１のローラチェーンの加速試験による伸び曲線を示す図。
【図５】本発明の実施例２であるサイレントチェーンの斜視図。
【図６】表面粗さの定義を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【００２１】
本発明の一実施形態は、ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に嵌着固定され、ブシュ内に遊貫された連結ピンの両端が一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に嵌着固定されているチェーンにおいて、連結ピンの表面及びブシュの内表面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることによって、チェーンの使用環境下においても剥離が生じにくく、耐摩耗性を向上させた耐摩耗性チェーンを提供するものであれば、その具体的な実施形態は如何なるものであっても何ら構わない。
【００２２】
また、本発明の別の実施形態は、一対の歯、一対のピン孔及び背面を有する内リンクプレートが、チェーン長手方向に交互に位置をずらせてガイド列及び非ガイド列にそれぞれ配置されるとともに、一対のピン孔を有するガイドプレートがガイド列の両最外側に配置され、内リンクプレートの各ピン孔に連結ピンが挿通され連結ピンの両端がガイドプレートのピン孔に嵌合固定されてなるサイレントチェーンにおいて、連結ピンの表面及び内リンクプレートのピン孔の内周面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることによって、チェーンの使用環境下においても剥離が生じにくく、耐摩耗性を向上させた耐摩耗性チェーンを提供するものであれば、その具体的な実施形態は如何なるものであっても何ら構わない。
【００２３】
すなわち、本発明の耐摩耗性チェーンは、例えば、ブシュチェーンであってもローラチェーンであってもサイレントチェーンであっても何ら構わない。
【実施例１】
【００２４】
本発明をローラチェーンに適用した例について、図１乃至図４に基づいて説明する。ここで、図１は、実施例１のローラチェーンの斜視図であり、図２は、実施例１のローラチェーンのピン表面の断面図であり、図３は、実施例１のピン表面の凹凸形状とＤＬＣの面積比率との関係を示す表であり、図４は、実施例１のローラチェーンの加速試験による伸び曲線を示す図である。
【００２５】
実施例１のローラチェーン１０は、図１に示すように、ブシュ１２の両端がそれぞれ一対の内プレート１１のブシュ孔１１ａに圧入され、ブシュ１２内に遊貫されたピン１６の両端が一対の内プレート１１の両外側に配置された一対の外プレート１４のピン孔１４ａに圧入されている。そして、ブシュ１２にローラ１３を回転自在に外挿している。
【００２６】
そして、ピン１６の表面及びブシュ１２の内表面の少なくとも一方に、その母材上に凹凸形状を設け、この凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を設けている。母材上に凹凸形状を設ける方法としては、ダル加工したローラにより転写したり、ショットブラストなどを用いることができる。以下の例では、ダル加工を施したローラにより転写して凹凸形状を形成した例、すなわち、凹凸の幅を一義的に決定できる場合について説明する。
【００２７】
具体的には、図２に示すように、ＤＬＣ被膜の膜厚をＡとした時、凹部の幅Ｗ１が３Ａ以上５Ａ以下であり、凹部と凹部の間隔、すなわち、凸部の幅Ｗ２がＡ以上３Ａ以下であり、凹部の深さＤが０．５Ａ以上Ａ以下とする。例えば、「凹部の幅５Ａ、凹部の深さＡ、凸部の幅３Ａ」の凹凸を形成した母材上に膜厚ＡのＤＬＣ被膜を処理した場合、ＤＬＣ被膜は母材への追随性が良いため、被膜処理後には、「凹部の幅３Ａ、凹部の深さＡ、凸部の幅５Ａ」の表面性状を持つＤＬＣコーティング部品が得られる。その結果、使用開始時は凸部（幅５Ａ）のＤＬＣ被膜により耐摩耗性が得られる。使用に応じて摩耗が進み、摩耗量がＡを越えても、表面には幅５ＡのＤＬＣ被膜部分が残るため、ＤＬＣ被膜の高硬度による耐摩耗性と、優れた高摺動性、低摩擦係数の効果が継続して得られる。また、潤滑油を使用した環境においては、凹部が油溜まりとなるため、耐摩耗効果が効果的に得られる。
【００２８】
ここで、凹凸形状を上記のように決定した理由について、図３に基づいて説明する。図３は、ＤＬＣ膜の膜厚を１とした時、凹部及び凸部の幅を１〜７の範囲で変化させた場合、凸部上のＤＬＣ膜が摩耗している時の母材全体に占めるＤＬＣ膜の面積比率と、凸部上のＤＬＣ膜が全て摩耗し、凹部に形成されたＤＬＣ膜が摩耗している時の母材全体に占めるＤＬＣ膜の面積比率を表にしたものである。この表から、凸部摩耗時においても凹部摩耗時においてもＤＬＣ膜の面積比率が０．５以上となるように凹部及び凸部の幅を決定すると凹部の幅が３Ａ以上５Ａ以下であり、凸部の幅がＡ以上３Ａ以下となる。
【００２９】
なお、凹凸形状をショットブラスト法などによって形成した場合には、凹部及び凸部の幅を一義的に決定できないので、上述したようにうねり曲線を用いて凸部平均長さ及び凹部平均長さを用いて凹凸形状を定義する。
【００３０】
ここで、ピンのＤＬＣ被膜の膜厚Ａ＝１μｍ、ピンの表面に形成する凹凸形状を凹部の幅５Ａ、凹部の深さＡ、凸部の幅３Ａとした時の実施例１の耐摩耗性チェーンが奏する効果を確認するために、下記の条件でモータリング試験機を用いて加速試験を行い、チェーン伸び（％）を測定した。比較品１としては、ＤＬＣ被膜のないもの、比較品２としては、凹凸形状を形成していない平坦な母材上に厚さが１μｍのＤＬＣ被膜を施したものを用いた。その結果を図４に示す。
【００３１】
＜試験条件＞
イ）チェーン ：ピッチ８．００ｍｍのローラチェーン
ロ）スプロケット歯数 ：２３枚×４６枚
ハ）チェーン負荷 ：１．５ｋＮ
ニ）回転速度 ：６５００回転／分
ホ）試験時間 ：２００時間
【００３２】
図４から分かるように、実施例１（発明品）の被覆層は、単にＤＬＣ被膜を施した場合、すなわち、比較品２の被覆層に比べて、ＤＬＣ被膜の面積が少ないため、初期〜中期においては、摩耗のペースがやや早い（グラフの傾きが大きい）が、ＤＬＣ被膜の摩耗による損失が遅いため、摩耗寿命が長くなることが分かる。
【００３３】
この効果を換言すれば、次のように説明することができる。発明品の摩耗は、図４に示すように、母材凸部に処理したＤＬＣによる高摺動性を発揮する「初期」と、凹部に処理したＤＬＣが高摺動性を発揮する「中期」と、母材のみによる摺動が大勢を占める「後期」とに分けられる。そして、本発明は、母材上に凹凸形状を形成し、この凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を形成した結果、「初期」と「後期」との間に凹部に処理したＤＬＣが高摺動性を発揮する「中期」が存在することにより、ＤＬＣ被膜のみの比較品２に比べて、摩耗寿命が長くなる。
【００３４】
以上のように、本実施例のローラチェーンによれば、初期摩耗より後期まで、長期に亘り高摺動性が得られる。その結果、ローラチェーンの耐摩耗性を飛躍的に向上させることが可能になる。
【実施例２】
【００３５】
次に、本発明をサイレントチェーンに適用した例について、図５に基づいて説明する。ここで、図５は、実施例２のサイレントチェーンの斜視図である。
【００３６】
以下に、本発明の実施例２であるサイレントチェーンとして構成されたチェーンについて、図５に基づいて説明する。
【００３７】
サイレントチェーン２０は、図５に示すように、一対のピン孔２２ａ、一対の歯２２ｂ及び背面２２ｃを有する内リンクプレート２２が、サイレントチェーン２０の長手方向に交互に位置をずらせてガイド列Ａ及び非ガイド列Ｂにそれぞれ配置されると共に、ピン孔２４ａを有するガイドプレート２４がガイド列の両最外側に配置され、内リンクプレート２２の各ピン孔２２ａにピン２６が挿通され、このピン２６の両端がガイドプレート２４のピン孔２４ａに嵌合固定されている。
【００３８】
そして、ピン２６の母材に実施例１と同様の凹凸を形成しＤＬＣ被覆を施した。実施例２のサイレントチェーンが奏する効果を確認するために、実施例１と同じ条件でモータリング試験機を用いて加速試験を行い、チェーン伸び（％）を測定したところ、実施例１と同様の結果が得られた。
【００３９】
以上のように、本発明の耐摩耗性チェーンによれば、従来不可能だった長期に亘る高摺動性の維持が可能になり、その結果、チェーンの耐摩耗性を著しく改善したものであって、その効果は絶大である。
【符号の説明】
【００４０】
１０ ・・・ ローラチェーン
１１ ・・・ 内プレート
１２ ・・・ ブシュ
１３ ・・・ ローラ
１４ ・・・ 外プレート
１４ａ・・・ ピン孔
１６ ・・・ ピン
２０ ・・・ サイレントチェーン
２２ ・・・ 内リンクプレート
２２ａ・・・ ピン孔
２２ｂ・・・ 歯
２２ｃ・・・ 背面
２４ ・・・ ガイドプレート
２４ａ・・・ ピン孔
２６ ・・・ ピン
Ａ ・・・ ガイド列
Ｂ ・・・ 非ガイド列
【技術分野】
【０００１】
本発明は、主として自動車のタイミングチェーンとして用いられるローラチェーン、ブシュチェーン、サイレントチェーンや一般産業用チェーンなどの複数のリンクプレートがピンによって交互に屈曲可能に連結されてなるチェーンに関し、さらに詳しくは、ピン及びピンと摺接する部材の表面処理により耐摩耗性を向上したチェーンに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、自動車のタイミングチェーンのチェーン伸びの原因となるピンとブシュ又はピンとリンクプレートとの摺動による摩耗を抑制するために、ピンの表面に非常に高硬度、低摩擦係数で耐食性も良い素材として知られているＤＬＣのコーティングを施す、いわゆる、ＤＬＣ処理が試みられてきた（例えば、特許文献１参照。）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００３−２６９５４９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、一般的にＤＬＣ処理は層厚が０．５〜２μｍと小さく、長期に亘って高摺動性を維持するために層厚を大きくすると、チェーンでの使用環境下において剥離が生じていた。
【０００５】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、チェーンの使用環境下においても剥離が生じにくく、長期に亘って高摺動性を発揮する耐摩耗性を向上させた耐摩耗性チェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
まず、本請求項１に係る発明は、ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に嵌着固定され、前記ブシュ内に遊貫された連結ピンの両端が前記一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に嵌着固定されているチェーンにおいて、前記連結ピンの表面及びブシュの内表面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に該凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることによって、前記課題を解決したものである。
【０００７】
また、本請求項２に係る発明は、請求項１に係るチェーンにおいて、前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、前記凹部の幅が３Ａ以上５Ａ以下、前記凸部の幅がＡ以上３Ａ以下、前記凹部の深さが０．５Ａ以上Ａ以下であることによって、前記課題をさらに解決したものである。
【０００８】
また、本請求項３に係る発明は、請求項１に係るチェーンにおいて、前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、前記凹凸形状の表面粗さを測定したときに得られるうねり曲線の平均高さＷｃが０．５Ａ以上Ａ以下、凸部平均長さＷｓｐｍがＡ以上３Ａ以下、凹部平均長さＷｓｖｍが３Ａ以上５Ａ以下であることよって、前記課題をさらに解決したものである。
【０００９】
そして、本請求項４に係る発明は、一対の歯、一対のピン孔及び背面を有する内リンクプレートが、チェーン長手方向に交互に位置をずらせてガイド列及び非ガイド列にそれぞれ配置されるとともに、一対のピン孔を有するガイドプレートが前記ガイド列の両最外側に配置され、前記内リンクプレートの各ピン孔に連結ピンが挿通され該連結ピンの両端が前記ガイドプレートのピン孔に嵌合固定されてなるサイレントチェーンにおいて、前記連結ピンの表面及び内リンクプレートのピン孔の内周面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に該凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることによって、前記課題を解決したものである。
【００１０】
また、本請求項５に係る発明は、請求項４に係るチェーンにおいて、前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、前記凹部の幅が３Ａ以上５Ａ以下、前記凸部の幅がＡ以上３Ａ以下、前記凹部の深さが０．５Ａ以上Ａ以下であることによって、前記課題をさらに解決したものである。
【００１１】
また、本請求項６に係る発明は、請求項４に係るチェーンにおいて、前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、前記凹凸形状の表面粗さを測定したときに得られるうねり曲線の平均高さＷｃが０．５Ａ以上Ａ以下、凸部平均長さＷｓｐｍがＡ以上３Ａ以下、凹部平均長さＷｓｖｍが３Ａ以上５Ａ以下であることによって、前記課題をさらに解決したものである。
【００１２】
ここで、本発明におけるＤＬＣとは、Ｄｉａｍｏｎｄ−Ｌｉｋｅ Ｃａｒｂｏｎすなわち、ダイヤモンド状炭素として知られているダイヤモンドに類似した特性を持つ炭素被膜を意味しており、硬質薄膜の新素材の一つである。
【００１３】
なお、本発明において凹凸形状の定義に用いたうねり曲線は、ＪＩＳ Ｂ ０６０１−２００１により定義される粗さ測定器によって、ＤＬＣ被膜形成前に表面粗さを測定したときに得られる図６に示すような曲線である。図６において、水平線は測定結果から得られる平均線であり、うねり曲線と平均線の交点により、うねり幅を定義し上に凸部の幅をＷｓｐ、下に凸部（凹部）の幅をＷｓｖとする。そして、それぞれの幅より得られる平均値をそれぞれ凸部平均長さＷｓｐｍ、凹部平均長さＷｓｖｍと定義する。
【発明の効果】
【００１４】
本請求項１に係る発明によれば、ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に嵌着固定され、ブシュ内に遊貫された連結ピンの両端が一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に嵌着固定されているチェーンにおいて、連結ピンの表面及びブシュの内表面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることによって、摩耗初期〜中期〜長期に亘り、耐摩耗性が維持できるので、チェーンの耐摩耗性が向上する。
【００１５】
また、本請求項２に係る発明によれば、請求項１に係るチェーンにおいて、ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、凹部の幅が３Ａ以上５Ａ以下、凸部の幅がＡ以上３Ａ以下、凹部の深さが０．５Ａ以上Ａ以下であることによって、ＤＬＣ被膜が厚さＡだけ摩耗したとしても、母材表面上には凹部の中に形成されたＤＬＣ被膜が残っているので、母材の摩耗が抑制され、チェーンの耐摩耗性がより一層向上する。
【００１６】
また、本請求項３に係る発明は、請求項１に係るチェーンにおいて、ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、凹凸形状の表面粗さを測定したときに得られるうねり曲線の平均高さＷｃが０．５Ａ以上Ａ以下、凸部平均長さＷｓｐｍがＡ以上３Ａ以下、凹部平均長さＷｓｖｍが３Ａ以上５Ａ以下であることよって、ＤＬＣ被膜が厚さＡだけ摩耗したとしても、母材表面上には凹部の中に形成されたＤＬＣ被膜が残っているので、母材の摩耗が抑制され、チェーンの耐摩耗性がより一層向上する。
【００１７】
そして、本請求項４に係る発明によれば、一対の歯、一対のピン孔及び背面を有する内リンクプレートが、チェーン長手方向に交互に位置をずらせてガイド列及び非ガイド列にそれぞれ配置されるとともに、一対のピン孔を有するガイドプレートがガイド列の両最外側に配置され、内リンクプレートの各ピン孔に連結ピンが挿通され連結ピンの両端がガイドプレートのピン孔に嵌合固定されてなるサイレントチェーンにおいて、連結ピンの表面及び内リンクプレートのピン孔の内周面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることによって、母材とＤＬＣ被膜との密着性が向上するので、チェーンの耐摩耗性が向上する。
【００１８】
また、本請求項５に係る発明は、請求項４に係るチェーンにおいて、ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、凹部の幅が３Ａ以上５Ａ以下、凸部の幅がＡ以上３Ａ以下、凹部の深さが０．５Ａ以上Ａ以下であることによって、ＤＬＣ被膜が厚さＡだけ摩耗したとしても、母材表面上には溝の中に形成されたＤＬＣ被膜が残っているので、母材の摩耗が抑制され、サイレントチェーンの耐摩耗性がより一層向上する。
【００１９】
また、本請求項６に係る発明は、請求項４に係るチェーンにおいて、ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、凹凸形状の表面粗さを測定したときに得られるうねり曲線の平均高さＷｃが０．５Ａ以上Ａ以下、凸部平均長さＷｓｐｍがＡ以上３Ａ以下、凹部平均長さＷｓｖｍが３Ａ以上５Ａ以下であることによって、ＤＬＣ被膜が厚さＡだけ摩耗したとしても、母材表面上には溝の中に形成されたＤＬＣ被膜が残っているので、母材の摩耗が抑制され、サイレントチェーンの耐摩耗性がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【００２０】
【図１】本発明の実施例１であるローラチェーンの斜視図。
【図２】実施例１のローラチェーンのピン表面の断面図。
【図３】実施例１のピン表面の凹凸形状とＤＬＣの面積比率との関係を示す表。
【図４】実施例１のローラチェーンの加速試験による伸び曲線を示す図。
【図５】本発明の実施例２であるサイレントチェーンの斜視図。
【図６】表面粗さの定義を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【００２１】
本発明の一実施形態は、ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に嵌着固定され、ブシュ内に遊貫された連結ピンの両端が一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に嵌着固定されているチェーンにおいて、連結ピンの表面及びブシュの内表面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることによって、チェーンの使用環境下においても剥離が生じにくく、耐摩耗性を向上させた耐摩耗性チェーンを提供するものであれば、その具体的な実施形態は如何なるものであっても何ら構わない。
【００２２】
また、本発明の別の実施形態は、一対の歯、一対のピン孔及び背面を有する内リンクプレートが、チェーン長手方向に交互に位置をずらせてガイド列及び非ガイド列にそれぞれ配置されるとともに、一対のピン孔を有するガイドプレートがガイド列の両最外側に配置され、内リンクプレートの各ピン孔に連結ピンが挿通され連結ピンの両端がガイドプレートのピン孔に嵌合固定されてなるサイレントチェーンにおいて、連結ピンの表面及び内リンクプレートのピン孔の内周面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることによって、チェーンの使用環境下においても剥離が生じにくく、耐摩耗性を向上させた耐摩耗性チェーンを提供するものであれば、その具体的な実施形態は如何なるものであっても何ら構わない。
【００２３】
すなわち、本発明の耐摩耗性チェーンは、例えば、ブシュチェーンであってもローラチェーンであってもサイレントチェーンであっても何ら構わない。
【実施例１】
【００２４】
本発明をローラチェーンに適用した例について、図１乃至図４に基づいて説明する。ここで、図１は、実施例１のローラチェーンの斜視図であり、図２は、実施例１のローラチェーンのピン表面の断面図であり、図３は、実施例１のピン表面の凹凸形状とＤＬＣの面積比率との関係を示す表であり、図４は、実施例１のローラチェーンの加速試験による伸び曲線を示す図である。
【００２５】
実施例１のローラチェーン１０は、図１に示すように、ブシュ１２の両端がそれぞれ一対の内プレート１１のブシュ孔１１ａに圧入され、ブシュ１２内に遊貫されたピン１６の両端が一対の内プレート１１の両外側に配置された一対の外プレート１４のピン孔１４ａに圧入されている。そして、ブシュ１２にローラ１３を回転自在に外挿している。
【００２６】
そして、ピン１６の表面及びブシュ１２の内表面の少なくとも一方に、その母材上に凹凸形状を設け、この凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を設けている。母材上に凹凸形状を設ける方法としては、ダル加工したローラにより転写したり、ショットブラストなどを用いることができる。以下の例では、ダル加工を施したローラにより転写して凹凸形状を形成した例、すなわち、凹凸の幅を一義的に決定できる場合について説明する。
【００２７】
具体的には、図２に示すように、ＤＬＣ被膜の膜厚をＡとした時、凹部の幅Ｗ１が３Ａ以上５Ａ以下であり、凹部と凹部の間隔、すなわち、凸部の幅Ｗ２がＡ以上３Ａ以下であり、凹部の深さＤが０．５Ａ以上Ａ以下とする。例えば、「凹部の幅５Ａ、凹部の深さＡ、凸部の幅３Ａ」の凹凸を形成した母材上に膜厚ＡのＤＬＣ被膜を処理した場合、ＤＬＣ被膜は母材への追随性が良いため、被膜処理後には、「凹部の幅３Ａ、凹部の深さＡ、凸部の幅５Ａ」の表面性状を持つＤＬＣコーティング部品が得られる。その結果、使用開始時は凸部（幅５Ａ）のＤＬＣ被膜により耐摩耗性が得られる。使用に応じて摩耗が進み、摩耗量がＡを越えても、表面には幅５ＡのＤＬＣ被膜部分が残るため、ＤＬＣ被膜の高硬度による耐摩耗性と、優れた高摺動性、低摩擦係数の効果が継続して得られる。また、潤滑油を使用した環境においては、凹部が油溜まりとなるため、耐摩耗効果が効果的に得られる。
【００２８】
ここで、凹凸形状を上記のように決定した理由について、図３に基づいて説明する。図３は、ＤＬＣ膜の膜厚を１とした時、凹部及び凸部の幅を１〜７の範囲で変化させた場合、凸部上のＤＬＣ膜が摩耗している時の母材全体に占めるＤＬＣ膜の面積比率と、凸部上のＤＬＣ膜が全て摩耗し、凹部に形成されたＤＬＣ膜が摩耗している時の母材全体に占めるＤＬＣ膜の面積比率を表にしたものである。この表から、凸部摩耗時においても凹部摩耗時においてもＤＬＣ膜の面積比率が０．５以上となるように凹部及び凸部の幅を決定すると凹部の幅が３Ａ以上５Ａ以下であり、凸部の幅がＡ以上３Ａ以下となる。
【００２９】
なお、凹凸形状をショットブラスト法などによって形成した場合には、凹部及び凸部の幅を一義的に決定できないので、上述したようにうねり曲線を用いて凸部平均長さ及び凹部平均長さを用いて凹凸形状を定義する。
【００３０】
ここで、ピンのＤＬＣ被膜の膜厚Ａ＝１μｍ、ピンの表面に形成する凹凸形状を凹部の幅５Ａ、凹部の深さＡ、凸部の幅３Ａとした時の実施例１の耐摩耗性チェーンが奏する効果を確認するために、下記の条件でモータリング試験機を用いて加速試験を行い、チェーン伸び（％）を測定した。比較品１としては、ＤＬＣ被膜のないもの、比較品２としては、凹凸形状を形成していない平坦な母材上に厚さが１μｍのＤＬＣ被膜を施したものを用いた。その結果を図４に示す。
【００３１】
＜試験条件＞
イ）チェーン ：ピッチ８．００ｍｍのローラチェーン
ロ）スプロケット歯数 ：２３枚×４６枚
ハ）チェーン負荷 ：１．５ｋＮ
ニ）回転速度 ：６５００回転／分
ホ）試験時間 ：２００時間
【００３２】
図４から分かるように、実施例１（発明品）の被覆層は、単にＤＬＣ被膜を施した場合、すなわち、比較品２の被覆層に比べて、ＤＬＣ被膜の面積が少ないため、初期〜中期においては、摩耗のペースがやや早い（グラフの傾きが大きい）が、ＤＬＣ被膜の摩耗による損失が遅いため、摩耗寿命が長くなることが分かる。
【００３３】
この効果を換言すれば、次のように説明することができる。発明品の摩耗は、図４に示すように、母材凸部に処理したＤＬＣによる高摺動性を発揮する「初期」と、凹部に処理したＤＬＣが高摺動性を発揮する「中期」と、母材のみによる摺動が大勢を占める「後期」とに分けられる。そして、本発明は、母材上に凹凸形状を形成し、この凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を形成した結果、「初期」と「後期」との間に凹部に処理したＤＬＣが高摺動性を発揮する「中期」が存在することにより、ＤＬＣ被膜のみの比較品２に比べて、摩耗寿命が長くなる。
【００３４】
以上のように、本実施例のローラチェーンによれば、初期摩耗より後期まで、長期に亘り高摺動性が得られる。その結果、ローラチェーンの耐摩耗性を飛躍的に向上させることが可能になる。
【実施例２】
【００３５】
次に、本発明をサイレントチェーンに適用した例について、図５に基づいて説明する。ここで、図５は、実施例２のサイレントチェーンの斜視図である。
【００３６】
以下に、本発明の実施例２であるサイレントチェーンとして構成されたチェーンについて、図５に基づいて説明する。
【００３７】
サイレントチェーン２０は、図５に示すように、一対のピン孔２２ａ、一対の歯２２ｂ及び背面２２ｃを有する内リンクプレート２２が、サイレントチェーン２０の長手方向に交互に位置をずらせてガイド列Ａ及び非ガイド列Ｂにそれぞれ配置されると共に、ピン孔２４ａを有するガイドプレート２４がガイド列の両最外側に配置され、内リンクプレート２２の各ピン孔２２ａにピン２６が挿通され、このピン２６の両端がガイドプレート２４のピン孔２４ａに嵌合固定されている。
【００３８】
そして、ピン２６の母材に実施例１と同様の凹凸を形成しＤＬＣ被覆を施した。実施例２のサイレントチェーンが奏する効果を確認するために、実施例１と同じ条件でモータリング試験機を用いて加速試験を行い、チェーン伸び（％）を測定したところ、実施例１と同様の結果が得られた。
【００３９】
以上のように、本発明の耐摩耗性チェーンによれば、従来不可能だった長期に亘る高摺動性の維持が可能になり、その結果、チェーンの耐摩耗性を著しく改善したものであって、その効果は絶大である。
【符号の説明】
【００４０】
１０ ・・・ ローラチェーン
１１ ・・・ 内プレート
１２ ・・・ ブシュ
１３ ・・・ ローラ
１４ ・・・ 外プレート
１４ａ・・・ ピン孔
１６ ・・・ ピン
２０ ・・・ サイレントチェーン
２２ ・・・ 内リンクプレート
２２ａ・・・ ピン孔
２２ｂ・・・ 歯
２２ｃ・・・ 背面
２４ ・・・ ガイドプレート
２４ａ・・・ ピン孔
２６ ・・・ ピン
Ａ ・・・ ガイド列
Ｂ ・・・ 非ガイド列
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に嵌着固定され、前記ブシュ内に遊貫された連結ピンの両端が前記一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に嵌着固定されているチェーンにおいて、
前記連結ピンの表面及びブシュの内表面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に該凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることを特徴とするチェーン。
【請求項２】
前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、
前記凹部の幅が３Ａ以上５Ａ以下、前記凸部の幅がＡ以上３Ａ以下、前記凹部の深さが０．５Ａ以上Ａ以下であることを特徴とする請求項１記載のチェーン。
【請求項３】
前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、
前記凹凸形状の表面粗さを測定したときに得られるうねり曲線の平均高さＷｃが０．５Ａ以上Ａ以下、凸部平均長さＷｓｐｍがＡ以上３Ａ以下、凹部平均長さＷｓｖｍが３Ａ以上５Ａ以下であることを特徴とする請求項１記載のチェーン。
【請求項４】
一対の歯、一対のピン孔及び背面を有する内リンクプレートが、チェーン長手方向に交互に位置をずらせてガイド列及び非ガイド列にそれぞれ配置されるとともに、一対のピン孔を有するガイドプレートが前記ガイド列の両最外側に配置され、前記内リンクプレートの各ピン孔に連結ピンが挿通され該連結ピンの両端が前記ガイドプレートのピン孔に嵌合固定されてなるサイレントチェーンにおいて、
前記連結ピンの表面及び内リンクプレートのピン孔の内周面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に該凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることを特徴とするサイレントチェーン。
【請求項５】
前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、
前記凹部の幅が３Ａ以上５Ａ以下、前記凸部の幅がＡ以上３Ａ以下、前記凹部の深さが０．５Ａ以上Ａ以下であることを特徴とする請求項４記載のチェーン。
【請求項６】
前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、
前記凹凸形状の表面粗さを測定したときに得られるうねり曲線の平均高さＷｃが０．５Ａ以上Ａ以下、凸部平均長さＷｓｐｍがＡ以上３Ａ以下、凹部平均長さＷｓｖｍが３Ａ以上５Ａ以下であることを特徴とする請求項４記載のチェーン。
【請求項１】
ブシュの両端がそれぞれ一対の内プレートのブシュ孔に嵌着固定され、前記ブシュ内に遊貫された連結ピンの両端が前記一対の内プレートの両外側に配置された一対の外プレートのピン孔に嵌着固定されているチェーンにおいて、
前記連結ピンの表面及びブシュの内表面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に該凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることを特徴とするチェーン。
【請求項２】
前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、
前記凹部の幅が３Ａ以上５Ａ以下、前記凸部の幅がＡ以上３Ａ以下、前記凹部の深さが０．５Ａ以上Ａ以下であることを特徴とする請求項１記載のチェーン。
【請求項３】
前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、
前記凹凸形状の表面粗さを測定したときに得られるうねり曲線の平均高さＷｃが０．５Ａ以上Ａ以下、凸部平均長さＷｓｐｍがＡ以上３Ａ以下、凹部平均長さＷｓｖｍが３Ａ以上５Ａ以下であることを特徴とする請求項１記載のチェーン。
【請求項４】
一対の歯、一対のピン孔及び背面を有する内リンクプレートが、チェーン長手方向に交互に位置をずらせてガイド列及び非ガイド列にそれぞれ配置されるとともに、一対のピン孔を有するガイドプレートが前記ガイド列の両最外側に配置され、前記内リンクプレートの各ピン孔に連結ピンが挿通され該連結ピンの両端が前記ガイドプレートのピン孔に嵌合固定されてなるサイレントチェーンにおいて、
前記連結ピンの表面及び内リンクプレートのピン孔の内周面の少なくとも一方が、その母材上に凹凸形状を有していると共に該凹凸形状を覆うようにＤＬＣ被膜を有していることを特徴とするサイレントチェーン。
【請求項５】
前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、
前記凹部の幅が３Ａ以上５Ａ以下、前記凸部の幅がＡ以上３Ａ以下、前記凹部の深さが０．５Ａ以上Ａ以下であることを特徴とする請求項４記載のチェーン。
【請求項６】
前記ＤＬＣ被膜の厚さをＡとした時、
前記凹凸形状の表面粗さを測定したときに得られるうねり曲線の平均高さＷｃが０．５Ａ以上Ａ以下、凸部平均長さＷｓｐｍがＡ以上３Ａ以下、凹部平均長さＷｓｖｍが３Ａ以上５Ａ以下であることを特徴とする請求項４記載のチェーン。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２０１１−９４７３３（Ｐ２０１１−９４７３３Ａ）
【公開日】平成２３年５月１２日（２０１１．５．１２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−２４９９４７（Ｐ２００９−２４９９４７）
【出願日】平成２１年１０月３０日（２００９．１０．３０）
【出願人】（０００００３３５５）株式会社椿本チエイン (861)
【公開日】平成２３年５月１２日（２０１１．５．１２）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年１０月３０日（２００９．１０．３０）
【出願人】（０００００３３５５）株式会社椿本チエイン (861)
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