説明

耐油性紙包装材および耐油性紙包装容器

【課題】フッ素樹脂を使用せずに耐油性に優れる耐油性紙包装材を提供する。
【解決手段】少なくとも紙基材層と、耐油層とを積層してなる紙包装材であり、前記耐油層は、D−乳酸含有率が1.5〜25モル%のポリ乳酸樹脂と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤をポリ乳酸樹脂に対し、1〜30質量%含有し、ポリ乳酸樹脂の数平均粒子径が0.5μm以下である乳酸樹脂水性分散液を塗布および乾燥したもの。上記乳酸樹脂水性分散液を複数回、塗布および乾燥することで紙基材であっても優れた耐油層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙トレー、紙カートン、食品包材、化粧品包材、生活品包材など、耐油性と耐水性が同時に求められる用途に関し、フッ素樹脂を使用せずに耐油層を形成してなる、耐油耐水性を有する紙包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
油の浸透を抑制する機能を有する耐油紙は、フライドポテトなどの揚げ物食品やバターなどの油脂食品やその他クッキー、ペットフードなどの油を含む食品の包装材や包装として、その他ラベルや化粧材などとして広く用いられている。
【0003】
このような耐油紙は、高い耐油性および耐水性を有し、臭気が少なく、印刷適正に優れるといった利点を有する点で、有機フッ素樹脂を内添した有機フッ素樹脂内添紙や有機フッ素樹脂を含む塗工液を塗工した有機フッ素樹脂塗工紙など有機性フッ素樹脂を使用し、紙基材層に耐油性を付与したものが主流となっている。
【0004】
また、有機フッ素樹脂の体内蓄積、高温条件下での有害ガスの発生などから、有機フッ素樹脂以外の耐油紙として、ガラス転移点が−25〜30℃の範囲にあるアクリル系、スチレン−アクリル系もしくはスチレン−ブタジエン系の合成樹脂エマルジョンまたはこれらの合成樹脂エマルジョンの混合物100部に対して、オレフィンとマレイン酸との共重合体またはオレフィンとマレイン酸との共重合体とアルケニル無水コハク酸との混合物3〜35部を混合せしめた塗工液を、基紙の表裏面の少なくとも一方の面に2.0〜10g/m2塗工してなることを特徴とする耐油紙が提案されている(特許文献1)。ガラス転移点が−25〜30℃の範囲のアクリル系・スチレン−アクリル系またはスチレン−ブタジエン系合成樹脂エマルジョンを使用すると、塗工層に折り曲げによって破損しない柔軟性とヒートシール性が付与され、さらに前記エマルジョン100部に対してオレフィンとマレイン酸とを共重合させた耐油剤を3〜35部含有させると、塗工層に耐油性が付与され、前記エマルジョン100部に対して無機顔料3〜150部を含有させると、塗工層にインク吸収性を付与しうる、と記載されている。塗工液には、紙基材層への浸透を向上させるために、界面活性剤や有機溶剤などを含有してもよいと記載され、実施例では、前記合成樹脂エマルジョンに公知の耐油剤を配合したものが使用されている。
【0005】
また、紙基材層の少なくとも片面に蒸着法によりフッ素樹脂モノマーからなる樹脂モノマーを蒸着し、均一な皮膜を形成した後、電子線を照射して重合することで樹脂コーテイング層を設けたことを特徴とする耐油紙もある(特許文献2)。フッ素系耐油剤の代替品として、外添により上市されているアクリル系ポリマーを主体とする耐油剤は、特有のアクリル臭が食品に付着するなどの問題があり、ポリエステル系耐油剤も良好な耐油性が得られないという点に鑑みてなされたものであり、上記による耐油紙は、耐油・耐水性が優れ、臭気がなく、容器に形成した場合も罫線耐油強度が強い、という。
【0006】
一方、D−乳酸含有率が1.5〜25モル%のポリ乳酸樹脂と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤をポリ乳酸樹脂に対して1〜30質量%、アンモニアまたは沸点250℃以下の有機アミン化合物をポリ乳酸樹脂に対して0.01〜20質量%、両親媒性有機溶剤を0〜30質量%含有するポリ乳酸樹脂水性分散体であって、ポリ乳酸樹脂の数平均粒子径が0.5μm未満であることを特徴とするポリ乳酸樹脂水性分散体がある(特許文献3)。生分解性樹脂を使用することで、耐水性に優れ、きわめて環境にやさしい水性分散体を提供できるという。
【特許文献1】特開2004−19036号公報
【特許文献2】特開2006−022420号公報
【特許文献3】特開2005−8733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
昨今、環境保護、省資源、消防法等による危険物規制、職場環境改善の立場から有機溶剤の使用が制限される傾向にある。上記特許文献1記載の方法は、界面活性剤や有機溶媒を使用するものであり、これらを使用せずに耐油性に優れる耐油性紙包装材を調製できれば、環境保全に優れる。
【0008】
また、特許文献2記載の耐油紙は、フッ素樹脂モノマーからなる樹脂モノマーの蒸着工程と電子線の照射工程とを必要とし、より原料が高価であり、製造方法も特殊である。従って、より簡便な方法で得られる耐油紙の開発が望まれる。
【0009】
また、特許文献3記載のポリ乳酸樹脂水性分散体は、生分解性に優れ、かつ耐水性に優れるが耐油性に関する記載は存在しない。
本発明は、上記現状に鑑みて、有機フッ素樹脂を使用せずに、安価かつ優れた耐油性を有する、耐油性紙包装材を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、環境保全の観点から、有機溶媒や不揮発水性化助剤を実質的に含まずに得られる耐油性紙包装材を提供することを目的とする。
また、このような耐油性紙包装材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、紙基材層に積層する耐油層について詳細に検討した結果、D−乳酸含有率が1.5〜25モル%のポリ乳酸樹脂と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤をポリ乳酸樹脂に対し、1〜30質量%含有し、ポリ乳酸樹脂の数平均粒子径が0.5μm以下である乳酸樹脂水性分散液を塗工してなる被膜が耐油性を有すること、前記乳酸樹脂水性分散液は不揮発水性化助剤を実質的に含まずに調製されるため環境保全に優れること、このような乳酸樹脂水性分散液は紙基材層に浸透するため一般には被膜を構成できないが、前記乳酸樹脂水性分散液の塗工と所定温度の乾燥時間とを所定回数行うことで紙基材層に耐油層を形成しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、少なくとも紙基材層と、耐油層とを積層してなる紙包装材であり、
前記耐油層は、D−乳酸含有率が1.5〜25モル%のポリ乳酸樹脂と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤をポリ乳酸樹脂に対し、1〜30質量%含有し、ポリ乳酸樹脂の数平均粒子径が0.5μm以下である乳酸樹脂水性分散液を塗布および乾燥したものであること特徴とする、耐油性紙包装材を提供するものである。
【0013】
更に、少なくとも紙基材層と耐油層とを積層してなる紙包装材の製造方法であって、
前記紙基材層に、D−乳酸含有率が1.5〜25モル%のポリ乳酸樹脂と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤をポリ乳酸樹脂に対し、1〜30質量%含有し、ポリ乳酸の平均粒子径が0.5μ以下である乳酸樹脂水性分散液を塗布および乾燥し、この乳酸樹脂水性分散液の塗布および乾燥を、複数回行って耐油層を形成することを特徴とする、耐油性紙包装材の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、生分解性に優れる乳酸樹脂水性分散液を使用することで、従来の設備をそのまま使用して、かつ優れた耐油性を有する耐油性紙包装材を製造することができる。
【0015】
本発明の耐油性紙包装材は、耐油性に優れるとともに耐水性にも優れ、バターなどの含水油脂の包装に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、少なくとも紙基材層と、耐油層とを積層してなる紙包装材であり、前記耐油層は、D−乳酸含有率が1.5〜25モル%のポリ乳酸樹脂と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤をポリ乳酸樹脂に対し、1〜30質量%含有し、ポリ乳酸樹脂の数平均粒子径が0.5μm以下である乳酸樹脂水性分散液を塗布および乾燥したものであること特徴とする、耐油性紙包装材である。
【0017】
(1)耐油性紙包装材の構成
本発明の耐油性紙包装材の好適な態様の一例を図面を用いて説明する。
図1は、紙基材層(10)と耐油層(20)とが積層されてなる耐油性紙包装材の断面図である。図2に示すように、前記紙基材層(10)の表面には、クレーコート層(30)が積層されていてもよい。また、本発明の耐油性紙包装材は、図3に示すように、前記耐油層(20)が前記クレーコート層(30)の上層に積層されるものであってもよい。更に、印刷層やオーバーコート層、その他の層を含むものであってもよい。
【0018】
(2)紙基材層
本発明で使用する紙基材層は、耐屈曲性、剛性、腰、強度等を有するものを使用することができる。紙基材層としては、例えば、純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙、ミルク原紙等の各種の紙基材層を使用することができる。紙基材層としては、これらの紙を複数層重ねたものであってもよい。また、紙は、坪量80〜600g/m2程度、好ましくは坪量100〜450g/m2程度であり、厚さ110〜860μm程度、好ましくは140〜640μm程度のものを使用することができる。なお、紙基材層には、例えば、文字、図形、記号、その他の所望の絵柄を通常の印刷方式にて任意に形成することができる。
【0019】
(2)クレーコート層
本発明では、紙基材層は、クレーコート層を積層したものであってもよい。紙基材層は、表面に凹凸があるため、紙基材層に印刷を施すと明瞭な印刷面を構成することができない。このため、紙基材層の上にクレーコート層を形成し、その上に印刷を行うことが望ましい。
【0020】
本発明において、クレーコート層は、クレーを含む塗工液を紙基材層に塗布し、紙基材層の片面にクレーの粒子が敷き詰められたものである。クレーとしては、一般的にクレー、粘土と呼ばれるものであれば、特に限定されないが、カオリン、タルク、ベントナイト、スメクタイト、バーミキュライト、雲母、緑泥石、木節粘土、ガイロメ粘土、ハロイサイト、マイカ等が用いられる。クレーとしては、このうちカオリン、タルクを用いることが好ましく、カオリンは隠蔽性・吸水性に優れ、タルクは硬度が低く(モース硬度1)、耐熱性に優れるため、耐熱性の向上や成型時の寸法安定性の向上が期待できる。
【0021】
クレーコート層は、クレーの他に、顔料として、炭酸カルシウム、二酸化チタン、非晶質シリカ、発泡性硫酸バリウム、サチンホワイト等を含んでいることが好ましい。顔料として炭酸カルシウムや二酸化チタンを用いることにより、クレーコート層の面の平滑度を上げることができ、かつ、隠蔽性を高めることが可能となる。さらに、炭酸カルシウムは安価であるため、好適に用いられる。
【0022】
クレーコート層を塗工するための塗工液は、溶媒に上記クレーと、バインダーと、必要に応じて他の顔料や添加剤を含むものである。溶媒としては、通常、水、アルコール等が用いられる。バインダーとしては、通常、ラテックス系のバインダー(例えば、スチレンブタジエンラテックス、アクリル系ラテックス酢酸ビニル系ラテックス)、水溶性のバインダー(例えば、デンプン(変性デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシエチルエーテル化デンプン、リン酸エステル化デンプン)、ポリビニルアルコール、カゼイン)等が用いられる。添加剤としては、顔料分散剤、消泡剤、発泡防止剤、粘度調整剤、潤滑剤、耐水化剤、保水剤、色材、印刷適性改良剤等が用いられる。
【0023】
クレーコート層用塗工液の配合割合も、特に限定されないが、クレー:顔料:バインダー=1〜20%:50〜90%:10〜30%程度であることが好ましい。
クレーコート層の塗工方法は、特に限定されず、従来公知の塗工方法が用いられるが、エアナイフコート、ブレードコート、ショートドウェルコート、キャストコート等の塗工方法が用いられる。
【0024】
クレーコート層の塗工量や厚さは、特に限定されないが、通常、乾燥後の坪量が5〜40g/m2であり、10〜40g/m2であることが好ましい。
紙基材層とクレーコート層としては、紙基材層にクレーコート層が既に形成された材料を用いることもできる。
【0025】
なお、クレーコート層は、前記したように、紙の印刷適性を向上させるために設けられる。本発明では、紙基材層のいずれか片面にクレーコート層を形成してもよく、両面にクレーコート層が形成されてもよい。クレーコート層を含む場合、耐油層はクレーコート層の上に形成されてもよい。
【0026】
(4)耐油層
本発明の耐油性紙包装材では、少なくとも紙基材層に耐油層が積層されるが、紙基材層にクレーコート層が積層された場合には、紙基材層に積層されてもクレーコート層に積層されてもよい。従って、例えば、図1に示すように耐油層と紙基材層とが積層されるものや、図2に示すように、耐油層、紙基材層、クレーコート層が順次積層されるもの、図3に示すように、耐油層、クレーコート層、紙基材層の順に積層されるものであってもよい。
【0027】
これらはいずれを内層として内容物を包装してもよい。一般には、耐油層は、内容物と接触する最内層に形成されることが好ましく、これによって内容物の紙基材層への含浸を効率的に防止することができるが、外層側に耐油層を形成してもよい。いずれの場合であっても、内容物の最外層からの浸み出しを防止することができるからである。具体的には、図3の態様において、最内層を紙基材層(10)として内容物を包装しても、耐油層(20)を最内層として内容物を包装してもよい。
【0028】
本発明では、更に印刷層、その他の層を積層することができる。例えば、図4に示すように、内層から外層に向かって、耐油層(20)、クレーコート層(30)、紙基材層(10)、クレーコート層(30)が積層され、さらに、クレーコート層(30)の上に、文字情報や意匠的図形や色彩が表示された印刷層(40)を形成するものである。耐油層(20)によって紙基材層(10)に油脂などが含浸することを防止することができ、外層の印刷層(40)による美観や製品情報の提供をより的確に行うことができる。なお、紙基材層(10)と耐油層(20)との間にクレーコート層(30)が存在しない態様であってもよい。
【0029】
本発明で耐油層は、D−乳酸含有率が1.5〜25モル%のポリ乳酸樹脂と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤をポリ乳酸樹脂に対し、1〜30質量%含有し、ポリ乳酸樹脂の数平均粒子径が0.5μm以下である乳酸樹脂水性分散液を塗布および乾燥したものである。前記乳酸樹脂水性分散液には、更にアンモニアまたは沸点250℃以下の有機アミン化合物、水、両親媒性有機溶剤を含むものであってもよい。
【0030】
前記ポリ乳酸樹脂は乳酸単位からなり、ポリ乳酸中に占めるD−乳酸の割合は、1.5〜25モル%、好ましくは4〜20モル%、さらに好ましくは8〜20モル%である。D−乳酸の含有量が1.5モル%未満であると、水分散化が困難となる場合があり、25モル%を超えると被膜の耐ブロッキング性が低下する場合がある。
【0031】
乳酸樹脂水性分散液に分散しているポリ乳酸樹脂粒子の粒度分布測定装置(日機装社製、MICROTRAC UPA150)で評価した数平均粒子径は、0.5μm以下である必要があり、0.3μm以下がより好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。下限は特にないが、0.03μm程度である。なお、粒度分布については、特に限定されない。乳酸樹脂水性分散液のポリ乳酸樹脂の含有量は、用途、乾燥後の塗膜の厚さ、塗布方法等によって適宜選択され、10〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%である。この範囲であれば、生分解性に優れ、かつ短時間で塗膜を形成することができる。
【0032】
乳酸樹脂水性分散液には、前記ポリ乳酸樹脂を水性分散化するために、界面活性剤と塩基性化合物とを併用してもよい。塩基性化合物は樹脂を加水分解すると共に、水性化に際してポリ乳酸樹脂中のカルボキシル基を中和してポリ乳酸樹脂微粒子間の凝集を防ぐことができる。好適に使用しうる界面活性剤としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤がある。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤の添加量は、ポリ乳酸樹脂に対して1〜30質量%、好ましくは3〜15質量%、さらに好ましくは5〜10質量%である。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤は、数平均分子量として、3,500〜20,000である必要があり、4,000〜10,000がより好ましい。なお、数平均分子量(M)は、界面活性剤の水酸基価(H)を用いて、M=56.1×1000×2/Hに基づいて算出した値である。また、JIS K7105に準じて、日本電色工業株式会社製のNDH2000「濁度、曇り度計」を用いた界面活性剤の曇点は、分散安定性や保存安定性の点で50℃以上であることが好ましい。
【0033】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤中におけるエチレンオキシドの含有量は、分散安定性や保存安定性に優れる点で30〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%がより好ましく、45〜55質量%が特に好ましい。市販のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤としては、三洋化成工業株式会社製「ニューポール」シリーズ、旭電化工業株式会社製「アデカプルロニック」シリーズ、BASF株式会社製「PLURONIC」シリーズ等がある。また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤を主成分として、他の界面活性剤、特に、非イオン性界面活性剤または両性界面活性剤を併用しても良い。より微細な粒子の水性分散体が得られる場合がある。非イオン性界面活性剤の具体例としては、脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系、アマイド系、ポリエチレングリコール系、ポリグリセリンエステル系、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系等が挙げられ、両性界面活性剤の具体例としては、ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型、アミノオキサイド型等が挙げられる。このような他の界面活性剤を併用する場合、その使用量は主たる界面活性剤であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤の量を超えない5〜100質量%の範囲であることが好ましい。
【0034】
前記乳酸樹脂水性分散液は、被膜形成時に加熱によって揮散する塩基性化合物として、アンモニアまたは沸点が250℃以下の有機アミン化合物が配合されていてもよい。有機アミン化合物の例としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−ジエタノールアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン等を挙げることができる。特に分散安定性が優れていることから、トリエチルアミンを用いることが好ましい。アンモニアまたは沸点250℃以下の有機アミンの量は、水性分散体中では、ポリ乳酸樹脂に対して0.01〜20質量%の範囲であればよく、好ましくは、0.01〜10質量%である。
【0035】
前記乳酸樹脂水性分散液には、乳化処理速度を加速させる目的で、両親媒性の有機溶媒が配合されていてもよい。両親媒性の有機溶剤とは、20℃における水に対する溶解度が5g/L以上である有機溶剤をいい、溶解度が10g/L以上のものを用いることが好ましい。水に対する溶解度が5g/L未満のものは、乳化処理の加速効果に乏しい。両親媒性の有機溶剤の具体例としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−tert−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル等のエステル類、アセトニトリル等を例示することができる。特に分散安定性が優れていることから、テトラヒドロフランを用いることが好ましい。なお、沸点が100℃以下または水と共沸可能であって、しかも毒性、爆発性や引火性の低い、汎用の有機溶剤であれば、製造工程でストリッピングにより除去することができ、好適である。両親媒性有機溶剤の使用量は、水性分散体の製造時には、水性分散体に対して5〜30質量%、好ましくは10〜20質量%とする。5質量%未満の場合には、乳化処理の加速効果に乏しく、一方、水性分散体に対して有機溶剤の含有率が30質量%を超えると、環境保護、省資源、消防法等による危険物規制、職場環境改善の立場から好ましくない。なお、両親媒性有機溶剤は、その一部を系外に容易にストリッピングすることができ、用途に応じて、そのすべてを系外に留去してしまうこともできる。したがって、水性分散体中の両親媒性有機溶剤量は、0〜30質量%の範囲となる。脱溶剤後の水性分散体に対して有機溶剤の残存率が30質量%を超えると、「低有機溶剤」という水性分散体本来の目的が失われるだけでなく、水性分散体が異常に増粘したり、貯蔵安定性が低下するという不具合を生じやすい。
【0036】
前記乳酸樹脂水性分散体には、低温造膜性および柔軟性を向上させるために、更に可塑剤を配合してもよい。可塑剤の配合割合は、ポリ乳酸樹脂に対して0.1〜30質量%の範囲である。添加量が0.1質量部未満であると添加効果が小さく、30質量部を超えると耐ブロッキング性や耐水性が低下する傾向にある。可塑剤としては、ポリ乳酸に対して相溶し、かつ、不揮発性であり、環境問題などの観点から無毒性で、さらにFDA(Food and Drug Administration)に合格しているものが好ましい。具体的には、エーテルエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤である。エーテルエステル系可塑剤の具体例としては、ビスメチルジエチレングリコールアジペート、ビスブチルジエチレングリコールアジペートなどである。また、オキシ酸エステル系可塑剤小具体例としては、アセチルクエン酸トリブチル等が挙げられる。これらの可塑剤は単独で使用してもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0037】
さらに、乳酸樹脂水性分散液には、その特性が損なわれない範囲で、顔料、染料、顔料分散剤、湿潤剤、消泡剤、増粘剤、凍結融解安定剤、被膜形成助剤、防腐剤、防カビ剤、防サビ剤、接着剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル補足剤等を添加することができる。
【0038】
乳酸樹脂水性分散液の組成は、ポリ乳酸樹脂10〜60質量%、界面活性剤0.1〜18質量%、塩基性化合物0.01〜12質量%、両親媒性有機溶剤0〜30質量%、約水10〜90質量%となる。
【0039】
このような乳酸樹脂水性分散体は、ポリ乳酸樹脂、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤、アンモニアまたは沸点250℃以下の有機アミン、両親媒性有機溶剤、及び水を容器中で、ポリ乳酸樹脂のガラス転移温度以上融点未満の温度で加熱、攪拌することにより製造することができる。このとき、0.1MPa以上の加圧を行うことが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されない。上記の方法によれば、樹脂の解重合工程または有機溶剤中への樹脂の溶解工程等を経なくともポリ乳酸樹脂を良好に水性分散体とすることができる。
【0040】
原料として用いられるポリ乳酸樹脂の形状は特に限定されないが、水性化速度を速めるという点から、粒子径1cm以下、好ましくは0.8cm以下の粒状ないしは粉末状のものを用いることが好ましい。また、ポリ乳酸樹脂の酸価は特に限定されず、たとえば、市販のポリ乳酸樹脂(一般に酸価は4mgKOH/g未満)をそのまま用いることができ、これをあらかじめ解重合などの操作により高酸価のものとしておくような煩雑な操作は必要としない。
【0041】
製造に際し、系内の温度を30℃以上かつポリ乳酸樹脂融点温度未満の温度に保ちつつ、好ましくは5〜300分間攪拌を続けることでポリ乳酸樹脂を十分に水性化させることができ、その後45℃以下に冷却することにより、水性分散体を得ることができる。なお、乳酸樹脂水性分散液中の有機溶剤は、その一部または全てをストリッピングにより系外へ留去させることができる。
【0042】
必要に応じてジェット粉砕処理を行って、ポリ乳酸樹脂水性分散体を、高圧下でノズルやスリットのような細孔より噴出させ、樹脂粒子同士や樹脂粒子と衝突板等とを衝突させて、機械的なエネルギーによって樹脂粒子をさらに細粒化してもよい。このための装置の具体例としては、A.P.V.GAULIN社製ホモジナイザー、みずほ工業社製マイクロフルイタイザーM−110E/H等が挙げられる。これにより、ポリ乳酸樹脂が水性媒体中に分散又は溶解され、均一な液状に調製されて得られる。このようにして製造したポリ乳酸樹脂水性分散体は、分散安定性および低温造膜性に優れ、耐水性に優れた被膜を形成することができる。
【0043】
本発明では、このようにして得られた乳酸樹脂水性分散液を、前記紙基材層やクレーコート層に乾燥時の塗布量が0.1〜20g/m2、より好ましくは5〜15g/m2、特に好ましくは8〜12g/m2となるように塗布、加熱乾燥して形成する。
【0044】
(6)他の層
本発明の耐油性紙包装材には、所望の印刷層を形成することができる。印刷層はいずれの層の上に形成してもよいが、好ましくは、クレーコート層の上である。
【0045】
上記の印刷層としては、例えば、紙基材層やクレーコート層の上に、通常のグラビアインキ組成物、オフセットインキ組成物、凸版インキ組成物、スクリーンインキ組成物、その他のインキ組成物を使用し、例えば、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、凸版印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、その他の印刷方式を使用し、例えば、文字、図形、絵柄、記号、その他からなる所望の印刷絵柄を形成することにより構成することができる。
【0046】
前記印刷層の上には、オーバーコート層を更に積層してもよい。
(7)耐油性紙包装材の製造方法
本発明の耐油性紙包装材の製造方法に限定はないが、紙基材層に、D−乳酸含有率が1.5〜25モル%のポリ乳酸樹脂と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤をポリ乳酸樹脂に対し、1〜30質量%含有し、ポリ乳酸樹脂の数平均粒子径が0.5μm以下である乳酸樹脂水性分散液を塗布および乾燥し、この乳酸樹脂水性分散液の塗布および乾燥を、1〜5回行って耐油層を形成して耐油性紙包装材の製造方法することができる。
【0047】
本発明では、前記したように、紙基材層にクレーコート層が積層されるものであってもよい。紙基材層の上のクレーコート層に上記乳酸樹脂水性分散液を塗布する場合には、1回の塗布と乾燥とにより耐油層を形成することができる。クレーコート層に含有されるバインダーによって上記乳酸樹脂水性分散液の紙基材層への含浸が防止されるため、1回の塗工並びに乾燥によって耐油層が形成されると考えられる。乳酸樹脂水性分散液の塗布量は、乾燥時、0.1〜20g/m2、より好ましくは5〜15g/m2、特に好ましくは8〜12g/m2である。
【0048】
一方、紙基材層に上記乳酸樹脂水性分散液を塗布する場合には、使用する紙基材によっても異なるが、塗布と乾燥とを2回以上、より好ましくは2〜5回、特に好ましくは3〜5回繰り返す。上記乳酸樹脂水性分散液には10〜90質量%の範囲で水を含むため、紙基材層の表面にある凹凸から上記乳酸樹脂水性分散液が吸液され、一回の塗布並びに乾燥では耐油性を確保することが困難である。しかしながら、上記乳酸樹脂水性分散液の被膜形成を複数回行うことで耐油性を確保しうることが判明した。従って、紙基材層に直接前記水性分散液を塗工する場合と、クレーコート層に前記水性分散液を塗工する場合とでは、耐油性を確保するのに必要な塗工量が異なる場合がある。
【0049】
例えば、上記乳酸樹脂水性分散液を乾燥時塗布量、0.1〜10g/m2、より好ましくは1〜8g/m2、特に好ましくは3〜5g/m2で塗布した後に乾燥して被膜を形成し、その後に、上記乳酸樹脂水性分散液を、乾燥時塗布量、0.1〜10g/m2、より好ましくは1〜8g/m2、特に好ましくは3〜5g/m2で塗布しおよび乾燥し、これを繰り返す。最終的に、上記乳酸樹脂水性分散液の乾燥時塗布量が、0.1〜20g/m2、より好ましくは5〜18g/m2、特に好ましくは8〜15g/m2となるように積層することで、耐油性を確保することができる。塗工および乾燥条件は、被膜が形成されるものであれば特に制限はない。本発明で使用する乳酸樹脂水性分散液は、水性分散液であるが、剛性の高いポリ乳酸を10〜60質量%含有するため、得られる被膜にクラックが発生する場合がある。しかしながら、上記乳酸樹脂水性分散液の乾燥時塗布量が0.1〜20g/m2となるように複数回の塗工と乾燥とを行うことで、紙基材層の上に直接乳酸樹脂水性分散液を塗工する場合であっても、紙基材層への含浸ならびにクラックの発生を効率的に防止し、耐油性に優れる耐油層を形成することができる。
【0050】
なお、乳酸樹脂水性分散液の塗工は、ディップコート法、はけ塗り法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、カーテンフローコート法、各種印刷法等により、樹脂成形体、不織布、紙、ガラス、金属等の各種基材上に均一に塗装することができ、必要に応じて室温付近でのセッティングや低温での乾燥工程を経た後、高温熱処理を行うことで、均一で光沢度が高く、しかも各種の性能に優れた被膜を得ることができる。高温熱処理は、通常、熱風循環型のオーブンや赤外線加熱ヒーター等により、50〜250℃で10秒〜30分間加熱することで達成される。
【0051】
(8)耐油性紙包装容器
上記耐油性紙包装材を使用して包装用容器を製造することができる。例えば、最内層が耐油層となるようにして上記耐油性紙包装材を所定形状に裁断し、包装容器を構成することができる。
【0052】
本発明において、上記のようにして製造した耐油性紙包装容器は、バター、チーズなどの油脂製品、フライドポテトなどの揚げ物食品などの耐油性が求められる食品の収納に好適に使用することができる。
【実施例】
【0053】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
(実施例1)
片面クレーコート紙(北越製紙(株)、NEWタフアイボリー:坪量260g/m2)のクレ
ーコート層に、乳酸樹脂水性分散液(D−乳酸含有率が15モル%のポリ乳酸樹脂、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤の含有量がポリ乳酸樹脂に対し20質量%、ポリ乳酸樹脂の数平均粒子径0.1μm)をマイヤーバー#3にて、乾燥時の厚みが3g/m2となるように塗布および乾燥させて耐油性紙包装材を得た。
【0054】
この耐油性紙包装材の乳酸樹脂水性分散液塗工側層について、耐油性を評価するためキット法(JAPAN TAPPI紙パルプ試験法No.41)キットナンバ−6〜8で試験(N=5)を行った。結果を表1に示す。
【0055】
また、クラックの発生数を評価した。結果を表2に示す。なお、クラック発生数は、20cm×20cmの耐油性紙包装材について、目視可能な2mm以上の亀裂を1個とカウントし、亀裂(クラック)発生数しとした。
【0056】
(比較例1)
片面クレーコート紙(北越製紙(株)、NEWタフアイボリー:坪量260g/m2)の非ク
レーコート層に、乳酸樹脂水性分散液(D−乳酸含有率が15モル%のポリ乳酸樹脂、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤の含有量がポリ乳酸樹脂に対し20質量%、ポリ乳酸樹脂の数平均粒子径0.1μm)をマイヤーバー#3にて、乾燥時の厚みが3g/m2となるように塗布および乾燥させて比較耐油性紙包装材を得た。
【0057】
この耐油性紙包装材の乳酸樹脂水性分散液塗工側層について、耐油性を評価するためキット法(JAPAN TAPPI紙パルプ試験法No.41)キットナンバ−6〜8で試験(N=5)を行った。結果を表1に示す。
【0058】
また、実施例1と同様にしてクラックの発生数を評価した。結果を表2に示す。
(比較例2)
片面クレーコート紙(北越製紙(株)、NEWタフアイボリー:坪量260g/m2)の非クレーコート層に、実施例1で使用した乳酸樹脂水性分散液を乾燥時の厚みが3g/m2となるように塗布および乾燥させ、この操作を2回実施して比較耐油性紙包装材を得た。
【0059】
この比較耐油性紙包装材の乳酸樹脂水性分散液塗工側層について、比較例1と同様にして耐油性を評価した。結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にしてクラックの発生数を評価した。結果を表2に示す。
【0060】
(実施例2)
片面クレーコート紙(北越製紙(株)、NEWタフアイボリー:坪量260g/m2)の非コート層に、実施例1で使用した乳酸樹脂水性分散液を乾燥時の厚みが3g/m2となるように塗布および乾燥させ、この操作を3回実施して耐油性紙包装材を得た。
【0061】
この耐油性紙包装材の乳酸樹脂水性分散液塗工側層について、比較例1と同様にして耐油性を評価した。結果を表1に示す。
また、クラックの発生数を評価した。結果を表2に示す。
【0062】
(比較例3)
片面クレーコート紙(北越製紙(株)、NEWタフアイボリー:坪量260g/m2)を用いて、非クレーコート層について、比較例1と同様にして耐油性を評価した。結果を表1に示す。
【0063】
(比較例4)
フッ素系樹脂が使用された汎用耐油紙を用いて、上記非コート層側について、比較例1と同様にして耐油性を評価した。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

(結果)
(1) 実施例1、比較例4の結果から、クレーコート層に乳酸樹脂水性分散液を塗工する場合には、フッ素樹脂を使用することなく耐油コート紙(比較例4)と同程度の耐油性に優れる耐油層を形成することができた。
【0066】
(2) 実施例2、比較例4の結果から、非コート層に複数回の塗工と乾燥とによって乳酸樹脂水性分散液による被膜を形成する場合には、フッ素樹脂を使用することなく耐油コート紙と同程度の耐油性に優れる耐油層を形成することができた。
【0067】
(3) 表2の結果から、非コート層に乳酸樹脂水性分散液を塗工する場合には、1回、2回の塗工ではクラックが発生するため耐油性に劣るが、3回の塗工および乾燥によりクラックの発生が抑制され、耐油性を確保できたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、フッ素樹脂を使用することなく、生分解性、耐油性、耐水性に優れる耐油性紙包装材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、紙基材層(10)に耐油層(20)が積層された本発明の耐油性紙包装材の断面図である。
【図2】図2は、クレーコート層(30)、紙基材層(10)、耐油層(20)が形成された本発明の耐油性紙包装材の断面図である。
【図3】図3は、紙基材層(10)、クレーコート層(30)、耐油層(20)が形成された本発明の耐油性紙包装材の断面図である。
【図4】図4は、印刷層(40)、クレーコート層(30)、紙基材層(10)、クレーコート層(30)、耐油層(20)が形成された本発明の耐油性紙包装材の断面図である。
【符号の説明】
【0070】
10・・・紙基材層、
20・・・耐油層、
30・・・クレーコート層、
40・・・印刷層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも紙基材層と、耐油層とを積層してなる紙包装材であり、
前記耐油層は、D−乳酸含有率が1.5〜25モル%のポリ乳酸樹脂と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤をポリ乳酸樹脂に対し、1〜30質量%含有し、ポリ乳酸樹脂の数平均粒子径が0.5μm以下である乳酸樹脂水性分散液を塗布および乾燥したものであること特徴とする、耐油性紙包装材。
【請求項2】
前記紙基材層は、片面にクレーコート層を有するものである、請求項1記載の耐油性紙包装材。
【請求項3】
前記耐油層は、前記クレーコート層に積層されることを特徴とする、請求項2記載の耐油性紙包装材。
【請求項4】
前記紙基材層に、前記乳酸樹脂水性分散液を、複数回、塗布および乾燥して耐油層を積層してなることを特徴とする、請求項1または2記載の耐油性紙包装材。
【請求項5】
前記耐油層における乳酸樹脂水性分散液の塗布量は、乾燥時、0.1〜20g/m2であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐油性紙包装材。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の耐油性紙包装材からなる耐油性紙包装容器。
【請求項7】
少なくとも紙基材層と耐油層とを積層してなる紙包装材の製造方法であって、
前記紙基材層に、D−乳酸含有率が1.5〜25モル%のポリ乳酸樹脂と、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー系界面活性剤をポリ乳酸樹脂に対し、1〜30質量%含有し、ポリ乳酸の平均粒子径が0.5μ以下である乳酸樹脂水性分散液を塗布および乾燥し、この乳酸樹脂水性分散液の塗布および乾燥を、複数回行って耐油層を形成することを特徴とする、耐油性紙包装材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−84246(P2010−84246A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252434(P2008−252434)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】