説明

耐熱光ファイバ部品の製造方法

【課題】作業性が良く、ポリイミド被覆ファイバに適用可能な耐熱光ファイバ部品の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリイミド被覆ファイバ(1)に水溶解性または熱溶解性の接着剤(3)を付着させ、ガラスキャピラリ(4)に挿入し、接着剤(3)を硬化させ、端面を斜め研磨し、水または熱により接着剤(3)およびガラスキャピラリ(4)を除去し、斜め研磨した端部近傍のポリイミド被覆(2)を除去して耐熱光ファイバ部品を得る。
【効果】ポリイミド被覆ファイバ(1)のポリイミド被覆(2)を除去せずにガラスキャピラリ(4)に挿入するため、その作業中に傷が付いたり折れたりすることがほとんどなくなり、作業性が改善される。ポリイミド被覆(2)は耐熱性が高いため、耐熱性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱光ファイバ部品の製造方法に関し、さらに詳しくは、作業性が良く、ポリイミド被覆ファイバに適用可能な耐熱光ファイバ部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被覆ファイバの被覆を除去して裸ファイバとし、ガラスキャピラリにUV接着剤を入れ、裸ファイバを挿入し、UV接着剤を硬化させ、端面を斜め研磨し、溶剤によりUV接着剤およびガラスキャピラリを除去して耐熱光ファイバ部品を得る耐熱光ファイバ部品の製造方法(第1の従来技術という。)、および、二次硬化可能な被覆がされている光ファイバの被覆を二次硬化させ、ガラスキャピラリに挿入し、端面を斜め研磨し、ガラスキャピラリから引き抜いて耐熱光ファイバ部品を得る耐熱光ファイバ部品の製造方法(第2の従来技術という。)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−240965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記第1の従来技術では、被覆ファイバの被覆を除去して裸ファイバとし、これをガラスキャピラリに挿入するが、裸ファイバは外力に弱いため作業中に傷が付いたり折れたりすることがあり、作業性が悪い問題点がある。
上記第2の従来技術では、被覆ファイバの被覆が二次硬化可能な被覆に限定され、例えばポリイミド被覆ファイバに適用できない問題点がある。
そこで、本発明の目的は、作業性が良く、ポリイミド被覆ファイバに適用可能な耐熱光ファイバ部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、ポリイミド被覆ファイバに水溶解性の接着剤を付着させガラスキャピラリに挿入するか又はガラスキャピラリに水溶解性の接着剤を入れポリイミド被覆ファイバを挿入し、前記接着剤を硬化させ、端面を斜め研磨し、水により前記接着剤および前記ガラスキャピラリを除去し、前記斜め研磨した端部近傍のポリイミド被覆を除去して耐熱光ファイバ部品を得ることを特徴とする耐熱光ファイバ部品の製造方法を提供する。
上記第1の観点による耐熱光ファイバ部品の製造方法では、ポリイミド被覆ファイバの被覆を除去せずにガラスキャピラリに挿入するため、その作業中に傷が付いたり折れたりすることがほとんどなくなり、作業性が改善される。また、ポリイミド被覆ファイバに適用できるため、耐熱性の高い光ファイバ部品が得られる。また、水溶解性の接着剤を用いるため、接着剤およびガラスキャピラリを除去する作業を水中で行うことが出来る。
【0005】
第2の観点では、本発明は、ポリイミド被覆ファイバに熱溶解性の接着剤を付着させガラスキャピラリに挿入するか又はガラスキャピラリに熱溶解性の接着剤を入れポリイミド被覆ファイバを挿入し、前記接着剤を硬化させ、端面を斜め研磨し、熱により前記接着剤および前記ガラスキャピラリを除去し、前記斜め研磨した端部近傍のポリイミド被覆を除去して耐熱光ファイバ部品を得ることを特徴とする耐熱光ファイバ部品の製造方法を提供する。
上記第2の観点による耐熱光ファイバ部品の製造方法では、ポリイミド被覆ファイバの被覆を除去せずにガラスキャピラリに挿入するため、その作業中に傷が付いたり折れたりすることがほとんどなくなり、作業性が改善される。また、ポリイミド被覆ファイバに適用できるため、耐熱性の高い光ファイバ部品が得られる。また、熱溶解性の接着剤を用いるため、接着剤およびガラスキャピラリを除去する作業を空気中で行うことが出来る。
【発明の効果】
【0006】
本発明の耐熱光ファイバ部品の製造方法によれば、ポリイミド被覆ファイバの被覆を除去せずにガラスキャピラリに挿入するため、その作業中に傷が付いたり折れたりすることがほとんどなくなり、作業性が改善される。また、ポリイミド被覆ファイバに適用できるため、耐熱性の高い光ファイバ部品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0008】
図1は、実施例1にかかる耐熱光ファイバ部品の製造方法の手順を示すフロー図である。
ステップS1では、ポリイミド被覆ファイバ(図2の1)に水溶解性の接着剤(図2の3)を付着させるか又は/及びガラスキャピラリ(図2の4)に水溶解性の接着剤3を入れる。水溶解性の接着剤3は、たとえば水溶解性のUV接着剤である。
【0009】
ステップS2では、図2に示すように、ポリイミド被覆ファイバ1をガラスキャピラリ4に挿入する。なお、ポリイミド被覆ファイバ1は、コア1aおよびクラッド1dから成る石英またはガラス製の光ファイバ1の外周面にポリイミド被覆2を形成した構成である。
【0010】
ステップS3では、接着剤3を硬化させ、ポリイミド被覆ファイバ1とガラスキャピラリ4を一体化する。なお、接着剤3がUV接着剤なら、紫外線照射により硬化させることが出来る。
【0011】
ステップS4では、ポリイミド被覆ファイバ1とガラスキャピラリ4の一体化物を研磨用治具に取り付け、端面を斜め研磨する。
【0012】
ステップS5では、ポリイミド被覆ファイバ1とガラスキャピラリ4の一体化物を研磨用治具から外し、熱水に漬ける。接着剤3が軟化したら、接着剤3およびガラスキャピラリ4を除去する。これにより、図3に示すように、端面を斜め研磨したポリイミド被覆ファイバ1’が得られる。なお、端面は例えば45゜に研磨されている。
【0013】
ステップS6では、図4に示すように、斜め研磨した端部のポリイミド被覆2を除去し、耐熱光ファイバ部品10を得る。なお、ポリイミド被覆2の除去は、レーザを用いたり、バーナを用いたり、剥離剤(東レエンジニアリング社TPE−3000)を用いて行うことが出来る。
【0014】
図5に示すように、耐熱光ファイバ部品10の斜め研磨した端部と反対側の端部に保護チューブ5が被せられると共にコネクタ6が取り付けられ、耐熱光ファイバ部品11とされる。
【0015】
実施例1の耐熱光ファイバ部品の製造方法によれば、ポリイミド被覆ファイバ1のポリイミド被覆2を除去せずにガラスキャピラリ4に挿入するため、その作業中に傷が付いたり折れたりすることがほとんどなくなり、作業性が改善される。また、ポリイミド被覆2は耐熱性が高いため、耐熱性を向上できる。さらに、接着剤3およびガラスキャピラリ4を除去する作業を水中で行うことが出来る。
【実施例2】
【0016】
図6は、実施例2にかかる耐熱光ファイバ部品の製造方法の手順を示すフロー図である。
ステップH1では、ポリイミド被覆ファイバ(図2の1)に熱溶解性の接着剤(図2の3)を付着させるか又は/及びガラスキャピラリ(図2の4)に熱溶解性の接着剤3を入れる。熱溶解性の接着剤3は、たとえばホットメルト接着剤である。
【0017】
ステップH2では、図2に示すように、ポリイミド被覆ファイバ1をガラスキャピラリ4に挿入する。
【0018】
ステップH3では、接着剤3を硬化させ、ポリイミド被覆ファイバ1とガラスキャピラリ4を一体化する。なお、接着剤3がホットメルト接着剤なら、冷却により硬化させることが出来る。
【0019】
ステップH4では、ポリイミド被覆ファイバ1とガラスキャピラリ4の一体化物を研磨用治具に取り付け、端面を斜め研磨する。
【0020】
ステップH5では、ポリイミド被覆ファイバ1とガラスキャピラリ4の一体化物を研磨用治具から外し、温風を当てる。接着剤3が軟化したら、接着剤3およびガラスキャピラリ4を除去する。これにより、図3に示すように、端面を斜め研磨したポリイミド被覆ファイバ1’が得られる。なお、端面は例えば45゜に研磨されている。
【0021】
ステップH6では、図4に示すように、斜め研磨した端部のポリイミド被覆2を除去し、耐熱光ファイバ部品10を得る。
【0022】
実施例2の耐熱光ファイバ部品の製造方法によれば、ポリイミド被覆ファイバ1のポリイミド被覆2を除去せずにガラスキャピラリ4に挿入するため、その作業中に傷が付いたり折れたりすることがほとんどなくなり、作業性が改善される。また、ポリイミド被覆2は耐熱性が高いため、耐熱性を向上できる。さらに、接着剤3およびガラスキャピラリ4を除去する作業を空気中で行うことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の耐熱光ファイバ部品の製造方法は、耐熱光ファイバ部品を製造するのに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1に係る耐熱光ファイバ部品の製造方法の手順を示すフロー図である。
【図2】ポリイミド被覆ファイバ1とガラスキャピラリ4の一体化物の断面図である。
【図3】端面を斜め研磨したポリイミド被覆ファイバを示す断面図である。
【図4】実施例1に係る耐熱光ファイバ部品を示す断面図である。
【図5】加工した耐熱光ファイバ部品を示す外観図である。
【図6】実施例2に係る耐熱光ファイバ部品の製造方法の手順を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ポリイミド被覆ファイバ
1a コア
1d クラッド
2 ポリイミド被覆
3 接着剤
4 ガラスキャピラリ
10 耐熱光ファイバ部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド被覆ファイバに水溶解性の接着剤を付着させガラスキャピラリに挿入するか又はガラスキャピラリに水溶解性の接着剤を入れポリイミド被覆ファイバを挿入し、前記接着剤を硬化させ、端面を斜め研磨し、水により前記接着剤および前記ガラスキャピラリを除去し、前記斜め研磨した端部近傍のポリイミド被覆を除去して耐熱光ファイバ部品を得ることを特徴とする耐熱光ファイバ部品の製造方法。
【請求項2】
ポリイミド被覆ファイバに熱溶解性の接着剤を付着させガラスキャピラリに挿入するか又はガラスキャピラリに熱溶解性の接着剤を入れポリイミド被覆ファイバを挿入し、前記接着剤を硬化させ、端面を斜め研磨し、熱により前記接着剤および前記ガラスキャピラリを除去し、前記斜め研磨した端部近傍のポリイミド被覆を除去して耐熱光ファイバ部品を得ることを特徴とする耐熱光ファイバ部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−15429(P2008−15429A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189351(P2006−189351)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】