説明

耐熱性および耐薬品性を特徴とする高弾性透明熱可塑性ポリウレタン

【課題】耐熱性、耐薬品性および耐衝撃性を特徴とする高弾性透明熱可塑性ポリウレタン、および、そのような熱可塑性ポリウレタンの製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリウレタン反応生成物を全ブレンド100重量部に対して3〜20重量部の熱可塑性ポリウレタンと混合することにより製造する。該ポリウレタン反応生成物はジフェニルメタンジイソシアネートと少なくとも1つの鎖延長剤から、400を超える分子量を有するいかなるイソシアネート反応性組成物も存在しない中、NCO/OH比0.95:1〜1.10〜1で調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、耐薬品性および耐衝撃性を特徴とする高弾性透明熱可塑性ポリウレタン、および、そのような熱可塑性ポリウレタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタンの製造方法は、ポリウレタンの分野の当業者にとって周知である。例えば、非多孔性ポリウレタンのワンショット調製の連続方法を教示する米国特許3642964号を参照されたい。
【0003】
熱可塑性ポリウレタンの物理的性質は、熱可塑性ポリウレタンの製造に使用される、または、混合するために使用される特定材料および処理パラメーターにより、かなり異なってくる。
【0004】
米国特許4261946および米国特許4342847は、ポリマーを溶解するような温度で、熱可塑性ポリマーが第1注入口から押出機に導入される熱可塑性物質の製造方法を開示する。その後、溶融ポリマーに第2注入口からポリウレタン形成反応物を加える。熱可塑性ポリマーとポリウレタンの合成ブレンドは、最終形態で押出機から排出される。該ポリマーブレンド生成物は、上記の高い耐衝撃性を有する。溶融ポリマーにおけるポリウレタンの形成が、所望の耐衝撃性を得るために重要であることは、米国特許4342847の比較例2(d)に示されている。そこでは、ポリウレタンを溶融熱可塑性ポリマーに加える前に形成した場合、高い耐衝撃性が得られなかったということが示されている。
【0005】
米国特許4376834は、高耐衝撃性、高い曲げ弾性率、264psiにおける少なくとも50℃のたわみ温度を有することを教示するポリウレタンを開示する。これらの開示されたポリウレタンは、ポリウレタンの総重量に基づき2〜25重量%のポリイソシアネート、ポリオールおよび少なくとも1つの鎖延長剤の反応生成物である。また、この特許は、特に反応物質の組み合わせによりそこで開示されるポリウレタンが熱可塑性または熱硬化性になり得、多孔性または非多孔性に調製し得ることを教示する。熱可塑性樹脂は、実質的に二官能性ポリイソシアネート、二官能性延長剤および4以下の官能基を有するポリオールを使用することにより得られることを教示する。ここに記載される発明にしたがって製造される、有利な耐衝撃性、曲げ弾性率および最低限の熱たわみ性を有するポリウレタンの外観は不透明である。この不透明な外観は、ハードセグメント相およびソフトセグメント相の屈折率の違いによるものである。これに対して、ここに記載される発明にしたがって製造されていないポリウレタンは、外観は透明であるが、所望の高耐衝撃性、高い曲げ弾性率および最低限の熱たわみ温度を有していない。
【0006】
米国特許4567236は、透明なポリウレタンプラスチックおよび少量の(すなわちブレンド100重量部につき30重量部までの量)不適合ポリマー衝撃改質剤を含むポリマーブレンドを開示する。教示される不適合ポリマー衝撃改質剤には、好ましくは以下の物が含まれる:アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレンターポリマー、塩素化ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル−エチレン酢酸ビニルグラフトポリマー、塩化ビニルとアクリル酸オクチルまたはフマル酸オクチルとのポリエチレンコポリマー、およびポリ(アクリル酸アルキル)である。米国特許4567236に開示されたポリマーブレンドは、ブレンドを調製するためのポリウレタン成分の澄んだ、透明の外観とは正反対に不透明であることを教示する。この不透明な外観は、衝撃改質剤がポリウレタン中に、分散した別の相として存在しているという事実に起因する。
【0007】
高い耐衝撃性、高い曲げ弾性率、高い耐薬品性および264psiにおける少なくとも50℃の荷重たわみ温度を有する透明熱可塑性ポリウレタンは、先行技術に開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4261946号明細書
【特許文献2】米国特許第4342847号明細書
【特許文献3】米国特許第4376834号明細書
【特許文献4】米国特許第4567236号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、高い耐衝撃性、高い曲げ弾性率、高い耐薬品性および264psiにおける少なくとも50℃の荷重たわみ温度を有する透明熱可塑性ポリウレタンを提供することである。
【0010】
さらに、本発明の課題は、高い耐衝撃性、高い曲げ弾性率、高い耐薬品性および264psiにおける少なくとも50℃の荷重たわみ温度を有する透明熱可塑性ポリウレタンの、1工程または複数工程で行われる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの課題および当業者に明らかな他の課題は、ポリウレタン反応生成物を全ブレンド100重量部に対して3〜20重量部の熱可塑性ポリウレタンと混合することにより達成し得る。該ポリウレタン反応生成物は有機ポリイソシアネートならびに、2〜3個の官能基および約50〜400の分子量を有する少なくとも1つの鎖延長剤から、400を超える分子量を有するいかなるイソシアネート反応性組成物も存在しない中、NCO/OH比0.95:1〜1.10〜1で調製される。3〜20部の量で含まれる該熱可塑性ポリウレタンは、任意の熱可塑性ポリウレタンであってよい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、高耐衝撃性、高曲げ弾性率、高耐薬品性および264psiにおける少なくとも50℃の荷重たわみ温度を特徴とする透明熱可塑性ポリウレタンを対象とする。
【0013】
本明細書中で用いられる「透明」は、(ASTM D1003にしたがって測定する)全視感透過率の割合が、85%以上、好ましくは87%を超える熱可塑性ポリウレタンを意味する。
【0014】
本明細書中で用いられる「高(い)耐衝撃性」は、周囲条件下ノッチ付きアイゾット試験(ASTM D256)により測定される、少なくとも1ft lb/inchの、好ましくは少なくとも3ft lb/inchの衝撃強度を有する熱可塑性ポリウレタンを意味する。
【0015】
本明細書で用いられる表現「荷重たわみ温度」は、熱による変形に対するポリマーの耐性の尺度であり、定められた量(例えば264または66psi)の曲げ荷重をかけた場合に、所定の大きさおよび形状のポリウレタン試料の変形が生じる温度である。本明細書で報告される全ての荷重たわみ温度は、ASTM D648の手順を使用して得られた。本発明の熱可塑性ポリウレタンブレンドは、50℃を超える、好ましくは60℃を超える、最も好ましくは70℃を超える264psiにおけるたわみ温度を特徴とする。
【0016】
本明細書中で用いられる用語「高(い)曲げ弾性率」は、周囲条件下ASTM D790にしたがって測定される、少なくとも150,000psi、好ましくは200,000psiを超える、最も好ましくは250,000psiを超える曲げ弾性率を意味する。
【0017】
本発明の熱可塑性ポリウレタンブレンドの重要な特徴は、該熱可塑性ポリウレタンブレンドを、400を超える分子量を有するイソシアネート反応性生成物を全く加えずに作製されたポリウレタンにより製造することができるという点である(すなわち、別成分として高分子量ポリオールを使用せずに製造できる)。これらのイソシアネート反応性物質の添加の排除は、通常使用される少量の高分子量イソシアネート反応性物質を正確に測定する困難正を回避できる。また、鎖延長剤における高分子量イソシアネート反応性物質の非混和性により引き起こされる問題を回避する。
【0018】
例えば高分子量ポリオールのような高分子量イソシアネート反応性成分が他に存在しないにもかかわらず、本発明の熱可塑性ポリウレタンブレンドは、先行技術(例えば、米国特許4567236)から予期されるようなもろいものではないということが見出された。
【0019】
特に驚くべきことは、熱可塑性ポリウレタンまたはポリウレタン反応生成物を予め溶融させる必要なく、全ての成分を同時に反応器または押出機に供給することにより、本発明の高弾性、耐衝撃性および耐薬品性熱可塑性ポリウレタンブレンドを形成できるということである。
【0020】
本発明の組成物は、高耐衝撃性、高耐薬品性、高曲げ弾性率および264psiにおける少なくとも50℃の荷重たわみ温度を特徴とするポリマーブレンドである。該ブレンドは、以下を含有する。
(1)(a)有機ポリイソシアネート、および
(b)少なくとも1つの鎖延長剤
の、(a)中のイソシアネート基と(b)中の活性水素基の比率が0.95:1〜約1.10:1となるような量における反応生成物であるポリウレタン、
(2)ブレンド100重量部に対して3〜20重量部の熱可塑性ポリウレタン。
しかしながら、ポリウレタン反応生成物(1)は、400を超える分子量を有するいかなるイソシアネート反応性物質をも使用せずに製造される。
【0021】
少なくとも2つのイソシアネート基を有する既知の有機イソシアネートには、本発明の実施においてポリウレタン生成物(1)で成分(a)として使用し得る少なくとも2つのイソシアネート基を有する既知の変性イソシアネートが含まれる。適当なイソシアネートには、芳香族、脂肪族および脂環式ポリイソシアネートおよびそれらの組み合わせが含まれる。使用し得るイソシネートには以下のものが含まれる:ジイソシアネート、例えばm−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネートおよびそれらの異性体、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1−メチルフェニル−2,4−フェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネートおよび3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート;トリイソシアネート、例えば2,4,6−トルエントリイソシアネート;ならびにポリイソシアネート、例えば4,4’−ジメチル−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートおよびポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート。
【0022】
変性イソシアネートは、ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートの化学反応により得られる。本発明の実施に使用しうる変性イソシアネートには、エステル基、尿素基、ビューレット基、アロファネート基、カーボジイミド基、イソシヌレート基、ウレトジオン基および/またはウレタン基を含有するイソシアネートが含まれる。変性イソシアネートの好ましい例としては、NCO基を含有し、約25〜約35重量%、好ましくは約28〜約32重量%のNCO含量を有するプレポリマーが挙げられる。ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールおよびジフェニルメタンジイソシアネートに基づくプレポリマーが特に好ましい。これらのプレポリマーの製造方法は先行技術において既知である。
【0023】
本発明のポリウレタン生成物(1)に対する最も好ましいポリイソシアネートは、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)と2,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)の混合物、および液状4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)である。4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)が特に好ましい。
【0024】
ポリウレタン(1)の製造に使用される鎖延長剤(b)は、2〜3個の官能基および約50〜約400の分子量を有する。これらの基準を満たす全ての既知の鎖延長剤が適当である。鎖延長剤は、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0025】
脂環式ジオールを含む脂肪族直鎖および分枝鎖ジオールが、本発明の実施において好適である。2〜8個の炭素原子を有する脂肪族ジオールが特に好ましい。適当な鎖延長剤を以下に挙げる:エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、グリセロール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、エタノールアミン、N−メチル−ジエタノールアミン、およびN−エチル−ジエタノールアミン。最も好ましい鎖延長剤は、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび1,3−プロパンジオールである。
【0026】
2〜3個の官能基および400までの分子量を有する芳香族ポリオールも、鎖延長剤(b)として使用し得る。適当な芳香族ポリオールには、ビスフェノールAから誘導されるものが含まれる。
【0027】
適当な鎖延長剤(b)には、約50〜約400の分子量を有するヒドロキシ含有ポリエーテルも含まれる。適当なヒドロキシ含有ポリエーテルには、ポリオキシアルキレンポリエーテルポリオール、例えば要求される分子量を有するポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシブチレンジオール、およびポリテトラメチレンジオールならびにヒドロキノンジ(β−ヒドロキシエチル)エーテルが含まれる。
【0028】
適当なアミン鎖延長剤はアミノ基を含み、好ましくはアルキル置換基も含有する。そのような芳香族ジアミンの例としては、1,4−ジアミノベンゼン、2,4−および/または2,6−ジアミノトルエン、メタキシレンジアミン、2,4’−および/または4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1−メチル−3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−および/または−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリイソプロピル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−および/または−2,6−ジアミノベンゼン、4,6−ジメチル−2−エチル−1,3−ジアミノベンゼン、3,5,3’,5’−テトラ−エチル−4,4−ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、および3,5−ジエチル−3’,5’−ジイソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンが挙げられる。一般的にはそれほど好ましくないが、特定の(環)脂肪族ジアミンも適当である。特に適当な(環)脂肪族ジアミンは、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンである。これらのジアミンは、当然混合物として使用してもよい。
【0029】
本発明のブレンドにおいて、任意の熱可塑性ポリウレタンを成分(2)として使用し得る。好ましい熱可塑性ポリウレタンには、以下のものが含まれる:ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸ポリブチレンおよびポリカプロラクトンポリオール)に基づく熱可塑性ポリウレタン(TPU)およびポリエステルポリオールに基づく脂肪族TPU。
【0030】
成分(2)として使用し得る熱可塑性ポリウレタンは、一般的に、全ブレンド100重量部に対して、3〜20重量部、好ましくは3〜15重量部、最も好ましくは3〜10重量部の量でブレンド中に含まれる。
【0031】
必要に応じて本発明のブレンドに含み得る物質およびその既知の物質としては、酸化防止剤、安定化剤、触媒、紫外線による変性に対する安定化剤、有機染料、内部潤滑剤または離型剤および難燃剤が挙げられる。
【0032】
これらの物質を含む場合、一般的にこれらの任意物質は、任意物質の総量が10%を超えない、好ましくは3%未満の量で使用される。
【0033】
また、本発明は、高い耐衝撃性、高い曲げ弾性率、高い耐薬品性および264psiにおける少なくとも50℃の荷重たわみ温度を有する透明熱可塑性ポリウレタンの、1工程または複数工程で行われる製造方法を対象とする。ポリマー物質と熱可塑性物質のブレンド生成物に対する全ての既知の方法および装置を本発明のブレンドの製造に使用し得るが、容易でありかつ設備および製造コストが低いため、ワンショット工程が特に好ましい。
【0034】
本発明のブレンドの製造に使用し得るワンショット工程の適当な例は、米国特許3642946に開示されている。本発明の好ましい実施態様において、ポリウレタン反応生成物形成成分、すなわちMDIおよび鎖延長剤および熱可塑性ポリウレタンは、混合され、均質なブレンドを得るために高剪断混合を施される。その後、ブレンドは、所望の粒度を得るためにブレンドが例えば押出し、増粒または粉砕により処理される成形ゾーンに送られる。
【0035】
本発明のブレンドの製造に使用し得る複数工程の適当な例は、米国特許4261946および米国特許4342847に開示されている。とりわけ、TPUは、第一注入口から押出機に導入され、押出機はTPUが溶解するような温度に保たれる。ポリウレタン反応生成物形成成分、すなわちMDIおよび鎖延長剤は、融解したTPUに加えられ、その後合成した混合物として押出される。押出された混合物は、その後冷却されペレット化される。
【0036】
本発明の他の実施態様において、ポリウレタン反応生成物(1)と熱可塑性ポリウレタン(2)のブレンドは、第二ブレンドを製造するために、さらに該ブレンドをさらなる熱可塑性ポリウレタンと混合することにより製造してもよい。第二ブレンドに使用されるこのさらなる熱可塑性ポリウレタンは、第一熱可塑性ブレンドの製造において成分(b)として使用されたものと同じ熱可塑性ポリウレタンであってもよく、または異なる熱可塑性ポリウレタンであってもよい。第二ブレンドの製造において、添加された熱可塑性ポリウレタンに加えて、イソシアネート反応性物質(すなわち、400を超える分子量を有するポリオール)および他の加工助剤および助剤を添加することができる。この第二ブレンドは、当然、当業者に既知の全ての技術にしたがって製造することができる。
【0037】
本発明の方法およびブレンドは、先行技術の組成物が泡立ち、例えば150℃の温度で破壊されるのに対して、本発明の組成物は固形であり、本発明が低コスト原料を使用して特に優れた良好な耐熱性物質(例えば150℃)を製造するため、先行技術の方法や物質に関して特に有利である。また、本発明の組成物は、良好な耐薬品性(先行技術の組成物がMEKによりすぐに白色化するが、本発明のブレンドは影響を受けない)、容易な製造工程、高温での寸法安定性および急速乾燥も特徴とする。
【0038】
先行技術の樹脂に対する文献は、袋のシールが破壊されている場合、または湿っている場合、先行技術の樹脂は、乾燥機に入れられ、必要な乾燥時間は8〜12時間になることを言及する。本発明のポリマーブレンドは、4〜6時間で十分に乾燥させることができる。
【0039】
本発明を記載してきたが、以下にその実例を記載する。実施例において記載される全ての部およびパーセントは、他に記載がない限り重量部および重量%である。
【実施例】
【0040】
以下の物質を実施例で使用した。
ポリウレタン反応生成物とのブレンドに適当なTPU:
TPU A:
名目上ショアD硬度60を有し、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ポリエステルポリオールおよび1,4−ブタンジオールから製造され、Bayer MaterialScience LLCからDP7−3018の商標名のもと市販されている脂肪族TPU。
TPU B:
名目上ショアD硬度50を有し、MDI、ポリエステルポリオールおよび1,4−ブタンジオールから製造され、Bayer MaterialScience LLCからTexin 250の商標名のもと市販されている芳香族TPU。
TPU C:
名目上ショアD硬度45を有し、MDI、ポリエステルポリオールおよび1,4−ブタンジオールから製造され、Bayer MaterialScience LLCからTexin 245の商標名のもと市販されている芳香族TPU。
TPU D:
名目上ショアD硬度85を有し、MDI、ポリエステルポリオールおよび1,4−ブタンジオールから製造され、Bayer MaterialScience LLCからTexin DP7−1182の商標名のもと市販されている芳香族TPU。
【0041】
ポリウレタン反応生成物の製造に使用される物質:
MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
BDO:1,4−ブタンジオール
ANTI−OX:抗酸化テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン
染料 A:置換アントラキノン有機青色染料
染料 B:置換アントラキノン有機紫色染料
【0042】
〔実施例1〜4〕
ブレンドは、ガーラ水中ペレタイザーを備えた53mm2軸押出機を使用して、本発明にしたがって調製した。MDIとBDOを別々の流れで、表Iに記載する割合で供給口へポンプ注入した。さらに、オージェフィーダーを使用して、各実施例に記載された特定のTPUに下記表Iに記載されたANTI−OXおよび他の添加剤を供給した。押出機中に反応物が存在する間に基本的に完全な反応が行われるように、押出機を170℃の温度および292のスクリュー回転率に設定した。
【0043】
【表1】

【0044】
これらの各実施で製造されたペレットを、250°F(121.1℃)で5時間乾燥させ、射出成形した。該成形体を、2時間110℃で後硬化した。その後、表IIに示された方法にしたがって試験した。
【0045】
【表2】

【0046】
〔実施例5〜8〕
実施例1〜4に記載の方法と同様の方法を使用して、本発明の範囲のブレンドを表IIIに記載された物質および量により調製した。
【0047】
【表3】

【0048】
該物質から製造され、その後2時間110℃にて後硬化した射出成形試験断片の特性を表IVに記載する。
【0049】
【表4】

【0050】
〔実施例9〕
71.09重量%MID、24.37重量%BDO、4.50重量%TPU A、および0.038重量%ANTI−OXを使用して、実施例1〜4に記載の方法を繰り返した。
【0051】
TPU Aは約40.69%のポリオールを含有する。したがって、上記実施例9の処方におけるポリオールの有効量は、たった1.83%である。添加されるTPU変性体におけるポリオールの割合を合計しても、該生成物に存在するポリオールの割合は2%以下である。しかしながら、米国特許4376834の教示に比べて、この得られるポリマーは、射出成形ULバーを試験した場合、以下の物理的性質を有している。
【0052】
【表5】

【0053】
以上のように、実施例9において製造される物質は、他の工学熱可塑性物質(例えばポリカーボネート)に比べて、高い曲げ弾性率およびロックウェル硬さを特徴とする。また、DTULおよびビカット値により示されるように、優れた耐熱性を示した。透明度は、高レベルの視感透過率から明らかになった。88%の値は、ポリカーボネートを含む他の工学熱可塑性物質でも言及される。アイゾット衝撃強度は、例えばポリスチレン、SANなどの物質に比べて、該物質が良好な衝撃強度を有することを示した。これに対して、例えばポリスチレンまたはSANのようなもろい熱可塑性物質は0.4ft-lb/in未満のノッチ付きアイゾット衝撃強度を有する可能性がある。また、特定の特性は、2時間110℃における後硬化により実際に増加する。
【0054】
〔実施例10〕
本発明のブレンドの熱安定性は、本発明にしたがって作製されたブレンド(5.5%TPUおよびMDIならびに1,4−ブタンジオール)を150℃で35分間加熱することにより測定した。市販品のサンプル、高変性TPU(Dow ChemicalからIsoplast(登録商標)301の名称のもと市販される)を、48分間150℃にさらした。Isoplast(登録商標)301TPUは、その寸法完全性を失い、試験をすることができないほどひどく泡立った。これに対して、本発明にしたがって作製された物質は、35分間、150℃で後硬化した後、184.9℃のビカット軟化温度を有した。
【0055】
本発明を、例示の目的で上記において詳細に説明したが、かかる詳細は例示の目的にすぎないこと、ならびに本発明の精神および範囲を逸脱することなく、当業者によって該詳細において変形がなされ得ること(特許請求の範囲によって限定され得るものを除く)を理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)少なくとも2つのイソシアネート基を有する少なくとも1つの有機イソシアネート、
(ii)2〜3個のイソシアネート反応性基および約50〜約400の分子量を有する少なくとも1つの鎖延長剤
の反応生成物を含有し、各イソシアネート反応性基に対して0.95〜1.10のイソシアネート基が存在するような量の成分(i)および(ii)を使用して、400を超える分子量を有するイソシアネート反応性物質の不存在下で形成されたポリウレタン、および、
(b)ポリマーブレンド100重量部に対して3〜20重量部の熱可塑性ポリウレタン、を含有する、高耐衝撃性、高耐薬品性、高曲げ弾性率、透明性および264psiにおける少なくとも50℃の荷重たわみ温度を特徴とするポリマーブレンド。
【請求項2】
有機ポリイソシアネート(i)が、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)と2,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)の混合物、および液状の4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項3】
(a)(i)が4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)である、請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項4】
(a)(ii)が2〜8個の炭素原子を有する脂肪族ジオールである、請求項1に記載のブレンド。
【請求項5】
(a)(ii)が1,4−ブタンジオールである、請求項1に記載のブレンド。
【請求項6】
(b)が、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ポリエステルポリオールおよび1,4−ブタンジオールから製造された脂肪族熱可塑性ポリウレタンである、請求項1に記載のブレンド。
【請求項7】
(b)が、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリエステルポリオールおよび1,4−ブタンジオールから製造された芳香族熱可塑性ポリウレタンである、請求項1に記載のブレンド。
【請求項8】
87%を超える透明度を有する請求項1に記載のブレンド。
【請求項9】
264psiにおける荷重たわみ温度が60℃を超える請求項1に記載のブレンド。
【請求項10】
高耐衝撃性、高耐薬品性、高曲げ弾性率、透明性および264psiにおける少なくとも50℃の荷重たわみ温度を特徴とするポリマーブレンドの製造方法であって、
a)(i)少なくとも2つのイソシアネート基を有する有機イソシアネート、
(ii)鎖延長剤、および、
(iii)熱可塑性ポリウレタン、
を混合すること、
b)a)の混合物に、均質なブレンドの作製に十分な条件下で高剪断混合を施すこと、かつ、
c)b)の均質なブレンドを押出すること
を含む方法。
【請求項11】
工程c)からの押出材を冷却し、処理し、所望の粒度を得る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
押出材の所望の粒子径を、ペレット化、造粒または粉砕により得る、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
高耐衝撃性、高耐薬品性、高曲げ弾性率、透明性および264psiにおける少なくとも50℃の荷重たわみ温度を特徴とするポリマーブレンドの製造方法であって、
a)熱可塑性ポリウレタンを液化させるのに十分な条件下で熱可塑性ポリウレタンを処理すること、
b)(i)少なくとも2つのイソシアネート基を有する有機イソシアネートおよび
(ii)鎖延長剤
を、液状混合物を形成する条件下で液化した熱可塑性ポリウレタンに導入すること、
c)b)の液状混合物に高剪断混合を施すこと、
d)c)の液状混合物を押出すること
を含む方法。
【請求項14】
工程d)からの押出材を冷却し、処理し、所望の粒度を得る、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
押出材の所望の粒子径を、ペレット化、造粒または粉砕により得る、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(1)(a)請求項10の生成物、
(b)熱可塑性ポリウレタン、および
(c)必要に応じて、イソシアネート反応性物質
を、液状混合物を形成するために十分な条件下で混合すること、
(2)(1)の液状混合物に高剪断混合を施すこと、および
(3)(2)の液状混合物を押出すること
を含む、熱可塑性ポリウレタンブレンドの製造方法。
【請求項17】
請求項16の方法により製造された熱可塑性ポリウレタンブレンド。
【請求項18】
(1)(a)請求項13の生成物、
(b)熱可塑性ポリウレタン、および
(c)必要に応じて、イソシアネート反応性物質
を、液状混合物を形成するために十分な条件下で混合すること、
(2)(1)の液状混合物に高剪断混合を施すこと、および
(3)(2)の液状混合物を押出すること
を含む、熱可塑性ポリウレタンブレンドの製造方法。
【請求項19】
請求項18の方法により製造された熱可塑性ポリウレタンブレンド。

【公開番号】特開2010−202873(P2010−202873A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−41612(P2010−41612)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(503349707)バイエル・マテリアルサイエンス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (178)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience LLC
【Fターム(参考)】