説明

耐熱性熱転写リボン及びその製造方法

【目的】 高速印字を可能とする耐熱性熱転写リボン及びその製造方法を提供する。
【構成】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面にポリアミド樹脂がコーティングされていることを特徴とする耐熱性熱転写リボン。
【効果】 本発明の耐熱性熱転写リボンはサーマルヘッドの熱によるポリエステルフィルムの溶融、付着を防ぐことができ、印字速度の高速化に対応することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は耐熱性熱転写リボンに関する。更に詳しくはポリエステルフィルムの少なくとも片面にポリアミドイミド樹脂をコーティングすることにより、高速印字を可能とする耐熱性熱転写リボン及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ワードプロセッサーやプリンター等に熱転写記録法が盛んに用いられるようになった。熱転写記録法では、リボン基材上に熱溶融性又は熱昇華性インク層を塗工し、リボンの塗工面と受像紙を重ね合わせ、リボンの非塗工面よりサーマルヘッドで加熱し、該熱溶融性又は熱昇華性インクを受像紙に転写する。サーマルヘッドから発生した熱は支持体を経てインクを溶融又は昇華するが、プラスチックフィルム等の支持体は溶融しないことが必要である。しかし、印字速度の高速化やサーマルヘッドの高温化等により、プラスチックフィルムにかかる圧力や熱量は多くなり正常な作動に支障をきたす。このような現象を一般的にスティック現象と呼ぶ。従来、このスティック現象を改善するために、熱転写リボンの非インク層面に無機粒子を分散させたポリアセタール樹脂やポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂等が用いられているが、更なる印字速度の高速化やサーマルヘッドの高温化等に対しては耐熱性が十分でないことが問題となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】プリンター等の印字速度の高速化やサーマルヘッドの高温化に対応するため、熱転写リボンのバックコート剤の高耐熱化が強く要望されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】これらの課題を解決するために本発明者等は鋭意研究した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面にポリアミドイミド樹脂がコーティングされていることを特徴とする耐熱性熱転写リボンであり、該ポリアミドイミド樹脂溶液の溶剤がγブチロラクトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランの少なくとも1種以上を含むことを特徴とする耐熱性熱転写リボン用バインダーであり、又、該ポリアミドイミド樹脂が水に分散されていることを特徴とする耐熱性熱転写リボン用バインダーであって更にはポリエステルフィルムが一方向に延伸された後にポリアミドイミド樹脂をコーティングして、更に直角方向に延伸、熱固定することを特徴とする耐熱性熱転写リボンの製造方法に関するものである。
【0005】本発明におけるポリエステルフィルムとしては、従来公知のポリエステルフィルムを用いることができる。
【0006】本発明におけるポリアミドイミド樹脂はジイソシアネート法や酸クロリド法等通常の方法で製造できるが、重合性、コストの点からジイソシアネート法が好ましい。
【0007】重合に使用される有機溶剤としてはNメチル2ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のイオウ系溶剤、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶剤、ジグライム、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤の他、γブチロラクトンやテトラメチルウレア等比較的誘電率の高い溶剤の単独又は混合溶剤として用いることが好ましいが、更にキシレン、トルエン等の比較的誘電率の低い溶剤を混合して用いても構わない。
【0008】反応温度は通常50〜200℃が好ましく、反応を促進するために3級アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、コバルト、スズ、亜鉛等の金属、半金属化合物等の存在下で行っても良い。
【0009】本発明に用いられるポリアミドイミドを得るには酸成分モノマーとしてトリメリット酸無水物を用いることが好ましいが、溶剤に対する溶解性、重合性等を付与するためシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ビメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、
【0010】イソフタル酸、5−tert−ブチル−1,3ベンゼンジカルボン酸、テレフタル酸、ジフェニルメタン4,4’ジカルボン酸、ジフェニルメタン2,4’ジカルボン酸、ジフェニルメタン3,4’ジカルボン酸、ジフェニルメタン3,3’ジカルボン酸、1,2ジフェニルエタン4,4’ジカルボン酸、1,2ジフェニルエタン2,4’ジカルボン酸、1,2ジフェニルエタン3,4’ジカルボン酸、1,2ジフェニルエタン3,3’ジカルボン酸、2,2’ビス(4カルボキシフェニル)プロパン、2−(2カルボキシフェニル)2−(4カルボキシフェニル)プロパン、2−(3カルボキシフェニル)2−(4カルボキシフェニル)プロパン、ジフェニルエーテル4,4’ジカルボン酸、ジフェニルエーテル2,4ジカルボン酸、ジフェニルエーテル3,4ジカルボン酸、ジフェニルエーテル3,3’ジカルボン酸、ジフェニルスルホン4,4’ジカルボン酸、ジフェニルスルホン2,4ジカルボン酸、ジフェニルスルホン3,4ジカルボン酸、ジフェニルスルホン3,3’ジカルボン酸、ベンゾフェノン4,4’ジカルボン酸、ベンゾフェノン2,4ジカルボン酸、ベンゾフェノン3,4ジカルボン酸、ベンゾフェノン3,3’ジカルボン酸、ピリジン2,6ジカルボン酸、ビス[(4カルボキシ)フタルイミド]4,4’ジフェニルエーテル、ビス[(4カルボキシ)フタルイミド]α,α’メタキシレン等の芳香族ジカルボン酸、
【0011】ブタン1,2,4トリカルボン酸、ナフタレン1,2,4トリカルボン酸及びこれらの無水物、
【0012】ブタン1,2,3,4テトラカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノン3,3’,4,4’テトラカルボン酸、ジフェニルエーテル3,3’,4,4’テトラカルボン酸、ビフェニル3,3’,4,4’テトラカルボン酸、ビフェニル2,2’,3,3’テトラカルボン酸、ナフタレン2,3,6,7テトラカルボン酸、ナフタレン1,2,4,5テトラカルボン酸、ナフタレン1,4,5,8テトラカルボン酸及びこれらの二無水物および
【0013】エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリプロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等のアルキレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等から選ばれる一種又は二種以上の混合物を共重合することができる。
【0014】これらの共重合成分の中では溶解性、耐熱性、耐摩耗性の点からアルキレングリコールビスアンヒドロトリメリテートが好ましく、これらを酸成分の内10モル%以上共重合すると効果を発揮し、35モル%以上ではアミド系以外の溶剤に可溶となる。
【0015】一方、アミン成分としてはm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、オキシジアニリン、メチレンジアニリン、ヘキサフルオロイソプロピリデンジアニリン、ジアミノ−m−キシレン、ジアミノ−p−キシレン、1,4ナフタレンジアミン、1,5ナフタレンジアミン、2,6ナフタレンジアミン、2,7ナフタレンジアミン、2,2’ビス(4アミノフェニル)プロパン、2,2’ビス(4アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’ジアミノジフェニルスルホン、4,4’ジアミノジフェニルエーテル、3,3’ジアミノジフェニルスルホン、3,4ジアミノビフェニル、4,4’ジアミノベンゾフェノン、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、イソホロンジアミン、3,4ジアミノジフェニルエーテル、イソプロピリデンジアニリン、3,3’ジアミノベンゾフェノン、ジシクロヘキシル4,4’ジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタン、o−トリジン、2,4トリレンジアミン、1,3ビス(3アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3ビス(4アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4ビス(4アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2ビス[4−(4アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’ビス(4アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2ビス[4−(4アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’ジアミノジフェニルスルフィドあるいはこれらのジイソシアネートの単独又は二種以上の混合物を共重合することができる。
【0016】これらの中でジフェニルメタン4,4’ジイソシアネートが最も好ましいが、更に溶解性を向上させるにはその一部又は全部をジシクロヘキシル4,4’ジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートで置き換えるのが好ましい。
【0017】本発明に使用されるポリアミドイミドのガラス転移温度はサーマルヘッドの熱に耐えなければならないことから140℃以上であることが好ましい。
【0018】本発明におけるポリアミドイミド溶液に使用される溶剤は重合に使用された溶剤をそのまま用いることができるが、他の溶剤で希釈することもできる。また、重合したポリアミドイミド溶液から再沈殿したポリマーを他の溶剤に再溶解して用いることもできる。この場合、再溶解に用いる溶媒としては作業性、乾燥性、取り扱いの容易さからγブチロラクトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等のアミド系溶剤以外の溶剤が好ましい。
【0019】また、本発明に用いられるポリアミドイミドは水に分散された状態で用いることもできる。水に分散されたポリアミドイミドは重合溶液中に水を高速撹拌しながら徐々に添加する方法や再沈殿したポリアミドイミド粉体を水とともにサンドミル、ボールミル、ホモジナイザー等で高速撹拌する方法で得られる。ポリアミドイミドの水に対する含有量は1から50重量%、好ましくは5〜15重量%が望ましい。
【0020】本発明に用いられるポリアミドイミド樹脂組成物には更に酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化珪素等の無機粒子や界面活性剤、分散剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤及びエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、多官能イソシアネート等の架橋剤、更にポリエステルやアクリル樹脂等を添加することができる。
【0021】本発明における塗工方法は薄く塗布できる方法であれば周知のいかなる方法であっても良く、リバースキスコーターやファウンテンノズルコーター等による方法が使用できる。
【0022】本発明の耐熱性熱転写リボンは二軸延伸されたポリエステルフィルムの少なくとも片面にポリアミドイミド樹脂溶液又は水分散液をコーティング、乾燥することで得ることができるが、ポリエステルフィルムが一方向に延伸された後にコーティングし、更に直角方向に延伸、熱固定する方法でも得ることができる。生産性、コスト面から後者の方が好ましい。
【0023】本発明を更に詳細に説明するために以下実施例を挙げるが、もちろん本発明は実施例によって何等制限されるものではない。
【0024】なお、本実施例中の測定は以下の方法で行った。
1.対数粘度:0.5gのポリアミドイミド樹脂を100mlのNメチル2ピロリドンに溶解し25℃でウベローデ粘度管を用いて測定した。
2.ガラス転移温度:TMAを用いて10℃/分の昇温速度で測定した。
3.密着力:360゜方向に50回繰り返し折り曲げた後、折り曲げ部分のセロテープ剥離テストを行った。
4.動摩擦係数:加熱された真鍮板に一定荷重をかけたフィルムを置き、テンシロン(東洋ボールドウィン社製)で5m/分の速度で測定した。
【0025】
【実施例】
実施例1反応容器にトリメリット酸無水物を1モル、ジフェニルメタンジイソシアネートを1モル、Nメチル2ピロリドンを830g仕込み、撹拌しながら120℃で5時間反応させた後、冷却して反応を停止した。得られたポリマーの対数粘度は0.56dl/gで、ガラス転移温度は280℃であった。得られたポリマーをNメチル2ピロリドンとシクロヘキサノンの混合溶媒で固形分濃度が10%となるように希釈した。Nメチル2ピロリドンとシクロヘキサノンの割合は50/50とした。この溶液を4.6μmの二軸延伸されたポリエステルフィルムにバーコーターを用いて膜厚が0.5μmとなるようにコーティングし、120℃で5分間乾燥した。得られたフィルムの耐熱コート面の密着力及び動摩擦係数を測定し、その結果を表1に示す。
【0026】実施例2実施例1で合成されたポリマー溶液を膜厚が16μmの一軸延伸されたポリエステルフィルムに膜厚が約2μmとなるようにコーティングした後、延伸機(TMロング社製)により100℃で直角方向に3.5倍に延伸し、220℃で30秒間の熱固定処理を行った。得られたフィルムの耐熱コート面の密着力及び動摩擦係数を測定し、その結果を表1に示す。
【0027】実施例3実施例1で合成されたポリマー溶液を撹拌しながらアセトン中に投入、再沈殿して粉末を得た。この粉末100gに水122g、28%のアンモニア水8g、ガラスビーズ200gを加え、ペイントシェーカーで5時間分散した。得られた分散液を更に水で固形分濃度が10%となるように希釈して実施例2と同様の方法で一軸延伸フィルムにコーティング、延伸、熱固定を行った。得られたフィルムの耐熱コート面の密着力及び動摩擦係数を測定し、その結果を表1に示す。
【0028】実施例4反応容器にトリメリット酸無水物1モル、イソホロンジイソシアネート0.3モル、4,4’ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート0.7モル、Nメチル2ピロリドン1リットルを仕込み、撹拌しながら約30分で180℃まで昇温した。その後180℃で約5時間撹拌し反応を停止した。得られたポリマーの対数粘度は0.45dl/g、ガラス転移温度は263℃であった。得られたポリマー溶液を撹拌しながらアセトン中に投入、再沈殿して粉末を得た。この粉末100gをシクロヘキサノン450gとテトラヒドロフラン450gの混合溶媒に溶解し、実施例1と同様の方法で二軸延伸したポリエステルフィルムにコーティング、乾燥した。得られたフィルムの耐熱コート面の密着力及び動摩擦係数を測定し、その結果を表1に示す。
【0029】比較例1Tgが67℃の共重合ポリエステル、バイロン200(東洋紡製)を固形分濃度が10%になるようにメチルエチルケトンに溶解した。この溶液を実施例1と同様の方法で二軸延伸したポリエステルフィルムにコーティング、乾燥した。得られたフィルムの耐熱コート面の密着力及び動摩擦係数を測定し、その結果を表1に示す。
【0030】密着力測定において実施例1〜4及び比較例1の全てのフィルムに剥離は認められなかった。動摩擦係数の測定において25℃では実施例1〜4及び比較例の全てのフィルムでほとんど差は認められなかったが、100℃及び150℃では実施例1〜4は比較例に対して動摩擦係数が小さく、耐熱性に優れていることが認められた。
【0031】
【表1】


【0032】
【発明の効果】本発明の耐熱性熱転写リボンはサーマルヘッドの熱量を増大させても、ポリエステルフィルムが溶融しサーマルヘッドへ付着することを防ぐことができ、印字速度の高速化に対応することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面にポリアミドイミド樹脂がコーティングされていることを特徴とする耐熱性熱転写リボン。
【請求項2】 ポリアミドイミド樹脂溶液の溶剤がγブチロラクトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランの少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の耐熱性熱転写リボン用バインダー。
【請求項3】 ポリアミドイミド樹脂が水に分散されていることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性熱転写リボン用バインダー。
【請求項4】 ポリエステルフィルムが一方向に延伸された後にポリアミドイミド樹脂をコーティングして、更に直角方向に延伸、熱固定することを特徴とする請求項1〜3に記載の耐熱性熱転写リボンの製造方法。