説明

耐熱難燃作業服

【課題】作業ズボンのブーツの上端部付近を耐熱補強布で裏打ちして補強し、作業中にシワになりにくくするとともに、溶融金属がふりかかってもズボンの内部に入らない構造とした耐熱難燃作業服を提供する。
【解決手段】本発明は、耐熱難燃作業服の下衣(ズボン)10の膝下部分であって、かつ内側に耐熱繊維糸からなる織物を円筒形状に縫い込んで耐熱補強部14とした耐熱難燃作業服である。さらに、作業服自体も耐熱性と難燃性が高く、溶融金属が付着してもはじき、発汗して濡れても着心地は良く、洗濯性も良好で、かつコストの安い耐熱難燃作業服を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属の炉前作業、溶接作業、ガラス成形作業等の高温高熱作業に好適な耐熱難燃作業服に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム電解・鋳造工場、製鉄溶鉱炉工場等の溶融金属の炉前作業、溶接作業、ガラス成形作業等は、高温高熱の過酷な環境条件下における作業が必要である。近年、ロボット化が進み、作業員の労働を出来る限り少なくする方向に進んでいるが、全部をロボット化出来ない場合もあり、いまだに作業員に頼らざるを得ないのが現状である。このような過酷な環境下における作業服は、耐熱性、難燃性、洗濯可能等の条件が必要であるが、今まであまり改良がなされてこなかった。
【0003】
従来から、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアリレート繊維等が耐熱性や耐燃焼性が高い素材として提案されている(特許文献1〜3)。また、ポリフェニレンサルファイト繊維を使用した耐熱服も提案されている(特許文献4)。また、アラミド短繊維と難燃性セルロース短繊維とポリアミド単繊維を混紡した難燃布帛も提案されている(特許文献5)。
【0004】
しかし、特許文献1〜5で提案されているアラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリフェニレンサルファイト繊維等は、いずれも紫外線で分解されやすく、作業服を洗濯して太陽光線にさらすと分解してしまうという問題がある。また、溶融した金属をあびると作業服の表面に付着しやすいという問題がある。とくに、炉前作業では安全性のため脛あたりまでの革製ブーツを履き、紐で編み上げて作業する必要がある。このため、ブーツの上端部の位置でズボンがシワになり易く、このシワの部分に溶融金属がふりかかると布帛を破り、ブーツ内に溶融金属が入り込む事態となる。このようになると、編み上げ紐の解除が簡単ではないため、作業者は足に重い火傷を負ってしまう事故につながる。
【特許文献1】特開2001−214318号公報
【特許文献2】特開2002−115106号公報
【特許文献3】特開2002−339122号公報
【特許文献4】特開2006−28655号公報
【特許文献5】特表2007−500803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、作業ズボンのブーツの上端部付近を耐熱補強布で裏打ちして補強し、作業中にシワになりにくくするとともに、溶融金属がふりかかってもズボンの内部に入らない構造とした耐熱難燃作業服を提供する。さらに、作業服自体も耐熱性と難燃性が高く、溶融金属が付着してもはじき、発汗して濡れても着心地は良く、洗濯性も良好で、かつコストの安い耐熱難燃作業服を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、耐熱難燃作業服の下衣(ズボン)の膝下部分であって、かつ内側に耐熱繊維糸からなる織物を円筒形状に縫い込んで耐熱補強部とした耐熱難燃作業服である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、作業ズボンの膝下部分、すなわちブーツの上端部付近の内側に耐熱繊維糸からなる織物を円筒形状に縫い込んで(裏打ち)耐熱補強部としたことにより、作業中にシワになりにくくするとともに、溶融金属がふりかかってもズボンの内部に入らない構造とした耐熱難燃作業服を提供できる。さらに、作業服自体も耐熱性と難燃性が高く、溶融金属が付着してもはじき、発汗して濡れても着心地は良く、洗濯性も良好で、かつコストの安い耐熱難燃作業服を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において、難燃性とは、炎に触れている間は燃えるか又は徐燃するが、炎を遠ざけると消える性質をいう。耐熱性とは、アルミニウム電解・鋳造工場、製鉄溶鉱炉工場等の炉前作業、溶接作業等で溶融金属の飛沫がふりかかっても、大きな穴が開いたり燃焼したりせず、人体を保護できる性質をいう。
【0009】
以下図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例の下衣(ズボン)10を示す。この膝下部分で、かつ内側に耐熱繊維糸からなる織物を円筒形状に縫いこんで耐熱補強部14とする。耐熱補強部14の長さは10〜30cm程度が好ましく、さらには15〜25cmの範囲が好ましい。耐熱性繊維は、融点又は分解点が約350℃以上、好ましくは400℃以上であれば、無機繊維又は有機繊維のいかなるものであってもよい。好ましくはアラミド繊維(パラ系アラミドの融点又は分解点:480〜570℃、メタ系同:400〜430℃)、ポリベンズイミダゾール繊維(ガラス転移温度:400℃以上)、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキザール)(PBO)等のポリベンズオキサゾール繊維(融点又は分解温度:650℃)、ポリ(p−フェニレンベンゾビスチアゾール)(PBZT)等のポリベンズチアゾール繊維(融点又は分解温度:650℃)、ポリアミドイミド繊維(融点又は分解温度:350℃以上)、メラミン繊維(融点又は分解温度:400℃以上)、ポリイミド繊維(融点又は分解温度:350℃以上)、ポリエーテルエーテルケトン繊維(融点:345℃)及びポリアリレート繊維(融点又は分解温度:400℃以上)から選ばれる少なくとも一つである。これらの繊維糸は綿番手で1〜50番程度が好ましい。単糸で使用することもできるし、複数本引き揃えるか、あるいは合撚して使用できる。このような材料からなる織物の単位面積あたりの重量(目付)は150〜300g/m2の範囲のものが好ましい。
【0010】
なお、下衣の上部前面11は輻射熱をさらに遮断するため2重に織物を重ねて縫製するのが好ましい。裾部12は単一織物使いでかまわない。13はベルト通しである。
【0011】
次に、作業服に使用する好ましい生地について説明する。好ましい生地としては、主成分としてウール:10〜45重量%、難燃レーヨン:15〜45重量%、難燃アクリル:20〜50重量%からなる3成分系の混紡糸を使用する。
A.ウール:ウールはそのまま使用しても良いし、染色して使用しても良い。あるいは表面のスケールを除去して防縮加工する等の改質したものを使用しても良い。そのまま使用したり染色して使用するウールを「非改質ウール」という。スケールの除去は防縮加工としてそれ自体は一般的であり、塩素化処理により行う。このような非改質ウール又は改質ウールを使用するのは、吸湿性を向上し、輻射熱を遮断し、高温で過酷な環境下における作業で発汗して濡れても着心地を良好に保てること、及び溶融金属の飛沫がふりかかっても、はじいてしまい、燃焼したりせず、人体を保護できる耐熱性を発揮できるからである。ウールが10重量%以上45重量%であると前記の効果が高く、この範囲を外れると前記の効果は低下する傾向となる。
【0012】
ウールの難燃加工として一般的に知られている国際羊毛事務局が開発したザプロ加工(チタンとジルコニウム塩による処理)したものであっても前記の効果は不変である。
B.難燃レーヨン:難燃レーヨンとしては、プロバン加工(オルブライト&ウイルソン社が開発したテトラキスヒドロキシメチルホスホニウム塩を用いたアンモニアキュアリング加工)、チバ・ガイギー社が開発したピロパテックスCP加工(N−メチロールジメチルホスノプロピオンアミド加工)、オーストリア国レンチング社の商品名“ビスコースFR”等がある。難燃レーヨンは15重量%以上45重量%以下の範囲であると、吸湿性及び吸汗性が高く、この範囲を外れると前記の効果は低下する傾向となる。
C.難燃アクリル:難燃アクリルとしては、カネカ社製商品名“カネカロン”(モダクリル)、カネボウ・丸竹コーポレーション社製商品名“ルフネン”等がある。難燃アクリルは20重量%以上50重量%以下の範囲で使用する。この範囲であると難燃性、耐熱性、耐洗濯性が高く、コストを安くすることができ、この範囲を外れると前記の効果は低下する傾向となる。
【0013】
混紡糸とするには、常法の紡績法に従い、例えば粗紡、連条工程又はそれ以前の工程で混紡して紡績糸とする。この紡績糸は単糸で使用しても良いし、複数本撚り合わせても良い。これらの糸を経糸と緯糸に使用して織物とする。織物組織は、平織(plain weave)、斜文織(綾織,twill weave)、朱子織(satin weave)など任意の織組織を使用できる。この織物から作業服に縫製するのも常法の縫製手段を使用できる。
【0014】
前記織物は、JIS L1091A−4法で規定される、垂直に配置した織物の下端にブンゼンバーナーで12秒間接炎したときの炭化長が11cm以下、炎を外したときの残炎時間が1秒以下、残塵時間が2秒以下であることが好ましい。前記性質であれば、耐熱性及び難燃性がさらに好ましい。
【0015】
また、前記織物は、塩化ビニル樹脂シートからなる擬似皮膚の表面上に重ね、45°の傾斜台に配置し、24cmの高さから温度800℃で溶融したアルミニウムを90g落下させたとき、溶融アルミニウムをはじく性質であることが好ましい。前記範囲であれば、溶融金属の飛沫がふりかかっても、織物表面からはじいてしまい、人体に対する安全性をさらに高くすることができる。
【0016】
また、前記織物の単位あたりの重量(目付)は、150〜300g/cm2の範囲であることが好ましい。前記範囲であれば、さらに軽くて着心地の良い作業服とすることができる。さらに好ましくは160〜270g/cm2の範囲、とくに好ましくは180〜250g/cm2の範囲である。
である。
【0017】
前記作業服の上衣前身頃及び下衣前面は、前記織物を二重にして縫製するのが好ましい。このようにするとさらに輻射熱を防ぎ、安全性を高めることができる。
【0018】
本発明の裏打ち用耐熱補強織物には、静電気を除去するための導電性繊維、例えばKBセーレン社製“ベルトロン”、炭素繊維、金属繊維等を0.1〜1重量%の範囲加えてもよい。
【実施例】
【0019】
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明する。
【0020】
(実施例1)
裏打ち用耐熱補強布帛として、アラミド繊維である帝人社製商品名“テクノーラ”(繊度:1.7dtex、平均繊維長:77mm)(25.6重量%)を芯とし、同社製商品名“コーネックス”(繊度:2.2dtex、平均繊維長:89mm)(73.9重量%)と静電気を除去するための導電性繊維であるKBセーレン社製“ベルトロン”(0.5重量%)を鞘とする芯鞘複合紡績糸であり、メートル番手32番双糸を経糸と緯糸に使用し、基本織物組織は平組織とし、これに3/3マット組織を複合させた変化組織織物とした。目付は235g/m2とした。
【0021】
この耐熱補強布帛を図2A−Bに示すように溶融アルミニウム落下試験(水平法)をした。まず図2Aに示すように、外径14cm、内径13cm、高さ20cmのカーボン製円筒鋳型21の上に、図2Bに示すように縦横各24cmの織物試料22を被せて周囲を針金23で縛って固定した。次に図3Aに示すように、織物試料22の中心部分に温度800℃の溶融アルミニウム24を30g、採取器25から静かにのせた。図3Bに示すように織物試料22は発煙したが、1分30秒後も穴開きはなく、溶融アルミニウム24は落下しなかった。その後の織物試料22を観察したところ、ポテトチップス状態に焦げた状態になっていた。前記において、測定時間を1分30秒後としたのは、この時間が経過すれば溶融アルミニウムは冷却すること、及び作業中、作業ズボンが水平方向に向いたままとなるのは1分30秒も続かないと推定されるためである。
【0022】
以上から実施例1の織物は、溶融アルミニウム落下試験(水平法)を合格することが確認できた。
【0023】
(実施例2)
裏打ち用耐熱布帛として、アラミド繊維である帝人社製商品名“テクノーラ”(繊度:1.7dtex、平均繊維長:77mm)、100重量%を使用した紡績糸(綿番手30番双糸)を経糸と緯糸に使用し、基本織物組織は2/1綾組織とし、目付は206g/m2とした。
【0024】
この織物を実施例1と同様に溶融アルミニウム落下試験(水平法)をしたところ、1分30秒後も穴開きはなく、溶融アルミニウム24は落下しなかった。以上から、実施例2の織物も溶融アルミニウム落下試験(水平法)を合格することが確認できた。
【0025】
(実施例3)
1.原料
A.ウール:オーストラリア産、メリノ種の非改質ウール(平均繊維長:75mm)を20重量%使用した。
B.難燃レーヨン:オーストリア国レンチング社製商品名“ビスコースFR”(平均繊維長:75mm、平均繊度:3.3dtex)を40重量%使用した。
C.難燃アクリル:カネカ社製商品名“カネカロン”(モダクリル)(平均繊維長:100mm、平均繊度:3.3dtex)を40重量%使用した。
2.混紡糸の作製
前記原料を個別に梳毛カードに投入して開繊を行い、繊維ウェブとしてからスライバー混によりブレンドし、前紡工程、精紡工程を経て、経糸としてメートル番手40番、双糸S撚620回の紡績糸を作製した。また、緯糸としてメートル番手20番、単糸Z撚440回の紡績糸を作製した。
3.織物生地の作製と作業服の縫製
前記紡績糸を経糸と緯糸に使用し、平組織の織物を作製した。その後、ウールと難燃アクリルを一浴染めで青色に染色し(難燃レーヨンは白残し)、全体して青色に見える織物を作製した。目付は220g/m2であった。この織物を縫製して図1に示す耐熱難燃作業服を作製した。図1は前記作業服の下衣(ズボン)10の正面図である。下衣の上部前面11は輻射熱をさらに遮断するため2重に織物生地を重ねて縫製した。裾部12は単一織物使いとした。14はズボン10の膝下部内側に織物を円筒形状に縫い込んで裏打ちした耐熱補強部である。この耐熱補強部14は、実施例1に記載の織物を使用した。13はベルト通しである。下衣(ズボン)10の1枚の重量は生地のみで470g、であった。耐熱補強部14を加えた重量は520gであった。耐熱補強部14の位置は、Lサイズの場合、股下から40〜60cmの部分の内側に円筒状に縫製した。膝の動きを確保するため、下衣の上部前面11の2重に織物生地を重ねた部分11の下端から耐熱補強部14の上端までの距離は2.5cmとした。
4.燃焼試験
前記織物生地を次の燃焼試験をした。
(1)燃焼試験
JIS L1091A−4法で規定される、垂直に配置した織物試料の下端にブンゼンバーナーで12秒間接炎したときの炭化長、炎を外したときの残炎時間、及び残塵時間を測定した。その結果は次のとおりであった。
炭化長 11cm
残炎時間 1秒
残塵時間 2秒
(2)溶融アルミニウム落下試験(傾斜法)
厚さ0.25mmの塩化ビニル樹脂シートからなる擬似皮膚の表面上に織物試料を重ね、45°の傾斜台に配置し、24cmの高さから温度800℃で溶融したアルミニウムを90g落下させ、織物表面の状態を観察した。判定は次のようにした。
グレード1:疑似皮膚は全く損傷しない(最高の防護)。
グレード2:疑似皮膚の0.01m2以下の部分がわずかに損傷する(第1度火傷)。
グレード3:疑似皮膚の0.01m2以上の部分がわずかに損傷する(第1度火傷)。
グレード4:疑似皮膚の0.01m2以下の部分が損傷する(第2度火傷)。
グレード5:疑似皮膚の0.01m2以上の部分が損傷する(第2度火傷)。
グレード6:疑似皮膚の0.01m2以下の部分がひどく損傷する(第3度火傷)。
グレード7:疑似皮膚の0.01m2以上の部分がひどく損傷する(第3度火傷)。
【0026】
この結果、織物表面の0.01m2以下に焦げた部分が認められるが、溶融アルミニウムは付着せずはじくためグレード1の最高の防護であると判断した。
5.耐熱補強部の試験
作業中における耐熱補強部14のシワの入り方を観察したところ、織物生地は裏側から補強されているため、ほとんどシワは入らなかった。また、溶融金属がふりかかってもズボンの内部には入らない構造であることが確認できた。
6.着用試験
前記のようにして縫製した上下作業服を、溶融アルミニウムの鋳造のアルミダイキャスト炉前作業をする作業員10名に1月間着用試験してもらった。その結果10名とも、従来から使用している木綿100%使い、目付275g/m2のデニム(ジーンズ)織物の耐熱作業服に比較して、吸湿性が高く、輻射熱の遮断効果も高く、発汗して濡れてもべたつかず、着心地が良好であるとの評価が得られた。さらに、耐熱補強部の補強効果はあるとの評価が得られた。
7.洗濯試験
前記のように作業員10名の1月間着用試験の際に、着用後、その都度毎日家庭洗濯を繰り返した。その結果、従来から使用している木綿100%使い、目付275g/m2のデニム(ジーンズ)織物の耐熱作業服に比較して、乾きやすく、シワにもなりにくく、洗濯収縮(本実施例品の収縮率:3.7%、従来品の収縮率:5.5%)も少なかった。
【0027】
(比較例1)
従来耐熱作業服に使用している木綿100%使い、目付275g/m2のデニム(ジーンズ)織物(難燃加工なし)について、燃焼試験をしたところ次の結果が得られた。
(1)燃焼試験
炭化長 30cm以上
残炎時間 60秒以上
残塵時間 60秒以上
このような燃焼挙動を「全焼」という。
(2)溶融アルミニウム落下試験(傾斜法)
前記の「全焼」を回避するため、この織物に、セルロースの難燃加工であるプロバン加工(オルブライト&ウイルソン社が開発したテトラキスヒドロキシメチルホスホニウム塩を用いたアンモニアキュアリング加工)をして実施例3に記載の溶融アルミニウム落下試験(傾斜法)をしたところ、溶融アルミニウムは織物表面に付着してしまい、織物は焦げ、擬似皮膚に至るまで溶融してしまい、人体であればグレード6の第3度火傷になると判断した。
【0028】
(比較例2)
耐熱性が高いといわれているアラミド繊維100%使い、目付235g/m2の平織り組織の織物について、燃焼試験をしたところ次の結果が得られた。
(1)燃焼試験
炭化長 5cm
残炎時間 1秒
残塵時間 2秒
(2)溶融アルミニウム落下試験(傾斜法)
実施例3に記載の溶融アルミニウム落下試験(傾斜法)において、溶融アルミニウムは織物表面に付着してしまい、織物は焦げ、擬似皮膚に至るまで溶融してしまい、人体であればグレード7の第3度火傷になると判断した。
【0029】
(実施例4)
実施例3と作業服に使用する織物生地の繊維原料の混率を変えた以外は同様な条件とした。条件と結果を表1にまとめて示す。表1において、判断基準は次のとおりとした。
(1)実施例3に記載の溶融アルミニウム落下試験(傾斜法)は、前記のとおりグレード1〜7で判断した。
(2)着用試験は、実施例3と同様の試験により、
A:従来の木綿100%使い、目付275g/m2のデニム(ジーンズ)織物を用いた作業服より着心地がよい
B:同等
C:悪い
と判断した。
(3)洗濯試験は、実施例3と同様の試験により、
A:従来の木綿100%使い、目付275g/m2のデニム(ジーンズ)織物を用いた作業服より収縮しない
B:同等
C:収縮する
と判断した。
【0030】
【表1】

【0031】
以上の実施例、参考例から本発明の織物及びこれを用いた作業服は、耐熱性と難燃性が高く、溶融金属が付着してもはじき、発汗して濡れても着心地は良く、洗濯性も良好あることが確認できた。もちろん、コスト的にも安価に製造でき優れていた。
【0032】
[産業上の利用分野]
本発明の耐熱難燃作業服及びこれに使用する織物は、溶融金属の炉前作業、溶接作業、ガラス成形作業等の高温高熱作業に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は本発明の一実施例における作業服の下衣(ズボン)の正面図である。
【図2】図2A−Bは本発明の一実施例における裏打ち用耐熱補強織物の溶融アルミニウム落下試験(水平法)方法を説明する斜視図である。
【図3】図3A−Bは本発明の一実施例における裏打ち用耐熱補強織物の溶融アルミニウム落下試験(水平法)方法を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 作業服下衣(ズボン)
11 下衣の上部前面
12 裾部
13 ベルト通し
14 耐熱補強部
21 カーボン製円筒鋳型
22 織物試料
23 針金
24 溶融アルミニウム
25 採取器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱難燃作業服の下衣(ズボン)の膝下部分であって、かつ内側に耐熱繊維糸からなる織物を円筒形状に縫い込んで耐熱補強部とした耐熱難燃作業服。
【請求項2】
前記耐熱性繊維糸は、アラミド繊維、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ポリベンズチアゾール繊維、ポリアミドイミド繊維、メラミン繊維、ポリイミド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維及びポリアリレート繊維から選ばれる少なくとも一つの糸である請求項1に記載の耐熱難燃作業服。
【請求項3】
前記耐熱難燃作業服の生地は、下記の混紡糸
A.ウール:10〜45重量%
B.難燃レーヨン:15〜45重量%
C.難燃アクリル:20〜50重量%
を経糸と緯糸に含む織物を縫製して構成されている請求項1又は2に記載の耐熱難燃作業服。
【請求項4】
前記織物は、JIS L1091A−4法で規定される、垂直に配置した織物の下端にブンゼンバーナーで12秒間接炎したときの炭化長が11cm以下、炎を外したときの残炎時間が1秒以下、残塵時間が2秒以下である請求項3に記載の耐熱難燃作業服。
【請求項5】
前記織物は、塩化ビニル樹脂シートからなる擬似皮膚の表面上に重ね、45°の傾斜台に配置し、24cmの高さから温度800℃で溶融したアルミニウムを90g落下させたとき、溶融アルミニウムをはじく請求項3又は4に記載の耐熱難燃作業服。
【請求項6】
前記織物の単位あたりの重量(目付)は、150〜300g/cm2の範囲である請求項3〜5のいずれか1項に記載の耐熱難燃作業服。
【請求項7】
前記作業服の下衣(ズボン)前面は、前記織物を二重にして縫製した請求項3〜6のいずれか1項に記載の耐熱難燃作業服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−184705(P2008−184705A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18432(P2007−18432)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(390018153)日本毛織株式会社 (8)
【出願人】(503398118)双日株式会社 (9)
【Fターム(参考)】