説明

耐病性植物

本発明は、ウイルス性、細菌性、真菌性または卵菌性の病原体に抵抗性である植物であって、該病原体、特に真菌または卵菌門の生物に対して抵抗性でない植物と比較して、DMR6タンパク質のレベルが低下、活性が低下、または完全に消失している植物に関する。本発明はさらに、植物のDMR6タンパク質の内在レベルまたは活性を低下させるステップを含む、ウイルス性、細菌性、真菌性または卵菌性の病原体に抵抗性である植物を得るための方法に関する。さらに、本発明は、耐病性植物をもたらすためのDMR6プロモーターの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐病性植物、特に真菌界および卵菌門の生物、卵菌に抵抗性である植物に関する。本発明はさらに、耐病性を付与する植物遺伝子、および、卵菌門の病原体に対する保護を提供するために、かかる耐病性植物を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真菌および卵菌病原体に対する植物の抵抗性は、病原体特異的抵抗性および広域抵抗性の両方について広範囲に研究されてきた。多くの場合、抵抗性は、抵抗性に関する優性遺伝子により特定される。非病原性遺伝子産物または病原体由来のその他の分子と直接的または間接的に相互作用することにより病原体認識を媒介する品種特異的抵抗性遺伝子もしくは遺伝子対遺伝子(gene−for−gene)抵抗性遺伝子の多くが同定されている。この病原体認識により、病原体の増殖を停止させる植物の防御応答の広い範囲の活性化が引き起こされる。
【0003】
植物育種では、主に、一遺伝子性の優性抵抗性遺伝子の新規な供給源を同定するために絶え間ない努力がなされている。新しく導入された単一抵抗性遺伝子を有する栽培品種において、病原体は、高い頻度で進化および適合し、首尾よく宿主植物を感染させる能力を再び獲得するため、病害からの保護は急激に破壊されることが多い。従って、耐病性の新規な供給源を利用できることが非常に求められる。
【0004】
代わりとなる抵抗性機構は、例えば植物における防御応答、例えば大麦におけるウドンコ病病原菌であるオオムギウドンコ病菌(Blumeria graminis f.sp.hordei)に対する、劣性mlo遺伝子に媒介される抵抗性など、の調節を介して作用する。野生型MLO遺伝子の変異対立遺伝子を保有する植物は、ほぼ完全な抵抗性を示し、一回攻撃された表皮細胞は細胞壁に対する真菌の進入を回避するようになる。野生型MLO遺伝子は、従って病原応答の負の調節因子として作用する。これはWO9804586号に記載されている。
【0005】
その他の例は、ウドンコ病菌エリシフェ・シコラセアルム(Erysiphe cichoracearum)に対する感受性の喪失についてのスクリーニングにおいて見出された劣性のウドンコ病抵抗性遺伝子である。これまで3つの遺伝子がクローン化され、PMR6(ペクチン酸リアーゼ様タンパク質をコードする)、PMR4(カロースシンターゼをコードする)、およびPMR5(未知の機能をもつタンパク質をコードする)と名付けられた。mloおよびpmr遺伝子の両方が、ウドンコ病に対して特異的に抵抗性を付与する一方、べと病などの卵菌に対しては付与しないと思われる。
【0006】
広域病原体抵抗性、すなわちSARなどの全身性の型の抵抗性は、2つの主な方法で獲得されている。第1の方法は、植物防御および細胞死の負の調節因子の変異によるものである(例えばシロイヌナズナのcpr、lsdおよびacd変異株におけるものなど)。第2の方法は、植物防御の誘導物質または調節因子のトランスジェニックによる過剰発現によるものである(例えばNPR1過剰発現植物におけるものなど)。
【0007】
これらの既知の抵抗性機構の欠点は、病原体抵抗性のほかに、これらの植物が検出可能なさらなる望ましくない表現型、例えば成育不全または細胞死の自然形成などをしばしば示すことである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、広域で、永続的であり、望ましくない表現型を伴わない抵抗性の型を提供することである。
【0009】
本発明を導く研究において、べと病病原体であるアブラナべと病菌(Hyaloperonospora parasitica)に対する感受性の低下について、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)変異株のスクリーニングを行った。EMS変異株を、非常に感受性の高いシロイヌナズナ系統のLer eds1−2において作製した。8つのべと病抵抗性(dmr)変異株が詳細に解析され、6つの異なる遺伝子座に対応した。顕微鏡分析により、全ての変異株においてアブラナべと病菌(H.parasitica)の増殖がひどく低下したことが示された。dmr3、dmr4およびdmr5変異株の抵抗性は、植物防御の恒常的活性化に付随した。さらに、dmr3およびdmr4変異株は、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)およびシロイヌナズナにおけるウドンコ病菌(Golovinomyces orontii)にも抵抗性であったが、dmr5変異株は抵抗性でなかった。
【0010】
対照的に、植物防御の活性化の増強は、dmr1、dmr2、およびdmr6変異株において観察されなかった。この研究の結果は、Van Damme et al.(2005) Molecular Plant−Microbe Interactions 18(6)583−592に記載されている。この文献はDMR遺伝子の同定および特徴づけを開示していない。
【0011】
dmr6変異株は、シロイヌナズナLer eds1−2バックグラウンドでの感受性低下スクリーニングにおいて同定された。現在、DMR6遺伝子は、クローン化され、特徴づけされている。従って、DMR6は、オキシドレダクターゼをコードする遺伝子At5g24530であることが見出された(DNAおよびアミノ酸配列は、図2に表される)。オキシドレダクターゼは、1つの分子(酸化体)から、もう一つの分子(還元体)への電子の移動を触媒する酵素である。本発明によれば、機能性DMR6タンパク質の欠如は、べと病抵抗性をもたらすことが見出された。
【0012】
従って本発明は、ウイルス起源、細菌起源、真菌起源または卵菌起源の病原体に抵抗性である植物であって、該病原体に抵抗性でない植物と比較して該植物がDMR6タンパク質のレベルが低下、活性が低下、または完全に消失していることを特徴とする植物を提供する。
【0013】
この抵抗性の型は、卵菌門の病原体、例えばシロサビキン属、アファノミセス属、バシジオホラ(Basidiophora)属、ブレミア属、ヒアロペロノスポラ(Hyaloperonospora)属、パキメトラ(Pachymetra)属、パラペロノスポラ(Paraperonospora)属、ペロファシア(Perofascia)属、ペロノフィトラ属、ツユカビ属、ペロノスクレロスポラ属、フィチウム属、フィトフトラ属、タンジクツユカビ属、プロトブレミア(Protobremia)属、ニセツユカビ属、ササラビョウキン属、ビエンノチア(Viennotia)属の種に対して、ならびに真菌に属する病原体に対して、特に効果的である。
【0014】
本発明に従う抵抗性は、植物におけるDMR6タンパク質のレベルの変更(特に低下)、活性の低下、または完全な欠如に基づく。この点において用語「DMR6タンパク質」は、DMR6遺伝子産物、例えばシロイヌナズナのAt5g24530遺伝子によりコードされるタンパク質に関連する。かかる変更は様々な方法で達成することができる。
【0015】
本発明の一実施形態では、DMR6タンパク質のレベルの低下は、内因性DMR6遺伝子発現の低下の結果である。DMR6遺伝子の発現を低下させることは、直接的に、例えば遺伝子サイレンシングによるか、あるいは、間接的に、その調節配列の修飾によるか、または遺伝子の発現を刺激することにより達成することができる。
【0016】
DMR6遺伝子を調節してその活性または発現を低下させることは様々なレベルで達成することができる。第1に、内在遺伝子を直接に変異させることができる。これは、変異を誘発する処理(mutagenic treatment)を用いて達成してよい。あるいは、修飾DMR6遺伝子をトランスジェニック技法または遺伝子移入を用いて植物に組み込むか、あるいはDMR6の発現を調節レベルにおいて低下させてよい(例えば、調節配列を修飾するか、または遺伝子サイレンシングによる)。
【0017】
本発明のもう一つの実施形態では、DMR6タンパク質のレベルの低下は、かかる変異が存在しない野生型DMR6遺伝子と比較してDMR6発現の低下をもたらす、またはmRNAまたはタンパク質安定性の低下をもたらす、DMR6遺伝子中の変異の結果としてみられる。特定の実施形態では、これは、非機能性(すなわち酵素活性がないか、または低下した)DMR6タンパク質をもたらす、DMR6コード配列中の変異により達成される。
【0018】
本発明のもう一つの実施形態では、発現の低下は、転写もしくは翻訳レベルのいずれかで、例えば遺伝子サイレンシングによるか、またはDMR6遺伝子の発現に影響を及ぼす変異による、DMR6遺伝子発現の下方制御により達成され得る。
【0019】
本発明は、シロイヌナズナにおけるアブラナべと病菌に対する抵抗性に関して行われた研究に基づくが、より一般には、病原体(例えば卵菌および真菌など)への感染に対して感受性の高い植物、特に作物に適用することのできる一般的な概念である。
【0020】
本発明は、卵菌類により引き起こされる多数の植物病害、例えば、限定されるものではないが、レタスにおけるレタスべと病菌、ホウレンソウにおけるホウレンソウべと病菌、ウリ科に属する植物、例えばキュウリおよびメロンにおけるキュウリべと病菌、タマネギにおけるタマネギべと病菌、アブラナ科に属する植物、例えばキャベツにおけるアブラナべと病菌、ブドウにおけるブドウべと病菌、トマトおよびジャガイモにおける疫病菌、ならびに、ダイズにおけるダイズ茎疫病菌に適している。
【0021】
植物におけるDMR6遺伝子発現の修飾がDMR6遺伝子の遺伝子組換えによるか、またはDMR6遺伝子中の変異の同定により達成される予定であって、該遺伝子がまだ知られていない場合、該遺伝子を最初に同定しなければならない。DMR6遺伝子の遺伝子組換えまたはDMR6遺伝子中の変異の同定により病原体抵抗性植物、特に作物を作製するため、オーソロガスDMR6遺伝子を、これらの植物種から単離する必要がある。
【0022】
その他の植物におけるオーソロガス配列の同定のために様々な方法が利用できる。
【0023】
植物種におけるDMR6オーソロガス配列の同定のための方法は、例えば、データベース中の植物種のDMR6のESTを同定するステップと、全てのDMR6転写物またはcDNAを増幅するためのプライマーを設計するステップと、対応する全ての転写物またはcDNAを得るためのプライマーを用いる増幅実験を行うステップと、転写物またはcDNAのヌクレオチド配列を決定するステップとを含んでよい。コード配列の一部分しか分かっていない状況で完全な転写物またはcDNAを増幅するために適した方法は、5’RACE、3’RACE、TAIL−PCR、RLM−RACEおよびベクトレットPCRなどの改良型PCR技法が公知である。
【0024】
あるいは、目的の植物種に関してヌクレオチド配列が利用できない場合、目的の植物と密接に関連している植物種のDMR6遺伝子を元に、複数のヌクレオチド配列のアラインメントにより決定される保存されたドメインに基づいてプライマーを設計し、PCRを用いてオーソロガス配列を増幅させる。かかるプライマーは、適切には縮重プライマーである。
【0025】
所与配列をDMR6オーソログであるとして評価するもう一つの確かな方法は、相互から検索を行った結果の最高値(reciprocal best hit)の同定によるものである。候補オーソロガスDMR6配列は、Blastプログラムを用いて、シロイヌナズナDMR6タンパク質またはDNA配列または別の植物種のDMR6配列を用いて検索した場合、DNAデータベースからの最良のヒット(best hit)として同定される。得られた所与植物種の候補オーソロガスヌクレオチド配列を用いて、blastX検索法を用いて、DNAデータベース(例えばNCBIまたはTAIRで)に存在する全てのシロイヌナズナタンパク質との相同性について検索する。最良のヒットおよびスコアがシロイヌナズナDMR6タンパク質に対するものであれば、その所与DNA配列はオーソログまたはオーソロガス配列であると記載することができる。
【0026】
DMR6は、公開されている完全なゲノム配列から推定されるように、シロイヌナズナでは単一の遺伝子によりコードされる。コメのゲノムでは、3つのオーソログ、ポプラでは2つのオーソログが同定されている。これまで試験したその他の植物種の大部分において、公開DNAデータベースからのmRNA配列およびESTデータの解析により決定されるように、DMR6は単一の遺伝子によりコードされると思われる。オーソロガス遺伝子およびタンパク質は、これらの植物において、公開データベースに存在する情報とのヌクレオチドおよびアミノ酸比較により同定される。
【0027】
あるいは、所望の植物種に関してDNA配列が利用できない場合、オーソロガス配列を、シロイヌナズナまたは別の植物のDMR6遺伝子のDNAプローブを用いる異種ハイブリダイゼーションによるか、またはプライマーを定義するためにDMR6コード配列中の保存されたドメインを利用するPCR法により単離する。多くの作物種に関して、プライマーを設計し、DNA配列分析のための全てのmRNAまたはゲノム配列をPCR増幅するために使用することのできる、部分的なDMR6のmRNA配列が利用可能である。
【0028】
具体的な実施形態では、オーソログは、コードされるタンパク質がシロイヌナズナDMR6タンパク質(At5g24530)またはその他の植物のDMR6タンパク質の遺伝子と少なくとも50%の同一性を示す遺伝子である。より具体的な実施形態では、同一性は、少なくとも55%、より具体的には60%、さらにより具体的には65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、公的に利用可能であるデータベースにおいて同定されていて、cDNAのPCR増幅およびその後の配列決定により獲得された、オーソロガスDMR6配列(表1に記載)を示す。オーソロガスDMR6配列が同定された後、遺伝子の調節およびコード配列の完全なヌクレオチド配列が、標準的な分子生物学的技法により同定される。これに関して、植物種のゲノムライブラリーを、既知のDMR6遺伝子に由来するプローブまたはプライマーを用いるDNAハイブリダイゼーションまたはPCRによりスクリーニングして、DMR6遺伝子を含むゲノムクローンを同定する。あるいは、改良型PCR法、例えばRNAリガーゼ媒介RACE(RLM−RACE)などを用いて、ゲノムDNAまたは逆転写mRNAから遺伝子およびcDNA配列を直接に増幅する。その後、DNA配列決定の結果、完全な遺伝子またはコード配列の特徴づけがもたらされる。
【0030】
ひとたび遺伝子DNA配列が分かると、この情報は、DMR6遺伝子の発現を調節する手段に使用される。
【0031】
DMR6タンパク質レベルの低下を達成するため、DMR6遺伝子の発現を下方制御してもよいし、DMR6タンパク質の酵素活性をDMR6コード配列のヌクレオチドの変化の結果起こるアミノ酸置換により低下させてもよい。
【0032】
本発明の特定の実施形態では、DMR6遺伝子発現の下方制御は、RNAiを用いる遺伝子サイレンシングにより達成される。これに関して、遺伝子サイレンシングを導くDMR6に対応するdsRNAを生成するように、DMR6アンチセンス構築物、最適化されたマイクロRNA構築物、逆方向反復構築物、または組み合わされたセンス−アンチセンス構築物を発現する、トランスジェニック植物が作製される。
【0033】
代替となる実施形態では、DMR6遺伝子の1以上の調節因子がRNAiにより(転写活性化因子の場合に)下方制御される。
【0034】
もう一つの実施形態では、調節因子は(抑制タンパク質の場合に)トランスジェニック過剰発現により上方制御される。過剰発現は、特定の実施形態では、DMR6遺伝子の抑制タンパク質を強いプロモーター、例えば植物のバイオテクノロジーにおいて慣用される35Sプロモーターから発現させることにより達成される。
【0035】
DMR6遺伝子の下方制御は、プロモーター、ターミネーター領域、または潜在的なイントロン中の調節エレメントの変異誘発によっても達成することができる。多くの場合、DMR6コード配列中の変異は、コードされるDMR6タンパク質の発現または活性にマイナスの影響を及ぼすアミノ酸置換、または中途終止コドンを引き起こす。
【0036】
これらの変異は、メタンスルホン酸エチル(EMS)などの変異誘発性化学物質を使用することにより、ガンマ線または高速中性子での植物材料の照射により、またはその他の手段により植物に誘導される。結果として起こるヌクレオチドの変化は無作為であるが、変異誘発された植物の大規模なコレクションの中では、DMR6遺伝子中の変異はTILLING(Targeting Induced Local Lesions IN Genomes)法を用いることにより容易に同定することができる(McCallum et al.(2000) 「Targeted screening for induced mutations」.Nat.Biotechnol.18,455−457、およびHenikoff et al.(2004) TILLING.「Traditional mutagenesis meets functional genomics」.Plant Physiol.135,630−636)。この方法の原理は、M2世代で変異誘発された植物の大規模なコレクションのゲノムDNAからの目的の遺伝子のPCR増幅に基づく。一本鎖特異的ヌクレアーゼ、例えばCEL−Iヌクレアーゼを用いてDNA配列決定によるかまたは点変異を探すことにより(Till et al.(2004) 「Mismatch cleavage by sigle−strand specific nucleases」 Nucleic Acids Res.32,2632−2641)、目的の遺伝子中に変異を有する個別の植物が特定される。
【0037】
多くの植物をスクリーニングすることにより、各々が遺伝子発現または酵素活性に異なる影響をもたらす、変異型対立遺伝子の大規模なコレクションが得られる。遺伝子発現またはタンパク質レベルは、例えばDMR6転写物レベルの(例えばRT−PCRによる)分析によるかまたは抗体を用いるDMR6タンパク質レベルの定量化により試験することができる。
【0038】
続いて、望ましくDMR6レベルまたはDMR6発現の低下した植物を他の育種系統に戻し交配または交配し、所望の新しい対立遺伝子のみを、求める作物のバックグラウンドに移す。
【0039】
本発明はさらに、変異DMR6遺伝子に関する。
【0040】
特定の実施形態では、本発明は中途終止コドンをもつdmr6対立遺伝子、例えばdmr6−1対立遺伝子に関する。
【0041】
もう一つの実施形態では、本発明は、図3〜5に示されるレタス、キュウリ、およびホウレンソウの変異型DMR6遺伝子に関する。
【0042】
本発明は、機能性DMR6遺伝子産物レベルが消失または低下した植物が、特に卵菌および真菌起源の病原体に対して抵抗性を示すことを実証する。この知識に基づき、当業者は、機能性DMR6タンパク質レベルの低下または不在を引き起こすDMR6遺伝子の変異やDMR6タンパク質の変異型を有する、今まで未知の所与植物種の自然突然変異体を同定することができ、これらの自然突然変異体を本発明に従って用いることができる。
【0043】
本発明はさらに、耐病性(すなわちウイルス起源、細菌起源、真菌起源または卵菌起源の病原体に対する抵抗性)を植物に提供するための、DMR6プロモーターの使用に関する。本発明によれば、病原体感染に応答した、DMR6の転写上方制御が実証された。転写物の解析ならびにプロモーターDMR6−レポーター系統(lines)の両方がこの知見を支持する(下の実施例1を参照のこと)。このように、本発明に従う病原体誘導性DMR6プロモーターは、植物において耐病性をもたらす誘導性の(inducible)系の発現を制御するために特に有用である。
【0044】
植物において耐病性をもたらし、かつ、本発明に従うDMR6プロモーターが効果的であり得る誘導性の系の一例は、例えば、WO99/45125号に記載され、該系ではC−5ポルフィリン代謝経路の調節に関与する遺伝子のアンチセンスヌクレオチド配列が、病原体誘導性プロモーターに作動可能なように連結され、植物細胞を形質転換するために用いられている。病原体に応答した、アンチセンスヌクレオチド配列の発現は、形質転換植物細胞のポルフィリン代謝、および病原体の伝播が含まれる限局性損傷の発生を効果的に攪乱する。WO96/36697号はまた、植物において耐病性をもたらす誘導性の系も開示し、その系では誘導性プロモーターにより、植物において過敏な応答を惹起することのできるタンパク質の発現が制御される。欧州特許第0474857号は、さらに、一組の病原体由来非病原性遺伝子/植物由来抵抗性遺伝子をコードするポリヌクレオチド配列により植物を形質転換することを含み、エリシターペプチドおよび抵抗性遺伝子の一方または両方の発現が病原体誘導性プロモーターにより調節される、植物において病原体抵抗性を誘導するための方法を開示する。植物において病原体に対する抵抗性をもたらす誘導性の系のさらなる例は、例えばWO98/32325号に記載されている。
【0045】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、植物細胞内で作動可能な病原体誘導性プロモーターに作動可能に連結された少なくとも1つの発現可能な核酸を含むDNA構築物で植物細胞を形質転換するステップと、該植物細胞から形質転換植物を再生するステップとを含み、該病原体誘導性プロモーターがDMR6プロモーターであり、かつ、発現可能な核酸の発現によりそのトランスジェニック植物に耐病性が付与される、植物に耐病性をもたらす方法に関する。
【0046】
本発明はまた、該方法により得ることのできる耐病性植物、ならびに該植物から得ることのできる植物組織および種子に関する。
【0047】
本発明は、特に、ウイルス起源、細菌起源、真菌起源または卵菌起源の病原体に抵抗性である植物であって、ゲノム中に病原体誘導性プロモーターに作動可能に連結された少なくとも1つの発現可能な核酸を含むDNA構築物を含み、該病原体誘導性プロモーターはDMR6プロモーターである植物に関するものである。
【0048】
本発明はまた、病原体誘導性プロモーターに作動可能に連結された、少なくとも1つの発現可能な核酸を含むDNA構築物自体に関するものであって、ここで、病原体誘導性プロモーターはDMR6プロモーターである。本発明の構築物を用いて植物細胞を形質転換させることができ、それは形質転換植物に再生され得る。さらに、形質転換された植物組織および種子を得てもよい。本発明の構築物を植物細胞に導入するための適した方法は当業者に公知である。
【0049】
本発明によれば、「作動可能に連結された」は、プロモーターおよび発現可能な核酸、例えば遺伝子が、プロモーターによる発現可能な核酸(例えば遺伝子)の転写の開始が許可されるような方法でつなげられていることを意味する。
【0050】
「発現可能な核酸」は、細胞で発現させることのできる核酸、すなわち、mRNAに転写することができ、最終的にタンパク質に翻訳され得る核酸(例えば、遺伝子、または遺伝子の部分)を意味する。発現可能な核酸は、ゲノムDNA、cDNA、または化学的に合成されたDNAあるいは任意のその組合せであってよい。
【0051】
本発明によれば、DNA構築物は、細胞において特定の核酸の発現(すなわち、転写)を可能にする全ての必要な核酸エレメントを含む。一般に、構築物には、発現可能な核酸、すなわち、転写されるべき核酸とプロモーターが含まれる。構築物は、例えばプラスミドまたはベクターに適切に組み込むことができる。
【0052】
発現可能な核酸は、植物の防御応答に関与する遺伝子、例えば植物の過敏な応答に関連する遺伝子であることが好ましい。植物の過敏な応答(HR)において、病原体の侵入している植物の部位は、病原体に応答して引き起こされる自殺機構の誘導性発現により、限局性の細胞死を起こす。こうして、ごくわずかの植物細胞が犠牲となり、病原体の伝播は効果的に抑止される。植物の防御応答に関与する該遺伝子の例は、調節タンパク質NPR1/NIM1(Friedrich et al.,Mol.Plant Microbe Interact.14(9):1114−1124,2001)および転写因子MYB30(Vailleau et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(15):10179−10184,2002)である。
【0053】
特定の実施形態では、発現可能な核酸は、植物に耐病性を付与することのできる自己由来または異種のポリペプチドをコードする。「自己由来のポリペプチド」は、形質転換植物細胞で自然発生する遺伝子から形質転換植物細胞に発現される任意のポリペプチドを意味する。「異種のポリペプチド」は、形質転換植物細胞に対して部分的にまたは完全に異質な(すなわち、形質転換植物細胞で自然発生しない)遺伝子から形質転換植物細胞に発現される任意のポリペプチドを意味する。かかるポリペプチドの例は、哺乳類のBaxタンパク質であり、そのタンパク質はアポトーシス促進性タンパク質をコードし、その結果細胞死を植物(Lacomme and Santa Cruz,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96(14):7956−61,1999)および真菌キチナーゼ(de las Mercedes Dana et al.,Plant Physiol.142(2):722−730,2006)にもたらす。
【0054】
好ましくは、DMR6プロモーターは、シロイヌナズナDMR6プロモーターである。DMR6プロモーターは、シロイヌナズナDMR6コード配列(ATG開始コドン)の上流であって、5’UTRを含む3000bpの領域を含む。好ましくは、DMR6プロモーターは、図11に定義されるヌクレオチド配列、および/またはその任意の機能性断片(すなわち、作動可能に連結されている発現可能な核酸(1または複数)の転写を開始することのできる該配列の任意の断片(または部分))、および/またはその自然突然変異体(すなわち、わずかな遺伝子多型を含む可能性があるが一般に少なくとも90%同一であるプロモーターの自然突然変異体)を含む。
【0055】
さらに好ましい実施形態では、DMR6プロモーターは、オーソロガスDMR6プロモーター、すなわち、オーソロガスDMR6遺伝子のプロモーターである。DMR6オーソログを同定するための方法は、下の実施例2に記載されている。DMR6オーソログが同定されれば、当業者は、標準的な分子生物学的技法を用いて該オーソログのそれぞれのプロモーターを単離することができる。
【0056】
本発明によれば、DMR6プロモーターは、病原体によって強く誘導されることが示され、DMR6プロモーターはその他の非感染組織では高発現でない。従って、DMR6プロモーターは、植物においてウイルス起源、細菌起源、真菌起源または卵菌起源の病原体に対する抵抗性を提供するための誘導性の系での使用に非常に適したプロモーターである。本発明のDMR6プロモーターを用いて誘導性の系に適切に使用することのできる具体的な病原体および植物の例は上に示されている。
【0057】
本発明は、本発明を何ら制限することを意図しない以下の実施例において例証される。実施例において、以下の図面が参照される。
【0058】
表1は、シロイヌナズナDMR6mRNAおよびその他の植物種由来のオーソロガス配列のGenbank受託番号およびGenInfo識別子を示す。
【0059】
表2は、DMR6のマップに基づくクローニングに用いるマーカーのPCRプライマーを示す。
【0060】
表3は、適した植物発現ベクターにおいてdmr6オーソログをクローニングするためのプライマー対を示す。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】CLUSTAL W (1.83)多重配列アラインメントプログラム(EBI)を用いて、シロイヌナズナならびにオダマキ属の種、スイートオレンジ、ロブスタコーヒーノキ、キュウリ、ワタ、レタス、タルウマゴヤシ、イネ(3)、ブラックコットンウッド(2)、トマト(2)、モロコシ、ホウレンソウ、ブドウ、トウモロコシ、およびショウガ由来のオーソログのDMR6タンパク質のアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。配列の下に、保存されたアミノ酸が点で示され、同一のアミノ酸がアスタリスクで示される。
【図2】それぞれ、シロイヌナズナのDMR6遺伝子(At5g24530、gi 42568064、Genbank NM_122361)およびタンパク質(gi 15238567、Genbank NP_197841)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す図である。
【図3】それぞれ、レタスのDMR6オーソログのヌクレオチドおよび誘導されるアミノ酸配列を示す図である。
【図4】それぞれ、ホウレンソウのDMR6オーソログのヌクレオチドおよび誘導されるアミノ酸配列を示す図である。
【図5】それぞれ、キュウリおよびメロン(Cucumis melo)のDMR6オーソログのヌクレオチドおよび誘導されるアミノ酸配列を示す図である。
【図6】シロイヌナズナdmr6変異株のべと病抵抗性を示す図である。(a)接種後7日、その親系統Ler eds1−2と比較したdmr6−1変異株(BC2、E37系統)およびその親系統Ws−4と比較したdmr6−2変異株(FLAG_445D09 T−DNA系統)での、アブラナべと病菌単離物Waco9の胞子嚢柄の定量化。(b)dmr6−1変異株のAt5g24530遺伝子で相補することによる感受性の回復。実生(seedling)重量1mgあたりのアブラナべと病菌胞子を、Ler eds1−2、dmr6−1および5つの相補系統(#121、122、211、231、および241)で定量した。
【図7】シロイヌナズナDMR6遺伝子ならびにdmr6−1およびdmr6−2変異の構造を示す図である。DMR6遺伝子は、4つのエキソンと1026塩基のコード配列を含む。2つの対立遺伝子、すなわちエキソン2に塩基変化を含むdmr6−1、およびイントロン2にT−DNA挿入を含むdmr6−2が同定されている。
【図8】偽処理したか、または親和性もしくは非親和性のアブラナべと病菌単離物を接種したLer植物におけるDMR6の相対的な転写物レベルを示す図である。転写物レベルは、接種後の異なる日に決定した。サイクル閾値(ΔCT)の値の差異は、ACTIN2と比較して任意の閾値産物濃度に達するために必要な、さらなるPCR増幅サイクルの数を反映する。低いΔCT値は高い転写物レベルを示す。
【図9】アブラナべと病菌増殖を、基質としてX−glucのみ(図dおよびe)またはマゼンタ−Xgluc(図a〜c)およびトリパンブルー染色で視覚化した、トランスジェニックシロイヌナズナ系統におけるDMR6プロモーター−レポーター(pDMR6::GUS)構築物の発現を示す図である。(a)アブラナべと病菌Cala2単離物を含む、Ler eds1−2(pDMR6::GUS)3dpi。(b)アブラナべと病菌Waco9単離物を含む、Col−0(pDMR6::GUS)3dpi。(c)アブラナべと病菌Emoy2単離物を含む、Ler eds1−2(pDMR6::GUS)3dpi。(d)Col−0(pDMR6::GUS)3dp 創傷(wounding)。(e)Col−0(pDMR6::GUS)3dp BTH適用。
【図10】dmr6−1マイクロアレイ解析において上方制御されたとして選択される遺伝子(At4g14365、At1g14880、ACD6、PR−1、PR−2およびPR−5)の転写物レベルのQ−PCR解析を示す図である。(a)Ler eds1−2およびさらにDMR6転写物と比較した、dmr6−1における6つの遺伝子の転写レベル。(b)Ws−4に対するdmr6−2における6つの防御関連防御関連遺伝子の遺伝子転写物の上昇。ΔCTは、ACTIN2転写物のレベルに達するために必要な、さらなるPCR増幅サイクルの数を反映する。低いΔCT値は高い転写物レベルを示す。
【図11】プロモーターおよび5’−UTR(下線部分)を含む、シロイヌナズナのDMR6遺伝子(at5g24530)の開始コドンの上流の3kbの領域のヌクレオチド配列を示す図である。
【図12】それぞれ、トマトのDMR6オーソログのヌクレオチドおよび誘導されるアミノ酸配列を示す図である。
【図13】それぞれ、ベンサミアナタバコのDMR6オーソログのヌクレオチドおよび誘導されるアミノ酸配列を示す図である。
【図14】キュウリ(Cs)、ホウレンソウ(Si)、レタス(Ls)およびトマト(So)から誘導されるDMR6によるシロイヌナズナdmr6−1の補完性を示す図である。
【実施例1】
【0062】
シロイヌナズナDMR6(At5g24530)遺伝子はべと病感受性に必要である
試験手順
<アブラナべと病菌の増殖および感染>
単離アブラナべと病菌Waco9は、M.Aarts博士(WUR,Wageningen,NL)により提供され、単離Cala2は、E.Holub博士(Warwick HRI,Wellsbourne,UK)により提供され、それぞれシロイヌナズナWs−0およびLerで維持された。接種菌液(400,000胞子/ml)を毎週、10日齢の健常な実生(Holub,E.B.et al.,Mol.Plant Microbe Interact.7:223−239,1994)に、スプレーガンを用いて移した。実生をおよそ45分間空気乾燥させ、1日9時間の光条件(100mE/m2/s)で16℃の増殖チャンバ中で相対湿度100%にて密閉された蓋の下でインキュベートした。接種後(dpi)7日の胞子形成レベルを、試験した系統あたり少なくとも40の実生について、実生あたりの胞子嚢柄の数を計数することによるか(図6A)、または5dpiの水中の胞子を単離し、胞子濃度を決定して葉組織1mgあたりの数を得ることにより(図6B)定量化した。
【0063】
<戻し交配したdmr6系統の生成>
dmr6変異株を、Lerと同様に親系統Ler eds1−2に2回(BC2)戻し交配した。Lerを用いて作製したBC2系統が、PCR解析により野生型EDS1遺伝子が存在するために選択された。
【0064】
<DMR6のクローニング>
dmr6遺伝子のファインマッピングを、Cereonデータベースを用いてCol−0とLerの間の挿入および欠失(IND)差を同定するように設計されたPCRマーカーを用いて行った。マーカー:遺伝子At5G24210のIND_MOP9;遺伝子At5G24420のIND_K16H17;遺伝子At5G24820のIND_T4C12;遺伝子At5G24950〜60間のIND_T11H3および遺伝子At5G25270のIND_F21J6を、マッピングに使用した(表2)。新規な組換え体についてのさらなる選別を300のF2植物で開始し、61遺伝子の領域に隣接する2つのINDに基づくマーカー、IND_MOP9とIND_T4C12の間に、8つのF2組換え植物がもたらされた。7つのさらなるマーカー(M450〜M590;表2)により、該領域はAt5g24420〜At5g24590間のdmr6遺伝子座の18個の候補遺伝子に減らされた。At5g24530の配列解析により、dmr6−1変異株においてエキソン2に終止コドンを導く点変異が示された。
【0065】
<dmr6 T−DNA挿入系統の同定>
2番目のdmr6対立遺伝子である、Ws−4アクセッション(accession)バックグラウンドにおいてINRA Versaillesにより生成された、445D09、FLAG T−DNA挿入系統を同定した。T−DNA挿入は、At5g24530遺伝子に設計されたプライマーである、LPプライマー(5’−caggtttatggcatatctcacgtc−3’)を、T−DNA右側境界配列(right border)プライマーのTag3’(5’−ctgataccagacgttgcccgcataa−3’)またはRB4(5’−tcacgggttggggtttctacaggac−3’)と組み合わせて用いるPCRにより確認された。At5g24530の2番目のイントロン中の正確なT−DNA挿入は、左側および右側境界配列の両方からのT−DNAプライマーを、遺伝子特異的プライマーLPまたはRP(5’−atgtccaagtccaatagccacaag−3’)と組み合わせて作製したアンプリコンの配列決定により確認された。
【0066】
<cDNA合成>
RNAを、RNaesyキット(Qiagen,Venlo,The Netherlands)を用いて(10日齢の実生からの葉組織およそ100mgから)単離し、RNアーゼフリーのDNアーゼセット(Qiagen)で処理した。UVmini−1240分光光度計(Shimadzu,Kyoto,Japan)を用いて全RNAを定量化した。スーパースクリプトIII逆転写酵素(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)およびオリゴ(dT)15(Promega,Madison,WI,USA)を製造業者の使用説明書に従って用いて、cDNAを合成した。
【0067】
<dmr6−1変異株の相補性>
相補系統を、Col−0由来のAt5g24530遺伝子を35Sプロモーターの後ろに含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)(Clough and Bent,1998)を用いるフローラルディップ法によってdmr6植物を形質転換することにより作製した。方向性クローニングに使用される制限部位を含むプライマーを用いて、Col−0のcDNAからAt5g24530全長をPCR増幅することにより構築物を作製した。開始コドン(ATG)の近傍のBamHI制限部位を含む正方向プライマー(5’−ttctgggatccaATGGCGGCAAAGCTGATATC−3’)はDMR6の5’末端を増幅し、終止コドンの後の3’末端で逆方向プライマー(5’−gatatatgaattcttagttgtttagaaaattctcgaggc−3’)を用いてEcoRI部位が生成された。35S−DMR6−Tnを、pGreenII0229にクローニングした(Hellens,R.P.,Edwards,E.A.,Leyland,N.R.,Bean,S.,and Mullineaux,P.M.(2000))。pGreen:アグロバクテリウムに媒介される植物形質転換のための多用途かつ柔軟なバイナリーTiベクター。Plant Mol.Biol.42,819−832)。300μM DL−ホスフィノトリシン(BASTA)抵抗性の実生を単離し、RT−PCRによりアブラナべと病菌感受性およびDMR6発現レベルについて解析した。
【0068】
<RNAiによるDMR6系統のノックダウン>
Ler eds1−2およびCol−0バックグラウンドにおいてRNAi系を生成した。Col−0 At5g24530遺伝子の長さ782bpのcDNAアンプリコンを生成した。Phusion DNAポリメラーゼ(2U/μL)および2つの異なるプライマーの組合せを用いてPCRを行った。1回目のDMR6遺伝子特異的プライマーの組合せ(RNAiDMR6F:5’−aaaagcaggctGACCGTCCACGTCTCTCTGAA−3’およびRNAiDMR6R:5’−AGAAAGCTGGGTGAAACGATGCGACCGATAGTC−3’)からのアンプリコンを、GateWayクローニング系のpDONR7ベクターへの組換えを可能にする一般的なプライマーでの2回目のPCR増幅の鋳型として用いた。2回目のPCRについて、20μlの総容積中、10μlの1回目のPCR(98℃にて30秒間の変性に続いて、10サイクルの98℃にて10秒、58℃にて30秒、72℃にて30秒)を鋳型として用いた。2回目のPCR(98℃にて30秒間の変性に続いて、5サイクルの98℃にて10秒、45℃にて30秒、72℃にて30秒、および、20サイクルの、98℃にて10秒、55℃にて30秒、72℃にて30秒、72℃にて10分の最終伸長で終了)は、attB1(5’−GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCT−3’)およびattB2(5’−ggggaccactttgtacaagaaagctgggt−3’)を用いて、50μlの反応容積で行った。PCR産物をゲル精製し、BPクロナーゼ酵素を用いて50ngのインサートを150ngのpDONR7ベクターに組み込んだ。ベクターをエレクトロコンピテント(electrocompotent)DH5α大腸菌細胞に形質転換し、正確なインサートを含有するプラスミドを単離し、100ngのpDONR7をDMR6アンプリコンとともにLR反応に用いて、150ngのpHellsgate8ベクターに2つの反対方向にインサートを組み込んだ。大腸菌に形質転換した後、スペクトマイシン耐性クローンを選択し、単離したプラスミドを、正しいインサートサイズについてのNotI消化と、At5g24530の単一の内部プライマー(D断片F:5'−gagaagtgggatttaaaatagaggaa−3')を用いるコロニーPCRにより検証し、インサートが反対方向に2回挿入されていたならば、1420bpのアンプリコンが検出され得る。反対方向に2倍のインサートを含む、正しいpHellsgate8プラスミドを、エレクトロコンピテント(electrocompotent)アグロバクテリウム系統、C58C1に形質転換した。プラスミドをアグロバクテリウムから単離し、大腸菌に再び形質転換して、プラスミドおよびインサートの正しいサイズをNotI消化により確認した。再び確認されたアグロバクテリウム系統を、Col−0およびLer eds1−2植物のフローラルディップ形質転換に用いた。成育した種子を、1/2×GMプレートでカナマイシン耐性についてスクリーニングし、T1の実生を移動させて、次の世代の種子であるT2をDMR6発現およびアブラナべと病菌感受性について分析した。
【0069】
<dmr6変異株の遺伝子発現プロファイリング>
全RNAを上記の通り単離した。mRNAをMessageAmp aRNAキット(Ambion)で増幅させた。およそ25,000の遺伝子特異的タグを含有する、CATMAアレイ(Crowe et al.,2003)スライドを、de Jong et al.により記載される標準化された条件に従ってハイブリダイズした(de Jong M.,van Breukelen B.,Wittink,F.R.,Menke,F.L.,Weisbeek,P.J.,and Van den Ackerveken G.(2006).「Membrane−associated transcripts in Arabidopsis; their isolation and characterization by DNA microarray analysis and bioinformatics」.Plant J.46,708−721))。定量的PCRのために、cDNA鋳型を既に記載される通り作製した。1転写物あたりのサイクル閾値を、ABI PRISM 7700配列検出システム(Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)を、SYBR Green I(Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)をレポーター染料として用いて使用して、三重反復で決定した。転写物のためのプライマーの組は、DMR6(QDMR6F:5’−TGTCATCAACATAGGTGACCAG−3’および QDMR6R:5’−CGATAGTCACGGATTTTCTGTG−3’)、At1g14880(QAt1g14880F:5’−CTCAAGGAGAATGGTCCACA−3’およびQAt1g14880R:5’−CGACTTGGCCAAATGTGATA−3’)、At4g14365(QAt4g14365F:5’−TGGTTTTCTGAGGCATGTAAA−3’およびQAt4g14365R:5’−AGTGCAGGAACATTGGTTGT−3’)、ACD6(QACD6F:5’−TGGACAGTTCTGGAGCAGAT−3’およびQACD6R:5’−CAACTCCTCCGCTGTGAG−3’)、PR−5(QPR−5F:5’−GGCAAATATCTCCAGTATTCACA−3’およびQPR−5R:5’−GGTAGGGCAATTGTTCCTTAGA−3’)、PR−2(QPR−2F:5’−AAGGAGCTTAGCCTCACCAC−3’およびQPR−2R:5’−GAGGGAAGCAAGAATGGAAC−3’)、PR−1(QPR−1F:5’−GAACACGTGCAATGGAGTTT−3’およびQPR−1R:5’−GGTTCCACCATTGTTACACCT−3’)およびACT−2(QACT2F:5’−AATCACAGCACTTGCACCA−3’およびQACT2R:5’−GAGGGAAGCAAGAATGGAAC−3’)であり、100塩基対断片を生成する。
【0070】
結果
<dmr6変異株における病原体抵抗性の原因となる遺伝子の特徴づけ>
Van Damme、2005(前掲)は、アブラナべと病菌に抵抗性であるdmr6変異株を開示する。抵抗性のレベルは、アブラナべと病菌の接種後7日の実生あたりの胞子嚢柄の数を計数することにより調べることができる(単離Waco9またはCala2、オランダ国ユトレヒトのユトレヒト大学、Plant−Microbe Interactions Group、Dr.G.Van den Ackervekenより入手可能)。親系統である、Ler eds1−2(Parker et al.,1996,Plant Cell 8:2033−2046)は、非常に感受性が高く、陽性対照として使用する(そして100%に設定する)。
【0071】
親系統の実生と比較した、感染したdmr6変異株での胞子嚢柄形成の低下が、図6Aに示される。この図では、対照系統と比較した、べと病抵抗性dmr6−1変異株、親系統Ler eds1−2に2回戻し交配したもの、およびdmr6−2変異株(FLAG_445D09 T−DNA系統)でのアブラナべと病菌、Waco9胞子形成(胞子嚢柄/実生)の定量の結果が示される。
【0072】
本発明によれば、Van Damme、2005(前掲)のdmr6変異株におけるアブラナべと病菌に対する抵抗性の原因となる遺伝子は、候補遺伝子のマッピングおよび配列決定の組合せによりクローン化されている。これまでに、劣性のdmr6変異が、染色体5上のnga139マーカーの近傍の74遺伝子を包含する領域にマッピングされた。ファインマッピングにより、dmr6遺伝子座を、対応する遺伝子に位置するマーカーであるAt5g24420とAt5g24590の間のBACs T13K7およびK18P6を含むマッピング間隔に関連付けた。これにより、dmr6のインターバルは、18候補遺伝子の領域に限定された。dmr6および親系統であるLer eds1−2の18遺伝子の比較配列解析により、At5g24530遺伝子の2番目のエキソンにおける点変異が明らかとなった。この単一のGからAへの塩基の変化(EMS変異には典型的である)は、コード配列のヌクレオチド位置691でTGG(trpコドン)をTGA(中途終止コドン)に変える(図7)。早期の終止コドンにより、保存された触媒ドメインよりも前の位置141で、342aaの予測されたオキシドレダクターゼ酵素を切断し、dmr6がヌル対立遺伝子であることが示唆される。At5g24530コード配列(図2)は、質量39.4kDaのタンパク質をコードすると予測される。At5g24530の生物学的役割は、今までのところ記載されていない。
【0073】
<At5g24530はDMR6である>
第2の対立遺伝子である、dmr6−2を、INRA、Versaillesの提供する変異株コレクションからのT−DNA挿入系統(FLAG_445D09)において同定した。At5g24530(図7)の2番目のイントロン中のT−DNAインサートの存在および位置を、PCRおよび配列解析により確認した(データは示さず)。T−DNA挿入のためのFLAG_445D09系統同型接合体の後代は、アブラナべと病菌単離物Waco9に抵抗性であったが、親系統(Ws−4)は感受性が高かった(図6A)。At5g24530転写物は、Ws−4のエキソン2および3でプライマーを用いるRT−PCRにより増幅することができたが、同型接合体dmr6−2系統ではできず(データは示さず)、dmr6−2が第2のヌル対立遺伝子と考えられ得ることが示される。
【0074】
At5g24530はアブラナべと病菌の感受性に必要とされるという考えを実証するため、35Sプロモーターの制御下でクローン化されたAt5g24530のcDNAでdmr6−1変異株を形質転換した。5つの独立するdmr6−1のT2実生において、At5g24530の強い過剰発現がRT−PCRにより確認された(データは示さず)。導入遺伝子の同型接合体であるT3系統は全てアブラナべと病菌単離物Cala2に対する感受性の回復を示し(図6B)、At5g24530がDMR6であることを確認した。相補性は、2つの独立したdmr6変異株の同定とともに、機能性DMR6遺伝子がアブラナべと病菌の感受性に必要であることを明確に示す。
【0075】
<DMR6はアブラナべと病菌感染中に転写によって活性化される>
アブラナべと病菌に感染中のDMR6の発現を研究するため、相対的な転写物レベルを定量的PCRにより接種後0日(2時間)から接種後(dpi)5日までの6つの異なる時点で測定した(図8)。RNAを、水(偽)、親和性または非親和性アブラナべと病菌単離物を噴霧接種した10日齢のLer実生から単離した。接種後2時間に(0dpi)、DMR6転写物のレベルは異なる処理において同等であった。1dpiから開始して、DMR6転写物のレベルは、偽処理した実生に比較して、親和性および非親和性相互作用の両方で著しく増加した。DMR6転写物レベルは、親和性(3.0のΔCT、およそ8倍の誘導)よりも、非親和性相互作用において1dpiでわずかであるが有意に高かった(3.5のΔCT、およそ11倍の誘導)。発現レベルは、やがてさらに増大して、4〜5dpiで安定な高いレベルに達した。これらの時点で、DMR6転写物レベルは、非親和性相互作用よりも親和性相互作用において高かった。親和性および非親和性のアブラナべと病菌の相互作用の間にDMR6転写物レベルが上昇したことは、植物防御におけるDMR6の役割を示唆する。DMR6の防御に関連する発現は、本発明者らの3つの強化された防御(enhanced−defence)変異株、dmr3、dmr4、およびdmr5において確認することができた(Van den Ackerveken et al.、未発表)。さらに、DMR6レベルの、Genevestigator Mutant Surveyor(Zimmermann,P.,Hennig,L.,and Gruissem,W.(2005).「Gene−expression analysis and network discovery using Genevestigator」.Trends Plant Sci.10,407−409)でのコンピュータ解析により、病原体抵抗性変異株mpk4およびcpr5において遺伝子が強く誘導されることが示された。cpr5/npr1の二重の変異株において、DMR6転写物レベルは高いままであり、DMR6発現の誘導が主にNPR1非依存性であることが示される。nahGトランスジェニック植物(細菌のサリチル酸ヒドロキシラーゼ遺伝子を発現する)は低レベルのDMR6転写物しか示さないため、サリチル酸が、老化の中でDMR6発現の誘導において重要なシグナルであると思われる。
【0076】
生物的および非生物的ストレスの中でDMR6の発現がどのように活性化されるかをより詳細に調査するため、DMR6レポーター系統を作製した。DMR6発現の局在化を、uidA(β−グルクロニダーゼ、GUS)レポーター遺伝子に連結されたDMR6プロモーター(pDMR6::GUS)を含むトランスジェニックCol−0およびLer eds1−2植物において調べた。アブラナべと病菌の菌糸成長(トリパンブルーで染色される)、ならびにGUS活性の両方を可視化するため、マゼンタ−Xglucをβ−グルクロニダーゼ基質として使用して、マゼンタ沈殿物を生じた。非感染植物では、異なる植物器官(すなわち根、分裂組織、花、花粉および種子)においてGUS発現を検出することができた。DMR6の発現は、親和性相互作用である、Cala2に感染したLer eds1−2(図9A)、および単離物Waco9に感染したCol−0(図9B)において誘導された。GUS発現も非親和性相互作用である、単離物Emoy2を接種されたLer eds1−2において誘導された(図9C)。図9Aおよび9Bに示されるように、DMR6発現は、アブラナべと病菌が吸器を形成した細胞に限定された。直近に形成された吸器を含む植物細胞は、検出可能なレベルのGUS活性を示さなかった(図9A、アスタリスクで図示)。非親和性相互作用の中(図9C)、DMR6プロモーターの活性は、初期侵入菌糸に接触していた細胞においてのみ検出することができた。過敏性応答(HR、図9Cにおいてアスタリスクで示されるトリパンブルー染色により可視化される)の結果もたらされる死細胞では、おそらくこれらの細胞におけるタンパク質分解に起因して、GUS活性を検出することができなかった。吸器を含む細胞でのDMR6発現が創傷様応答により引き起こされるかどうかを試験するために、実生を剪刀で切開することにより傷を付け、3日後にGUS活性について染色した。検出可能なプロモーターDMR6GUSの発現は見られず、DMR6の発現が創傷により誘導されないことが示される(図9D)。さらに、サリチル酸(SA)の機能類似体である、ベンゾチアジアゾール(BTH)での処理に応答する、DMR6発現の局所誘導を試験した。BTH処理後3日に、GUS活性は主に新規に形成された部分に局在したが、成熟した葉には局在しなかった(図9E)。pDMR6::GUS系統の解析により、上記の発現データが確認され、アブラナべと病菌感染に応答したDMR6の厳密な(strictly)限局性の誘導が強調された。
【0077】
<dmr6−1変異株は防御関連転写物を恒常的に発現する>
DMR6の欠如がどのようにアブラナべと病菌抵抗性をもたらすのかを解明するため、Ler eds1−2親系統と比較してdmr6−1変異株のトランスクリプトームを解析した。14日齢のdmr6−1およびLer eds1−2実生の地上部分のmRNAから導かれたプローブを、全ゲノムCATMAマイクロアレイでハイブリダイズした。合計58遺伝子が、dmr6−1において有意に異なって発現することが見出され、その中の51遺伝子が転写物レベルを上昇させ、7遺伝子が転写物レベルを低下させた。51の誘導された転写物の顕著なセット(pronounced set)が、活性化した植物の防御応答に関連する遺伝子として同定された(例えば、ACD6、PR−5、PR−4/HELおよびPAD4)。これらのデータは、DMR6の欠如の結果、防御関連転写物の具体的なセットの活性化がもたらされることを示す。DMR6がdmr6−1に誘導される遺伝子であるという知見は、DMR6が防御に関連しているという考えを実証する。誘導された防御関連遺伝子の発現が、DMR6の欠如に起因するものであって、戻し交配したdmr6−1変異株に残存するさらなるエタンスルホン酸メチル(EMS)変異に起因するものでないかどうかを試験するため、遺伝子(At4g14365、At1g14880、ACD6、PR−1、PR−2およびPR−5)の選択の転写物レベルを、dmr6−1およびdmr6−2変異株の両方における定量的PCRにより検証した(図10)。dmr6−2変異株(図10B)はDMR6転写物を崩壊させるT_DNA挿入を有するので、本発明者らはdmr6−1変異株(図10A)でのDMR6転写物レベルだけを試験することができた。マイクロアレイ解析において観察されるように、DMR6の誘導を、Ler eds1−2(図10A)と比較した、dmr6−1でのQ−PCRにより確認した。図10AおよびBは、6つ全ての選択された遺伝子が、親系統と比較して両方のdmr6変異株において上昇したことを示す。dmr6変異株における選択された防御関連遺伝子の観察された発現の増加は、DMR6の欠如が植物の防御応答を活性化させることを示す。このセットの防御関連転写物の活性化は、dmr6変異株におけるアブラナべと病菌に対する抵抗性の主な原因であり得る。
【実施例2】
【0078】
作物中のDMR6オーソログの同定
1.配列相同性に基づくライブラリーのスクリーニング
シロイヌナズナのDMR6コード配列およびタンパク質のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図2に示す。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列の公開ライブラリーを図2の配列と比較した。この比較の結果、完全なDMR6コード配列、ならびに、オダマキ属の種、スイートオレンジ(Citrus sinensis)、ロブスタコーヒーノキ(Coffea canephora)、キュウリ(Cucumis sativus)、ワタ(Gossypium hirsitum)、レタス(Lactuca sativa)、タルウマゴヤシ(Medicago truncatula)、イネ(Oryza sativa)(3)、ブラックコットンウッド(Populus trichocarpa)(2)、トマト(Solanum lycopersicum)(2)、モロコシ(Sorghum bicolor)、ホウレンソウ(Spinacia oleracea)、ブドウ(Vitis vinifera)、トウモロコシ(Zea mays)、およびショウガ(Zingiber officinale)において予測されたアミノ酸配列が同定された。このようにして同定されたオーソロガスタンパク質の配列情報は表1に示され、図1の多重アラインメントにおいて視覚化される。多くのその他の植物種オーソロガスDNA断片は、blastXにより、シロイヌナズナまたはその他の植物DMR6タンパク質配列に対する相互の最良のヒット(reciprocal best hit)として同定することができた。
【0079】
2.異種ハイブリダイゼーションを用いるオーソログの同定
図2に示されるシロイヌナズナのDMR6DNA配列をプローブとして用いて、標準的な分子生物学的方法を用いる任意の植物種のDNAに対するハイブリダイゼーションにより相同配列を探索する。この方法を用いて、オーソロガス遺伝子を、制限酵素消化DNAでのサザンハイブリダイゼーションによるか、またはゲノムまたはcDNAライブラリーに対するハイブリダイゼーションにより検出する。これらの技法は当業者に周知である。代替プローブとして、任意のその他のより近縁の植物種のDMR6DNA配列をプローブとして用いてもよい。
【0080】
3.PCRを用いるオーソログの同定
多くの作物種に関して、プライマーを設計し、その後に完全なcDNAまたはゲノム配列をPCR増幅するために使用される、部分DMR6mRNAまたは遺伝子配列が利用可能である。5’および3’配列が利用可能である場合、欠損した内部配列はDMR6特異的5’正方向プライマーおよび3’逆方向プライマーによりPCR増幅される。5’配列、内部配列または3’配列だけしか利用できない場合、正方向プライマーと逆方向プライマーの両方が設計される。利用可能なプラスミドポリリンカープライマーと組み合わせて、インサートを目的の植物種のゲノムおよびcDNAライブラリーから増幅する。同様の方法で、欠損した5’配列または3’配列は改良型PCR技法;5’RACE、3’RACE、TAIL−PCR、RLM−RACEまたはベクトレットPCRにより増幅させる。
【0081】
例として、レタス(Lactuca sativa:英名lettuce)DMR6のcDNAの配列決定を提供する。NCBIのGenbankのESTデータベースから、シロイヌナズナDMR6アミノ酸配列から出発するtblastnツールを用いて、いくつかのレタスDMR6のESTを同定した。ESTのクラスタリングおよびアラインメントの結果、5’DMR6断片のコンセンサス配列がもたらされた。完全なレタスDMR6のcDNAを得るため、RLM−RACEキット(Ambion)をレタス実生由来のmRNAで用いた。3’mRNA配列は、EST由来の5’DMR6コンセンサス配列で設計された2つのプライマー(Lsat_dmr6_fw1:CGATCAAGGTCAACACATGG、およびLsat_dmr6_fw2:TCAACCATTACCCAGTGTGC)とキットの3’RACEプライマーを用いることにより得た。構築された配列に基づいて、新しいプライマーを設計して、cDNAから完全なDMR6コード配列を増幅し、図3に表されるヌクレオチド配列および誘導されたタンパク質配列をもたらした。
【0082】
10を超える異なる植物種由来の完全なDMR6コード配列が、ゲノムおよびESTのデータベースから同定されている。DNA配列のアラインメントから、コード配列中の保存された領域を縮重オリゴヌクレオチドプライマーの設計用に選択した。(縮重ヌクレオチドに関して、略語は、オリゴヌクレオチドを合成する全ての会社が使用する標準的なコードであるIUBヌクレオチド記号に従い、G=グアニン、A=アデニン、T=チミン、C=シトシン、R=AまたはG、Y=CまたはT、M=AまたはC、K=GまたはT、S=CまたはG、W=AまたはT、B=CまたはGまたはT、D=GまたはAまたはT、H=AまたはCまたはT、V=AまたはCまたはG、N=AまたはCまたはGまたはT)。
【0083】
所与植物種の内部DMR6のcDNA配列を得るための手順は以下の通りである。
1.標準的な方法を用いてmRNAを単離し、
2.オリゴdTプライマーおよび標準法を用いてcDNAを合成し、
3.縮重した正方向および逆方向オリゴヌクレオチドを用いてPCR反応を実行し、
4.標準的なアガロースゲル電気泳動によりPCR断片を分離し、予測されるサイズの断片をゲルから単離し、
5.単離したPCR断片をプラスミドベクターに標準的な方法を用いてクローニングし、
6.PCRにより決定された正確なインサートサイズのプラスミドを、DNA配列決定により解析し、
7.blastXを用いる配列解析によりどの断片が正確な内部DMR6配列を有するかを明らかにし、
8.内部DNA配列を用いて5’および3’RACEのための遺伝子および種特異的プライマーを設計して、RLM−RACE(上記の通り)により完全なDMR6コード配列を得ることができる。
【0084】
例として、キュウリ(Cucumis sativus:英名cucumber)DMR6のcDNAの配列決定を提供する。キュウリのための、以下のプライマー同士のいくつかのプライマーの組合せは、cDNA由来の内部コード配列のストレッチを増幅することに成功した。正方向プライマーdmr6_deg_fw1B(TTCCAGGTDATTAAYCAYGG)、dmr6_deg_fw2B(CATAAYTGGAGRGAYTAYCT)、dmr6_deg_fw3B(GARCAAGGRCARCAYATGGC)およびdmr6_deg_fw4(AATCCTCCTTCHTTCAAGGA)ならびに逆方向プライマーdmr6_deg_rv3B(AGTGCATTKGGGTCHGTRTG)、dmr6_deg_rv4(AATGTTRATGACAAARGCAT)およびdmr6_deg_rv5(GCCATRTGYTGYCCTTGYTC)。増幅断片のクローニングおよび配列決定の後、キュウリDMR6特異的プライマーを、5’RACEについて設計した(Cuc_dmr6_rv1:TCCGGACATTGAAACTTGTGおよびCuc_dmr6_rv2:TCAAAGAACTGCTTGCCAAC)および3’RACE(Cuc_dmr6_fw1:CGCACTCACCATTCTCCTTCおよびCuc_dmr6_fw2:GGCCTCCAAGTCCTCAAAG)。最後に、完全なキュウリDMR6のcDNA配列を増幅し、配列決定した(図5)。同様のアプローチを、ホウレンソウ(図4)、トマト(図12)およびベンサミアナタバコ(図13)に用いた。
【0085】
この実施例に記載されるように同定されたオーソログは、周知の技法を用いて修飾してDMR6発現または活性を低下させる変異を誘導し、真菌または卵菌に抵抗性の非遺伝子組換え植物を得ることができる。あるいは、オーソログの遺伝情報を用いて遺伝子サイレンシングの媒体を設計し、対応する作物に形質転換して卵菌に抵抗性である植物を得ることができる。
【実施例3】
【0086】
種子の変異
ゲノムにランダム点変異を導入するために、目的の植物種の種子を変異誘発物質で処理する。変異した植物を生育させて種子を生成し、次の世代をDMR6転写物レベルまたは活性の低下がみられないことについてスクリーニングする。これは、DMR6遺伝子発現のレベルをモニターすることによるか、あるいはTILLING法により、DNA配列決定により、またはヌクレオチド変化を特定する任意のその他の方法により、ヌクレオチド変化(変異)を検索することにより達成される。選択される植物は同型接合体であるか、または自家受粉または種間交雑(inter−crossing)により同型接合体となる。選択される、DMR6転写物活性が存在しないかまたは低下した同型接合植物は、目的の病原体に対する抵抗性の増加について試験され、耐病性の増加が確認される。
【実施例4】
【0087】
変異した対立遺伝子の所望の作物のバックグラウンドへの移入
所望の変異対立遺伝子の作物への遺伝子移入は、変異対立遺伝子の交配および遺伝子型スクリーニングにより達成される。これは、今日のマーカーを利用した(marker assistant)作物の育種において標準的な手順である。
【実施例5】
【0088】
病原体誘導性遺伝子発現および耐病性植物の生成のためのDMR6プロモーターの使用
導入遺伝子発現の正確な制御は、耐病性の増加した植物の操作に極めて重要である。従来、導入遺伝子の恒常的な過剰発現はしばしば低品質の植物をもたらしてきた。そのため、導入遺伝子が感染部位で必要とされる場合および場所にのみ発現する、病原体誘導性プロモーターの使用が提案されてきた。
【0089】
操作された遺伝子(例えば、マスタースイッチ遺伝子、エリシターまたはAvr遺伝子、抗菌性遺伝子、または毒性遺伝子)の局所性かつ誘導性の発現は、例えばGurrおよびRushton(Trends in Biotechnology 23:275−282,2005)に記載されるような、病原体抵抗性を導く、防御力の活性化または細胞死をもたらす。良い例が、De wit(Annu.Rev.Phytopathol.30:391−418,1992)により提供され、耐病性をもたらす誘導された細胞死を達成するためにAvr9−Cf9の組合せの使用が提案される。発現の組織特異性および誘導能は、GurrおよびRushton(Trends in Biotechnology 23:283−290,2005)に記載されるように、かかるアプローチに対して最も重要である。
【0090】
本発明によれば、DMR6プロモーターは、プロモーター−GUS解析に基づいて、強力かつ誘導性の局所発現を示すことが実証されている。従って、DMR6プロモーターは、トランスジェニック植物において耐病性を操作することに非常に適している。DMR6プロモーターは、シロイヌナズナDMR6コード配列(ATG開始コドン)の上流の2.5kbの領域からなり、5’UTRを含む(図11に表される通り)。次に、この病原体誘導性プロモーターを使用して、当業者に公知の標準的な技法を用いて、適した導入遺伝子構築物を操作する。
【0091】
所与の植物種由来のオーソロガスDNA配列を用いて、PCRのためのプライマーを設計する。次に、これらを用いて目的の植物種のゲノムライブラリーをスクリーニングして、DMR6オーソログをそのプロモーターおよび調節配列とともに含むゲノムクローンを同定する。あるいは、DMR6オーソロガス遺伝子に対応する標識PCR断片でライブラリーをスクリーニングすることにより、ゲノムクローンを単離する。配列決定により、プロモーターのヌクレオチド配列が明らかになる。DMR6オーソロガスコード配列(ATG開始コドン)の2〜5kb上流の(すなわち5’UTRを含む)領域を、次にPCRにより増幅して、植物形質転換のための導入遺伝子構築物を操作する。
【実施例6】
【0092】
この実施例は、4つの異なる作物種由来のDMR6オーソログによる、シロイヌナズナにおける変異株dmr6−1の相補性を実証する。これに関して、キュウリ(Cs)、ホウレンソウ(So)、レタス(Ls)およびトマト(Sl)のDMR6オーソログを、35Sプロモーターの制御下で植物発現ベクターにクローニングし、その後、このベクターをシロイヌナズナ変異株dmr6−1に形質転換した。
【0093】
端的には、標準的な方法を用いてmRNAを単離し、オリゴdTプライマーおよび標準法を用いてcDNAを合成した。その後、下の表3に示されるように、各々の作物に対するプライマー対を用いてPCR断片を生成した。生成されたPCR産物を、Invitrogen製pENTR/D−TOPOクローニングキットを用いてpENTR/D−TOPOベクターにクローニングし、得られる正確なインサートサイズ(PCRにより決定される)のプラスミドを、DNA配列決定により解析した。pB7WG2,0ベクターへの組換えを、Invitrogen製のLRクロナーゼIIを用いて行い、得られるプラスミドをPCRおよび制限酵素での消化により解析した。適したプラスミドを、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)C58C1 PGV2260に形質転換し、アグロバクテリウム由来のプラスミドをPCRおよび制限酵素での消化により解析した。
【0094】
シロイヌナズナdmr6−1植物を、上記構築物を用いてアグロバクテリウム溶液に浸漬することにより形質転換し、シロイヌナズナT1植物の作物DMR6の過剰発現を、作物DMR6クローニングプライマーを用いるRT−PCRにより検証する(表3)。最後に、シロイヌナズナT2およびT3植物をアブラナべと病菌Cala2に感染させて補完性を確認した。結果を図14に示す。
【0095】
図14に示されるように、試験した全てのDMR6オーソログは、シロイヌナズナ変異株dmr6−1を補完することができ、同定されたDMR6オーソログがシロイヌナズナDMR6と同様の機能性をもつDMR6タンパク質をコードすることが示された。
【0096】

表1には、シロイヌナズナDMR6mRNAおよびその他の植物種由来のオーソロガス配列の発現配列TAG(EST)およびmRNAまたはタンパク質配列についてのGI番号(GenInfo識別子)およびGenbank受託番号が記載される。GI番号(GenInfo識別子、小文字で「gi」と書かれることもある)は、特定の配列を同定する一意の整数である。GI番号は、NCBIにより処理される各々の配列記録に対して連続的に割り当てられる一連の数字である。従って、GI番号は配列が変わるたびに変化する。NCBIは、DDBJ/EMBL/GenBankからのヌクレオチド配列、SWISS−PROT、PIRおよび多くのその他からのタンパク質配列をはじめ、Entrezに処理される全ての配列にGI番号を割り当てる。従って、GI番号は、正確な配列を指定するデータベース源とは無関係の、一意の配列識別子を提供する。たった1つの塩基対であってもGenBank中の配列が変更されれば、更新された配列に新しいGI番号が割り当てられる。受託番号は同じままである。GI番号は常に不変であり、かつ検索可能である(retrievable)。従って、表中のGI番号を参照すると、対応する配列の明白かつ一義的な照合一致(identification)が得られる。
【0097】
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【0098】
【表2】

【0099】
【表3】

【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス性、細菌性、真菌性または卵菌性の病原体に対して抵抗性である植物であって、前記植物が前記病原体に対して抵抗性でない植物と比較して、DMR6タンパク質のレベルが低下、活性が低下、または完全に消失していることを特徴とする植物。
【請求項2】
前記病原体が、真菌または卵菌門に属する生物である、請求項1に記載の植物。
【請求項3】
前記病原体が、シロサビキン属、アファノミセス属、バシジオホラ(Basidiophora)属、ブレミア属、ヒアロペロノスポラ(Hyaloperonospora)属、パキメトラ(Pachymetra)属、パラペロノスポラ(Paraperonospora)属、ペロファシア(Perofascia)属、ペロノフィトラ属、ツユカビ属、ペロノスクレロスポラ属、フィチウム属、フィトフトラ属、タンジクツユカビ属、プロトブレミア(Protobremia)属、ニセツユカビ属、ササラビョウキン属、またはビエンノチア(Viennotia)属の種である、請求項2に記載の植物。
【請求項4】
前記植物および前記病原体が、レタスにおけるレタスべと病菌、ホウレンソウにおけるホウレンソウべと病菌、ウリ科に属する植物、例えばキュウリおよびメロンなどにおけるキュウリべと病菌、タマネギにおけるタマネギべと病菌、アブラナ科に属する植物、例えばキャベツにおけるアブラナべと病菌(Hyaloperonospora parasitica)、ブドウにおけるブドウべと病菌、トマトおよびジャガイモにおける疫病菌、ならびに、ダイズにおけるダイズ茎疫病菌から選択される、請求項2または3に記載の植物。
【請求項5】
DMR6遺伝子に変異を有し、その結果、かかる変異が存在しない野生型DMR6遺伝子にコードされるDMR6タンパク質と比較して、酵素活性の低下したDMR6タンパク質がもたらされる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物。
【請求項6】
前記DMR6遺伝子中の変異は、前記コードされるタンパク質においてアミノ酸置換を引き起こす、請求項5に記載される植物。
【請求項7】
DMR6遺伝子に変異を有し、その結果、かかる変異が存在しない野生型DMR6遺伝子と比較して、DMR6発現の低下がもたらされる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の植物。
【請求項8】
DMR6遺伝子の調節配列中に、前記コードされるDMR6タンパク質の発現に影響を及ぼす変異を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物。
【請求項9】
前記遺伝子が、図2に示されるシロイヌナズナDMR6遺伝子(At5g24530)のオーソロガス遺伝子である、請求項5〜8のいずれか一項に記載の植物。
【請求項10】
前記遺伝子が、表1のリストにおいて同定されるDMR6オーソロガス遺伝子である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の植物。
【請求項11】
前記遺伝子が、図3に示されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を有するレタス(Lactuca sativa)のDMR6オーソロガス遺伝子である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の植物。
【請求項12】
前記遺伝子が、図4に示されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を有するホウレンソウ(Spinacia oleracea)のDMR6オーソロガス遺伝子である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の植物。
【請求項13】
前記遺伝子が、図5に示されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を有するキュウリ(Cucumis sativus)またはその他のククミス属の種、例えばメロンのDMR6オーソロガス遺伝子である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の植物。
【請求項14】
前記植物のDMR6タンパク質の内在レベルを低下させるステップを含む、ウイルス性、細菌性、真菌性または卵菌性の病原体に抵抗性である植物を得るための方法。
【請求項15】
タンパク質のレベルを低下させるステップが、前記植物のDMR6遺伝子の変異によって達成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
DMR6タンパク質のレベルを低下させるステップが、酵素活性の低下したDMR6タンパク質をもたらす1以上のアミノ酸変化を誘導する前記DMR6遺伝子の変異により達成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記変異が、特に変異誘発物質または放射線を用いた前記植物の変異を誘発する処理によりもたらされる、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記植物における内在レベルを低下させるステップが、前記植物のDMR6遺伝子の発現を低下させることにより達成される請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記植物のDMR6遺伝子の発現を低下させることが、遺伝子サイレンシングまたはRNAiにより達成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記植物のDMR6遺伝子の発現を低下させることが、プロモーター領域、ターミネーター領域またはイントロン中の調節エレメントの変異誘発により達成される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記植物のDMR6遺伝子の発現を低下させることが、前記DMR6遺伝子の抑制タンパク質を過剰発現させることにより達成される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記植物のDMR6遺伝子の発現を低下させることが、活性化タンパク質または調節タンパク質をコードする植物遺伝子のサイレンシングまたは変異により達成される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
変異させる前記DMR6遺伝子が、図2に示されるシロイヌナズナDMR6遺伝子(At5g24530)のオーソログである、請求項14〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記遺伝子が、表1のリストにおいて同定されるDMR6オーソロガス遺伝子である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記遺伝子が、図3に示されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を有するレタス(Lactuca sativa)のDMR6オーソロガス遺伝子である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記遺伝子が、図4に示されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を有するホウレンソウ(Spinacia oleracea)のDMR6オーソロガス遺伝子である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記遺伝子が、図5に示されるヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を有するキュウリ(Cucumis sativus)のDMR6オーソロガス遺伝子である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
低下した酵素活性を有するDMR6タンパク質をコードする変異植物DMR6遺伝子。
【請求項29】
中途終止コドンを含むdmr6対立遺伝子を含む、請求項28に記載の変異植物DMR6遺伝子。
【請求項30】
前記dmr6−1対立遺伝子を含む、請求項29に記載の変異植物遺伝子。
【請求項31】
植物において耐病性をもたらすためのDMR6プロモーターの使用。
【請求項32】
植物において耐病性をもたらすための方法であって、植物細胞内で作動可能な病原体誘導性プロモーターに作動可能に連結された少なくとも1つの発現可能な核酸を含むDNA構築物により植物細胞を形質転換するステップと、前記植物細胞から形質転換植物を再生するステップを含み、ここで、前記病原体誘導性プロモーターがDMR6プロモーターであり、かつ、前記発現可能な核酸の発現によりトランスジェニック植物に耐病性が付与される、方法。
【請求項33】
前記発現可能な核酸が、植物の防御応答に関与する遺伝子である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記発現可能な核酸が、前記植物に耐病性を付与することのできる自己由来のもしくは異種のポリペプチドをコードする、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記DMR6プロモーターが、シロイヌナズナDMR6プロモーターである、請求項32〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記DMR6プロモーターが、図11に定義されるヌクレオチド配列、および/または機能性断片、および/またはその天然の変異体を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記DMR6プロモーターが、オーソロガスDMR6プロモーターである、請求項32〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
病原体誘導性プロモーターに作動可能に連結された、少なくとも1つの発現可能な核酸を含むDNA構築物であって、前記プロモーターがDMR6プロモーターである、DNA構築物。
【請求項39】
前記発現可能な核酸が、植物の防御応答に関与する遺伝子である、請求項38に記載のDNA構築物。
【請求項40】
前記発現可能な核酸が、前記植物に耐病性を付与することのできる自己由来のもしくは異種のポリペプチドをコードする、請求項38または39に記載のDNA構築物。
【請求項41】
前記DMR6プロモーターが、シロイヌナズナDMR6プロモーターである、請求項38〜40のいずれか一項に記載のDNA構築物。
【請求項42】
前記DMR6プロモーターが、図11に定義されるヌクレオチド配列、および/または機能性断片、および/またはその天然の変異体を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記DMR6プロモーターがオーソロガスDMR6プロモーターである、請求項38〜40のいずれか一項に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−517518(P2010−517518A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547596(P2009−547596)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000718
【国際公開番号】WO2008/092659
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(508088753)エンザ・ザーデン・ベヘール・ベスローテン・フェンノートシャップ (6)
【Fターム(参考)】