説明

耐突刺防護生地

【課題】突刺し抵抗性に優れた、手袋、エプロン、防護衣用の生地を提供する。
【解決手段】
1インチ当たり30本x30本以上の密度があるポリエステル、ナイロン、その他種類の平織りの織物にフッ素樹脂コーティングまたポリ塩化ビニルコーティングをする。コーティング量は150g−300g/mの範囲であり、目付けは350−750g/mの範囲にある事を特徴とする生地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋭利な刃物や、注射針およびアイスピックのような尖ったものからの防護特性を有する軽量で柔軟な性能を持った手袋や防護服など幅広い用途に利用できる生地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先端の鋭利な刃物や注射針などに対して手を含む身体を防護する材料として、金属板、チェーン状金属や高密度アラミド繊維を積層したものなどある。
【0003】
アラミド繊維、高強度ポリエチレン繊維などは柔軟で軽量であるが繊維を複数枚積層しなければ十分な性能は発揮できない。また高価であることと数年で経年劣化する欠点がある。
【0004】
アラミド繊維などの高強度繊維からなる生地の表面繊維をマイクロフィラメント化して組み合わせた耐突き刺性手袋や、高強度繊維から成る生地と極細繊維性織物とを含む多層体からなる耐突き刺性手袋なども提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−107139号広報
【特許文献2】特開2007−321262号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の従来技術の背景のもとになされたもので、経年劣化に優れており、なおかつ高い耐突刺し性および高い防護性能を有し、必要に応じ柔軟性を持たせることができる防護繊維とその利用方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、本発明の実施形態を示す図1、図2、図4に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
すなわち、本発明は耐突刺し性手袋(1)に関して、外層(2)と内層(3)との間に積層シート(4)を備えた耐突刺し性および耐切創性手袋であって積層シート(4)または外層(2)および内層(3)に、少なくても樹脂でコーティングされた生地(5)を含むことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明の実施形態を示す図2、図3、図4に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
すなわち、本発明は耐突刺し性防護衣(7)に関して、外層(2)と内層(3)との間に積層シート(4)を備えた耐突刺し性防護衣であって積層シート(4)または外層(2)および内層(3)に、少なくても樹脂でコーティングされた生地(5)を含むことを特徴とする。
【0009】
上記の積層シート(に含まれる樹脂でコーティングされた生地は柔軟性があり、手袋、エプロン、防護衣などでも装着感が得られる。樹脂コーティング生地はそれ自身にも突刺しおよび切創抵抗力はあるが、基材である織物の織目の結合力を向上させ針や鋭利なものの進入に抵抗力がある。
【0010】
樹脂の種類では、フッ素樹脂またはポリ塩化ビニル(PVC)などが突刺し抵抗力が高く好ましい。
【0011】
上記の樹脂のコーティングは生地の片面または両面にコーティングしても良い。また加工方法としてラミネートや、塗布、浸漬などの方法などがある。樹脂のコーティング量は、150g/mから300g/mの範囲が好ましい。
【0012】
上記の樹脂のコーティングは生地の基材は、特定の材料に限定されない。具体的には、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、超強度ポリエチレン、綿などの天然繊維の織物で、コーティング可能な柔軟で強固なものが望ましい。また基材は、突刺し抵抗性を高めるためにも高密度織物が望ましい。
【0013】
また上記の積層シートに、高強度繊維からなる生地を含むと、耐突刺し性および耐切創性の向上を高めることができるので好ましい。
【0014】
高強度繊維を構成する素材としては、超高分子量ポリエチレン繊維(例えば米国ハネウエル社「スペクトラ」オランダDSM社製、商品名「ダイニーマ」)および超強度ポリエチレンにグラスファイバーを複合した繊維、アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維(例えば株式会社クラレ製、商品名「ベクトラン」)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(例えば東洋紡株式会社製、商品名「ザイロン」)、ポリベンズイミダゾール繊維、ポリアミドイミド繊維(例えばローヌプーラン社製、商品名「ケルメル」)、LCP(液晶ポリマー)繊維などを1種類もしくは任意の2種類からなる複合繊維などでも良い。
【0015】
上記の耐突刺しおよび耐切創生地は、作業の必要性に応じて手袋であれば全体または、手の平と手の甲、または任意の部分などに設けることでも良い。
【0016】
上記の耐突刺し性生地は、作業の必要性に応じてエプロン、スリーブ、Tシャツなどの任意の部分などに設けることでも良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、樹脂コーティング生地を、1枚もしくは複数枚で構成することにより従来なく優れた耐突刺し性のある、防護衣、防護エプロン、防護手袋を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の実施形態を示した説明図である。耐突刺し性手袋。
【図2】図2は本発明の実施形態の、積層シートの構成図である。
【図3】図3は本発明の実施形態を示した説明図である。防護衣。
【図4】図4は本発明の実施形態の、突刺し抵抗などの測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の防護手袋実施形態を図面に基づき説明する。
図1で示す突刺抵抗性手袋(1)は、皮革、合成革、各種生地からなる外層(2)と皮革、合成革、各種生地からなる内層(3)の間に1枚以上の積層シート(4)で構成されます。積層シート積層シート(4)は樹脂コーティング生地(5)で、図1の手の平側・甲側の両方もしくはどちら片方でも構成されます。また手袋の外層(2)および内層(3)が、樹脂コーティング生地(5)が使われていても問題はない。
【0020】
本発明のエプロンを含む防護衣実施形態を図面に基づき説明する。
図3で示す突刺抵抗性防護衣(7)は、皮革、合成革、各種生地からなる外層(2)と皮革、合成革、各種生地からなる内層(3)の間に1枚以上の積層シート(4)で構成されす。積層シート(4)は樹脂コーティング生地(5)でも構成されます。また防護衣の外層(2)および内層(3)が、樹脂コーティング生地(5)が使われていても問題はない。
【0021】
一方、高強度繊維(6)は、上記樹脂コーティング生地(5)より内側に配置して耐切創性などを高めるが、要求する防護により材質やその有無は決められる。
【0022】
樹脂コーティング生地(5)の基材は、例えば、ポリエステルの平織りであり、1インチ当たり45本x45本の密度である。この基材の片面に樹脂コーティングしてある。上記の基材に片面の樹脂コーティングをしたが、本発明では基材の両面に樹脂コーティングしてもよい。
【0023】
樹脂コーティング生地は、ポリエステルマルチフィラメントを、緯糸および経糸密度45本/2.54cmの平織りにして基材を得た。この基材の片面にフッ素樹脂またはポリ塩化ビニルを塗布によりコーティングして、目付け560g/mの樹脂コーティング生地を得た。
【0024】
上記の生地等を用いて製作した実施例は以下の通りである。
【実施例1】
積層シート(4)として1枚のフッ素樹脂コーティング生地を使用。
【実施例2】
積層シート(4)として2枚のフッ素樹脂コーティング生地を使用。
【実施例3】
積層シート(4)として1枚のポリ塩化ビニル生地を使用。
【実施例4】
積層シート(4)として2枚のポリ塩化ビニル生地を使用。
【実施例5】
積層シート(4)として3枚のフッ素樹脂コーティング生地を使用。
【0025】
また比較のために用いた検体は以下の通りです。
比較例1: ケプラー200デニール平織りを 4枚積層
【0026】
突刺し抵抗性の測定は、圧縮測定装置(日本計測システム株式会社、JSV−H1000およびプッシュプールゲージ HF−20)を用いて注射針(21ゲージ直径は0.6mm)およびアイスピックを降下速度50mm/分に設定して降下させ、その針が検体に突き刺ささるときの最大応力を測定し、n=6の平均値で算出した。
【0027】
上記の測定結果は図4の比較表に示す。
【0028】
上記の測定結果から以下のことが明らかになった。
(1)実施例1および実施例3ではアラミド繊維4層の比較例1に比べて、注射針21Gの突刺し試験では、ほぼ同程度の抵抗値が得られた。
(2)実施例2および実施例4ではアラミド繊維4層の比較例1に比べて、注射針21Gの突刺し試験では、約1.7倍の抵抗値が得られた。
(3)実施例5ではアラミド繊維4層の比較例1に比べて、注射針21Gの突刺し試験では、約2.5倍の抵抗値が得られた。またアイスピックに関しては比較例1に比べて88%の抵抗値が得られた。
【0029】
上記の実施形態で説明した防護生地は、当発明を具体化した1例であり、材質や厚さ、繊維の繊度、織密度、積層枚数、配置、コーティング樹脂の種類、その樹脂コーティングの厚さなどは限定するものでなく、本発明の特許請求の範囲内において変更ができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の防護生地は、手袋、エプロン、防護衣など耐突刺し性に優れ、鋭利な突起物を有する処理物や工具などを扱う作業用防護衣や手袋に最適である。
【符号の説明】
【0031】
1 手袋
2 外層
3 内層
4 積層シート
5 樹脂コーティング生地
6 高強度繊維
7 防護衣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層(2)、内層(3)、積層シート(4)のどれかに少なくとも1層の樹脂コーティング生地(5)を含むことを特徴とする手袋または防護衣用の生地。樹脂コーティング生地(5)の基材は、平織りであり材質はポリエステル、ナイロン、ガラス繊維、アラミド繊維、超強度ポリエレンなどであり1インチ当たり30本x30本以上の密度がある生地であり、この樹脂コーティング量は150g−300g/mの範囲であり、目付けは350−750g/mの範囲にある防護生地。
【請求項2】
上記樹脂コーティング生地(5)のコーティング材料がフッ素樹脂またポリ塩化ビニルである事を特徴とする防護生地。
【請求項3】
樹脂のコーティング生地(5)のコーティングは生地の片面または両面にコーティングされてることを特徴とする防護生地。
【請求項4】
上記の積層シート(4)に高強度繊維生地(6)を含む、請求項1の記載の防護生地。
【請求項5】
請求項1から4の防護生地を使用した手袋、防護衣など。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate