説明

耐震免震体験解説装置

【課題】住宅建物における耐震構造および免震構造と、地震に対して備えることの重要性とをわかり易く説明することができる耐震免震体験解説装置を提供する。
【解決手段】住宅展示棟10内に、起振装置11が設けられるとともに、この起振装置11上に横並びに耐震住宅2と免震住宅3とが設けられ、起振装置11横には、この起振装置11上の耐震住宅2と免震住宅3とを一階および二階から見学する通路12が形成され、耐震住宅2および免震住宅3は、少なくともこの通路12に面した部分に、耐震構造および免震構造が露出するようになされたものである。また、起振装置11上に免震住宅3のみが設けられ、免震装置を機能させたり、機能停止させたりできるようになされたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅建物における耐震構造および免震構造の効果をわかり易く説明するための体験解説装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅建物においては、地震が発生した場合に備えて、数々の耐震構造や免震構造が施されている。
【0003】
これらの耐震構造や免震構造は、住宅建物のカタログに紹介したり、展示住宅に訪れた購入予定者に、口頭で説明したりしていた。そして、この説明によって、耐震構造や免震構造に優れた住宅建物とはどのようなものであるのかを理解してもらっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、耐震構造や免震構造に関して専門知識の無い者がカタログのみで説明することは難しく、展示住宅に訪れた購入予定者に対しても充分に説明することができない。
【0005】
また、住宅購入予定者も耐震構造や免震構造に関して専門知識の無い場合がほとんどであるため、専門知識のある者から説明を受けても充分に理解することができない。
【0006】
特に、耐震構造や免震構造は、住宅建物の目に見えない内部の基礎や躯体の構造に起因するものであるため、説明したり、理解したりすることが難しく、また、それ以前に地震に対して備えることの重要性を説明したり、理解したりすることが難しい。
【0007】
本発明は、係る実情に鑑みてなされたものであって、住宅建物における耐震構造および免震構造と、地震に対して備えることの重要性とをわかり易く説明することができる耐震免震体験解説装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の耐震免震体験解説装置は、住宅展示棟内に、起振装置が設けられるとともに、この起振装置上に横並びに耐震住宅と免震住宅とが設けられ、起振装置横には、この起振装置上の耐震住宅と免震住宅とを一階および二階から見学する通路が形成され、耐震住宅および免震住宅は、少なくともこの通路に面した部分に、耐震構造および免震構造が露出するようになされたものである。
【0009】
また、上記課題を解決するための本発明の耐震免震体験解説装置は、住宅展示棟内に、起振装置が設けられるとともに、この起振装置上に免震住宅が設けられ、起振装置横には、この起振装置上の免震住宅を一階および二階から見学する通路が形成され、免震住宅は、少なくともこの通路に面した部分に、耐震構造および免震構造が露出するようになされるとともに、免震装置を機能させたり、機能停止させたりできるようになされたものである。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように、本発明によれば、住宅建物における耐震構造や免震構造による効果やその重要性を、住宅展示棟内に設けられた住宅建物を利用してわかり易く説明することができる。また、見学者は容易に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0012】
図1は耐震免震体験解説装置1の要部構成の概略を示し、図2および図3は同耐震免震体験解説装置1の一階および二階を示している。
【0013】
すなわち、この耐震免震体験解説装置1は、住宅展示棟10内に起振装置11が設けられるとともに、この起振装置11上に耐震住宅2と、免震住宅3とを設けて構成されている。
【0014】
住宅展示棟10は、その一階部分に、耐震住宅2と免震住宅3とを横並びに設けることができる巨大な起振装置11が設けられている。また、この起振装置11上に設けられた耐震住宅2と免震住宅3との正面は、それぞれ一階および二階に見学通路12が設けられている。この一階と二階との見学通路12の間は、耐震住宅2と免震住宅3とに対向する見学通路12の背後に設けられた階段13を介して行き来できるようになされている。この見学通路12と起振装置11との間には、手摺り12aが設けられて見学通路12の人が不用意に起振装置11上へと行けないようになされている。この手摺り12aのうち、耐震住宅2および免震住宅3の一階の掃き出し窓21、31と対向する部分には、一部分がスライド開閉できるようになされた出入口14が設けられている。この出入口14から起振装置11上に設けられた階段15を介して、耐震住宅2および免震住宅3へとそれぞれ入ることができるようになされている。見学者は、この出入口14から階段15を介して耐震住宅2および免震住宅3へと出入りできる以外は、見学通路12しか通れないようになされている。
【0015】
見学通路12の一端側は機械室16となされ、他端側は操作室17となされ、起振装置11の周囲は、機械室16と操作室17とを連絡するスタッフ専用通路18となされている。スタッフは、スタッフ専用通路18から、見学通路12、または免震住宅3内以外の場所に見学者がいないことを確認して安全確認をした後、操作室17へと入って起振装置11を操作する。この起振装置11は、軽度の地震(震度2程度)から強震(震度5)、烈震(震度6)、激震(震度7)といった各種の地震の震度と、その揺れ時間とを自由にコントロールすることができるようになされている。
【0016】
耐震住宅2は、約6畳程度の一部屋のみの平屋建てで構成されており、正面には掃き出し窓21が設けられている。また、背面にも引き違い窓22が設けられており、両側面にはドア23が設けられている。また、正面と両側面とは内壁および外壁が取り除かれ、耐震構造となる耐力壁軸組み24および耐力壁ブレース25が露出するようになされている。また、耐震住宅2の一階の内部にはテーブル41と椅子42と観葉植物43とが設けられており、テーブル41の上の天井からは電灯44がぶら下げられている。これらテーブル41と椅子42と観葉植物43とは、耐震住宅2内のマーキングされた所定の位置に設けるようになされており、起振装置11によって引き起こされる振動によってマーキングされた位置からどの程度移動するかを確認できるようになされている。
【0017】
耐震住宅2の二階は陸屋根26となされ、周囲を囲う手摺り27が設けられている。この陸屋根26上には、振動で揺れてもその後真っ直ぐに立ち直るいわゆる起き上がり鼓舞しの玩具45と、振動によって転跳するボール46とが設けられている。
【0018】
この耐震住宅2は、その基礎部分20が起振装置11にしっかりと固定された状態となされ、耐震住宅2が起振装置11の振動を受けるようになされている。
【0019】
免震住宅3は、上記耐震住宅2と同じように約6畳程度の一部屋のみの平屋建てで構成されており、正面には掃き出し窓31が設けられている。また、背面にも引き違い窓32が設けられており、両側面にはドア33が設けられている。また、正面と両側面とは内壁および外壁が取り除かれ、耐震構造となる耐力壁軸組み34および耐力壁ブレース35が露出するようになされている。また、免震住宅3の一階の内部にはテーブル41と椅子42と観葉植物43とが設けられており、テーブル41の上の天井からは電灯44がぶら下げられている。これらテーブル41と椅子42と観葉植物43とは、免震住宅3内のマーキングされた所定の位置に設けるようになされており、起振装置11によって引き起こされる振動によってマーキングされた位置からどの程度移動するかを確認できるようになされている。
【0020】
免震住宅3の二階は陸屋根36となされ、周囲を囲う手摺り37が設けられている。この陸屋根36上には、振動で揺れてもその後真っ直ぐに立ち直るいわゆる起き上がり鼓舞しの玩具45と、振動によって転跳するボール46とが設けられている。
【0021】
この免震住宅3は、起振装置11の上に、免震支承5とオイルダンバー6とを介して基礎部分30を設けるようになされている。免震支承5は、傾斜の浅い皿状になった受け皿51上に、球体状の支持球52が遊動可能に設けられて構成されており、この支持球52には、受け皿51を被覆し、免震住宅3の基礎部分30を支承するフランジ53が一体に設けられている。この免震支承5は、免震住宅3の基礎部分30の四隅に相当する位置に設けられる。起振装置11による振動が起こると、受け皿51内で支持球52が遊動するが、受け皿51自体が傾斜の浅い皿状になっているので、支持球52は傾斜に沿って直ぐに元の受け皿51の底に戻ろうとしながら遊動する。したがって、起振装置11によって震度7以上の激震が発生しても、免震支承5によって受け皿51内の支持球52が直ぐに元の位置に戻ろうとしながら遊動するので、この支持球52に一体化されたフランジ53上に設けられた免震住宅3は、起振装置11からの振動が免震される。また、振動が収まった後、免震住宅3は、振動が発生する前の元の位置に戻る。また、オイルダンパー6は、その一端が起振装置11に固定され、他端が免震住宅3の基礎部分30に固定され、免震支承5における受け皿51内での支持球52の遊動をある程度緩和するようになされている。このオイルダンパー6は、免震住宅3の間口方向および奥行き方向に設けられる。間口方向に沿って設けられたオイルダンパー6は、免震住宅3の正面から見た時に、免震支承5とともに見学通路12から見えるように基礎部分30の下に露出するように設けられている。
【0022】
次に、このようにして構成される耐震免震体験解説装置1によって、住宅購入予定の見学者に解説を行う方法について説明する。
【0023】
まず、案内員は、住宅展示棟10の一階の見学通路12に案内する。
【0024】
案内後、耐震免震体験解説装置1のスタッフは、起振装置11付近の危険な位置に見学者がいないことを確認し、起振装置11を作動させる。
【0025】
起振装置11は震度4程度の弱震から震度7の激震までを再現する。この際、案内員は、起振装置11によって揺れる耐震住宅2と免震住宅3を目の前にして、見学通路12から見学する見学者に対して耐震住宅2と免震住宅3との違いを容易に説明することができる。
【0026】
つまり、耐震住宅2では、耐震住宅2の外の起振装置11上に設けた観葉植物43と比べて耐震住宅2内の観葉植物43の揺れが小さく、耐震住宅2内のテーブル41、椅子42、電灯44などはそれほど移動しない。特に、震度4程度では、免震住宅3と略同程度の揺れ具合で終わる。また、震度7の激震の再現後であっても、耐震住宅2は、耐力壁軸組み24や耐力壁ブレース25が有効に作用し、全く壊れることもなく安全である点を実際に目で見て確認してもらうことができる。
【0027】
また、免震住宅3では、免震住宅3の外の起振装置11上に設けた観葉植物43と比べて免震住宅3内の観葉植物43の揺れが上記耐震住宅2よりも増してさらに小さく、免震住宅3内のテーブル41、椅子42、電灯44などもほとんど移動しない。特に、震度7程度の激震になった場合において免震住宅3は、耐震住宅2よりも揺れ具合が少なく、免震支承5やオイルダンパー6が有効に作用している点を実際に目で見て確認してもらうことができる。
【0028】
次に、案内した見学者のうちの数名に耐震住宅2内に入って椅子42に着席してもらう。着席後、スタッフが安全を確認し、起振装置11を作動させる。
【0029】
起振装置11は震度4程度の弱震から震度7の激震までを再現する。この際、見学者は、起振装置11によって揺れる耐震住宅2の性能を身を持って体験することができる。つまり、耐震住宅2内から窓越しに見える起振装置11上の観葉植物43の揺れに比べて耐震住宅2自体の揺れが少なく、かつ耐震住宅2が壊れることなく安全であることを体験することができる。
【0030】
また、耐震住宅2での揺れの体験後、免震住宅3内に入って椅子42に着席してもらう。着席後、スタッフが安全を確認し、起振装置11を作動させる。
【0031】
起振装置11は震度4程度の弱震から震度7の激震までを再現する。この際、見学者は、起振装置11によって揺れる免震住宅3の性能を身を持って体験することができる。つまり、免震住宅3内から窓越しに見える起振装置11上の観葉植物43の揺れに比べて免震住宅3自体の揺れが少なく、かつ免震住宅3が壊れることなく安全であることを体験することができる。また、震度7の激震時には、先に体験した耐震住宅2と比較しても揺れが少なく安全であることを体験することができる。
【0032】
次に、案内員は、階段13から二階の見学通路12へと見学者を案内し、前記と同様に、起振装置11によって震度4程度の弱震から震度7の激震までを再現する。この際、二階は、一階と比べて大きな加速度がかかり揺れが強調されるので、案内員は、耐震住宅2および免震住宅3のそれぞれの二階の陸屋根26、36に設けた玩具45やボール46の動きを見学者に見てもらうことで、揺れの凄さを見てもらうことができる。その中でも免震住宅3は耐震住宅2に比して揺れが軽減されていることも実際に目で見て確認してもらうことができる。
【0033】
このように、この耐震免震体験解説装置1によると、案内員は、耐震住宅2と免震住宅3との違い、特に震度の違いによる両者の違いや、地震に備えることの重要性を、実際の耐震住宅2および免震住宅3を使って判り易く解説することができる。同時に、購入予定の見学者は、容易に理解することができることとなる。
【0034】
なお、本実施の形態において、起振装置11は、震度4程度の弱震から震度7の激震までを再現するようになされているが、再現する震度については特に限定されるものではなく、所望の震度で所望の時間にわたって振動させるものであってもよい。
【0035】
また、本実施の形態において、耐震免震体験解説装置1は、起振装置11上に耐震住宅2と免震住宅3とが横並びに設けられているが、図4に示すように、起振装置11上にロックアウト可能なオイルダンパー6を備えた免震住宅3のみを設けたものであってもよい。この場合、オイルダンパー6を機能させれば免震支承5も機能して免震住宅3となるが、このオイルダンパー6をロックアウトして免震支承5およびオイルダンパー6が機能しないようにすれば、通常の耐震住宅2となる。したがって、上記耐震免震体験解説装置1のように耐震住宅2と免震住宅3とを同時に見ることはできないが、一つの住宅建物で耐震住宅2と免震住宅3との違いを体験、解説することができる。図4において、図1ないし図3と対応する部材には同符号を付して説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
住宅建物の販売促進を図る装置として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る耐震免震体験解説装置の要部構成の概略を示す正面図である。
【図2】本発明に係る耐震免震体験解説装置の一階部分の間取り図である。
【図3】本発明に係る耐震免震体験解説装置の二階部分の間取り図である。
【図4】(a)および(b)は本発明に係る耐震免震体験解説装置の他の実施の形態を示す一階部分および二階部分の間取り図である。
【符号の説明】
【0038】
1 耐震免震体験解説装置
10 住宅展示棟
11 起振装置
12 見学通路
2 耐震住宅
24 耐力壁軸組み(耐震構造)
25 耐力壁ブレース(耐震構造)
3 免震住宅
34 耐力壁軸組み(耐震構造)
35 耐力壁ブレース(耐震構造)
5 免震支承(免震構造)
6 オイルダンパー(免震構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅展示棟内に、起振装置が設けられるとともに、この起振装置上に横並びに耐震住宅と免震住宅とが設けられ、起振装置横には、この起振装置上の耐震住宅と免震住宅とを一階および二階から見学する通路が形成され、耐震住宅および免震住宅は、少なくともこの通路に面した部分に、耐震構造および免震構造が露出するようになされたことを特徴とする耐震免震体験解説装置。
【請求項2】
住宅展示棟内に、起振装置が設けられるとともに、この起振装置上に免震住宅が設けられ、起振装置横には、この起振装置上の免震住宅を一階および二階から見学する通路が形成され、免震住宅は、少なくともこの通路に面した部分に、耐震構造および免震構造が露出するようになされるとともに、免震装置を機能させたり、機能停止させたりできるようになされたことを特徴とする耐震免震体験解説装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−208562(P2006−208562A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18240(P2005−18240)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】