耐震構造体験装置
【課題】この発明は、建造物に使用される耐震構造の原理を顧客等に伝えるための耐震構造体験装置に関する。
【解決手段】この発明の耐震構造体験装置1は、建造物に用いられる耐震構造の原理を説明するための耐震構造体験装置1であって、4本の棒部材2の両端部が互いに回動自在に連結固定されなる略矩形の架構部材3と、両端部が該架構部材3の頂点部に対角線状にそれぞれ回動自在に連結固定された2本のブレース4と、該ブレース4のそれぞれに設けられ、且つ、該ブレース4を伸縮自在とする調節部材5とを具備するブレース構造模型6と、幅方向に長尺に形成され両端部が前記架構部材3にそれぞれ回動自在に固定されたパネル部材7が、高さ方向に並設されるパネル構造模型8と、弾性を有する4本の弾性棒部材9の両端部が連結部材10を介して互いに連結されてなる略矩形のラーメン構造模型11とを備えている。
【解決手段】この発明の耐震構造体験装置1は、建造物に用いられる耐震構造の原理を説明するための耐震構造体験装置1であって、4本の棒部材2の両端部が互いに回動自在に連結固定されなる略矩形の架構部材3と、両端部が該架構部材3の頂点部に対角線状にそれぞれ回動自在に連結固定された2本のブレース4と、該ブレース4のそれぞれに設けられ、且つ、該ブレース4を伸縮自在とする調節部材5とを具備するブレース構造模型6と、幅方向に長尺に形成され両端部が前記架構部材3にそれぞれ回動自在に固定されたパネル部材7が、高さ方向に並設されるパネル構造模型8と、弾性を有する4本の弾性棒部材9の両端部が連結部材10を介して互いに連結されてなる略矩形のラーメン構造模型11とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物に使用される耐震構造の原理を顧客等に伝えるための耐震構造体験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本に建てられている建造物には、日本の風土上、地震が頻繁に起こることを考慮して、耐震構造が備えられている。そして、そのような耐震構造としては、以下のようなものが考案されている。
【0003】
例えば、図15に示すように、建造物Hに例えば縦筋101と横筋102とを略矩形に結合した枠体103の頂点部分同士を対角線状に連結するブレース104が設けられたブレース構造201や、図16に示すように、建造物Hに柱105と梁106とを略矩形に結合した枠体107を覆うようにしてパネル108が取付けられたパネル構造202や、図17に示すように、建造物Hに柱108と梁109とがトルシア型ハイテンションボルト等で、該柱108と該梁109とが略一体となるように剛接合されたラーメン構造203が挙げられる。
【0004】
しかし、建造物の施工が完成した後には、上述のような構造は該建造物の壁内部にあり、外見上確認することが不可能である。しかし、該建造物を購入する顧客に対して、これらの耐震構造が、地震の際にその揺れが各部材にどのように力を及ぼし、これらを抑制するか等、耐震構造の原理についてを説明する機会が多くある。また、これらの耐震構造の設計や該耐震構造を備えた建造物を販売する会社の新入社員等にも、業務遂行のために、耐震構造の原理を周知させておく必要がある。しかし、これらの耐震構造の原理は、図やイラスト、若しくは単なる説明だけでは、容易に理解することは困難である。そのため、耐震構造のエネルギーの吸収作用を説明する装置であって、図18に示すように、縦部材301と横部材302の両端部がピン303によって回動自在に固定され、同時に該ピン303によって、屈曲変形可能な斜め部材304が、対角線状に回動自在に固定された模型305を矢印306の方向に力を作用することで該模型305を変形させるものが考案されている(例えば特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−184600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したような模型を用いてブレース構造の説明を行う際にも、耐震構造に係る構造の一部しか説明することができず、また、他の耐震構造との比較や検討をすることができない。さらに、上述したような耐震構造の原理を系統的に顧客等に説明し、理解してもらうことも困難であった。
【0007】
この発明は上記のような種々の課題を解決することを目的としてなされたものであって、大掛かりな実験や、装置を必要とすることなく、代表的な耐震構造に係る、各耐震構造模型に直接手で触れ、変形させることで、系統的にこれらの原理や、地震の際にどのように力が作用するかを、顧客等に理解させることのできる耐震構造体験装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の耐震構造体験装置は、建造物に用いられる耐震構造の原理を説明するための耐震構造体験装置であって、4本の棒部材の両端部が互いに回動自在に連結固定されなる略矩形の架構部材と、両端部が該架構部材の頂点部に対角線状にそれぞれ回動自在に連結固定された2本のブレースと、該ブレースのそれぞれに設けられ、且つ、該ブレースを伸縮自在とする調節部材とを具備するブレース構造模型と、幅方向に長尺に形成され両端部が前記架構部材にそれぞれ回動自在に固定されたパネル部材が、高さ方向に並設されるパネル構造模型と、弾性を有する4本の弾性棒部材の両端部が連結部材を介して互いに連結されてなる略矩形のラーメン構造模型とを備えることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の耐震構造体験装置は、請求項1記載の耐震構造体験装置において、前記各構造模型の背面が、それぞれの構造模型を幅方向、及び上下方向にガイドするガイド部材を介して支持板に支持されることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の耐震構造体験装置は、請求項1又は2記載の耐震構造体験装置において、前記パネル構造模型のパネル部材の外側面に、幅方向に所定間隔をあけ、高さ方向に並設される各パネル部材に渡って略鉛直方向に基準線が跨設されることを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の耐震構造体験装置は、請求項1乃至3記載の耐震構造体験装置において、前記ブレース構造模型の調節部材に、前記ブレースの伸縮長を視認するための突起部が設けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の耐震構造体験装置によれば、耐震構造の代表的な、ブレース構造、パネル構造、ラーメン構造に係る構造模型を備えているので、各構造模型に直接手で触れ、変形させることで、系統的にこれらの原理や、地震の際にどのように力が作用するかを、顧客等に理解させることができる。また、それぞれの構造同士を比較することで、それぞれの違いをより明確に知ることができると共に、個々の構造の理解をより深めることができる。
【0013】
請求項2記載の耐震構造体験装置によれば、それぞれの構造模型の背面が、構造模型を幅方向、及び上下方向にガイドするガイド部材を介して支持板に支持されている。そのため、顧客等が構造模型に触れている際に、該構造模型が転倒する等して、構造模型は破損する、若しくは、顧客等が転倒した構造模型に接触して負傷する等の問題が生じるおそれがない。また、顧客等が各構造模型をその側面から押圧し、変形の様子を見る際にも、該構造模型がガイド部材にガイドされるようにして変形等するので、押圧の仕方によらず、それぞの顧客等が看取する状況を統一することができる。
【0014】
請求項3記載の耐震構造体験装置によれば、前記パネル構造模型のパネル部材の外側面に、幅方向に所定間隔をあけ、高さ方向に並設される各パネル部材に渡って略鉛直方向に基準線が跨設されている。そのため、顧客等がパネル構造模型を側面から押圧し変形の様子を視認する際に、一方のパネル部材の基準線と、その上方、若しくは、下方の他方のパネル部材の基準線とのずれを比較することによって、パネル構造模型の変形の程度を知ることができ、パネル構造において、どの程度のせん断力が生じているのかを、間接的に把握することができる。
【0015】
請求項4記載の耐震構造体験装置によれば、前記ブレース構造模型の調節部材に、ブレースの伸縮長を視認するための突起部が設けられている。そのため、顧客等がブレース構造模型を側面から押圧し変形の様子を視認する際に、一方のブレースは伸び、他方のブレースは縮むが、これらのブレースがどの程度伸縮しているかを容易に視認することができ、ブレース構造において、どの程度の引張力や圧縮力が生じているのかを、間接的に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明における耐震構造体験装置の最良の実施形態について、以下に説明する。この実施形態の耐震構造体験装置1は、建造物に用いられる耐震構造の原理を説明するための耐震構造体験装置1であって、図3に示すように、4本の棒部材2の両端部が互いに回動自在に連結固定されなる略矩形の架構部材3と、両端部が該架構部材3の頂点部に対角線状にそれぞれ回動自在に連結固定された2本のブレース4と、該ブレース4のそれぞれに設けられ、且つ、該ブレース4を伸縮自在とする調節部材5とを具備するブレース構造模型6と、図7に示すように、幅方向に長尺に形成され両端部が前記架構部材3にそれぞれ回動自在に固定されたパネル部材7が、高さ方向に並設されるパネル構造模型8と、図11に示すように、弾性を有する4本の弾性棒部材9の両端部が連結部材10を介して互いに連結されてなる略矩形のラーメン構造模型11とを備えている。
【0017】
前記架構部材3は、図3に示すように、4本の棒部材2の両端部が互いに回動自在に連結固定されてなる略矩形の部材である。そして、棒部材2は、本実施形態においては、強度や耐久性の観点から鋼性の部材を使用しており、該棒部材2は、図3に示すように、略四角柱形状となるように形成されている。また、棒部材2の両端部には、他の棒部材2の両端部と連結するための連結段部12が形成されており、該連結段部12は、図9に示すように、該棒部材2の端部から所定長さ、その肉厚を略半分程度取除いたような形状とし、該連結段部12は、本実施形態においては、図3に示すように、棒部材2の同じ側の面に形成されている。
【0018】
そして、棒部材2には、連結段部12を貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔に固定ピン12aが挿通されることで、棒部材2の端部同士が互いに回動自在に連結固定されている。また、このように棒部材2が互いに連結される際には、図3に示すように、該連結段部12の凹んだ箇所同士を互いに連結している。そして、連結段部12は、本実施形態のように、棒部材2の同じ側の面に形成されていてもよいが、一方の連結段部12の反対側の面に他方の連結段部12が設けられていてもよい。また、上述のような、棒部材2の連結方法は、本実施形態のものに限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0019】
前記ブレース構造模型6に使用されるブレース4は、図3に示すように、その両端部が架構部材3の対角線上の頂点部にそれぞれ回動自在に連結固定されている。そして、ブレース4は、建造物の耐震構造に使用されるブレースを想定するものであって、鋼性の部材から形成されてなるものである。また、ブレース4は、上述のように形成された架構部材3における、一方の棒部材2の連結段部12と、他方の棒部材2の連結段部12との間に、該ブレース4の両端部が介在するように設けられている。さらに、ブレース4の両端部にも貫通孔(不図示)が設けられているため、棒部材2と共に固定ピン12bによって回動自在に架構部材3の頂点部に固定されている。
【0020】
そして、ブレース4には、図4に示すように、該ブレース4を伸縮自在とする調節部材5が設けられている。そのため、ブレース構造模型6を顧客等が側面から押圧した際には、架構部材3の各頂点部、及びブレース4の両端部が回動自在に固定されており、さらに、一方のブレース4aが伸び、他方のブレース4bが縮むことにより図4に示すように、該ブレース構造模型6全体が変形するのである。そして、調節部材5は、図5に示すように、上方ブレース4cの下端部が、略円筒状に形成され、且つ、長さ方向にスリット13が形成されたシリンダ14の上端から一部が挿通固定され、下方ブレース4dの上端部が該シリンダ14の内壁に沿って可動となるように該シリンダ14の下端から挿通されている。
【0021】
そして、図5に示すように、上方ブレース4cの下端部、及び下方ブレース4dの上端部であって、スリット13が設けられている箇所には、ブレース4の伸縮長を視認することができるように、突起部15が設けられている。さらに、該突起部15が設けられていることにより、下方ブレース4dがシリンダ14の下端部から引抜けることがない。また、一方の調節部材5aのシリンダ14内部における、下方ブレース4dの上端部とシリンダ14の下端部との間にはバネ16が設けられている。そして、他方の調節部材5bのシリンダ14内部における、上方ブレース4cの下端部と下方ブレース4dの上端部との間にもバネ16が設けられている。そのため、ブレース構造模型6を顧客等が側面から押圧した際には、図4に示すように、変形すると共に、一方の調節部材5a内部のバネ16、及び他方の調節部材5b内部のバネ16が、図5に示す状態Aから状態Bのように圧縮される。しかし、顧客等がその押圧をやめた際には、前述のように圧縮されたバネ16の弾性力によって状態Bから状態Aへとバネ16が復元し、図4に示すように、ブレース構造模型6も元の状態へと戻るのである。
【0022】
また、本実施形態においては、図5に示すように、ブレース構造模型6に外力が作用しない状態では、一方の調節部材5aにおいて、上方ブレース4cの下端部と下方ブレース4dの上端部とが当接し、また、他方の調節部材5bにおいて、下方ブレース4dの突起部15がスリット13の下端部に当接している。そのため、ブレース構造模型6は、図4に示すように、棒部材2に取付けられた矢印Yの方向に押圧した場合にのみ、該ブレース構造模型6は変形し、該矢印Yと反対側に押圧した際には、該ブレース構造模型6は変形することがないようになっている。しかし、調節部材5の構成は本実施形態のものに限定されるものではなく、ブレース4の伸縮を調節できるものであれば適宜変更することができる。
【0023】
前記パネル構造模型20に使用されるパネル部材7は、図7に示すように、幅方向に長尺に形成された略矩形の薄板状の部材であり、上述したような架構部材3に取付けられている。そして、パネル部材7は成型加工の容易性の観点から、例えば合成樹脂等から形成されているが、その他金属製であってもよい。また、本実施形態においては、図7に示すパネル部材7のうち、最上部のパネル部材7、及び最下部のパネル部材7は、架構部材3を構成する水平方向に設けられた棒部材2にそれぞれネジS1等で固定されている。そして、最上部のパネル部材7と、最下部のパネル部材7との間のパネル部材7は、両端部がそれぞれ回動自在となるように、架構部材3を構成する鉛直方向に設けられた棒部材2にネジS1等で固定されている。
【0024】
また、パネル部材7同士の間は、図9に示すように、該パネル部材7の上端に凸部7aが形成され、下端には凹部7bが形成されている。そのため、複数のパネル部材7を、図7に示すように、高さ方向に並設する際には、凹部7bに凸部7aが嵌入するようにして結合されている。そのため、顧客等が、パネル構造模型8を側面から、パネル部材7に取付けられた矢印Yの方向へ押圧した際には、図8に示すように、該パネル構造模型8が変形すると共に、図9に示すように、パネル部材7が、その下方のパネル部材7にガイドされるのである。また、パネル構造模型8が、図8に示すように、変形した際には、該架構部材3を構成する水平方向の棒部材2同士の垂直距離が、若干小さくなる。そのため、パネル部材7同士を、上述したように高さ方向に結合する際には、図9に示すように、凹部7bと凸部7aとの間に隙間Tが生じるように設計されている。
【0025】
さらに、パネル部材7の外側面には、図7に示すように、幅方向に所定間隔をあけ、高さ方向に並設される各パネル部材7に渡って略鉛直方向に、基準線17が跨設されている。そして、基準線17は、パネル部材7の外側面に、塗料等で書かれてあったり、若しくは、溝が形成され該溝を塗料等で強調するようにしてもよい。また、これらのパネル部材7の架構部材3への取付方法、及びパネル部材7同士の結合方法等は本実施形態の構成に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0026】
前記ラーメン構造模型11に使用される弾性棒部材9は、図11に示すように、略四角柱形状に形成されている。そして、ラーメン構造模型11は、図12に示すように、顧客等が側面から、連結部材12に取付けられた矢印Y方向へ押圧することで該ラーメン構造模型11が変形するように形成されている。そのため、弾性棒部材9は、度重なる変形に耐え、その変形から該弾性棒部材9の弾性力で自然に元の状態に戻り、且つ、塑性変形することのないように、例えば、SBR(Styrene-butadiene rubber)等が用いられている。また、弾性棒部材9は、図11に示すような、略L字型の連結部材10と該弾性棒部材9の両端部とが互いに連結されると共にピンP等で固定され、略矩形となるように形成されている。
【0027】
上述したような、図3、図7、及び、図11に示す各構造模型20は、それぞれ、板状部材18上に溶接や、金具等で適宜取付けられ、さらに、該板状部材18が載台19上にネジS2等で固定されている。そして、各構造模型20は、その背面が、それぞれの構造模型20を幅方向、及び上下方向にガイドするガイド部材21を介して支持板22に支持されている。
【0028】
支持板22は、本実施形態においては、図14に示すように、各構造模型20を確実に支持することができるように、板状部材18に立設する垂直板部22aと、該垂直板部22aの両端から略垂直方向に高さ方向に渡って張り出す側面板22bと、該側面板22bと垂直板部22aの下端部にこれらと略垂直方向に形成された底板部22cとを具備している。そして、各構造模型20と共に、板状部材18の上面に底板部22cがネジS3等により固定されている。また、本実施形態においては、支持板22は、例えば透明のアクリル系の合成樹脂から形成されていので、これらの構造模型が設置されているスペースにおいて、顧客等に閉塞感を感じさせることがなく、広々とした開放感を持たせることができる。また、支持板22には、構造模型20の各部分を説明するような、説明書き等が記載されていてもよい。
【0029】
ガイド部材21は、図14に示すように、支持板22の幅方向にネジS4等で取付けられた水平ガイドレール23aと、図13に示すように、中間部材24の一方面側に取付けられ該水平ガイドレール23aに沿って水平方向にガイドされる水平ガイド部材23bと、図13に示すように、中間部材24の他方面側に取付けられた垂直ガイドレール25aと、図3、図7、及び図11に示すように、各構造模型20の背面にネジ等で固定された取付板26に、図13に示すように、取付けられ該垂直ガイドレール25aに沿って垂直方向にガイドされる垂直ガイド部材25bとを具備している。これにより、顧客等が、各構造体模型20を押圧した際にも、これらが転倒することなく、各構造模型20が変形する際にも、ガイド部材21に従って垂直方向、及び水平方向にガイドすることができるのである。
【0030】
また、本実施形態においては、図2に示すように、ブレース構造模型6の背面には、例えば、鋼性の縦筋27aと横筋27bとを略矩形に結合した枠体27の頂点部分同士を対角線状に連結するブレース28が設けられたブレース構造体29が設置されている。そして、図6に示すように、パネル構造模型8の背面には、例えば、柱30aと梁30bとを略矩形に結合した枠体30を覆うようにしてパネル31が取付けられたパネル構造体32が設置されている。そして、図10に示すように、ラーメン構造模型11の背面には、例えば、鋼性の柱33aと梁33bとがトルシア型ハイテンションボルト等で、該柱33aと該梁33bとが略一体となるように剛接合されたラーメン構造体34が設置されている。そして、これらが、図1に示すように、配置されているのである。しかし、これらの、配置の順番や、配置の方法等は本実施形態のものに限定されるものではなく適宜変更することができる。
【0031】
以上のように構成された、耐震構造体験装置1の使用方法について以下に説明する。
【0032】
耐震構造体験装置1は、図1に示すように、展示スペース等に展示されており、各構造模型20に沿って、通路35が設けられているため、該展示スペースを訪れた顧客等は、該通路35を通り、順番に各構造模型20を視認すると共に、各構造模型20に直接手で触れ、変形させることで、系統的にこれらの原理や、地震の際にどのように力が作用するかを、理解することができる。
【0033】
まず、顧客等は、通路35に示された矢印36に従って、パネル構造模型8の場所まで行く。そして、顧客等が、図8に示すように、側面から矢印Yに従って押圧すると、該パネル構造模型8は変形し、さらに、その変形量を基準線17を通じて知ることができる。そして、パネル構造模型8の背面には、図6に示すように、実際に使用されているパネル構造体32が設置されているので、耐震構造に係るパネル構造の原理の理解をより深めることができる。
【0034】
そして、前述のように、パネル構造の原理を理解することができた顧客等は、通路35を進み、ラーメン構造模型11の場所まで行く。そして、顧客等が、図12に示すように、側面から矢印Yに従って押圧すると、該ラーメン構造模型11は変形する。そして、ラーメン構造模型11の背面には、図10に示すように、実際に使用されているラーメン構造体34が設置されているので、耐震構造に係るラーメン構造の原理の理解をより深めることができる。
【0035】
そして、前述のように、パネル構造の原理とラーメン構造の原理を理解することができた顧客等は、通路35をさらに進み、ブレース構造模型6の場所まで行く。そして、顧客等が、図4に示すように、側面から矢印Yに従って押圧すると、該ブレース構造模型6は変形し、さらに、その変形に伴うブレース4の伸縮状況を視認することができる。そして、ブレース構造模型6の背面には、図2に示すように、実際に使用されているブレース構造体29が設置されているので、耐震構造に係るブレース構造の原理の理解をより深めることができる。
【0036】
このように、顧客等が、代表的な耐震構造に係る、各構造模型20に直接手で触れ、変形させることで、系統的にこれらの原理や、地震の際にどのように力が作用するかを容易に理解することができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る耐震構造体験装置1は、本実施形態のように顧客等に説明する状況だけでなく、物理学の実験等においても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係る耐震構造体験装置の全体斜視図
【図2】本実施形態に係るブレース構造模型と実際の建造物に使用されるブレース構造体の全体斜視図
【図3】本実施形態に係るブレース構造模型の全体斜視図
【図4】本実施形態に係るブレース構造模型の全体正面図
【図5】本実施形態に係る調節部材の拡大正面図
【図6】本実施形態に係るパネル構造模型と実際の建造物に使用されるパネル構造体の全体斜視図
【図7】本実施形態に係るパネル構造模型の全体斜視図
【図8】本実施形態に係るパネル構造模型の全体正面図
【図9】本実施形態に係るパネル構造模型の拡大斜視図
【図10】本実施形態に係るラーメン構造模型と実際の建造物に使用されるパネル構造体の全体斜視図
【図11】本実施形態に係るラーメン構造模型の全体斜視図
【図12】本実施形態に係るラーメン構造模型の全体正面図
【図13】本実施形態に係るガイド部材の拡大斜視図
【図14】本実施形態に係る支持部材の背面斜視図
【図15】ブレース構造を具備する建造物を示す模式図
【図16】パネル構造を具備する建造物を示す模式図
【図17】ラーメン構造を具備する建造物を示す模式図
【図18】従来の耐震壁の説明装置と示す図
【符号の説明】
【0039】
1 耐震構造体験装置
2 棒部材
3 架構部材
4 ブレース
5 調節部材
6 ブレース構造模型
7 パネル部材
8 パネル構造模型
9 弾性棒部材
10 連結部材
11 ラーメン構造模型
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物に使用される耐震構造の原理を顧客等に伝えるための耐震構造体験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本に建てられている建造物には、日本の風土上、地震が頻繁に起こることを考慮して、耐震構造が備えられている。そして、そのような耐震構造としては、以下のようなものが考案されている。
【0003】
例えば、図15に示すように、建造物Hに例えば縦筋101と横筋102とを略矩形に結合した枠体103の頂点部分同士を対角線状に連結するブレース104が設けられたブレース構造201や、図16に示すように、建造物Hに柱105と梁106とを略矩形に結合した枠体107を覆うようにしてパネル108が取付けられたパネル構造202や、図17に示すように、建造物Hに柱108と梁109とがトルシア型ハイテンションボルト等で、該柱108と該梁109とが略一体となるように剛接合されたラーメン構造203が挙げられる。
【0004】
しかし、建造物の施工が完成した後には、上述のような構造は該建造物の壁内部にあり、外見上確認することが不可能である。しかし、該建造物を購入する顧客に対して、これらの耐震構造が、地震の際にその揺れが各部材にどのように力を及ぼし、これらを抑制するか等、耐震構造の原理についてを説明する機会が多くある。また、これらの耐震構造の設計や該耐震構造を備えた建造物を販売する会社の新入社員等にも、業務遂行のために、耐震構造の原理を周知させておく必要がある。しかし、これらの耐震構造の原理は、図やイラスト、若しくは単なる説明だけでは、容易に理解することは困難である。そのため、耐震構造のエネルギーの吸収作用を説明する装置であって、図18に示すように、縦部材301と横部材302の両端部がピン303によって回動自在に固定され、同時に該ピン303によって、屈曲変形可能な斜め部材304が、対角線状に回動自在に固定された模型305を矢印306の方向に力を作用することで該模型305を変形させるものが考案されている(例えば特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−184600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したような模型を用いてブレース構造の説明を行う際にも、耐震構造に係る構造の一部しか説明することができず、また、他の耐震構造との比較や検討をすることができない。さらに、上述したような耐震構造の原理を系統的に顧客等に説明し、理解してもらうことも困難であった。
【0007】
この発明は上記のような種々の課題を解決することを目的としてなされたものであって、大掛かりな実験や、装置を必要とすることなく、代表的な耐震構造に係る、各耐震構造模型に直接手で触れ、変形させることで、系統的にこれらの原理や、地震の際にどのように力が作用するかを、顧客等に理解させることのできる耐震構造体験装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の耐震構造体験装置は、建造物に用いられる耐震構造の原理を説明するための耐震構造体験装置であって、4本の棒部材の両端部が互いに回動自在に連結固定されなる略矩形の架構部材と、両端部が該架構部材の頂点部に対角線状にそれぞれ回動自在に連結固定された2本のブレースと、該ブレースのそれぞれに設けられ、且つ、該ブレースを伸縮自在とする調節部材とを具備するブレース構造模型と、幅方向に長尺に形成され両端部が前記架構部材にそれぞれ回動自在に固定されたパネル部材が、高さ方向に並設されるパネル構造模型と、弾性を有する4本の弾性棒部材の両端部が連結部材を介して互いに連結されてなる略矩形のラーメン構造模型とを備えることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の耐震構造体験装置は、請求項1記載の耐震構造体験装置において、前記各構造模型の背面が、それぞれの構造模型を幅方向、及び上下方向にガイドするガイド部材を介して支持板に支持されることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の耐震構造体験装置は、請求項1又は2記載の耐震構造体験装置において、前記パネル構造模型のパネル部材の外側面に、幅方向に所定間隔をあけ、高さ方向に並設される各パネル部材に渡って略鉛直方向に基準線が跨設されることを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の耐震構造体験装置は、請求項1乃至3記載の耐震構造体験装置において、前記ブレース構造模型の調節部材に、前記ブレースの伸縮長を視認するための突起部が設けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の耐震構造体験装置によれば、耐震構造の代表的な、ブレース構造、パネル構造、ラーメン構造に係る構造模型を備えているので、各構造模型に直接手で触れ、変形させることで、系統的にこれらの原理や、地震の際にどのように力が作用するかを、顧客等に理解させることができる。また、それぞれの構造同士を比較することで、それぞれの違いをより明確に知ることができると共に、個々の構造の理解をより深めることができる。
【0013】
請求項2記載の耐震構造体験装置によれば、それぞれの構造模型の背面が、構造模型を幅方向、及び上下方向にガイドするガイド部材を介して支持板に支持されている。そのため、顧客等が構造模型に触れている際に、該構造模型が転倒する等して、構造模型は破損する、若しくは、顧客等が転倒した構造模型に接触して負傷する等の問題が生じるおそれがない。また、顧客等が各構造模型をその側面から押圧し、変形の様子を見る際にも、該構造模型がガイド部材にガイドされるようにして変形等するので、押圧の仕方によらず、それぞの顧客等が看取する状況を統一することができる。
【0014】
請求項3記載の耐震構造体験装置によれば、前記パネル構造模型のパネル部材の外側面に、幅方向に所定間隔をあけ、高さ方向に並設される各パネル部材に渡って略鉛直方向に基準線が跨設されている。そのため、顧客等がパネル構造模型を側面から押圧し変形の様子を視認する際に、一方のパネル部材の基準線と、その上方、若しくは、下方の他方のパネル部材の基準線とのずれを比較することによって、パネル構造模型の変形の程度を知ることができ、パネル構造において、どの程度のせん断力が生じているのかを、間接的に把握することができる。
【0015】
請求項4記載の耐震構造体験装置によれば、前記ブレース構造模型の調節部材に、ブレースの伸縮長を視認するための突起部が設けられている。そのため、顧客等がブレース構造模型を側面から押圧し変形の様子を視認する際に、一方のブレースは伸び、他方のブレースは縮むが、これらのブレースがどの程度伸縮しているかを容易に視認することができ、ブレース構造において、どの程度の引張力や圧縮力が生じているのかを、間接的に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明における耐震構造体験装置の最良の実施形態について、以下に説明する。この実施形態の耐震構造体験装置1は、建造物に用いられる耐震構造の原理を説明するための耐震構造体験装置1であって、図3に示すように、4本の棒部材2の両端部が互いに回動自在に連結固定されなる略矩形の架構部材3と、両端部が該架構部材3の頂点部に対角線状にそれぞれ回動自在に連結固定された2本のブレース4と、該ブレース4のそれぞれに設けられ、且つ、該ブレース4を伸縮自在とする調節部材5とを具備するブレース構造模型6と、図7に示すように、幅方向に長尺に形成され両端部が前記架構部材3にそれぞれ回動自在に固定されたパネル部材7が、高さ方向に並設されるパネル構造模型8と、図11に示すように、弾性を有する4本の弾性棒部材9の両端部が連結部材10を介して互いに連結されてなる略矩形のラーメン構造模型11とを備えている。
【0017】
前記架構部材3は、図3に示すように、4本の棒部材2の両端部が互いに回動自在に連結固定されてなる略矩形の部材である。そして、棒部材2は、本実施形態においては、強度や耐久性の観点から鋼性の部材を使用しており、該棒部材2は、図3に示すように、略四角柱形状となるように形成されている。また、棒部材2の両端部には、他の棒部材2の両端部と連結するための連結段部12が形成されており、該連結段部12は、図9に示すように、該棒部材2の端部から所定長さ、その肉厚を略半分程度取除いたような形状とし、該連結段部12は、本実施形態においては、図3に示すように、棒部材2の同じ側の面に形成されている。
【0018】
そして、棒部材2には、連結段部12を貫通する貫通孔が設けられ、該貫通孔に固定ピン12aが挿通されることで、棒部材2の端部同士が互いに回動自在に連結固定されている。また、このように棒部材2が互いに連結される際には、図3に示すように、該連結段部12の凹んだ箇所同士を互いに連結している。そして、連結段部12は、本実施形態のように、棒部材2の同じ側の面に形成されていてもよいが、一方の連結段部12の反対側の面に他方の連結段部12が設けられていてもよい。また、上述のような、棒部材2の連結方法は、本実施形態のものに限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0019】
前記ブレース構造模型6に使用されるブレース4は、図3に示すように、その両端部が架構部材3の対角線上の頂点部にそれぞれ回動自在に連結固定されている。そして、ブレース4は、建造物の耐震構造に使用されるブレースを想定するものであって、鋼性の部材から形成されてなるものである。また、ブレース4は、上述のように形成された架構部材3における、一方の棒部材2の連結段部12と、他方の棒部材2の連結段部12との間に、該ブレース4の両端部が介在するように設けられている。さらに、ブレース4の両端部にも貫通孔(不図示)が設けられているため、棒部材2と共に固定ピン12bによって回動自在に架構部材3の頂点部に固定されている。
【0020】
そして、ブレース4には、図4に示すように、該ブレース4を伸縮自在とする調節部材5が設けられている。そのため、ブレース構造模型6を顧客等が側面から押圧した際には、架構部材3の各頂点部、及びブレース4の両端部が回動自在に固定されており、さらに、一方のブレース4aが伸び、他方のブレース4bが縮むことにより図4に示すように、該ブレース構造模型6全体が変形するのである。そして、調節部材5は、図5に示すように、上方ブレース4cの下端部が、略円筒状に形成され、且つ、長さ方向にスリット13が形成されたシリンダ14の上端から一部が挿通固定され、下方ブレース4dの上端部が該シリンダ14の内壁に沿って可動となるように該シリンダ14の下端から挿通されている。
【0021】
そして、図5に示すように、上方ブレース4cの下端部、及び下方ブレース4dの上端部であって、スリット13が設けられている箇所には、ブレース4の伸縮長を視認することができるように、突起部15が設けられている。さらに、該突起部15が設けられていることにより、下方ブレース4dがシリンダ14の下端部から引抜けることがない。また、一方の調節部材5aのシリンダ14内部における、下方ブレース4dの上端部とシリンダ14の下端部との間にはバネ16が設けられている。そして、他方の調節部材5bのシリンダ14内部における、上方ブレース4cの下端部と下方ブレース4dの上端部との間にもバネ16が設けられている。そのため、ブレース構造模型6を顧客等が側面から押圧した際には、図4に示すように、変形すると共に、一方の調節部材5a内部のバネ16、及び他方の調節部材5b内部のバネ16が、図5に示す状態Aから状態Bのように圧縮される。しかし、顧客等がその押圧をやめた際には、前述のように圧縮されたバネ16の弾性力によって状態Bから状態Aへとバネ16が復元し、図4に示すように、ブレース構造模型6も元の状態へと戻るのである。
【0022】
また、本実施形態においては、図5に示すように、ブレース構造模型6に外力が作用しない状態では、一方の調節部材5aにおいて、上方ブレース4cの下端部と下方ブレース4dの上端部とが当接し、また、他方の調節部材5bにおいて、下方ブレース4dの突起部15がスリット13の下端部に当接している。そのため、ブレース構造模型6は、図4に示すように、棒部材2に取付けられた矢印Yの方向に押圧した場合にのみ、該ブレース構造模型6は変形し、該矢印Yと反対側に押圧した際には、該ブレース構造模型6は変形することがないようになっている。しかし、調節部材5の構成は本実施形態のものに限定されるものではなく、ブレース4の伸縮を調節できるものであれば適宜変更することができる。
【0023】
前記パネル構造模型20に使用されるパネル部材7は、図7に示すように、幅方向に長尺に形成された略矩形の薄板状の部材であり、上述したような架構部材3に取付けられている。そして、パネル部材7は成型加工の容易性の観点から、例えば合成樹脂等から形成されているが、その他金属製であってもよい。また、本実施形態においては、図7に示すパネル部材7のうち、最上部のパネル部材7、及び最下部のパネル部材7は、架構部材3を構成する水平方向に設けられた棒部材2にそれぞれネジS1等で固定されている。そして、最上部のパネル部材7と、最下部のパネル部材7との間のパネル部材7は、両端部がそれぞれ回動自在となるように、架構部材3を構成する鉛直方向に設けられた棒部材2にネジS1等で固定されている。
【0024】
また、パネル部材7同士の間は、図9に示すように、該パネル部材7の上端に凸部7aが形成され、下端には凹部7bが形成されている。そのため、複数のパネル部材7を、図7に示すように、高さ方向に並設する際には、凹部7bに凸部7aが嵌入するようにして結合されている。そのため、顧客等が、パネル構造模型8を側面から、パネル部材7に取付けられた矢印Yの方向へ押圧した際には、図8に示すように、該パネル構造模型8が変形すると共に、図9に示すように、パネル部材7が、その下方のパネル部材7にガイドされるのである。また、パネル構造模型8が、図8に示すように、変形した際には、該架構部材3を構成する水平方向の棒部材2同士の垂直距離が、若干小さくなる。そのため、パネル部材7同士を、上述したように高さ方向に結合する際には、図9に示すように、凹部7bと凸部7aとの間に隙間Tが生じるように設計されている。
【0025】
さらに、パネル部材7の外側面には、図7に示すように、幅方向に所定間隔をあけ、高さ方向に並設される各パネル部材7に渡って略鉛直方向に、基準線17が跨設されている。そして、基準線17は、パネル部材7の外側面に、塗料等で書かれてあったり、若しくは、溝が形成され該溝を塗料等で強調するようにしてもよい。また、これらのパネル部材7の架構部材3への取付方法、及びパネル部材7同士の結合方法等は本実施形態の構成に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0026】
前記ラーメン構造模型11に使用される弾性棒部材9は、図11に示すように、略四角柱形状に形成されている。そして、ラーメン構造模型11は、図12に示すように、顧客等が側面から、連結部材12に取付けられた矢印Y方向へ押圧することで該ラーメン構造模型11が変形するように形成されている。そのため、弾性棒部材9は、度重なる変形に耐え、その変形から該弾性棒部材9の弾性力で自然に元の状態に戻り、且つ、塑性変形することのないように、例えば、SBR(Styrene-butadiene rubber)等が用いられている。また、弾性棒部材9は、図11に示すような、略L字型の連結部材10と該弾性棒部材9の両端部とが互いに連結されると共にピンP等で固定され、略矩形となるように形成されている。
【0027】
上述したような、図3、図7、及び、図11に示す各構造模型20は、それぞれ、板状部材18上に溶接や、金具等で適宜取付けられ、さらに、該板状部材18が載台19上にネジS2等で固定されている。そして、各構造模型20は、その背面が、それぞれの構造模型20を幅方向、及び上下方向にガイドするガイド部材21を介して支持板22に支持されている。
【0028】
支持板22は、本実施形態においては、図14に示すように、各構造模型20を確実に支持することができるように、板状部材18に立設する垂直板部22aと、該垂直板部22aの両端から略垂直方向に高さ方向に渡って張り出す側面板22bと、該側面板22bと垂直板部22aの下端部にこれらと略垂直方向に形成された底板部22cとを具備している。そして、各構造模型20と共に、板状部材18の上面に底板部22cがネジS3等により固定されている。また、本実施形態においては、支持板22は、例えば透明のアクリル系の合成樹脂から形成されていので、これらの構造模型が設置されているスペースにおいて、顧客等に閉塞感を感じさせることがなく、広々とした開放感を持たせることができる。また、支持板22には、構造模型20の各部分を説明するような、説明書き等が記載されていてもよい。
【0029】
ガイド部材21は、図14に示すように、支持板22の幅方向にネジS4等で取付けられた水平ガイドレール23aと、図13に示すように、中間部材24の一方面側に取付けられ該水平ガイドレール23aに沿って水平方向にガイドされる水平ガイド部材23bと、図13に示すように、中間部材24の他方面側に取付けられた垂直ガイドレール25aと、図3、図7、及び図11に示すように、各構造模型20の背面にネジ等で固定された取付板26に、図13に示すように、取付けられ該垂直ガイドレール25aに沿って垂直方向にガイドされる垂直ガイド部材25bとを具備している。これにより、顧客等が、各構造体模型20を押圧した際にも、これらが転倒することなく、各構造模型20が変形する際にも、ガイド部材21に従って垂直方向、及び水平方向にガイドすることができるのである。
【0030】
また、本実施形態においては、図2に示すように、ブレース構造模型6の背面には、例えば、鋼性の縦筋27aと横筋27bとを略矩形に結合した枠体27の頂点部分同士を対角線状に連結するブレース28が設けられたブレース構造体29が設置されている。そして、図6に示すように、パネル構造模型8の背面には、例えば、柱30aと梁30bとを略矩形に結合した枠体30を覆うようにしてパネル31が取付けられたパネル構造体32が設置されている。そして、図10に示すように、ラーメン構造模型11の背面には、例えば、鋼性の柱33aと梁33bとがトルシア型ハイテンションボルト等で、該柱33aと該梁33bとが略一体となるように剛接合されたラーメン構造体34が設置されている。そして、これらが、図1に示すように、配置されているのである。しかし、これらの、配置の順番や、配置の方法等は本実施形態のものに限定されるものではなく適宜変更することができる。
【0031】
以上のように構成された、耐震構造体験装置1の使用方法について以下に説明する。
【0032】
耐震構造体験装置1は、図1に示すように、展示スペース等に展示されており、各構造模型20に沿って、通路35が設けられているため、該展示スペースを訪れた顧客等は、該通路35を通り、順番に各構造模型20を視認すると共に、各構造模型20に直接手で触れ、変形させることで、系統的にこれらの原理や、地震の際にどのように力が作用するかを、理解することができる。
【0033】
まず、顧客等は、通路35に示された矢印36に従って、パネル構造模型8の場所まで行く。そして、顧客等が、図8に示すように、側面から矢印Yに従って押圧すると、該パネル構造模型8は変形し、さらに、その変形量を基準線17を通じて知ることができる。そして、パネル構造模型8の背面には、図6に示すように、実際に使用されているパネル構造体32が設置されているので、耐震構造に係るパネル構造の原理の理解をより深めることができる。
【0034】
そして、前述のように、パネル構造の原理を理解することができた顧客等は、通路35を進み、ラーメン構造模型11の場所まで行く。そして、顧客等が、図12に示すように、側面から矢印Yに従って押圧すると、該ラーメン構造模型11は変形する。そして、ラーメン構造模型11の背面には、図10に示すように、実際に使用されているラーメン構造体34が設置されているので、耐震構造に係るラーメン構造の原理の理解をより深めることができる。
【0035】
そして、前述のように、パネル構造の原理とラーメン構造の原理を理解することができた顧客等は、通路35をさらに進み、ブレース構造模型6の場所まで行く。そして、顧客等が、図4に示すように、側面から矢印Yに従って押圧すると、該ブレース構造模型6は変形し、さらに、その変形に伴うブレース4の伸縮状況を視認することができる。そして、ブレース構造模型6の背面には、図2に示すように、実際に使用されているブレース構造体29が設置されているので、耐震構造に係るブレース構造の原理の理解をより深めることができる。
【0036】
このように、顧客等が、代表的な耐震構造に係る、各構造模型20に直接手で触れ、変形させることで、系統的にこれらの原理や、地震の際にどのように力が作用するかを容易に理解することができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る耐震構造体験装置1は、本実施形態のように顧客等に説明する状況だけでなく、物理学の実験等においても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係る耐震構造体験装置の全体斜視図
【図2】本実施形態に係るブレース構造模型と実際の建造物に使用されるブレース構造体の全体斜視図
【図3】本実施形態に係るブレース構造模型の全体斜視図
【図4】本実施形態に係るブレース構造模型の全体正面図
【図5】本実施形態に係る調節部材の拡大正面図
【図6】本実施形態に係るパネル構造模型と実際の建造物に使用されるパネル構造体の全体斜視図
【図7】本実施形態に係るパネル構造模型の全体斜視図
【図8】本実施形態に係るパネル構造模型の全体正面図
【図9】本実施形態に係るパネル構造模型の拡大斜視図
【図10】本実施形態に係るラーメン構造模型と実際の建造物に使用されるパネル構造体の全体斜視図
【図11】本実施形態に係るラーメン構造模型の全体斜視図
【図12】本実施形態に係るラーメン構造模型の全体正面図
【図13】本実施形態に係るガイド部材の拡大斜視図
【図14】本実施形態に係る支持部材の背面斜視図
【図15】ブレース構造を具備する建造物を示す模式図
【図16】パネル構造を具備する建造物を示す模式図
【図17】ラーメン構造を具備する建造物を示す模式図
【図18】従来の耐震壁の説明装置と示す図
【符号の説明】
【0039】
1 耐震構造体験装置
2 棒部材
3 架構部材
4 ブレース
5 調節部材
6 ブレース構造模型
7 パネル部材
8 パネル構造模型
9 弾性棒部材
10 連結部材
11 ラーメン構造模型
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物に用いられる耐震構造の原理を説明するための耐震構造体験装置であって、
4本の棒部材の両端部が互いに回動自在に連結固定されなる略矩形の架構部材と、両端部が該架構部材の頂点部に対角線状にそれぞれ回動自在に連結固定された2本のブレースと、該ブレースのそれぞれに設けられ、且つ、該ブレースを伸縮自在とする調節部材とを具備するブレース構造模型と、
幅方向に長尺に形成され両端部が前記架構部材にそれぞれ回動自在に固定されたパネル部材が、高さ方向に並設されるパネル構造模型と、
弾性を有する4本の弾性棒部材の両端部が連結部材を介して互いに連結されてなる略矩形のラーメン構造模型とを備えることを特徴とする耐震構造体験装置。
【請求項2】
請求項1記載の耐震構造体験装置において、
前記各構造模型の背面が、それぞれの構造模型を幅方向、及び上下方向にガイドするガイド部材を介して支持板に支持されることを特徴とする耐震構造体験装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の耐震構造体験装置において、
前記パネル構造模型のパネル部材の外側面に、幅方向に所定間隔をあけ、高さ方向に並設される各パネル部材に渡って略鉛直方向に基準線が跨設されることを特徴とする耐震構造体験装置。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の耐震構造体験装置において、
前記ブレース構造模型の調節部材に、前記ブレースの伸縮長を視認するための突起部が設けられることを特徴とする耐震構造体験装置。
【請求項1】
建造物に用いられる耐震構造の原理を説明するための耐震構造体験装置であって、
4本の棒部材の両端部が互いに回動自在に連結固定されなる略矩形の架構部材と、両端部が該架構部材の頂点部に対角線状にそれぞれ回動自在に連結固定された2本のブレースと、該ブレースのそれぞれに設けられ、且つ、該ブレースを伸縮自在とする調節部材とを具備するブレース構造模型と、
幅方向に長尺に形成され両端部が前記架構部材にそれぞれ回動自在に固定されたパネル部材が、高さ方向に並設されるパネル構造模型と、
弾性を有する4本の弾性棒部材の両端部が連結部材を介して互いに連結されてなる略矩形のラーメン構造模型とを備えることを特徴とする耐震構造体験装置。
【請求項2】
請求項1記載の耐震構造体験装置において、
前記各構造模型の背面が、それぞれの構造模型を幅方向、及び上下方向にガイドするガイド部材を介して支持板に支持されることを特徴とする耐震構造体験装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の耐震構造体験装置において、
前記パネル構造模型のパネル部材の外側面に、幅方向に所定間隔をあけ、高さ方向に並設される各パネル部材に渡って略鉛直方向に基準線が跨設されることを特徴とする耐震構造体験装置。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の耐震構造体験装置において、
前記ブレース構造模型の調節部材に、前記ブレースの伸縮長を視認するための突起部が設けられることを特徴とする耐震構造体験装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−180766(P2008−180766A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12358(P2007−12358)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】
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