説明

耐震装置

【課題】地震などによる車体の破損を防止することができる耐震装置を提供することを課題とする。
【解決手段】バス12の駐車時に、クッション本体部1の上端フックをバス12の側面上端部の雨樋に係合させると共に、ベルト部2のゴムひも部材5を引っ張って下端フック6をバス12の側面下端部の突出部14に係合させることにより、クッション本体部1をバス12の側面上端部に位置させる。ここで、複数のバス12が車庫等の内部に互いに狭い間隔で駐車されている場合に地震などによる大きな揺れが発生して隣接するバス12同士がぶつかっても、これら隣接するバス12は互いに対向する側面の上端部に配置されたクッション本体部1を介して当接するため、クッション本体部1によりその際の衝撃が吸収され、これにより車体の破損が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耐震装置に係り、特にバス等の車両の外側部に取り付けられてその耐震性を向上させる耐震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等の災害時に自動車を保護する手段として、例えば特許文献1には、振動吸収用の多数の吸盤が外周面上に形成されたタイヤが開示されている。このようなタイヤにより、地震等のみならず通常の走行時においても振動が吸収されることとなる。
【0003】
【特許文献1】特開平9−303365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バス等の大型の車両を駐車する際には、限られた駐車スペースを効率よく利用するために、互いに狭い間隔で駐車することが多い。また、バスは一般に大きな車高を有しており、外部から振動が与えられると、車体に大きな揺れを生じてしまう。このため、駐車時に地震などによる大きな揺れが発生すると、隣接する車両同士がぶつかって車体が破損することがあった。
このような駐車時における不具合は、上述した特許文献1のタイヤでは解消することができない。
【0005】
この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、地震などによる車体の破損を防止することができる耐震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る耐震装置は、衝撃吸収用のクッション本体部と、クッション本体部に固定される上端フックと、一端部がクッション本体部に連結され且つ他端部がクッション本体部から下方に垂下されるベルト部と、ベルト部の他端部に接続される下端フックとを備え、車両の駐車時に、上端フックが車両の側面上端部に係合されると共に下端フックが車両の側面下端部に係合されることによりクッション本体部が車両の側面上端部付近に配置されるものである。
【0007】
ベルト部は、帯部材と伸縮自在のゴムひも部材とから形成することができる。
また、クッション部材の全体がカバーにより覆われて防水されたクッション本体部を用いることができる。
また、クッション本体部の車両への取り付け及び取り外しを行うための棒部材をさらに備えると共に、クッション本体部にこの棒部材により保持されるための保持部が取り付けられていることが好ましい。
なお、その側面上端部に雨樋が形成されたバスに対してこの耐震装置を用いることができ、その場合、クッション本体部の上端フックをバスの雨樋に係合させることができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、地震などによる車体の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に、この発明の実施の形態に係る耐震装置の構造を示す。この耐震装置は、バス等の車両の外側部に取り付けて用いられるものであり、矩形の平板状に形成されたクッション本体部1と、このクッション本体部1に連結されるベルト部2を有している。クッション本体部1の一対の主面のうち一方の主面1a上には、図2に示されるような形状を有する一対の上端フック3が互いに間隔を隔てて固定されており、それぞれの上端フック3は下方に向かって開いている。
【0010】
また、ベルト部2は、帯部材4と、伸縮自在のゴムひも部材5とを有しており、クッション本体部1の一方の主面1a上には、帯部材4の一端部が上端フック3の間を通ってクッション本体部1の上下方向に延在するように固定されている。また、帯部材4の他端部は、クッション本体部1から下方に垂下されると共に、帯部材4の他端部に伸縮自在のゴムひも部材5の一端部が接続されている。さらに、ゴムひも部材5の他端部に、図3に示されるような形状を有する下端フック6が接続されており、この下端フック6は上方に向かって開いている。また、クッション本体部1の上端部には、持ち手状の保持部7が取り付けられている。
【0011】
図4に示されるように、クッション本体部1は、ウレタン等からなるクッション部材8と、防水性を有するビニールレザー等からなるカバー9とを有しており、カバー9によりクッション部材8の全体が覆われることによりこのクッション部材8が防水されている。
なお、ベルト部2の帯部材4も、カバー9と同様に、ビーニールレザー等から形成されている。また、クッション本体部1は、例えば、縦40cm×横50cm×厚さ6cm程度の大きさに形成されている。
【0012】
次に、この発明の実施の形態に係る耐震装置の作用について説明する。例えば、図5に示されるように、その先端部に係止部10を有する棒部材11を用いてこの耐震装置を図示しない車庫等に駐車されたバス12に取り付けることができる。すなわち、クッション本体部1の上端フック3とは反対側から保持部7に棒部材11の係止部10を掛けて保持し、その状態で棒部材11によりこの耐震装置を持ち上げてクッション本体部1の上端フック3側の主面1aをバス12の側面に対向させ、矢印で示されるように上端フック3をバス12の側面上端部に形成された雨樋13に係合させる。その後、クッション本体部1の保持部7から棒部材11の係止部10を外す。これにより、図6に示されるように、クッション本体部1がバス12の側面上端部付近に配置される。
【0013】
さらに、図7に示されるように、クッション本体部1から下方に垂下しているベルト部2のゴムひも部材5を引っ張ってその先端に取り付けられている下端フック6をバス12の側面下端部に設けられた突出部14に係合させる。
このようにして、この耐震装置をバス12の側面に取り付けることができる。
なお、図8及び9に示されるように、この耐震装置は、例えば、バス12の左右両方の側面に対しその前部及び後部にそれぞれ1個づつ取り付けられ、合計4箇所に取り付けられる。また、取り外しの際は、下端フック6をバス12の側面下端部の突出部14から外すと共に、棒部材11によりクッション本体部1を持ち上げて上端フック3をバス12の雨樋13から外すことにより、この耐震装置を取り外すことができる。
【0014】
以上のように、駐車中のバス12には耐震装置が取り付けられ、図10に示されるように、複数のバス12が図示しない車庫等の内部に互いに狭い間隔で駐車されている場合に、地震などによる大きな揺れが発生して隣接するバス12同士がぶつかっても、これら隣接するバス12は互いに対向する側面の上端部に配置されたクッション本体部1を介して当接するため、クッション本体部1によりその際の衝撃が吸収され、これにより車体の破損を防止することができる。
【0015】
また、ベルト部2はゴムひも部材4を有するため、ゴムひも部材4の弾性力により下端フック6をバス12の側面下端部の突出部14に確実に係合させることができ、外力が作用しても外れにくい構造を実現することができる。
また、クッション部材8全体がカバー9により覆われて防水されているため、屋外などで使用されても優れた耐久性を確保することができる。
【0016】
また、クッション本体部1のクッション部材8はウレタン等から形成され、クッション部材8を覆うカバー9はビニールレザー等から形成されているため、この耐震装置の重量は軽く、また、クッション本体部1に保持部7が設けられると共にクッション本体部1のバス12への取り付け及び取り外しを行うための棒部材11が用意されているため、この耐震装置の取り付け及び取り外しを容易に行うことができる。
また、この耐震装置は、ベルト部2を折り畳んでコンパクト化することができるため、バス12の車内やトランク等に収納しておくこともできる。
【0017】
なお、クッション本体部1の大きさやクッション部材8の硬さ、ベルト部2の帯部材4及びゴムひも部材5の長さ等は、この耐震装置を取り付けるバス12に合わせて任意に選択することができる。
また、ベルト部2を帯部材4とゴムひも部材5とから形成する代わりに、ベルト部2全体をゴムひも部材4から形成することもできる。
また、クッション部材8を直接にカバー9により覆う代わりに、防水性を有する1枚以上の部材により予めクッション部材8を覆った後にその全体をカバー9により覆えば、さらに優れた防水性を得ることができる。
【0018】
また、上述の実施の形態では、バス12の1つの側面に対して2個の耐震装置を取り付けていたが、1個でも、3個以上でも取り付けることができる。
また、バス12の左右両方の側面に耐震装置を取り付けていたが、例えばバス12の一方の側面の周辺にだけ隣接するバス12や壁などが存在する場合には、その側面にだけ耐震装置を取り付けてもよい。
【0019】
また、実施の形態では、上端フック3はバス12の雨樋13に係合させたが、これに限定されるものではなく、バス12の側面上端部に位置して上端フック3を係合させられるものであれば、雨樋以外でも上端フック3を係合させて用いることができる。
なお、上述の実施の形態では、バス12に耐震装置を取り付ける場合について説明したが、この発明の耐震装置はその他の車両にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態に係る耐震装置を示す斜視図である。
【図2】実施の形態における上端フックを示す拡大斜視図である。
【図3】実施の形態における下端フックを示す拡大斜視図である。
【図4】実施の形態におけるクッション本体部内の構造を示す部分断面図である。
【図5】実施の形態におけるクッション本体部のバスへの取り付けの様子を示す図である。
【図6】取り付け時のクッション本体部近傍を示す図である。
【図7】取り付け時の下端フック近傍を示す図である。
【図8】実施の形態に係る耐震装置が取り付けられたバスを示す側面図である。
【図9】実施の形態に係る耐震装置が取り付けられたバスを示す平面図である。
【図10】実施の形態に係る耐震装置が取り付けられたバスを示す正面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 クッション本体部、1a 主面、2 ベルト部、3 上端フック、4 帯部材、5 ゴムひも部材、6 下端フック、7 保持部、8 クッション部材、9 カバー、10 係止部、11 棒部材、12 バス、13 雨樋、14 突出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃吸収用のクッション本体部と、
前記クッション本体部に固定される上端フックと、
一端部が前記クッション本体部に連結され且つ他端部が前記クッション本体部から下方に垂下されるベルト部と、
前記ベルト部の他端部に接続される下端フックと
を備え、車両の駐車時に、前記上端フックを車両の側面上端部に係合させると共に前記下端フックを車両の側面下端部に係合させることにより前記クッション本体部を車両の側面上端部付近に配置することを特徴とする耐震装置。
【請求項2】
前記ベルト部は、帯部材と伸縮自在のゴムひも部材とを有することを特徴とする請求項1に記載の耐震装置。
【請求項3】
前記クッション本体部は、クッション部材と、前記クッション部材の全体を覆って防水するためのカバーとを有する請求項1または2に記載の耐震装置。
【請求項4】
前記クッション本体部の車両への取り付け及び取り外しを行うための棒部材をさらに備え、前記クッション本体部は、前記棒部材により保持されるための保持部を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐震装置。
【請求項5】
車両は、その側面上端部に雨樋を有するバスであり、前記上端フックは前記バスの雨樋に係合される請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−264453(P2006−264453A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83675(P2005−83675)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(505106210)
【出願人】(505106221)