説明

耕耘機

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、耕耘機のハンドル取付及び変速レバーの取付装置に関する。
【0002】
【従来の技術、及び発明が解決しようとする課題】ハンドルの上下位置を調節するために、伝動ケース上のブラケットに対してハンドルの基部を上下回動自在に枢支すると共に、この枢支位置から適当位置離れた個所に横方向のピンを抜き挿しする。このような構成によるときは、ブラケットとハンドルとがピンによって連結される形態であるから、ブラケットの剛性を厚さで保つ構成としなければならず、重量も増すこととなる。又、ピンの抜き挿しの操作が面倒である。また、変速レバーの取付も構成が簡単な方が良い。
【0003】
【課題を解決するための手段】この発明は、下部に車輪軸19を有する走行伝動ケース1の上側部に、左右に亘る門形状形成で操縦ハンドル7を取付けるハンドルブラケット8を設け、このハンドルブラケット8の左右両側辺部35間をハンドル位置調節用のピン穴32を有する連結プレート33で連結し、ハンドル7の左右基部34間を連結する連結部65には前後に抜き挿しのロックピン66を設け、この連結プレート33のピン穴32にこのロックピン66を係合可能に設け、更に前記ハンドルブラケット8に対して単一の変速レバー11を上下及び左右方向に揺動自在に設け、この変速レバー11をハンドルブラケット8の幅内で上下に揺動させることによって走行系とロータリ系の切替えを行い、左右方向に揺動させることによって、走行系の変速又はロータリ系の正逆転の切替えを行なわせてなる耕耘機の構成とする。
【0004】
【作用、及び発明の効果】操縦ハンドル7の高さを変更するときは、基部34の連結部材65に取付けられるロックピン66を前後方向へ抜き挿ししながら、操縦ハンドル7をハンドルブラケット8に対して上下回動させて、ロックピン66の連結プレート33のピン穴32に対する係合位置を変える。このときのロックピン66の操作は、操縦ハンドル7に沿う前後方向であるから、作業者は操縦ハンドル7を把持しながら操作を容易に行うことができる。又、ハンドルブラケット8は、門形状でかつ該連結プレート33で左右両側辺部35間が連結されるために比較的薄い板金製として軽量化できて剛性を保ち、又、操縦ハンドル7の左右基部34間も連結部材65で連結されて剛性を保ち、安定した操縦ハンドル7の構成、及び操縦を行うことができる。
【0005】一方、変速を行なうときには、ハンドルブラケット8に支持された単一の変速レバー11を上下左右に揺動させて走行系の変速、ロータリ系の正逆転の切替えを行なう。走行系とロータリ系の変速を行なう変速レバー11は1本であり、ハンドルブラケット8の幅内に収められているのでコンパクトであって変速レバー11を支持する余分な部材が不要であるから重量も増えず、安定した操作が可能となる。
【0006】
【実施例】この発明の実施例では、車輪伝動ケース1と後側のロータリ伝動ケース2との間を連結プレート3で連結し、これら両伝動ケース1,2の伝動軸4,5間に亘って伝動ケース6で連結し、該車輪伝動ケース1の上端部には操縦ハンドル7を取付けるブラケット8を設け、このブラケット8には、該車輪伝動ケース1内の走行変速装置9とロータリ伝動ケース2内の正逆転装置10とを操作する単一の変速レバー11を設けてなる耕耘機の構成としている。
【0007】車体側の車輪伝動ケース1の後側にロータリ伝動ケース2を連結プレート3を介して一体的に連結し、これら両伝動ケース1,2の上部間に亘って伝動ケース6を連結し伝動軸4,5間を連結する。操縦ハンドル7は車輪伝動ケース1上部のブラケット8に取付けられ、又変速レバー11が取付けられる。変速操作は、この単一の変速レバー11を操作することによって、車輪伝動ケース1内の走行変速装置9が変速され、またロータリ伝動ケース2内の正逆転装置が正転、又は逆転に切替えられる。
【0008】車体は、走行伝動ケース1の前側にエンジンブラケット12を介してエンジンEを搭載し、上部にハンドルブラケット8を介して後方上部に向けて操縦ハンドル7を有する。エンジン軸13と走行伝動ケース1上部の伝動軸4との間はベルト14及びテンションプーリ15等で連動し、伝動ケース16で覆っている。17は該エンジンブラケット12を車輪伝動ケース1の前縁部に取付けるボルト、18はハンドルブラケット8の取付ボルトである。19は車軸で、左右両側部に車輪20を有し、前記伝動軸4から車輪伝動ケース1内の伝動機構を経て伝動される。
【0009】ロータリ伝動ケース2は、下部のロータリ軸21の左右両側部に耕耘爪22又はその他除草用ロータ等を有して、耕耘、砕土、中耕、又は除草等の作業を行いうる。又、上部に伝動軸5を有し、これら上下の伝動軸5とロータリ軸21との間を伝動機構で伝動する。このロータリ伝動ケース2は後下りの適宜の傾斜にして、この前縁部と走行伝動ケース1との間を連結プレート3で連結する。23,24,27はこの取付ボルトである。25はロータリカバーで、ロータリ伝動ケース2の前後縁部に取付ボルト24,27、ブラケット26及びボルト28等によって取付けられる。
【0010】このブラケット26は該ロータリカバー25と共にソケット29をも一体とする。ブラケット26後部のソケット29にはロータリ伝動ケース2の直後において抵抗杆30がピン孔31で、上下調節自在である。36はリヤカバーである。このリヤカバー36は、耕耘土壌面を均平にする均平縁93を下端に有し、ロータリカバー25の後側において自重又はばねで弾下させて、上下動できる。このリヤカバー36の回動支軸94はロータリカバー25の左右外側において、ロータリ軸21よりも前側に設けられ、土壌均平時の角度変化を小さくしている。下動位置では上端縁95がロータリカバー25の後下端縁96に係合されて下限位置となる。このリヤカバー36は、上部を該ロータリ軸21部を中心とする円弧曲面に形成するが、下部を後方へ渡曲97することによって、均平を行い易い形態としている。
【0011】抵抗杆30は、ソケット29に沿って上下動させてピン31によって上下位置調節できるが、この抵抗杆30の下端には抵抗片98が水平状に設けられ、この抵抗片98でリヤカバー36の幅中央部の下端均平縁93を支持することができる。このため、抵抗杆30を上動するときはリヤカバー36をも上方へ押上げることができるが、途中位置Aまで上昇すると、リヤカバー36の均平縁93から抵抗片98の後端が内側へ外れて、リヤカバー36をこれ以上に上昇させることができないようになる。又、このリヤカバー36の上端には、前記抵抗杆30と対向する位置にブラケット99を設け、リヤカバー36を上昇させた位置Bでこのブラケット99が抵抗杆30の上部に嵌合し、この嵌合部において両者間のピン穴間にロックピン100を挿込んでリヤカバー36の不使用姿勢である上昇位置を保持させる。101は抵抗杆30に設けたストッパーで、ソケット29の下端縁と係合して上限位置Bで係止しうる。抵抗杆30はこれ以上に上昇できない。
【0012】102は補助カバー103の取付具で、ロータリカバー25の前側に補助カバー103を着脱できる。又、104はリヤカバー36の下端部に補助板105を取付ける取付具である。この補助板105は、土壌の均平形態や畝立て形態等に応じて各種形態のものを用意するとよい。前記車輪伝動ケース1の上部とロータリ伝動ケース2の上部との間に取付ける伝動ケース6は、伝動軸4と5との間を連動するチェン47伝動機構を覆うもので、伝動ケース1,2間に亘って取付連結する厚手の連結プレート38を有する。この連結プレート38は、伝動軸4側を、車輪伝動ケース1の伝動軸4回りに形成の軸受筒部39に対して嵌合させ、伝動軸5側を、ロータリ伝動ケース2の伝動軸5回りに形成の軸受筒部40に対して嵌合させて、この軸受筒部40に一体の固定片41とこの連結プレート38との間をボルト42で締付けて固定している。
【0013】又、この連結プレート38の外側にカバー43を、ゴムシール44を介在して該連結プレート38の外周縁に嵌合し、ボルト45で締付けて固定する。該ゴムシール44は、カバー43の外周縁46を外周方向へ屈曲して連結プレート38面に平行な縁に形成し、この外周縁46にゴムシール44を嵌合させている。47はチェンで、伝動軸4と5とのスプロケット間に掛け渡す。
【0014】前記走行伝動ケース1には、走行変速装置9が設けられ、ベルト14伝動される伝動軸4にはシフター48によって操作される変速ギヤ49を有し、この変速ギヤ49の噛合されるカウンタギヤ50のカウンタ軸51、バックカウンタギヤ52のバックカウンタ軸53等を軸装し、このカウンタ軸51からギヤ連動されるスプロケット軸54と前端車軸19のスプロケットとの間をチェン55連動する。該シフター48によって変速される変速ギヤ49は、カウンタギヤ50に噛合する高速位置Hと低速位置L、バックカウンタギヤ52に噛合する後進位置R、及びこれらの間の各中立位置Nとにシフトされる。
【0015】前期ロータリ伝動ケース2には、正逆転装置10が設けられ、シフター56によって操作される切替ギヤ57を有した伝動軸5と、正転ギヤ58の軸59と、逆転ギヤ60の軸61と、この軸59からギヤ連動されるスプロケット軸62とを有し、このスプロケット軸62と前記ロータリ軸21との間のスプロケットにチェン63を掛け渡して連動する。該シフター56は、切替ギヤ57を正転ギヤ58に噛合させる正転位置Aと、逆転ギヤ60に噛合させる逆転位置Bと、これらの間の中立位置Nとに操作される。
【0016】前記ブラケット8に対する操縦ハンドル7の取付は、後端部をループ状に形成し前端基部34をこのブラケット8の左右外側辺部35の外側部に沿わせるようにして、横方向のピン64で枢支している。又、この操縦ハンドル7の左右基部34間は連結部材65で一体的に連結され、この連結部材65の中央部に取付片67を垂下させて、ロックピン66を取付ける。このロックピン66は取付片67下端のホルダ90に対して前後摺動自在に嵌合させて、ばね91により前方へ突出させて弾発し、後端のノブ92によりこのばね91に抗して後退させることができる。
【0017】前記ハンドルブラケット8は正面視で門形状に形成されるが、この左右側辺部35間は、後端部において連結プレート33で連結され、前記ピン64回りの円弧状曲面に形成されている。前記ロックピン66の係合されるピン穴32がこの連結プレート33の曲面に沿って一定の間隔に配設され、ばね91の弾発により突出されて係合される。
【0018】このロックピン66のピン穴32に対する選択係合によって操縦ハンドル7の上下角度、高さが決まる。又、このロックピン66をピン穴32から外すときは、操縦者がハンドル7から手を伸ばしてノブ92を後方へ引っ張ればよく、ばね91に抗してロックピン66が後退してハンドル7のロックが解除されて上下回動自由の状態となり、操縦ハンドル7の取付高さを変更することができる。
【0019】変更レバー11は、この操縦ハンドル7の前側に位置して、レバーガイド68に沿わせて操作できるように、レバーアーム69の前端部をよ横軸70と縦軸71とを介して、ブラケット8に対して上下及び左右方向に揺動自在に設ける。このレバーアーム69の後端にはピン溝を形成したアーム72を有し、このアーム72の上下回動圏内に、上側からは前記変速シフター48と連動してアーム軸86の回りに回動するシフタアーム73のピン74を位置させ、又下側からは前記切替シフタ56を連動するシフタアーム75のピン76を位置させる。該変速レバー11を横軸70回りの前後に回動することによって、アーム72をシフタアーム73のピン74に嵌合することにより、更に縦軸71回りの左右方向へ回動操作して走行変速を行わせ、又、アーム72を下側のピン76に嵌合することにより左右方向へ回動操作してロータリー回転を正転、逆転に切替えることができる。
【0020】77はシフタアーム75の中間部を横方向へ移動自在に案内するアームステーで、前記ブラケト8に設けられ、このシフタアーム75と前記切替シフター56のシフタロッド78とは、ロータリ伝動ケース2の外側でピン79で連結できる構成としている。しかも、このピン79の挿通されるシフタアーム75には長孔80が形成されて、車輪伝動ケース1に対するロータリ伝動ケース2の取付位置や角度が若干変化しても吸収してシフターの操作連動を行いうる構成としている。
【0021】前記のようなブラケット8の上側には合成樹脂製の操作パネル81が嵌合されて、ボルト等で取付けられる。この操作パネル81の中央部にはレバーガイド68が工字状に形成され、前側の変速溝82が変速位置で、中央部の低速位置Lから左右両側に中立位置Nを介して後進位置Nを介して後進位置Hとが配置される。又、後側の切替溝83には、中央部の中央位置Nを介して左右両側に正転位置Aと逆転位置Bとが配置される。これら変速溝82の低速位置Lと切替溝83の中立位置Nとの間が縦溝84で連結されて、変速レバー11はこの低速位置Lを作業に適する作業走行速として縦溝84から切替溝83の中立位置Nへ操作することができ、変速位置Hや後進位置Rから直接切替溝83へ操作することはできない。
【0022】85はこの操作パネル81の後端部左右両側に形成されたハンドル溝で、操縦ハンドル7の基部の高さ調節を行うことができる。なお、前記左右の車軸19の車輪20の回転がチェン55及びスプロケット88に対してほぼ一回転自在(例えば300度)になるように、これら左右の車軸19上のロールピン87と、スプロケット88の側面に突出されるストッパー89との間で係合しうる構成としている。即ち、スプロケット88と左右の車軸19との関係は、スプロケット88がほぼ300度の回転をしたときストッパー89がロールピン87に係合して、車輪20を駆動する。従って、ストッパー89とロールピン87とが係合しない回転角度(ほぼ300度の範囲)は、各車輪20及び車軸19はスプロケット88に対して回動自在であり、作業条の端での旋回や走行等を円滑に行いうる。
【0023】図11,図12において、上例と異なる点は、中央部のロータリ伝動ケース2の左右両側部に配置される耕耘爪22Aを、この外側に配置される耕耘爪Bに対して逆回転させるもので、耕耘爪22Aは土壌面をアップカットの方向へ耕耘し、耕耘爪22Bはダウンカットの方向へ回転して耕耘する。又、耕耘爪22Bの爪ホルダー106と、この耕耘爪軸107内端のディスクカバー108との間に亘って、この耕耘爪軸107と平行状の巻付防止杆109を設けて、耕耘時の藁や草類の巻付きを防止する。
【0024】前記伝動ケース2内には、入力伝動軸5上にシフタロッド110の操作される変速ギヤ111を設け、軸112上のギヤ113に噛合して変速連動しうる。更にこのギヤ113と軸114上のギヤ115とを噛合し、軸116上のギヤ117と噛合し、ロータリ軸21上のギヤ118と噛合して、このロータリ軸21を変速連動し、耕耘爪軸107を正回転伝動する。
【0025】又、該軸116によって、ギヤ117と共にこの左右両側のスプロケット119を駆動し、ロータリ軸21の外周に回転自在の逆転ロータリ軸120に一体のスプロケット121との間をチェン122で伝動して、左右の逆転ロータリ軸120を前記ロータリ軸21に対して逆回転すべく連動構成する。この逆転ロータリ軸120の外周に逆転耕耘爪軸122が一体回転すべく設けられて、爪ホルダー123によって耕耘爪22Aが取付けられる。この逆転耕耘爪軸122の外側端面を、前記耕耘爪軸107に固定のディスクカバー108を被嵌させて、泥土や巻付藁等の侵入を防止している。前記巻付防止杆109の内側端はこのディスクカバー108の外周面に溶接されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】側面図。
【図2】その一部の拡大側面図。
【図3】その平面図。
【図4】その背面図。
【図5】操作パネルの平面図。
【図6】伝動機構図。
【図7】伝動機構図。
【図8】ハンドル取付部の背面図。
【図9】その側面図。
【図10】ロータリカバー部の平面図。
【図11】一部別実施例を示す耕耘爪部の正面図。
【図12】その側面図。
【符号の説明】
1 車輪伝動ケース
2 ロータリ伝動ケース
7 操縦ハンドル
8 ハンドルブラケット
32 ピン穴
33 連結プレート
34 基部
35 側辺部
65 連結部材
66 ロックピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】下部に車輪軸19を有する走行伝動ケース1の上側部に、左右に亘る門形状形成で操縦ハンドル7を取付けるハンドルブラケット8を設け、このハンドルブラケット8の左右両側辺部35間をハンドル位置調節用のピン穴32を有する連結プレート33で連結し、ハンドル7の左右基部34間を連結する連結部65には前後に抜き挿しのロックピン66を設け、この連結プレート33のピン穴32にこのロックピン66を係合可能に設け、更に前記ハンドルブラケット8に対して単一の変速レバー11を上下及び左右方向に揺動自在に設け、この変速レバー11をハンドルブラケット8の幅内で上下に揺動させることによって走行系とロータリ系の切替えを行い、左右方向に揺動させることによって、走行系の変速又はロータリ系の正逆転の切替えを行なわせてなる耕耘機。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図12】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【特許番号】特許第3395441号(P3395441)
【登録日】平成15年2月7日(2003.2.7)
【発行日】平成15年4月14日(2003.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−81088
【出願日】平成7年4月6日(1995.4.6)
【公開番号】特開平8−276873
【公開日】平成8年10月22日(1996.10.22)
【審査請求日】平成14年3月14日(2002.3.14)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【参考文献】
【文献】特開 平3−276886(JP,A)
【文献】実開 平4−2790(JP,U)