説明

耳あな型補聴器

【課題】 フェースプレートの表面に付着している水や汗が電池カバーとフェースプレートの隙間から補聴器本体内に浸入し難くすると共に、電池カバーの開閉に際して、装用者の指先に付着しているゴミや垢などが補聴器本体内に入り難くする耳あな型補聴器を提供する。
【解決手段】 フェースプレート2に開閉自在な電池カバー4を設けた耳あな型補聴器1において、電池カバー4には開閉用の爪部5が設けられ、フェースプレートの電池カバー4が設置される開口部の両側4b,4cと爪部5の周囲に流入防止壁部9を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェースプレートに開閉自在な電池カバーを設けた耳あな型補聴器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェースプレートに開閉自在な電池カバーを設けた耳あな型補聴器では、電池カバーの表面とフェースプレートの表面で同一面が形成されている。また、電池カバーの開閉を円滑にするため、特許文献1に記載のように、電池カバーに摘み部を設けるタイプや特許文献2に記載のように、電池カバーに爪部を設けるタイプが知られている。更に、特許文献2に記載の電池カバーには、マイクロホンの集音口が設けてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−084399号公報
【特許文献2】特開2010−135953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1,2に記載の耳あな型補聴器においては、電池カバーの表面とフェースプレートの表面が同一面を形成しているため、水や汗がフェースプレートの表面に付着すると、電池カバーとフェースプレートの隙間から流れ込み内部に浸入し易い。また、電池カバーに爪部を設けるタイプでは、装用者が電池カバーを開くときに、指先に付着しているゴミや垢などが補聴器本体内に入り易い。
【0005】
また、特許文献2に記載の耳あな型補聴器においては、マイクロホンの集音口を設けた電池カバーの表面とフェースプレートの表面が同一面を形成しているため、水や汗がフェースプレートの表面に付着すると、この水や汗がマイクロホンの集音口まで流れて、この集音口から侵入する場合がある。更に、装用者が電池カバーを開けるため、電池カバーの爪部に指先を掛けた際に、指先がマイクロホンの集音口に触れ、ゴミや垢などが指先に付着しているとこの集音口に付着し、詰まる場合がある。
【0006】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フェースプレートの表面に付着している水や汗が電池カバーとフェースプレートの隙間から補聴器本体内に浸入し難くすると共に、電池カバーの開閉に際して、装用者の指先に付着しているゴミや垢などが補聴器本体内に入り難くする耳あな型補聴器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、フェースプレートに開閉自在な電池カバーを設けた耳あな型補聴器において、前記フェースプレートの前記電池カバーが設置される開口部の周囲に流入防止壁部を形成したものである。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、フェースプレートに開閉自在な電池カバーを設けた耳あな型補聴器において、前記電池カバーには開閉用の爪部が設けられ、前記フェースプレートの前記電池カバーが設置される開口部の両側と前記爪部側の周囲に流入防止壁部を形成したものである。
【0009】
更に、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の耳あな型補聴器において、前記電池カバーが閉じたときに、マイクロホンの集音口に通じるチャンバが形成され、前記フェースプレートと前記電池カバーの対抗するコーナ部に所定容積の空間が形成されるものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、フェースプレートの表面に水や汗が付着しても、フェースプレートの電池カバーが設置される開口部の周囲に流入防止壁部が設けられているので、その水や汗が電池カバーとフェースプレートの隙間から流れ込み補聴器本体内に浸入し難くい。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、フェースプレートの表面に水や汗が付着しても、前記フェースプレートの電池カバーが設置される開口部の両側と爪部の周囲に流入防止壁部が設けられているので、その水や汗が電池カバーとフェースプレートの隙間から補聴器本体内に浸入し難くい。また、装用者が爪部に指先を掛けて電池カバーを開くときに、指先にゴミや垢などが付着していても、そのゴミや垢などが流入防止壁部により、補聴器本体内に入り難くい。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、フェースプレートの表面に水や汗が付着しても、電池カバーの周囲に流入防止壁部が設けられているので、その水や汗がマイクロホンの集音口から浸入し難い。また、装用者が電池ホルダのカバーを開けるために、電池カバー爪部に指先を掛けた際に、指先にゴミや垢などが付着していても、そのゴミや垢などが流入防止壁部で防ぐことができるので、集音口や着座部に形成された2つの孔などに付着し難くい。更に、フェースプレートと電池カバーの対抗するコーナ部に所定容積の空間を形成したので、隙間に水や汗が付着したとしても、毛細管現象により、この空間やチャンバに入り難くい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る耳あな型補聴器の斜視図で、(a)は電池カバーが閉状態の場合、(b)は電池カバーが開状態の場合
【図2】耳あな型補聴器の平面図
【図3】寸法説明図
【図4】作用説明図
【図5】図2のA−A線断面の要部拡大図
【図6】図2のB−B線断面の要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。本発明に係る耳あな型補聴器1は、図1と図2に示すように、フェースプレート2と本体ケース3からなる。フェースプレート2には、音を電気信号に変換するマイクロホン、電源となる電池を収納する電池収納部などが設けられている。本体ケース3には、マイクロホンから出力される電気信号を装用者の聴力に適合するように処理する補聴処理部、補聴処理部で処理された電気信号を音に変換するイヤホンなどが設けられている。
【0015】
また、フェースプレート2には、開閉自在な電池カバー4が設けられている。電池カバー4には、電池カバー4を指先で開けるために、指先を掛ける爪部5が設けられている。なお、爪部5の代わりに指先で摘む摘み部(特許文献1参照)を設けることもできる。電池を交換する場合には、爪部5に指先を掛けて電池カバー4を開け、電池収納部の電池を新たな電池に交換した後に、爪部5の背部分や電池カバー4自体を押して閉める。
【0016】
また、爪部5の下側の電池カバー4には、マイクロホンの集音口6が設けられている。そして、フェースプレート2には、電池カバー4が合わさる着座部7が設けられ、この着座部7にはマイクロホンの集音口6と対向してマイクロホンに通じる孔8が2つ形成されている。更に、フェースプレート2の表面2aには、電池カバー4が設置される開口部の周囲に流入防止壁部9が設けられている。
【0017】
図3に示すように、流入防止壁部9の高さHは、フェースプレート2の表面2aに付着した水や汗が流入防止壁部9を乗り越えて、フェースプレート2と電池カバー4の隙間10に浸入しない程度で、不自然に突出することなく見栄えが悪くない高さである。また、流入防止壁部9の幅Wは、強度不足にならず、不自然に幅広ではなく見栄えが悪くない幅である。
【0018】
望ましくは、高さHは0.3mmから0.9mmの範囲(0.3mm≦H≦0.9mm)であり、幅Wは0.2mmから0.7mmの範囲(0.2mm≦W≦0.7mm)である。このような範囲であれば、見栄えを気にすることなく、フェースプレート2の表面2aに付着した水や汗がフェースプレート2と電池カバー4の隙間10に入り難くなる。
【0019】
このように、電池カバー4が設置される開口部の周囲に流入防止壁部9を設けたことにより、フェースプレート2の表面2aに水や汗が付着しても、その水や汗が電池カバー4とフェースプレート2の隙間10から補聴器本体内に浸入し難くい。更に、図4に示すように、装用者が指先11を爪部5に掛けて電池カバー4を開く動作において、先ず指先11が流入防止壁部9に触れてから爪部5に掛かるので、装用者の指先11に付着しているゴミや垢などが流入防止壁部9によって、本体ケース3内に入り難くなる。
【0020】
流入防止壁部9と爪部5の位置関係については、装用者が電池カバー4を開くとき、自然に、装用者の指先11が流入防止壁部9の外側に接してから爪部5に掛るようにすることが重要である。従って、図3に示すように、爪部5の先端5aと流入防止壁部9の外側角部9aとの位置関係は、爪部5の先端5aと流入防止壁部9の外側角部9aとの水平距離Xと爪部5の先端5aと流入防止壁部9の外側角部9aとの垂直距離Yにより決める。0.0mm≦X≦2.0mm、0.8mm≦Y≦2.5mmが望ましい。さらに、望ましくは、0.5mm≦X≦1.5mm、1.0mm≦Y≦2.0mmである。
【0021】
なお、電池カバー4の回転軸側4aに形成する流入防止壁部9については、上記寸法H,Wに限らず、他の流入防止壁部9を基にし、設計により所望の寸法H,Wで形成すればよい。ここでは、フェースプレート2の表面2aから緩やかな傾斜で盛り上げて、電池カバー4の両側4b,4cに形成された流入防止壁部9と滑らかにつながる形状としている。
【0022】
また、電池カバー4にマイクロホンの集音口6を、フェースプレート2の着座部7に2つの孔8を設けているが、電池カバー4が設置される開口部の周囲に設けた流入防止壁部9により、フェースプレート2の表面2aに水や汗が付着しても、その水や汗がマイクロホンの集音口6に浸入し難くい。また、電池カバー4を開くときに、装用者の指先11がマイクロホンの集音口6付近に位置することになるが、指先11にゴミや垢などが付着していても、流入防止壁部9で防ぐことができるので、そのゴミや垢などがマイクロホンの集音口6や着座部7に形成された2つの孔8などに付着し難くい。
【0023】
更に、耳あな型補聴器1には、図5に示すように、電池カバー4の集音口6の裏面には所望の空間となる窪み部12が形成されている。また、図1(b)及び図6に示すように、電池カバー4を閉じた時に、電池カバー4の窪み部12の周辺部分と合わさるフェースプレート2には着座部7が形成されており、電池カバー4の窪み部12と着座部7が合わさることによりチャンバ13が形成される。チャンバ13が形成される着座部7には、マイクロホンに通じる孔8が集音口6と直線状につながらないように2つ形成されている。
【0024】
そして、図5で示すように、電池カバー4を閉じた状態で、フェースプレート2の凹コーナ部2bと電池カバー4の面取りされた凸コーナ部4dにより対向するコーナ部に、フェースプレート2と電池カバー4の対向する面に形成される隙間10とつながる所定容積の空間14を設けている。
【0025】
例えば、図6に示すように、隙間10のD部に水や汗などの液体が付着した場合、先ず液体は隙間10に流れ込みE部を通る。この際、毛細管現象により液体は電池カバー4とフェースプレート2の対向する隙間10に周るので、空間14であるF部に入り難くなる。更に、水や汗などの液体が空間14であるF部に浸入したとしても、電池カバー4と着座部7の隙間であるG部が狭くなっているため、液体はチャンバ13のH部に入り難くなる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、フェースプレートの表面に水や汗が付着しても、電池カバーの周囲に流入防止壁部が設けられているので、その水や汗が電池カバーとフェースプレートの隙間から補聴器本体内に浸入し難くすると共に、電池カバーの開閉に際して、装用者の指先に付着しているゴミや垢などが補聴器本体内に入り難くする耳あな型補聴器を提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…耳あな型補聴器、2…フェースプレート、2a…表面、2b…凹コーナ部、3…本体ケース、4…電池カバー、4a…回転軸側、4b,4c…両側、4d…凸コーナ部、5…爪部、5a…先端、6…集音口、7…着座部、8…孔、9…流入防止壁部、9a…外側角部、10…隙間、11…指先、12…窪み部、13…チャンバ、14…空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェースプレートに開閉自在な電池カバーを設けた耳あな型補聴器において、前記フェースプレートの前記電池カバーが設置される開口部の周囲に流入防止壁部を形成したことを特徴とする耳あな型補聴器。
【請求項2】
フェースプレートに開閉自在な電池カバーを設けた耳あな型補聴器において、前記電池カバーには開閉用の爪部が設けられ、前記フェースプレートの前記電池カバーが設置される開口部の両側と前記爪部側の周囲に流入防止壁部を形成したことを特徴とする耳あな型補聴器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の耳あな型補聴器において、前記電池カバーが閉じたときに、マイクロホンの集音口に通じるチャンバが形成され、前記フェースプレートと前記電池カバーの対抗するコーナ部に所定容積の空間が形成されることを特徴とする耳あな型補聴器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−27024(P2013−27024A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163237(P2011−163237)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000115636)リオン株式会社 (128)