説明

耳組装置の制御方法

【課題】 織段防止のために低速回転をともなう空打ちスタートにより運転開始され、かつ専用モータで駆動される耳組装置を備える織機で、織機起動時に緯糸の緩みを発生させることなく、専用モータの追従遅れに起因する起動トラブルを防止する。
【解決手段】 専用モータ用制御器は、製織運転中に対応する主軸角度に対する同期駆動状態で駆動する第1の制御と、同期駆動を解除して専用モータを停止状態におく第2の制御と、同期駆動を解除して専用モータを正転駆動状態にする第3の制御が実行可能にされる。専用モータ用制御器は、主軸を低速回転させる工程中に前記第2の制御を実行し、遅くとも空織り運転中には、前記第3の制御を開始するとともに、遅くともその後の空織り運転期間あるいは製織運転開始されてから1サイクル終了されるまでの間に定められる所定時期までに、前記第1の制御を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停止段を防止するために、織機主軸の低速回転をともなう筬の空打ちスタートで運転開始する織機に関するものであり、より詳しくは、主軸の低速回転に同期して耳組装置が駆動されることで発生される緯糸の緩みや締まりすぎなどの問題が軽減される耳組装置の駆動制御に関する。
【背景技術】
【0002】
無杼織機においては、緯糸は織布に緯入れされる毎に、織布の織幅に応じて切断されるものであり、織布の両側には、織り組織のほつれを防止するための耳組織を形成することが必要である。そのための機構として、遊星ギア式耳組装置が広く知られている。(例えば、特許文献1を参照。)このものは、1 枚の太陽ギア上に2枚の遊星ギアを軸支するとともに、各遊星ギアには、耳糸ボビンとヤーンガイドとを支持させ、太陽ギアを駆動することによる遊星ギアの公転によって、各耳糸ボビンから解除される耳糸の開口運動を実現するとともに、遊星ギアの時点によって、耳糸に対する撚りをかけることができるものであり、また、このときの耳糸の撚り方向と数とを最適に設定するために太陽ギアと遊星ギアとの間に、必要に応じてチェンジギアを介装する技術も提案されている。(例えば特許文献2を参照。)このような耳組装置は、織機の運動と同期関係を保って駆動されなければならないものであるため、この同期関係を実現する手段として、耳組装置と織機とを機械的に連結することによって行うほか、耳組装置を織機主軸モータとは別個に設けられる専用モータで駆動するように構成し、織機主軸の回転に対し専用モータを同期駆動することによって行われる。(例えば特許文献3を参照。)
【0003】
一方、織機起動時に発生する織段を防止する技術として、織機の起動時に、織機主軸を逆転方向に回転させ、その後織機主軸を正転方向に起動しつつ上記逆転量されるまでは筬の空打ち状態とし、その後緯入れを開始する、いわゆる逆転をともなう空打ちスタートと呼ばれる織機の起動方法が知られている。(例えば特許文献4を参照。)この技術によれば、織機起動後筬の空打ち期間を経て筬打ち力が回復されてから緯入れが開始されるため、いわゆる織機起動時の過渡回転状態における筬打ち力の低下に起因する織段を解消することができる。このような織段防止技術は、上記した専用モータで駆動される耳組装置を搭載した織機にも適用される。
【0004】
しかし、耳組装置が常に織機主軸角度に対して同期駆動される織機では、例えば空打ちスタート時の主軸低速逆転時において、耳組装置や経糸開口装置も同様に逆転される。このため、伸縮性の強い緯糸織物製織時には、既に織り込まれた緯糸がその逆転にともなって経糸や耳糸からの拘束を受けなくなって緯糸の緩みが発生し、いわゆる織物欠点が発生するという問題がある。このような専用モータで駆動される耳組装置で、織機起動時に織機主軸を逆転させる際、例えば専用モータの同期制御を中断して専用モータを停止状態とし、織機の再起動により織機主軸が上記逆転した分だけ正回転された時点より、主軸に対する専用モータの同期制御を回復させるように構成することで、逆転中の耳糸開口を阻止し上記緯糸緩みを防止することも考えられる。しかし、そのような装置によれば、織機再起動後の同期駆動の回復時点では、主軸の回転が既に高速回転になっているため、同期駆動に切り換えたとしても、これまで停止状態におかれている専用モータを直ちに高速回転状態の主軸角度に追従させることはできず、耳組装置の追従遅れが発生する。この結果、織機の起動直後に耳組装置の追従遅れにともなって耳糸開口不良にともなう緯入れミスとなる起動トラブルが発生したり、起動直後に織り込まれた部分の耳締まりがほかの部分に比べて悪くなるなどの織物品質上の問題も発生する。
【0005】
なお、このような耳組装置の追従遅れの問題は、特許文献3のような専用モータで同期駆動される遊星ギア式耳組装置に限らない。例えば特許文献5に示される耳組装置のように、耳糸を捩る糸捩り部分と耳糸ボビンを保持するボビン保持装置とを分離して構成されるとともに、糸捩り部分およびボビン保持装置にはそれぞれ専用モータが設けられ、織機の回転に対応して各専用モータが一方向に同期駆動されることにより耳糸開口運動(捩り動作)を行う装置においても同様に発生する。また、織機起動時には、上記した逆転をともなう空打ちスタートで起動される織機に限らず、例えば織段防止のために正転をともなう空打ちスタートされる織機についても同様である。このような正転をともなう空打ちスタートについて、具体的には、先ず織機(主軸)を所定回転量だけ低速正転させ、その後織機を起動しつつ所定回転量回転されるまで緯入れを伴わない空織り運転を実行し、その後製織運転を開始するものである。従って、製織運転が開始されるまで耳組装置が主軸角度に同期して正転されることにより、耳糸の過剰な捩りが発生し、言い換えれば、耳糸にコブが発生したり、ほかの織部分に比べて耳組織の締まりすぎが発生するという問題もある。
【特許文献1】実公昭43−18767号公報
【特許文献2】特開昭59−47439号公報
【特許文献3】特開昭63−145446号公報
【特許文献4】特開昭61−124651号公報
【特許文献5】特開2002-294532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように低速回転をともなう空打ちスタートにより運転開始される織機であって、専用モータで駆動される電動耳組装置を搭載する織機に対し、上記逆転にともなう緯糸緩みの防止と、専用モータを同期駆動する際の追従遅れとをともに解消しうる技術について、これまでのところ知られていない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、空打ちスタートにより運転開始される織機で、かつ専用モータで駆動される耳組装置を備える織機に対し、運転開始時の緯糸の緩みや織機の起動トラブル、耳の異状を防止して、良質の織布を効率よく生産することにある。
【課題を解決するための手段・発明の効果】
【0008】
そこで、本発明である耳組装置の制御方法は、織機操作信号の入力により、原動モータを介して主軸の駆動を制御する主制御器と、専用モータを介して駆動される耳組装置と、前記専用モータの駆動を制御する専用モータ用制御器とを備え、前記主制御器は、主軸を所定方向に第1の回転量だけ低速回転させ、次いで主軸を起動して第2の回転量正転されるまでの間緯入れを伴わない空織り運転を1サイクル以上行わせた後緯入れをともなう製織運転に移行される織機に適用される。そして本発明の特徴点としては、前記専用モータ用制御器は、主軸角度に同期して専用モータを駆動する第1の制御と、専用モータを停止させる第2の制御と、専用モータを予め定めた駆動パターンに従って正転駆動させる第3の制御が実行可能にされており、前記専用モータ用制御器は、主軸を前記低速回転させる工程中に前記第2の制御を実行し、遅くとも空織り運転中には前記第3の制御を開始するとともに、その後の空織り運転期間に定められる所定時期あるいは製織運転開始されてから1サイクル終了されるまでの間に定められる所定時期までに、前記第1の制御を開始することをその要旨とする。
【0009】
上記織機では、織機主軸の起動後、緯入れを伴わない空織り運転が1サイクル以上行われるから、緯入れ再開後に緯入れされた緯糸に対し増大された筬打ち力で筬打ちされるので織段を解消することができる。一方耳組装置では、低速回転される工程中に専用モータを停止状態にすることにより耳糸を閉口状態に維持して緯糸を拘束することができる。そして、織機が起動されたあと遅くとも空織り運転中には、第3の制御を開始して専用モータを正転駆動し、その後主軸角度が同期駆動角度に達した時点より主軸角度に対する同期駆動を実行する。そのような同期駆動角度は、遅くともその後の空織り運転期間あるいは製織運転開始されてから1サイクル終了されるまでの間に定められるから、専用モータはその後の同期駆動に備えて加速されている。従って、従来装置のような同期駆動角度に達した時点で停止状態にある専用モータをいきなり同期駆動する場合に比べ、主軸に対する耳組装置の追従遅れを減少させることができ、従来発生していた緯入れミス、耳組織の緩み・締まりすぎなどの織物品質上の問題も防止できる。
【0010】
織機運転開始時に実行される主軸の低速回転について、低速逆転、低速正転のいずれも考えられる。低速逆転される形態について、より具体的には、主軸を所定方向に第1の回転量だけ低速逆転させ、次いで主軸を起動するとともに前記第1の回転量とほぼ同量に定められる第2の回転量正転されるまでの間緯入れを伴わない空織り運転を1サイクル以上行わせ、その後緯入れをともなう製織運転に移行されるものであり、前記第1の回転量は、(言い換えれば第2の回転量についても、)織段状況を考慮して適切に設定される。このような織機の運転開始方法を、逆転をともなう空打ちスタートと称する。この運転開始方法によれば、起動後の筬打ち力不足に起因する織段を防止するとともに、緯糸の緩み、専用モータの追従遅れを防止できる。
【0011】
これに対し、低速正転される形態では、より具体的には、主軸を所定方向に第1の回転量だけ低速正転させ、次いで主軸を起動するとともに第2の回転量正転されるまでの間緯入れを伴わない空織り運転を1サイクル以上行わせ、その後緯入れをともなう製織運転に移行されるものであり、空織り運転が実行される期間である第2の回転量は、織段の強度に対応して適宜設定されるとともに、第1の回転量は、第1の回転量と前記第2の回転量との和が織物組織のリピート数の倍数に対応する回転量と合致される関係となるように予め決定される。このように運転開始される織機の運転開始方法を、正転をともなう空打ちスタートと称する。この場合には、空織り運転によって起動後の筬打ち力不足に起因する織段を防止するとともに、低速正転および空織り運転における過剰な耳組装置の正転は実行されず、その後の同期駆動に寄与される分だけ正転駆動を実行するので、耳組織の締まりすぎ(捩りすぎた耳糸によるコブなど)を防止でき、しかも専用モータの追従遅れも防止できる。専用モータの追従遅れすなわち耳組装置の位相遅れが大きくなると、耳糸開口不良にともなう緯入れミスなどにより織機起動直後の緯入れ安定性に影響が出るのだが、そのような遅れが抑えられることにより、織機の稼働がより安定する。
【0012】
好ましくは、前記専用モータ制御器には、前記所定の時期に達した時点では、専用モータの位相が製織運転中における前記主軸角度に対応する同期駆動状態の位相に合致するように前記第3の制御の開始時期およびその制御期間における正転駆動量が予め設定される。これにより、織機主軸の起動後正転駆動される専用モータを第1の制御に切り換わるときには、織機主軸角度に対する同期駆動状態に円滑に移行させることができる。
【0013】
専用モータの正転駆動を開始する第3の制御の開始時期は、専用モータの加速特性を考慮して決定すれば良く、主軸の低速回転が終了される時点以降であって空織り運転期間内に定めることができる。より具体的には、第2の制御の開始時期は、空織り運転開始時期に対して前となるように定めてもよいし、後となるように定めてもよい。
【0014】
前記第3の制御における正転駆動では、専用モータを製織運転時における同期速度に向けて徐々に加速するようにしてもよいし、製織運転時における同期速度以下の値に決定される所定速度で専用モータを回転させるようにしてもよく、本発明ではいずれの駆動態様も含まれる。
【0015】
さらに好ましくは、前記専用モータ用制御器は、専用モータを逆転駆動する第4の制御が実行可能にされるとともに、前記専用モータ用制御器には、前記第4の制御の実行時における専用モータの逆転量が予め設定されており、前記主制御器は、主軸の低速回転させる工程が終了されてから織機主軸を一旦停止させ、次いで主軸を起動するとともに前記専用モータ用制御器は、主軸が前記一旦停止される間に、前記第4の制御を実行するようにしてもよい。
【0016】
先の主軸の低速回転が終了した状態では、経糸が緯糸を拘束している状態にあるため、第4の制御による専用モータのみの逆転が実行され耳糸が緯糸を解放したとしても、経糸開口はそのまま緯糸を拘束し続ける。よって、この間の緯糸の緩みが発生しない。そして織機が起動された後前記専用モータの第3の制御が実行され、同期駆動角度に達した時点では、専用モータは第4の制御を実行する前の位相状態でかつ正転方向に加速された状態になっていて、しかも耳糸開口位相が通常の製織運転とほぼ同じ位相になっており、以降主軸に対する同期駆動状態に移行される。このため、織機の再運転時における耳糸の過剰な捩りが発生せず、織物品質上より好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための具体的な形態について、以下図面を用いて説明する。図1には、織幅方向より見た織機の全体図を示している。
【0018】
図1には、織機10の全体図を示す。織機10では、複数の経糸12は経糸ビーム14からシート状に引出され、またバックローラ16,複数の綜絖18および筬20を経て織前22に連なっている。また経糸12は、複数の綜絖枠19に取り付けられる各綜絖18,18にそれぞれ挿通されており、各綜絖18,18の往復運動により開口される。経糸12の開口24内には、緯糸46が図示しない緯入れ装置を介して緯入れされる。緯入れされた緯糸46は、筬20によって織前22に打ち付けられて織布26が形成される。そして織布26は、織前22からガイドロール28を経て服巻ロール30に達し、服巻ロール30と一対のプレスロール32とにより送り出され、布巻ロール34に巻取られる。
【0019】
筬20および綜絖枠19,19は、筬打ち駆動装置36および開口駆動機構38によりそれぞれ駆動される。筬打ち装置36および開口駆動機構38は、主軸42の回転運動を所望の往復運動に変換する公知の機構で構成され、筬20および複数の綜絖枠19を介し所定の筬打ち運動および経糸開口運動を行わせる。
【0020】
一方、経糸ビーム14は、図示しない送出モータを介して駆動され、経糸12をシート状に送り出す。他方、服巻ロール30は、図示しない巻取モータを介して駆動され、対となるプレスロール32,32と共同して織布26を布巻ロール34に向けて送り出す。織機の製織運転中には、送出モータは、図示しない送出制御装置からの所望経糸張力を維持するように出力される信号に従って経糸ビーム14を回転駆動し、また巻取モータは、図示しない巻取制御装置からの設定緯糸密度に対応される周速で回転されるべく出力される信号にしたがって服巻ロール30を回転駆動する。
【0021】
織機主軸42には、主軸モータ40および電磁ブレーキ43に連結されており、主軸42は、主軸モータ40により駆動されるとともに、電磁ブレーキ43の作動により制動される。
【0022】
一方、綜絖18、18とバックローラ16との間には、専用モータにより駆動される耳組装置としての遊星ギア式耳組装置50A,50Bが、織布26の両端位置に配置されている。各耳組装置から対となって引出される耳糸48A,48Bは、その先端が織布26の両端部の織前22に連なっているとともに、専用モータの回転により耳糸48A,48Bの開口運動(捩り運動)を遂行可能にされている。
【0023】
遊星ギア式耳組装置50A,50Bの構造について、図2を用いて説明する。遊星ギア式耳組装置50Aは、大まかに言えば、いずれも外周縁に多数の歯が刻設される複数のギアであって、太陽軸54を中心に回転自在に支持されるセルベージギア52と、太陽軸54に同軸にかつこれに対して相対的回転不能に取付けられる太陽ギア53と、セルベージギア52上の径方向に離れた位置に設けられる軸を中心として回転可能に取付けられるアイドルギア56A、56Bならびに遊星ギア55A,55Bとを含む。遊星ギア55Aと遊星ギア55Bは、セルベージギア52上に、太陽軸54を挟んで相対する位置を回転中心として配置されている。また遊星ギア55Aには、耳糸ボビン57Aおよび耳糸48Aを案内するメール58Aが、ギア55Aに対して一体に取付けられ、同様に遊星ギア55Bには、耳糸ボビン57Bおよび耳糸48Bを案内するメール58Bが、ギア55Bに対して一体に取付けられている。耳糸ボビン57A,57Bから引出される各耳糸48A,48Bは、対応されるメール58A,58Bを経由して織前22に連なっている。そして耳糸ボビンを保持しつつ耳糸を送り出す機構として、各耳糸張力の上昇にともなって耳糸ボビン57A,57Bを一定量回転させて耳糸48A,48Bを繰り出す図示しない公知の機構が設けられている。
【0024】
一方、太陽軸54は、図示しない織機フレームに対して相対的に回転不能に取付けられるとともに、セルベージギア52を貫通して延びる太陽軸54の端部には、太陽ギア53が相対的回転不能に取付けられる。他方、セルベージギア52側では、太陽ギア53と遊星ギア55Aに噛合するように、アイドルギア56Aが配置される一方、太陽ギア53と遊星ギア55Bに噛合するように、アイドルギア56Bが配置されている。このため、セルベージギア52が太陽軸54を中心に1回転されると、太陽ギア53に噛合されるアイドルギア56A、56Bは太陽ギア53の回りを公転しつつ自転するとともに、この自転運動はこれらに噛合される遊星ギア55A,55Bにも伝達される。この結果、遊星ギア55A,55Bと一体に回転されるメール58A,58Bの各中心は、2点鎖線にて図示される軌跡を描くように耳糸開口運動が遂行される。このような遊星ギア式耳組装置は、公知の装置である。
【0025】
専用モータとしてのパルスモータ59Aの出力軸にはドライブギア51が取付けられ、その外周縁に多数の歯車を有するドライブギア51がセルベージギア52に噛合されるように配置されており、パルスモータ59Aは耳組装置50Aを所定の減速比率で回転駆動可能にされている。パルスモータ59Aは、製織運転中には、織機主軸が2回転する間にセルベージギア52が1回転するように駆動されるものであり、いわゆる専用モータで駆動される遊星ギア式耳組装置を構成する。なお、耳組装置50Bに対しても、上記同様のドライブギア51およびパルスモータ59Bが設けられることは言うまでもない。また、上記例では、各耳組装置50A,50Bには、対応されるパルスモータ59A,59Bがそれぞれ設けられる例であるが、しかしこれ以外の耳組装置の例としては、共用される1つのパルスモータによって2つの耳組装置50A,50Bを駆動するように構成してもよい。
【0026】
また、このような耳組装置50A,50Bは、織布26の両側に配置されるものであり、また各耳組装置50A,50B、さらにはこれを駆動するパルスモータ59A,59Bは、織布の織幅変更に対応して、織機フレームに対する取付位置を相対的位置調節可能に構成されている。
【0027】
図3には、織機の制御装置60の内部ブロック図を示している。織機の制御器として機能する織機の制御装置60は、大まかに言えば、各種製織用のパラメータを設定する設定器62と、設定器62に入力された設定パラメータおよび他の入力データを用いて織機を制御する主制御器64と、遊星ギア式耳組装置駆動用のパルスモータ59A,59Bを制御する耳組制御部90とを含む。
【0028】
主制御器64には、入力信号を受ける入力ポート66と、出力信号を出力する出力ポート68と、各種の回路装置に制御信号を出力する中央処理ユニット(CPU)70と、各種の情報などを記憶する記憶器72とを備えている。記憶器72には、機械メーカ側で作成された複数の制御プログラム(制御ルーチン)が予め格納されるとともに、現在の制御値等の制御データが一時的に格納可能にされている。
【0029】
主制御器64には、さらに主軸モータ40を駆動する駆動回路74と、電磁ブレーキ43を駆動する駆動回路76と、緯入れを制御する緯入れ制御装置78と、緯入れされた緯糸を検知して緯入れの正否を判定し緯入れミス信号を発生する緯糸検知回路80とを含む。これらの回路装置74〜80は、主制御器64から出力される信号により制御される。
【0030】
また主制御器64には、織機を運転させる際に操作される運転ボタン81,寸動正転させる際に操作される低速正転ボタンとしての寸動ボタン82,逆転させる際に操作する低速逆転ボタンとしての逆転ボタン83、連続運転中の織機を停止させる際に操作される停止ボタン84が接続されており、各操作ボタンからの操作信号、すなわち運転操作信号S1、寸動操作信号S2、逆転操作信号S3、停止操作信号S4がそれぞれ入力されている。また、主制御器64は、上記操作信号のほか、緯糸検知回路80からの緯入れミス信号S11、織機主軸42に連結された角度信号発生器85からの主軸角度信号θなどを入力ポート66に受けており、主制御器64のCPU70は、記憶器72に格納される制御プログラム(制御ルーチンを実行し、制御信号を出力ポート68を介して出力することにより、回路74〜80を制御することができる。
【0031】
主軸42には、回転位相としての角度θを検出するために、例えばアブソリュート形エンコーダやインクリメンタル形エンコーダのような公知の角度信号発生器(ENC)が、角度信号発生器85として連結される。主軸角度信号θは、主制御器64では織機の運転や停止のほか織機の全体動作の制御などに用いられ、また後述されるように停台原因の発生にともなって織機を中口閉口状態に待機させる制御、織機を運転する際に所定回数の空織りを実行する空打ちスタートにおいて各工程を切り換える制御等にも用いられる。
【0032】
駆動回路74は、主制御器64から出力される信号の種類(運転信号S6,正転信号S7,逆転信号S8)に応じて、主軸モータ40に、これの駆動態様(高速正転、低速正転、低速逆転等)に応じた電力を供給する。例えば、低速駆動用電源としての低周波数出力のインバータ装置と、高速駆動用電源としての商用電源と、これらの出力を主軸モータ40の一次巻線に選択的に給電する電磁開閉器とからなる公知の駆動回路で構成することができる。
【0033】
織機の運転中、駆動回路74は、主制御器64からの運転信号S6のオン出力(オンの運転信号S6)により主軸モータ40を高速正転させて、織機を通常運転に維持する。また駆動回路74は、織機の正転時に正転信号S7のオン出力(オンの正転信号S7)により主軸モータ40を低速で正転させ、織機の逆転時に逆転信号S8のオン出力(オンの逆転信号S8)により主軸モータ40を低速で逆転させる。
【0034】
駆動回路76は、織機の正転、逆転および運転を終了する際に、主制御器64からの制動信号S9のオン出力(オンの制動信号S9)により、主軸42の制動に必要な電力を電磁ブレーキ43に送る。電磁ブレーキ43は、制動指令の出力により制動力を発生するものであれば良く、励磁によりディスクを吸着して制動力を発生するものに限らない。
【0035】
緯入れ制御装置78は、例えば、エアージェット織機の場合、緯糸測長貯留装置、緯入れノズル(メインノズル及び複数のサブノズル)、これらの装置や緯入れノズルからの流体噴射を制御する緯入れ制御回路を含む。緯入れ制御装置78は、織機の運転中(運転信号S6のオン出力中)は、緯糸測長貯留装置から緯入れ1ピック分の緯糸を緯糸測長貯留装置から解舒しつつ、緯入れ用の圧力流体をメインノズル及び複数のサブノズルからリレー式に噴射させて、緯糸を経糸開口内に緯入れする。しかし、空織り期間中(空織り信号S10がオン出力中)は、運転信号S6が出力オンされていても、緯糸の解舒や緯入れノズルの噴射をせず緯入れをしない。
【0036】
緯糸検知回路80は、反給糸側の織端付近に設けられた図示しないH1フィーラ及びH2フィーラのようなフィーラヘッドからの糸信号により、織機の通常運転中における緯入れの正否を判定し、緯入れミスの場合にそれを表す緯入れミス信号S11を発生する公知の回路である。この緯糸検知回路80は、空織り期間中(空織り信号S10がオン出力中)は、運転信号S6がオン出力であっても、緯糸検知動作を行わない(すなわち、緯入れミス信号S11を発生しない)。
【0037】
このような制御装置60の各回路に対し、設定器62は、例えば各設定パラメータの設定状況や織機の制御情報などを文字・数字あるいはグラフィック表示する表示機能と設定器としての情報入力機能とを兼ね備えた、いわゆるタッチパネルで構成されており、設定器62は、主制御器64や各回路装置74〜80、後述される耳組コントローラ91との間で設定値信号S13を介して情報送受可能にされている。設定器62に設定されるパラメータは、織機起動用や織機停止用などの設定パラメータのほか、製織用の各種パラメータが含まれており、製織用の各種パラメータについて、例えば緯糸密度、経糸張力、緯糸や経糸の糸種情報、緯入れ制御装置78や緯糸検知回路80に対する設定値のほか、織機運転開始時の起動方法の選択情報やその選択された起動方法に対する織機主軸の低速回転量や空織り運転期間などの設定値、さらには、耳組制御部90に対する耳組装置のクロスタイミングや耳糸開口パターンなど、電気的に設定される情報が含まれる。作業者は、そのような設定器62に設定値を入力するに際し、選択情報の表示欄あるいは設定値の表示欄に触れ、表示される図示しない選択メニュー、数値入力するためのテンキーなどの画面に触れることにより設定することができる。
【0038】
他方、耳組制御部90は、大まかに言えば、2つのパルスモータを制御可能な耳組コントローラ91と、パルスモータ59A,59Bに対応して設けられる駆動回路92A,92Bとを含む。耳組コントローラ91の入力部には、角度信号発生器85からの主軸角度信号θが分岐入力される一方、主制御器64からの制御モード信号S12が入力されるとともに、その出力部には、駆動量信号としての速度指令信号S14a,S14bが2つの駆動回路92A,92Bに対して出力可能に接続されている。また耳組コントローラ91には、設定器62からの設定値信号S13が接続されている。
【0039】
この実施例では、専用モータをいわゆる多相パルスモータで構成する例であり、駆動回路92A,92Bは、速度指令信号の形で入力される信号S14a,S14bに対応するパルス電流を、接続されるパルスモータ59A,59Bにそれぞれ出力するように構成して、いわゆる開ループ制御系を構成する。しかし、専用モータについて、回転速度あるいは回転量を制御可能なこれ以外のモータを用いても良く、例えば、駆動回路92A,92Bには、接続される専用モータの実回転速度信号あるいは実回転量信号をフィードバック入力し、入力される指令信号に対する閉ループ制御系を構成することもできる。
【0040】
耳組コントローラ91には、主制御器64からの耳組装置に対する制御モード信号S12が入力されるとともに、耳組コントローラ91は、パルスモータ59A,59Bに対する駆動を、複数の制御モードの中から信号S12に対応されるモードを選択して制御可能に構成されている。この実施例では、織機の運転開始時において耳組装置に対する制御を以下4つの制御に順次切り替える。耳組コントローラ91が実行可能な4つの制御モードとして以下が挙げられる。
【0041】
(A) 第1の制御
パルスモータ59A,59Bを、織機主軸42の角度信号θに対応する位相でそれぞれ回転駆動するものであり、この制御の実行期間では、パルスモータ59A,59Bは主軸角度信号θに対して同期駆動される。この制御は、織機起動時以外(より具体的には、製織運転中、ほか糸切れ修復する際の織機寸動中あるいは逆転中など)で選択される。この制御制御モードの実行により、織機主軸を正転駆動すれば、耳組装置を駆動するパルスモータ59A,59Bも主軸の回転量に対応して正転方向に回転され、また織機主軸を逆転駆動すれば、パルスモータ59A,59Bも主軸の回転量に対応して逆転方向に回転される。
【0042】
(B) 第2の制御
上記第1の制御のようにパルスモータ59A,59Bを駆動するのではなく、織機主軸42に対する同期状態を解除するとともに、パルスモータ59A,59Bを主軸42の角度信号θとは無関係に停止状態にするものである。この制御は、織機起動時において、耳組装置を停止状態におくときに選択される。
【0043】
(C) 第3の制御
上記第1の制御のような織機主軸角度に追従する同期駆動ではなく、織機主軸42に対する同期状態を解除するとともに、パルスモータ59A,59Bを予め設定される駆動パターンにしたがって正転駆動するものである。この制御は、織機起動時において、上記第2の制御の実行後より第1の制御を実行する前に選択されるものであり、停止状態にあるパルスモータ59A,59Bを、定常回転速度に達した主軸に対して同期駆動可能な位相まで加速させる際に選択される。
【0044】
(D) 第4の制御
上記第3の制御のような正転駆動ではなく、織機主軸42に対する同期状態を解除するとともに、パルスモータ59A,59Bを予め設定される駆動パターンにしたがって逆転駆動するものである。後述される織機起動時において、緯入れを伴わない期間(いわゆる空織り期間)におけるパルスモータに対する第3の制御による駆動によって耳糸の捩りが発生されるが、このような捩りが織物品質上の問題で許容されない織物の場合には、この制御を実行する旨の設定により上記第3の制御の前に実行されるものである。
【0045】
上記した第3の制御や第4の制御で用いられる駆動量パターンについて、そのパターンを構成する要素をもとに決定される。そのよう要素として、具体的には、駆動時間と駆動速度(あるいは駆動量)があり、これらは、織機主軸の回転速度変化に対するパルスモータ59A,59Bの追従性を考慮して予め決定され、耳組コントローラ91の図示しない記憶器に予め格納されている。このため、耳組コントローラ91は、第3の制御選択するあるいは第4の制御を選択する旨の制御モード信号S12を主制御器64から受けることにより、格納された駆動量パターンに従って速度指令信号S14a,S14bを出力する。
【0046】
そこで、低速回転をともなう空打ちスタートが行われる織機に対し、本発明が適用される耳組装置に関する具体的な動作形態について、図4に示すダイアグラム図を用いて具体的に説明する。
【0047】
以下第1の実施例で示す逆転をともなう空打ちスタートは、織機主軸は所定量低速逆転された後、織機主軸を起動しつつ緯入れを伴わない空織り運転を実行するとともに、上記低速逆転した際の所定逆転量の分だけ正転方向に回転されたことにより、緯入れをともなう製織運転を開始するものである。主制御器64には、織機運転開始時の織機の起動方法について、低速回転をともなう空打ちスタートを少なくとも1以上含む複数の起動方法が選択可能に予めプログラムされるとともに、設定器62に入力された起動方法に関する選択情報により、対応する起動方法を選択して運転開始可能にされている。
【0048】
本発明の特徴である専用モータ駆動される耳組装置は、低速逆転後の織機主軸を起動する際に、耳組装置を正転駆動して耳組装置を加速した後に織機主軸角度に対して同期駆動するものである。図4に示す実施例は、さらに好適なものであって、主軸起動時における正転動作に対応される回転量だけ、耳組装置の位相を予め逆転させることにより、製織運転に移行する際に耳糸の過剰な捩りが生じないようにする例であり、この例を第1の実施例として以下説明する。
【0049】
これを実現する装置では、織機起動に関する設定条件、及び耳組制御部90に対する設定条件が設定器62を介して予め設定されている。主制御器64には、織機運転開始時の織機の起動方法について、低速回転をともなう空打ちスタートを少なくとも1以上含む複数の起動方法が選択可能に予めプログラムされるとともに、設定器62に入力された起動方法に関する選択情報により、対応する起動方法を選択して運転開始可能にされており、また設定器62には、織機起動の設定条件として、逆転をともなう空打ちスタートを選択する旨の選択情報のほか、運転操作が行われる織機主軸角度、低速逆転時の主軸逆転量(言い換えれば主軸の第1の回転量)が織機の主軸回転回数と主軸の回転角度とを尺度として設定可能にされている。また逆転をともなう空打ちスタートの場合には、空織り運転期間の長さ(言い換えれば主軸の第2の回転量)は、低速逆転時の主軸逆転量と同じ値に決定される。本実施例では、設定器62には、織機起動の設定条件として逆転をともなう空打ちスタートを選択する旨の選択情報のほか、運転操作する主軸角度は「300°」に、また空織り運転期間長さに関する主軸回転回数は「1」ならびに主軸の停止角度は「120°」に設定されている。この設定により、低速逆転では1回転前の主軸角度120°まで逆転するように、その後この位置より織機主軸を起動しつつ緯入れを伴わない空織り運転を実行し、その後の1回転半後の角度300°に達した時点より緯入れをともなう製織運転を実行するものとする。
【0050】
そして、耳組制御部90に対する設定条件として、主軸角度を尺度とし耳糸の開口量がゼロとなる(すなわち耳糸閉口状態になる)クロスタイミング、後述される第3の制御(C)における駆動量パターンの構成要素としての各実行期間(時間)および各期間の回転量(回転回数)の設定値が、左右の耳組装置50A、50B毎に、独立的に予め設定される。また、本実施例では、織機運転開始時に第3の制御の実行に伴う耳糸の過剰な捩りが問題となる織物への対策として、耳組装置のみを単独で逆転させる第4の制御(D)を選択的に実行させるものであり、設定器62には、その第4の制御(D)の実行に関する選択情報のほか、その第4の制御(D)制御における駆動量パターンの構成要素としての耳組装置の逆転量の設定値が予め入力される。本実施例では、設定器62には、耳組制御部90に対する設定条件として、第3の制御の正転量が、パルスモータ59A,59Bの加速特性を考慮して「1回転」として設定されるとともに、織機運転開始時における耳糸の過剰な捩りが発生しないようにするための第4の制御を実行する旨の選択情報と、その第4の制御における逆転量が上記第3の制御における正転量と同じ「1回転」として設定されているものとする。なおここでいう耳組装置の回転量は、セルベージギア52の回転量を指す。
【0051】
使用される駆動量パターンは、設定器62あるいは耳組コントローラ91のいずれかで詳説しないアルゴリズムに従って生成されるものであり、より詳しくは上記設定される回転量とギア機構の伝達比などの機械的なパラメータなどをもとにパルスモータ59A,59Bの目標回転量を算出して、これを出力期間中における経過時間あるいは主軸の回転角度に対応するパルスモータの速度指令量の形でパターン化されたものであり、耳組コントローラ91の内部に予め記憶されている。
【0052】
(1)第1実施例
図4を参照するに、織機は、製織運転中に停台原因の発生にともなって織機主軸の回転を停止した後、経糸の伸びを防ぐために経糸開口が閉口状態となる待機位置(主軸角度300°)まで織機主軸が逆転され停台原因が修復されて待機状態にある。一方、耳組装置は、主制御器64から制御モード信号S12で第1の制御モード(制御モードA)が選択された状態にあり、この結果、主軸角度に対して同期駆動状態にある。そのような待機状態の織機では、地経糸および耳糸は図4の丸数字1に示すように、ともに閉口状態になっていて織り込まれた緯糸をともに拘束した状態にある。
【0053】
作業者は、運転ボタン85を押下して運転操作信号S1が発生されると(時刻t1)、主制御器64は、逆転信号S8を出力して織機主軸を予め設定されるスタート位置、つまり現在の待機位置である主軸角度300°からこれよりも約1回転半前の120°まで低速逆転させる。一方主制御器64は、時刻t1とほぼ同時刻に定められる時刻t2より耳組装置への制御モード信号S12の出力をAからBに切り換える出力をすることにより、耳組コントローラ91は、制御モードを第1の制御(A)から第2の制御(B)に切り換える。これにより耳組コントローラ91は、主軸回転角度とは無関係に耳組装置(すなわちパルスモータ59A,59B)を停止状態に保持することができる。
【0054】
さて、主軸の低速逆転により、主軸角度が所定のスタート位置(角度120°)に達する時刻t3では、図4の丸数字2に示すように、耳糸は耳糸は依然として閉口状態に保たれるとともに、経糸開口は織り込まれた緯糸に対して大きく交錯した状態にある結果、緯糸は保持された状態にある。そこで主制御器64は、その後の時刻t4において耳組装置の制御モード信号S12の出力をBからDに切り換え出力することにより、耳組コントローラ91は、パルスモータ59A,59Bの駆動制御を第2の制御(B)から第4の制御(D)に制御モードを切り換える。これにより、耳組コントローラ91は、第4の制御(D)を実行して主軸回転角度とは無関係に耳組装置50A,50B(すなわちパルスモータ59A,59B)を予め生成される駆動量パターンに従って低速逆転させる。
【0055】
第3の制御モードにおける耳組装置50A,50Bの正転量は、織機主軸42およびパルスモータ59A,59Bの加速特性などを考慮して「1回転」に設定され、また第4の制御モードにおける耳組装置50A,50Bの逆転量は、それと同量の「1回転」に設定されて、最終的には第3の制御モード及び第4の制御モードの駆動量パターンとして予め耳組コントローラに記憶されている。このため、耳組コントローラ91は、第4の制御モード用の駆動量パターンにしたがって、期間P1にわたり1回転逆転されるに充分な速度指令値sv1の信号S14a,S14bを出力し、耳組装置50A,50Bを1回転逆転された位置に停止させる。そして第4の制御が完了される時刻t5に達すると、主制御器64は、耳組装置の制御モード信号S12の出力をDからBに切り換えるように出力することにより、耳組コントローラ91は、パルスモータ59A,59Bの制御モードを第4の制御(D)から第2の制御(B)に切り換えて各耳組装置を停止状態にする。期間P1が終了される時刻t5に達した時点では、耳組装置は1回転分逆転された位相で停止され、制御モードの切り換わり後もその位相が維持される。このときの地経糸及び耳糸の状態を、図4の丸数字3に示すが、先の丸数字2の状態に対し耳糸は、1回転捩られた状態にある。つまり丸数字3の状態に移行するまでの間に、耳糸は緯糸を一旦解放する状態になるが、地経糸が緯糸を保持した状態にあるため、織布に織り込まれた緯糸の縮みは依然として発生されない。
【0056】
その後、織機主軸を起動する時刻t6に達すると、主制御器64は、運転信号S6をオン出力することにより、織機主軸が起動されて速度v2に向けて徐々に加速されるとともに、空織り信号S10をオン出力することにより、織機10では緯入れを伴わない空織り運転が実行される。また主制御器64は、時刻t6に達した時点では耳組装置の制御モード信号S12を依然としてBを出力している。しかし、その後の時刻t7に達したとき、主制御器64は制御モード信号S12をBからCに切り換える出力することにより、耳組コントローラ91は、パルスモータ59A,59Bの駆動制御モードを第2の制御(B)から第3の制御(C)に切り換える。これにより、耳組コントローラ91は、期間P2にわたり予め設定されている第3の制御用の駆動量パターンにしたがってパルスモータを駆動する第3の制御(C)を開始し、パルスモータ59A,59Bを正回転方向に加速させる。
【0057】
なお、第3の制御モードが実行される期間P2について、パルスモータ59A,59Bの加速度合い、加速特性を考慮して上記決定される正転量F1との関係から求めることができ、また第3の制御モードを開始する時刻t7は、織機主軸角度が耳組装置の同期駆動を開始する角度(300°)に達すると想定される時刻t9に対して上記求めた期間P2分だけ前となるように決定することができる。このような期間P2の算出、駆動量パターンの生成、時刻t7の算出などは、設定器62あるいは耳組コントローラ91の詳説しない処理により実行され、求められた時刻t7は、設定値信号S13を介して主制御器64に送り込まれる。
【0058】
この結果、第3の制御が行われる期間P2にわたり、耳組コントローラ91は、出力信号S14a,S14bの速度指令値を徐々に増大させる。パルスモータ59A,59Bは加速され、その後の同期駆動開始時期である時刻t10において、円滑に同期駆動可能な速度sv2に達するように加速される。なお、第3の制御に切り換わる時刻t7では、図4の丸数字4に示すように、依然として耳糸が1回転捩られて緯糸が拘束された状態にあり、同期駆動が開始される時刻t10よりも前の主軸角度180°に達した時刻t8では、図4の丸数字5に示すように、地経糸が緯糸を解放した状態にあるが、耳組装置の正転方向への加速によって依然として1/2回転ほど捩られて緯糸を保持する状態にあり、この段階においても緯糸の緩みは発生しない。
【0059】
そして、耳組装置が主軸角度に対する同期駆動可能な速度sv2に加速された時刻t10に達すると、主制御器64は制御モード信号S12をCからAに切り換える出力することにより、耳組コントローラ91は、パルスモータ59A,59Bの駆動制御を第3の制御(C)から第1の制御(A)に制御モードを切り換える。これにより、耳組コントローラ91は、パルスモータ59A,59Bに対して織機主軸の回転角度に追従する同期駆動を実行する。以降、耳組コントローラ91は、主軸の角度信号θをもとに、パルスモータ59A,59Bを同期駆動する。その後先に行われた低速逆転量に相当する主軸逆転量だけ織機主軸が正転された時刻t11(主軸角度300°)では、地経糸は閉口状態にあるとともに耳糸は余計な捩りが解消されて、先の時刻t1のときとほぼ同じ位相状態となっている。
【0060】
また時刻t11に達すると、主制御器64は、これより緯入れをともなう製織運転を開始すべく、空織り信号S10をオフ出力する。緯入れ制御装置78ならびに緯糸検知回路80には、運転信号S6が既にオン入力されているとともに信号S10がオフ入力されることにより、織機10では、筬打ちタイミング0°を通過して筬打ちした後に次のサイクルより緯入れを開始することになる。緯入れ制御装置78では、設定器を介して予め設定される緯入れノズルの噴射タイミングに従って緯入れノズルを噴射して緯糸の緯入れを開始し、緯糸検知回路80では、緯入れ糸に対する緯入れミスの検知動作を開始する。また、耳組コントローラ91は、既に第1の制御を実行しているため、耳組装置50A,50Bは織機主軸の回転に同期して正転方向に連続的に駆動される。このようにして、織機の製織運転が開始される。
【0061】
上記したように織機主軸の低速回転をともなう空打ちスタートにより運転開始される織機では、織機主軸の起動後、緯入れを伴わない空織り運転が1サイクル以上行われるから、緯入れ再開後に緯入れされた緯糸に対する筬打ち力が増大されて織段を解消することができる。一方耳組装置では、低速回転される工程中にパルスモータ59A,59Bを停止状態にして耳糸を閉口状態にすることで緯糸を拘束するとともに、織機が起動されたあと遅くとも空織り運転中には、第3の制御を開始してパルスモータ59A,59Bを正転駆動し、その後主軸角度が同期駆動角度に達した時点より主軸角度に対する同期駆動を実行する。しかもそのような同期駆動角度は、遅くともその後の空織り運転期間あるいは製織運転開始されてから数サイクル終了されるまでの間に定められているから、パルスモータ59A,59Bをその後の同期駆動に備えて充分に加速することができる。従って従来装置のような同期駆動角度に達した時点で停止状態のパルスモータ59A,59Bを同期駆動する場合に比べて主軸に対する追従遅れを減少させることができ、従来発生していた緯入れミス、耳組織の緩み・締まりすぎなどの織物品質上の問題を防止できる。
【0062】
さらに上記第1の実施例では、耳組コントローラ91は、パルスモータ59A,59Bを逆転駆動状態にする第4の制御が実行可能にされるている。そして耳組コントローラ91には、前記第4の制御の実行時におけるパルスモータ59A,59Bに対する逆転量が前記第3の制御における正転駆動量を考慮して予め入力されており、前記耳組コントローラ91は、主軸を前記低速回転させる工程が終了されてから主軸が起動されるまでの間の時刻t4からt5にわたって前記第4の制御を実行する。そして主軸の低速回転が終了した状態では、経糸が緯糸を拘束している状態にあるため、パルスモータ59A,59Bの第4の制御による逆転が実行されて耳糸が緯糸を解放したとしても経糸開口は変化せず緯糸を拘束し続けるからいわゆる緯糸の緩みが発生しない。そして織機の主軸が起動されたあとの前記第3の実行により、同期駆動角度に達した時点(時刻t10)では、パルスモータ59A,59Bは第4の制御を実行する前の位相状態でかつ正転方向に加速された状態になっており、言い換えれば耳糸開口位相が通常の製織運転とほぼ同じ位相になっているため、織機の再運転時における耳糸の過剰な捩りが発生しない。このため、織物品質上より好適である。
【0063】
上記実施例について、以下変形可能である。上記した耳組装置の第3の制御及び第4の制御における耳組装置の回転量について、上記した実施例では、「1回転」とあるように耳組装置の回転回数を尺度に設定する例を示したが、耳組装置(セルベージギア52)の位相角度を尺度に設定するようにしても良い。
【0064】
また、第3の制御における耳組装置の設定正転量F1と第4の制御における設定逆転量R1との関係について、上記実施例では、同じ量に設定しているが、織物品質を著しく損なわない範囲で異なる値に設定しても良い。
【0065】
(2)第2の実施例
上記した第1の実施例では、織機主軸が起動される前に、専用モータを第3の制御における正転量に対応する分だけ事前に逆転させることにより、いわゆる織機の再運転時における耳糸の過剰な捩りを解消する例であり、最も好適な実施例と言える。しかし本発明は、このような高品質織物を得る実施形態に限らず、例えば、織物によっては、数回程度の耳糸の過剰な捩りが織物品質上さほど問題にならない織物も存在する。そのような織物製織時には、過剰な捩りを発生させないための動作すなわち第4の制御(D)を省略するようにしても良い。以下図5に示す第2の実施例は、第1の実施例において、織機主軸が起動される前に行っていた第4の制御を省略した実施例である。なお、第2の実施例について図5を用いて以下説明するが、図4と同じものについては、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0066】
図5に示すように、運転操作信号S1の発生により、時刻t1より織機主軸の低速逆転が開始され、時刻t3で低速逆転が停止されるまでは、第1の実施例(図4)と同じであり、時刻t1とほぼ同じ時刻である時刻t2より耳組装置の制御モードがAからBに切り換わることにより、耳組装置が織機主軸に対する同期状態を解除され、織機主軸の回転とは無関係に停止状態におかれる点では、第1の実施例と同じであるが、第1の実施例に対し耳組装置のみを低速逆転させる第4の制御(D)が省略されている点では、上記第1の実施例と相違する。このため、図5における時刻t6における地経糸と耳糸の状態は、先の時刻t3と同じ状態にある。
【0067】
そして、主制御器64は、時刻t6にて織機を起動すべく運転信号を発生させるため、織機主軸は正転方向へ回転されて定常回転数v2に向けて加速されるとともに、主制御器64は、時刻t7に達して耳組装置の制御モード信号S12をBからCに切り換えて耳組装置を正転方向に加速させる。この結果、図5の丸数字4に示す時刻t7の状態に対し、中間的な時刻t8では丸数字5に示すように、1/2回転されて耳糸をさらに捩る状態となっているため、地経糸が開口状態になり既に織り込まれた緯糸が織前に露出されるようなことがあっても、耳糸による拘束を受けるため緯糸に縮みが発生されることはない。そして耳組装置が織機主軸に対して同期駆動状態にある時刻t11には、図5の丸数字6に示すように経糸開口は閉口状態にあり、また耳糸は時刻t7における状態から1回転捩られた状態の閉口状態にあって、耳組装置はこれ以降も主軸角度に対応して同期駆動されることになる。
【0068】
(3)変形例
上記2つの実施例に対し、以下変形することが考えられる。なお、この点について後述される第2の実施例以降に対して、その主旨を逸脱しない限り、同様に適用可能である。
【0069】
先ず、織機主軸が低速逆転を始める時刻t1と耳組装置の制御モードをAからBに切り換える時刻t2の関係について、上記実施例では、時刻t2を時刻t1とほぼ同時刻としたが、これの近傍(時刻t1の前後)に定めるようにしてもよい。
【0070】
織機主軸を起動する時刻t6と耳組装置の制御モードをBからCに切り換える時刻t7の前後関係について、上記実施例では、織機主軸を起動する時刻t6を時刻t7よりも先としているが、これよりも後とする形態も可能である。この場合、より小容量の専用モータを用いて耳組装置を構成することが可能になる。
【0071】
第3の制御モードが実行される期間における耳組装置(専用モータ)の駆動態様について、上記実施例では、速度指令信号S14a、S14bを、定常運転中の主軸速度v2に対応される速度sv2に向けて連続的に増大させて出力するようにしているが、これに満たない値に定められる速度指令値を1段階以上の段階的な出力することにより徐々に増大させるようにしてもよい。
【0072】
上記した2つの実施例では、織機の起動方法である低速回転をともなう空打ちスタートとして、低速逆転をともなう空打ちスタートを示した。低速逆転をともなう空打ちスタートは、より詳しくは図6に示すように、緯入れミス糸除去後待機状態におかれる主軸角度300°より運転ボタンが押下されると、織機主軸をこれより約1回転半前方の角度120°まで低速逆転させ、その後織機主軸を起動しつつ緯入れを伴わないいわゆる空織り運転をして1回以上筬打ちするとともに、その起動位置から1回転半正転された角度300°以降より(より正確には角度0°で筬打ちしてから)緯入れをともなう製織運転に移行するように構成される。
【0073】
しかし、本件発明の低速回転をともなう空打ちスタートでは、上記した逆転をともなうものに限らず、例えば図7に示す正転をともなう空打ちスタートとすることができる。図8に示す実施例は、経糸開口パターンのリピート数が3となる織物組織(例えば1/2の綾組織のように、織機主軸が3回転すると経糸開口位相がもとの開口状態に戻る織物組織)製織時にあって、織段強度の関係から、例えば織機主軸が2回転空織り運転が必要な場合を想定する。この場合の織機スタートは、織機の運転開始時には、現在の運転開始位置である角度300°より主制御器64は正転信号S7を出力して織機主軸を1回転正転方向に低速回転させ、その後運転信号をS6を出力して織機主軸を起動しつつ、主軸が2回転されるまでは空織り信号S10をオン出力して緯入れを伴わない空織り運転を実行し、その後空織り信号S10をオフ出力して緯入れをともなう製織運転に移行させる。
【0074】
なお、この実施例の低速回転は、上記1回転の低速正転がそれに対応される。このような正転をともなう空打ちスタートが実行される織機においても、本発明特有の制御を行わせることができ、より具体的には、主軸の低速正転が開始される時点あるいはこれ以降に定められる時点より、耳組装置の制御モードを上記した第2の制御(B)に切り換えて耳組装置を主軸に対する同期駆動を解除して耳組装置を停止状態にする。そして主軸の低速正転が終了されてから織機主軸が起動される前、あるいは織機主軸起動後より耳組装置の制御モードを、上記した第3の制御(C)に切り換えて耳組装置を予め生成される駆動量パターンにしたがって正転させて加速し、その後空織り運転期間あるいは製織運転開始されてから数サイクル終了されるまでの間に定められる同期駆動角度に達することにより、耳組装置の制御モードを第3の制御(C)から上記した第1の制御(A)に切り換える。これにより、耳組装置は主軸の回転に同期して駆動される。
【0075】
このように、正転をともなう空打ちスタートにより起動される織機では、例えば、織機主軸が起動されてからも耳組装置を駆動する専用モータを主軸角度とは無関係に停止状態におき、その後緯入れが開始される直前に主軸角度に対して同期駆動させる技術に比べ、事前に耳組装置を正転駆動して加速した状態から同期駆動するようにしたから、耳組装置の追従遅れに起因するトラブルを防止できる。
【0076】
上記実施例を構成する主制御器64について、上記実施例では、織機起動時における低速回転をともなう空打ちスタートの各工程および耳組装置の制御モードを切り換える制御について、いずれも時刻の経過により切換を行うようにしているが、耳組装置の制御モードの切換を予め設定された主軸角度の検出により行うように構成することも可能である。
【0077】
上記実施例では、耳組装置の回転を制御する耳組コントローラ91を、織機全体動作を制御する主制御器64と別に設けるようにしたが、耳組コントローラの91の機能を主制御器に持たせ、一体化した回路により制御することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、特許請求範囲の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。そして、適用対象とされる織機について、流体噴射式織機などを含む無杼織機であって、織機起動時に低速回転をともなう空打ちスタートにより起動される織機とし、かつ遊星ギア式耳組装置を専用モータで駆動する形式の織機に適用可能であり、また適用対象の耳組装置についても、いわゆる遊星ギア式耳組装置に限らず、耳糸捩り部分およびボビンホルダを保持する保持装置に対し駆動用の専用モータが設けられ、製織運転中には織機主軸の回転に対応して上記専用モータが正転方向に同期駆動される耳組装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】織幅方向より見た織機の全体を示す図である。
【図2】本発明が前提とする遊星ギア式耳組装置の大まかな構成を示す図である。
【図3】本発明の主要部を構成する織機の制御装置ならびに耳組装置の制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を説明するダイアグラム図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を説明するダイアグラム図である。
【図6】本発明が前提とする織機の起動方法を説明するダイアグラム図であり、より詳しくは、低速逆転をともなう空打ちスタートを説明する図である。
【図7】図6に同じく、織機の起動方法を説明するダイアグラム図であり、より詳しくは、低速正転をともなう空打ちスタートを説明する図である。
【符号の説明】
【0080】
10 織機
12 経糸
14 経糸ビーム
16 バックローラ
18 綜絖
19 綜絖枠
20 筬
22 織前
24 開口
26 織布
28 ガイドロール
30 服巻ロール
32 プレスロール
34 布巻ロール
36 駆動装置
38 開口駆動機構
40 主軸モータ
42 主軸
42 織機主軸
43 電磁ブレーキ
46 緯糸
48A ,48B 耳糸
50A,50B 遊星ギア式耳組装置
51 ドライブギア
52 セルベージギア
53 太陽ギア
54 太陽軸
55A,55B 遊星ギア
56A,56B アイドルギア
57A,57B 耳糸ボビン
58A,58B メール
59A,59B パルスモータ
60 制御装置
62 設定器
64 主制御器
66 入力ポート
68 出力ポート
72 記憶器
74,76 駆動回路
78 緯入れ制御装置
80 緯糸検知回路
81 運転ボタン
82 寸動ボタン
83 逆転ボタン
84 停止ボタン
85 角度信号発生器(エンコーダ)
90 耳組制御部
91 耳組コントローラ
92A,92B 駆動回路
θ 主軸角度信号
H1,H2 フィーラ
F1 正転量
P1,P2 期間
R1 逆転量
S1 運転操作信号
S2 寸動操作信号
S3 逆転操作信号
S4 停止操作信号
S6 運転信号
S7 正転信号
S8 逆転信号
S9 制動信号
S10 空織り信号
S11 緯入れミス信号
S12 制御モード信号
S13 設定値信号
S14a,S14b 速度指令信号
t1〜t11 時刻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機操作信号の入力により、原動モータを介して主軸の駆動を制御する主制御器と、
専用モータを介して駆動される耳組装置と、
前記専用モータの駆動を制御する専用モータ用制御器とを備え、
前記主制御器は、主軸を所定方向に第1の回転量だけ低速回転させ、次いで主軸を起動して第2の回転量正転されるまでの間緯入れを伴わない空織り運転を1サイクル以上行わせた後緯入れをともなう製織運転に移行される織機において、
前記専用モータ用制御器は、主軸角度に同期して専用モータを駆動する第1の制御と、専用モータを停止させる第2の制御と、専用モータを予め定めた駆動パターンに従って正転駆動させる第3の制御が実行可能にされており、
前記専用モータ用制御器は、主軸を前記低速回転させる工程中に、前記第2の制御を実行し、遅くとも空織り運転中には、前記第3の制御を開始するとともに、その後の空織り運転期間に定められる所定時期あるいは製織運転開始されてから1サイクル終了されるまでの間に定められる所定時期までに、前記第1の制御を開始することを特徴とする耳組装置の制御方法。
【請求項2】
前記専用モータ制御器には、前記所定の時期に達した時点では、専用モータの位相が製織運転中における前記主軸角度に対応する同期駆動状態の位相に合致するように前記第3の制御の開始時期およびその制御期間における正転駆動量が予め設定されることを特徴とする請求項1に記載の耳組装置の制御方法。
【請求項3】
前記第3の制御の開始時期は、前記空織り運転が開始される時期に対して前あるいは後のいずれかに設定されることを特徴とする請求項1に記載の耳組装置の制御方法。
【請求項4】
前記専用モータ用制御器は、専用モータを逆転駆動する第4の制御が実行可能にされるとともに、前記専用モータ用制御器には、前記第4の制御の実行時における専用モータの逆転量が予め設定されており、
前記主制御器は、主軸の低速回転させる工程が終了されてから織機主軸を一旦停止させ、次いで主軸を起動するとともに、
前記専用モータ用制御器は、主軸が前記一旦停止される間に、前記第4の制御を実行することを特徴とすることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の耳組装置の制御方法。
【請求項5】
前記主制御器は、前記低速回転として、主軸を第1の逆転量だけ逆転方向に低速逆転させることを特徴とする、請求項1に記載の耳組装置の制御方法。
【請求項6】
前記主制御器は、前記低速回転として、主軸を第1の正転量だけ正転方向に低速正転させるとともに、前記主制御器には、前記低速正転される第1の回転量と前記空織り運転される第2の回転量の和が織物組織のリピート数の倍数に対応する回転量と合致されるように、前記第1の回転量が予め決定されていることを特徴とする請求項1に記載の耳組装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−63672(P2008−63672A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239659(P2006−239659)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)