説明

耳鼻咽喉科用噴霧装置

【課題】噴霧動作中に停止スイッチに対する誤った停止操作が行われた場合においても安定した噴霧動作を実行可能にする耳鼻咽喉科用噴霧装置を得る。
【解決手段】モジュール制御部の制御下において、ステップS5において、停止スイッチに対する停止操作が行われもその継続時間が第1の判定時間JT1未満であった場合(NO)はステップS6に移行し、噴霧動作は継続される。一方、停止操作の継続時間が第1の判定時間JT1以上(ステップS5でYES)、第2の判定時間JT2未満(ステップS10でNO)であった場合、ステップS8で一時停止処理を行われた後、ステップS12の噴霧動作の再開時に残存時間を新たな設定時間として噴霧動作を行うための再開制御が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耳鼻咽喉科の治療の際に患者に薬液を噴霧する耳鼻咽喉科用噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耳鼻咽喉科などの治療においては、加圧空気源からの加圧空気によって薬液霧を患者の咽頭や鼻腔に吸入させるネブライザキャビネットと呼ばれる耳鼻咽喉科用噴霧装置が用いられていた。薬液の噴霧時間は治療内容により若干異なるが、平均的には3〜5分程度である。患者はその3〜5分程度の間中、噴霧された薬液を吸入している必要があったが、その間は何もすることがなく、ただじっと座っておくだけであった。
【0003】
利用者である患者は、噴霧中はただじっと座っておくだけであり退屈であった。退屈な状態の解消を図るべく、薬液の噴霧時間、静止画及び動画のうち少なくとも1つを表示する表示部を備えた耳鼻咽喉科用噴霧装置が例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−11669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記表示部を備えた耳鼻咽喉科用噴霧装置においても、特に患者が子どもの場合、じっと座っておくことができずに停止ボタン等を誤って押圧する等の停止スイッチに対する停止操作を行ってしまい、噴霧中にも拘わらず噴霧動作を強制停止させてしまうという問題点があった。
【0006】
強制停止された場合、開始スイッチに対する開始操作を行うことにより噴霧動作を再開させることができるが、この場合、再度、最初から噴霧動作を行うことになり、停止前後のトータルの噴霧時間は当初予定した噴霧時間を上回ってしまい適切な薬液量の噴霧又は噴霧時間の噴霧動作の患者への提供を困難にしている問題点もあった。
【0007】
従来の耳鼻咽喉科用噴霧装置は以上のように構成されており、噴霧動作中に停止スイッチに対し利用者が誤って停止操作を行うと噴霧動作を強制停止させてしまうという問題点があった。
【0008】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、噴霧動作中に停止スイッチに対する誤った停止操作が行われた場合においても安定した噴霧動作を実行可能にする耳鼻咽喉科用噴霧装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る請求項1記載の耳鼻咽喉科用噴霧装置は、開始スイッチの所定の開始操作によって設定時間分の噴霧動作を行う耳鼻咽喉科用噴霧装置であって、前記噴霧動作を実行可能な噴霧動作実行部と、継続して所定の停止操作が可能な停止スイッチと、前記噴霧動作実行部による前記噴霧動作の実行時において、前記停止スイッチに対する前記所定の停止操作の有無を検知し、前記所定の停止操作が第1の判定時間以上継続された時に前記噴霧動作実行部による前記噴霧動作を停止させる停止制御を行う制御部とを備える。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の耳鼻咽喉科用噴霧装置であって、前記制御部は、前記停止制御実行後、前記開始スイッチの前記所定の開始操作をトリガとして噴霧動作実行部による前記噴霧動作を再開させ、前記停止制御実行時までの前記噴霧動作実行時間分を前記設定時間から差し引いた残存時間分の前記噴霧動作を実行させる再開制御を行う。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1あるいは請求項2記載の耳鼻咽喉科用噴霧装置であって、前記制御部は、前記所定の停止操作が第1の判定時間より長い第2の判定時間以上継続された場合、前記残存時間を“0”にリセットするリセット機能を有する。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のうち、いずれか1項に記載の耳鼻咽喉科用噴霧装置であって、前記噴霧動作を受ける利用者が視覚認識可能な複数の発光体を有する表示部をさらに備え、前記制御部は、前記噴霧動作の実行時間に応じた内容で前記表示部の前記複数の発光体における発光状態を制御する表示制御をさらに行う。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のうち、いずれか1項に記載の耳鼻咽喉科用噴霧装置であって、所定の非常停止操作が可能な非常停止用スイッチをさらに備え、前記制御部は、前記非常停止用スイッチの前記所定の非常停止操作をトリガとして前記噴霧動作実行部による前記噴霧動作を直ちに停止させる非常停止制御を行う。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の本願発明によれば、制御部による停止制御は、停止スイッチに対する所定の停止操作が第1の判定時間以上継続された時にはじめて噴霧動作実行部による噴霧動作を停止させている。
【0015】
このため、噴霧装置の利用者が噴霧動作中に誤って停止スイッチに対し所定の停止操作を行った場合でも、その継続時間が第1の判定時間未満であれば実行中の噴霧動作を停止させることなく継続させることができる。
【0016】
その結果、請求項1記載の本願発明は、子供のいたずら等の停止スイッチに対する誤動作によっても停止することなく安定した噴霧動作を実行可能にするという効果を奏する。
【0017】
請求項2記載の本願発明によれば、制御部は、停止制御実行後に噴霧動作を再開させる際、停止制御実行時までの噴霧動作実行時間分を上記設定時間から差し引いた残存時間分の噴霧動作を実行させる再開制御を行っている。
【0018】
その結果、停止スイッチによって噴霧動作を一時停止させた場合においても、一時停止前後トータルで設定時間分の噴霧動作を実行することができるため、利用者に適切な実行時間の噴霧動作を提供することができる。
【0019】
請求項3記載の本願発明によれば、制御部は所定の停止操作が第1の判定時間より長い第2の判定時間以上継続された場合、上記残存時間を“0”にリセットするリセット機能を有しているため、設定時間内においても噴霧動作を強制終了させることができる。
【0020】
請求項4記載の本願発明によれば、噴霧装置の利用者が複数の発光体の発光状態を参照して視覚的に容易に噴霧動作の進行状況を理解することができる。
【0021】
請求項5記載の本願発明によれば、非常用停止スイッチに対し所定の非常停止操作を行うことにより、緊急時等において噴霧動作を速やかに強制終了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施の形態である耳鼻咽喉科用噴霧ユニットの構成を示す正面図である。
【図2】耳鼻咽喉科用噴霧ユニットにおいて第1の制御・駆動系を採用した耳鼻咽喉科用噴霧ユニットの制御・駆動系の構成を示すブロック図である。
【図3】耳鼻咽喉科用噴霧ユニットにおいて第2の制御・駆動系を採用した耳鼻咽喉科用噴霧ユニットの制御・駆動系の構成を示すブロック図である。
【図4】耳鼻咽喉科用噴霧ユニットにおける各噴霧装置の動作内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<装置概要>
図1はこの発明の実施の形態である耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1の構成を示す正面図である。同図に示すように、耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1は3台の(耳鼻咽喉科用)噴霧装置10a〜10cから構成され、同時に3人の患者に対する噴霧動作を可能にしている。
【0024】
以下、噴霧装置10a〜10cを総称した一単位の噴霧装置10についてその構成を説明する。噴霧装置10は、正面部に表示部2(2a〜2c)が設けられ、表示部2の下方に図中右から、停止スイッチ4(4a〜4b)、開始スイッチ3(3a〜3c)、及びジョイント部7(7a〜7c)を有している。
【0025】
表示部2は7つの発光体L1〜L7から構成され、発光体L1〜L7は後述するモジュール制御部の制御下で各々所定の発光色で点灯、点滅、消灯等の発光状態を呈することができる。
【0026】
開始スイッチ3は押圧による開始操作(所定の開始操作)が可能であり、この開始操作をトリガとして噴霧装置10による噴霧動作を開始させることができる。開始スイッチ3は点灯式を採用し噴霧動作時に点灯するようにしても良い。
【0027】
噴霧動作が開始されると設定時間分の噴霧動作を行う。具体的には、ジョイント部7に接続される図示しないホース及び噴霧部マスク等を介して、利用者である患者の咽頭や鼻腔に薬液霧を噴出する。
【0028】
停止スイッチ4は押圧による停止操作(所定の停止操作)が可能であり、この停止操作は継続して実行することができる。そして、第1の判定時間JT1(0.5秒程度)以上継続して停止操作を行うことにより噴霧装置10による噴霧動作を一時停止させることができ、さらに、第1の判定時間JT1より長い第2の判定時間JT2(1秒程度)以上継続して停止操作を行うことにより噴霧動作を完全停止させることができる。
【0029】
なお、一時停止とは設定時間の残存時間分における噴霧動作の再開を可能にした停止を意味し、完全停止とは設定時間の残存時間分は無効にして噴霧動作を完全に終了状態にする停止を意味する。
【0030】
停止スイッチ4は点灯式を採用し停止処理時に点灯するようにしても良い。この場合、一時停止時には点滅状態、完全停止時には点灯状態にして停止状態を識別可能にしても良い。
【0031】
ジョイント部7は図示しない接続ホースの一端を接続し、接続ホースの他端に設けた噴霧部マスクを介して、噴霧動作時に患者の咽頭や鼻腔に薬液霧を吸入することができる。
【0032】
制御・駆動部6(6a〜6c)は、開始スイッチ3に対する開始操作や停止スイッチ4に対する停止操作に応答して噴霧動作を制御・駆動する部分である。
【0033】
メインスイッチ5は耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1の動作電源のオン/オフ用のスイッチであり所定のオン操作によって噴霧装置10a〜10cに電源供給を行い、オフ操作によって噴霧装置10a〜10cへの電源供給を遮断する。
【0034】
<制御系>
図2は耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1において第1の制御・駆動系を採用した耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1Aの制御・駆動系の構成を示すブロック図である。
【0035】
同図に示すように、電源部31より噴霧装置10a〜10cに電源が供給される。以下、噴霧装置10a〜10cを総称した一単位の噴霧装置10についてその構成を説明する。
【0036】
制御・駆動部6はモジュール制御部11(11a〜11c)、タイマー部12(12a〜12c)、噴霧時間設定部13(13a〜13c)、コンプレッサー部14(14a〜14c)、三方電磁弁15(15a〜15c)及び噴霧器16(16a〜16c)から構成される。
【0037】
モジュール制御部11はプログラマブルコントローラ(PC)等により構成され、開始スイッチ3に対する開始操作及び停止スイッチ4に対する停止操作を検出可能であり、表示部2の発光体L1〜L7の発光状態の制御が可能である。
【0038】
さらに、モジュール制御部11は、開始スイッチ3に対する開始操作をトリガとして、噴霧時間設定部13で設定された設定時間分の噴霧動作が行われるようにタイマー部12の時間設定、起動等の制御を行い、コンプレッサー部14による圧力空気及び三方電磁弁15の開閉動作を制御して、噴霧器16から薬液霧を噴出させる。なお、噴霧時間設定部13として複数の設定時間に対応した複数の設定時間用スイッチ等が考えられる。
【0039】
モジュール制御部11は停止スイッチ4に対する停止操作が第1の判断時間JT1以上継続したことを検出した場合、タイマー部12の停止等の制御を行い、コンプレッサー部14による圧力空気及び三方電磁弁15の開閉動作を制御して、噴霧動作を一時停止して噴霧器16から薬液霧の噴出を一時的に停止させる一時停止用の停止制御を行う。
【0040】
さらに、モジュール制御部11は停止スイッチ4に対する停止操作が、第1の判定時間JT1より長い第2の判断時間JT2以上継続したことを検出した場合、タイマー部12の時間設定(リセット)等の制御を行い完全停止用の停止制御を行う。
【0041】
加えて、モジュール制御部11は、一時停止後、開始スイッチ3に対する開始操作をトリガとして、一時停止用の停止制御実行時までの噴霧動作実行時間分を設定時間から差し引いた残存時間分の噴霧動作が行われるようにタイマー部12の時間設定、起動等の制御を行い、コンプレッサー部14による圧力空気及び三方電磁弁15の開閉動作を制御して、噴霧器16から薬液霧を再度噴出させる。
【0042】
なお、耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1Aは各噴霧装置10にコンプレッサー部14を設ける構成であるため、噴霧器16,コンプレッサー部14間の距離が比較的近くなるため、噴霧動作の開始をスムーズに行うべくコンプレッサー部14,噴霧器16は排気を逃がすため三方電磁弁15を設けることが望ましい。
【0043】
図3は耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1において第2の制御・駆動系を採用した耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1Bの制御・駆動系の構成を示すブロック図である。
【0044】
同図に示すように、電源部32より噴霧装置10a〜10cに電源が供給される。さらに、コンプレッサー部34より噴霧装置10a〜10cに圧力空気が供給される。
【0045】
以下、噴霧装置10a〜10cを総称した一単位の噴霧装置10についてその構成を説明する。
【0046】
制御・駆動部6はモジュール制御部21(21a〜21c)、タイマー部22(22a〜22c)、噴霧時間設定部23(23a〜23c)、噴霧器25(25a〜25c)及び電磁弁26(26a〜26c)から構成される。
【0047】
モジュール制御部21は開始スイッチ3に対する開始操作をトリガとして、噴霧時間設定部23で設定された設定時間分の噴霧動作が行われるようにタイマー部22の時間設定、起動等の制御を行い、コンプレッサー部34による圧力空気及び電磁弁26の開閉動作を制御して、噴霧器25から薬液霧を噴出させる。なお、噴霧時間設定部23として複数の設定時間に対応した複数のスイッチ等が考えられる。
【0048】
モジュール制御部21は停止スイッチ4に対する停止操作が第1の判断時間JT1以上継続したことを検出した場合、タイマー部22の時間設定、停止等の制御を行い、コンプレッサー部34による圧力空気及び電磁弁26の開閉動作を制御して、噴霧動作を一時停止して噴霧器25から薬液霧の噴出を一時的に停止させる一時停止用の停止制御を行う。
【0049】
モジュール制御部21は停止スイッチ4に対する停止操作が、さらに第1の判定時間JT1より長い第2の判断時間JT2以上継続したことを検出した場合、タイマー部22の時間設定(リセット)等の完全停止用の停止制御を行う。
【0050】
加えて、モジュール制御部21は、一時停止後、開始スイッチ3に対する開始操作をトリガとして、一時停止用の停止制御実行時までの噴霧動作実行時間分を設定時間から差し引いた残存時間分の噴霧動作が行われるようにタイマー部22の時間設定、起動等の制御を行い、コンプレッサー部34による圧力空気及び電磁弁26の開閉動作を制御して、噴霧器25から薬液霧を再度噴出させる。
【0051】
なお、耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1Bにおいて、コンプレッサー部34は噴霧装置10a〜10c間で共用されているため、噴霧装置10a〜10cの少なくとも一つが噴霧動作を行う場合はコンプレッサー部34を動作させて圧力空気を供給させ、噴霧装置10a〜10cの全てが噴霧動作を行わない完全停止状態の場合はコンプレッサー部34を動作停止させる等の制御が行われる。
【0052】
また、耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1Bにおいて、コンプレッサー部34は噴霧装置10a〜10c間で共用されているため、噴霧器25a〜25cとコンプレッサー部34間の距離が比較的長くなるため、コンプレッサー部34,噴霧器25間は一般的な電磁弁26を設けることで十分処理可能である。
【0053】
<動作フロー>
図4は耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1における各噴霧装置10の動作内容を示すフローチャートである。
【0054】
なお、耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1A及び耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1B間において主要な相違点はコンプレッサー部14,34が噴霧装置10a〜10cごとに個別に存在するか、共用されるかであるため、動作内容の実質的な相違点は無いことから耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1Aを代表させて説明する。したがって、耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1Bについては一部、カッコ内に参照符号を付するに留める。
【0055】
同図を参照して、ステップS1において、耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1Aのメインスイッチ5をオンすることにより噴霧装置10が電源ON状態となる。以下、図2で示した耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1A(1B)における噴霧装置10a〜10cを総称した噴霧装置10の動作内容として説明する。
【0056】
その後、ステップS2において、噴霧装置10の噴霧時間設定部13(23)に対して噴霧動作の設定時間を設定する。例えば、噴霧時間設定部13が複数の設定時間に対応した複数の時間設定用スイッチから構成される場合、所望の噴霧時間に対応する時間設定用スイッチを選択的にオン状態に設定することにより、所望の噴霧時間が設定時間として設定される。この際、オン状態の時間設定用スイッチに付随して設けたランプを点灯させるようにしても良い。
【0057】
そして、ステップS3において、看護師等が噴霧装置10の開始スイッチ3に対し押圧による開始操作(所定の開始操作)を行うことにより、開始スイッチがON状態となり、ステップS4で噴霧装置10によるモジュール制御部11(21)による制御下における噴霧動作が開始される。ステップS4〜S13の処理はモジュール制御部11の制御下で実行される。
【0058】
その後、ステップS5において、停止スイッチ4に対する押圧による停止操作(所定の停止動作)が第1の判定時間JT1(0.5秒程度)以上継続した第1の長押し状態が検出された場合(YES)はステップS8に移行し、第1の長押し状態が検出されなかった場合(NO)はステップS6に移行する。
【0059】
ステップS5で第1の長押し状態が検出されなかった場合(NO)に実行されるステップS6において、噴霧動作は継続され、続くステップS13において、設定時間の終了が検出されると(YES)、噴霧動作を終了する。
【0060】
一方、ステップS7において、設定時間が終了していない場合、ステップS5に戻る。以降、ステップS5でYESとなるか、ステップS7でYESとなるまでステップS5〜S7が繰り返される。
【0061】
したがって、停止スイッチ4に対する停止操作が誤って行われても、その停止操作の継続時間が第1の判定時間JT1未満であれば、ステップS5は必ず「NO」となるため、噴霧動作が停止されることはない。例えば、停止操作が子供のいたずらに起因する場合、過去の実績から0.5秒以上の停止操作が継続されることは実質的に“0”であるため、子供のいたずらによる誤った停止操作によって噴霧動作が停止されることを確実に回避することができる。
【0062】
一方、ステップS5で第1の長押し状態が検出された場合(YES)に実行されるステップS8において、モジュール制御部11の制御下で噴霧動作が強制的に一時停止される一時停止用の停止制御が実行される。
【0063】
その後、ステップS9でモジュール制御部11はステップS4の噴霧動作の開始時からステップS8の一時停止までの噴霧動作実行時間を、ステップS2で設定された設定時間から差し引いた残存時間を記憶する。
【0064】
なお、残存時間はモジュール制御部11内の備わるメモリ(レジスタ)に記憶しても、図示しない外部の記憶部に記憶するようにしても良い。また、タイマー部12のカウント機能をステップS8の一時停止時点で一時カウント停止させることが可能な場合、タイマー部12を一時カウント停止状態にすることにより、残存時間を記憶するようにしても良い。
【0065】
そして、ステップS10において、停止スイッチ4に対する停止操作が第2の判定時間JT2(1秒程度)以上継続して行われる第2の長押し状態が検出された場合(YES)、ステップS11に移行し、第2の長押し状態が検出されなかった場合(NO)はステップS12に移行する。すなわち、ステップS10において、停止スイッチ4に対する停止操作が第1の判定時間JT1を上回る第2の判定時間JT2以上継続して行われると。一時停止状態から完全停止状態に切り替えるべくステップS11に移行する。
【0066】
ステップS10で第2の長押し状態が検出された場合(YES)に実行されるステップS11において、ステップS9で記憶した残存時間を“0”にリセットし、噴霧動作を終了する。すなわち、第1の判定時間JT1以上であっても、さらに第2の判定時間JT2以上継続して停止スイッチ4に対する停止操作が行われた場合、残存時間を“0”として噴霧動作を完全停止する。
【0067】
なお、ステップS9においてモジュール制御部11内の備わるメモリ(レジスタ)や外部の記憶部に残存時間を記憶させた場合、ステップS11のリセット処理は、ステップS8で記憶させた残存時間を“0”にリセットすることになる。また、ステップS8において、タイマー部12のカウント機能をステップS8の一時停止時点で一時カウント停止させた場合、ステップS11のリセット処理は、タイマー部12部のカウント値を初期値にリセットすることなる。
【0068】
一方、ステップS10で第2の長押し状態が検出されなかった場合(NO)、ステップS12において、開始スイッチ3に対する再度の開始操作を待つ。ステップS12は再度の開始動作が検出されると(YES)ステップS13に移行し、検出されない場合(NO)はステップS10に戻る。以降、ステップS10でYESとなる(完全停止処理への移行)か、ステップS12でYESになる(再開処理への移行)まで、ステップS10,S12が繰り返される。
【0069】
そして、ステップS12でYESの場合に実行されるステップS13において、噴霧動作を再開する。この際、モジュール制御部11は、ステップS2で設定した設定時間でなく、ステップS9で記憶した残存時間を新たな設定時間として噴霧動作を再開するという再開制御を行う。
【0070】
すなわち、第1の判定時間JT1以上であり、かつ第2の判定時間JT2未満の範囲で継続して停止スイッチ4に対する停止操作が行われた場合、一時停止処理を行い、噴霧動作の再開時に残存時間を新たな設定時間として噴霧動作を行うべく制御し、ステップS5に戻る。以降、ステップS5でYESとなるか、ステップS7でYESとなるまでステップS5〜S7が繰り返される。
【0071】
なお、ステップS9においてモジュール制御部11内の備わるメモリ(レジスタ)や外部の記憶部に残存時間を記憶させた場合、ステップS13において、ステップS8で記憶させた残存時間が新たな設定時間に設定されることになる。また、ステップS8において、タイマー部12のカウント機能をステップS8の一時停止時点で一時カウント停止させた場合、ステップS13において、タイマー部12部の一時停止時点からカウント再開させることになる。
【0072】
このように、本実施の形態の耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1(1A,1B)における噴霧装置10よれば、制御部(モジュール制御部11、タイマー部12及び噴霧時間設定部13)による停止制御は、停止スイッチ4に対する停止操作が第1の判定時間JT1以上継続された時にはじめて噴霧動作実行部(コンプレッサー部14(34)、電磁弁15(26)、噴霧器16(25))による噴霧動作を停止させている。
【0073】
このため、噴霧装置10の利用者である患者等が噴霧動作中に停止スイッチ4に対し誤って停止操作を行った場合でも、その継続時間が第1の判定時間JT1であれば実行中の噴霧動作を停止させることなく継続させることができる。
【0074】
その結果、本実施の形態の噴霧装置10は、子供のいたずら等の停止スイッチに対する誤動作によっても、その継続時間が第1の判定時間JT1未満であれば停止することなく安定した噴霧動作を実行可能にするという効果を奏する。
【0075】
さらに、噴霧装置10における上記制御部は、一時停止処理後に噴霧動作を再開させる際、一時停止処理までの噴霧動作実行時間分をステップS2で設定した設定時間から差し引いた残存時間を新たな設定時間として噴霧動作を実行させる再開制御を行っている。
【0076】
その結果、停止スイッチ4によって噴霧動作を一時停止させた場合においても、一時停止前後トータルでステップS2で設定した設定時間分の噴霧動作を実行することができるため、利用者に適切な実行時間の噴霧動作を提供することができる。
【0077】
さらに、上記制御部は停止操作が第1の判定時間JT1より長い第2の判定時間JT2以上継続された場合、上記残存時間を“0”にリセットするリセット機能を有しているため、設定時間内においても噴霧動作を強制終了させる完全停止を行うことができる。
【0078】
<表示部2への制御>
上記制御部におけるモジュール制御部11(21)は、噴霧動作の実行時間に応じた内容で表示部2の発光体L1〜L7における発光状態を制御する表示制御を行うことができる。例えば、ステップS4の噴霧動作の開始時は発光体L1〜L7を全て消灯させ、噴霧動作の時間経過と共に発光体L1,L2…の順に順次点灯(または点滅)させる、逆にステップS4の噴霧動作の開始時は発光体L1〜L7を全て点灯(または点滅)させ、噴霧動作の時間経過と共に発光体L1,L2…の順に順次消灯される等により、発光体L1〜L7の発光状態によって噴霧動作の実行時間を利用者に視覚的に認識させることができる。
【0079】
また、ステップS13において噴霧動作の再開時には、一時停止処理までの噴霧動作実行時間に対応する発光体L1〜L7の表示状態から始まるようにして、新たな設定時間となった残存時間分の時間経過と共に発光体L1〜L7における発光状態を制御することが望ましい。例えば、ステップS4の噴霧動作の開始時は発光体L1〜L7を全て消灯させ、噴霧動作の時間経過と共に発光体L1,L2…の順に順次点灯させた際、発光体L3まで点灯した時にステップS8の一時停止状態になった場合、ステップS13の噴霧動作の再開時まで発光体L1〜L3の点灯状態を維持させ、噴霧動作の時間経過と共に発光体L4,L5…の順に順次点灯させるようにしても良い。
【0080】
そして、ステップS13の残存時間のリセット処理実行時には、併せて表示部2を初期状態(発光体L1〜L7が全て消灯)にすることが望ましい。また、ステップS8の一時停止の実行時には表示部2の発光体L1〜L7の発光内容を変える(点灯状態を点滅状態にする、発光色を変える等)ことにより、表示部2からも一時停止状態であることが視覚認識可能にすることが望ましい。
【0081】
また、発光体L1〜L7間の順次点灯(または点滅)、順次消灯させる時間間隔も均等にしたり、時間経過と共に短くしたり、長くしたりすることもできる。
【0082】
このように、モジュール制御部11によって表示部2の発光体L1〜L7の発光状態を制御することにより、噴霧装置10の利用者が発光体L1〜L7の発光状態を参照して視覚的に容易に噴霧動作の進行状況を理解することができる。
【0083】
<非常用停止スイッチ9の設置>
さらに、図1の点線に示すように耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1の正面部の右上に非常用停止スイッチ9を別途、設けても良い。
【0084】
そして、非常用停止スイッチ9の状態を各モジュール制御部11(21)に検出可能に非常用停止スイッチ9に接続し、各モジュール制御部11が非常用停止スイッチ9の非常停止操作をトリガとして上記噴霧動作実行部によるそれぞれの噴霧動作を直ちに停止させる非常停止制御を行うように構成する。
【0085】
このように、非常用停止スイッチ9を設けることにより、非常用停止スイッチ9に対し非常停止操作を行うことにより、緊急時等において噴霧装置10a〜10cの噴霧動作を速やかに強制終了させることができる効果を奏する。
【0086】
なお、図1で示した非常用停止スイッチ9は説明の都合上、正面に設けた構成を示したが、実際には患者等の利用者が誤って操作することがない場所に設けることが望ましい。また、図1では非常用停止スイッチ9は噴霧装置10a〜10c全体の非常停止用に設けたが、停止スイッチ4のように各噴霧装置10個別に設けるようにしても良い。
【0087】
<その他>
なお、本実施の形態では、3台の噴霧装置10a〜10cからなる耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1(1A,1B)を示したが、耳鼻咽喉科用噴霧ユニット1内に設ける噴霧装置10の台数は任意である。
【0088】
また、開始スイッチ3に対する開始操作が継続して行われる長押し操作が誤って行われた場合、噴霧動作の開始後は当該長押し操作の有無に関係なく噴霧動作が継続され、設定時間経過後は噴霧動作を終了し、設定時間経過後においても長押し操作が継続している場合でも再度、噴霧動作が開始されないように防止機能を設けるようにしても良い。
【0089】
また、本実施の形態では、開始スイッチ3及び停止スイッチ4を個別に設けた例を示したが、開始スイッチ3及び停止スイッチ4の機能を一つのスイッチで対応可能な開始・停止スイッチを設けるようにしても良い。この場合、最初の段階では開始・停止スイッチは開始スイッチとして機能し、開始操作後の噴霧動作中は停止スイッチとして機能するような態様が考えられる。この際、開始スイッチとして機能する場合と停止スイッチとして機能する場合とで点灯色を変えるようにする態様をとるのが望ましい。
【符号の説明】
【0090】
1,1A,1B 耳鼻咽喉科用噴霧ユニット
2(2a〜2c) 表示部
3(3a〜3c) 開始スイッチ
4(4a〜4c) 停止スイッチ
5 メインスイッチ
6(6a〜6c) 制御・駆動部
7 ジョイント部
9 非常用停止スイッチ
10(10a〜10c) 噴霧装置
11(11a〜11c),21(21a〜21c) モジュール制御部
12(12a〜12c),22(22a〜22c) タイマー部
13(13a〜13c),23(23a〜23c) 噴霧時間設定部
14(14a〜14c),34 コンプレッサー部
15(15a〜15c) 三方電磁弁
16(16a〜16c),25(25a〜25c) 噴霧器
26(26a〜26c) 電磁弁
31,32 電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開始スイッチの所定の開始操作によって設定時間分の噴霧動作を行う耳鼻咽喉科用噴霧装置であって、
前記噴霧動作を実行可能な噴霧動作実行部と、
継続して所定の停止操作が可能な停止スイッチと、
前記噴霧動作実行部による前記噴霧動作の実行時において、前記停止スイッチに対する前記所定の停止操作の有無を検知し、前記所定の停止操作が第1の判定時間以上継続された時に前記噴霧動作実行部による前記噴霧動作を停止させる停止制御を行う制御部とを備える、
耳鼻咽喉科用噴霧装置。
【請求項2】
請求項1記載の耳鼻咽喉科用噴霧装置であって、
前記制御部は、
前記停止制御実行後、前記開始スイッチの前記所定の開始操作をトリガとして噴霧動作実行部による前記噴霧動作を再開させ、前記停止制御実行時までの前記噴霧動作実行時間分を前記設定時間から差し引いた残存時間分の前記噴霧動作を実行させる再開制御を行う、
耳鼻咽喉科用噴霧装置。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2記載の耳鼻咽喉科用噴霧装置であって、
前記制御部は、
前記所定の停止操作が第1の判定時間より長い第2の判定時間以上継続された場合、前記残存時間を“0”にリセットするリセット機能を有する、
耳鼻咽喉科用噴霧装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうち、いずれか1項に記載の耳鼻咽喉科用噴霧装置であって、
前記噴霧動作を受ける利用者が視覚認識可能な複数の発光体を有する表示部をさらに備え、
前記制御部は、前記噴霧動作の実行時間に応じた内容で前記表示部の前記複数の発光体における発光状態を制御する表示制御をさらに行う、
耳鼻咽喉科用噴霧装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうち、いずれか1項に記載の耳鼻咽喉科用噴霧装置であって、
所定の非常停止操作が可能な非常停止用スイッチをさらに備え、
前記制御部は、
前記非常停止用スイッチの前記所定の非常停止操作をトリガとして前記噴霧動作実行部による前記噴霧動作を直ちに停止させる非常停止制御を行う、
耳鼻咽喉科用噴霧装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−217500(P2012−217500A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83312(P2011−83312)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)