説明

肘枕用補助枕

【課題】肘枕をしながら使用できる肘枕用補助枕を提供する。
【解決手段】横臥した人3の脇7の下に敷かれるベース部9の左右から各々上方へ円弧状にガイド11が延びる。これら各ガイド11に沿ってスライドする円弧状のスライドバー13が設けられ、これら各スライドバー13の任意のスライド位置を固定手段15が固定する。一方のスライドバー13の先端には、後頭部側面を支えることができる後頭部枕17が設けられる。他方の前記スライドバー13の先端に設けられ頬部を支えることができる頬部枕19が設けられる。左右に位置する後頭部枕17と頬部枕19との間で、肘枕5をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人が横臥時して肘枕する際に頭を支えて補助する補助枕に関する。
【背景技術】
【0002】
人が横臥時して雑誌や新聞などを見る場合には、頭を高く掲げる必要があり、多くの場合には、下になった方の腕の肘を曲げて、肘を立て、その手の上に頭を載せること、すなわち肘枕を行なう。この肘枕は、しびれたり痛くなったりして長時間は耐えられない。
そのため、頭を高く掲げるための補助装置が種々考えられている。例えば、特許文献1には、手や足がしびれることなく、腕枕や膝枕ができるように、縦断面が横U字状の枕が提案される。また、特許文献2は、頭を支える水平な台が、斜めに突き出した筒の先に設けられ、この筒はロッドに対してスライドし長さが調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−141651
【特許文献2】実登3028682
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1や2は、肘枕をしないで、単に横臥状態で頭を高く掲げるための装置である。肘枕をしながら使用できるものではない。すなわち、装置を使用しつつ肘枕をするには、特許文献1は肘枕のために肘を立てるための腕のスペースが、明らかに存在しない。特許文献2は、肘枕をしようとする腕が、頭を支える水平な台、斜めに突き出した筒やロッドに干渉してしまう。このため、肘枕をせず、装置だけで頭を支えることになってしまい、首が伸び、首に負担がかかってしまう。よって、長時間の使用は耐えられない。
【0005】
この発明は、以上の問題点を解決するために、肘枕をしつつ使用することができる肘枕用補助枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、第一発明は、人の横臥時に肘枕を補助する補助枕であって、横臥した人の脇の下に敷かれるベース部と、このベース部の左右から各々上方へ円弧状に延びるガイドと、これら各ガイドに沿ってスライドする円弧状のスライドバーと、これら各スライドバーの任意のスライド位置を固定するための固定手段と、一方の前記スライドバーの先端に設けられ後頭部側面を支えることができる後頭部枕と、他方の前記スライドバーの先端に設けられ頬部を支えることができる頬部枕と、を有することを特徴とする肘枕用補助枕である。
【0007】
第一発明は、更に、前記ベース部の心材は、蒲鉾状に円筒状の一部を形成するものであり、前記ガイドは、仮想の大きな一つの円の一部を形成し、第1のパイプ材からなり、前記スライドバーは前記第1のパイプ材の内部に挿入される小径の第2のパイプ材からなり、前記後頭部枕及び前記頬部枕の心材は、人の後頭部又は頬部の曲面に対応し湾曲して形成されていることを特徴とする肘枕用補助枕である。
【発明の効果】
【0008】
第一、又は第二発明によれば、左右に位置する後頭部枕と頬部枕との間で、肘枕をすることができる。すなわち、左右のうち一方に位置する後頭部枕、及びこの後頭部枕が設けられるガイドやスライドバーと、左右のうち他方に位置する頬部枕、及びこの頬部枕が設けられるガイドやスライドバーとは、左右に離れ、その間に存在するスペースで、自由に肘枕をすることができる。また、頭は、この肘枕の手で耳の近くが支えられ、後頭部枕で後頭部が支えられ、頬部枕によって頬部が支えられ、よって頭部の3ヵ所が支えられる。このようにして肘枕用補助枕を使用しつつ肘枕をすることができる。また、肘枕の体勢を取ることで、首は伸びずに済む。これらのことから、首に負担がかかり難い。
【0009】
更に、右のガイドやスライドバーは右へ円弧状に湾曲し、左のガイドやスライドバーは左へ円弧状に湾曲することになるので、左右のガイドやスライドバーの間には、より大きなスペースが形成され、肘枕の動作をする際に邪魔にならない。
第二発明によれば、更に、前記ベース部の心材は、蒲鉾状に円筒状の一部を形成するものであるので、脇の下に敷く際に、痛くなりにくい。また、ガイドは、仮想の大きな一つの円の一部を形成することから、後頭部枕と頬部枕の間の距離を、連続的に変化でき、これら後頭部枕と頬部枕によって支える頭の大きさと、所望する頭の高さとに、対応できる。また、左右のスライドバーは別個にスライドするので、各々のスライド位置を別個に変えることで、顔の向きにも対応できる。また、ガイドとスライドバーを、ともに、パイプ材とすることで、シンプルで強固な構造にできる。また、後頭部枕及び頬部枕の心材は、人の後頭部又は頬部の曲面に対応し湾曲して形成されているので、後頭部又は頬部への接触が柔らかく行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の右方向から見た斜視図である。
【図3】図1の動作を示す図である。
【図4】(A)は、図1の実施形態に係る肘枕用補助枕を使用している人を、頭部の前方斜め上から見た斜視図、(B)は、(A)の人を、頭部の後方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の実施形態を、図1〜図4に示す。
[全体概略]
この肘枕用補助枕1は、人3が横臥した時に、肘枕5をした状態で、肘枕5を補助する補助枕である。横臥した人3の脇7の下に敷かれるベース部9の左右から各々上方へ円弧状にガイド11が延びる。これら各ガイド11に沿ってスライドする円弧状のスライドバー13が設けられ、これら各スライドバー13の任意のスライド位置を固定手段15が固定する。一方のスライドバー13の先端には、後頭部側面を支えることができる後頭部枕17が設けられる。他方のスライドバー13の先端に設けられ頬部を支えることができる頬部枕19が設けられる。左右に位置する後頭部枕17と頬部枕19とで頭部21を支えながら、これらの枕17、19の間で、腕の肘を曲げて、肘を立て、その手23の上に頭部21を載せること、すなわち肘枕5を行なうことができる。
【0012】
[ベース部9]
ベース部9の心材25は、材質はステンレス板であり、大きな円筒の一部を切って蒲鉾状に形成した如き形状のものであり、表面27は緩やかな連続する曲面である。この円筒状の曲面の下面には、水平な強度板29(図2参照)が溶接される。このベース部9の心材25の表面27は、クッション材31によって覆われる。
【0013】
[ガイド11]
左右の二つのガイド11は、仮想の大きな一つのほぼ完全な円の一部を形成する(図1、図3参照)。それぞれのガイド11は、大きな円の下側の略90度の部分を形成する。これらはステンレス製の第1のパイプ材からなる。各ガイド11の下端33は、ベース部9下面の強度板29(図2参照)に溶接され、上端35は開口する。
もっとも二つのガイド11は、後頭部枕17と頬部枕19とが、使用する人3の側へやや近づくように、5ミリ程傾けて、より頭部を楽に支えてくれるよう、設けられている。
【0014】
[スライドバー13]
スライドバー13はステンレス製の第2のパイプ材からなる。この第2のパイプ材は、第1のパイプ材の内部に、前記上端35から挿入される小径のものである。
[後頭部枕17、頬部枕19]
後頭部枕及び頬部枕19の心材26は、ステンレス製の板材で、図2に示すように、概略皿状であり、人3の後頭部又は頬部の曲面に対応し、これら頭部21の各部と同じ曲率となるように湾曲して形成されている。これら後頭部枕及び頬部枕19の心材26の表面28は、クッション材32によって覆われる。
【0015】
[固定手段15]
スライドバー13のガイド11に対する任意のスライド位置を固定するための固定手段15は、ネジ式である。すなわち図2に示すように、つまみ37が一端に形成された雄ネジ39の他端を、ガイド11を形成する外側の第1のパイプ材に設けられた雌ネジ穴41へ羅合し、この他端で、スライドバー13を形成する内側の第2のパイプ材を、ガイド11の内周壁に押し付けて、固定を行なう。
【0016】
「実施形態の効果」
以上の実施形態の肘枕用補助枕1によれば、以下の作用効果を得る。
(1)左右に位置する後頭部枕17と頬部枕19との間で、肘枕5をすることができるので、肘枕5をしつつ、肘枕用補助枕1によっても頭を支えることができる。
すなわち、左右のうち一方に位置する後頭部枕17、及びこの後頭部枕17が設けられるガイド11やスライドバー13と、左右のうち他方に位置する頬部枕19、及びこの頬部枕19が設けられるガイド11やスライドバー13とは、左右に離れているので、間に存在するスペースS(図1、図3)で、自由に肘枕5をすることができる。また、頭は、この肘枕5による手23で耳の近くが支えられ、後頭部枕17で後頭部が支えられ、頬部枕19によって頬部が支えられる。よって頭部21の3ヵ所が支えられる。このようにして肘枕用補助枕1を使用しつつ肘枕5をすることができる。
【0017】
(2)また、肘枕5の体勢を取ることで、首と肩が近づいた姿勢になり、このため首は伸びずに済む(図4(B)参照)。仮に、肘枕5をせず、装置だけで頭を支えると、首と肩が遠くなった姿勢になり、首は伸びる。しかも頭は高く掲げられているので、首には大きな負担がかかる。これらのことから、この肘枕用補助枕1によれば、首に負担がかかり難いと言える。
【0018】
(3)更に、右のガイド11やスライドバー13は右外側へ円弧状に湾曲し、左のガイド11やスライドバー13は左外側へ円弧状に湾曲することになるので、左右のガイド11やスライドバー13の間には、これらの湾曲の分だけ、より大きなスペースS(図1、図3)が形成される。このため、この大きなスペースSの中で、肘枕5のための動作をすることができ、動作をする際に装置が邪魔にならない。
【0019】
(4)更に、ベース部9の心材25は、蒲鉾状に円筒状の一部を形成するものであるので、脇7の下に敷く際に、脇の下から腕にかけてできるやや蒲鉾状の空間に対応し、脇7が痛くなりにくい。すなわち、通常、肘枕をする際にも、脇の下から腕にかけても、やや蒲鉾状に空間ができるので、たとえば座布団の2つ折を脇の下に挟んで肘枕をすると随分と楽になるのと同じように、ベース部9が、脇7の下から腕をも支えてくれるので、脇7が痛くなりにくい。
(4の2)更に、ベース部9の心材25は、蒲鉾状に円筒状の一部を形成するものであるので、脇7の下に敷く際に、痛くなりにくい。仮に、心材25の表面を水平にしようとすると、ガイド11を溶接するスペースを心材25の下面に設けるためには、結局は、心材25を直方体にすることになり、この直方体の角が、脇7に接して痛みを覚えてしまう。
【0020】
(5)また、図3に示すように、ガイド11は、仮想の大きな一つの円の一部を形成することから、後頭部枕17と頬部枕19の間の距離を、連続的に変化できる。これにより、後頭部枕17と頬部枕19によって支える頭の大きさに対応できる。また、これにより、後頭部枕17や頬部枕19の高さを変更できるので、所望する頭の高さに対応できる。
【0021】
(6)また、図1、図3に示すように、左右のスライドバー13は別個にスライドするので、各々のスライド位置を別個に変えることで、顔の向きにも対応できる。すなわち、一方のスライドバー13を上方へスライドさせ後頭部枕17の位置を高くし、あるいは、他方のスライドバー13を下方へスライドさせ頬部枕19の位置を低くすることで、顔の向きを下向きにできる。よって、図4(A)に示すように、雑誌43や新聞を楽に見ることができる。また、顔の向きを水平にすれば、テレビを楽に見ることができる。
【0022】
(7)また、ガイド11とスライドバー13を、ともに、パイプ材とすることで、シンプルで強固な構造にできる。
(8)また、図2に示すように、後頭部枕及び頬部枕19の心材25は、人3の後頭部又は頬部の曲面に対応し湾曲して形成されているので、後頭部又は頬部への接触が柔らかく行え、心地よく装置を使うことができる。
(9)後頭部枕17と頬部枕19との間に耳を位置させることで、テレビなどを見るときに、耳の聞こえがよい。
「他の実施形態」
以上の実施形態では、ガイド11となる第1のパイプ材の内部に、スライドバー13となる第2のパイプ材が、挿入されてスライドが行なわれるものであったが、他の実施形態では、逆に、ガイド11となる第1のパイプ材の外側に、スライドバー13となる第2のパイプ材が、被せられてスライドが行なわれるものでも良い。
【0023】
この場合には、ネジ式の固定手段15は、例えば、つまみ37が一端に形成された雄ネジ39の他端を、スライドバー13となる外側の第2のパイプ材に設けられた雌ネジ穴へ羅合し、この他端を、ガイド11となる第1のパイプ材へ押し付けて、固定を行なうことができる。
【0024】
以上の実施形態では、ガイド11とスライドバー13は、ともに、パイプ材であったが、他の実施形態では、パイプ材以外の構造とすることができる。例えば、断面が四角形のガイド11の周囲に、断面がコの字状のスライドバー13が嵌合することで、スライドすることができる
以上の実施形態では、左右の二つのガイド11は、仮想の大きな一つの完全な円の一部を形成するものであったが、他の実施形態では、完全な円である必要はない。スライドが行える範囲で不完全な円であってもよい。すなわち、仮想の大きな一つの円は、中央部分が省略され、左右の部分だけが中央へ集められた、いわば楕円のような形状でもよい。左右の二つのガイド11が、このような仮想の大きな一つの不完全な円の一部を形成するものであっても、スライドが行なえ、本発明は機能する。のみならず、スライドを行なって後頭部枕17や頬部枕19の上下位置を大きく変更しても、左右の位置の変更を小さくすることができる。
以上の実施形態では、材質はステンレス製としたが、他の実施形態では、他の材質、例えば鉄製やプラスチック製などが用いられうる。
【符号の説明】
【0025】
1…肘枕用補助枕、3…人、5…肘枕、7…脇、9…ベース部、11…ガイド、13…スライドバー、15…固定手段、17…後頭部枕、19…頬部枕、21…頭部、23…手、25、26…心材、27、28…表面、29…強度板、31…クッション材、33…下端、35…上端、37…つまみ、39…雄ネジ、41…雌ネジ穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の横臥時に肘枕を補助する補助枕であって、横臥した人の脇の下に敷かれるベース部と、このベース部の左右から各々上方へ円弧状に延びるガイドと、これら各ガイドに沿ってスライドする円弧状のスライドバーと、これら各スライドバーの任意のスライド位置を固定するための固定手段と、一方の前記スライドバーの先端に設けられ後頭部側面を支えることができる後頭部枕と、他方の前記スライドバーの先端に設けられ頬部を支えることができる頬部枕と、を有することを特徴とする肘枕用補助枕。
【請求項2】
前記ベース部の心材は、蒲鉾状に円筒状の一部を形成するものであり、前記ガイドは、仮想の大きな一つの円の一部を形成し、第1のパイプ材からなり、前記スライドバーは前記第1のパイプ材の内部に挿入される小径の第2のパイプ材からなり、前記後頭部枕及び前記頬部枕の心材は、人の後頭部又は頬部の曲面に対応し湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の肘枕用補助枕。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−157607(P2012−157607A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20446(P2011−20446)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【特許番号】特許第4754036号(P4754036)
【特許公報発行日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(511029442)
【Fターム(参考)】