説明

肛門加熱洗浄装置

【課題】手術後の肛門の傷口を清潔に保持し、血行を促進すると共に、薬液を傷口に噴射して回復を早めることができる肛門加熱洗浄装置を提供するものである。
【解決手段】赤外線ランプ15を設けたボウル状の温水浴槽3と、この上部に設けられ、臀部Aを温水浴槽3内に浸漬するように支持する環状の座部4と、この座部4の外側に設けられたオーバーフロー受け部5と、前記温水浴槽3内に設けられ気泡を発生するバブリング装置16と、温水浴槽3内に設けられ前記座部4に腰掛けた臀部Aの肛門Bに向かって薬液21を噴射する薬液噴射ノズル24とからなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肛門加熱洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
痔疾患には、痔核、裂肛、肛門周囲膿瘍・痔ろうなどがあり、通常は外来通院で治療している。治療は、緩下剤の投与、坐薬や軟膏の使用によって改善されることが多い。痔核が大きくなり、脱肛を生じる場合には手術が必要となる。手術は腰椎麻酔で行ない手術は15〜30分ほどで終了するが、手術後、麻酔が切れて来た時や排便時にはかなりの痛みを生ずる。入院は1週間程度が一般的である、手術後の排便は強い痛みを感じ、10日ぐらいは出血を伴うことがある。このため、排便後はシャワーなどを浴びて肛門を洗浄して、十分に乾燥させて清潔にする必要があり、感染予防のために抗生物質の点滴や内服をおこなっている。
【0003】
排便後にシャワーなどを浴びて肛門を洗浄する場合に、浴室で裸になって洗浄するため、面倒である。また温風乾燥装置の付いた温水弁座(例えば特許文献1)もあるが、水圧が強く傷口を広げるおそれがあり、また温水が噴射している時間が短いので肛門の保温効果が少ない問題がある
【0004】
このため、洗面器に温水を汲んで、この中に臀部を浸して肛門を静かに洗浄すると共に、5〜15分程度加熱して保温し、血行を促進させることが行なわれている。この洗浄は一般にベッドの脇でカーテンで仕切って行なっているが、しゃがんだ姿勢で長時間いるので足が疲れる上、温水がすぐ冷えてしまい、保温効果が少ない欠点があった。
【特許文献1】特開2001−107424
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題を改善し、手術後の肛門の傷口を清潔に保持し、血行を促進すると共に、薬液を傷口に噴射して回復を早めることができる肛門加熱洗浄装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の肛門加熱洗浄装置は、電熱ヒーターを設けたボウル状の温水浴槽と、この上部に設けられ、臀部を温水浴槽内に浸漬するように支持する環状の座部と、この座部の外側に設けられたオーバーフロー受け部と、前記温水浴槽内に設けられ気泡を発生するバブリング装置または超音波発生装置と、温水浴槽内に設けられ前記座部に腰掛けた臀部の肛門に向かって薬液を噴射する薬液噴射ノズルとからなることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2記載の肛門加熱洗浄装置は、バブリング装置が、エアー供給管を介してエアーポンプに接続された気泡噴射ノズルで形成され、このエアー供給管の中間にバルブを介して薬液タンクを接続して、バルブの開放により気泡噴射ノズルを薬液噴射ノズルとして薬液を噴射するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項3記載の肛門加熱洗浄装置は、電熱ヒーターが赤外線ランプで形成されて、温水浴槽内に座部の内側に向けて取付けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項4記載の肛門加熱洗浄装置は、電熱ヒーターがエアー供給管の中間に取付けられ、気泡噴射ノズルから温風を噴射するようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項5記載の肛門加熱洗浄装置は、請求項1において、更に温水浴槽内の温水にオゾンを供給するオゾン発生機または殺菌剤を注入する殺菌剤注入装置を取付けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る請求項1記載の肛門加熱洗浄装置によれば、座部に臀部を腰掛けると、肛門が温水浴槽内の温水に浸漬され、肛門を保温して血行を促進させることができる。この時、座部から溢れた温水はオーバーフロー受け部に流れて床に流れることがない。また温水は電熱ヒーターで加熱されて保温されていると共に、バブリング装置や超音波発生装置により温水内に気泡を発生させて、肛門を効率よく洗浄すると共にマッサージ効果により更に血行を促進することができる。また温水による洗浄と保温をした後、温水を排水し、この後、薬液噴射ノズルから薬液を肛門に霧状に噴射して塗布することができる。
【0012】
また請求項2記載の肛門加熱洗浄装置によれば、エアー供給管を介してエアーポンプに接続された気泡噴射ノズルでバブリング装置が形成され、このエアーを利用して薬液を霧状に噴射させるので1台のエアーポンプで、気泡の発生と薬液の噴射を行なうことができる。
【0013】
また請求項3記載の肛門加熱洗浄装置によれば、電熱ヒーターが赤外線ランプで形成されて、温水浴槽内に座部の内側に向けて取付けられているので、温水の加熱と、肛門の乾燥と保温を行なうことができる。
【0014】
また請求項4記載の肛門加熱洗浄装置によれば、電熱ヒーターがエアー供給管の中間に取付けられ、気泡噴射ノズルから温風を噴射するので、温水の加熱と肛門の温風乾燥を行なうことができる。
【0015】
更に請求項5記載の肛門加熱洗浄装置によれば、温水浴槽内の温水にオゾンを供給するオゾン発生機または殺菌剤を注入する殺菌剤注入装置を設けたので、温水と温水浴槽の殺菌や滅菌を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
洋式トイレに座っているのと同様の状態で肛門の洗浄と保温乾燥ができる肛門加熱洗浄装置を実現した。
【実施例】
【0017】
以下本発明の実施例を図1ないし図3を参照して詳細に説明する。図において1は肛門加熱洗浄装置を示すもので、上部を開口した本体部2の内側に、ボウル状の温水浴槽3が設けられ、この上部が湾曲して環状の座部4が形成されている。この環状の座部4は、図1に示すように臀部Aを腰掛けた時に肛門Bが温水浴槽3内の温水6に浸漬するように形成されている。また環状の座部4を囲むように、皿状のオーバーフロー受け部5が形成されている。
【0018】
前記温水浴槽3の底部には排水口7が形成され、ここにドレイン管8が接続され、その下端は本体部2の外部に取付けたドレインコック10に接続され、容器11に排水するようになっている。また前記オーバーフロー受け部5の最下部にドレイン管12が接続され、その下端は前記ドレイン管8に接続されている。なお13は、前記排水口7に取付けられる止水栓である。
【0019】
また温水浴槽3の底部側には、赤外線ランプ15が座部4の内側に向けて取付けられている。更に温水浴槽3の底部側には、バブリング装置16が取付けられている。このバブリング装置16は、エアーポンプ17にエアー供給管18を介して接続された気泡噴射ノズル19で形成され、この気泡噴射ノズル19が温水浴槽3の底部側に取付けられている。
【0020】
また本体部2の外側上部には薬液21を入れる薬液タンク22が取付けられ、薬液供給管23を介して、温水浴槽3の底部側に取付けられた薬液噴射ノズル24に接続されている。また薬液供給管23には図3に示すように、開閉弁25aが取付けられ、この下方に分岐管26が取付けられ、この下端は前記エアー供給管18に接続されている。
【0021】
このエアー供給管18には開閉弁25bが取付けられていると共に、分岐管26の中間にも開閉弁25cが取付けられている。また図1に示すように、本体部2の内側にはエアーポンプ17や開閉弁25a〜25cを制御する制御装置28が設けられていると共に、本体部2の底部にはキャスター29が取付けられている。また制御装置28には図示しない操作スイッチが接続され、手元で操作できるようになっている。
【0022】
上記構成の肛門加熱洗浄装置1は、手術をした患者が排便した後、肛門Bを洗浄するために、トイレなどに設置されている。先ず容器11に温水6を汲んできて、温水浴槽3に入れる。この時、温水6を座部4の位置まで入れる。次に容器11をドレインコック10の下に置いて、ドレインコック10を開放しておく。
【0023】
この状態で、患者は座部4に臀部Aを腰掛けると、座部4は肛門Bが温水浴槽3内の温水6に浸漬するように、通常の様式トイレの便座よりやや大きく形成されているので、肛門Bが温水6に浸漬される。この時、座部4から溢れた温水6はオーバーフロー受け部5に流れて、この底部に接続したドレイン管12を通ってドレインコック10から容器11に流れ込む。
【0024】
次に図示しないスタートスイッチを操作すると、赤外線ランプ15が照射されて温水6を加熱すると共に、エアーポンプ17が作動して開閉弁25bが開放する。エアーポンプ17からエアー供給管18を通り、気泡噴射ノズル19から空気が噴射されて気泡となって温水6をバブリングして、肛門Bを適度にマサージしながら洗浄して加熱する。このようにして5〜20分程度、肛門Bを加熱する。この間、温水6は赤外線ランプ15で加熱されているので保温される。
【0025】
肛門Bの加熱・洗浄が終わったら、エアーポンプ17を止めて止水栓13を引き抜き、排水口7から温水6をドレイン管8を通して容器11に排水する。この後、肛門Bを赤外線ランプ15で加熱して乾燥させる。次に開閉弁25bを閉じ、開閉弁25a、25cを開放してエアーポンプ17を駆動させると、空気はエアー供給管18、分岐管26、薬液供給管23を通って薬液噴射ノズル24から噴出し、この時、薬液タンク22の薬液21を吸引して、薬液噴射ノズル24から肛門Bに向けて霧状に薬液21が噴射されて、肛門Bに塗布される。
【0026】
使用後は、消毒用アルコールなどを温水浴槽3や座部4に噴霧して消毒しておく。また、肛門加熱洗浄装置1を移動させる時には、本体部2の底部にキャスター29が取付けられているので、軽く押して行くだけで簡単に移動させることができる。
【0027】
図4は本発明の他の実施例を示すもので、バブリング装置16のエアーポンプ17と気泡噴射ノズル19とを接続するエアー供給管18に、薬液供給管23を接続し、ここに設けられた開閉弁25a、25bの切換えにより、気泡噴射ノズル19を薬液噴射ノズル24と兼用にしたものである。
【0028】
図5は本発明の他の実施例を示すもので、バブリング装置16のエアーポンプ17と気泡噴射ノズル19を接続するエアー供給管18の中間に電熱ヒーター31を取付けたもので、この場合には赤外線ランプ15は不要である。この装置では、エアーポンプ17から供給した空気を電熱ヒーター31で加熱して、温風となったものを温水6内に噴出させるので、温水6の保温を行なうことができる。また温水6を排水後は、温風により肛門Bを乾燥することができる。
【0029】
図6は本発明の他の実施例を示すもので、バブリング装置16のエアーポンプ17と気泡噴射ノズル19を接続するエアー供給管18の中間にオゾン発生器32と電熱ヒーター31を設けたものである。これはエアーポンプ17から供給した空気を電熱ヒーター31で加熱して、更にオゾン発生器32から発生したオゾンを供給して温水6内に噴射することにより、温水6と温水浴槽3の殺菌や滅菌を行なうことができる。なおこの場合、オゾン発生器32の代わりに殺菌剤注入装置を設けて、殺菌剤を温水6に注入する構造でも良い。
【0030】
図7は本発明の異なる他の実施例を示すもので、座部4を腰を囲むように椅子形に形成し、この前部に脚支持部33を設けて、この脚支持部33の下方にオーバーフロー受け部5を設けたものである。これは座部4に安定して座ることができ、長時間座っていても疲れない。
【0031】
なお上記実施例ではエアーを供給して温水6をバブリングするバブリング装置を取付けた場合について示したが、温水浴槽3内に超音波発生装置を設けた構造でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例による肛門加熱洗浄装置の断面図である。
【図2】図1に示す肛門加熱洗浄装置の斜視図である。
【図3】図1に示す肛門加熱洗浄装置のバブリング装置と薬液噴射機構を示す説明図である。
【図4】本発明の他の実施例による気泡噴射ノズルと薬液噴射ノズルとを兼用した構造の説明図である。
【図5】本発明の他の実施例によるバブリング装置に電熱ヒーターを取付けた構造の説明図である。
【図6】本発明の他の実施例によるバブリング装置にオゾン発生器を取付けた構造の説明図である。
【図7】本発明の他の実施例による座部を椅子形に形成した肛門加熱洗浄装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 肛門加熱洗浄装置
2 本体部
3 温水浴槽
4 座部
5 オーバーフロー受け部
6 温水
7 排水口
8 ドレイン管
11 容器
12 ドレイン管
12 止水栓
15 赤外線ランプ
16 バブリング装置
17 エアーポンプ
18 エアー供給管
19 気泡噴射ノズル
22 薬液タンク
23 薬液供給管
24 薬液噴射ノズル
25a、25a、25c 開閉弁
31 電熱ヒーター
32 オゾン発生器
33 脚支持部
A 臀部
B 肛門


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電熱ヒーターを設けたボウル状の温水浴槽と、この上部に設けられ、臀部を温水浴槽内に浸漬するように支持する環状の座部と、この座部の外側に設けられたオーバーフロー受け部と、前記温水浴槽内に設けられ気泡を発生するバブリング装置または超音波発生装置と、温水浴槽内に設けられ前記座部に腰掛けた臀部の肛門に向かって薬液を噴射する薬液噴射ノズルとからなることを特徴とする肛門加熱洗浄装置。
【請求項2】
バブリング装置が、エアー供給管を介してエアーポンプに接続された気泡噴射ノズルで形成され、このエアー供給管の中間にバルブを介して薬液タンクを接続して、バルブの開放により気泡噴射ノズルを薬液噴射ノズルとして薬液を噴射するようにしたことを特徴とする請求項1記載の肛門加熱洗浄装置。
【請求項3】
電熱ヒーターが赤外線ランプで形成されて、温水浴槽内に座部の内側に向けて取付けられていることを特徴とする請求項1記載の肛門加熱洗浄装置。
【請求項4】
電熱ヒーターがエアー供給管の中間に取付けられ、気泡噴射ノズルから温風を噴射するようにしたことを特徴とする請求項1記載の肛門加熱洗浄装置。
【請求項5】
請求項1記載の肛門加熱洗浄装置において、更に温水浴槽内の温水にオゾンを供給するオゾン発生機または殺菌剤を注入する殺菌剤注入装置を取付けたことを特徴とする肛門加熱洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−14919(P2006−14919A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195316(P2004−195316)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(301071022)
【Fターム(参考)】