説明

肛門洗浄システムのための容器

本発明は肛門洗浄のための容器に関する。特に本発明は操作し易く且つ収納形態から即使用可能な形態に簡単に変換することができる硬質容器に関する。一形態において本発明は肛門洗浄システムのための容器に関する。肛門洗浄システムは、肛門プローブと、洗浄液(例えば水等)を貯液するためのリザーバと、リザーバ内に流体(例えば空気等)を送り込むためのポンプ機構と、リザーバと肛門プローブとを接続する液管とを有する。容器は、容器の外形寸法を少なくとも部分的に画定する外側チャンバ壁と外側チャンバ壁内に配置される内側チャンバ壁とを有し、外側チャンバ壁及び内側チャンバ壁はリザーバを画成する。この構造により洗浄液で満たした際、液面積が小さいリザーバを提供する。その結果、洗浄液をリザーバから肛門プローブを通して放出するのに大きな圧力を要しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肛門洗浄のための容器に関する。特に、本発明は、操作し易く且つ収納形態から即使用可能な形態への変換が容易である、硬質容器に関する。
【背景技術】
【0002】
定期的に肛門洗浄を行うことにより様々な腸疾患患者の苦痛を緩和できることが知られている。例えば、便秘や便失禁などの疾患においては腸の蠕動を促進することもできる。
【0003】
そのため、様々なタイプの肛門洗浄システムが提供されている。このようなシステムには、直腸内に挿入するための肛門プローブを有するタイプのものがある。該肛門プローブを通して洗浄液を腸内に注入することができる。
【0004】
肛門プローブは洗浄液を含むリザーバに液管を介して接続される。例えばポンプで空気をリザーバ内に送り込む等、ポンプ機構を用いてリザーバ内に圧力を生じさせることができる。これにより、洗浄液は液管を通して押し出され、肛門プローブを介して直腸内に注入される。
【0005】
しかしながら、既知の肛門洗浄システムの多くは、多数の異なるパーツからなり、システムを即使用可能な状態にするにはそれらを組み立てなければならない。
【0006】
従って、収納形態から即使用可能な形態に容易に変換できる肛門洗浄システムを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
一形態において、本発明は、肛門洗浄システムのための容器に関し、該肛門洗浄システムは、肛門プローブと、洗浄液(例えば水等)を貯液するためのリザーバと、リザーバ内に流体(例えば空気等)を送り込むためのポンプ機構と、リザーバと肛門プローブとを接続する液管とを有し、該容器は、容器の外形寸法を少なくとも部分的に画定する外側チャンバ壁と外側チャンバ壁内に配置される内側チャンバ壁とを有し、外側チャンバ壁及び内側チャンバ壁はリザーバを画成する。
【0008】
この構造により、洗浄液で満たした際、液面積が小さいリザーバを提供する。その結果、洗浄液をリザーバから肛門プローブを通して放出するのに大きな圧力を要しない。
【0009】
チャンバ壁は硬質材料から形成しても良い。硬質であるということから、チャンバ壁の材料は、肛門洗浄システムの通常の操作状況下において折れ曲がったり、潰れたり、変形したりしないタイプのものであると解されるべきである。そのような硬質チャンバ壁に適合する多くの種類の材料は、ポリプロピレン群、さらにはガラスや金属において見出され得る。例えば、タッパーウェア(登録商標)製品は、肛門洗浄の目的において硬質であると考えられるプラスチック材料から一般的に形成されるが、一方で人為的に折り曲げることも可能である。
【0010】
しかしながら、リザーバ内の圧力が増大すると、可撓性のある折り畳み可能なチャンバ壁であっても事前設定の形状に展開すると解されるべきである。洗浄液を液管から肛門プローブを介して直腸内に注入するために必要とされる圧力にリザーバの形状が影響を及ぼすのは、この展開した形態の時である。従って、可撓性を有し、折り畳み及び変形可能なチャンバ壁を容器に使用しても良い。
【0011】
一実施形態において、リザーバの厚みを1センチメートル未満にしても良い。従って、外側チャンバ壁と内側チャンバ壁との間の垂直距離は1センチメートルを超えない。
【0012】
一実施形態において、特に、チャンバ壁が硬質材料から形成される場合において、外側チャンバ壁と内側チャンバ壁は平行である。この形態により、直腸を洗浄するには十分であるがユーザーに不快や害を与えるほど強すぎない流勢で洗浄液を押し出すために必要とされる圧力を容易に制御することができる。
【0013】
別の形態において、本発明は肛門洗浄システムのための容器に関し、さらに該肛門洗浄システムは、肛門プローブと、洗浄液(例えば水等)を貯液するリザーバと、リザーバ内に流体(例えば空気等)を送り込むためのポンプ機構と、リザーバと肛門プローブとを接続する液管とを有し、該容器は、リザーバを少なくとも部分的に画成する外側チャンバ壁と、少なくとも部分的に容器の一端を閉鎖することでリザーバを画成する蓋と、蓋に設けられた第1の貫通孔であって、液管が該第1の貫通孔内に液密に連通するように配置される第1の貫通孔と、ポンプ機構とリザーバとの間の流体連通を提供する第2の開口とを有する。
【0014】
この形態では蓋を裏返して使用することが可能である、つまり、少なくとも二つの異なる状態で蓋を容器に取り付けることができる。これにより、肛門洗浄システムを安全に輸送又は保管することができる収納時の形態から、直感的に行える単一動作により肛門洗浄をすぐに開始できる使用時の形態に、変換することが可能となる。
【0015】
収納状態において、第1の液管がリザーバ内部で第1の貫通孔からポンプユニットに向かって延びるように方向づけて、蓋は外側チャンバ壁に取り付けられる。使用形態において、液管はリザーバの外でポンプユニットに向かって延びる。
【0016】
一実施形態において、液管の第1の端は、蓋の一方の面において第1の貫通孔の周囲に取り付けられ、リザーバとの液密且つ気密な連通を提供する。
【0017】
代替的に、液管を第1の貫通孔内にスライド自在に嵌入させてもよい。
【0018】
上記のようにチャンバ壁は硬質材料から形成しても良い。しかしながら、リザーバ内の圧力が増大すると、可撓性のある折り畳み可能なチャンバ壁であっても事前設定された形状に展開すると解されるべきである。折り畳み可能な容器において蓋を固定/装着するために、変形し難い部位を開口の周囲に設けることで、蓋を液密且つ気密に取り付けることができると解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に基づく容器の第1の実施形態を示す。
【図2】本発明に基づく容器の第1の実施形態を示す。
【図3】本発明に基づく容器の第1の実施形態を示す。
【図4】本発明に基づく容器の第2の実施形態を示す。
【図5】本発明に基づく容器の第2の実施形態を示す。
【図6】本発明に基づく容器の第2の実施形態を示す。
【図7】本発明に基づく容器の第2の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜3は本発明による肛門洗浄システム1の使用法を示す。
【0021】
肛門洗浄システムは、容器2と、該容器を閉鎖することにより閉鎖リザーバ4を画成する蓋3とを有する。第1の液管5は、蓋3に設けられた第1の貫通孔6内にスライド自在に設置される。
【0022】
第1の液管は第1の自由端7から、ポンプユニット9に接続される第2の端8へと延在する。第1の自由端は、第1の貫通孔の直径よりも大きな直径を有する突出リム10を備える。これにより、第1の自由端7が第1の貫通孔6から抜けるのを防ぐ。
【0023】
第1の貫通孔は、第1の貫通孔と第1の液管との間に液密及び気密シールを提供するためのシール手段(図示せず)を備える。Oリング、環状リップまたは既知の類似手段等はこのようなシール手段を提供し得る。シール手段は、肛門洗浄システム内で使用される通常の範囲内の圧力がリザーバにかかっている間、液密及び気密シールを提供することができる。正常作動中のリザーバは、液体ホース内の洗浄液の水柱1.5メートルを持ち上げるのに相当する圧力に耐えることができる。
【0024】
ポンプユニット9は、手動ポンプ11と制御ユニット12とを有する。制御ユニット12により、ユーザーは流体(ここでは空気)を手動ポンプ11から、蓋に接続された第1の流体管13aへと送り込む(制御ユニットの第1の状態とする)のか、又は、バルーンカテーテル15の形をした肛門プローブのバルーン14へ流体通路を提供する第2の流体管13bへと送り込む(制御ユニットの第2の状態とする)のかを決定することができる。
【0025】
上記のように、第1の流体管は蓋13に接続される。同流体管は蓋の第2貫通孔16の周囲に取り付けられ、ユーザーが制御ユニットを第1の状態にして手動ポンプを使用すると第2貫通孔を空気が通過する。
【0026】
バルーンカテーテル15は第2の液管17に流体接続され、第2の液管は制御ユニットを介して第1の液管5と直接連通する。
【0027】
蓋3は裏返すことができ、即ち、反転させることができ、二通りの蓋の状態においてリザーバ4は形成される。
【0028】
図1は保管状態における蓋を示す。この状態において、第1の液管5及び第1の流体管13aはそれぞれ第1及び第2の貫通孔からポンプユニット9に向かってリザーバ内へ延びる。
【0029】
肛門洗浄システムを使用するには、図2に示されるように蓋を外し、第1の液管を第1の貫通孔から引っ張る。ポンプユニット9から見て蓋の反対側における第1の液管の長さが容器の深さと一致するまで、同液管を引き出す。
【0030】
続いて、管、ポンプユニット及びカテーテルを容器から取り出し、水その他の洗浄液を容器に注ぐ。
【0031】
その後、ポンプユニットに対して蓋の反対側に延びる第1の液管の全長がリザーバ内及び洗浄液内に延びるように、蓋を反転させ容器上に配置する。これが図3に示される、使用時の蓋の配置であり、肛門洗浄システムの使用準備が整った状態である。
【0032】
図示されていないが、使用時において、バルーンカテーテル15は直腸内に挿入される。制御ユニット12を第2の状態に設定し、ユーザーが手動ポンプ11を操作するとバルーン14が膨らみ、それによりバルーンカテーテルは直腸内の適所に保持される。
【0033】
次に制御ユニットを第1の状態に設定する。そして、手動ポンプを操作すると第1の流体管13aを通してリザーバ内に空気が送り込まれる。こうしてリザーバ内の圧力を増大させる。この圧力によって第1の液管内へ押し上げられた洗浄流体は、第2の液管を通り、バルーンカテーテルを介して直腸内に注入される。
【0034】
さらに、肛門洗浄を行っている間にテーブルその他の物体の縁に容器を掛けるために使用できる、リム18を容器に設けても良い。
【0035】
図4は本発明による容器20の別の実施形態を示す。容器は外壁21と内壁22とを有する。内壁は基本的に外壁と同一の輪郭及び形状を有するが、外壁により画成されたチャンバ内に収まるように外壁より小さな寸法を有する。外壁及び内壁は互いを基準にした位置に環状のブリッジ要素23により固定される。かくして、リザーバ24は外壁、内壁及びブリッジ要素の間で効果的に画成される。閉鎖可能な開口25はリザーバへのアクセスのために設けられる。
【0036】
密封栓26を蓋27の底面に設けることにより開口を閉鎖することができる。つまり、栓を開口内に嵌入させることで蓋は開口25を閉鎖することができる。同時に蓋は内壁を覆い、ひいては内壁により画成される保管チャンバ28を覆う。保管チャンバは、保管及び輸送中に肛門洗浄システムの残りの部分を格納するために使用することができる。
【0037】
洗浄流体を閉鎖可能な開口からリザーバに注入しても良い。これは液管30を介して行なっても良く、液管30は閉鎖可能な開口に挿入することも、同開口に取り付けることもできる。図4において明らかなように、液管30を介してリザーバに注水するために一般的な蛇口31を使用しても良い。より簡単に液管を蛇口に接続するためにコネクタ要素32を用いても良い。
【0038】
例えば、肛門洗浄における通常使用量である1リットルをリザーバに注水した後で、蛇口をコネクタ要素から外す。
【0039】
その後、コネクタ要素を介して肛門プローブ35を液管に接続しても良い。肛門プローブはバルーンカテーテル36を有する。バルーンカテーテルのバルーン37は手動ポンプ38を用いて膨らませることができる。
【0040】
ポンプ39は容器に設けられる。ポンプは、(図6に示されるように)ポンプ要素40をリザーバ内へずらすことにより機能する。これにより洗浄流体が移動することでリザーバ内に圧力が生じ、リザーバ内の洗浄流体は液管内へ押しやられ肛門プローブを介して直腸内へ注入される。
【0041】
バルブ41は、洗浄液の流れを制御するために液体ホースに設けられる。
【0042】
容器20の第2の実施形態のリザーバ24と容器の第1の実施形態のリザーバ4とを比較すると、第2の実施形態における洗浄液の液面は、第1の実施形態における洗浄液の液面よりも小さいことが分かる。従って、圧力(p)は単位面積(a)あたりにかかる力(F)に等しいこと(p=F/a)から、面積が小さければ小さいほど加えられる圧力はより大きくなるであろう。言い換えれば、液管内に1.5メートルの水柱を形成する(通常の作動状況)ために、第2の実施形態によるリザーバにおいて必要とされる圧力は、同量の液体に対してより小さいもので足りる。
【0043】
それ故、反転可能な蓋を用いることによる使い易さに加えて、洗浄液の液面がより小さいという利点から恩恵を受けるために、第1と第2の実施形態を組み合わせることも当然可能である。
【0044】
本明細書において使用されるポンプは手動のもの、例えば、密閉気泡又はバルーンのポンプ作用を用いたものでもよいと解されるべきである。しかしながら、ユーザーが手動でスイッチのオン/オフ操作をするだけで済むようにポンプを電動にしてもよい。さらに、電動ポンプは自動化してもよい、即ち、一定の圧力に達すると自ら電源を切ったり、所定の順序でポンプ動作を行ったりしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肛門洗浄システムのための容器であって、
前記肛門洗浄システムがさらに
−肛門プローブと、
−洗浄液を貯液するためのリザーバと、
−流体を前記リザーバ内に注入するためのポンプ機構と、
−前記リザーバを前記肛門プローブに接続する液管とを備える、ものにおいて、
前記容器は
−前記リザーバを少なくとも部分的に画成する外側チャンバ壁と、
−前記容器の一端を少なくとも部分的に閉鎖することにより前記リザーバを画成する蓋と、
−前記蓋に設けられた第1の貫通孔であって、前記液管が該第1の貫通孔内を液密に連通するように配置される、第1の貫通孔と、
−前記ポンプ機構と前記リザーバとの間に流体連通を提供する第2の開口と、を備える、ことを特徴とする容器。
【請求項2】
前記液管の第1の端は前記蓋の一方の面において前記第1の貫通孔の周囲に取り付けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記液管はスライド自在に前記第1の貫通孔内に嵌入する、ことを特徴とする請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記蓋は少なくとも二つの異なる状態で前記容器に取り付けることができる、ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の容器。
【請求項5】
肛門洗浄システムのための容器であって、
前記肛門洗浄システムがさらに
−肛門プローブと、
−洗浄流体を貯留するためのリザーバと、
−前記リザーバ内に流体を注入するためのポンプ機構と、
−前記リザーバを前記肛門プローブに接続する液管とを備える、ものにおいて
前記容器は
前記容器の外形寸法を少なくとも部分的に画定する外側チャンバ壁と、
前記外側チャンバ壁内に配置される内側チャンバ壁とを備え、
前記外側チャンバ壁及び前記内側チャンバ壁は前記リザーバを画成する、ことを特徴とする容器。
【請求項6】
前記外側チャンバ壁と前記内側チャンバ壁との間の垂直距離は1センチメートルを超えない、ことを特徴とする請求項5に記載の容器。
【請求項7】
前記外側チャンバ壁と前記内側チャンバ壁は平行である、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−538774(P2010−538774A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525196(P2010−525196)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/DK2008/050224
【国際公開番号】WO2009/036765
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】