説明

股部を有する衣類

【課題】股部を有する衣類における裾廻りの過度の圧迫を防いで着用感に優れると共に、歩行時においては、下尻をしっかりカバーしてズレ下がりによるハミ尻などが生じない股部を有する衣類を提供する。
【解決手段】前身頃1と左右脇身頃6,7と裾身頃22,23とから構成される股部を有する衣類である。裾口廻り20,21に、幅方向に二つ折りされた裾身頃22,23の重合片側を縫着ラインとして、上端凹弧状面26,27の部位を前身頃1の凹状湾曲面5,5の部位に、上部凸弧状面28,29の部位を前身頃1の側辺4,4と脇身頃6,7の内側辺8,9の下端部4a,8a、4a,9aと一致させ、緩やかな凹弧状面30,31の部位を脇身頃6,7の緩やかな凹凸弧状面14,15の部位に、下部細幅部32,33の部位を脇身頃6,7の深い凹弧状面16,17の部位に、下端部34,35を前身頃1の下辺部3にそれぞれ合致させて縫着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショーツやショーツガードル、ショートガードルなどの裾口廻りに接ぎを入れて大腿部への圧迫感や喰いこみをなくしフィットすると共に、裾口のずり上がりによるハミ尻などをなくした履き心地が良好で美しいヒップラインを現出できる股部を有する衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のショーツ50は、例えば、図6の展開図に示すように、腹部を覆う前身頃51と、臀部を覆う後身頃52と、股間を覆うマチ布53とからなり、前身頃51および後身頃52を両側縁で縫着すると共に、前身頃51および後身頃52の下端中心部にマチ布53の両端部をそれぞれ縫着して構成されており、前身頃51および後身頃52は主として横方向に伸縮性良好な生地によって形成されている。
【0003】
上記のショーツ50は、前身頃51および後身頃52が横方向に伸縮性良好な生地によって形成されており、着用後はヒップにフィットしているが、座ったり、立ったり、屈んだり、歩いたりする日常生活の色々な動きの中で生地が横方向に引っ張られた場合、生地が伸びてヒップにフィットするが、縦方向に引っ張られた場合、横方向よりも伸縮性が悪いため、ずり上がってしまうことがある。すなわち、ヒップは緩やかに丸く隆起しており、ヒップトップからその下部にかけてよく動き形も変化し、その動きに応じてフィットせず浮くため、ヒップ下部の裾廻りが次第にずり上がっていき、ヒップに喰い込んでハミ尻となり、着用者に不快感を与えると共に、ヒップラインが崩れるといった問題があった。
【0004】
そこで、ずり上がりを防ぐため、裾口廻り54の周縁に沿って伸縮テープ(図示せず)を裏打ちすることにより、一定の締め付け力を得て裾口廻り54がずり上がらないように安定化を図っているが、伸縮テープの縫着により裾口廻り54が厚くて硬くなり、大腿部に喰い込み圧迫感が強くなり着用感に優れなかった。
【0005】
そのような問題点を解消するものとして、裾口廻りに伸縮性に富んだ二重生地使いのテープ生地を縫着したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、別のものとして、裾口が大腿部の肌に喰いこまないように、Vカットのストレッチレースをガードルの裾口に入れたり、裾口全体をナイロンラッセル等のストレッチレースにしたりしているものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特公平4−78721号公報
【特許文献2】特許第3290562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1のものは、二重生地使いのテープ生地を両裾口廻りに縫着するのでテープ生地が分厚くなり、肌に当たってゴロつき感が生じると共に、厚みによる段差が生じ、その段差がアウターに反映され、アウターの外側から段差が見えてしまい着用者の外観を著しく低下させるという問題点があった。また、上記特許文献2のものは、裾口が捲れ上がったりすることから、着用安定感があまりよくないという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決することを課題として研究開発されたもので、ショーツやショーツガードル、ショートガードルなど股部を有する衣類における裾口廻りに接ぎを入れ、当たりを柔らかくして鼠蹊部への喰いこみをなくすると共に、フィット感がよくなり、日常生活での色々の動きにおいても、下尻をしっかりカバーしてずり上がりによるハミ尻などが生じないようにした股部を有する衣類を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決し、その目的を達成する手段として、本発明は、前身頃と左右脇身頃と裾身頃とから構成される股部を有する衣類であって、前身頃の両側下辺部を凹状湾曲面とし、左右脇身頃の下辺を緩やかな凹凸弧状面と深い凹弧状面と傾斜面に形成し、該傾斜面を前身頃の下辺部に縫着して裾口廻りを形成すると共に、上端凹弧状面、上部凸弧状面、緩やかな凹弧状面並びに下部細幅部からなる二つ折りされた裾身頃の重合片側を縫着ラインとし、上端凹弧状面の部位を前身頃の凹状湾曲面の部位に、上部凸弧状面の部位を前身頃の側辺と脇身頃の内側辺の下端部と一致させ、緩やかな凹弧状面の部位を脇身頃の緩やかな凹凸弧状面の部位に、下部細幅部の部位を脇身頃の深い凹弧状面の部位に、下端部を前身頃の下辺部にそれぞれ合致させて縫着したことを特徴とする股部を有する衣類を開発し、採用した。
【0010】
また、本発明では、上記のように構成した股部を有する衣類において、前記前身頃、左右脇身頃、裾身頃はそれぞれ伸縮性及び弾力性に優れているベア天竺で編成されていることを特徴とする股部を有する衣類を開発し、採用した。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、前身頃の両側下辺部を凹状湾曲面とし、左右脇身頃の下辺を緩やかな凹凸弧状面と深い凹弧状面と傾斜面に形成し、該傾斜面を前身頃の下辺部に縫着して裾口廻りを形成し、該裾口廻りに、二つ折りされた裾身頃の重合片側を縫着ラインとし、前身頃の凹状湾曲面の部位に、裾身頃の上端凹弧状面の部位を、前身頃の側辺と脇身頃の内側辺の下端部に、上部凸弧状面の部位を一致させ、脇身頃下辺の緩やかな凹凸弧状面部の部位に、裾身頃の緩やかな凹弧状面の部位を、脇身頃の深い凹弧状面の部位に、裾身頃の下部細幅部の部位を、下端部を前身頃の下辺部にそれぞれ合致させて縫着したものであるから、裾口廻りのラインと裾身頃によるラインの異なりにより、身体に沿うパターンに仕上がり裾身頃が立体的になり太股部によく馴染みフィット感が増すと共に、締め付け感や窮屈感がなくなり履き心地が良好になる。
【0012】
また、裾身頃が前身頃と左右脇身頃と同じベア天竺で編成されているから、全面にわたって同一の伸縮性となり、違和感がなく肌当たりがソフトであって、身体の一部が締め付けられたりすることがなくなる。また裾身頃は二つ折りされていてもベア天竺で編成されているから、硬直感がなく伸縮性、弾力性に富み大腿部にフィットする。
【0013】
さらに、裾口廻りのラインと裾身頃との縫い合わせるラインが異なっており、縫い合わせると、裾身頃に角度が生じて裾口が前向きになり、歩行時や椅子に座って足が前向きに動いた際にでも、裾口廻りのずり上がりによるお尻への喰いこみがなく、下尻をしっかりカバーしているのでハミ尻を防止でき、ヒップラインを崩すことがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態をショーツの例で説明すれば、図1はショーツの正面図、図2はショーツの背面図、図3はショーツの右側面図、図4はショーツの展開図、図5は裾身頃を二つ折りした正面図である。
【0015】
1は細い綿糸とポリウレタン糸との混合糸または細い綿糸とポリウレタン糸とナイロン糸との混合糸により伸縮性と弾力性に富むようベア天竺編みされた腹部を覆う前身頃であり、上辺2と、下辺3と、下方に至るに従い徐々に拡がる傾斜状の左右両側辺4,4と、その両側辺4,4に連設し内方に向かって浅い凹状湾曲面5,5に形成されている。
【0016】
6,7は前身頃1と同じベア天竺編みされた側腹部から臀部を覆う左右一対の脇身頃であり、前記前身頃1の左右両側辺4,4と接ぐ内側辺8,9および臀部の形状に沿う曲線の外側辺10,11を後部中心で縫合すると共に、前身頃1の左右両側辺4,4と脇身頃6,7の内側辺8,9の下端部4a,8a、4a,9aから外側辺10,11の下端部10a,11aまでの下辺12,13を、緩やかに傾斜する凹凸弧状面14,15と、小さくて深い凹弧状面16,17と、傾斜面18,19に裁断形成されてあり、該傾斜面18,19を前身頃1の下辺部3に縫着して裾口廻り20,21を形成してある。
【0017】
22,23は前記前身頃1と脇身頃6,7と同じベア天竺編みで編成された長手状の裾身頃であり、図4の展開図に示すように、浅いV字状に形成された上端部24,25の両側から下端に向かって凹弧状面26,26、27,27が形成されており、その上端凹弧状面26,26、27,27に連設する外方に突出する上部凸弧状面28,28、29,29が設けられ、その上部凸弧状面28,28、29,29に繋がる緩やかな凹弧状面30,30、31,31が形成されていると共に、下方に向かって次第に窄まり下部細幅部32,32、33,33を経て浅い逆V字状の下端部34,35に連なっている。この裾身頃22,23は、図5に示すように、幅方向の中央部を長さ方向に沿って二つ折りされたもので、最大幅の上部凸弧面28、29が約60〜70mm、最小幅の下部細幅部29,29が約20〜22mmになっている。
【0018】
このように構成された本発明の実施形態におけるショーツの縫製手段と作用を説明すれば、図4の展開状態から、裾身頃22,23を、図5に示すように、幅方向の中心を長さ方向に二つ折りして外側36,37を直線状とすると共に、内側38,39の重なり合う側が縫着ラインになる。
【0019】
すなわち、上端部24,25を前身頃1の下辺3に縫着し、上端凹弧状面26,27の部位を、前身頃1の凹状湾曲面5,5の部位に、上部凸弧状面28,29の部位を、前身頃1の両側辺4,4と脇身頃6,7の内側辺8,9の下端部4a,8a、4a,9aと一致させ、緩やかな凹弧状面30,31の部位を、脇身頃6,7の下辺12,13の緩やかな凹凸弧状面14,15の部位に、下部細幅部32,33の部位を、脇身頃6,7の深い凹弧状面16,17の部位に合致させ、さらに裾身頃22,23の下端部34,35を前身頃1の下辺3にそれぞれ合致させて縫着させることにより、裾口廻り20,21に裾身頃22,23が縫着されてショーツになる。
【0020】
裾口廻り20,21に縫製された裾身頃22,23は、ベア天竺で編成されており、伸縮性、弾力性に富み、前身頃1の左右両側辺4,4と脇身頃6,7の内側辺の下端部4a,8a、4a,9aで裾廻り部が最大広幅になり、左右脇身頃6,7の下辺12,13の傾斜面18,19で最小幅となる裾身頃22,23が縫製され、鼠蹊部への喰い込み圧迫感がなくなり着用感に優れる。
【0021】
また、裾口廻り20,21に形成される縫着ラインの凹状湾曲面5,5と、前身頃の側辺4,4と脇身頃6,7の内側辺8,9の下端部4a,8a、4a,9aと、緩やかな凹凸弧状面14,15と、深い凹弧状面16,17と、傾斜面18,19と、裾身頃22,23の縫着ラインの上端凹弧状面26,27と、上部凸弧状面28,29と、緩やかな凹弧状面30,31と、下部細幅部32,33の縫い合わせラインがそれぞれ異なることにより、前身頃1および脇身頃6,7と裾身頃22,23との間に角度が生じて裾身頃22,23が立ち上がった状態になって図3に示すように、裾口が前方に向くことになり、歩行時や椅子に座って足が前向きに動いたとしても、裾口のずり上がりによるお尻への喰いこみがなく、下尻をしっかりカバーしているのでハミ尻を防止できる。さらに、太股部のラインに沿うことになり足を動かしても肉がにげないのでハミ尻になることがない。また、左右の裾身頃間の間隔が比較的広くなっているので、動いても内側に片寄ったりせず下尻をしっかりカバーでき、美しいヒップラインを現出する。
【0022】
以上、本発明の実施の形態についは、ショーツで、前身頃と左右脇身頃を別体とした例で説明したが、連続した一連の場合でもよく、また左右脇身頃を後部中心線で縫製するようにしたが、この左右脇身頃においても、連続した一枚の生地の場合でも良いのは勿論のことであり、かつショーツガードル、ショートガードル、ボディスーツなどでもよく、要するに発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、日常生活での色々な動作によって生じるショーツなどのずり上がりによるハミ尻を防止でき、美しいヒップラインを現出すると共に、裾口廻りによる大腿部への喰い込みや圧迫感を生じさせない履き心地が良好なショーツ、ショーツガードル、ショートガードル、ボディスーツなどの股部を有する衣料に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ショーツの正面図である。
【図2】ショーツの背面図である。
【図3】ショーツの側面図である。
【図4】ショーツの展開図である。
【図5】裾身頃の平面図である。
【図6】従来のショーツの展開図である。
【符号の説明】
【0025】
1 前身頃
5 凹状湾曲面
6,7 脇身頃
12,13 下辺
14,15 緩やかな凹凸弧状面
16,17 深い凹状弧面
18,19 傾斜面
20,21 裾口廻り
22,23 裾身頃
26,27 上端凹弧状面
28,29 上部凸弧状面
30,31 緩やかな凹弧状面
32,33 下部細幅部
34,35 下辺部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃と左右脇身頃と裾身頃とから構成される股部を有する衣類であって、前身頃の両側下辺部を凹状湾曲面とし、左右脇身頃の下辺を緩やかな凹凸弧状面と深い凹弧状面と傾斜面に形成し、該傾斜面を前身頃の下辺部に縫着して裾口廻りを形成すると共に、上端凹弧状面、上部凸弧状面、緩やかな凹弧状面並びに下部細幅部からなる二つ折りされた裾身頃の重合片側を縫着ラインとし、上端凹弧状面の部位を前身頃の凹状湾曲面の部位に、上部凸弧状面の部位を前身頃の側辺と脇身頃の内側辺の下端部と一致させ、緩やかな凹弧状面の部位を脇身頃の緩やかな凹凸弧状面の部位に、下部細幅部の部位を脇身頃の深い凹弧状面の部位に、下端部を前身頃の下辺部にそれぞれ合致させて縫着したことを特徴とする股部を有する衣類。
【請求項2】
前記前身頃、左右脇身頃、裾身頃はそれぞれ伸縮性及び弾力性に優れているベア天竺で編成されていることを特徴とする請求項1に記載の股部を有する衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−84292(P2010−84292A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256527(P2008−256527)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(502256099)株式会社ルシアン (4)
【Fターム(参考)】