説明

肥沃化材

【課題】 現在、燐酸、特に燐酸カリウムを土壌に与えてその土壌を肥沃化するとともに、余分な窒素を土壌から除去し、環境を良化させることを同時に実効することができる肥沃化材が存在していない点、また、多用される化学肥料はその原料の入手から多くの工程を経て得られるもので、価格的にも高騰せざるを得ず、簡易に使用するわけにもいかず、それに見合う土地の広さや作物の収穫量が必要とされる点である。
【解決手段】 木の葉、小枝等を集積し、密閉状態とした空域において蒸し焼き、あるいは燻すことにより得られることとし、前記した木の葉、小枝等は落葉樹、常緑樹あるいは広葉樹、針葉樹等の限定なく選択されることとし、前記した蒸し焼きあるいは燻し時間は略1週間程度としたこととする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肥沃化材に関し、特に我が国において広く存在する酸性土壌や火山灰土壌に対して肥効を大きく向上させ、作業収穫の効率を高め、また、植樹の安定化を図ることもできる肥沃化材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、我が国における土壌は、農業を対象としてみた場合、酸性土壌や火山灰土壌が広く分布され、存在している。元来、土地を肥沃なものとする一要素である燐酸は一般的土壌にも強固に吸着されるもので、植物による吸収、利用率は低く施用燐酸の3〜25%が利用されるにすぎない。
【0003】
特に、前記した酸性土壌や火山灰土壌は燐酸を多く吸着するので、より多くの燐酸を肥料として施用する必要性があり、効果も大きくなる。一般的に燐酸の施用料は土壌や作物の種類によっても異なるが、多くは10a当たり10〜20kgである。しかし,この値は既に何年も作物栽培をしている通常の農地で通用するもので、開墾や開田した農地、特に酸性土壌や火山灰土壌ではこの10倍程の量を必要とする。
【0004】
現在、市販されている燐酸肥料と称されるものは、燐鉱石を硫酸、燐酸、硝酸等の鉱酸で分解して湿式法で製造するもののほか、乾式法で製造するもの等があり、植物にはオルト燐酸として吸収される。
【0005】
一方、窒素も植物の重要元素であり、蛋白質、アミノ酸、核酸等に含まれる。この窒素は多くの農作物にあって最も不足しやすい成分であり、一般的に有機質窒素肥料や動植物質の有機質肥料として与えられるが、土壌中で微生物の働きによって、あるいは化学的に分解され水溶性窒素化合物となって植物に利用されるので肥効は緩やかでゆっくり現われることとなる。
【0006】
前記したように窒素は多くの農作物で最も不足しやすい成分ではあるが、多すぎてしまうと作物の徒長や品質の低下を招き、ときには土を劣悪化させ、また土から流亡して周辺の河川水や地下水を汚染して水質を低下させ、あるいは土からガス体のNO、NO、NHなどとして揮散し、作物に被害を与えてしまうことがある。
【特許文献1】出願人において、先行する技術を調査したが、格別に本願発明と類似すると思われる文献は発見できなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする問題点は、現在、燐酸、特に燐酸カリウムを土壌に与えてその土壌を肥沃化するとともに、余分な窒素を土壌から除去し、環境を良化させることを同時に実効することができる肥沃化材が存在していない点である。
【0008】
また、現在、多用される化学肥料はその原料の入手から多くの工程を経て得られるもので、価格的にも高騰せざるを得ず、簡易に使用するわけにもいかず、それに見合う土地の広さや作物の収穫量が必要とされる点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した問題点を解決するため、本発明は木の葉、小枝等を集積し、密閉状態とした空域において蒸し焼き、あるいは燻すことにより得られることを特徴とし、前記した木の葉、小枝等は落葉樹、常緑樹あるいは広葉樹、針葉樹等の限定なく選択されることを特徴とし、前記した蒸し焼きあるいは燻し時間は略1週間程度としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記した構成としたことによって、通常は廃棄、焼却処分されてしまう木の葉や小枝等、それも種類を格別に問うことなく外観的には腐葉土に近い肥沃化材を得ることができる。この肥沃化材は腐葉土の場合と異なり、窒素肥料の水溶液を散布して、微生物の働きで発酵、分解させるという工程がなく、有効に燐酸、それも吸湿性の強い燐酸カリウムを土壌に与えることができることとなり、前記した吸湿性に起因して余分な窒素を化学変化させ除去することができ、酸性土壌、火山灰土壌をより良く農作に適した土壌に改良することができる。
【0011】
こうして得られた肥沃化材を用いると、稲作では通常84〜94粒の状態のものが128粒(一穂)にまで上昇し、苗も非常に抜けにくい強いものとなる。また、さつま芋等の場合も、その収穫量は著しく増加し、単品としてのサイズも大型で実の詰ったものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施例として記した形態として実現した。
【実施例1】
【0013】
本発明を実施するにあたり、専用の窯は特に必要としない。一つの例として地表から深さ10m、径10m程度の穴を掘削し、この穴内に通常で入手できる木の葉、例えば松葉やブナ、クヌギ、椎等の葉や小枝、樹皮等をランダムに投入集積し、その表面を被覆し閉塞する。
【0014】
着火は前記した集積体に直接でも、媒介物をおいての間接でも可能であるが、その着火、加熱状態で蒸し焼きか、燻しかの差となる。これを上記した規模で略1週間程度の時間で続行すると、一部に木の葉や小枝等の原形を一部残し、全体として土状に変化された肥沃化材を得ることができる。
【0015】
この肥沃化材は目的地に穴を掘り、その穴内への埋め戻しとしても、既存の土壌への混入あるいは散布等、多様な使用形態を実行することができる。燐酸カリウムをその構成から多く含有しているため、吸湿性がよく、湿土状態とされているため、使用する作業に格別に専用の器具を必要とすることもない。
【0016】
また、上記したように根付きも良化されるため、昨今の農業機械による作業、特に刈り取り等をスムーズに実行することができるようになり、その後の処理も容易なものとされる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明に係る肥沃化材は上述のように構成されるため、大掛かりな工場プラント等は必要とせず、比較的手軽にしかも安価にて製造し、供給することができるもので、農業のほかにも樹々の植栽についても安定を図ることができ、全くの枯渇した土壌、例えば砂漠化した土地等も改良して、農作物を栽培するのに適した土壌にすることも可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木の葉、小枝等を集積し、密閉状態とした空域において蒸し焼き、あるいは燻すことにより得られることを特徴とする肥沃化材。
【請求項2】
前記した木の葉、小枝等は落葉樹、常緑樹あるいは広葉樹、針葉樹等の限定なく選択されることを特徴とする請求項1に記載の肥沃化材。
【請求項3】
前記した蒸し焼きあるいは燻し時間は略1週間程度としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の肥沃化材。

【公開番号】特開2006−21940(P2006−21940A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200085(P2004−200085)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(504261918)
【Fターム(参考)】