説明

育毛・発毛用真空含浸具

【課題】極めて簡単な操作で毛穴に薬液を浸透させ、家庭でも手軽に取り扱えるようにした育毛・発毛用真空含浸具を提供する。
【解決手段】育毛・発毛用真空含浸具10は、吸盤12と伸縮ポンプ13とを備える。吸盤12の吸着室S1は通気孔H1でポンプ室S2に連通し、ポンプ室S2は伸縮ポンプ13の通気孔H2により外気に開放されている。通気孔H2の開口部には、弁体18が隙間を保ってバネ板17(バネ材)により支持される。弁体18は、頭皮に吸盤12を叩き付けるときの弁体18の慣性力によりバネ板17の付勢力に逆らって通気孔H2を閉じ、かつ、頭皮から吸盤12を引き上げるときのバネ板17の復元力により通気孔H2を開く。弁体18の開閉動作に伴って、頭皮と吸盤と間の密閉室(吸着室S1)の減圧状態が瞬間的に開放されるため、頭皮の毛穴に薬液を吸い込ませることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育毛・発毛用真空含浸具に関し、詳しくは、毛穴に薬液を浸透させるのに適した育毛・発毛用真空含浸具するものである。本発明による真空含浸具は、医薬品や化粧品等の薬液を皮膚に浸透させるための経皮吸収用真空含浸具として用いることもできる。
【背景技術】
【0002】
従来、通気孔付きの吸盤を用いて頭皮の毛穴に薬液を浸透させるようにした育毛・発毛用真空含浸具が知られている(特許文献1,2参照)。この種の真空含浸具は、円形の基部とその外周のスカート部とからなる吸盤を有しており、その基部に吸盤の内側と外側とを貫通する通気孔が設けられる。
真空含浸具を使用する場合、あらかじめ頭皮に薬液を塗布しておき、通気孔を手で塞いで、頭皮に吸盤を押し当てて吸着させる。その後、この吸盤を引き上げると、頭皮と吸盤との間の密閉空間が減圧され、毛穴から空気が吸い出された状態になる。その後、通気孔から手を引き離すと、外気が吸盤の内側に入り込み、頭皮の吸着状態(減圧状態)が瞬時に開放される。この減圧開放に伴って毛穴が元の状態に戻り、吸盤内側の薬液が毛穴に入り込む。
【0003】
【特許文献1】特許第3160184号公報
【特許文献2】特許第2818935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の育毛・発毛用真空含浸具は、通気孔の開閉を手動で行うため、操作が面倒になりやすい。また、吸盤の吸着力が弱いために頭皮の減圧状態を十分に高めることができないことがある。さらに、操作法を十分に理解しないで含浸具を取り扱うと、通気孔の開閉タイミングを誤って、薬液が毛穴に効果的に入らないことも起こりうる。
一方、専用の育毛・発毛用真空含浸装置によって施術を受けるためにサロン等に通うのは、手間や費用が嵩むために倦厭されやすい。
【0005】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、簡単な操作で毛穴に効率よく薬液を浸透させることができ、家庭でも手軽に取り扱えるようにした育毛・発毛用真空含浸具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[第1発明]
前記課題を解決するための本発明(第1発明)の育毛・発毛用真空含浸具は、
基部とスカート部とからなる吸盤を有し、この吸盤の基部またはその周辺部に、吸盤の内側と外側とを貫通する通気孔を備えた育毛・発毛用真空含浸具において、
前記吸盤の外側であって前記通気孔の開口部に設けられる弁体と、
前記通気孔を開閉可能に前記弁体を支持するバネ材とを備え、
前記弁体は、前記頭皮に前記吸盤を叩き付けるときの前記弁体の慣性力により前記バネ材の付勢力に逆らって前記通気孔を閉じ、かつ、前記頭皮から前記吸盤を引き上げるときの前記バネ材の復元力により前記通気孔を開くことを特徴としている。
【0007】
本発明(第1発明)の育毛・発毛用真空含浸具によれば、頭皮に薬液を塗布して吸盤を叩き付けると、吸盤が頭皮に当たって止まった瞬間に、慣性力によって通気孔が弁体で閉じられ、頭皮と吸盤との間に一時的に密閉空間が形成される。吸盤が頭皮に当たった直後、その反動を利用して頭皮から吸盤を引き上げると、密閉空間が吸引されて減圧状態となり、頭皮の毛穴が縮んだ状態になる。その後、バネ材の復元力により弁体が通気孔から離れると、通気孔から密閉空間に外気が入り込んでその気圧が瞬時に上昇し、同時に頭皮の毛穴に薬液が吸い込まれる。
このように本発明(第1発明)によれば、吸盤で頭皮を叩く動作に伴って弁体とバネ材が適切なタイミングで自動的に通気孔の開閉を行い、真空含浸のための密閉空間の圧力コントロールを行う。これにより、ヘヤーキャップ等を使用する専用の育毛・発毛用真空含浸装置を用いることなく、簡単な操作で確実に頭皮の毛穴に薬液を浸透させることができる。
【0008】
なお、本発明(第1発明)において、通気孔の位置を「吸盤の基部またはその周辺部」としたのは、これらの部分は吸盤の使用時に弾性変形しにくく、通気孔の開閉が行いやすいからである。基部の周辺部にはスカート部の付け根部分を含む。後述する他の発明についても同様の理由で吸盤の基部またはその周辺部に通気孔を設ける構成とした。
【0009】
[第2発明]
本発明(第2発明)による育毛・発毛用真空含浸具は、前記第1発明の育毛・発毛用真空含浸具の構成を有するものであって、
前記通気孔を介して前記密閉空間に連通する伸縮ポンプを備えており、
前記伸縮ポンプは、前記頭皮に前記吸盤を叩き付けるときの前記伸縮ポンプの慣性力により縮んで前記密閉空間に圧縮空気を送り、かつ、前記頭皮から前記吸盤を引き上げるときの前記伸縮ポンプの復元力によって前記密閉空間の空気を吸い出すことを特徴としている。
【0010】
本発明(第2発明)によれば、頭皮に吸盤を叩き付けると、頭皮に吸盤が当たった瞬間に伸縮ポンプがその慣性力で縮んで頭皮と吸盤との間の密閉空間に圧縮空気を送る。この圧縮空気は、頭皮に適度な刺激を与え、マッサージ効果を促す。
一方、頭皮から吸盤を引き上げる際には、伸縮ポンプは、縮んだ状態から元の状態に戻ろうとするため、この復元力によって吸盤の密閉空間の空気を吸い出す。この結果、密閉空間の減圧度を高めることができ、減圧開放時に頭皮の毛穴に薬液を吸い込ませやすくする。
【0011】
[第3発明]
本発明(第3発明)の育毛・発毛用真空含浸具は、前記第2発明の育毛・発毛用真空含浸具の構成を有するものであって、
薬液貯留器と、
この薬液貯留器の薬液を前記通気孔に導く連結パイプとを備えており、
前記通気孔に開口する前記連結パイプの先端部には、前記伸縮ポンプの圧縮空気により前記密閉空間に向けて薬液を吐出可能な薬液ノズルが設けられることを特徴としている。
【0012】
前述した従来の通気孔付き吸盤(特許文献1,2)を使用する場合、あらかじめ頭皮に薬液を塗布しておき、薬液の塗布部分に吸盤を当てる。すなわち、使用者が自分で薬液を頭皮に浸ける作業が必要で、使用者の手が汚れる、塗布量にバラツキが生じるなどの不都合がある。
【0013】
本発明(第3発明)では、吸盤で頭皮を叩く動作に伴って伸縮ポンプが通気孔に圧縮空気を送り、この圧縮空気流によって薬液ノズルから通気孔に薬液を吐出させることができる。
この結果、通気孔を介して頭皮の密閉空間に薬液を送ることが可能になり、あらかじめ頭皮に薬液を塗る手間や、使用者の手が薬液で汚れるといった不都合を解消することができる。また、伸縮ポンプの圧縮空気により薬液ノズルから薬液を吐出させるため、その薬液の量についてもバラツキが少なく、適量を確保しやすくなる。
【0014】
[第4発明]
前記課題を解決するための本発明(第4発明)の育毛・発毛用真空含浸具は、
基部とスカート部とからなる吸盤を有し、この吸盤の基部またはその周辺部に、吸盤の内側と外側とを貫通する通気孔を備えた育毛・発毛用真空含浸具において、
前記通気孔を介して前記密閉空間に連通する伸縮ポンプを備えており、
前記伸縮ポンプは、前記頭皮に前記吸盤を叩き付けるときの前記伸縮ポンプの慣性力により縮んで前記密閉空間に圧縮空気を送り、かつ、前記頭皮から前記吸盤を引き上げるときの前記伸縮ポンプの復元力によって前記密閉空間の空気を吸い出すことを特徴としている。
【0015】
本発明(第4発明)によれば、頭皮に吸盤を押し付ける動作に伴って伸縮ポンプが縮んで頭皮と吸盤との間の密閉空間に圧縮空気を送る。この圧縮空気は、頭皮に適度な刺激を与え、マッサージ効果を促す。
一方、頭皮から吸盤を引き上げる際に、伸縮ポンプを引っ張って縮んだ状態から元の状態に戻すため、この復元力で密閉空間の空気を吸い出して、密閉空間の減圧効果を高めることができる。この結果、減圧開放時に密閉空間の気圧変化がより大きくなり、頭皮の毛穴に薬液を吸い込ませやすくなる。
【0016】
[第5発明]
本発明(第5発明)の育毛・発毛用真空含浸具は、前記第4発明の育毛・発毛用真空含浸具の構成を有するものであって、
薬液貯留器と、
この薬液貯留器の薬液を前記通気孔に導く連結パイプとを備えており、
前記通気孔に開口する前記連結パイプの先端部には、前記伸縮ポンプの圧縮空気により前記密閉空間に向けて薬液を吐出可能な薬液ノズルが設けられることを特徴としている。
【0017】
本発明(第5発明)の育毛・発毛用真空含浸具の構成によれば、吸盤で頭皮を押し付ける動作に伴って伸縮ポンプの圧縮空気流を発生させ、この圧縮空気により薬液ノズルから薬液を密閉空間に向けて吐出させる。
この結果、前記第3発明と同様に、育毛・発毛用真空含浸具を使用する際に、頭皮に薬液を塗布する手間を省くことができ、使用者の手が薬液で汚れにくくなる。また、密閉空間へ送り込むの薬液の量についてもバラツキが少なく、適量を確保しやすくなる。
【0018】
[第1〜5発明]
本発明(第1〜5発明)の育毛・発毛用真空含浸具は、頭皮の育毛・発毛促進を目的として用いることが望ましいが、適用対象は頭皮に限られることはなく、身体の他の部位にも適用することもできる。
【0019】
本発明(第1〜5発明)の育毛・発毛用真空含浸具に用いる育毛・発毛用薬液については、特に限定されないず、市販の液状製品を使用することができる。薬液に配合しうる有効成分としては、例えば、パントテン酸カルシウム、ビタミンAアセテート、パントデニルアルコール、塩酸ピリドキシン、アミノ酸類(メチオニン、セリン)、酢酸α−トコフェロール、塩化カルプロニウム、スウェルチノーゲン(センブリエキス)、トウガラシチンキ、ニコチン酸ベンジル、ノニル酸バニリルアミド、l−メントール、朝鮮人参、女性ホルモン(エチニルエストラジオール、ジプロピオン酸エストラジオール)、ペンタデカン酸グリセリド(PDG)、ミノキシジル、セファランチン、t−フラバノン、6−ベンジルアミノプリン等が挙げられる。
【0020】
本発明(第1〜5発明)は、必要に応じて単独で適用してもよいし、各発明を組み合わせて適用してもよい。また、本明細書に記載される他の発明を組み合わせて適用することもできる。
【0021】
[第6発明]
前述の第1〜5発明に係る育毛・発毛用真空含浸具は、頭皮等の毛穴に育毛・発毛用の薬液を浸透させるのに適したものであるが、後述する試験例(皮膚浸透性試験)から明らかなように、本発明による真空含浸具は、医薬品や化粧品等の薬液を毛穴を介さずに直接皮膚に浸透させることもできる。すなわち、第1〜5発明と同様な構成の真空含浸具は、薬液に含まれる有効成分の経皮吸収を促進する器具(経皮吸収用真空含浸具)として利用することも可能である。
【0022】
本発明者らの実験によれば、皮膚に薬液を浸透させるには、皮膚と吸盤との間の密閉空間に薬液を介在させた状態で減圧開放を繰り返すことが有効であることが明らかとなった。このような実験結果より、経皮投与を目的とした真空含浸具の構成としては、従来の育毛・発毛用真空含浸具の構成と同じく、少なくとも、基部とスカート部からなる吸盤であって、この吸盤の基部またはその周辺部に吸盤の内側と外側とを貫通する通気孔を有する構成であればよい。そして、前述の第1〜5発明の構成をそのまま採用することもできる。
【0023】
すなわち、本発明(第6発明)の経皮吸収用真空含浸具は、基部とスカート部とからなる吸盤を有し、この吸盤の基部またはその周辺部に、吸盤の内側と外側とを貫通する通気孔を備えることを特徴とする。
【0024】
[第7発明]
本発明(第7発明)の経皮吸収用真空含浸具は、基部とスカート部とからなる吸盤を有し、この吸盤の基部またはその周辺部に、吸盤の内側と外側とを貫通する通気孔を備えた経皮吸収用真空含浸具であって、
前記吸盤の外側であって前記通気孔の開口部に設けられる弁体と、
前記通気孔を開閉可能に前記弁体を支持するバネ材とを備え、
前記弁体は、前記頭皮に前記吸盤を叩き付けるときの前記弁体の慣性力により前記バネ材の付勢力に逆らって前記通気孔を閉じ、かつ、前記頭皮から前記吸盤を引き上げるときの前記バネ材の復元力により前記通気孔を開くことを特徴とする。
【0025】
[第8発明]
本発明(第8発明)による経皮吸収用真空含浸具は、前記第7発明の経皮吸収用真空含浸具の構成を有するものであって、
前記通気孔を介して前記密閉空間に連通する伸縮ポンプを備えており、
前記伸縮ポンプは、前記頭皮に前記吸盤を叩き付けるときの前記伸縮ポンプの慣性力により縮んで前記密閉空間に圧縮空気を送り、かつ、前記頭皮から前記吸盤を引き上げるときの前記伸縮ポンプの復元力によって前記密閉空間の空気を吸い出すことを特徴とする。
【0026】
[第9発明]
本発明(第9発明)の経皮吸収用真空含浸具は、前記第8発明の経皮吸収用真空含浸具の構成を有するものであって、
薬液貯留器と、
この薬液貯留器の薬液を前記通気孔に導く連結パイプとを備えており、
前記通気孔に開口する前記連結パイプの先端部には、前記伸縮ポンプの圧縮空気により前記密閉空間に向けて薬液を吐出可能な薬液ノズルが設けられることを特徴とする。
【0027】
[第10発明]
本発明(第10発明)の経皮吸収用真空含浸具は、
基部とスカート部とからなる吸盤を有し、この吸盤の基部またはその周辺部に、吸盤の内側と外側とを貫通する通気孔を備えた経皮吸収用真空含浸具であって、
前記通気孔を介して前記密閉空間に連通する伸縮ポンプを備えており、
前記伸縮ポンプは、前記頭皮に前記吸盤を叩き付けるときの前記伸縮ポンプの慣性力により縮んで前記密閉空間に圧縮空気を送り、かつ、前記頭皮から前記吸盤を引き上げるときの前記伸縮ポンプの復元力によって前記密閉空間の空気を吸い出すことを特徴とする。
【0028】
[第11発明]
本発明(第11発明)の経皮吸収用真空含浸具は、前記第10発明の経皮吸収用真空含浸具の構成を有するものであって、
薬液貯留器と、
この薬液貯留器の薬液を前記通気孔に導く連結パイプとを備えており、
前記通気孔に開口する前記連結パイプの先端部には、前記伸縮ポンプの圧縮空気により前記密閉空間に向けて薬液を吐出可能な薬液ノズルが設けられることを特徴とする。
【0029】
[第6〜11発明]
本発明(第6〜11発明)において、皮膚に対する薬液の浸透作用については、第5〜11発明と同様に、皮膚と吸盤との密閉空間における圧力変化が関係している。すなわち、皮膚表面の吸引と開放を繰り返すことで、皮膚角質層の微細な隙間に薬液成分が入り込みやすくなるものと考えられる。
本発明(第6〜11発明)は、必要に応じて単独で適用してもよいし、各発明を組み合わせて適用してもよい。また、本明細書に記載される他の発明を組み合わせて適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態の育毛・発毛用真空含浸具を示す側面図である。
【図2】同第1実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の吸盤の構成を示す斜視図である。
【図3】同第1実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の吸盤の構成を示す平面図である。
【図4】同第1実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の吸盤の構成を示す断面図である。
【図5】同第1実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の作用を示すもので、頭皮に吸盤を叩き付ける前の状態を示す断面図である。
【図6】同第1実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の作用を示すもので、頭皮に吸盤を叩き付けた直後の状態を示す断面図である。
【図7】同第1実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の作用を示すもので、頭皮から吸盤を引き上げる状態を示す断面図である。
【図8】同第1実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の作用を示すもので、頭皮と吸盤との間の密閉空間が減圧開放される状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態の育毛・発毛用真空含浸具を示す側面図である。
【図10】同第2実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の作用を示すもので、頭皮に吸盤を叩き付ける前の状態を示す断面図である。
【図11】同第2実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の作用を示すもので、頭皮に吸盤を叩き付けた直後の状態を示す断面図である。
【図12】同第2実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の作用を示すもので、頭皮から吸盤を引き上げる状態を示す断面図である。
【図13】同第2実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の作用を示すもので、頭皮と吸盤との間の密閉空間が減圧開放される状態を示す断面図である。
【図14】本発明の第3実施形態の育毛・発毛用真空含浸具を示す断面図である。
【図15】本発明の第4実施形態の育毛・発毛用真空含浸具を示す断面図である。
【図16】本発明の第5実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の作用を示すもので、頭皮に吸盤を押し付ける前の状態を示す断面図である。
【図17】同第5実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の作用を示すもので、頭皮に吸盤を押し付けた直後の状態を示す断面図である。
【図18】同第5実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の作用を示すもので、頭皮から吸盤を引き上げる状態を示す断面図である。
【図19】同第5実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の作用を示すもので、頭皮と吸盤との間の密閉空間が減圧開放される状態を示す断面図である。
【図20】同第6実施形態の経皮吸収用真空含浸具の作用を示すもので、頭皮に吸盤を押し付ける状態を示す断面図である。
【図21】同第6実施形態の経皮吸収用真空含浸具の作用を示すもので、頭皮と吸盤との間の密閉空間が減圧開放された状態を示す断面図である。
【図22】皮膚浸透性試験の結果を示すもので、電子顕微鏡写真のイメージ図である。
【符号の説明】
【0031】
10 育毛・発毛用真空含浸具
12 吸盤
13 伸縮ポンプ
14 柄
15 芯棒
16 環状バンド
17 バネ板(バネ材)
18 弁体
19 薬液貯留器
20 連結パイプ
20a 薬液ノズル
S1 吸着室(密閉空間)
S2 ポンプ室
H1,H2 通気孔
T 毛穴
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態の育毛・発毛用真空含浸具を図1に示した。
育毛・発毛用真空含浸具10は、吸盤12の後端側(図1で上側)に伸縮ポンプ13が設けられる。吸盤12の側方には柄14が取り付けられる。
柄14には、鋼材からなる帯板状の芯棒15が延びており、この芯棒15の先端に環状バンド16が固定される。吸盤12の後端部に環状バンド16がネジ等で締め付けられている。
【0033】
芯棒15の途中には、バネ板17が分岐して延びている。バネ板17の先端部には、伸縮ポンプ13の通気孔H2(図2および図3参照)を開閉可能な弁体18が取り付けられる。
吸盤12の側方には薬液貯留器19が取り付けられており、薬液貯留器19内の薬液が連結パイプ20を通って吸盤12の通気孔H1(図4参照)に供給されるようになっている。
【0034】
吸盤12は、シリコン、ゴムなどの弾性材料からなるもので、図4に示すように、円柱状の基部21にテーパ状のスカート部22が連なっている。吸盤12を頭皮に押し付けると、スカート部22が拡がるように変形して頭皮に密着する。
図4に示すように、吸盤12のほぼ中央には通気孔H1が貫通している。通気孔H1は、基部21の中心軸方向に延び、スカート部22内側の吸着室S1に通じる。
【0035】
伸縮ポンプ13は、軟質樹脂材料からなるもので、蛇腹(ベローズ)形の筒部25を伸縮させる構成になっている。筒部25の下端は、吸盤12の端面(図4で上側面)に気密に固定される。筒部25の伸縮に伴ってポンプ室S2が拡大または縮小し、通気孔H1を通して吸着室S1の減圧または加圧を行う。
筒部25の上側には蓋部26が一体に形成されており、蓋部26の中央に通気孔H2が形成される。すなわち、通気孔H2を通じてポンプ室S2に外気を取り入れ、またはポンプ室S2の空気を外部に排出することが可能になっている。
【0036】
図1に示すように、弁体18は、通気孔H2の上側に若干の隙間を保ってバネ板17によって支持されている。円盤状の弁体18の外径は、通気孔H2よりも大きい(図3参照)。バネ板17が静止状態にあると、弁体18が通気孔H2から離れた位置にあるため、弁体18は通気孔H2を開放状態に保つ。バネ板17が撓んで弁体18が蓋部26に当たると、通気孔H2が閉じる。
【0037】
薬液貯留器19の連結パイプ20は、吸盤12の側方に貫通して通気孔H1に突き出ている(図3参照)。通気孔H1に開口する連結パイプ20の先端部には、通気孔H1に薬液を吐出する薬液ノズル20aが設けられる。
なお、薬液貯留器19には、脱着可能なキャップ19aが取り付けられており(図2参照)、キャップ19aを取り外すことで、貯留器内に薬液を充填することができる。また、キャップ19aの蓋面には、吸気孔19bが設けられる。貯留器の薬液が薬液ノズル20aから吐出する際に、吸気孔19bから外気が貯留器内に吸い込まれるようになっている。
【0038】
次に、育毛・発毛用真空含浸具10の使用方法について説明する。
まず、使用者は、薬液貯留器19にあらかじめ必要な薬液を充填しておく。次いで、図5に示すように、柄14を持って吸盤12を頭皮に向けて構える。そして、柄14を振り下ろして吸盤12で頭皮を叩く。
【0039】
柄14を構えた状態では、バネ板17が静止しているため、弁体18が通気孔H2から僅かな隙間を保って浮いた状態にある。すなわち、通気孔H2が開放状態にある。
図6に示すように、頭皮に吸盤12を叩き付けると、吸盤12が頭皮に当たった瞬間に、バネ板17と弁体18が慣性力により通気孔H2側へ撓むため、弁体18が通気孔H2を塞ぐ。このとき、吸着室S1とポンプ室S2とが外気から遮断され、密閉された状態(密閉空間)になる。そして、この状態から伸縮ポンプ13が慣性力によってさらに縮むと、ポンプ室S2から圧縮空気が通気孔H1を通って吸着室S1に送られる。
なお、バネ板17の撓み量(撓み幅)は、伸縮ポンプ13の伸縮量(伸縮長さ)よりも十分に大きくなるように設定される。すなわち、頭皮に吸盤12が当たるときにバネ板17(弁体18)が伸縮ポンプ13を押し下げるように頭皮側に向けて撓む。この結果、上記のように、弁体18で通気孔H2を塞いでポンプ室S2を密閉しかつ加圧することが可能になる。
【0040】
通気孔H1を通過する圧縮空気の一部は、連結パイプ20から薬液貯留器19側へ入り込み、同時に薬液ノズル20aから薬液を若干量噴き出させる。そして、この薬液が吸着室S1に拡散し、頭皮に吹き付けられる。
【0041】
頭皮に吸盤12を叩き付けた後、その反動を利用して柄14を引き上げると、図7に示すように、吸盤12が頭皮から離れる方向に上昇する。また、バネ板17の上昇に伴い伸縮ポンプ13が元の形状に戻ろうとするため、吸着室S1の空気をポンプ室S2に吸い上げる。この結果、吸着室S1が減圧され、吸着室S1の毛穴Tは、皮脂が吸い出されて若干縮んだ状態になる。
なお、図7の段階では、弁体18は通気孔H2を塞いだままの状態に保たれる。
【0042】
図7の状態から、バネ板17がさらに上昇すると、通気孔H2から弁体18が引き離される。すると、図8に示すように、通気孔H2からポンプ室S2に外気が入り込み、通気孔H1を介して吸着室S1の内圧を瞬間的に上昇させる。このとき、毛穴Tが元の状態に戻り、同時に吸着室S1内の薬液が毛穴Tに入り込む。すなわち、毛穴Tに対して薬液の真空含浸が行われることになる。
【0043】
吸着室S1とポンプ室S2が正圧(大気圧)に戻ると、頭皮から吸盤12を簡単に引き離すことができる。使用者は、必要に応じて、図5〜図8で示した、吸盤12を振り上げて頭皮に叩き付ける動作を繰り返し行う。
【0044】
このように本実施形態の育毛・発毛用真空含浸具10によれば、頭皮を吸盤12で繰り返し叩く動作をするだけで、頭皮の毛穴に対して薬液を簡単かつ確実に浸透させることができる。弁体18による通気孔H2の開閉は、使用者の叩く動作に伴って自動的に行われるため、使用者が何ら弁体18の操作を意識しなくとも、適切なタイミングで弁体18の開閉を制御することができる。
【0045】
また、本実施形態の育毛・発毛用真空含浸具10では、伸縮ポンプ13が吸着室S1(密閉空間)の加圧および減圧を行うため、吸着室S1の圧力変化をより大きくすることができる。これにより、毛穴から皮脂を吸い出す効果や、また減圧開放時に毛穴に薬液を含浸させる効果が高まる。
さらに、本実施形態によれば、薬液ノズル20aにより頭皮に薬液を霧状にして散布することができ、毛穴への薬液の浸透効果を高めることができる。また、使用者にとっても、頭皮にあらかじめ薬液を塗布することが手間がなくなり、薬液で手が汚れるといった不便も解消される。
【0046】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を図9に示す。
第2実施形態の育毛・発毛用真空含浸具30は、第1実施形態の育毛・発毛用真空含浸具の構成を簡略化し、伸縮ポンプと薬液貯留器の構成を省略したものである。
図9に示すように、吸盤12の側方に柄14が設けられており、柄14の先端に芯棒15が延びている。芯棒15の先端の環状バンド16は吸盤12に締め付けられる。
芯棒15から分岐するバネ板17には弁体18が設けられている。弁体18は、吸盤12のほぼ中央の通気孔Hと隙間を保ってバネ板17により支持されている。
【0047】
育毛・発毛用真空含浸具30を使用する場合、使用者はあらかじめ頭皮に薬液を塗布しておき、前記第1実施形態と同様に吸盤12で頭皮を叩く。
図10に示すように、使用者が頭皮に吸盤12を振り上げて構えたときには、弁体18は、吸盤12から離れて通気孔Hを開放した状態にある。図11に示すように、柄14を振り下ろして頭皮に吸盤12を叩き付けると、頭皮に吸盤12が当たった瞬間にバネ板17が慣性力によって下方に撓み、弁体18で通気孔Hを塞ぐ。このとき、吸盤12の内側の吸着室Sが密閉された状態になる。
【0048】
頭皮に吸盤12を叩き付けた後、吸盤12を頭皮から引き上げようとすると、図12に示すように、吸盤12が頭皮から離れる方向に上昇するため、吸着室Sが減圧され、頭皮の毛穴Tが吸引されて縮んだ状態になる。
次いで、バネ板17がその復元力により弁体18を上方へ持ち上げるため、通気孔Hが開いて吸着室Sに外気が入り込む。このとき、減圧状態の吸着室Sの内圧が瞬間的に上昇し、頭皮の薬液が毛穴に入り込むことになる(図13参照)。
【0049】
このように第2実施形態によれば、極めて簡単な構成で、しかも、吸盤で頭皮を叩くだけの簡単な操作で頭皮の毛穴に薬液を浸透させることができる。また、伸縮ポンプ、薬液貯留器等の部品が不要になるため、製作コストを大幅に低減することができる。
【0050】
[第3実施形態]
第3実施形態の育毛・発毛用真空含浸具40を図14に示す。
育毛・発毛用真空含浸具40は、第1実施形態のベローズタイプの伸縮ポンプに代えて、弾性材料からなる紡錘形の伸縮ポンプ41を採用したものである。真空含浸具40の使用方法については、第1実施形態の真空含浸具10と同様である。
第3実施形態の構成によれば、前記第1実施形態と同様な効果に加え、伸縮ポンプ41の構成が簡単になるため、製造コストの低減を図りやすくなる等の効果がある。
【0051】
[第4実施形態]
第4実施形態の育毛・発毛用真空含浸具50を図15に示す。第4実施形態は、前記第1実施形態および第2実施形態のバネ板に代えて、コイルスプリングを用いたものである。
育毛・発毛用真空含浸具50は、吸盤12の基部21後端にコイルスプリング51を取り付け、このコイルスプリング51により弁体52を支持する構成としている。コイルスプリング51の付勢力に逆らって弁体52が吸盤12に当たると、通気孔Hを塞ぐ。一方、コイルスプリング51の付勢力で弁体52が吸盤12の図15で上方へ押し戻されると、通気孔Hが開く。使用者は、吸盤12を持って直接頭皮を叩くことで、前記第2実施形態と同様に頭皮への薬液の真空含浸を行うことができる。
第4実施形態によれば、柄14、芯棒15、環状バンド16およびバネ板17の構成が不要になるため、真空含浸具の構成をよりコンパクトにすることができる。
【0052】
[第5実施形態]
第5実施形態の育毛・発毛用真空含浸具60を図16に示す。第5実施形態は、前記第1実施形態のバネ板17および弁体18を省略し、伸縮ポンプ13の通気孔H2を手動で開閉するようにしたものである。
育毛・発毛用真空含浸具60は、吸盤12の基部21後端に蛇腹(ベローズ)式の伸縮ポンプ13が一体に固定される。基部21の中央軸方向には通気孔H1が貫通しており、吸盤12の吸着室S1と伸縮ポンプ13のポンプ室S2は、通気孔H1で連通している。伸縮ポンプ13の蓋部には、ポンプ室S2に通じる通気孔H2が開口している。
【0053】
吸盤12の側方には、薬液貯留器19が設けられる。吸盤12の基部21に薬液貯留器19の薬液を通気孔H1へ導く連結パイプ20が貫通している。通気孔H1に開口する連結パイプ20の先端部には、薬液を通気孔H1に吐出可能な薬液ノズル20aが設けられている。
【0054】
育毛・発毛用真空含浸具60を使用する場合、図16に示すように、まず、薬液貯留器19に適量の薬液を充填し、頭皮に吸盤12を当てる。次いで、図17に示すように、伸縮ポンプ13の通気孔H2を手で塞いで伸縮ポンプ13と吸盤12とを頭皮に向けて押し付け、ポンプ室S2および吸着室S1の空気を押し出す。
【0055】
なお、この押圧操作は、ポンプ室S2からの圧縮空気が通気孔H1を勢いよく通過するように比較的強い力で行う。これにより、通気孔H1を通過する圧縮空気流が連結パイプ20から薬液貯留器19側に入り込み、薬液ノズル20aから薬液の一部を吐出させる。そして、この薬液が吸着室S1に拡散し、頭皮に吹き付けられる。
【0056】
図17の状態から使用者が伸縮ポンプ13を引き上げると、図18に示すように、吸着室S1およびポンプ室S2が拡大して減圧度が上昇する。そして、吸着室S1では、頭皮の毛穴Tから皮脂等が吸い出される。このとき、ポンプ室S2も減圧状態に保たれるため、通気孔H2に使用者の手が吸い付いたままになる。
【0057】
吸着室S1およびポンプ室S2の減圧度を十分に高めた後、図19に示すように、使用者の手を通気孔H2から引き離すと、通気孔H2から外気が勢いよくポンプ室S2および吸着室S1に入り込み、これらの空間の内圧が瞬時に正圧(大気圧)に戻る。このとき、頭皮の毛穴Tが縮んだ状態から元の状態に戻り、同時に吸着室S1内の薬液が毛穴Tに吸い込まれる。
【0058】
このように第5実施形態の育毛・発毛用真空含浸具60によれば、使用者が伸縮ポンプ13および吸盤12の押し付け操作と引き上げ操作とを交互に行うことにより、適切なタイミングで減圧開放を行うことができ、簡単に頭皮の毛穴に薬液を真空含浸させることができる。
また、通気孔H1の圧縮空気を利用して薬液ノズル20aから薬液を吸着室S1に送り込むため、薬液の供給量にバラツキが少なくなる。さらに、使用者が頭皮に薬液を塗布する手間がいらず、薬液で手を汚しにくくなる。さらに、コンパクトで簡単な構成であるので、製造コストの抑えやすいといった利点もある。
【0059】
[皮膚浸透性試験]
医薬品や化粧品などの皮膚外用剤において、その有効成分の効果を十分に発揮させるためには、皮膚への経皮吸収性を向上させることが課題となる。
しかしながら、皮膚の角質層は、疎水的な細胞間脂質と親水性的なケラチン蛋白質の層構造からなるバリア機能を有しているため、外部からの薬物の経皮吸収は著しく制限される。
従来、有効成分の経皮吸収性を向上させるために、経皮吸収促進剤を利用する方法や超音波・電気などを利用する方法など多くの研究が行われているが、これらの手段は角質層のバリア機能を破綻させたり、複雑な機械を利用しなければならないといった点から現実的とはいえない。
本発明の経皮吸収用真空含浸具によれば、皮膚に対する薬液の浸透性を簡単な操作で効率的に高めることができる。真空含浸具による皮膚浸透性を確認するための試験例を以下に示す。
【0060】
(1)試験用含浸具
試験用含浸具には通気孔付き吸盤を用いた。通気孔付き吸盤は、前記第1〜5実施形態に含まれる吸盤と同様の構成のもので、その中央に円形の基部を有し、基部の外周にスカート部を備えており、基部の中央軸方向に貫通孔を有するタイプのものである(図20および21参照)。
【0061】
(2)試料
経皮投与する試料としては、肝機能代謝の検査用試薬として静脈注射に使用されたり、近年の眼科白内障手術に使用されているインドシアニン・グリーン(ICG:参天製薬社製)を用いた。50%エタノール水溶液を溶媒に用いて30mg/mlの濃度のICG溶液を作製し、試験に使用した。
【0062】
(3)試験用皮膚
試験用の皮膚組織には、ヒトの皮膚に比較的近い構造をしており、皮膚透過性の予測に有用であることが既に報告されているYucatan micropigの皮膚を用いた。Yucatan micropigの5ヶ月齢の雌性、背部皮膚を試験用皮膚とした。
【0063】
(4)試験方法
10cm×10cm切片のYucatan micropigの皮膚中央に、200μlのICG溶液を塗付し、1分間静置した。その後、試験用皮膚に試験用含浸具を加圧する操作(図20参照)と、試験用含浸具の通気孔を開放する操作(図21参照)とを順に行い、これらの加圧・開放操作を5回および10回を繰り返した。なお、1分間静置して加圧しなかったものをコントロールとした。
加圧・開放操作の後、直ちに皮膚を5mm角に切り出して4%等張緩衝パラホルムアルデヒド溶液(pH7.4)にて一晩浸漬固定した。固定終了後、リン酸緩衝液(PBS:pH7.4)で洗浄し、OCT compound〔Tissue-Tek〕にて凍結包埋を行い、クリオスタットで薄切(10μm厚)してシランコートスライドガラスに貼付し、冷風下で直ちに乾燥させた。その後、水溶性封入剤で封入し、蛍光顕微鏡観察(倍率40倍)および画像解析を行った。
【0064】
(6)結果
ICGの皮膚浸透性の変化を図22に示した。図22において、「DICI」は微分干渉コントラストイメージ(Differential interference contrast image)を示し、「FI」は蛍光イメージ(Fluorescence image)を示す。
コントロールではICGの皮膚浸透は観察されなかったのに対し、操作回数が増加するほどICGの皮膚浸透性は増大し、5回では表皮層、10回では真皮層までICGが浸透しているのが観察された。表皮層および真皮層におけるICGの浸透量について、画像解析ソフトにて解析したところ、表皮層および真皮層ともに操作回数に比例してICGの皮膚浸透量が増大しているのが確認できた。
【0065】
以上の結果から、本発明の真空含浸具によれば、皮膚に薬液を直接浸透させる効果があることが判る。また、真空含浸具の操作回数を増やす程、皮膚浸透性を増大させることができる。
なお、前述の皮膚浸透試験では、通気孔付き吸盤を単体で使用する試験用含浸具を使用したが、経皮吸収を促進する器具(経皮吸収用真空含浸具)として第1〜第5実施形態と同様な構成の真空含浸具を使用することもできる。これらの構成の真空含浸具を用いれば、より簡単な操作で効率よく皮膚への薬液の浸透を行うことが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部とスカート部とからなる吸盤を有し、この吸盤の基部またはその周辺部に、吸盤の内側と外側とを貫通する通気孔を備えた育毛・発毛用真空含浸具において、
前記吸盤の外側であって前記通気孔の開口部に設けられる弁体と、
前記通気孔を開閉可能に前記弁体を支持するバネ材とを備え、
前記弁体は、前記頭皮に前記吸盤を叩き付けるときの前記弁体の慣性力により前記バネ材の付勢力に逆らって前記通気孔を閉じ、かつ、前記頭皮から前記吸盤を引き上げるときの前記バネ材の復元力により前記通気孔を開くことを特徴とする、育毛・発毛用真空含浸具。
【請求項2】
請求項1記載の育毛・発毛用真空含浸具の構成を有するものであって、
前記通気孔を介して前記密閉空間に連通する伸縮ポンプを備えており、
前記伸縮ポンプは、前記頭皮に前記吸盤を叩き付けるときの前記伸縮ポンプの慣性力により縮んで前記密閉空間に圧縮空気を送り、かつ、前記頭皮から前記吸盤を引き上げるときの前記伸縮ポンプの復元力によって前記密閉空間の空気を吸い出すことを特徴とする、育毛・発毛用真空含浸具。
【請求項3】
請求項2記載の育毛・発毛用真空含浸具の構成を有するものであって、
薬液貯留器と、
この薬液貯留器の薬液を前記通気孔に導く連結パイプとを備えており、
前記通気孔に開口する前記連結パイプの先端部には、前記伸縮ポンプの圧縮空気により前記密閉空間に向けて薬液を吐出可能な薬液ノズルが設けられることを特徴とする、育毛・発毛用真空含浸具。
【請求項4】
基部とスカート部とからなる吸盤を有し、この吸盤の基部またはその周辺部に、吸盤の内側と外側とを貫通する通気孔を備えた育毛・発毛用真空含浸具において、
前記通気孔を介して前記密閉空間に連通する伸縮ポンプを備えており、
前記伸縮ポンプは、前記頭皮に前記吸盤を叩き付けるときの前記伸縮ポンプの慣性力により縮んで前記密閉空間に圧縮空気を送り、かつ、前記頭皮から前記吸盤を引き上げるときの前記伸縮ポンプの復元力によって前記密閉空間の空気を吸い出すことを特徴とする、育毛・発毛用真空含浸具。
【請求項5】
請求項4記載の育毛・発毛用真空含浸具の構成を有するものであって、
薬液貯留器と、
この薬液貯留器の薬液を前記通気孔に導く連結パイプとを備えており、
前記通気孔に開口する前記連結パイプの先端部には、前記伸縮ポンプの圧縮空気により前記密閉空間に向けて薬液を吐出可能な薬液ノズルが設けられることを特徴とする、育毛・発毛用真空含浸具。
【請求項6】
基部とスカート部とからなる吸盤を有し、この吸盤の基部またはその周辺部に、吸盤の内側と外側とを貫通する通気孔を備えることを特徴とする、経皮吸収用真空含浸具。
【請求項7】
基部とスカート部とからなる吸盤を有し、この吸盤の基部またはその周辺部に、吸盤の内側と外側とを貫通する通気孔を備えた経皮吸収用真空含浸具であって、
前記吸盤の外側であって前記通気孔の開口部に設けられる弁体と、
前記通気孔を開閉可能に前記弁体を支持するバネ材とを備え、
前記弁体は、前記頭皮に前記吸盤を叩き付けるときの前記弁体の慣性力により前記バネ材の付勢力に逆らって前記通気孔を閉じ、かつ、前記頭皮から前記吸盤を引き上げるときの前記バネ材の復元力により前記通気孔を開くことを特徴とする、経皮吸収用真空含浸具。
【請求項8】
請求項7記載の経皮吸収用真空含浸具の構成を有するものであって、
前記通気孔を介して前記密閉空間に連通する伸縮ポンプを備えており、
前記伸縮ポンプは、前記頭皮に前記吸盤を叩き付けるときの前記伸縮ポンプの慣性力により縮んで前記密閉空間に圧縮空気を送り、かつ、前記頭皮から前記吸盤を引き上げるときの前記伸縮ポンプの復元力によって前記密閉空間の空気を吸い出すことを特徴とする、経皮吸収用真空含浸具。
【請求項9】
請求項8記載の経皮吸収用真空含浸具の構成を有するものであって、
薬液貯留器と、
この薬液貯留器の薬液を前記通気孔に導く連結パイプとを備えており、
前記通気孔に開口する前記連結パイプの先端部には、前記伸縮ポンプの圧縮空気により前記密閉空間に向けて薬液を吐出可能な薬液ノズルが設けられることを特徴とする、経皮吸収用真空含浸具。
【請求項10】
基部とスカート部とからなる吸盤を有し、この吸盤の基部またはその周辺部に、吸盤の内側と外側とを貫通する通気孔を備えた経皮吸収用真空含浸具であって、
前記通気孔を介して前記密閉空間に連通する伸縮ポンプを備えており、
前記伸縮ポンプは、前記頭皮に前記吸盤を叩き付けるときの前記伸縮ポンプの慣性力により縮んで前記密閉空間に圧縮空気を送り、かつ、前記頭皮から前記吸盤を引き上げるときの前記伸縮ポンプの復元力によって前記密閉空間の空気を吸い出すことを特徴とする、経皮吸収用真空含浸具。
【請求項11】
請求項10記載の経皮吸収用真空含浸具の構成を有するものであって、
薬液貯留器と、
この薬液貯留器の薬液を前記通気孔に導く連結パイプとを備えており、
前記通気孔に開口する前記連結パイプの先端部には、前記伸縮ポンプの圧縮空気により前記密閉空間に向けて薬液を吐出可能な薬液ノズルが設けられることを特徴とする、経皮吸収用真空含浸具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【国際公開番号】WO2005/061042
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516420(P2005−516420)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014206
【国際出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(393003192)株式会社シーエムエス (1)
【Fターム(参考)】