説明

肺、肺の容積及び呼吸特性の提示装置並びにその使用

本発明は第一アーム20及び第二アーム30に分岐しており、それにより一つのアーム20、30が障害物50を備えている主チューブ12を含むY字形チューブを含むことを特徴とする、肺、肺の容積及び呼吸特性を提示するための装置に関する。導入されたガス100を捕獲し、かつ/又はその量を測定するための装置が二つのアーム20、30の端部に配置されている。また、本発明は閉塞性呼吸道疾患を患っている患者でモデルとして作用し得る上記装置の使用に関する。本発明の装置は、特にCOPDの如き制限の場合の、肺の機能の提示のための使用し易いモデルを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肺、肺の容積及び呼吸特性の提示(representing)装置並びにその使用に関するものであり、気道の閉塞性疾患を示すのに使用される。
【背景技術】
【0002】
散在性肺疾患及び/又は呼吸道疾患の提示と関連する多くの異なる方法があり、これらの方法では高度に複雑な装置、例えば、特別な造影剤によるコンピュータ断層撮影法を使用して肺及び呼吸道のオリジナル画像を得るために試みがなされている(DE 101 07 765A1を参照のこと)。多くの場合、複雑な技術が不可避である。
それ故、医療研究の目的は人体の正常なプロセス/状態又は破壊されたプロセス/状態についての一層良好な識見を得るためのできるだけ簡単かつ非観血的である方法を常に発見することである。
こうして、米国特許第3,874,093号及び同第6,296,490号は健康なヒトの呼吸特性が学習かつ探求し得る正確な解剖学的モデルを記載している。制限の如き相当する症状が提示し得ず、またそれらは意図されていない。
更に、米国特許第5,823,787号は正常な状態及び症状における呼吸道の系を示すための機械的モデルを記載している。特に、図1は夫々それらの遠位端部に膨張可能な肺サックを備えた二つの気管支分岐を有する気道を示す。二つの気管支分岐の夫々は、例えば、膨張可能なブラッダー又はスリーブの形態で用意される制限を有してもよい。このように、容積の制限だけでなく、呼吸道の全遮断又は閉塞が可変の程度に提示し得る。
実際に、このモデルは食道及び胃を含む、全ての解剖学的詳細による全呼吸系の非常に複雑かつ殆ど不可能な程に複雑な提示を与える。制限は実際に可変に調節し得るが、熟練した人により特別な操作要素を使用して操作される必要がある。また、制限を生じる方法はゴムの如き可撓性の圧縮可能な材料を必要とし、その結果、モデルは、例えば、フレームもしくはスタンドの上又は解剖ドール中に固定して取り付けられた位置でのみ取り扱い得ることが明らかである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は制限の如き症状、特に閉塞性呼吸疾患における肺の手術の様式を提示するための容易に操作される実演モデルを与える装置を製造することである。更に、装置に多大の出費をかけないで、簡単な手段により種々の症状における両側肺容量及び呼吸特性を示して、肺又は肺容積を提示することが可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、上記問題が第一分岐20及び第二分岐30に分岐する主チューブ10(その一つの分岐20、30が障害物を有し、一方、両方の分岐20、30の端部に導入されたガスを集め、かつ/又はその量を測定するための装置が設けられている)を含むY字形チューブを含むことを特徴とする、肺、肺の容積及び呼吸特性を提示するための装置により解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
二つの分岐20、30の長さはそれ自体重要ではない。二つの分岐20、30が同じ長さであることが適当である。
本発明によれば、障害物は二つの分岐の一つの全長に沿っていずれに配置されてもよい。しかしながら、障害物は二つの分岐の一つの中央に設けられるのが好ましい。障害物は一つの分岐の狭い部分の形態のくびれであることが適当であり、これは対称又は非対称であってもよく、かつ特定された、一定の、即ち、不変のサイズを有する。分岐中の非対称障害物は、本発明によれば、例えば、くぼみを意味する。対称形成は、例えば、チューブの直径の減少に相当する。障害物の変化は症状の異なる重度を検出し、それらの作用をできるだけ正確に再現することを可能にする。
障害物におけるチューブの直径は、提示される症状が示し得るように選ばれることが適当である。例えば、チューブの直径は、本発明の装置における通常のチューブ直径と較べて、障害物の位置で約半分にサイズを減少されてもよい。あまりにも大きい障害物は一つの分岐の閉塞を生じ、その結果、導入されたガスが通過し得ないことは言うまでもない。一方、チューブ直径の狭い部分があまりにも小さいと、不当な作用が再度得られるかもしれず、その結果、呼気及び吸気の流れの制限が最早明らかに提示されない。しかしながら、当業者は最適の結果を得るために、即ち、示される症状にできるだけ似ており、その作用を明らかに実証する提示を得るために好適に形成された障害物を所望の位置に設けることを難なくするであろう。
【0006】
一つのモデルが閉塞の重度を示すのに使用し得る。異なる障害物を含む複数のモデルが生じられ、使用される場合、わずかの閉塞から中くらいにひどい閉塞〜ひどい閉塞までの範囲の全体としての作用が示し得る。
好ましくは、閉塞位置の内径は二つの分岐の内径の約10〜90%、更に特別には30〜70%、最も好ましくは約50%である。
本発明の装置はガラス、プラスチック、金属もしくは木材からなってもよく、又はこれらの材料を含んでもよい。本発明の特に好ましい実施態様によれば、それがガラス又はプラスチックからつくられる。何とならば、これが製造することを一層容易にするからである。装置は半透明又は完全に半透明であることが好ましい。
主チューブが呼吸空気を吹き入れるための必要により除去可能なマウスピースを有することは本発明の装置において有利であるかもしれない。しかしながら、これは夫々の場合に必要ではない。何とならば、通常のチューブ開口部がその機能を奏し得るからである。本発明の装置は、例えば、ホース又は可撓性チューブを通って、あらゆる所望のガスを入れられてもよく、自明の選択はコストの理由のために周囲空気、呼吸空気又は窒素である。
本発明の装置において、肺、肺の容積及び呼吸特性を提示するために、導入されたガス又は空気を集め、かつ/又はその量を測定するための手段が本発明の装置中の二つの分岐の端部に設けられる。最も簡単な場合には、それらは、例えば、バルーンであってもよい。バルーンの如き、これらの装置の一層良好な取り付け及び固定のために、二つの分岐がそれらの端部にビードの形態の肥厚部分を有することが特に適当である。これはバルーンがすべり落ち、又は外されるようになることを防止する。
【0007】
二つの分岐について異なるサイズ及び/又は弾性のバルーンを選択することにより、異なる提示を慎重に生じることが可能である。別の実施態様によれば、肺/肺容量の提示が一層詳細に考慮され、分析され、また吸込み及び吐き出しに相当する、ガスの導入及び排除が本発明の装置を使用する個々の工程で実証し得るように、主チューブを遮断することがまた可能である。
特定量のガスを導入することにより、呼気及び吸気の異なる状況を慎重に模擬することが可能である。
本発明はまた、特に閉塞性呼吸疾患の場合の、肺、肺の容積及び呼吸特性を提示するための本発明の装置の使用に関する。閉塞性呼吸疾患は、例えば、喘息、実質疾患又はCOPDであってもよい。
肺、肺の容積及び呼吸特性を提示するための本発明の装置は以下のように使用される。呼吸空気の如きガスが、必要によりマウスピースを通って、本発明の装置の主チューブに導入され、その主チューブは必要により最初に遮断され、次いで開放されてもよく、次いで導入されたガスが放出される。
【0008】
それ故、本発明の装置は閉塞性呼吸疾患を患っている患者の肺/肺容積を提示するのに特に適している。これは閉塞性換気障害を伴う気管支肺系の(慢性)疾患の総称である。一つの急性の可逆的閉塞性呼吸疾患は、例えば、喘息である。その他の閉塞性呼吸疾患はCOAD(慢性閉塞性気道疾患)又はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、例えば、慢性気管支炎又は慢性気管支炎の結果としての肺への気腫変化であり、これは肺胞の破壊及び肺の隔壁(肺気腫)をもたらし得る。
この種の閉塞性肺疾患の症候は通常ストレス下のみの、呼吸困難、制限された呼吸幅(最大の呼気と吸気の間の胸郭の周辺における減少された差と定義される)、大きく増大された息の音等である。肺組織の膨張及び萎縮、減少された肺膨張及び容量並びに、特に高齢の、増大する(慢性の)呼吸不全がまた役割を果たす。
この種の疾患は通常の医療診断及び治療によるだけでなく、呼吸運動及び呼吸トレーニングの形態の補助療法により取り組まれてもよい。本発明の装置は患者に必要な治療を説明するのにこの状況で有益である。何となれば、閉塞性呼吸疾患を実証することが容易であるからである。装置は患者の肺の簡素化された提示と見なされるかもしれない。主チューブは気管を象徴し、二つの分岐は肺(これは二つのバルーンにより代表されるかもしれない)に通じる主気管支を代表する。
こうして、本発明の装置は、例えば、呼吸空気が装置に吹き込まれた後の患者の肺/肺容量を提示する、一種のモデルとして利用できる。
【0009】
本発明の装置の操作の詳細な様式が添付図面を参照して今記載されるが、これは本発明を限定すべきではない。
図は倒立Y字の形状の“閉塞性肺モデル”の形態の本発明の装置を示す。その図は二つの分岐20及び30に分岐する主チューブ10からつくられたガラスチューブの系を示す。主チューブ10及び分岐20、30の両方中のガラスチューブの直径は20mmである。主チューブ10は分岐位置40まで120mmの長さを有し、気管に相当する。主チューブ10は呼吸空気100を吹き込むことを一層容易にする必要により除去可能なマウスピース(示されていない)をフィットされてもよい。呼吸空気100が吹き込まれた直後に密閉系を生じるように、クロージャーキャップがこのマウスピースにフィットされてもよい。
二つの分岐20及び30の長さはここに示された本発明の実施態様では80mmである。第一分岐20は8mmの直径を有するくびれ(障害物)50を有する。取り付けられた一つ以上の装置が外されるようになり、又はすべり落ちることを防止するために、分岐の端部から25mmに、ビードの形態の肥厚部分(示されていない)が設けられる。
空気100を集め、かつ/又は測定するための装置は示される図では二つのバルーン60a及び60bであり、これらは二つの分岐20及び30の端部上で引っ張られ、肺に相当する。吸気中に、二つのバルーン60a及び60bが充満し、こうして肺の簡素化されたモデルを与える。充填されたバルーン60a及び60bのサイズは導入された空気100の量について結論が導かれることを可能にし、適当に較正される場合には、その量が測定されることさえも可能にし、或る症状の提示を促進するであろう。
本発明のこのモデルは“閉塞性気流制限”という医療用語を説明するのに使用される。この用語は閉塞性呼吸疾患、例えば、喘息及びCOPDを有する患者で大いに重要である。このように、本発明のモデルにより患者に説明されるようなそれらの疾患の患者の理解を改善することにより、可能な治療への一層容易な接近を患者に与えることが可能である。
本発明に従って利用できるようにされる、このモデルにより、吸気及び呼気の力学に関する閉塞の作用が、例えば、二つのバルーンに関して示され、説明し得る。加えて、二つの異なるバルーン(異なる弾性−サイズ−容量)を使用して、実質疾患(気腫)における異なる回復力の影響が示され、説明し得る。バルーンと連係しての本発明のこのモデルにより、“呼吸疾患における閉塞性の流れ制限”(呼気空気流制限)という表現が患者に示され、悟らされる。
本発明の対象はその非常な簡素化のために更なる数の利点を生じる。
【0010】
本発明の装置は呼吸系の小さい部分のみを構成し、冒された患者がそれ自体でそれを保持し、詳細で過負荷された装置により疾患の必須の症候から混乱され、ゆがめられるようにならずにあらゆる面から見ることができ、これはむしろ医療上訓練された人に意図されている。
本発明の障害物は可変ではないが、特定された選ばれたサイズで存在し、例えば、モデル中でくぼみ又はくびれの形態で用意され、一方、異なるくびれを有する幾つかのモデルが異なる呼吸疾患を示すのに使用されてもよく、その結果、患者が特別なサイズの固定された制限により、彼の疾患に特別に適用されるモデルのみに集中し得る。
本発明の装置の使用、即ち、呼吸特性の表示はまた前記の従来技術と較べて極めて簡単である。何とならば、呼吸空気が、例えば、マウスピースを使用して装置に吹き込まれ、次いで主チューブを開閉することにより、プロセスを“スローモーション”で見ることが可能であるからである。
更に、本発明における実演モデルはまた取扱特性に関して従来技術よりも大いに優れている。何とならば、モデルが硬質材料又は実際に非可撓性材料からつくられているからであり、これは追加の固定手段の必要がなく、モデルそれ自体が取り扱われ、回転され、手術中にあらゆる面から見られることを意味する。
一層容易な操作と一緒に、モデルの明らかな簡素化は、あらゆる病気の患者が彼の理解に基づいて疾患についての継続の治療を一層容易にするように彼の病気についての容易な識見を得ることを可能にする。
【実施例】
【0011】
本発明の装置の操作方法を説明するために、図に示された本発明の実施態様を幾つかの試験で試験した。
実施例1
両方のバルーンで同じ弾性
(閉塞のみ、気管支の弾性の損失なし)
開いた気管支に相当する、障害物のない分岐のバルーンが、最初に充満する。
バルーンが同じに膨張される場合、収縮された分岐のバルーンが一層遅く空になる。
実施例2
異なる弾性を有するバルーン
(閉塞及び一つの気管支領域における弾性の損失)
一層低い弾性を有するバルーンは収縮された分岐の位置で一層遅く空になる。
実施例3
息の音
(中くらいにひどい慢性閉塞性肺疾患を有する患者に典型的)
収縮された分岐のバルーンが膨張される場合、“ヒューヒューと鳴る”音が聞こえる。
こうして、本発明の装置は閉塞性呼吸疾患を有する患者で肺、肺の容積及び異なる呼吸特性を提示するための簡単なモデルとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】倒立Y字の形状の“閉塞性肺モデル”の形態の本発明の装置を示す。図は二つの分岐20及び30に分岐する主チューブ10からつくられたガラスチューブの系を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一分岐20及び第二分岐30に分岐する主チューブ10を含むY字形チューブを含む装置であって、ここで、その分岐20、30の一つが障害物50を含み、一方、両方の分岐20、30の端部に導入されたガス100を集め、かつ/又はその量を測定するための装置60a、60bが設けられていることを特徴とする、肺、肺の容積及び呼吸特性を提示するための装置。
【請求項2】
障害物50が二つの分岐20、30の一つの中央に設けられていることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
二つの分岐20、30が実質的に同じ長さであることを特徴とする、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
障害物50が対称又は非対称の構造のものであることを特徴とする、請求項1から3の1項記載の装置。
【請求項5】
障害物50がくぼみを構成することを特徴とする、請求項1から4の1項記載の装置。
【請求項6】
障害物50がチューブの直径の減少を構成することを特徴とする、請求項1から5の1項記載の装置。
【請求項7】
導入されるガスが周囲空気又は呼吸空気であることを特徴とする、請求項1から6の1項記載の装置。
【請求項8】
装置がガラス、プラスチック、金属もしくは木材からなり、又はこれらの材料の一種を含むことを特徴とする、請求項1から7の1項記載の装置。
【請求項9】
主チューブ10が呼吸空気100を吹き入れるための必要により除去可能なマウスピースを含むことを特徴とする、請求項1から8の少なくとも一つに記載の装置。
【請求項10】
主チューブ10が遮断し得ることを特徴とする、請求項1から9の少なくとも一つに記載の装置。
【請求項11】
二つの分岐20、30の端部にバルーン60a、60bがあることを特徴とする、請求項1から10の少なくとも一つに記載の装置。
【請求項12】
バルーン60a、60bが異なるサイズ及び/又は弾性のものであることを特徴とする、請求項11記載の装置。
【請求項13】
二つの分岐20、30がビードの形態の肥厚部分をそれらの端部に有することを特徴とする、請求項11記載の装置。
【請求項14】
閉塞性呼吸疾患における肺、肺の容積及び呼吸特性を提示するための請求項1から13の1項記載の装置の使用。
【請求項15】
閉塞性呼吸疾患が喘息、実質疾患又はCOPDであることを特徴とする、請求項14記載の使用。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2007−500871(P2007−500871A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529675(P2006−529675)
【出願日】平成16年4月6日(2004.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003622
【国際公開番号】WO2004/102507
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】