説明

肺への薬物送達のための空気力学的に軽い粒子

【課題】治療的および診断的薬剤の肺への送達のための改善されたキャリアを提供すること。
【解決手段】タップ密度が0.4g/cm3未満の生分解性粒子を含む肺系への送達のための粒子系であって、ここで少なくとも50%の該粒子が、5μmと30μmとの間の質量平均直径を有する、系、及び粒子を肺系に送達するための方法であって、該方法は:生分解性の空気力学的に軽い粒子の有効量を、患者の気道に投与する工程を包含し、ここで、該空気力学的に軽い粒子は、約0.4g/cm3未満のタップ密度を有し、そしてここで、少なくとも50%の該粒子が、5μmと30μmとの間の質量平均直径を有する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は一般に、肺系への送達のための低密度でサイズの大きい生分解性粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性粒子は、タンパク質およびペプチド薬物の制御放出および送達のために開発されてきた(非特許文献1参照)。例として、遺伝子治療(非特許文献2参照)およびワクチン送達による「一回注入」免疫(非特許文献3参照)のための生分解性粒子の使用が挙げられる。
【0003】
治療的薬剤の気道への送達のためのエアロゾルが開発されている(非特許文献4および5参照)。気道は、中咽頭および咽頭を含む上気道、続いて下気道(これは、気管に続く気管支および気管支梢への二分枝を含む)を含む。上気道および下気道は、伝導気道と呼ばれている。次いで、末端気管支梢は、最終的な呼吸ゾーン(肺胞または深肺)に導かれる呼吸気管支梢に分割される(非特許文献6参照)。深肺または肺胞は、全身的送達のための吸入される治療的エアロゾルの主要な標的である。
【0004】
吸入されるエアロゾルは、局所的な肺疾患(喘息および嚢胞性線維症を含む)の処置のために用いられてきており(非特許文献7参照)、そしてペプチドおよびタンパク質の全身的送達のための可能性もまた有する(非特許文献8参照)。しかし、肺への薬物送達ストラテジーは、高分子の送達について多くの困難性を提示する;これらには、エアロゾル化の間のタンパク質の変性、口咽頭腔に吸入された薬物の過剰な欠失(しばしば、80%を超える)、沈着の部位に対する制御の不足、呼吸パターンの変化に起因する治療結果の再現性のなさ、局所的毒性効果を潜在的に生じる薬物のしばしば迅速すぎる吸収、および肺マクロファージによる食作用が含まれる。
【0005】
かなりの注目が、吸入治療の効率を改善するための治療的エアロゾル吸入器の設計に注がれてきた(非特許文献9および10参照)。注目はまた、特に粒子凝集(吸入治療の効率をかなり低減させる現象)を避ける必要性に関して、乾燥粉末エアロゾル表面構成(surface texture)の設計に注がれてきた(非特許文献11参照)。粒子サイズを増大させるにつれ粒子内接着が低減するという事実にも関わらず、エアロゾル化効率を改善する手段としての、大きい粒子サイズ(5μmより大きい)を用いる可能性に注目が注がれてきた(非特許文献11参照)。これは、標準的質量密度(1g/cm3に近い質量密度)および5μmより大きい平均直径の粒子が、上気道において、または吸入デバイスにおいて、過剰に沈着することが知られているからである(非特許文献12参照)。この理由により、吸入治療のための乾燥粉末エアロゾルは、一般に、主に5μmより小さい範囲の平均直径で生産される(非特許文献13、14および15参照)。大きい「キャリア」粒子(薬物を含まない)は、他の可能な利点のうち効率的なエアロゾル化を達成するのを助けるために、治療的エアロゾルとともに同時送達されてきた(非特許文献11参照)。
【0006】
局所的および全身的吸入治療は、しばしば、治療的薬剤の比較的緩除な制御放出からの利点を有し得る(非特許文献14および16参照)。治療的エアロゾルからの緩除な放出は、投与された薬物の気道または腺房内での滞留を延長させ得、そして血流中への薬物の出現速度を低減させ得る。また、患者のコンプライアンスは、投薬頻度の低減により増大される(非特許文献1および6参照)。
【0007】
ヒト肺は、加水分解的に切断可能な沈着したエアロゾルを、数分から数時間までの範囲の期間にわたり除去または迅速に分解し得る。上気道において、繊毛性の上皮は、「粘膜毛様体エスカレーター」(これにより、粒子が気道から口に向かって一掃される)に寄与する(非特許文献17および7参照)。深肺において、肺胞のマクロファージは、その沈着後すぐに粒子を貪食し得る(非特許文献18、19、20および21参照)。粒子の直径が3μmを超えるにつれ、マクロファージによる食作用がますます減少する(非特許文献22、23および24参照)。しかし、粒子サイズを増大させることはまた、口咽頭または鼻領域内での過剰な沈着のために、(標準的質量密度を有する)粒子の気道および腺房に入る可能性を最小化する(非特許文献12参照)。
【非特許文献1】Langer, R., Science, 249: 1527-1533 (1990)
【非特許文献2】Mulligan, R. C. Science, 260: 926-932 (1993)
【非特許文献3】Eldridgeら、Mol. Immunol., 28: 287-294 (1991)
【非特許文献4】Adjei, A.およびGarren, J.Pharm. Res. 7, 565-569 (1990)
【非特許文献5】Zanen, P.およびLamm, J.-W.J. Int.J.Pharm. 114, 111-115 (1995)
【非特許文献6】Gonda, I.「Aerosols for delivery of therapeutic and diagnostic agents to the respiratory tract」 Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 6: 273-313, 1990
【非特許文献7】Andersonら、Am. Rev. Respir. Dis., 140: 1317-1324 (1989)
【非特許文献8】PattonおよびPlatz、Advanced Drug Delivery Reviews, 8:179-196 (1992)
【非特許文献9】Timsinaら、Int. J. Pharm. 101, 1-13 (1995)
【非特許文献10】Tansey, I.P., Spray Technol. Market 4, 26-29 (1994)
【非特許文献11】French, D.L., Edwards, D.A.およびNiven, R.W., J.Aerosol Sci. 27, 769-783 (1996)
【非特許文献12】Heyder, J.ら、J. Aerosol Sci., 17: 811-825 (1986)
【非特許文献13】Ganderton. D., J. Biopharmaceutical Sciences 3:101-105 (1992)
【非特許文献14】Gonda, I.「Physico-Chemical Principles in Aerosol Delivery」 Topics in Pharmaceutical Sciences 1991
【非特許文献15】Crommelin, D. J.およびK.K. Midha、編、Medpharm Scientific Publishers, Stuttgart, 95-115頁、1992
【非特許文献16】D.J.A. CrommelinおよびK.K. Midha、編、Stuttgart: Medpharm Scientific Publishers, 95-117頁(1992)
【非特許文献17】Pavia, D.「Lung Mucociliary Clearance」 Aerosols and the Lung: Clinical and Experimental Aspects, Clarke, S.W.およびPavia, D.,編、Butterworths, London, 1984
【非特許文献18】Warheit, M.B.およびHartsky, M.A., Microscopy Res. Tech. 26: 412-422(1993)
【非特許文献19】Brain, J.D.,「Physiology and Pathophysiology of Pulmonary Macrophages」 The Reticuloendothelial System, S.M. ReichardおよびJ. Filkins,編、Plenum, New York、315-327頁、1985
【非特許文献20】Dorries. A.M.およびValberg, P.A., Am. Rev. Resp. Disease 146, 831-837 (1991)
【非特許文献21】Gehr, P.ら Microscopy Res. and Tech., 26, 423-436 (1993)
【非特許文献22】Kawaguchi, H.ら、Biomaterials 7: 61-66 (1986)
【非特許文献23】Krenis, L.J.およびStrauss, B., Proc. Soc. Exp. Med., 107: 748-750 (1961)
【非特許文献24】Rudt, S.およびMuller, R.H., J.Contr. Rel., 22: 263-272 (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
局所または全身的送達のいずれかのための、治療薬の短期および長期放出の両方のための効果的な乾燥粉末吸入治療は、薬物が効果的に送達されるまで、最小の凝集を示し、そして肺の天然のクリアランス機構を回避または停止し得る粉末を必要とする。
【0009】
薬物を有効量で気道または肺の肺胞ゾーンに送達し得る、治療的薬剤の肺への送達のための改善された吸入エアロゾルに対する必要性が存在する。生分解性で、そして気道内または肺の肺胞ゾーンにおいて薬物の制御放出が可能である吸入エアロゾルとしての使用のための、薬物キャリアの開発の必要性がさらに存在する。
【0010】
それゆえ、治療的および診断的薬剤の肺への送達のための改善されたキャリアを提供することが本発明の目的である。治療的または診断的薬剤の深肺への送達のための有効なキャリアである吸入エアロゾルを提供することが、本発明のさらなる目的である。深肺での食作用を回避する肺への送達のためのキャリアを提供することが、本発明の別の目的である。生分解可能で、そして必要に応じて組み込まれた薬剤を制御された速度で放出し得る肺への送達のためのキャリアを提供することが、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は、
[1] タップ密度が0.4g/cm3未満の生分解性粒子を含む肺系への送達のための粒子系であって、ここで少なくとも50%の該粒子が、5μmと30μmとの間の質量平均直径を有する、系、
[2] 前記粒子の少なくとも90%が、5μmと30μmとの間の質量平均直径を有する、前記[1]に記載の系、
[3] 前記粒子の少なくとも50%が、5μmと15μmとの間の質量平均直径を有する、前記[2]に記載の系、
[4] 肺への投与のための薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、前記[1]に記載の系、
[5] 前記粒子が、以下:
そこに取り込まれた少なくとも1つのアミノ酸基を有する直鎖状αヒドロキシ酸ポリエステル骨格;および
該ポリエステル骨格のアミノ酸基から伸びている少なくとも1つのポリ(アミノ酸)側鎖
を含む官能化ポリエステルグラフトコポリマーを含む、前記[1]に記載の系、
[6] 前記ポリエステルが、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、および吉草酸、ならびにこれらのコポリマーからなる群より選択されるαヒドロキシ酸のポリマーである、前記[5]に記載の系、
[7] 前記直鎖状αヒドロキシ酸ポリエステル骨格が、そこに取り込まれた少なくとも1つのリジン基を有するポリ(乳酸)ポリマーを含む、前記[5]に記載の系であって、そして
ここで、該ポリ(アミノ酸)が、該ポリエステル骨格の少なくとも1つのリジン基から伸びている、系、
[8] 前記ポリ(アミノ酸)が、アスパラギン酸、リジン、およびアラニン、ならびにこれらのコポリマーからなる群より選択されるアミノ酸のポリマーである、前記[7]に記載の系、
[9] 前記ポリマーが、ポリ(乳酸-co-リジン-graft-リジン)およびポリ(乳酸-co-リジン-graft-アラニン-リジン)からなる群より選択される、前記[7]に記載の系、
[10] 前記粒子が、ポリエステルと前記官能化ポリエステルグラフトコポリマーのブレンドとを含む、前記[5]に記載の系、
[11] 前記粒子が、ポリ(乳酸-co-リジン-graft-リジン)とポリ(乳酸-co-グリコール酸-block-エチレンオキシド)とのブレンドを含む、前記[10]に記載の系、
[12] 前記ポリ(アミノ酸)側鎖が、約10〜100の間のアミノ酸を含む、前記[5]に記載の系、
[13] 前記ポリマーが、約7〜70%の間のアミノ酸含量を有する、前記[5]に記載の系、
[14] 前記粒子が、治療的または診断的薬剤を取り込んでいる、前記[1]に記載の系、
[15] 前記薬剤が、タンパク質、多糖類、脂質、核酸分子、合成有機または無機分子、およびこれらの組合せからなる群より選択される、前記[14]に記載の系、
[16] 標的分子が前記粒子に結合している、前記[1]に記載の系、
[17] 大きな生分解性キャリア粒子と組み合わされた前記[1]に記載の系であって、該系は、治療薬を含まず、該粒子の質量平均直径が50μm〜100μmの範囲である、系、
[18] 粒子を肺系に送達するための方法であって、該方法は:
生分解性の空気力学的に軽い粒子の有効量を、患者の気道に投与する工程
を包含し、
ここで、該空気力学的に軽い粒子は、約0.4g/cm3未満のタップ密度を有し、そしてここで、少なくとも50%の該粒子が、5μmと30μmとの間の質量平均直径を有する、方法、
[19] 前記投与された粒子の少なくとも90%が、5μmと30μmとの間の質量平均直径を有する、前記[18]に記載の方法、
[20] 前記投与された粒子の少なくとも50%が、5μmと15μmとの間の質量平均直径を有する、前記[18]に記載の方法、
[21] 前記粒子が、以下:
そこに取り込まれた少なくとも1つのアミノ酸基を有する直鎖状αヒドロキシ酸ポリエステル骨格;および
該ポリエステル骨格のアミノ酸基から伸びている少なくとも1つのポリ(アミノ酸)側鎖
を含む官能化ポリエステルグラフトコポリマーを含む、前記[18]に記載の方法、
[22] 前記ポリエステルが、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、および吉草酸、ならびにこれらのコポリマーからなる群より選択されるαヒドロキシ酸のポリマーである、前記[18]に記載の方法、
[23] 前記直鎖状αヒドロキシ酸ポリエステル骨格が、そこに取り込まれた少なくとも1つのリジン基を有するポリ(乳酸)ポリマーを含む、前記[18]に記載の方法であって、そして
ここで、該ポリ(アミノ酸)が、該ポリエステル骨格の少なくとも1つのリジン基から伸びている、方法、
[24] 前記ポリマーが、ポリ(乳酸-co-リジン-graft-リジン)およびポリ(乳酸-co-リジン-graft-アラニン-リジン)からなる群より選択される、前記[18]に記載の方法、
[25] 前記粒子が、ポリエステルと前記官能化ポリエステルグラフトコポリマーとのブレンドを含む、前記[18]に記載の方法、
[26] 前記粒子が、ポリ(乳酸-co-リジン-graft-リジン)とポリ(乳酸-co-グリコール酸-block-エチレンオキシド)とのブレンドを含む、前記[24]に記載の方法、
[27] 前記粒子が、有効量の治療的または診断的薬剤を含む、前記[18]に記載の方法、
[28] 前記治療的薬剤が、タンパク質、多糖類、脂質、核酸分子、およびこれらの組合せからなる群より選択される、前記[18]に記載の方法、
[29] 肺の肺胞ゾーンへの送達のための前記[18]に記載の方法であって、ここで前記粒子の少なくとも90%が、約9μmと約11μmとの間の平均直径を有する、方法、
[30] 前記粒子が、気道への投与のための薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて投与される、前記[18]に記載の方法、
[31] エアロゾル化による気道への投与のための前記[1]に記載の空気力学的に軽い粒子を作製するための方法であって、該方法は、
そこに取り込まれた少なくとも1つのアミノ酸基を有する直鎖状αヒドロキシ酸ポリエステル骨格;および
該ポリエステル骨格のアミノ酸基から伸びている少なくとも1つのポリ(アミノ酸)側鎖
を含む官能化ポリエステルグラフトコポリマーから該粒子を形成する工程を包含する、方法、並びに、
[32] 前記空気力学的に軽い粒子が、溶媒蒸発プロセスによって作製される、前記[31]に記載の方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、肺系への送達のための改善された空気力学的に軽い粒子、ならびにそれらの調製および投与のための方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の要旨
肺系への送達のための改善された空気力学的に軽い粒子、ならびにそれらの調製および投与のための方法が提供される。好ましい実施態様において、粒子は、0.4g/cm3未満のタップ密度および5μmと30μmとの間の平均直径を有する生分解性の物質から作製される。1つの実施態様において、例えば、少なくとも90%の粒子が5μmと30μmとの間の平均直径を有する。粒子は、生分解性の物質(例えば、生分解性合成ポリマー、タンパク質、または特定の多糖類のような他の水溶性物質)から形成され得る。例えば、粒子は、そこに取り込まれた分子あたり少なくとも1つのアミノ酸基を有する直鎖状αヒドロキシ酸ポリエステル骨格、および上記ポリエステル骨格のアミノ酸残基から伸びている少なくとも1つのポリ(アミノ酸)側鎖を有する官能化ポリエステルグラフトコポリマーから形成され得る。他の例は、水溶性賦形剤(例えば、トレハロースまたはラクトース)、またはタンパク質(例えば、リゾチームまたはインスリン)から形成される粒子を含む。粒子は、治療的または診断的薬剤の気道または肺の肺胞領域への送達のために使用され得る。粒子は、気道への投与のための効果的にエアロゾル化され得、そして広範な種々の組み込まれた薬剤を全身的にまたは局所的に送達するために用いられ得る。薬剤を組み込んだ粒子は、必要に応じて、組み込まれた薬剤を有さず、例えば、約50μmと100μmとの間の範囲の平均直径を有するより大きなキャリア粒子とともに同時送達され得る。
【0014】
発明の詳細な説明
気道への改善された送達のために空気力学的に軽い生分解性の粒子が提供される。粒子は治療的薬剤または診断的薬剤を組込み得、そしてエアロゾル適用による気道への薬剤の制御された全身的または局所的な送達のために使用され得る。好ましい実施態様において、粒子は、約0.4g/cm3未満のタップ密度を有する。低いタップ密度に寄与し得る粒子の特徴には、不規則な表面構成および多孔性の構造が含まれる。低密度粒子のエアロゾル適用による肺への投与は、相対的に大きな直径(例えば、平均直径において5μmを越える)の治療的エアロゾルの深肺への送達を可能にする。粗い表面構成はまた、粒子の凝集を低減し得、そして高度に流動可能な粉体を提供し得る。これは、乾燥粉体吸入器デバイスを介するエアロゾル適用にとって理想的であり、口、喉、および吸入器デバイスにおけるより低い沈着を導く。
【0015】
空気力学的に軽い粒子の密度およびサイズ
粒子サイズ
粒子の質量平均直径は、Coulter Counterを使用して測定され得る。空気力学的に軽い粒子は、好ましくは、少なくとも、直径において約5ミクロンである。サンプルにおける粒子の直径は、粒子の組成および合成方法のような因子に依存する範囲にある。サンプル中の粒子のサイズの分布は、気道内の標的部位内での最適な沈着を可能にするように選択され得る。
【0016】
粒子は、例えば、濾過によって、予め選択されたサイズ分布を有する粒子サンプルを提供するように、作製または分離され得る。例えば、サンプル中の30%、50%、70%、または80%より多い粒子は、少なくとも5μmの選択された範囲内で直径を有し得る。特定のパーセントの粒子が存在しなければならない選択された範囲は例えば、約5と30μmとの間、または必要に応じて、5と15μmとの間であり得る。1つの好ましい実施態様において、少なくとも粒子の一部は、約9と11μmとの間の直径を有する。必要に応じて、粒子サンプルはまた、作製され得る。ここで少なくとも90%または必要に応じて95%もしくは99%は、選択された範囲内の直径を有する。粒子サンプルにおける空気力学的に軽い、より大きな直径(少なくとも、約5μm)の粒子のより高い割合の存在は、深肺へ取り込まれる治療的または診断的薬剤の送達を増強する。
【0017】
1つの実施態様において、粒子サンプル中で4分位数間の範囲は、例えば、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、または13.5μmの平均直径を有して、2μmであり得る。従って、例えば、粒子の少なくとも30%、40%、50%、または60%は、5.5〜7.5μm、6.0〜8.0μm、6.5〜8.5μm、7.0〜9.0μm、7.5〜9.5μm、8.0〜10.0μm、8.5〜10.5μm、9.0〜11.0μm、9.5〜11.5μm、10.0〜12.0μm、10.5〜12.5μm、11.0〜13.0μm、11.5〜13.5μm、12.0〜14.0μm、12.5〜14.5μm、または13.0〜15.0μmの選択された範囲内の直径を有し得る。好ましくは、上記の粒子のパーセントは1μm範囲内(例えば、6.0〜7.0μm、10.0〜11.0μm、または13.0〜14.0μm)で直径を有する。
【0018】
約0.4g/cm3未満のタップ密度および少なくとも約5μmの平均直径を有する粒子は、より小さい粒子またはより大きな密度の粒子よりも、口腔咽頭領域における慣性による沈着および重力による沈着を避け得、そして深肺の気道へ標的化され得る。より大きな粒子(5μmより大きい平均直径)の使用は、有利である。なぜならば、それらは、より小さく、より濃密な粒子(例えば、吸入治療のために現在使用されている粒子)よりもより効率的にエアロゾル適用することが可能であるからである。
【0019】
より小さく、より濃密な粒子と比較して、より大きい(5μmより大きい)空気力学的に軽い粒子はまた、食細胞の細胞質の空間からの粒子のサイズ排除によって、潜在的により首尾良く、肺胞マクロファージによる食作用性の貪食および肺からのクリアランスを避け得る。粗い表面を有する球形のような統計的に等方性の形状の粒子(平均して、粉末粒子は区別可能な方向性を有さない)について、粒子包膜容量(particle envelope volume)は、完全な粒子食作用のためにマクロファージ内で必要とされる細胞質の空間の容量とおおよそ等しい。
【0020】
従って、空気力学的に軽い粒子は、より小さな濃密な粒子よりも、組み込まれた診断的薬剤または治療的薬剤のより長期の放出が可能である。吸入に続いて、空気力学的に軽い生分解性の粒子は、肺に沈着し得(それらの相対的に低いタップ密度によって)、続いて粒子の大半が肺胞マクロファージによって食作用されることなく、緩徐な分解および薬物放出を起こし得る。薬剤は、肺胞液中へ相対的にゆっくり送達され得、そして制御された速度で血流中へ送達され得る。これは、過度に高濃度の薬剤に曝露された細胞の潜在的な毒性応答を最小化する。従って、空気力学的に軽い粒子は、吸入治療、特に制御放出適用において非常に適切である。
【0021】
深肺またはより上気道のような気道の選択された領域への局所的な送達のために適切な物質、表面粗度、直径、およびタップ密度を有する粒子が作製され得る。例えば、より高密度のまたはより大きな粒子は、上気道送達のために使用され得るか、または組み込まれた同一または異なる薬剤と供に提供された、サンプル中の異なるサイズの粒子の混合物は、1回の投与で肺の異なる領域を標的化するために投与され得る。
【0022】
粒子密度および沈着
粒子は少なくとも約5μmの直径を有し、必要に応じて治療的薬剤または診断的薬剤を組込む。好ましくは、粒子は空気力学的に軽い。本明細書中で使用される「空気力学的に軽い粒子」は、約0.4g/cm3未満のタップ密度を有する粒子をいう。乾燥粉末の粒子のタップ密度は、GeoPycTM(Micrometrics Instrument Corp., Norcross, GA 30093)を使用して得ることができる。タップ密度は、包膜質量密度の標準的な尺度である。等方性粒子の包膜質量密度は、粒子の、それが包膜され得る最小の球体包膜容量によって除算された質量として定義される。
【0023】
エアロゾルの慣性による埋伏および重力による沈降は、正常な呼吸状態の間の気道および肺の腺房における主要な沈着機構である。Edwards, D.A., J. Aerosol Sci. 26:293-317 (1995)。両沈着機構の重要性は、エアロゾルの質量に比例して(粒子(または包膜)容量には比例せず)増加する。肺におけるエアロゾルの沈着部位はエアロゾルの質量によって決定されるので(少なくとも、約1μmより大きな空気力学的な平均直径の粒子については)、粒子表面の不規則性および粒子空隙率を増大させることによってタップ密度を減少させることは、他の全ての物理的な変数が等しい場合、肺へより大きな粒子包膜容量の送達を可能にする。
【0024】
低いタップ密度粒子は、実際の包膜球体直径と比較して小さな空気力学的な直径を有する。空気力学的な直径、daer、は、以下の式:
【0025】
【数1】

【0026】
によって包膜球体直径、d、に関連づけられる(Topics in Pharmaceutical Sciences 1991(編 D.J.A. CrommelinおよびK.K.Midha)95〜117頁、Stuttgart: Medpharm Scientific Publishers, 1992)のGonda, I.,「Physico-chemical principles in aerosol delivery」)ここで包膜質量ρはg/cm3の単位である。ヒト肺の肺胞領域における単分散エアロゾル粒子の最大沈着(約60%)は、約daer=3μmの空気力学的直径のために生じる。Heyder. J.ら、J. Aerosol Sci., 17: 811-825 (1986)。それらの小さな包膜質量密度によって、最大の深肺沈着を示す単分散吸入粉末を含む空気力学的に軽い粒子の実際の直径、d、は:
【0027】
【数2】

【0028】
ここでdは常に3μmより大きい。例えば、包膜質量密度、ρ=0.1g/cm3を示す空気力学的に軽い粒子は、9.5μm程度の大きさの包膜直径を有する粒子について最大の沈着を示す。粒子サイズが増大すれば、粒子間の吸着力は減少する。Visser, J., Powder Technology, 58: 1-10。従って、大きな粒子サイズは、より低い食作用による損失への寄与に加えて、エアロゾル適用の低い包膜質量密度の粒子について深肺への効率を増大する。
【0029】
粒子物質
空気力学的に軽い粒子は、好ましくは、生分解性および生体適合性であり、そして必要に応じて、組み込まれた治療的薬剤または診断的薬剤の放出について制御された速度で生分解が可能である。粒子は、約0.4g/cm3未満のタップ密度を有する粒子を形成し得る任意の物質から作製され得る。無機物質および有機物質の両方が使用され得る。本明細書中で定義される空気力学的に軽い粒子を形成し得る他の非重合性物質(例えば、脂肪酸)が使用され得る。粒子を形成する組成物ならびにおよび不規則な表面構造または粒子内の孔もしくは溝の存在を含む粒子の異なる特性が、空気力学的な軽さに寄与し得る。
【0030】
ポリマー性粒子
粒子は、任意の生体適合性および好ましくは生分解性ポリマー、コポリマーまたはブレンドから形成され得、それは約0.4g/cm3未満のタップ密度を有する粒子を形成し得る。
【0031】
表面浸食ポリマー(例えば、ポリ酸無水物)は、空気力学的に軽い粒子を形成するために使用され得る。例えば、ポリ酸無水物(例えば、ポリ[p-カルボキシフェノキシ)-ヘキサン無水塩](PCPH))が使用され得る。生分解性ポリ酸無水物は、例えば、米国特許第4,857,311号に記載される。
【0032】
別の実施態様において、バルク浸食ポリマー(例えば、ポリエステルに基づくバルク浸食ポリマー)が使用され得る。これは、ポリ(ヒドロキシ酸)を含む。好ましいポリ(ヒドロキシ酸)は、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ならびにそれらのコポリマーおよびコブレンドである。1つの実施態様において、ポリエステルは、その中に、荷電した基または官能化し得る基(例えば、アミノ酸)を組込む。
【0033】
他のポリマーには、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート))、ポリビニル化合物(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、およびポリビニルエステル、アクリル酸およびメタクリル酸のポリマー、セルロースおよび他の多糖類、ならびにペプチドもしくはタンパク質、またはそれらのコポリマーもしくはブレンドが挙げられる。ポリマーは、異なる制御薬物送達適用のためにインビボで適切な安定性および分解速度を有して選択され得るか、または適切な安定性および分解速度を有するように改変され得る。
【0034】
ポリエステルグラフトコポリマー
1つの好ましい実施態様において、Hrkachら、Macromolecules, 28:4736-4739(1995);およびHrkachら、「Poly(L-Lactic acid-co-amino acid)Graft Copolymers:A Class of Functional Biodegradable Biomaterials」in Hydrogels and Biodegradalbe Polymers for Bioapplications, ACS Symposium Series No. 627, Raphael M. Ottenbriteら編、American Chemical Society、8章、93〜101頁、1996に記載されるように、空気力学的に軽い粒子が官能化ポリエステルグラフトコポリマーから形成される。官能化グラフトコポリマーは、ポリエステルのコポリマー(例えば、ポリ(グリコール酸)またはポリ(乳酸)および官能化し得る基またはイオン化し得る基を含む別のポリマー(例えば、ポリ(アミノ酸)))である。好ましい実施態様において、そこに組み込まれたアミノ酸を有する直鎖状ポリエステル骨格、およびポリエステル骨格のアミノ酸残基から伸長したポリ(アミノ酸)側鎖を含む櫛様グラフトコポリマーが使用される。ポリエステルは、α-ヒドロキシ酸(例えば、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、およびヒドロキシ吉草酸またはそれらの誘導体もしくは組合せ)のポリマーであり得る。ポリマーは、イオン化し得る側鎖(例えば、ポリリジンおよびポリアミン)を含み得る。他のイオン化し得る基(例えば、アミノ基またはカルボキシル基)は、表面粗度および空隙率を増強するために、ポリマー中へ共有結合でまたは非共有結合で組込まれ得る。
【0035】
例示的なポリエステルグラフトコポリマーは、ポリ(乳酸-co-リジン-graft-リジン)(PLAL-Lys)である。それは、ポリ(L-乳酸-co-L-リジン)(PLAL)からなるポリエステル骨格およびグラフトされたポリリジン鎖を有する。PLAL-Lysは、例えば、98モル%乳酸および2モル%リジンならびに骨格のリジン部位から伸長するポリ(リジン)側鎖の骨格組成を有する櫛様グラフトコポリマーである。
【0036】
PLAL-Lysは、以下のように合成され得る。第1に、L-乳酸単位および約1〜2%N ε-カルボベンゾキシ-L-リジン(Z-L-リジン)単位からなるPLALコポリマーが、Barreraら, J. Am. Chem. Soc., 115:11010(1993)に記載のように合成される。PLALのポリマー鎖中のランダムに取り込まれたリジン基のZ保護基の除去は、さらなる化学修飾を受け得る遊離のεアミンを生じる。ポリ(乳酸)コポリマーの使用は有利である。なぜなら、それは乳酸およびリジンへと生分解し、これらが生体によって代謝(process)され得るからである。存在する骨格リジン基は、ポリ(アミノ酸)側鎖の生長の開始部位として使用される。
【0037】
直鎖状ポリ(L-乳酸-co-L-リジン)コポリマーのリジンεアミノ基は、アミノ酸N-εカルボキシ無水物(NCA)の開環重合を開始し、ポリ(L-乳酸-co-アミノ酸)櫛様(comb-like)グラフトコポリマーを生成する。好ましい実施態様において、NCAは、適当なアミノ酸をトリホスゲンと反応させることによって合成される。Dalyら, Tetrahedron Lett., 29:5859(1988)。トリホスゲンを使用することのホスゲンガスを上回る利点は、ホスゲンが固体材料であって、それゆえ取扱いがより安全かつより容易であることである。ホスゲンはまた、THFおよびヘキサン中に可溶であって、そのため任意の過剰量がNCAから効率的に分離される。
【0038】
アミノ酸N-カルボキシ無水物(NCAs)の開環重合は、求核性開始剤(アミン、アルコール、および水)によって開始される。1級アミンで開始されるNCAの開環重合は、モノマー対開始剤比(M/I)が150未満である場合、重合度の効率的な制御を可能にする。Kricheldorf, H. R. Models of Biopolymers by Ring-Opening Polymerization, Penczek, S. 編, CRC Press, Boca Raton, 1990. 第1章;Kricheldorf, H. R. α-Aminoacid-N-Carboxy-Anhydrides and Related Heterocycles, Springer-Verlag, Berlin, 1987;ならびにImanishi, Y. Ring-Opening Polymerization, Ivin, K. J. およびSaegusa, T. 編, Elsevier, London, 1984, 第2巻, 第8章。NCA重合のためのポリマー開始剤としてリジンε-アミノ基を使用する方法は、当該分野で記載されている。Sela, M.ら, J. Am. Chem. Soc., 78:746(1956)。
【0039】
アミノ酸NCAとPLALとの反応において、リジン側鎖の求核性1級ε-アミノ基は、NCAのC-5を攻撃する。これは、開環を導いてアミド結合を形成し、CO2の分子の発生を伴う。CO2の発生によって形成されたアミノ基は、続くNCA分子を攻撃することにより、重合を伝播する。ポリ(アミノ酸)側鎖の重合度、得られたグラフトコポリマー中のアミノ酸含有量、ならびに得られたコポリマーの物理的および化学的特徴は、PLALポリマー中のNCA対リジンε-アミノ基の比を調整することにより、例えば、ポリ(アミノ酸)側鎖の長さおよび全アミノ酸含有量を調整することにより、制御され得る。
【0040】
ポリエステル骨格上にグラフトされたかまたはポリエステル骨格中に取り込まれたポリ(アミノ酸)側鎖は、任意のアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、アラニン、またはリジン、あるいはそれらの混合物)を含み得る。アミノ酸側鎖中に存在する官能基(これは化学的に修飾され得る)は、アミノ、カルボン酸、チオール、グアニド、イミダゾール、および水酸基を含む。本明細書中で使用される場合、用語「アミノ酸」は、天然および合成アミノ酸、ならびにそれらの誘導体を含む。ポリマーは、一定の範囲の側鎖長を有するように調製され得る。側鎖は、好ましくは10〜100の間のアミノ酸を含み、そして7〜72%の間の総アミノ酸含有量を有する。しかし、側鎖は100より多いアミノ酸を含み得、そして反応条件に依存して72%よりも大きな総アミノ酸含有量を有する。ポリ(アミノ酸)は、任意の適切な溶媒中でPLAL骨格にグラフトされ得る。適切な溶媒は、極性有機溶媒(例えば、ジオキサン、DMF、CH2Cl2、およびそれらの混合物)を含む。好ましい実施態様において、反応は、ジオキサン中、室温にて約2〜4日の間の期間で行われる。
【0041】
あるいは、粒子は、ポリマーから、または異なるポリエステル/アミノ酸骨格およびグラフトされたアミノ酸側鎖とポリマーとのブレンドから形成され得る。例えば、ポリ(乳酸-co-リジン-graft-アラニン-リジン)(PLAL-Ala-Lys)、またはPLAL-Lysとポリ(乳酸-co-グリコール酸-ブロック-エチレンオキシド)(PLGA-PEG)とのブレンド(PLAL-Lys-PLGA-PEG)が使用され得る。
【0042】
合成において、グラフトコポリマーは、以下を含む、空気力学的に軽い粒子の異なる特徴を最適化するように調整(tailor)され得る:i)送達されるべき薬剤とコポリマーとの相互作用(薬剤の安定化および送達の際の活性の保持を提供するため);ii)ポリマー分解の速度、およびそれによる薬剤放出プロフィールの速度;iii)表面の特徴、および化学修飾を介する標的化能力;ならびに iv)粒子の空隙率。
【0043】
治療的薬剤
任意の種々の治療的薬剤が粒子内に取り込まれ得、粒子は、動物の肺への投与後に、取り込まれた薬剤を局所的または全身的に送達し得る。例としては、合成の無機および有機の化合物または分子、タンパク質およびペプチド、多糖および他の糖、脂質、ならびに治療、予防、または診断活性を有する核酸分子が挙げられる。核酸分子は、遺伝子、相補的DNAに結合して転写を阻害するアンチセンス分子、リボザイム、およびリボザイムガイド配列を含む。取り込まれるべき薬剤は、種々の生物学的活性(例えば、血管作動性薬剤、向神経活性薬剤、ホルモン、抗凝固剤、免疫調節性薬剤、細胞傷害性薬剤、予防的薬剤、抗生物質、抗ウイルス剤、アンチセンス、抗原、および抗体)を有し得る。いくつかの例では、タンパク質は抗体であり得るか、またはさもなくば適当な応答を惹起するために注射によって投与されるべき抗原であり得る。広範な分子量(例えば、モルあたり100〜500,000グラムの間)を有する化合物が、カプセル化され得る。
【0044】
タンパク質は、100以上のアミノ酸残基からなると定義される;ペプチドは、100未満のアミノ酸残基である。他に述べない限り、用語タンパク質は、タンパク質およびペプチドの両方をいう。例としては、インスリンおよび他のホルモンが挙げられる。多糖(例えば、ヘパリン)もまた、投与され得る。
【0045】
空気力学的に軽い粒子を含むエアロゾルは、種々の吸入治療に有用である。粒子は、小さなおよび大きな薬物を取り込み得、取り込まれた薬物を数時間〜数ヶ月の範囲の期間にわたって放出し、そしてエアロゾル化または続く肺における沈着の間の極限条件(これは、さもなくばカプセル化薬剤を害する)に抵抗する。
【0046】
薬剤は、肺内に局所的に送達され得るか、または全身的に投与され得る。例えば、疾患(例えば、嚢砲性線維症)の治療のための遺伝子が投与され得、同様に喘息のためのβアゴニストが投与され得る。他の特定の治療剤は、インスリン、カルシトニン、ロイプロリド(またはLHRH)、G-CSF、上皮小体ホルモン放出ペプチド、ソマトスタチン、テストステロン、プロゲステロン、エストラジオール、ニコチン、フェンタニール、ノルエチステロン、クロニジン、スコポラミン(scopolomine)、サリチレート、クロモリンナトリウム、サロメテロール、ホルメテロール(formeterol)、アルベテロール(albeterol)、およびバリウム(valium)を含む。
【0047】
診断的薬剤
任意の種々の診断的薬剤が粒子内に取り込まれ得、粒子は、動物の肺への投与後に、取り込まれた薬剤を局所的または全身的に送達し得る。診断的薬剤は、ガスおよび他の画像化薬剤を含む。
【0048】
ガス
任意の生体適合性または薬理学的に受容可能なガスが、粒子中に取り込まれ得るか、または粒子の孔にトラップされ得る。用語ガスは、ガスであるかまたは画像化が実施される温度にてガスを形成し得る、任意の化合物をいう。ガスは、単一の化合物(例えば、酸素、窒素、キセノン、アルゴン、窒素)または化合物の混合物(例えば、空気)からなり得る。フッ素化ガスの例としては、CF4、C2F6、C3F8、C4F8、SF6、C2F4、およびC3F6が挙げられる。
【0049】
他の画像化薬剤
利用され得る他の画像化薬剤は、ポジトロン放出断層撮影(PET)、コンピュータ補助断層撮影(CAT)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法、X線、蛍光透視、および磁気共鳴画像法(MRI)に使用される市販の薬剤を含む。
【0050】
MRIにおける造影薬剤としての使用に適切な材料の例としては、現在入手可能なゲータリニウム(gatalinium)キレート(例えば、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、およびゲートペントテートジメグルミン(gatopentotate dimeglumine)、ならびに鉄、マグネシウム、マンガン、銅、およびクロム)が挙げられる。
【0051】
CATおよびX線に有用な材料の例には、静脈内投与のためのヨウ素ベースの材料(例えば、イオン性モノマー(ジアトリゾエートおよびイオタラメートに代表される)、非イオン性モノマー(例えば、イオパミドール、イソヘキソール、およびイオベルソール(ioversol))、非イオン性ダイマー(例えば、イオトロール(iotrol)およびイオジキサノール(iodixanol))ならびにイオン性ダイマー(例えば、イオキサガレート(ioxagalte)))が挙げられる。
【0052】
これらの薬剤を取り込む粒子は、当該分野で利用可能な標準技術および市販の装置を使用して検出され得る。
【0053】
空気力学的に軽いポリマー粒子の形成
空気力学的に軽いポリマー粒子は、1回および2回の乳液の溶媒蒸発、スプレー乾燥、溶媒抽出、または当業者に周知の他の方法を使用して調製され得る。粒子は、例えば、当該分野で公知のマイクロスフェアまたはマイクロカプセルを作製するための方法を使用して作製され得る。
【0054】
マイクロスフェアを作製するための方法は文献に記載されており、例えば、MathiowitzおよびLanger, J. Controlled Release 5, 13-22(1987);Mathiowitzら, Reactive Polymers 6, 275-283(1987);およびMathiowitzら, J. Appl. Polymer Sci. 35, 755-774(1988)に記載されている。方法の選択は、例えば、Mathiowitzら, Scanning Microscopy 4, 329-340(1990);Mathiowitzら, J. Appl. Polymer Sci. 45, 125-134(1992);およびBenitaら, J. Pharm. Sci. 73, 1721-1724(1984)によって記載されるように、ポリマーの選択、サイズ、外部形態、および所望される結晶化度に依存する。
【0055】
例えば、Mathiowitzら(1990)、Benita、およびJaffeの米国特許第4,272,398号に記載される溶媒蒸発において、ポリマーは揮発性有機溶媒(塩化メチレン)中に溶解される。いくつかの異なるポリマー濃度(例えば、0.05〜0.20g/mlの間)が使用され得る。取り込まれるべき薬剤(可溶性形態であるか、または微粒子として分散される)は、必要に応じてポリマー溶液へと添加され、そして混合物は、界面活性剤(例えばポリ(ビニルアルコール))を含有する水相中に懸濁される。得られた乳液は、ほとんどの有機溶媒が蒸発するまで攪拌され、固体マイクロスフェアを残し、マイクロスフェアは水で洗浄され得、そして凍結乾燥機中で一晩乾燥され得る。
【0056】
異なるサイズ(代表的には1〜1000ミクロンの間)および形態を有するマイクロスフェアが、得られ得る。この方法は、相対的に安定なポリマー(例えば、ポリエステルおよびポリスチレン)に特に有用である。しかし、不安定なポリマー(例えば、ポリ酸無水物)は、水への曝露によって分解し得る。溶媒除去は、これらのポリマーからマイクロスフェアを調製するための好ましい方法であり得る。
【0057】
溶媒除去は、最初はポリ酸無水物での使用のために設計された。この方法において、治療的または診断的薬剤は、塩化メチレンのような揮発性有機溶媒中の選択されたポリマーの溶液中に分散または溶解され得る。次いで、混合物は、攪拌によって油(例えば、シリコン油)中に懸濁され、乳液を形成し得る。溶媒が油相中へと拡散するに連れて、乳液滴は固体ポリマーマイクロスフェアへと硬化する。溶媒蒸発とは異なり、この方法は、高融点および広範な分子量を有するポリマーからマイクロスフェアを作製するために使用され得る。1〜300ミクロンの間の直径を有するマイクロスフェアが、この手順を使用して得られ得る。
【0058】
粒子の標的化
標的化分子は、粒子上の反応性官能基を介して粒子に結合され得る。例えば、標的化分子は、官能化ポリエステルグラフトコポリマー粒子(例えば、PLAL-Lys粒子)のアミノ酸基に結合され得る。標的化分子によって、この粒子が特定のレセプター部位(例えば、肺内の部位)と結合相互作用することが可能になる。粒子は、特定の標的に特異的または非特異的に結合するリガンドに結合することによって標的化され得る。例示の標的化分子は、抗体またはそのフラグメント(可変領域を含む)、レクチン、および標的細胞の表面上のレセプターに特異的に結合し得るホルモンまたは他の有機分子を含む。
【0059】
投与
粒子は、単独または任意の適切な薬学的に受容可能なキャリア(例えば、液体(例えば、生理食塩水)または粉末)中で呼吸器系に投与され得る。1つの実施態様では、予防剤、治療剤または診断剤を取り込んだ粒子が、取り込まれた薬剤を含まない、より大きなキャリア粒子と共送達され得る。好ましくは、この大きな粒子は、約50〜100μmの間の質量平均直径を有する。
【0060】
エアロゾル投与、処方、および送達系が、例えば、Gonda I「Aerosols for delivery of therapeutic and diagnostic agents to the respiratory tract」、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 6:273-313, 1990;およびMoren, 「Aerosol dosage forms and formulations」Aerosols in Medicine. Principles, Diagnosis and Therapy, Morenら編、Elsevier, Amsterdam, 1985に記載のように、特定の治療適用のために選択され得る。
【0061】
比較的大きなサイズの空気力学的に軽い粒子によるエアロゾル適用のより大きな効率によって、同量の比較的密なエアロゾルで可能であるより多くの取り込まれた薬剤が送達可能になる。粒子サイズが比較的大きいことはまた、粒子の食作用によって引き起こされる薬物損失の可能性を最小とする。粒子が生体適合性ポリマーから形成されたとき、この系は、取り込まれた薬剤の肺内の制御放出ならびに長期の局所作用または全身性のバイオアベイラビリティを提供し得る。高分子薬物の変性は、エアロゾル適用の間、最小とされ得る。これは、高分子がポリマー性シェル内に含有され、そして保護されているからである。タンパク質またはペプチドの酵素分解は、ペプチダーゼインヒビターを共に取り込むことによって最小とされ得る。
【0062】
診断適用
粒子は、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせられ得、次いで、検出に有効な量が吸入によって患者に投与され得る。取り込まれたイメージング剤を含有する粒子は、種々の診断適用(腫瘍塊および腫瘍組織の検出および特徴付けを包含する)のために用いられ得る。
【0063】
本発明は、以下の限定されない例を参照することによってさらに理解される。
【実施例】
【0064】
実施例1:空気力学的に軽いポリ[(p-カルボキシフェノキシ)−ヘキサン無水物](「PCPH」)粒子の合成
空気力学的に軽いポリ[(p-カルボキシフェノキシ)−ヘキサン無水物](「PCPH」)粒子を以下のように合成した。100mg PCPH(MW約25,000)を3.0mL塩化メチレン中に溶解した。この透明な溶液に、塩化メチレンで飽和した5.0mLの1% w/v水性ポリビニルアルコール(PVA、MW約25,000、88モル%加水分解)を添加し、そしてこの混合物を1分間最大速度でボルテックスした(Vortex Genie 2,Fisher Scientific)。得られた乳白色の乳液を95mLの1%PVAの入ったビーカーに注ぎ、そして0.75インチのチップを用いて1分間6000rpmでホモジナイズした(Silverson Homogenizers)。ホモジナイズ後、混合物をマグネチックスターラーバーで撹拌し、そして2mLイソプロピルアルコールを添加することによって塩化メチレンをポリマー粒子から素早く抽出した。混合物を35分間撹拌して、微粒子を完全に硬化させた。硬化させた粒子を遠心分離によって採集し、二回蒸留水で数回洗浄した。粒子を凍結乾燥し、凝集塊の自由流動粉末空隙(free-flowing powder void)を得た。収率85〜90%。
【0065】
このバッチの平均直径は、6.0μmである。しかし、数百ナノメートルから数ミリメートルの範囲の平均直径を有する粒子がほんのわずかな改変によって作製され得る。代表的なバッチのPCPH粒子の走査電子顕微鏡写真は、この粒子が不規則な表面形状を伴う高度な多孔性であることを示した。粒子は、0.4g/cm未満のタップ密度を有した。
【0066】
実施例2:PLAL-LysおよびPLAL-Lys-Alaポリマー粒子およびコポリマー粒子の合成
空気力学的に軽いPLAL-Lys粒子
PLAL-Lys粒子を、0.5mlジメチルスルホキシド中に50mgのグラフトコポリマーを溶解し、次いで1.5mlジクロロメタンを滴下で添加することによって調製した。このポリマー溶液を、約7500rpmの速度でホモジナイザー(Silverson)を用いて、100mlの5% w/vポリビニルアルコール溶液(平均分子量25kDa、88%加水分解)中に乳化した。得られた分散液をマグネチックスターラーを用いて1時間撹拌した。この時間の後、pHを0.1N NaOH溶液の添加によって7.0〜7.2の間にした。ジクロロメタンが完全にエバポレートされ、そして粒子が硬化するまで、撹拌をさらに2時間続けた。次いで、この粒子を4000rpm(1600g)で10分間の遠心分離によって単離した(Sorvall RC-5B)。上清を捨て、そして各回4000rpmで10分間の遠心分離によって沈殿物を蒸留水で3回洗浄した。最後に、粒子を5mlの蒸留水中に再懸濁し、分散液を液体窒素中で凍結し、そして少なくとも48時間凍結乾燥した(Labconco freeze dryer 8)。粒子サイジングをCoulterカウンターを用いて行った。平均的粒子の平均直径は、100nmから14μmの間であり、これは、ホモジナイゼーションの速度および時間のような処理パラメーターに依存する。全ての粒子は、0.4g/cm未満のタップ密度を示した。粒子の走査電子顕微鏡写真は、これらが不規則な表面を伴う高度な多孔性であることを示した。
【0067】
空気力学的に軽いPLAL-Ala-Lys粒子
100mgのPLAL-Ala-Lys粒子を0.4mlトリフルオロエタノール中に完全に溶解し、次いで1.0ml塩化メチレンを滴下で添加した。このポリマー溶液を、40Wの出力で15秒間、ソニケーター(Sonic&Material VC-250)を用いて、100mlの1% w/vポリビニルアルコール溶液(平均分子量25kDa、88%加水分解)中に乳化した。2mlの1%PVA溶液を混合物に添加し、そしてこれを最高速度で30秒間ボルテックスした。混合物を100mlの0.3%PVA溶液を含むビーカーに素早く注ぎ、そして3時間撹拌して塩化メチレンをエバポレーションを可能にした。粒子の走査電子顕微鏡写真は、これらが高度に不規則な表面を有することを示した。
【0068】
空気力学的に軽いコポリマー粒子
PLAL-LysおよびPLGA-PEGのブレンドからなるポリマー性の空気学的に軽い粒子を作製した。50mgのPLGA-PEGポリマー(PEGの分子量:20KDa、PEG:PLGAの重量比1:2、ラクチド:グリコリド75:25)を、1mlジクロロメタン中に完全に溶解した。3mgのポリ(ラクチド-co-リジン)-ポリリジングラフトコポリマーを0.1mlジメチルスルホキシド中に溶解し、そして第1のポリマー溶液と混合した。0.2mlのTE緩衝液(pH 7.6)を、40Wの出力で10秒間、プローブソニケーション(Sonic&Material VO-250)によって、ポリマー溶液中に乳化した。この第1乳液に2mlの蒸留水を添加し、4000rpmで60秒間ボルテックスミキサーを用いて混合した。塩化メチレンが完全にエバポレートされ、そしてマイクロスフェアが形成されるまで、得られた分散液を3時間マグネチックスターラーを用いることによって撹拌した。次いで、このスフェアを5000rpmで30分間の遠心分離によって単離した。上清を捨て、沈殿物を蒸留水で3回洗浄し、そして5mlの水中に再懸濁した。分散液を液体窒素中で凍結させ、そして48時間凍結乾燥した。
【0069】
走査電子顕微鏡(SEM)によって、PLAL-Lys-PLGA-PEG粒子は、表面が高度に粗でかつ多孔性であった。粒子は7μmの平均粒子サイズを有した。PLAL-Lysとポリ(乳酸)(PLA)および/またはPLGA-PEGコポリマーとのブレンドが、粒子多孔性およびサイズを調整するために調整され得る。
【0070】
粒子のサイズ分布を変えるように操作され得る変因は、以下を含む:ポリマー濃度、ポリマー分子量、界面活性剤タイプ(例えば、PVA、PEGなど)、界面活性剤濃度、および混合強度。粒子の表面形状および多孔性を変えるように操作され得る変因は、以下を含む:ポリマー濃度、ポリマー分子量、イソプロピルアルコール(または別の混和性溶媒)による塩化メチレン抽出の速度、添加するイソプロピルアルコールの量、内部水相の含有、内部水相の量、内部水相中における塩または他の高度に水溶性の分子の含有(これらは、浸透圧によって硬化スフェアから漏洩し、それらの濃度に比例してチャネル(または孔)の形成を引き起こす)、ならびに界面活性剤のタイプおよび濃度。
【0071】
さらに、ホモジナイズの速度および時間のような処理パラメーターが調整され得る。これらの技術によって調製される場合、PLAL、PLA、およびPLGA-PEGのどれも単独では空気力学的に軽い構造物を形成しない。
【0072】
実施例3:スプレー乾燥粒子の合成
一般的溶媒に可溶性のポリマーおよび薬物を含有する空気力学的に軽い粒子
空気力学的に軽い50:50 PLGA粒子を、以下の手順に従って、粒子内にカプセル化されるテストステロンと共にスプレー乾燥することによって調製した。50:50のモル比を有する2.0gのポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA 50:50, Resomer RG503, B.I. Chemicals, Montvale, NJ)および0.50gのテストステロン(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)を、室温で、100mLのジクロロメタン中に完全に溶解した。この混合物を続いて、Buchi laboratory spray-drier(model 190, Buchi, Germany)を用いて、5mL/分の流速で0.5mmノズルを通してスプレー乾燥した。加圧気体の流速は、700nl/時であった。流入温度を30℃に設定し、そして流出温度を25℃に設定した。アスピレーターを−20〜−25バールの真空を達成するように設定した。収率は51%であり、そして平均粒子サイズは約5μmであった。粒子は、0.4g/cm以下のタップ密度によって決定されたように、空気力学的に軽かった。
【0073】
より大きなサイズの粒子が、流入加圧気体流速を低くすること、および他の変因を変えることによって達成され得る。多孔性および表面粗度は、他の要因の中でも流入および流出の温度を変動させることによって増大され得る。
【0074】
異なる溶媒中にポリマーおよび薬物を含有する空気力学的に軽い粒子
モデル親水性薬物(デキストラン)を有する空気力学的に軽いPLA粒子を、以下の手順を用いて、スプレー乾燥により調製した。2.0mLの水性の10% w/v FITC-デキストラン(MW 70,000, Sigma Chemical Co.)水溶液を、100mLのジクロロメタン中2% w/vのポリ(D,L-乳酸)(PLA, Resomer R206, B. I. Chemicals)溶液にプローブ超音波処理(Vibracell Sonicator, Branson)により乳化した。乳濁液を、続いて、700nl/時間の空気流速(入口温度=30℃、出口温度=21℃、−20mbar減圧)を伴って、5mL/分の流速でスプレー乾燥した。収量は、56%である。粒子は、空気力学的に軽かった(0.4 g/cm未満のタップ密度)。
【0075】
空気力学的に軽いタンパク質粒子
空気力学的に軽いリゾチーム粒子を、以下の手順を用いてスプレー乾燥により調製した。4.75gリゾチーム(Sigma)を、95mL二回蒸留水(5% w/v溶液)中に溶解し、そして0.5mmノズルおよびBuchi研究室スプレー乾燥機を用いてスプレー乾燥した。圧縮空気の流速は、725nl/時間であった。リゾチーム溶液の流速を、97〜100℃の設定入口温度で、出口温度が55〜57℃であるように設定した。アスピレーターを、−30mbarの減圧を達成するように設定した。リゾチームの酵素活性はこのプロセスにより影響されないことが見出され、そして空気力学的に軽い粒子(0.4 g/cm未満のタップ密度)の収量は66%であった。
【0076】
空気力学的に軽い高分子量水溶性粒子
空気力学的に軽いデキストラン粒子を、以下の手順を用いてスプレー乾燥により調製した。6.04g DEAEデキストラン(Sigma)を、242mL二回蒸留水に溶解(2.5% w/v溶液)し、そして0.5mmノズルおよびBuchi研究室スプレー乾燥機を用いてスプレー乾燥した。圧縮空気の流速は、750nl/時間であった。DEAE-デキストラン溶液の流速を、155℃の設定入口温度で、出口温度が80℃となるように設定した。アスピレーターを、−20mbarの減圧を達成するように設定した。空気力学的に軽い粒子(0.4 g/cm未満のタップ密度)の収量は66%であり、そしてサイズ範囲は1〜15μmの範囲であった。
【0077】
空気力学的に軽い低分子量水溶性粒子
空気力学的に軽いトレハロース粒子を、以下の手順を用いてスプレー乾燥により調製した。4.9g トレハロース(Sigma)を、192mL二回蒸留水に溶解(2.5% w/v溶液)し、そして0.5mmノズルおよびBuchi研究室スプレー乾燥機を用いてスプレー乾燥した。圧縮空気の流速は、650nl/時間であった。トレハロース溶液の流速を、100℃の設定入口温度で、出口温度が60℃となるように設定した。アスピレーターを、−30mbarの減圧を達成するように設定した。空気力学的に軽い粒子(0.4 g/cm未満のタップ密度)の収量は36%であり、そしてサイズ範囲は1〜15μmの範囲であった。
【0078】
空気力学的に軽い低分子量水溶性粒子
ポリエチレングリコール(PEG)は、水溶性高分子である。しかし、これは、水溶液からスプレー乾燥し得ない。なぜなら、これは、水をエバポレートするために必要とされるよりも低い、室温で溶解するからである。PEGを、低沸点有機溶媒であるジクロロメタンの溶液から低温でスプレー乾燥した。空気力学的に軽いPEG粒子を、以下の手順を用いてスプレー乾燥により調製した。5.0g PEG(MW 15,000〜20,000, Sigma)を、100mL二回蒸留水に溶解(5.0% w/v溶液)し、そして0.5mmノズルおよびBuchi研究室スプレー乾燥機を用いてスプレー乾燥した。圧縮空気の流速は、750nl/時間であった。PEG溶液の流速を、45℃の設定入口温度で、出口温度が34〜35℃となるように設定した。アスピレーターを、−22mbarの減圧を達成するように設定した。空気力学的に軽い粒子(0.4 g/cm未満のタップ密度)の収量は67%であり、そしてサイズ範囲は1〜15μmの範囲であった。
【0079】
実施例4:PLAL粒子およびPLAL-Lys粒子のローダミンイソチオシアネート標識
空気力学的に軽い粒子を、コントロール粒子(本明細書中では、「軽くない」粒子という)と比較した。同様の平均直径(6〜7μm)およびサイズ分布(3〜4μmの標準偏差)を有する、空気力学的に軽い(PLAL-Lys)粒子およびコントロールの軽くない(PLAL)粒子の表面上のリジンアミン基を、ローダミンイソチオシアネートを用いて標識した。多孔性PLAL-Lys粒子のタップ密度は0.1 g/cmであり、そしてより密度の高いPLAL粒子のタップ密度は0.8 g/cmであった。
【0080】
ローダミン標識粒子を、共焦点顕微鏡法により特徴付けた。固体粒子の表面上の制限された数のリジン官能性は、蛍光画像により証明されたように、ローダミンイソチオシアネートと反応し得た。空気力学的に軽い粒子において、グラフトコポリマーおよび多孔性粒子構造におけるより高いリジン含量は、より高いレベルのローダミン結合をもたらし、ローダミン結合は、多孔構造の間隙の至る所に散在する。これはまた、標的化分子が、肺の中の特定のレセプター部位との相互作用のために、粒子表面への適切な標的化剤の化学的結合を介して、空気力学的に軽い粒子と結合し得ることを実証する。
【0081】
実施例5:PLAL粒子およびPLAL-Lys粒子のエアロゾル化
空気力学的に軽い大きな粒子が、(口、咽頭、および吸入器)沈着を回避し得、そして同様のサイズの非多孔性粒子(本明細書中では、軽くないまたはコントロールの粒子という)よりもより効率的に気道および腺房に進入するか否かを決定するために、空気力学的に軽いPLAL-Lys粒子(平均直径6.3μm)およびコントロールの軽くないPLAL(平均直径6.9μm)粒子のエアロゾル化および沈着を、インビトロで、カスケードインパクター系を用いて比較した。
【0082】
20mgの空気力学的に軽いかまたは軽くない微粒子をゼラチンカプセル(Eli Lilly)中に入れ、このカプセルを、Spinhaler乾燥粉末吸入器(DPI)(Fisons)に充填し、そしてDPIを作動させた。粒子を、DPIからMark I Andersen Impactor(Andersen Samplers, GA)中に28.3 l/分の流速で、30秒間、エアロゾル化した。プレートをアセトン溶液(5% w/vol)中に浸漬し、そして続いて60℃のオーブン中で5分間アセトンをエバポレートすることにより、Andersen Impactorの各プレートをTween 80で予めコートした。エアロゾル化および沈着の後、粒子を、ポリマーを完全に分解するために各段階をNaOH溶液(0.2 N)でリンスすることにより、各段階のインパクター系から別々のメスフラスコ中に収集した。37℃にて12時間のインキュベーション後、各溶液の蛍光を測定した(554nmの励起波長、574nmの放出波長)。
【0083】
粒子を、これらが最初の3段階のインパクター上に沈着する場合、非呼吸可能(4.7μmを越える平均空気力学的直径:インパクター見積もり)であると決定し、そしてこれらが続く段階で沈着する場合、呼吸可能(平均空気力学的直径4.7μm以下)であると決定した。図1は、DPIから出る軽くない(PLAL)粒子の10%未満が呼吸可能であることを示す。これは、サイズの大きい微粒子およびそれらの標準的な質量密度と一致する。一方、2つの粒子の型の幾何学的寸法がほぼ同一である場合でさえ、55%を越える空気力学的に軽い(PLAL-Lys)粒子は、呼吸可能である。空気力学的に軽い(PLAL-Lys)微粒子のより低いタップ密度は、以下でさらに議論するように、この粒子浸透の改善の原因である。
【0084】
軽くない(PLAL)粒子はまた、DPIから非効率的にエアロゾル化する;代表的には、40%未満の軽くない粒子が、用いられるプロトコルのためのSpinhaler DPIを出た。空気力学的に軽い(PLAL-Lys)粒子は、ずっとより効率的なエアロゾル化を示した(空気力学的に軽い粒子のおよそ80%が、代表的にはエアロゾル化の間にDPIを出た)。
【0085】
効率的なエアロゾル化とエアロゾル化粒子質量の高い呼吸可能画分との組合せ効果は、軽くない粒子粉末の画分よりも、空気力学的に軽い粒子粉末のずっと大きな画分が、肺に沈着するようであることを意味する。
【0086】
実施例6:PLAL粒子およびPLAL-Lys粒子のインビボエアロゾル化
空気力学的に軽いおよび軽くないポリマーPLAL-LysおよびPLAL微粒子の肺への浸透を、生存ラットの気道中への微粒子のエアロゾル化を含むインビボ実験において評価した。
【0087】
雄性Spraque Dawleyラット(150〜200g)をケタミン(90mg/kg)/キシラジン(10mg/kg)を用いて麻酔した。麻酔したラットを、生理学的温度を維持するために温度制御パッドを提供しながら、手術台上に仰向けに配置した。動物に、Harvardベンチレーターに接続した気管内チューブを用いて、竜骨より上でカニューレ挿入した。動物を、300ml/分で20分間、強制的に通気した。50mgの空気力学的に軽い(PLAL-Lys)または軽くない(PLA)微粒子を、気管内チューブに導入した。
【0088】
強制的換気期間の後に、動物を安楽死させ、そして肺および気管を、気管支肺胞洗浄液を用いて別々に洗浄した。気管カニューレを挿入し、適所で結び、そして気道を10mlのHBSS水溶液で洗浄した。洗浄手順を、計30mlの容量が収集されるまで繰り返した。洗浄液(400g)を遠心分離し、そしてペレットを収集し、そしてCa2+およびMg2+を含まず、フェノールレッドを含まないHanks平衡塩溶液(Gibco, Grand Island, NY)(HBSS)2mlに再懸濁した。100mlを、血球計算板を用いる粒子計数のために取り出した。残りの溶液を、10mlの0.4N NaOHと混合した。37℃で12時間のインキュベーション後、各溶液の蛍光を測定した(554nmの励起波長、574nmの放出波長)。図2は、強制的換気の間の気管内エアロゾル化の後にラットの肺および上気道における気管および竜骨の後ろ(肺)内に沈着した総粒子質量を示している棒グラフである。PLAL-Lysの空気力学的に軽い粒子は、6.9μmの平均直径を有した。軽くないPLAL粒子は、6.7μmの平均直径を有した。気道での空気力学的に軽い粒子の沈着%は54.5であり、そして軽くない粒子の沈着は77.0であった。肺における空気力学的に軽い粒子の沈着%は46.8であり、そして軽くない粒子の沈着は23.0であった。
【0089】
軽くない(PLAL)粒子が主に気管に沈着した(気管に進入した総粒子質量の約79%)。この結果は、軽くない微粒子のインビトロ性能と同様であり、そして軽くない粒子の相対的に大きなサイズと一致した。空気力学的に軽い(PLAL−Lys)粒子質量の約54%が気管で沈着した。したがって、気管に進入する空気力学的に軽い粒子の質量の約半分が、気管を通って、ラット肺の気道および細葉へ縦走する。空気力学的に軽い粒子の肺への効果的な貫通が立証された。
【0090】
気管支肺胞洗浄後、ラット肺に残存する粒子を、個々の肺葉の注意深い切開により得た。この肺葉を、5mlのHBSSを含む別々のペトリ皿に置いた。各肺葉を60メッシュの網目に通して細く裂いて組織を分離し、次いで、綿ガーゼに通して濾過して組織残渣および結合組織を除去した。ペトリ皿およびガーゼを、さらなる15mlのHBSSで洗浄して微粒子の回収を最大にした。各組織標本を遠心分離し、そして2mlのHBSSに再懸濁し、そして粒子の数を血球計で計数した。気管支肺胞洗浄後に肺に残存する粒子数を図3に示す。肺葉番号は、1)左肺、2)前、3)内側、4)後、5)下大静脈に対応する。たとえ、2つのタイプの粒子の幾何学的大きさが基本的に同じであっても、軽くないPLAL粒子より、かなり多くの数の空気力学的に軽いPLAL−Lys粒子が、すべての肺葉に進入する。これらの結果は、空気力学的に軽い粒子のエアロゾル化の効率、および、この空気力学的に軽い粒子がカリーナすなわち第一分岐部の前での沈着を避ける性向の両方を反映する。
【0091】
実施例7:インスリンを含むPLGA多孔性および非多孔性粒子のインビボでのエアロゾル化
インスリンを、多孔性および非多孔性のポリマー粒子中にカプセル化して、大きなサイズの粒子が全身性バイオアベイラビリティーを増加させ得るかどうかを試験した。2つの粒子の密度および平均直径を、それらがそれぞれ、深肺での沈着に適切な空気力学的直径(約2μm)を有するように設計した。多孔性粒子の平均直径は>5μmであり、非多孔性粒子の平均直径は5μm未満である(図4〜6を参照)。同一質量の多孔性または非多孔性粒子を、吸入エアロゾルまたは皮下注射(コントロール)としてラットに投与した。
【0092】
以前に記載されたように、ラットを麻酔しそしてカニューレを挿入した。動物を、300ml/分にて10〜20分の間強制的換気した。2つのタイプのエアロゾルを、気管内チューブを介して動物に送達した。強制的換気の後、動物の頸部を縫合した。そして、動物は、1〜2時間以内に意識を回復した。血液サンプル(300μl)を、2〜6日間の間、周期的に、尾静脈から採取した。これらのサンプルをアッセイ緩衝液と混合し、遠心分離し、そして上清を、ラジオイムノアッセイ(ICN Pharmaceuticals, Costa Mesa, CA)を使用して、(内因性および外因性の)インスリンまたはテストステロンの存在について検査した。グルコースを、呈色アッセイ(Sigma)を使用して測定した。コントロール研究には、吸入されたのと同じ量の粉末の皮下注射が含まれた。粒子を首筋に注射した。
【0093】
血清インスリン濃度を、吸入または注射後の時間の関数としてモニターした。多孔性(図4)および非多孔性(図5)の両方の粒子について、血液のインスリンレベルは、吸入後最初の1時間以内に高値に達する。大きな多孔性粒子の場合においてのみ、血液のインスリンレベルは、4時間を超えて上昇したままであり(p<0.05)、比較的安定なインスリン放出が少なくとも96時間続く(0.04<p<0.2)。
【0094】
これらの結果は、血清グルコース値によって確認される。血清グルコース値は、図6に示されるように、多孔性インスリン粒子の吸入後最初の10時間には、グルコースレベルの低下を、続いて、96時間のうちの残りの時間には、比較的安定な低グルコースレベルを示す。小さな非多孔性インスリン粒子の場合、最初は抑制されたグルコース値が、24時間後に上昇する。
【0095】
PLGAポリマーからの高分子の同様な二相性放出プロフィールは、文献に報告されている(S.Cohenら、Pharm.Res. 8, 713(1991))。大きな多孔性粒子に関しては、皮下注射に対するインスリンのバイオアベイラビリティーは、87.5%であり、一方、小さな非多孔性粒子は、吸入後12%の相対的バイオアベイラビリティーを生じる。比較により、同様な気管内法を使用する吸入液体エアロゾルとしてラットに投与されたインスリンの(皮下注射に対する)バイオアベイラビリティーは、37.3%と報告されている(P.Colthorpeら、Pharm.Res. 9, 764(1992))。気管内チューブに接続された乾燥粉末吸入器を介して、ラクトース/インスリン粉末の形態でラット肺に吸入されたインスリンの絶対的バイオアベイラビリティーは、6.5%と報告されている(F.Komadaら、J.Pharm.Sci. 83, 863(1994))。
【0096】
インスリンの短い全身性半減期(11分)、ならびに12〜24時間の時間スケールの中心気道および上気道からの粒子クリアランスを仮定すれば、吸入の数日後に血流中に外因性インスリンが出現することは、大きな多孔性粒子が、深肺に投与された場合、長く、貪食されない寿命を達成することを示すようである。この仮説を試験するために、ラットの肺を、多孔性および非多孔性のインスリン粒子の吸入直後、および吸入の48時間後の両方で洗浄した。
【0097】
非多孔性粒子の場合、吸入直後に、貪食細胞の30%±3%が、粒子を含んでおり、そして吸入の48時間後には、39%±5%が粒子を含んでいた。対照的に、吸入直後には、わずかに貪食細胞の8%±2%が大きな多孔性粒子を含んでおり、そして吸入の48時間後には、12.5%±3.5%が粒子を含んでいた。小さな非多孔性粒子の場合、吸入の48時間後、貪食細胞集団の17.5%±1.5%が、3以上の粒子を含んでいた。これに対して、大きな非多孔性粒子の場合には4%±1%であった。小さな非多孔性粒子の場合、炎症性応答もまた上昇した。小さな非多孔性粒子の吸入の48時間後、好中球は、貪食細胞集団の34%±12%を示した。これに対して、大きな多孔性粒子の場合、8.5%±3.5%であった(吸入直後には、肺胞マクロファージは、貪食細胞の100%を示した)。これらの結果は、粒子直径が3μmを超えるにつれて、粒子の貪食作用は急激に減少することを示す、他のいたるところで見られるインビトロ実験データ(H.Kawaguchiら、Biomaterials 7, 61(1986);L.J.KrenisおよびB.Strauss、Proc.Soc.Exp.Med. 107, 748(1961);S.RudtおよびR.H.Muller、J.Contr.Rel. 22, 263(1992))を支持する。
【0098】
実施例8:テストステロンを含むPLGA多孔性粒子のインビボでのエアロゾル化
第二のモデル薬物テストステロンを、2つの異なる平均幾何学的直径(10.1μmおよび20.4μm)の多孔性粒子にカプセル化して、増大したバイオアベイラビリティーが、多孔性粒子のサイズの増大と相関するかどうかをさらに決定した。同一質量の粉末を、吸入エアロゾルまたは皮下注射(コントロール)としてラットに投与した。血清テストステロン濃度を、吸入または注射後の時間の関数としてモニターした(図7および8)。たとえ、テストステロンの全身性半減期が10〜20分の間であっても、血液のテストステロンレベルは、12時間〜24時間の間、バックグランドレベルを十分超えて維持する(p<0.05)。皮下注射に対するテストステロンのバイオアベイラビリティーは、20.4μm直径の粒子(図7)については177%、そして10.1μm直径の多孔性粒子(図8)については53%である。
【0099】
20.4μm粒子の平均直径が、非多孔性である従来の治療用粒子の平均直径(D.Ganderton、J.Biopharmaceutical Sciences 3, 101(1992))より約10倍大きいと仮定すれば、多孔性粒子のサイズの増大に伴うテストステロンのバイオアベイラビリティーの増大は、特に注目すべきである。吸入および皮下コントロールの両方について観察された、テストステロン放出の比較的短い時間スケールは、同様な分子量および親油性の治療用物質(ブピバカイン)をカプセル化する同様なサイズの50:50PLGA微粒子について他で報告された(P. Le Correら、Int.J.Pharm. 107, 41(1994))、数時間のインビトロでの放出時間スケールに近い。
【0100】
高多孔度を有する粒子を製造することによって、比較的大きな粒子(すなわち、より小さな非多孔性粒子と同じ空気力学的直径を有する粒子)は、肺に進入し得る。なぜなら、肺におけるエアロゾル沈着の位置を左右するのは、粒子質量であるからである。大きな、軽い粒子の増大したエアロゾル化効率は、気道への粒子の進入前の沈着喪失の可能性を低下させる。このことによって、吸入された薬物の全身性バイオアベイラビリティーが増大する。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、エアロゾル化後のカスケードインパクター(cascade impactor)の呼吸可能でない段階および呼吸可能段階で沈着した、空気力学的に軽い粒子と軽くないコントロール粒子との総粒子質量を比較するグラフである。
【図2】図2は、空気力学的に軽いポリ(乳酸-co-リジン-graft-リジン)(PLAL-Lys)粒子とコントロールの軽くないポリ(L-乳酸)(PLA)粒子との、強制的換気の間の気管内エアロゾル化後の、ラット肺および上気道において、気管内および気管分岐部(肺)で沈着した総粒子質量を比較するグラフである。
【図3】図3は、気管支肺胞洗浄後の、ラット肺での空気力学的に軽いPLAL-Lys粒子とコントロールPLA粒子との総粒子回収を比較するグラフである。
【図4】図4は、多孔性のPLGA粒子の吸入または皮下注射による投与後の、経時的(時)な血清インスリンレベル(ng/ml)を表すグラフである。
【図5】図5は、非多孔性のPLGA粒子の吸入または皮下注射による投与後の、経時的(時)な血清インスリンレベル(ng/ml)を表すグラフである。黒塗りのマルは、吸入による投与を表す。黒塗りの三角は、皮下注射での投与を表す。白抜きのダイアモンドは、未処置のコントロールを表す。
【図6】図6は、多孔性のPLGA粒子の吸入による投与後の、血清グルコース濃度(mg/dl)を表すグラフである。黒塗りのマルは、吸入による投与を表す。黒塗りの三角は、未処置のコントロールを表す。
【図7】図7は、直径20.4μmを有する多孔性のPLGA粒子の吸入または皮下注射による投与後の、経時的(時)な血清テストステロンレベル(ng/ml)を表すグラフである。黒塗りのマルは、吸入による投与を表す。黒塗りの三角は、皮下注射による投与を表す。
【図8】図8は、直径10.1μmを有する多孔性のPLGA粒子の吸入または皮下注射による投与後の、経時的(時)な血清テストステロンレベル(ng/ml)を表すグラフである。黒塗りのマルは、吸入による投与を表す。黒塗りの三角は、皮下注射による投与を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タップ密度が0.4g/cm3未満の生分解性粒子を含む肺系への送達のための粒子系であって、ここで少なくとも50%の該粒子が、5μmと30μmとの間の質量平均直径を有する、系。
【請求項2】
前記粒子の少なくとも90%が、5μmと30μmとの間の質量平均直径を有する、請求項1に記載の系。
【請求項3】
前記粒子の少なくとも50%が、5μmと15μmとの間の質量平均直径を有する、請求項2に記載の系。
【請求項4】
肺への投与のための薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項1に記載の系。
【請求項5】
前記粒子が、以下:
そこに取り込まれた少なくとも1つのアミノ酸基を有する直鎖状αヒドロキシ酸ポリエステル骨格;および
該ポリエステル骨格のアミノ酸基から伸びている少なくとも1つのポリ(アミノ酸)側鎖
を含む官能化ポリエステルグラフトコポリマーを含む、請求項1に記載の系。
【請求項6】
前記ポリエステルが、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、および吉草酸、ならびにこれらのコポリマーからなる群より選択されるαヒドロキシ酸のポリマーである、請求項5に記載の系。
【請求項7】
前記直鎖状αヒドロキシ酸ポリエステル骨格が、そこに取り込まれた少なくとも1つのリジン基を有するポリ(乳酸)ポリマーを含む、請求項5に記載の系であって、そして
ここで、該ポリ(アミノ酸)が、該ポリエステル骨格の少なくとも1つのリジン基から伸びている、系。
【請求項8】
前記ポリ(アミノ酸)が、アスパラギン酸、リジン、およびアラニン、ならびにこれらのコポリマーからなる群より選択されるアミノ酸のポリマーである、請求項7に記載の系。
【請求項9】
前記ポリマーが、ポリ(乳酸-co-リジン-graft-リジン)およびポリ(乳酸-co-リジン-graft-アラニン-リジン)からなる群より選択される、請求項7に記載の系。
【請求項10】
前記粒子が、ポリエステルと前記官能化ポリエステルグラフトコポリマーのブレンドとを含む、請求項5に記載の系。
【請求項11】
前記粒子が、ポリ(乳酸-co-リジン-graft-リジン)とポリ(乳酸-co-グリコール酸-block-エチレンオキシド)とのブレンドを含む、請求項10に記載の系。
【請求項12】
前記ポリ(アミノ酸)側鎖が、約10〜100の間のアミノ酸を含む、請求項5に記載の系。
【請求項13】
前記ポリマーが、約7〜70%の間のアミノ酸含量を有する、請求項5に記載の系。
【請求項14】
前記粒子が、治療的または診断的薬剤を取り込んでいる、請求項1に記載の系。
【請求項15】
前記薬剤が、タンパク質、多糖類、脂質、核酸分子、合成有機または無機分子、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項14に記載の系。
【請求項16】
標的分子が前記粒子に結合している、請求項1に記載の系。
【請求項17】
大きな生分解性キャリア粒子と組み合わされた請求項1に記載の系であって、該系は、治療薬を含まず、該粒子の質量平均直径が50μm〜100μmの範囲である、系。
【請求項18】
粒子を肺系に送達するための方法であって、該方法は:
生分解性の空気力学的に軽い粒子の有効量を、患者の気道に投与する工程
を包含し、
ここで、該空気力学的に軽い粒子は、約0.4g/cm3未満のタップ密度を有し、そしてここで、少なくとも50%の該粒子が、5μmと30μmとの間の質量平均直径を有する、方法。
【請求項19】
前記投与された粒子の少なくとも90%が、5μmと30μmとの間の質量平均直径を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記投与された粒子の少なくとも50%が、5μmと15μmとの間の質量平均直径を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子が、以下:
そこに取り込まれた少なくとも1つのアミノ酸基を有する直鎖状αヒドロキシ酸ポリエステル骨格;および
該ポリエステル骨格のアミノ酸基から伸びている少なくとも1つのポリ(アミノ酸)側鎖
を含む官能化ポリエステルグラフトコポリマーを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリエステルが、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、および吉草酸、ならびにこれらのコポリマーからなる群より選択されるαヒドロキシ酸のポリマーである、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記直鎖状αヒドロキシ酸ポリエステル骨格が、そこに取り込まれた少なくとも1つのリジン基を有するポリ(乳酸)ポリマーを含む、請求項18に記載の方法であって、そして
ここで、該ポリ(アミノ酸)が、該ポリエステル骨格の少なくとも1つのリジン基から伸びている、方法。
【請求項24】
前記ポリマーが、ポリ(乳酸-co-リジン-graft-リジン)およびポリ(乳酸-co-リジン-graft-アラニン-リジン)からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記粒子が、ポリエステルと前記官能化ポリエステルグラフトコポリマーとのブレンドを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記粒子が、ポリ(乳酸-co-リジン-graft-リジン)とポリ(乳酸-co-グリコール酸-block-エチレンオキシド)とのブレンドを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記粒子が、有効量の治療的または診断的薬剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記治療的薬剤が、タンパク質、多糖類、脂質、核酸分子、およびこれらの組合せからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
肺の肺胞ゾーンへの送達のための請求項18に記載の方法であって、ここで前記粒子の少なくとも90%が、約9μmと約11μmとの間の平均直径を有する、方法。
【請求項30】
前記粒子が、気道への投与のための薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
エアロゾル化による気道への投与のための請求項1に記載の空気力学的に軽い粒子を作製するための方法であって、該方法は、
そこに取り込まれた少なくとも1つのアミノ酸基を有する直鎖状αヒドロキシ酸ポリエステル骨格;および
該ポリエステル骨格のアミノ酸基から伸びている少なくとも1つのポリ(アミノ酸)側鎖
を含む官能化ポリエステルグラフトコポリマーから該粒子を形成する工程を包含する、方法。
【請求項32】
前記空気力学的に軽い粒子が、溶媒蒸発プロセスによって作製される、請求項31に記載の方法。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的、予防的または診断的薬剤および界面活性剤を取り込んでいる生分解性粒子を含む肺系への薬物送達のための粒子組成物であって、ここで該粒子が、0.4g/cm未満の包膜質量密度および5μmと30μmとの間の質量平均直径を有する、組成物
【請求項2】
前記粒子の少なくとも50%が、5μmと30μmとの間の質量平均直径および0.4g/cm未満の包膜質量密度を有する、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
肺への投与のための薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項1または2に記載の組成物
【請求項4】
前記粒子が賦形剤または脂肪酸を含む、請求項1〜3いずれか記載の組成物
【請求項5】
前記粒子が不規則な表面構造を有する、請求項1〜4いずれか記載の組成物
【請求項6】
前記治療的薬剤が、タンパク質、多糖類、脂質、核酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜4いずれか記載の組成物
【請求項7】
前記治療的薬剤が、治療的、予防的または診断的活性を有する核酸分子である、請求項1〜6いずれか記載の組成物
【請求項8】
前記治療的薬剤が、インスリン、カルシトニン、ロイプロリド、およびアルブテロールからなる群より選択される、請求項1〜7いずれか記載の組成物
【請求項9】
治療的、予防的または診断的薬剤を深肺へ送達するためのスプレー乾燥した生分解性粒子を含む乾燥組成物であって、ここで該粒子が、0.4g/cm未満のタップ密度および5μmと30μmとの間の質量平均直径を有する、組成物
【請求項10】
前記粒子が薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む、請求項9に記載の組成物
【請求項11】
薬学的に受容可能な賦形剤が、有機化合物、無機化合物、界面活性剤、ポリマー、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項9または10に記載の組成物
【請求項12】
前記薬剤が、タンパク質、ペプチド、多糖類、脂質、核酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9〜11いずれか記載の組成物
【請求項13】
前記薬剤がインスリンである、請求項9〜12いずれか記載の組成物


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−160767(P2006−160767A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64155(P2006−64155)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【分割の表示】特願平9−542820の分割
【原出願日】平成9年5月23日(1997.5.23)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (233)
【出願人】(503202918)ザ ペン ステイト リサーチ ファウンデイション (1)
【氏名又は名称原語表記】THE PENN STATE RESEARCH FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】113 TECHNOLOGY CENTER,200 INNOVATION BOULEVARD,UNIVERSITY,PARK,PA 16802−7000 USA
【Fターム(参考)】