説明

肺水腫の治療としての肺への電界の印加

肺水腫を軽減するために患者の肺に電界を印加するシステムおよび方法。前記システムは第1電極および第2電極を備え、それらの電極の少なくとも一方は肺に関連付けられている。電界は肺内の流体のレベルを調節すべく制御され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2009年5月7日出願の米国仮特許出願番号第61/176,199号に対して優先権の便益を主張する。前記出願は参照により本願に援用される。
【背景技術】
【0002】
肺水腫は、鬱血性心不全(congestive heart failure(CHF))、並びに他の心臓、肺および腎臓の疾患に罹患している患者における体液過剰の兆候である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願は、とりわけ、肺水腫を緩和するために患者の肺に電界を印加するシステムおよび方法について記載する。前記システムは第1電極および第2電極を備え、それらの電極の少なくとも一方は肺に関連付けられている。前記電界は肺内の流体のレベルを調節するように制御され得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施例1はシステムについて記載している。この実施例において、前記システムは、第1電極および第2電極に接続されるように構成された電界発生器回路であって、第1電極または第2電極の少なくとも一方は対象者の肺に関連付けられるように構成されており、前記電界発生器回路は肺内の流体のレベルを調節することができる電界を、肺への印加のために発生させるように構成されている、電界発生器回路と、前記電界発生器回路に接続され、かつ肺内の流体のレベルを調節すべく、前記肺における電界を制御するように構成されている制御装置とを備える。
【0005】
実施例2において、実施例1のシステムは、任意で、第1電極および第2電極の少なくとも一方を備える。前記第1電極および第2電極の少なくとも一方は、肺内の流体のレベルを調節することができる電界を肺への印加のために提供するために用いられるように構成されており、かつ、肺、心臓、胸静脈、胸動脈または胸部リンパ節の少なくとも1つに、またはその付近に位置するように構成されている。
【0006】
実施例3において、実施例1〜2の1つ以上のシステムは、任意で、肺からの流体の除去を制御可能に実施すべく、前記電界を制御するように構成された制御装置を備える。
実施例4において、実施例1〜3の1つ以上のシステムは、任意で、肺胞のNa,K−ATPアーゼ活性の調節により、肺内の流体のレベルを調節すべく、電界を制御するように構成された制御装置を備える。
【0007】
実施例5において、実施例1〜4の1つ以上のシステムは、任意で、約5マイクロボルト/cm〜約50ミリボルト/cmの電界強度を有する交流電界を発生させるように構成された電界発生器回路を備える。
【0008】
実施例6において、実施例1〜5の1つ以上のシステムは、任意で、約1.0MHzの周波数でパルスを発生させるように構成された電界発生器回路を備える。
実施例7において、実施例1〜6の1つ以上のシステムは、任意で、固有心臓信号を感知するように構成された心臓信号感知回路を備える。前記制御装置は、前記感知回路に接続されており、かつ絶対心臓不応期を判定するように構成されている。前記制御装置は、実質的に絶対心臓不応期の間のみにパルスを与えるように電界発生器回路を制御するように構成されている。
【0009】
実施例8において、実施例1〜7の1つ以上のシステムは、任意で、肺内の流体のレベルを観測するように構成された流体観測回路を備える。前記制御装置は、肺内の流体のレベルを制御するために、観測した肺内の流体のレベルについての情報を用いて電界を制御するように構成されている。
【0010】
実施例9において、実施例1〜8の1つ以上のシステムは、任意で、肺内の流体のレベルを制御するために、前記電界に関連する大きさ、パルス幅、周波数、持続時間、デューティサイクルまたは波形形態のうちの少なくとも1つを制御するように構成された制御装置を備える。
【0011】
実施例10において、実施例1〜9の1つ以上のシステムは、任意で、少なくとも1つの植え込み型センサーからの情報を用いて、前記肺における電界を制御するように構成された制御装置を備える。前記植え込み型センサーは、植え込み型心音センサー、植え込み型インピーダンスセンサー、植え込み型身体活動センサー、植え込み型呼吸センサー、植え込み型血圧センサー、植え込み型心電図センサー、植え込み型酸素飽和度センサー、植え込み型血流センサー、または植え込み型温度センサーのうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
実施例11はシステムについて記載している。この実施例において、前記システムは、第1電極および第2電極に接続されるように構成された電界発生器回路であって、前記第1電極または第2電極の少なくとも一方は対象者の肺に関連付けられるように構成されており、前記電界発生器回路は肺内の流体のレベルを調節することができる電界を、肺への印加のために発生させるように構成されている、電界発生器回路と、前記電界発生器回路に接続され、かつ肺内の流体のレベルを調節すべく、前記肺における電界を制御するように構成されている制御装置と、肺内の流体のレベルを観測するように構成された流体観測回路とを備え、前記制御装置は、肺内の流体のレベルを制御するために、観測した肺内の流体のレベルについての情報を用いて電界を制御するように構成されている。
【0013】
実施例12において、実施例11のシステムは、任意で、第1電極および第2電極の少なくとも一方を備える。前記第1および第2電極の少なくとも一方は、肺、心臓、胸静脈、胸動脈または胸部リンパ節の少なくとも1つに、またはその付近に電界を提供するように構成されている。前記制御装置は、肺胞のNa,K−ATPアーゼ活性の調節により、肺からの流体の除去を制御可能に実施すべく、電界を制御するように構成されている。前記電界発生器回路は約5マイクロボルト/cm〜約50ミリボルト/cmの電界強度と、約1.0MHzの周波数とを有する交流電界を発生させるように構成されている。前記制御装置は、固有心臓信号を感知するように構成された心臓信号検出回路に接続されている。前記制御装置は絶対心臓不応期を判定するように構成されている。前記制御装置は、実質的に絶対心臓不応期の間のみにパルスを与えるように電界発生器回路を制御するように構成されている。前記制御装置は、肺内の流体のレベルを制御するために、前記電界に関連する大きさ、パルス幅、周波数、持続時間、デューティサイクルまたは波形形態のうちの少なくとも1つを制御するように構成されている。前記制御装置は、少なくとも1つの植え込み型センサーからの情報を用いて、肺内における電界を制御するように構成されている。前記植え込み型センサーは、植え込み型心音センサー、植え込み型インピーダンスセンサー、植え込み型身体活動センサー、植え込み型呼吸センサー、植え込み型血圧センサー、植え込み型心電図センサー、植え込み型酸素飽和度センサー、植え込み型血流センサー、または植え込み型温度センサーのうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
実施例13は方法について記載している。この実施例において、前記方法は、第1電極および第2電極を用いて対象者に電界を印加することと、第1電極または第2電極の少なくとも一方は対象者の肺に関連付けられるように構成されていることと、肺内の流体のレ
ベルを調節することができる電界を、肺への印加のために発生させることと、前記電界を肺内の流体のレベルを調節するように制御することとを含む。
【0015】
実施例14において、実施例13の方法は、任意で、肺、心臓、胸静脈、胸動脈または胸部リンパ節の少なくとも1つにおいて、またはその付近において第1電極および第2電極を用いることを含む。
【0016】
実施例15において、実施例13〜14のうちの1つ以上の方法は、任意で、肺からの流体の除去を制御可能に実施すべく、肺胞のNa,K−ATPアーゼ活性を調節することを含む。
【0017】
実施例16において、実施例13〜15の1つ以上のシステムは、任意で、約5マイクロボルト/cm〜約50ミリボルト/cmの電界強度を有する交流電界を提供することを含む。
【0018】
実施例17において、実施例13〜16の1つ以上の方法は、任意で、約1.0MHzの周波数でパルスを提供することを含む。
実施例18において、実施例13〜17の1つ以上の方法は、任意で、固有心臓信号を感知することと、絶対心臓不応期を判定することと、実質的に絶対心臓不応期の間のみに電気パルスを与えることとを含む。
【0019】
実施例19において、実施例13〜18の1つ以上の方法は、任意で、肺内の流体のレベルを観測することを含み、前記電界を制御することは、肺内の流体のレベルを制御するために、観測した肺内の流体のレベルについての情報を用いて電界を制御することを含む。
【0020】
実施例20において、実施例13〜19の1つ以上の方法は、任意で、肺内の流体のレベルを制御するために、前記電界に関連する大きさ、パルス幅、周波数、持続時間、デューティサイクルまたは波形形態のうちの少なくとも1つを制御することを含む。
【0021】
実施例21において、実施例13〜20の1つ以上の方法は、任意で、少なくとも1つの植え込み型センサーからの情報を用いることを含み、前記植え込み型センサーは、植え込み型心音センサー、植え込み型インピーダンスセンサー、植え込み型活動センサー、植え込み型呼吸センサー、植え込み型血圧センサー、植え込み型心電図センサー、植え込み型酸素飽和度センサー、植え込み型血流センサー、または植え込み型温度センサーを含む。
【0022】
本概要は、本特許出願の主題の概要を提供するものである。本概要は、本発明の排他的または網羅的な説明を提供するものではない。詳細な説明は本特許出願についてのさらに詳細な情報を提供するために含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】肺胞の例を大まかに示す図。
【図2】I型肺胞細胞のより詳細な例を大まかに示す図。
【図3】心臓に延びるリードワイヤーを備えた心臓機能管理装置を備えた植込み型医療装置の例の図。
【図4】様々な電極への接続の概略図と共に、植込み型医療装置の各部分の例を示すブロック図。
【図5】信号プロセッサーの各部分の例を大まかに示すブロック図。
【図6】インピーダンスから導き出される肺流体状態信号を測定するため、および関心胸部領域に電界治療を提供するための、様々な電極構成の例を大まかに示す図。
【図7】肺内の流体のレベルを調節するために肺に電界を印加する方法の例を大まかに示すチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本文書は、とりわけ、肺内における流体レベルの調節によって肺水腫を軽減するために、患者の肺に電界を印加することについて記載する。
図1は肺胞100の例を大まかに示す図である。肺胞は、血液と空気との間で酸素および二酸化炭素の交換が行なわれる肺内部の小さな空気嚢である。肺胞は、肺内の各細気管支102の最遠端において房を成して見られる。肺胞上皮104と呼ばれる肺胞の壁は細胞1個の厚さである。各肺胞を包囲しているのは、静脈血114を運ぶ毛細管110の網状組織である。肺胞気腔(alveolar air space)内の吸入酸素は、肺胞上皮104を介して、間質112を通って、毛細管110中を循環する血液114中へと拡散する。同様に、血液114中の二酸化炭素は肺胞へと拡散し、最終的に吐き出される。
【0025】
肺胞上皮104は、2つの主な細胞タイプ、すなわちI型106とII型108とからなる。すべての肺胞の上皮細胞の約95%を占める肺胞のI型上皮細胞106は、肺胞気から血液への拡散距離を最小限にすることにより、ガス交換を容易にする。肺胞の上皮細胞の残りの5%を占めるII型細胞108は、界面活性物質を分泌し、肺胞上皮を維持し、増殖およびI型細胞106への分化により損傷から回復する能力を有している。
【0026】
図2はI型肺胞細胞106のより詳細な例を大まかに示す図である。I型セル106は頂端膜領域(apical membrane domain)103と側底膜領域(basolateral membrane domain)105とを含む。頂端領域103は短い微絨毛(図示せず)を有しており、かつイオン
輸送のための様々な経路、主に、頂端側ナトリウムイオンチャネル(apical sodium ion channels)201を備えるのに対し、側底領域105はNa,K−ATPアーゼポンプ
202が豊富である。Na,K−ATPアーゼ202、すなわち細胞膜を介したイオ
ン勾配の確立に関与する膜酵素は、各ATPスプリットについて、3つのナトリウムイオンの内から外へ、2つのカリウムイオンの外から内への共役輸送を触媒する。
【0027】
ここで、図1および図2を参照すると、体液過剰(CHF患者におけるような)は、肺毛細管110の循環を通じて静水圧勾配および膠質浸透圧勾配に変化を生じさせて、肺水腫をもたらす。肺水腫は、肺胞気腔内に存在する流体によって特徴付けられ、これはガス交換を害し、生命を脅かし得る。肺水腫に応答して、肺胞上皮104の細胞は再吸収によって流体を除去する。肺胞細胞の側底側Na,K−ATPアーゼ202を介した能動
的ナトリウム輸送は、その後に浸透勾配によってもたらされる肺胞腔からの水の移動が続き、肺胞気腔を浮腫まないように維持する主な防衛機構として機能する。このように、肺胞気腔内部の水は、間質112へ、最終的には肺毛細管110内を循環する血液114へと移動し、それにより肺水腫を軽減する。慢性CHFの患者においては、肺胞腔を浮腫まないように維持するために、肺胞上皮104におけるNa,K−ATPアーゼ202活性が亢進(upregulated)され得る。(例えばホッホバーグ(Hochberg)ら、 Patterns of alveolar fluid clearance in heart failure、 International Journal of Cardiology 2008参照)。
【0028】
図3は、心臓機能管理システム300の例を示す。この例において、システム300は、とりわけ、心臓機能管理装置(cardiac function management device(「CFM」))305と、装置305と心臓302のような生体の一部との間で信号を通信するためのリードワイヤー(「リード」)310とを備え得る。装置305の例としては、徐脈および抗頻脈ペースメーカー、カルディオバータ(cardioverters)、除細動器(defibrillators)、
複合ペースメーカー/除細動器、神経調節装置、薬物送達装置、または心臓血管機能を観
測することができるか、または心臓302のなどのための心血管治療を提供することができる他の心調律管理装置が挙げられ得る。システム300はまた、例えば、装置305と通信することができるローカルまたはリモートプログラマーのような付加的な構成要素を備えることもできる。
【0029】
一例において、システム300は、ヒト患者の胸部または他の場所などにおいて、生体内に植え込み可能であってもよい。一例において、システム300の1つ以上の部分(例えば装置305)はヒト患者の外部に配置することができる。例示した例では、リード310の部分は右心室に配置されているが、リード310の他の配置を用いることもできる。例えば、リード310は、右心房、上大静脈、冠状静脈洞、または大心静脈、左心房もしくは左心室、心外膜に、または他の箇所に関連する位置に配置され得る。一例において、リード310は市販の単極または双極ペーシングリードを備え得る。システム300はまた、リード310に加えて、またはその代わりに、心臓302もしくはその周りに、または他の場所などに適切に配置されるような1つ以上の他のリードまたは電極(例えば、リード付き、またはリードなし)も備え得る。リードなしの電気刺激電極の一例は、ヘースティングズ(Hastings)らの「CARDIAC STIMULATION USING LEADLESS ELECTRODE ASSEMBLIES」と題された米国特許公開公報第2009/0018599号に記載されている。前
記特許文献の全開示は、参照により余すところなく本願に援用される。
【0030】
一例において、システム300は、流体の状態を示す胸部インピーダンスの感知用などの少なくとも4つの電極を備えることができる。4つの電極を用いたインピーダンス感知の例は、ハウク(Hauck)らの「DUAL INDIFFERENT ELECTRODE PACEMAKER」と題された、本
特許出願の譲受人に譲渡された米国特許第5,284,136号に記載されている。前記開示は、参照により、そのインピーダンス感知システムの記載を含むその全容が本願に援用される。本システムおよび方法はまた、異なる数の電極(例えば2つまたは3つの電極、または4つを超える電極)を用いることも包含し得る。一例において、多導体リード310の第1導体は、チップ電極320(例えば、心臓302の右心室心尖部に配置)のような第1電極を装置305に電気的に接続することができる。多重導体リード310の第2導体は、独立して、リング電極325のような第2電極を装置305に電気的に接続することができる。
【0031】
一例において、装置305はチタンのような導電性金属から形成された密閉されたハウジング330を備え得る。ハウジング330(「ケース」または「カン(缶)」とも称される)は、「ケース」または「カン」電極335と称される第3電極を形成する窓部を除いて、その全表面上をシリコーンゴムのような適当な絶縁体によって実質的に被覆され得る。一例において、リード310を受容するなどのためのヘッダー340がハウジング330に取り付けられ得る。ヘッダー340は、成型プラスチックのような絶縁材料から形成され得る。ヘッダー340はまた、リード310を受容し、リード310の導体を装置305に電気的に結合するなどのための、少なくとも1つのレセプタクルを備えることもできる。ヘッダー340はまた、不関電極345と称され得る第4電極も備えることができる。
【0032】
図4は、様々な電極への接続の概略図と共に、装置305の各部分を大まかに示している。装置305は、エキサイター(exciter)450のような電気刺激供給源を備え得る。
エキサイター450は、電流パルスまたは他の測定刺激(measurement stimuli)のストロ
ボシーケンス(strobed sequence)のような電気的興奮信号を(例えば、リング電極325とチップ電極320との間において、または電流パルスを与えるのに適した任意の他の電極配置を用いて)心臓302に与えることができる。エキサイター450は制御装置465から1つ以上のクロック信号または他の制御信号を受信するように構成され得る。エキサイター450によって提供される興奮信号に応答して、応答信号が信号プロセッサー4
55によって(例えばチップ電極320と不関電極345との間、または任意の他の適当な電極配置の間において)感知され得る。一例において、信号プロセッサー355によって感知される応答信号は、経胸的(例えば胸または胸部の一部を介した)インピーダンスを表わす電圧であり得る。
【0033】
経胸的インピーダンスを測定するためのアプローチの一例は、スターマン(Stahmann)らの「THORACIC IMPEDANCE DETECTION WITH BLOOD RESISTIVITY COMPENSATION」と題された米国特許第7,387,610号に記載されている。前記特許文献は本願の譲受人に譲渡されており、前記特許文献の開示は、参照により、経胸的インピーダンスを測定する本願のためような、インピーダンスを測定するためのアプローチのその記載を含むその全容が本願に援用される。
【0034】
一例において、経胸的(胸または胸部を介した)インピーダンスの測定により、インピーダンスから導き出される(以下、「インピーダンス導出」と記載)流体状態信号を得ることができる。例えば、経胸的インピーダンスを測定して、肺水腫に関連する肺の流体状態の流体状態指標を得ることができる。例えば、流体状態指標は、エキサイター450、信号プロセッサー455、電極320,325を含む流体状態観測回路によって観測され得る。
【0035】
制御装置465は、電界発生器回路470によって提供される治療を制御するために、流体状態指標についての情報を用いるように構成され得る。一例において、制御装置465は、肺胞Na,K−ATPアーゼ活性の調節により肺内の流体のレベルを調節すべく、電界発生器回路470によって提供される電界を制御するように構成され得る。例えば、5マイクロボルト/cm〜50ミリボルト/cmの電界強度および1.0MHzの周波数を備えた交流電界の印加は、ヒト赤血球中のNa,K−ATPアーゼのNaポンプモード(pumping mode)を活性化させることができる。肺胞細胞に同様の電界を印加することによって、Na,K−ATPアーゼの活性化されたNaポンプモードは、(図1および図2に関して上述したように)肺胞気腔からのナトリウムおよび水の輸送を増大させることができ、それにより肺水腫の程度を軽減する。肺内の流体状態についての情報を用いることに加えて、制御装置回路465はまた、電界発生器回路470によって提供される電界を制御するために、他の植え込みセンサーからの情報を用いることもできる。これらの付加的なセンサーの例としては、心音センサー、インピーダンスセンサー、身体活動センサー、呼吸センサー、血圧センサー、心電図センサー、酸素飽和度センサー、血流センサーおよび温度センサーが挙げられる。
【0036】
図4に示した例では、電界発生器回路470は心臓機能管理装置305内に含まれている。別の例では、電界発生器回路470は別個の植え込み装置または外部装置の一部であり得る。電界発生器回路470が別個の装置の一部である場合、装置305はその別個の装置と通信することができる。これは、人体内または人体上の2つの装置間における直接通信を含み得る。そのような通信は、実例として、誘導結合、超音波通信、または導電体として身体組織を用いることなどによって、人体内において行われ得る。これに加えて、またはこれに代わって、通信を行うための媒介手段としてローカルまたはリモート外部装置を用いることなどによる、2つの植込み装置の間、または植込み装置と外部装置との間における中継通信(indirect communication)を含むことができる。実例としては、ボストン サイエンティフィック コーポレイション(Boston Scientific Corp.)(カルディア
ック ペースメーカーズ インコーポレイテッド(Cardiac Pacemakers, Inc.))ラチチュード(LATITUDE)(登録商標)システムを用いることなどによる、植込み装置305と、別個に植え込まれた装置内に位置する治療回路との間における通信が挙げられる。前記システムは対象者の植え込み医療装置305から情報を自動的に収集し、その情報を、ローカル外部インタフェース490などを介して、対象者の植え込み装置または携帯型個人用医
療装置(ambulatory personal medical device)のうちの別のものに通信することができる。前記ローカル外部インタフェース490は、通信網494を介して安全なリモートコンピューター492に通信可能に接続され得る。
【0037】
図4はまたセンス増幅器475の例を示している。センス増幅器475のうちの1つ以上は、以下で検討するように、電界発生器回路470からの電気パルスの送達を心周期の絶対不応期と同期させるなどのために、対象者内の電気的心臓活性を観測するために用いられ得る。さらに、図4は、リモート通信トランシーバー485を示している。前記リモート通信トランシーバー485は、制御装置465から情報(例えば第1および第2流体状態指標についての情報、または治療の制御についての情報)を受信し、その情報を、一方向または双方向無線通信リンクを介して外部ローカルインターフェース490などと、通信するように構成され得る。特定の例において、外部ローカルインターフェース490は、さらに、無線で、またはさもなければ共有通信(shared communication )またはコン
ピューターネットワーク494などを通じて、外部リモートインターフェース492と一方向通信または双方向通信することができる。リモートインターフェース492は、心不全代償不全(heart failure decompensation)を予測するなどのために警報またはアラー
ムを提供するように構成され得、それにより医師または他の医療従事者による対象者の自宅観測または遠隔観測を可能にする。
【0038】
図5は、信号プロセッサー455の1つ以上の部分の例を大まかに示している。信号プロセッサー455はアナログ信号処理回路500およびデジタル信号処理回路505を備え得る。アナログ信号処理回路500の前置増幅器510(プリアンプまたは受信器とも称される)の入力は、エキサイター450によって提供される上述の刺激に応答して信号を受信するなどのための不関電極345およびチップ電極320に電気的に接続され得る。アナログ信号処理回路500はまた、前置増幅器510の出力を受信し、ローパスフィルタ535に出力信号を提供するような復調器515も備え得る。ローパスフィルタ535からの出力信号は、アナログ−デジタル(A/D)変換器525によって受信され得る。
【0039】
一例において、A/D変換器525は、約1ボルトの入力範囲を有する、12ビットの逐次比較型スイッチキャパシターA/D変換器として実施され得る。一例において、A/D変換器525は、エキサイター450によって与えられる一連の電流パルスに対応する1つの12ビットの語を提供する。A/D変換器525の様々な実施が本システムおよび方法における使用に適し得る。
【0040】
一例において、ローパスフィルタ535は、A/D変換器525から12ビットのデジタル出力信号を受信することができる単極無限インパルス応答(IIR)デジタルフィルターを備え得る。ローパスフィルタ535は、低周波数での胸部流体状況情報を得るなどために、約0.1Hzのそのローパス遮断周波数より高い周波数成分を減衰させるか、または除去することができる。ローパスフィルタ535の他の多数の異なる例もまた本システムおよび方法において使用するのに適し得る。ローパスフィルタ535は、ローパスフィルタ535のローパス遮断周波数を超える信号の周波数成分を有利に減衰させることができる。減衰させられた周波数は、心臓が各心周期の間に収縮する際の心臓302における血液量の変化から生じる心拍信号(cardiac stroke signal)を含み得る。前記心拍信号
は経胸的インピーダンス信号の成分として現われる。一例において、フィルタ535のローパス遮断周波数は、患者の心拍数または呼吸数に適応的に基づき得る。一例において、ローパス遮断周波数は、患者から得られる任意の心拍数または呼吸数信号とは独立し得る。一例において、ローパスフィルタ535はチェビシェフフィルターを用いることができる。一例において、ローパスフィルタ535は楕円フィルタを備え得る。一例において、ローパスフィルタ535は従来の直接型構造(direct form structure)ではなく、状態空
間構造を用いることができる。状態空間構造は、さらに係数の量子化(coefficient quantization)および丸め誤差雑音(round-off noise)の影響を軽減することができる。そのよ
うな状態空間構造の一例は、レランド ビー.ジャクソン(Leland B. Jackson)の「Digital Filters and Signal Processing」、第2版、第332〜340頁、クルワー アカデミック パブリッシャー(Kluwer Academic Publishers)、マサチューセッツ州ボストンに記載されている。前記文献の開示は、参照により本願に援用される。
【0041】
一例において、デジタル信号処理回路505は、例えばマイクロプロセッサーによって実行される一連の命令として制御装置465内に備えられ得る。一例において、デジタル信号処理回路505は、本願に記載するデジタル信号処理タスクの実行に専用化された、独立して実装されるハードウェア部分を備えることができる。肺流体状態計算モジュール540はローパスフィルタ535から出力信号を受信することができ、ノード460において結果として生じた流体状態指標を、下記で説明するような制御装置465に提供することができる。一例において、肺流体状態計算モジュール540は、任意の適当なマイクロプロセッサー上で実行される一連の命令として実施され得る。一例において、肺流体状態計算モジュール540は、インピーダンス導出流体状況情報に基づいて流体状態指標を計算することができる他のハードウェアまたはソフトウェア構成として実施され得る。
【0042】
一例において、肺流体状態計算モジュール540はローパスフィルタを通った(lowpass-filtered)肺インピーダンス信号を閾値に比較するなどのための比較器を備え得る。前記比較の出力は、例えば、そのインピーダンスが規定閾値よりも下落した場合には肺内における過剰な流体を示す肺流体状態指標を提供するために用いられ得る。一例において、規定閾値は、正常状態(例えば、浮腫がない)の間に対象者から得られるようなインピーダンスの長期的値または他の基礎値を用いて規定され得る。例えば、規定閾値は、そのような正常状態値からのオフセットとして規定され得る。一例において、規定閾値は、代償不全発作中または関連する代償不全発作に先行する期間中のような異常状態の間に得られる値を用いて規定され得る。
【0043】
一例において、長期的平均(または他の基礎代表値(baseline measure of central tendency))と短期的平均(またはより急性の代表値(more acute measure of central tendency))との間の差または比は、肺流体状態標識として用いられるか、または閾値と比較されるか、さもなければ信号処理されて、結果として生じる肺流体状態標識を得ることができる。
【0044】
一例において、ヒストグラムアプローチを用いて肺流体状態を判定することができる。そのようなヒストグラムアプローチの一例は、ハットルスタッド(Hatlestad)らの2007年9月11日(代理人整理番号第279.D83US1号)出願の「HISTOGRAM-BASED THORACIC IMPEDANCE MONITORING」と題された米国特許公開公報第11/853,590
号に記載されている。前記特許文献は、参照により、流体状態を判定するためのヒストグラムアプローチの使用の検討を含むその全容が本願に援用される。
【0045】
図6は、インピーダンス誘導肺流体状態信号を測定するため、および関心胸部領域に電界治療を提供するなどのための異なる電極構成の例を大まかに示している。図6の例は、カン330、カン電極335、ヘッダー340および不関電極345を含む、図3に関して上述したようなCFM装置305を備え得る。図6はリード310も備え、リード310のチップ電極320は、図3に関して上述したような心臓302の右心室心尖部に配置され得る。さらに、図6は、肺602、左鎖骨下静脈608A、右鎖骨下静脈608B、左頚静脈614Aおよび右頚静脈614Bを含む胸腔の他の部分を示している。装置305は、例えば、リード310に加えて、リード604およびリード608を受容するように構成され得る。一例において、リード604は、右鎖骨下静脈614B内に位置する電
極609を装置305に、血管内で電気的に接続することができる。一例において、リード606は、(例えば冠状静脈洞または大心静脈において)心臓302の右心房に位置する電極610および心臓302の左心室に位置する電極612を装置305に、血管内で電気的に接続することができる。
【0046】
図6における電極の上述の例の異なる組合せを用いて、肺水腫または他の胸部流体状態の胸部インピーダンス導出測定値を得ることができる。また、図6に破線によって示すように、電極の異なるセットを用いて異なるベクトルまたは関心領域に沿った異なる電界を発生させることができる。胸部インピーダンス感知は、肺602の一方または双方の両側またはその付近に位置する2つ以上の電極の間などにおいて、図3に関して上述したように行われ得る。
【0047】
肺の流体蓄積の治療のために、2つ以上の電極間で治療用電界を発生させることができる。これは、図4に関して上述したような約5マイクロボルト/cm〜約50ミリボルト/cmの電界強度および約1.0MHzの周波数を有する治療用交流電界を発生させるなどのために、電界発電機回路470を使用することを伴い得る。前記治療用交流電界は、以下のような適当な電極構成を用いることによって、下記の関心領域の1つ以上などへ、すなわち、(1)(a)電極335および/または345と、(b)電極320との間に治療用電界の提供することなどにより、第1可能関心領域ROIへ;(2)(a)電極335および/または345と、(b)電極609と間に治療用電界を提供することなどにより、第2可能関心領域ROIへ;(3)(a)電極609と、(b)電極320との間に治療用電界を提供することなどにより、第3可能関心領域ROIへ;(4)(a)電極335および/または345と、(b)電極610との間に治療用電界を提供することなどにより、第4可能関心領域ROIへ;(5)(a)電極609と(b)電極610との間にいて、第5可能関心領域ROIへ;または(6)(a)電極335および/または345と、(b)電極612との間において、第6可能関心領域ROIへ、提供され得る。そのようなベクトルはまた、肺流体状態を判定するなどのために、対応する関心領域を横切るインピーダンス感知を行なうために用いることもできる。前記肺流体状態に基づいて、治療用交流電界は、印加されたり、差し控えられたり、または調節されたりする。更に、図6に示したもの以外の電極構成も、胸腔内の1つ以上の他の関心領域などにおいて、インピーダンスを感知するため、または治療用電界パルスを提供するために用いることができる。そのような電極は、例えば、右または左橈側皮静脈内に位置するか、右または左胸部に皮下配置されるか、左心房内に位置するか、肺動脈または肺静脈内に位置することができる。
【0048】
図7は、肺内の流体のレベルを調節するために肺に電界を印加する方法700の例を大まかに示すフローチャートである。参照符号702では、第1電極および第2電極を用いて電界が肺に印加される。前記電極は植え込み型心調律管理装置に関連付けられ得る。第1電極または第2電極の少なくとも一方は肺に植え込みにより(implantably)関連付けら
れ得、前記電極は、植え込み型心調律管理装置、心臓、肺、胸静脈、胸動脈または胸部リンパ節の少なくとも1つまたはその付近に配置され得る。異なるベクトルに沿った異なる電界を発生するために、3つ以上の電極を用いることができる。前記電界は、約5マイクロボルト/cm〜約50ミリボルト/cmの電界強度および約1.0MHzの周波数を有する交流電流を含み得る。いくつかの例において、前記電界に関連する波形形態としては、正弦波、方形波または擬似乱数的な二成分波(pseudorandom binary wave)が挙げられ得る。加えて、前記電界は、絶対心臓不応期の間のみ、または絶対心臓不応期および絶対心臓不応期でない期間のうちの1つ以上の間に印加され得る。参照符号704では、第1電極および第2電極を用いて電界を発生させて肺に印加する。参照符号706において、前記電界は、肺胞細胞におけるNa,K−ATPアーゼ活性が調節されるように制御される。前記電界は、電界に関連する大きさ、パルス幅、周波数、持続時間または波形の少なく
とも1つの調節により制御することができる。更に、肺胞細胞におけるNa,K−ATPアーゼ活性は調節するように電界を制御することにより、肺からの流体の除去をもたらすことができると考えられる。参照符号708で示されるように、電界の制御、よって肺胞細胞におけるNa,K−ATPアーゼ活性の調節は、肺流体センサー、心音センサー、インピーダンスセンサー、身体活動センサー、呼吸センサー、血圧センサー、心電図センサー、酸素飽和センサー、血流量センサーおよび温度センサーのような様々な植え込みセンサーによって提供される情報によって影響を受け得る。例えば、電気的パルスの送達は、1つ以上の植え込みセンサーによって感知される生理学的事象または状態の発生に同期させることができる。電気的パルスの送達を同期させることができる感知される生理学的事象または状態の例としては、肺流体センサーまたは胸部インピーダンスセンサーによって感知される肺水腫;呼吸センサーによって感知される吸気終末(end inspiration)または
呼気終末(end expiration)のような呼吸サイクル事象;姿勢センサーによって感知される背臥位を含む患者の姿勢;肺動脈圧センサーによって感知される増大した心臓充満圧;および心音センサーによって感知されるS心音の存在または強度が挙げられる。電気的パルスの送達を同期させるための植え込みセンサーからの情報の使用に加えて、電気的パルスの送達はまた、例えば、患者の利尿薬の摂取またはラチチュード(LATITUDE)(登録商標)システムを介した医師の入力のような外部事象に同期させることもできる。
【0049】
付記
本文書において、特定の例は、説明の明瞭さのために、「ナトリウム」および「カリウム」レベルに関して記載した。本文書において用いられる「ナトリウム」、「カリウム」という用語は、記載したシステムまたは方法の範囲から逸脱することなく、「ナトリウムイオン」および「カリウムイオン」を指すようにそれぞれ用いられ得る。同様に、本文書で用いられる「ナトリウム」、「塩」という用語は、記載したシステムまたは方法の範囲から逸脱することなく、「ナトリウムイオン」を指すように区別なく用いられ得る。
【0050】
上記の詳細な説明は、詳細な説明の一部を形成する添付図面への言及を含む。図面は、例証として、本発明が実施され得る特定の実施形態を示している。これらの実施形態はまた本願では「実施例(または例)」とも称される。本文書において参照した全ての刊行物、特許および特許文献は、参照により個々に援用されるかのように、参照により余すところなく本願に援用される。本文書と、そのように参照により援用された文書との間で用法が一致しない場合には、援用された参考文献における用法は、本文書のそれに対する補足であると考えられるべきであり、相容れない矛盾については、本文書における用法が支配する。
【0051】
本文書において、用語「a」または「an」は、特許文献において共通であるように、任意の他の例または「少なくとも1つ(at least one)」または「1つ以上(one or more)
」の使用とは無関係に、1つまたは1つより多くを包含するように用いられる。この文書において、用語「または」は、別段の指示がない限り、「AまたはB」は、「AだがBではない」、「BだがAではない」、および「AおよびB」を含むように、非排他的論理和を示す。添付する請求項において、用語「備える(including)」および「前記〜において(in which)」は、「備える(comprising)」および「前記〜において(wherein)」という各用語の平易な英語の同意義として用いられる。また、以下の請求項において、用語「備える(including)」および「備える(comprising)」は非制限的である、すなわち、請求項にお
いてそのような用語の後に列記されたものに加えて要素を含むシステム、装置、物品またはプロセスは、依然としてその請求項の範囲内にあると見なされる。さらに、以下の請求項において、用語「第1」、「第2」、および「第3」などは、単に標識として用いられており、それらの対象に対して数的な要件を課するようには意図されない。
【0052】
本願に記載した方法の例は、少なくとも一部分において、機械によって実施されるか、
またはコンピューターによって実施され得る。いくつかの例としては、上記の例に記載したような方法を行なう電子デバイスを構成するように作動可能な命令によってコード化されたコンピューター可読媒体または機械可読媒体が挙げられる。そのような方法の実施は、マイクロコード、アセンブリ言語コード、高水準言語コードなどのようなコードを含み得る。そのようなコードは、様々な方法を行なうためのコンピューター可読命令を含み得る。前記コードは、コンピュータプログラム製品の一部を形成してもよい。さらに、前記コードは、実行の間に、または他の時に、1つ以上の揮発性または不揮発性のコンピューター可読媒体上に実体的に格納されてもよい。これらのコンピューター可読な媒体としては、ハードディスク、リムーバル磁気ディスク、リムーバル光ディスク(例えばコンパクトディスクおよびデジタルビデオディスク)、磁気カセット、メモリーカードまたはメモリースティック、ランダムアクセスメモリー(RAM)、読出し専用メモリー(ROM)などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
上記の説明は、例示であり、限定的なものではないことが意図される。例えば、上述の例(またはそれらの1つ以上の態様)は互いに組み合わせて用いてもよい。上記の説明の検討により、当業者などによって他の実施形態が用いられ得る。要約書は、読者が技術的な開示の性質を迅速に確認することができるようにするために、米国特許法施行規則第1.72条(b)に準拠するように提供される。要約書は、特許請求の範囲または意味を解釈または限定するためには用いられないという理解で提出されている。また、上記の詳細な説明において、様々な特徴は開示を簡素化するために共にまとめられてもよい。これは、権利請求されていない開示された特徴がいずれかの請求項に対して必須であることを意図するものと解釈されるべきでない。むしろ、本発明の主題は、特定の開示された実施形態のすべての特徴に満たないで存してもよい。したがって、以下の特許請求の範囲は、これにより詳細な説明に援用され、各請求項は、本発明の別個の実施形態として自立している。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲および係る特許請求の範囲が権利を享受する均等物の全範囲に関連して決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極および第2電極に接続されるように構成された電界発生器回路であって、第1電極または第2電極の少なくとも一方は対象者の肺に関連付けられるように構成されており、前記電界発生器回路は、肺内の流体のレベルを調節することができる電界を、肺への印加のために発生させるように構成されている、電界発生器回路と、
前記電界発生器回路に接続され、かつ肺内の流体のレベルを調節すべく、前記肺における電界を制御するように構成されている制御装置と
を備える、システム。
【請求項2】
第1電極および第2電極の少なくとも一方を備え、前記第1電極および第2電極の少なくとも一方は、肺内の流体のレベルを調節することができる電界を肺への印加のために提供するために用いられるように構成されており、かつ、肺、心臓、胸静脈、胸動脈または胸部リンパ節の少なくとも1つに、またはその付近に位置するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、肺からの流体の除去を制御可能に実施すべく、電界を制御するように構成されている、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、肺胞のNa,K−ATPアーゼ活性の調節により、肺内の流体のレベルを調節すべく、電界を制御するように構成されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記電界発生器回路は、約5マイクロボルト/cm〜約50ミリボルト/cmの電界強度を有する交流電流を発生させるように構成されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記電界発電機回路は約1.0MHzの周波数でパルスを発生させるように構成されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
固有心臓信号を感知するように構成された心臓信号感知回路を備え、前記制御装置は、前記感知回路に接続されており、かつ絶対心臓不応期を判定するように構成されており、前記制御装置は、実質的に絶対心臓不応期の間のみにパルスを与えるように、電界発生器回路を制御するように構成されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
肺内の流体のレベルを観測するように構成された流体観測回路を備え、前記制御装置は、肺内の流体のレベルを制御するために、観測した肺内の流体のレベルについての情報を用いて電界を制御するように構成されている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御装置は、肺内の流体のレベルを制御するために、前記電界に関連する大きさ、パルス幅、周波数、持続時間、デューティサイクルまたは波形形態のうちの少なくとも1つを制御するように構成されている、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御装置は、少なくとも1つの植え込み型センサーからの情報を用いて、肺内における電界を制御するように構成されており、前記植え込み型センサーは、植え込み型心音センサー、植え込み型インピーダンスセンサー、植え込み型身体活動センサー、植え込み型呼吸センサー、植え込み型血圧センサー、植え込み型心電図センサー、植え込み型酸素飽和度センサー、植え込み型血流センサー、または植え込み型温度センサーのうちの少な
くとも1つを含む、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
第1電極および第2電極に接続されるように構成された電界発生器回路であって、第1電極または第2電極の少なくとも一方は対象者の肺に関連付けられるように構成されており、前記電界発生器回路は、肺内の流体のレベルを調節することができる電界を、肺への印加のために発生させるように構成されている、電界発生器回路と、
前記電界発生器回路に接続され、かつ肺内の流体のレベルを調節すべく、前記肺における電界を制御するように構成されている制御装置と、
肺内の流体のレベルを観測するように構成された流体観測回路とを備え、前記制御装置は、肺内の流体のレベルを制御するために、観測した肺内の流体のレベルについての情報を用いて前記電界を制御するように構成されている、システム。
【請求項12】
第1電極および第2電極の少なくとも一方を備え、前記第1電極および第2電極の少なくとも一方は、肺、心臓、胸静脈、胸動脈または胸部リンパ節の少なくとも1つに、またはその付近に位置する電界を提供するように構成されており、
前記制御装置は、肺胞のNa,K−ATPアーゼ活性の調節により、肺からの流体の除去を制御可能に実施すべく、前記電界を制御するように構成されており、
前記電界発生器回路は約5マイクロボルト/cm〜約50ミリボルト/cmの電界強度と、約1.0MHzの周波数とを有する交流電界を発生させるように構成されており、
前記制御装置は固有心臓信号を感知するように構成された心臓信号検出回路に接続されており、前記制御装置は絶対心臓不応期を判定するように構成されており、前記制御装置は、実質的に絶対心臓不応期の間のみにパルスを与えるように、電界発生器回路を制御するように構成されており、
前記制御装置は、肺内の流体のレベルを制御するために、前記電界に関連する大きさ、パルス幅、周波数、持続時間、デューティサイクルまたは波形形態のうちの少なくとも1つを制御するように構成されており、
前記制御装置は、少なくとも1つの植え込み型センサーからの情報を用いて、肺内における電界を制御するように構成されており、前記植え込み型センサーは、植え込み型心音センサー、植え込み型インピーダンスセンサー、植え込み型身体活動センサー、植え込み型呼吸センサー、植え込み型血圧センサー、植え込み型心電図センサー、植え込み型酸素飽和度センサー、植え込み型血流センサー、または植え込み型温度センサーのうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
第1電極および第2電極を用いて対象者に電界を印加することと、第1電極または第2電極の少なくとも一方は対象者の肺に関連付けられるように構成されていることと、
肺内の流体のレベルを調節することができる電界を、肺への印加のために発生させることと、
前記電界を肺内の流体のレベルを調節するように制御することとを含む、方法。
【請求項14】
電界を印加することは、肺、心臓、胸静脈、胸動脈または胸部リンパ節の少なくとも1つにおいて、またはその付近において、第1電極および第2電極を用いることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記電界を制御することは、肺からの流体の除去を制御可能に実施すべく、肺胞のNa,K−ATPアーゼ活性を調節することを含む、請求項13または14に記載方法。
【請求項16】
電界を印加することは、約5マイクロボルト/cm〜約50ミリボルト/cmの電界強度を有する交流電界を提供することを含む、請求項13乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
電界を印加することは、約1.0MHzの周波数でパルスを提供することを含む、請求
項13乃至16のいずれか1項に記載方法。
【請求項18】
固有心臓信号を感知することと、
絶対心臓不応期を判定することと、
実質的に絶対心臓不応期の間のみに電気パルスを与えることとを含む、請求項13乃至17のいずれか1項に記載方法。
【請求項19】
肺内の流体のレベルを観測することを含み、前記電界を制御することは、肺内の流体のレベルを制御するために、観測した肺内の流体のレベルについての情報を用いて電界を制御することを含む、請求項13乃至18のいずれか1項に記載方法。
【請求項20】
前記電界を制御することは、肺内の流体のレベルを制御するために、前記電界に関連する大きさ、パルス幅、周波数、持続時間、デューティサイクルまたは波形のうちの少なくとも1つを制御することを含む、請求項13乃至19のいずれか1項に記載方法。
【請求項21】
前記電界を制御することは、少なくとも1つの植え込み型センサーからの情報を用いることを含み、前記植え込み型センサーは、植え込み型心音センサー、植え込み型インピーダンスセンサー、植え込み型活動センサー、植え込み型呼吸センサー、植え込み型血圧センサー、植え込み型心電図センサー、植え込み型酸素飽和度センサー、植え込み型血流センサー、または植え込み型温度センサーを含む、請求項13乃至20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−525931(P2012−525931A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509913(P2012−509913)
【出願日】平成22年5月4日(2010.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/033600
【国際公開番号】WO2010/129590
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】