説明

胃バイパス及びそれに関連する状態を診断する手段及び方法

本発明は、診断手段の分野に関する。具体的には、胃バイパス治療が被験体において成功したかどうかを評価する方法、胃バイパス治療が、それを必要とする被験体に有益であるかどうかを予測する方法、及び胃バイパスに伴う支持療法がそれを必要とする被験体に対して有益な効果を有するかどうかを診断する方法を意図する。さらに、糖尿病及び除脂肪体重の診断方法も提供する。さらにまた、本発明は、糖尿病及び/又は肥満の治療を同定する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断手段の分野に関する。具体的には、胃バイパス治療が被験体において成功したどうかを評価する方法、胃バイパス治療が、それを必要とする被験体に有益であるかどうかを予測する方法、及び胃バイパスに伴う支持療法がそれを必要とする被験体に対して有益な効果を有するかどうかを診断する方法を意図する。さらに、糖尿病及び除脂肪体重の診断方法も提供する。さらにまた、本発明は、糖尿病及び/又は肥満の治療を同定する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、健康に悪影響を及ぼす(すなわち共存症の発症により)程度まで過剰な体脂肪が蓄積することを特徴とする。肥満は、一般にボディマス指数(BMI、体重/身長の2乗)が30 kg/m2以上として定義されるが、体重過多は、典型的にBMI 25〜30と考えられる。2005年、世界保健機関(WHO)は、世界中で約16億人が体重過多で、4億人の成人が臨床的に肥満と確定されると推定した(http://www.who.int/en/)。WHOは、上記の数字は2015年までに体重過多の成人が23億人、肥満の成人が7億人にまで増大すると予測している。肥満が医療制度にもたらす大きな負担は社会的に認識されているにもかかわらず、体重過多及び肥満の個体の健康状態を効果的に改善する手段は(食事制限及び身体活動を除いて)ほとんどない。胃バイパス手術は、肥満及び糖尿病を治療する上で非常に効果的な治療介入であることが証明されている。実際に、最も一般的な形態であるルーワイ(Roux-en-Y)式は、米国において2007年だけで12万以上の人に実施された(Couzin 2008, Bypassing medicine to treat diabetes. Science 320, 438-440)。胃バイパス手術の全体的目標は、体重の減少、具体的には、体脂肪量の減少であり、また、インスリン感受性を改善することによる糖尿病の逆転である。胃バイパス術は現在、2型糖尿病の唯一の治療法であり、重度の肥満患者の80〜100%における血中グルコースレベルを正常化することができる。2型糖尿病は、糖尿病の最も一般的な病態である。2007年の全年齢について米国における診断及び非診断糖尿病の罹患率は、2,360万人、すなわち人口の7.8%であることが推定された。このうち1,790万人が糖尿病と診断され、570万人がまだ診断されていない(National Diabetes Statistics 2007, US Department of Health and Human Services, diabetes.niddk.nih.gov/dm/pubs/statistics/)。糖尿病は、重度の体重過多である者において40倍まで罹患の可能性が高くなる。
【0003】
胃バイパス術は、肥満治療症手術の1種であり、肥満及び糖尿病を改善すると同時に、共存症のリスクを低減する目的で、病的に肥満の個体への適用が増加している重度の治療介入である(Moo & Rubino 2008. Gastrointestinal surgery as treatment for type 2 diabetes. Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 15: 153-8. Gumbs et al. 2005. Changes in insulin resistance following bariatric surgery: role of caloric restriction and weight loss. Obes Surg. 15: 462-73)。米国国立衛生研究所(NIH)のコンセンサスパネルは、肥満治療症手術を考慮する基準を推奨した。BMI40以上の個体又はBMI35以上で1以上の関連共存症を有する個体は、他の減量療法が効果的でないままであれば、胃バイパス術を受けることが推奨されうる。開腹又は腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術により達成される一般的な減量は、過剰体重の50〜80%であるが、かなりの個人差が予想される。胃バイパス手術は、病的に肥満の患者に広く実施され、あらゆる原因による死亡率を40%まで低下させることが明らかにされている(Adamsら、2007. Long-term mortality after gastric bypass surgery. N. Engl. J. Med. 357, 753-61)。
【0004】
ほとんどの患者において、胃バイパスにより代謝変化が起こり、血中グルコース及びインスリンレベル、インスリン感受性並びにホルモン応答が正常化する。しかし、糖尿病エンドポイントに関する代謝改善は、観測される多くの改変のほんの一部を表すにすぎない。例えば、C反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドA(SAA)、IL-6、IL-18、シアル酸及びTNF-αなどの炎症マーカーはすべてバイパス手術後に低下するが、アディポネクチンは増加する(Holdstockら、2005. CRP reduction following gastric bypass surgery is most pronounced in insulin-sensitive subjects. Int J Obes (Lond) 29: 1275-80. Catalanら、2007. Proinflammatory cytokines in obesity: impact of type 2 diabetes mellitus and gastric bypass. Obes Surg 17: 1464-1474. Vilarrasaら、2007. Effect of weight loss induced by gastric bypass on proinflammatory interleukin-18, soluble tumour necrosis factor-alpha receptors, C-reactive protein and adiponectin in morbidly obese patients. Clin Endocrinol (Oxf) 67: 679-686)。さらには、胃バイパス手術後に脂質代謝が変化するが、これは、バイパスの物理的長さと相関することがわかっており、例えば、遊離脂肪酸とβヒドロキシ酪酸レベルが増大している(Johanssonら、2008. Lipid Mobilization Following Roux-en-Y Gastric Bypass Examined by Magnetic Resonance Imaging and Spectroscopy. Obes Surg. 2008 Apr. 8.)。しかし、こうした更なる変化の生理学的及び機構的原因とその影響については依然として十分に理解されていない。
【0005】
明らかになった証拠から、脂肪細胞が、脂質の貯蔵と、摂食挙動、インスリン感受性及び免疫機能に影響するホルモンの分泌との両方において果たす主要な役割がはっきりと証明されている。脂肪遺伝子発現(トランスクリプトーム)研究がヒト患者においてある程度まで実施されているが、タンパク質(プロテオミクス)及び代謝物質(メタボロミクス)の包括的分析はまだ詳しく研究されていない。
【0006】
重度肥満は複数の共存症を伴う。その結果、胃バイパス患者は、手術前及び手術後に総合的生化学及び臨床評価を必要とし、また、最適な転帰のために多角的支援を得る必要がある。通常の生物臨床評価としては、生理学的測定(体重、ボディマス指数、体脂肪及び除脂肪体重)、血液生化学(血漿トリアシルグリセロール、コレステロール、リポタンパク質、グルコース、インスリン、アルブミン、ビタミン及びミネラルの状態)、食事及び薬物治療の評価、並びに具体的共存症のリスクの制御が挙げられる。いくつかの共存症が、胃バイパス手術後に改善することが証明されている。
【0007】
糖尿病患者は、一般に、薬物治療を受けずに正常化した空腹時血中グルコース及びインスリンレベル、並びに改善されたインスリン感受性によって示されるように、胃バイパス術の結果として糖尿病の部分的(完全でない場合)寛解を経験する。効果は、減量に非依存的であり、手術後数日以内に現れる。胃腸ホルモン分泌のパターンは、胃バイパス術と十二指腸及び近位空腸(すなわち、小腸の上方部分)の切除により変化する。この手術は、胃ホルモングルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グレリン及びペプチドYYの放出及び血漿濃度に影響を与える(le Rouxら、2006. Gut hormone profiles following bariatric surgery favor an anorectic state, facilitate weight loss, and improve metabolic parameters. Ann Surg. 243, 108-14; Rodieuxら、2008. Effects of gastric bypass and gastric banding on glucose kinetics and gut hormone release. Obesity (Silver Spring). 16: 298-305; Reinehrら、2007. Peptide YY and glucagon-like peptide-1 in morbidly obese patients before and after surgically induced weight loss. Obes Surg. 17: 1571-7)。胃バイパス術後、GLP-1、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド及びインクレチンのアベイラビリティー及び効果が改善されたことが、糖尿病状態改善の一因である(Laferrereら、2008, Effect of weight loss by gastric bypass surgery versus hypocaloric diet on glusose and incretin levels in patients with type 2 diabetes. J Clin Endocrinol Metab. 2008 Apr. 22)。糖尿病は、様々な他の疾患を伴うが、そのような疾患として、心血管系疾患、腎不全、失明、及び神経損傷などがあり、神経損傷は体肢の切断を必要とする可能性もある。
【0008】
胃バイパス手術後に改善される上記以外の共存症として、本態性高血圧、逆流性食道炎疾患、静脈血栓塞栓症、非アルコール性脂肪性肝疾患(非アルコール性脂肪肝)及び肝臓の慢性炎症(脂肪性肝炎)、軟骨性円板及び荷重関節に影響する変性、又は腰、膝、踝及び足に影響する変形性関節症がある。例えば、肝臓脂肪症及び線維症は、胃バイパス術後2年以内に著しく改善した(NAFLD患者で評価)(Furuyaら、2007. Effects of bariatric surgery on nonalcoholic fatty liver disease: preliminary findings after 2 years. J Gastroenterol Hepatol. 22:510-4)。
【0009】
肥満の良好な逆転は、体脂肪の減少と若干の除脂肪体重の増加により達成される。体重組成を測定するイメージング法が存在し、最も一般的なのは、二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA又はDXA)である(Cunningham 1991. Body composition as a determinant of energy expenditure: a synthetic review and a proposed general prediction equation. Am J Clin Nutr, 54: 963-9)。上記技術は2つのタイプのX線身体スキャンに基づいており、1つが全組織を検出し、もう1つは非脂肪組織を検出して、スキャンの差から体脂肪及び除脂肪体重を計算するものである。一般に、DEXAは、概して使用しやすいことと、精度が高いことから、体脂肪及び除脂肪体重を測定する上での「最も信頼できる基準(gold standard)」と考えられている。しかし、DEXA計器は高価で、一般に体重が150 kgを超える被験体には適していない(http://www.postgradmed.com/issues/2003/12_03/1bray.shtml)。しかし、胃バイパス術後の減量は、特に骨格筋量を損なうことが観察されている。意図的な減量中の骨格筋量の維持は、身体運動、食事における高い割合のタンパク質、及びその他の生活習慣の調節により達成することができる。最も効果的な治療法は、個体の素因に応じて変わる。胃バイパス術の成功は、部分的に、除脂肪体重維持のモニターに左右されるが、該除脂肪体重維持は、患者の体脂肪量の割合(%)により評価することができる。
【0010】
胃バイパス治療介入後には栄養欠乏を予防する必要がある。手術後の患者は少量の食物を摂取するだけで満腹感を感じ、その後間もなく飽満の感覚と食欲減退を覚える。手術後、食物摂取総量が著しく減少し、必須微量栄養素、例えばビタミン、ミネラル、カロテノイド、必須脂肪酸及びタンパク質の十分な供給が不足するリスクを被る(Gasteygerら、2008. Nutritional deficiencies after Roux-en-Y gastric bypass for morbid obesity often cannot be prevented by standard multivitamin supplementation. Am J Clin Nutr. 2008, 87: 1128-33)。栄養素アベイラビリティー低下の理由の1つは、腸表面積の縮小であり、これによって、食事から適切に吸収することができず栄養素が減少する。食物摂取量が減少するため、患者は、食物消費、並びに微量栄養素及びタンパク質の食事補給について医師又は栄養士の指示に従う必要がある。
【0011】
胃バイパス術は、エネルギー摂取の減少、従ってエネルギー制限(カロリー制限)状態を引き起こす(Ingramら、2006. Calorie restriction mimetics: an emerging research field. Aging Cell, 5: 97-10)。胃バイパス患者における手術後の自発的食事制限は、稀有な生理学的状態の1つであり、ヒトは継続的なエネルギー不足状態と健康利益を経験する。カロリー制限(CR)は、十分な量の必須栄養素が供給される場合に、健康を改善し、健康状態での寿命を延ばすことを目的とする。CRの効果を調べたあらゆる動物モデル(霊長類、ラット、マウス、ショウジョウバエ、線虫(C.elegans)など)が、改善された健康状態での寿命の延長を証明している。ヒトでは、CRが血漿脂質、空腹時血漿グルコース及びインスリン並びに血圧を下げることが報告されている。カロリー制限は、酸化ストレスからの良好な保護、高分子の糖化の低減、DNA損傷の低減と修復の増大、炎症及び自己免疫の低減、原形質膜を保護するミトコンドリア代謝効率の増大、細胞成分(リソソーム、ぺルオキシソーム)に対する損傷の低減、遺伝子発現の加齢パターンの維持増強、並びにストレスからの保護増強をもたらす(Ingramら、2006年)。胃バイパス患者における望ましくない作用、例えば、貧血、筋肉衰弱、脱力、眩暈、疲労、吐気、下痢、便秘、胆石、過敏性及び抑うつ症を回避するために、エネルギー制限状態の厳密なモニターが不可欠である。
【0012】
食事エネルギーの制御された制限の有益な効果のメカニズムについては十分に理解されていない。CRに伴う健康状態での寿命延長はホルミシスにより達成されると考えられるが、ミトコンドリアに課される長期的な低強度の生物学的ストレスが防御応答を誘発し、この応答が加齢の各種原因からの防御を助ける。CRはまた、インスリンシグナル伝達も改善する。哺乳動物では、CR食事療法、又はレスベラトロールのような食事成分によりSIRT1遺伝子がオンになり、ストレス誘導性細胞死から細胞を保護する(Guarente 2008, Mitochondria--a nexus for aging, calorie restriction, and sirtuins? Cell. 132: 171-6)。
【0013】
しかし、胃バイパス手術後に誘導されたエネルギー不足状態は、老人性無食欲、並びにHIV/エイズ及び癌などの疾患に関連する無食欲の良好なモデルも提供しうる。こうした患者に対する栄養素のさらに効率的な供給を確実にする方法の新たな理解及び開発が早急に求められる。
【0014】
以上を考え合わせると、胃バイパス術は、重度の肥満被験体において体重と糖尿病の症状を低減するのに非常に効果的であることが明らかである。肥満疾患の複雑性のために、現在のところ胃バイパス治療介入前及び治療介入後の患者の厳密な生理学の理解は不十分である。肥満及び糖尿病集団は、胃バイパス手術の生理学的効果の理解を深めることにより大きな利益を受けるであろう。というのは、このように理解状態が向上すれば、患者の治療についての意思決定も改善されるからである。さらに、こうした新たな知識は、カロリー制限の健康及び加齢遅延化利益を利用した胃バイパス手術「模倣物」の開発に向けて活かすこともできる。最後に、胃バイパス手術に関連する代謝作用の理解が深まれば、食欲抑制消耗性疾患に対抗する有効な治療介入の開発に役立つであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、上記ニーズに適合する手段及び方法の提供とみなされる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この技術的課題は、特許請求の範囲に特徴付けられておりかつ本明細書の以下に記載されている実施形態により解決される。
【0017】
本発明は、被験体において胃バイパス治療が成功したかどうか評価する方法であって、
(a)被験体のサンプルにおける、表1A、1B、3及び5のいずれかに示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を測定するステップ、並びに
(b)上記量を参照と比較するステップであって、それにより胃バイパス治療が成功したかどうかが評価される上記ステップ
を含む方法に関する。
【0018】
本発明において記載する方法としては、上述のステップより本質的になる方法又はさらなるステップを含む方法が含まれる。しかしながら、本方法は、好ましい実施形態では、ex vivoで行われる方法、すなわち、人体又は動物体に対して実施されない方法であることを理解されたい。本方法は、好ましくは自動化により支援することができる。
【0019】
本明細書において用いられる「胃バイパス治療が成功したかどうかを評価する」という語句は、胃バイパス治療によって処置された被験体が該治療から利益を享受する(該治療が有効である)かどうかを判定することを意味する。その利益は、好ましくは、糖尿病及び/又は肥満症状の改善、あるいは該医学的状態に関する他の何らかの改善である。好ましくは、糖尿病に関して成功は、インスリン感受性の増大(すなわちインスリン抵抗性の低下)を伴い、肥満に関して成功は、体脂肪量(%)の低下を伴う。好ましくは、改善は統計学的に有意な程度の改善である。当業者であればわかるであろうが、そのような評価は、検査される被験体の100%に対して正しいことが好ましいが、通常はそうでない可能性がある。しかしながら、この用語は、統計学的に有意な一部の被験体を正確に評価できることを必要とする。当業者であれば、あとは苦もなく、種々の周知の統計学的評価ツールを用いて、たとえば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントのt検定、マン・ホイットニー検定などを行って、一部が統計学的に有意であるかどうかを判定することが可能である。詳細は、Dowdy and Wearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983に見いだされる。好ましい信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。p値は、好ましくは、0.2、0.1、0.05である。
【0020】
本発明において評価には、胃バイパス治療の成功の診断、モニター又は確認が含まれる。さらにこの用語には、上に記載の症状の改善又は医学的状態の他の改善が臨床的に検出可能ではない場合に、例えば治療の適用後初期段階に、胃バイパス治療の長期転帰が成功するかどうかを予測することが含まれる。
【0021】
本明細書において用いられる「胃バイパス治療」という用語は、小嚢が胃上部から形成される肥満治療症手術の手段に関する。続いて小腸が再構成される。小腸の近位部がバイパスされ、遠位部が直接胃嚢に連結される。胃バイパス治療は、開腹及び腹腔鏡ルーワイ(Roux-en-Y)式手法を含む。外科手術手法は臨床医に周知であり、外科手術の標準的な教科書に記載されている。被験体の生理に対する胃バイパスの結果として、肥満を治療することができる。さらに、胃バイパスがまた被験体における糖尿病を改善することが見い出されている。これは、肥満を患う被験体の有意な一部が糖尿病をも示すため、特に関連性がある。上述した本発明の方法に従って意味する糖尿病は、真性糖尿病、好ましくは2型糖尿病を指す。肥満は、被験体の脂肪組織に貯蔵されたエネルギー貯蔵量が健康的な限界を超えている医学的状態である。好ましくはボディマスインデックス(身長の二乗で除した体重)少なくとも30 kg/m2を伴う。
【0022】
本明細書において用いられる「バイオマーカー」という用語は、本明細書において記載する医学的状態又は効果の指標として機能する分子種を意味する。該分子種は、被験体のサンプル中に見いだされる代謝物質自体であってもよい。さらに、バイオマーカーはまた、該代謝物質に由来する分子種であってもよい。そのような場合、実際の代謝物質は、サンプル中で又は測定方法の過程で化学的に修飾されることがあり、その修飾の結果として、化学的に異なる分子種、すなわちアナライトが測定される分子種となる。そのような場合、アナライトは実際の代謝物質であり、各医学的状態の指標として同じ可能性を有することが理解されよう。
【0023】
好ましくは、上述のバイオマーカー群の少なくとも1つの代謝物質を本発明の方法において測定するものである。しかし、より好ましくは、評価の特異度及び/又は感度を強化するためにバイオマーカー群を測定しうる。そのような群は、好ましくは少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10又は最大全てのバイオマーカーを含む。本明細書に記載する具体的なバイオマーカーに加えて、他のバイオマーカーを同様に本発明の方法において測定することも好ましい。
【0024】
本明細書において用いられる代謝物質とは、特定の代謝物質の少なくとも1つの分子から特定の代謝物質の複数の分子までを指す。さらに、代謝物質の群とは、各代謝物質ごとに少なくとも1分子〜複数分子が存在しうる、複数の化学的に異なる分子を意味することが理解されよう。本発明において、代謝物質は、生物学的材料(生物など)に含まれるものをはじめとするすべてのクラスの有機又は無機の化学化合物を包含する。本発明において、代謝物質は、小分子化合物であることが好ましい。より好ましくは、複数の代謝物質が想定される場合、該複数の代謝物質とは、メタボローム、すなわち、特定の時間に特定の条件下で生物、器官、組織、体液又は細胞に含まれる代謝物質の集合を意味する。
【0025】
代謝物質とは、代謝経路の酵素の基質、そのような経路の中間体、又は代謝経路により得られる産物のような小分子化合物のことである。代謝経路は、当技術分野で周知であり、種間で異なりうる。好ましくは、該経路としては、少なくとも、クエン酸回路、呼吸鎖、光合成、光呼吸、解糖、糖新生、ヘキソース一リン酸経路、酸化的ペントースリン酸経路、脂肪酸の産生及びβ酸化、尿素回路、アミノ酸生合成経路、タンパク質分解経路(たとえばプロテアソームによる分解)、アミノ酸分解経路、次の物質の生合成又は分解が挙げられる:脂質、ポリケチド(たとえば、フラボノイド及びイソフラボノイドなど)、イソプレノイド(たとえば、テルペン、ステロール、ステロイド、カロテノイド、キサントフィルなど)、炭水化物、フェニルプロパノイド及びその誘導体、アルカロイド、ベンゼノイド、インドール、インドール硫黄化合物、ポルフィリン、アントシアン、ホルモン、ビタミン、補因子(たとえば補欠分子族又は電子伝達体)、リグニン、グルコシノレート、プリン、ピリミジン、ヌクレオシド、ヌクレオチド、及び関連分子、たとえば、tRNA、マイクロRNA(miRNA)、又はmRNA。したがって、小分子化合物代謝物質は、好ましくは、次のクラスの化合物を包含する:アルコール、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族化合物、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル、アミン、イミン、アミド、シアニド、アミノ酸、ペプチド、チオール、チオエステル、リン酸エステル、硫酸エステル、チオエーテル、スルホキシド、エーテル、又は上述の化合物の組合せ若しくは誘導体。代謝物質のうちの小分子は、正常な細胞機能、器官機能、又は動物の成長、発生若しくは健康に必要とされる一次代謝物質でありうる。さらに、小分子代謝物質は、不可欠な生態学的機能を有する二次代謝物質、たとえば、生物をその環境に適応できるようにする代謝物質をも包含する。そのうえさらに、代謝物質は、該一次代謝物質及び該二次代謝物質に限定されるものではなく、人工小分子化合物をも包含する。該人工小分子化合物は、投与されるか又は生物により取り込まれるが上で定義したような一次代謝物質でも二次代謝物質でもない外因的に供給される小分子に由来する。たとえば、人工小分子化合物は、動物の代謝経路により薬物から得られる代謝産物でありうる。さらに、代謝物質は、ペプチド類、オリゴペプチド類、ポリペプチド類、オリゴヌクレオチド類、及びポリヌクレオチド類、たとえば、RNA又はDNAをも包含する。より好ましくは、代謝物質は、50Da(ダルトン)〜30,000Da、最も好ましくは30,000Da未満、20,000Da未満、15,000Da未満、10,000Da未満、8,000Da未満、7,000Da未満、6,000Da未満、5,000Da未満、4,000Da未満、3,000Da未満、2,000Da未満、1,000Da未満、500Da未満、300Da未満、200Da未満、100Da未満の分子量を有する。しかしながら、好ましくは、代謝物質は少なくとも50Daの分子量を有する。最も好ましくは、本発明において、代謝物質は50Da〜1,500Daの分子量を有する。
【0026】
さらに、以下で詳細に説明するように、いくつかのバイオマーカーが糖尿病に関して胃バイパス治療が成功したかどうか評価するために特に好ましく、他のバイオマーカーが肥満に関して胃バイパス治療が成功したかどうか予測又は診断するために特に好ましい。
【0027】
従って、本発明の方法の好ましい実施形態において、前記評価は、表2及び3に示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの比較に基づいて、糖尿病に関して胃バイパス治療が成功したかどうか評価することを含む。
【0028】
さらに本発明の方法の別の好ましい実施形態において、前記評価は、表4及び5に示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの比較に基づいて、肥満に関して胃バイパス治療が成功したかどうか評価することを含む。
【0029】
より好ましくは、本発明は、表1A及び/又は1Bに示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの比較に基づいて、糖尿病及び肥満に関して胃バイパス治療が成功したかどうか評価することを含む。
【0030】
本明細書において用いられる「サンプル」という用語は、体液、好ましくは、血液、血漿、血清、唾液、尿、若しくは脳脊髄液に由来するサンプル、又は生検などにより細胞、組織、若しくは器官から得られるサンプルである。サンプルは、より好ましくは血液、血漿又は血清サンプルであり、最も好ましくは血漿サンプルである。生物学的サンプルは、本明細書中の他の箇所に明記されるような被験体に由来するものでありうる。上述のさまざまなタイプの生物学的サンプルを取得するための技術は、当技術分野で周知である。たとえば、血液サンプルは、血液採取により取得可能であり、一方、組織又は器官のサンプルは、例えば生検などにより取得可能である。
【0031】
上述のサンプルは、好ましくは、本発明の方法に使用される前に前処理される。以下にさらに詳細に記載されるように、この前処理としては、化合物の放出若しくは分離又は過剰の材料若しくは廃物の除去に必要な処理が挙げられうる。好適な技術としては、化合物の遠心分離、抽出、分画、限外濾過、タンパク質沈降とそれに続く濾過及び精製、並びに/又は濃縮が挙げられる。さらに、化合物分析に好適な形態又は濃度で化合物を提供するために、他の前処理が行われる。たとえば、本発明の方法でガスクロマトグラフィ連結質量分析を使用する場合、該ガスクロマトグラフィを行う前に化合物を誘導体化する必要があろう。好適な所要の前処理は、本発明の方法を実施するために使用される手段に応じて異なり、当業者に周知である。上に記載したように前処理されたサンプルもまた、本発明に従って用いられる「サンプル」という用語に包含される。
【0032】
上記方法においてサンプルは胃の治療を適用する直前又は後に被験体から採取されたものである。好ましくは、サンプルは、胃バイパス治療の前に又はその3若しくは6ヶ月後に採取することができる。
【0033】
本明細書において用いられる「被験体」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物を意味する。被験体は、より好ましくは霊長類であり、最も好ましくはヒトである。
【0034】
本明細書において用いられる「量の測定」という用語は、サンプル中の本発明の方法によって測定すべきバイオマーカーの少なくとも1つの特徴的特性を測定することを意味する。本発明において特徴的特性とは、バイオマーカーの物理的性質及び/又は化学的性質(生化学的性質を包含する)を特徴付ける特性のことである。そのような性質としては、たとえば、分子量、粘度、密度、電荷、スピン、光学活性、色、蛍光、化学発光、元素組成、化学構造、他の化合物と反応する能力、生物学的読取り系で応答を引き起こす能力(たとえば、レポーター遺伝子の誘導)などが挙げられる。該性質の値は、特徴的特性として機能しうる。また、当技術分野で周知の技術により測定可能である。さらに、特徴的特性は、標準的操作、たとえば、乗算、除算、又は対数計算のような数学的計算によりバイオマーカーの物理的性質及び/又は化学的性質の値から導かれる任意の特性でありうる。最も好ましくは、少なくとも1つの特徴的特性は、該少なくとも1つのバイオマーカー及びその量の測定及び/又は化学的同定を可能にする。従って、特性値はまた、その特性値を導いたバイオマーカーの存在量に関する情報を含むことが好ましい。例えば、バイオマーカーの特性値は、質量スペクトルのピークでありうる。かかるピークは、バイオマーカーの特徴的な情報、すなわちm/z情報、並びにサンプル中のそのバイオマーカーの存在量(すなわちその量)に関する強度値を含む。
【0035】
上述したように、サンプルに含まれる各バイオマーカーは、好ましくは、本発明に従って定量的又は半定量的に測定可能である。定量的測定では、本明細書において上で参照した特徴的特性(複数可)に関して測定される値に基づいて、バイオマーカーの絶対量若しくは正確な量が測定されるか又はバイオマーカーの相対量が測定されるかのいずれかであろう。バイオマーカーの正確な量を測定できないか又は測定しない場合、相対量を測定しうる。この場合、バイオマーカーの存在量が、該バイオマーカーを第2の量で含む第2のサンプルと対比して増大又は低減しているかどうかを、測定することが可能である。好ましい実施形態において、該バイオマーカーを含む第2のサンプルは、本明細書の他の箇所に記載されるように参照計算値であるべきである。従って、バイオマーカーの定量的分析は、バイオマーカーの半定量的分析と呼ばれることもある分析をも包含する。
【0036】
さらに、本発明の方法に使用される測定は、好ましくは、上で参照した分析ステップの前に化合物分離ステップを使用することを含む。好ましくは、該化合物分離ステップでは、サンプルに含まれる代謝物質の時間分解分離が得られる。したがって、好ましくは、本発明において使用される分離に好適な技術としては、すべてのクロマトグラフィ分離技術、たとえば、液体クロマトグラフィ(LC)、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、ガスクロマトグラフィ(GC)、薄層クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、又はアフィニティークロマトグラフィが挙げられる。これらの技術は、当技術分野で周知であり、当業者であればあとは苦もなく適用可能である。最も好ましくは、LC及び/又はGCが、本発明の方法で想定されるクロマトグラフィ技術である。バイオマーカーのそのような測定に好適なデバイスは、当技術分野で周知である。好ましくは、質量分析、特には、ガスクロマトグラフィ質量分析(GC-MS)、液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)、直接注入質量分析若しくはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR-MS)、キャピラリー電気泳動質量分析(CE-MS)、高速液体クロマトグラフィ連結質量分析(HPLC-MS)、四重極質量分析、任意の逐次連結質量分析、たとえばMS-MS若しくはMS-MS-MSなど、誘導結合プラズマ質量分析(IPC-MS)、熱分解質量分析(Py-MS)、イオン移動度質量分析、又は飛行時間質量分析(TOF)が使用される。最も好ましくは、以下に詳細に記載されるようにLC-MS及び/又はGC-MSが使用される。この技術については、たとえば、Nissen, Journal of Chromatography A, 703, 1995: 37-57、米国特許第4,540,884号、又は米国特許第5,397,894号(その開示内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に開示されている。質量分析技術の他の選択肢として又はそれに追加して、次の技術を化合物測定に使用可能である:核磁気共鳴(NMR)、磁気共鳴イメージング(MRI)、フーリエ変換赤外分析(FT-IR)、紫外(UV)分光、屈折率(RI)、蛍光検出、放射化学的検出、電気化学的検出、光散乱(LS)、分散ラマン分光、又はフレームイオン化検出(FID)。これらの技術は、当業者に周知であり、あとは苦もなく適用可能である。本発明の方法は、好ましくは、自動化により支援されるものとする。たとえば、サンプルの処理又は前処理をロボット工学により自動化することが可能である。データの処理及び比較は、好ましくは、好適なコンピュータプログラム及びデータベースにより支援される。上で本明細書に記載したような自動化を行えば、本発明の方法をハイスループット方式で使用することが可能である。
【0037】
さらに、少なくとも1つのバイオマーカーはまた、特異的な化学的アッセイ又は生物学的アッセイにより測定可能である。該アッセイは、サンプル中の少なくとも1つのバイオマーカーを特異的に検出できるような手段を含むものとする。好ましくは、該手段は、バイオマーカーの化学構造を特異的に認識可能であるか、又は他の化合物と反応する能力若しくは生物学的読取り系で応答を引き起こす能力(たとえば、レポーター遺伝子の誘導)に基づいてバイオマーカーを特異的に同定可能である。バイオマーカーの化学構造を特異的に認識可能な手段は、好ましくは、化学構造(たとえば、レセプター若しくは酵素)と特異的に相互作用する抗体又は他のタンパク質である。たとえば、特異的抗体は、当技術分野で周知の方法によりバイオマーカーを抗原として用いて取得可能である。本明細書中で参照される抗体は、ポリクロナール抗体及びモノクロナール抗体の両方、さらにはそれらのフラグメント、たとえば、抗原又はハプテンに結合可能なFv、Fab、及びF(ab)2フラグメントを包含する。本発明はまた、所望の抗原特異性を呈する非ヒトドナー抗体のアミノ酸配列とヒトアクセプター抗体の配列とが組み合わされたヒト化ハイブリッド抗体を包含する。さらに、一本鎖抗体も包含される。ドナー配列は、通常、ドナーの少なくとも抗原結合性アミノ酸残基を含むであろうが、ドナー抗体の他の構造上及び/又は機能上適合するアミノ酸残基をも含みうる。そのようなハイブリッドは、当技術分野で周知のいくつかの方法により調製可能である。バイオマーカーを特異的に認識可能な好適なタンパク質は、好ましくは、該バイオマーカーの代謝変換に関与する酵素である。該酵素は、バイオマーカーを基質として使用可能であるか又は基質をバイオマーカーに変換可能である。さらに、該抗体は、バイオマーカーを特異的に認識するオリゴペプチドを生成する基礎として使用可能である。これらのオリゴペプチドは、たとえば、該バイオマーカーに対する酵素の結合ドメイン又は結合ポケットを含むものとする。好適な抗体及び/又は酵素に基づくアッセイは、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、サンドイッチ酵素免疫検査、電気化学発光サンドイッチ免疫アッセイ(ECLIA)、解離増強ランタニド蛍光免疫アッセイ(DELFIA)、又は固相免疫検査でありうる。さらに、他の化合物と反応する能力に基づいて、すなわち、特異的な化学反応により、バイオマーカーを測定することも可能である。さらに、生物学的読取り系で応答を引き起こす能力に基づいて、サンプル中のバイオマーカーを測定することが可能である。生物学的応答は、サンプルに含まれるバイオマーカーの存在及び/又は量を示す読取り値として検出されるものとする。生物学的応答は、たとえば、遺伝子発現の誘導又は細胞若しくは生物の表現型応答でありうる。好ましい実施形態において、少なくとも1つのバイオマーカーの測定は、定量的方法、例えばサンプル中の少なくとも1つのバイオマーカーの量の測定もまた可能とする方法である。
【0038】
上に記載のように、少なくとも1つのバイオマーカーの測定は、質量分析(MS)を含む。本明細書において用いられる質量分析には、本発明に従って測定しようとする化合物、すなわちバイオマーカーに対応する分子量(すなわち質量)又は質量変数の測定を可能にする全ての技術が含まれる。本明細書において用いられる質量分析は、好ましくは、GC-MS、LC-MS、直接注入質量分析、FT-ICR-MS、CE-MS、HPLC-MS、四重極質量分析、順次に連結された質量分析、例えばMS-MS若しくはMS-MS-MS、ICP-MS、Py-MS、TOF、又は上記技術を用いた併用手法に関する。これらの技術を適用する方法は当業者に周知である。さらに、好適なデバイスは市販されている。より好ましくは、本明細書において用いられる質量分析はLC-MS及び/又はGC-MS、すなわち、前のクロマトグラフィー分離ステップと動作可能に連結された質量分析に関する。より好ましくは、本明細書において用いられる質量分析には四重極MSが含まれる。最も好ましくは、四重極MSは以下のように実施する:(a)質量分析器の最初の分析四重極におけるイオン化により生じるイオンの質量/電荷指数(m/z)の選択、(b)衝突ガスで満たされ、衝突室として機能する、さらに次の四重極に加速電圧を印加することによる、ステップ(a)で選択されたイオンのフラグメンテーション、(c)さらに次の四重極における、ステップ(b)のフラグメンテーションプロセスにより生じるイオンの質量/電荷指数の選択であって、それにより上記方法のステップ(a)〜(c)は、イオン化プロセスの結果として物質の混合物中に存在する全てのイオンの質量/電荷指数の分析を少なくとも1回行い、それにより四重極が衝突ガスで満たされるが、加速電圧は分析中には印加されない。本発明において用いるべき最も好ましい質量分析についての詳細はWO 03/073464号に見出すことができる。
【0039】
より好ましくは、質量分析は、液体クロマトグラフィ(LC)MS及び/又はガスクロマトグラフィ(GC)MSである。
【0040】
本明細書において用いられる液体クロマトグラフィとは、液相又は超臨界相における化合物(すなわち代謝物質)の分離を可能にする全ての技術を意味する。液体クロマトグラフィは、移動相中の化合物が固定相を通過することを特徴とする。化合物が異なる速度で固定相を通過する場合には、これらは、個々の化合物の各々がその特異的な保持時間(すなわち、化合物がシステムを通過するのに必要な時間)を有するため、所定時間で分離される。本明細書において用いられる液体クロマトグラフィにはHPLCも含まれる。液体クロマトグラフィ用の装置は市販されており、例えばAgilent Technologies, USAから入手可能である。本発明において使用されるガスクロマトグラフィは、原理として、液体クロマトグラフィと同等に動作する。しかし、液体移動相中の化合物(すなわち代謝物質)を固定相を通過させるのではなく、化合物は気体容積中に存在する。化合物は、固定相として固体支持体材料を含むカラム、又は固定相として機能する若しくはそれでコーティングされた壁を通過する。同様に、各化合物は、カラムを通過するのに要する特異的な時間を有する。さらにガスクロマトグラフィの場合には、 好ましくは、ガスクロマトグラフィの前に化合物を誘導体化することが想定される。誘導体化の好適な技術は当技術分野で周知である。好ましくは、本発明において誘導体化は、好ましくは極性化合物のメトキシ化(methoxymation)及びトリメチルシリル化、並びに、好ましくは非極性(すなわち親油性)化合物のメチル基転移、メトキシ化(methoxymation)及びトリメチルシリル化に関する。
【0041】
「参照」という用語は、本明細書において記載する医学的症状又は効果に相関付けることのできる、各バイオマーカーの特徴的特性の値を意味する。好ましくは、参照は、検査対象のサンプルに見いだされる、閾値量と同じ又はそれより高い量が医学的状態の存在の指標となり、一方、低い量が医学的状態の不在の指標となる、バイオマーカーの閾値量である。また好ましくは、参照は、検査対象のサンプル中に見いだされる、閾値と同じ又はそれより低い量が医学的状態の存在の指標となり、一方、高い量が医学的状態の不在の指標となる、バイオマーカーの閾値量であってもよい。
【0042】
上述の本発明の方法において、参照は、好ましくは、胃バイパス治療による治療が成功したことがわかっている被験体由来のサンプルから得られる参照量である。このような場合、試験サンプル中に見いだされる少なくとも1つのバイオマーカーの同じ又は類似の量は、胃バイパス治療による治療の成功の指標、又は肥満及び/若しくは糖尿病に関して健常被験体に由来することの指標となる。さらに、参照は、同様に好ましくは、参照計算値、最も好ましくは、検査される被験体を含む個体集団の少なくとも1つのバイオマーカーの相対量又は絶対量の平均値又は中央値でありうる。該個体集団の少なくとも1つのバイオマーカーの絶対量又は相対量は、本明細書中の他の箇所に明記されるように測定可能である。好適な参照値、好ましくは平均値又は中央値の計算方法は、当技術分野で周知である。上で参照した被験体集団は、複数の被験体、好ましくは、少なくとも5、10、50、100、1,000、又は10,000の被験体を含むものとする。本発明の方法により評価される被験体と該複数の被験体の被験体とは、同一種であることが理解されよう。また後者の場合には、試験サンプル中の、参照と同じ又は類似の少なくとも1つのバイオマーカーの量は、胃バイパス治療による治療の成功の指標となる。特徴的特性の値、定量的測定の場合は強度値が同一であれば、試験サンプルの量と参照量とは同一である。特徴的特性の値は同一であるが強度値に差があれば、それらの量は類似している。そのような差は、好ましくは、有意ではなく、強度の値が参照値に基づいて少なくとも1〜99パーセンタイル、5〜95パーセンタイル、10〜90パーセンタイル、20〜80パーセンタイル、30〜70パーセンタイル、40〜60パーセンタイルの範囲内、好ましくは参照値に基づいて50、60、70、80、90、若しくは95パーセンタイルであることを特徴とする。
【0043】
あるいは、しかしそれでもなお好ましくは、参照量は、胃バイパス治療による治療が成功しなかったことがわかっている被験体のサンプルから得られるものである。この場合には、試験サンプル中の、参照と差のある(異なる)少なくとも1つのバイオマーカーの量は、胃バイパス治療が成功することの指標となる。さらに参照はまた、胃バイパス治療を適用する前の被験体、すなわち肥満及び/又は糖尿病に罹患した被験体のサンプルにおいて測定すべき少なくとも1つのバイオマーカーの量である。このような場合、治療適用の前(すなわち参照)及び後(すなわち試験サンプル量)に得られるサンプル間での少なくとも1つのバイオマーカーの量の差は、上述した本発明の方法によって同定される有効な治療の指標となるだろう。好ましくは、観察される差は統計学的に有意な差である。相対量又は絶対量の差は、好ましくは、参照値に基づいて、45〜55パーセンタイル、40〜60パーセンタイル、30〜70パーセンタイル、20〜80パーセンタイル、10〜90パーセンタイル、5〜95パーセンタイル、1〜99パーセンタイルの著しい範囲外にある。好ましい変化及び調節倍率は、添付の表1A、1B、3及び5と、実施例に記載している。
【0044】
好ましくは、参照、すなわち少なくとも1つのバイオマーカーの少なくとも1つの特徴的特性の値は、データベースのような好適なデータ記憶媒体中に記憶されて、従って、将来の評価にも利用可能となる。
【0045】
「比較」という用語は、バイオマーカーの測定量が、参照と同一であるか若しくは類似しているか、又は参照と異なっているかを判定することを指す。好ましくは、バイオマーカーは、観察される差が本明細書の他の箇所で記載する統計学的手法により決定することができる、統計学的に有意である場合に、参照と差がある(異なる)とみなされる。具体的には、特徴的特性の値、及び定量的測定の場合には強度値が同じ場合には、試験サンプル及び参照の量は同じである。特徴的特性の値は同一であるが強度値に差があれば、それらの結果は類似している。そのような差は、好ましくは有意ではなく、強度の値が参照値に基づいて少なくとも1〜99パーセンタイル、5〜95パーセンタイル、10〜90パーセンタイル、20〜80パーセンタイル、30〜70パーセンタイル、40〜60パーセンタイルの範囲内、好ましくは参照値に基づいて50、60、70、80、90又は95パーセンタイルであることを特徴とする。上に記載した比較に基づいて、被験体は、胃バイパス治療による治療が成功した被験体の群又はそうではない群に割り当てることができる。
【0046】
本明細書中で参照される具体的バイオマーカーの場合、相対量の変化(すなわち、変化「倍率」)の好ましい値又は変化の種類(すなわち、より多い若しくはより少ない相対量及び/若しくは絶対量をもたらす「上方」調節若しくは「下方」調節)は、以下の表1〜5及び実施例に示される。被験体において所与のバイオマーカーが「上方調節」されることがこれらの表で示されるのであれば、相対量及び/又は絶対量は増加するであろう。「下方調節」されるのであれば、バイオマーカーの相対量及び/又は絶対量は減少するであろう。さらに、変化「倍率」は、増加又は減少の度合いを示す。たとえば、2倍増加とは、バイオマーカーの量が参照と比較して2倍量であることを意味する。
【0047】
比較は、好ましくは、自動化により支援される。たとえば、2つの異なるデータセット(たとえば、特徴的特性(複数可)の値を含むデータセット)を比較するためのアルゴリズムを含む好適なコンピュータプログラムを使用することが可能である。そのようなコンピュータプログラム及びアルゴリズムは、当技術分野で周知である。上に述べたとおりであるが、手動で比較を行うことも可能である。
【0048】
有利なことに、本発明の基礎となる研究において、前述した具体的バイオマーカーの量は、胃バイパス治療の成功の指標であることが見いだされた。従って、原則として、サンプル中の前記バイオマーカーの少なくとも1つを用いて、胃バイパス治療がそれを必要とする被験体について成功したかどうかを評価することができる。さらに、バイオマーカーは、さらなる推断、具体的には、糖尿病及び/又は肥満に関して胃バイパス治療の成功の評価も可能にする。本発明により、肥満治療症手術、特に胃バイパス治療の有効性を、信頼性が高く、かつ効率的な転帰パラメーター、すなわち前述のバイオマーカーに基づいて評価することができる。さらに、バイオマーカーはまた、糖尿病及び/又は肥満に関して治療の長期転帰の予測も可能にする。これは、被験体についての有害な事象又は疾患の再発の個々のリスクを層別化する上で、また、その結果として、被験体についてのさらなる診断及び治療手段に関して個別に推奨する上で特に有用である。さらには、本発明の基礎となる知見はまた、以下に詳しく記載するように、糖尿病及び/又は肥満に対するさらに別の肥満治療若しくは薬物に基づく治療法の開発も促進する。
【0049】
前文に記載した用語の定義及び説明は、以下に別途記載しない限り、必要な変更を加えて、以下に示す本発明の実施形態に準用する。
【0050】
本発明は、さらに、胃バイパス治療がそれを必要とする被験体に有益であるかどうかを予測する方法であって、
(a)被験体のサンプル中の、表6及び7に示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を測定するステップと、基準と比較し、これにより胃バイパス治療が有益であるかどうかを予測するステップ
を含む方法に関する。
【0051】
本明細書において用いられる「予測(する)」という用語は、被験体が将来の胃バイパス治療からの利益を享受する確率を決定することを意味する。こうした予測が、検査される被験体全て(100%)について正確である必要はないことは理解されよう。しかし、上記の予測は、被験体集団(コホート研究の被験体群)の統計学的に有意な一部の被験体について正確であることが想定される。一部が統計学的に有意であるかどうかは、本明細書の他の箇所に記載する統計学的手法により決定することができる。
【0052】
さらに、本明細書の他の箇所に記載するように、少なくとも、失敗の可能性又は胃バイパス治療による有害な合併症の発症の可能性よりも成功の可能性が高く、胃バイパス治療が成功するようであれば、胃バイパス治療は被験体に対して有益であると理解すべきである。
【0053】
本明細書で意味する胃バイパス治療を必要とする被験体とは、好ましくは、糖尿病を合併症として有する肥満に罹患した被験体であることが理解されよう。さらに、前述の方法において、前記サンプルは、胃バイパス治療をまだ受けていない被験体から得られたものである。
【0054】
さらに、前述の方法において、参照は、好ましくは、胃バイパス治療による治療が成功したことがわかっている被験体のサンプル(該サンプルは上記治療の前に取得されたものである)中で測定された少なくとも1つのバイオマーカーについての参照量である。こうした場合、試験サンプル中で測定した少なくとも1つのバイオマーカーの量が参照量と同じ又は類似する場合には、胃バイパス治療が有益となる被験体を示している。これに代わり、とはいえ同様に好ましいことであるが、上記参照は、胃バイパス治療による治療が成功しなかったことがわかっている被験体のサンプル(該サンプルは上記治療の前に取得されたものである)中で測定された少なくとも1つのバイオマーカーの参照量であってもよい。上記の場合、試験サンプル中で測定された少なくとも1つのバイオマーカーの量が参照量と差がある場合には、胃バイパス治療が有益であろう被験体を示すが、少なくとも1つのバイオマーカーの量が参照量と同じ又は類似する場合には、被験体は胃バイパス治療から利益を受けないであろうことを示している。少なくとも1つのバイオマーカーの調節の好ましい変化は、以下の表6及び7と実施例に示す。
【0055】
有利なことに、上述した本発明の方法は、胃バイパス治療のリスク評価を可能にする。具体的には、この方法の結果に基づき、被験体が、該治療からの利益をまったく受けないリスクがある場合に、該被験体をその治療から除外することができる。従って、有害な合併症を回避することができ、胃バイパス治療をより費用効果的に適用することができる。サンプルに含まれる、本方法について記載するバイオマーカーは、概して、胃バイパス治療が、これを必要とする被験体に有益であるかどうかを予測するのに有用であることが見いだされた。
【0056】
また、本発明では、胃バイパス治療に伴う支持療法が、それを必要とする被験体に有益な効果を有するかどうかを判定する方法であって、
(a)該被験体のサンプルにおいて、表8に示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)上記の量を参照と比較するステップであって、栄養補助食が有益な効果を有するかどうかが判定される上記ステップと
を含む方法も想定される。
【0057】
本明細書において用いられる「支持療法」という用語は、胃バイパス治療の成功の可能性を高めるために、被験体に適用される治療手段を意味する。この用語は、薬物に基づく治療法又は物理的療法、並びに栄養又は補給に関する推奨を含む。好ましくは、上記支持療法は、栄養療法、栄養補助食品、薬物及びこれらの組合せからなる群より選択される。
【0058】
こうした支持療法は、支持療法が胃バイパス治療の成功の可能性を高め、有害な合併症発症のリスクを低減するか、又は少なくとも被験体の健康状態全般を改善するのであれば、被験体に有益な効果を有するとみなされる。
【0059】
少なくとも1つのバイオマーカーの参照に関する変化の好ましい値は、以下の表8及び実施例に見出される。好ましい値は、ある代謝物質に関して、上記参照と比較して胃バイパス治療後の被験体の欠損を示した。好ましくは、支持療法は、前述の方法においてバイオマーカーとして役立つ代謝物質の補給である。
【0060】
本発明において、被験体のサンプル中の前述の代謝物質を用いて、胃バイパス治療に伴う支持療法が有益な効果を有するかどうかを診断することができる。前述の本発明の方法によって、支持療法が、胃バイパス治療で治療した被験体に有益であるか否かを容易かつ確実に決定することができる。従って、本方法は、被験体に有益な効果がまったくない支持療法を止め、有益な効果を確実に有するものに集中することを可能にする。
【0061】
本発明はまた、被験体における糖尿病を診断する方法であって、
(a)該被験体のサンプル中の、表9及び表10に示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量又は表15に示されるバイオマーカーの組合せの量を測定するステップと、
(b)上記の量を参照と比較するステップであって、これにより糖尿病さ診断される上記ステップと
を含む方法にも関する。
【0062】
本明細書において用いられる「診断」とは、被験体が疾患に罹患している確率を評価することを意味する。当業者には理解されるように、こうした評価は、一般に、診断される被験体の100%について正確でなくてもよいが、正確である方が好ましい。しかし、この用語は、被験体の統計学的に有意な一部を、疾患に罹患しているか又はその素因を有するものとして同定することができることを要する。一部が統計学的に有意であるかどうかは、本明細書の他の箇所に記載する公知の各種統計学的評価ツールを用いて、当業者により造作なく決定することができる。
【0063】
本発明において、診断には、該当疾患又はその症状のモニター、確認、及び分類が含まれる。モニターとは、すでに診断した疾患、又は合併症の追跡を維持すること、例えば該疾患の進行若しくは寛解、疾患の期間中若しくは疾患の良好な治療後に発症した疾患若しくは合併症の進行に対する特定の治療の影響を分析することに関する。確認は、別の指標又はマーカーを用いてすでに実施された診断を補強又は実証することに関する。分類は、症状の強度又は種類に応じて診断結果を様々なクラス、例えば、本明細書の他の箇所に記載するような糖尿病タイプに割り当てることに関する。
【0064】
前述のバイオマーカーのいくつかは、好ましくは疾患の存在、不在又は強度の指標、すなわち従来の診断指標(好ましくは、表9を参照)であり、他は疾患の進行若しくは寛解の指標である(好ましくは、表10を参照)。
【0065】
糖尿病を診断するためのバイオマーカーの好ましい組合せは、以下の表15に列挙した組合せ1〜20である。
【0066】
前述の本発明の方法に従い用いられる用語「糖尿病」又は「真性糖尿病」という用語は、一般に、グルコース代謝が障害された疾患状態を意味する。こうした障害により、高血糖が起こる。世界保健機構(World Health Organisation)(WHO)によれば、糖尿病は、4つのクラスにさらに分類することができる。1型糖尿病は、インスリンの不足により引き起こされる。インスリンは、いわゆる膵島細胞により産生される。該細胞は、1型糖尿病において自己免疫反応により破壊される可能性がある(1a型)。さらに、1型糖尿病は、特発性異型(1b型)も包含する。2型糖尿病は、インスリン抵抗性によって引き起こされる。3型糖尿病は、現行の分類によれば、その他すべての特定の型の糖尿病を含む。例えば、β細胞が、インスリン産生に影響を及ぼす遺伝的欠陥を有する場合や、インスリン抵抗性が遺伝的に起こる場合、又は膵臓自体が破壊若しくは損傷している場合もある。さらに、ホルモン調節異常又は薬物が3型糖尿病を引き起こすこともある。4型糖尿病は、妊娠期間中に起こりうる。本明細書において用いられる糖尿病とは、好ましくは2型糖尿病を意味する。ドイツ糖尿病学会(German Society for Diabetes)によれば、糖尿病は、血漿グルコースレベルが空腹状態で110 mg/dlを超えるか、又は食後220 mg/dlを超えるかのいずれかにより診断される。別の好ましい診断方法は、本明細書の他の箇所に開示されている。糖尿病のさらに別の症状は、当分野において周知であり、ステッドマン(Stedman)又はレンベル(Pschyrembl)のような医学の標準的教科書に記載されている。
【0067】
上述した本発明の方法に関連して「参照」という用語は、糖尿病と相関付けることができる少なくとも1つのバイオマーカーの参照量を意味する。こうした参照量は、好ましくは、糖尿病に罹患していることがわかっている被験体に由来するサンプルから得られる。参照量は、本発明の方法を適用することにより取得することができる。これに代わり、とはいえ好ましいことではあるが、参照量は、糖尿病に罹患していないことがわかっている被験体、すなわち、糖尿病に関して、より好ましくは他の疾患に関しても、健康な被験体のサンプルから取得することができる。さらに、参照は、好ましくは参照計算値、最も好ましくは、検査しようとする被験体を含む個体集団の少なくとも1つのバイオマーカーの相対量又は絶対量の平均値又は中央値である。上記個体集団の少なくとも1つのバイオマーカーの絶対量又は相対量は、本明細書において他の箇所に明記されているように測定することができる。好適な参照値、好ましくは平均値又は中央値の計算方法は、当分野で周知である。前述した被験体集団は、複数の被験体、好ましくは少なくとも5、10、50、100、1,000又は10,000の被験体を含むものとする。本発明の方法により診断される被験体と、該複数の被験体の被験体は同一種であることは理解すべきである。
【0068】
糖尿病に罹患していることがわかっている被験体又はグループから参照を取得する場合、試験サンプルから得られるバイオマーカー測定値と、前述の参照との間の同一度又は類似度に基づいて、すなわち、少なくとも1つのバイオマーカーに関する同一若しくは類似の定性的又は定量的な組成に基づいて、該疾患を診断することができる。
【0069】
糖尿病に罹患していないことがわかっている被験体又はグループから参照を取得する場合、試験サンプル中の測定量と、前述の参照量との間の差、すなわち、少なくとも1つのバイオマーカーに関する定性的又は定量的な組成の差に基づいて、該疾患を診断することができる。上に明記したように参照計算値を用いる場合も同じことがあてはまる。上記の差は、少なくとも1つのバイオマーカーの絶対若しくは相対量の増加(上方調節と呼ばれることもある;また、実施例も参照されたい)、あるいは上記量のいずれかの減少又は少なくとも1つのバイオマーカーの検出可能量の非存在(下方調節と呼ばれることもある;また、実施例も参照されたい)であってよい。上述した本発明の方法に関して述べる具体的バイオマーカーについては、相対量の変化についての好ましい値(すなわち、変化「倍率」)又は変化の種類(すなわち、より多い若しくはより少ない相対量及び/若しくは絶対量をもたらす「上方」若しくは「下方」調節)を以下の表9〜10に示す。
【0070】
従って、本発明の方法は、好ましい実施形態において、糖尿病に罹患していることがわかっている被験体又はグループから得られた参照を含む。最も好ましくは、試験サンプルの結果と該参照の結果とが同一であるか又は類似している場合(すなわち、少なくとも1つのバイオマーカーの相対量又は絶対量が類似している場合)には、糖尿病を示している。本発明の方法の別の好ましい実施形態では、参照は、糖尿病に罹患していないことがわかっている被験体から導かれる、又は、例えば糖尿病に罹患していないことがわかっている被験体のグループから導かれる、参照計算値である。最も好ましくは、少なくとも1つのバイオマーカーが存在しないか、又は参照と比較して試験サンプル中の量が異なる、好ましくは有意に異なる(すなわち、絶対量若しくは相対量に有意な差が観測される)場合には、糖尿病を示している。
【0071】
有利なことに、本発明の基礎をなす研究において、前述の本発明の方法に関連して述べるバイオマーカーは、一般に被験体のサンプル中で糖尿病を診断するのに特に有用であることが見いだされた。本発明によって、糖尿病を、より高い信頼性で、しかも効率的に診断することができ、その結果、糖尿病の治療を改善することができる。
【0072】
本発明は、さらに、被験体における除脂肪体重を診断する方法であって、
(a)被験体のサンプル中の、表12に示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)上記の量を参照と比較するステップであって、除脂肪体重量が診断される上記ステップ
を含む方法にも関する。
【0073】
本明細書において用いられる「除脂肪体重」という用語は、貯蔵脂肪量と骨量を除いた被験体の体重を意味する。除脂肪体重は、好ましくは全体重の百分率で表す。全体重と比較した除脂肪体重は、過剰な体貯蔵脂肪に関連する又は起因する疾患及び障害の重要な指標である。従って、除脂肪体重は低いより高い方が好ましいことになる。低い除脂肪体重は、好ましくは糖尿病及び/又は肥満の素因増大の指標である。さらに、除脂肪体重の変化は、薬物若しくは運動又は生活習慣の推奨事項が被験体の健康全般に有効であるかどうかを決定する指標として用いることもできる。除脂肪体重は、従来の技術では、水中体重秤量(水浸法)、BOD POD(コンピューター化チャンバー)、又は二重エネルギーX線吸収法などの専用の装置を必要とする方法によって測定される。
【0074】
本発明において、前述したバイオマーカーは、除脂肪体重と密接に相関していることが見出された。上記の相関は、被験体の除脂肪体重を測定する、又はその変化を測定する、すなわち、除脂肪体重に関して被験体をモニターするのに用いることができる。被験体の除脂肪体重を測定する場合、少なくとも1つのバイオマーカーの量を、除脂肪体重の量を用いて検量する必要がある。例えば、検量線に基づいて、除脂肪体重の絶対量を少なくとも1つのバイオマーカーの測定絶対量から計算することができる。従って、上記の場合に好適な参照は、好ましくは少なくとも1つのバイオマーカーの検量値又は少なくとも1つのバイオマーカーの検量線である。こうした検量は、当業者が造作なく行うことができる。相対変化を測定する場合には、被験体の2つ以上のサンプルにおける少なくとも1つのバイオマーカーの変化を決定することができるが、上記の2つ以上のサンプルは、異なる時点で取得したものである。こうした時点は、好ましくは、前述の薬物投与又は運動の実施又は生活習慣推奨事項などの外的刺激の開始と間隔をあけて設定する。
【0075】
本発明によって、除脂肪体重は、特に臨床的慣用手順の一部として、容易にかつ高い信頼性で測定することができる。過剰な貯蔵脂肪に関連する又はこれに起因する疾患及び障害、例えば糖尿病又は肥満を発症する被験体のリスクに影響する変化を綿密にモニターし、該リスクを阻止する手段の有効性を評価することができる。
【0076】
さらに、本発明は、被験体のエネルギー状態を診断する方法であって、
(a)被験体のサンプル中の、表11に示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)上記の量を参照と比較するステップであって、これによりエネルギー状態が同定される上記ステップ
を含む方法も包含する。
【0077】
本明細書において用いられる「エネルギー状態」という用語は、エネルギー取込みとエネルギー消費の間のエネルギー均衡を意味する。負のエネルギー状態は、エネルギー消費がエネルギー取込みを上回ること特徴とする。言い換えれば、被験体は、取込み量より多いエネルギー当量を燃焼したことになる。その結果、被験体は、貯蔵脂肪の形態でエネルギー当量を貯蔵しない(すなわち、負のエネルギー状態を有する)。従って、均衡又は正のエネルギー状態に伴う前記障害又は疾患を発症するリスクが有意に低減する。さらに、健康状態全般が改善されて、死亡率が低下し、加齢プロセスも遅くなるであろう。
【0078】
本発明において、前述したバイオマーカーは、被験体のエネルギー状態と密接に相関していることが見出された。上記の相関は、被験体の絶対エネルギー状態を測定する又はその変化を測定する、すなわち、エネルギー状態に関して被験体をモニターするのに用いることができる。被験体の絶対エネルギー状態を測定する場合には、少なくとも1つのバイオマーカーの量を、エネルギー状態を用いて検量する必要がある。例えば、検量線に基づいて、絶対エネルギー状態を少なくとも1つのバイオマーカーの測定絶対量から計算することができる。従って、上記の場合に好適な参照は、好ましくは少なくとも1つのバイオマーカーの検量値又は少なくとも1つのバイオマーカーの検量線である。こうした検量は、当業者が造作なく行うことができる。相対変化を測定する場合には、被験体の2つ以上のサンプルにおける少なくとも1つのバイオマーカーの変化を決定することができる。尚、上記の2つ以上のサンプルは、異なる時点で取得したものである。こうした時点は、好ましくは、前述の薬物投与又は運動の実施又は生活習慣推奨事項などの外的刺激の開始と間隔をあけて設定する。
【0079】
本発明によって、エネルギー状態を容易にかつ高い信頼性で測定することができる。上述した本発明の方法について説明したように、過剰な体貯蔵脂肪に関連する又はこれに起因する疾患及び障害、例えば糖尿病又は肥満を発症する被験体のリスクに影響を及ぼす変化を綿密にモニターし、該リスクを阻止する手段の有効性を評価することができる。
【0080】
さらに、本発明は、糖尿病及び/又は肥満に対する治療を同定する方法であって、
(a)糖尿病及び/又は肥満に対して有効であると思われる治療を適用した被験体のサンプルにおいて、表1A、1B、3及び5のいずれかに示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)上記の量を参照と比較するステップであって、これにより治療が同定される上記ステップ
を含む方法にも関する。
【0081】
本明細書において用いられる「治療」という用語は、糖尿病及び/若しくは肥満又は該疾患に伴う症状を治療又は改善することができる治療手段を意味する。好ましくは、上記の治療は、薬物の投与、高栄養食、栄養補助食品、手術、肥満治療症手術、身体活動の支援、生活習慣の提案、並びにこれらの組合せからなる群より選択される。
【0082】
前記方法において記載される治療は、必ずしも治療対象の被験体全てに有効であるとは限らないことは理解されよう。しかし、本方法により同定しようとする治療は、被験体集団の統計学的に有意な一部に少なくとも有効であるものとする。こうした被験体の一部が統計学的に有意であるか否かは、本明細書の他の箇所に詳しく記載されている手法により決定することができる。
【0083】
好ましくは、糖尿病に対する治療は、表2及び表3に示される群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーにより同定し、並びに/又は肥満に対する治療は、表4及び表5に示される群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーにより同定するものとする。
【0084】
さらに上述した本発明の方法において用いられる「被験体」という用語は、治療を適用する前に糖尿病及び/又は肥満に罹患していた被験体を意味する。
【0085】
上述した本発明の方法に関連して「参照」という用語は、糖尿病及び/又は肥満の治療の成功を示す少なくとも1つのバイオマーカーの参照量を意味する。こうした参照量は、好ましくは、治療が成功したことがわかっている被験体に由来するサンプルから得られる。好ましくは、上記被験体は、本明細書の他の箇所に記載した胃バイパス治療により治療されている。参照量は、本発明の方法を適用することにより取得することができる。これに代わり、とはいえ好ましいことではあるが、参照量は、糖尿病及び/又は肥満に罹患していないことがわかっている被験体、すなわち、糖尿病及び/又は肥満に関して、より好ましくは他の疾患に関しても健康な被験体のサンプルから取得することができる。さらに、該参照は、同様に好ましくは、参照の計算値、最も好ましくは、検査しようとする被験体を含む個体集団の少なくとも1つのバイオマーカーの相対量又は絶対量の平均値又は中央値である。上記個体集団の少なくとも1つのバイオマーカーの絶対量又は相対量は、本明細書の他の箇所に明記されるように決定することができる。好適な参照値、好ましくは平均値又は中央値の計算方法は、当分野で周知である。前述した被験体集団は、複数の被験体、好ましくは少なくとも5、10、50、100、1,000又は10,000の被験体を含むものとする。本発明の方法により診断しようとする被験体と、上記複数の被験体の被験体が同一種であることは理解すべきである。治療が成功したことがわかっている被験体若しくはグループ、又は糖尿病及び/若しくは肥満に罹患していないことがわかっているグループから参照を取得する場合には、試験サンプルから得られるバイオマーカー測定値と、前述の参照との同一度又は類似度に基づいて、すなわち、少なくとも1つのバイオマーカーに関する同一又は類似の定性的又は定量的な組成に基づいて、該治療を同定することができる。特徴的特性の値、また、定量的測定の場合は強度値が同一である場合には、試験サンプルの量と参照量は同一である。特徴的特性の値は同じであるが、強度値に差があれば、上記の量は類似している。こうした差は、好ましくは有意ではなく、強度の値が、少なくとも参照値の1〜99パーセンタイル、5〜95パーセンタイル、10〜90パーセンタイル、20〜80パーセンタイル、30〜70パーセンタイル、40〜60パーセンタイルの範囲内、好ましくは参照値の50、60、70、80、90若しくは95パーセンタイルであることを特徴とする。
【0086】
しかし「参照」はまた、治療を適用する前の被験体、すなわち、肥満及び/又は糖尿病に罹患しているときの被験体のサンプル中で測定する少なくとも1つのバイオマーカーの量であってもよい。上記の場合、治療の適用前に取得したサンプル(すなわち、参照)と治療の適用後に取得したサンプル(すなわち、試験サンプル量)との少なくとも1つのバイオマーカーの量の差は、上述した本発明の方法により同定される有効な治療を示すであろう。好ましくは、観測された差は、本明細書の他の箇所に記載するように、統計学的に有意なものである。好ましい変化及び調節倍率は、添付の表1A、1B、3及び5と実施例にも記載されている。
【0087】
有利なことに、本発明の基礎をなす研究において、前述した本発明の方法に関連して述べられるバイオマーカーは、特に、糖尿病及び/又は肥満に対して有効である治療を同定するのに有用であることが見いだされた。本発明によって、糖尿病及び肥満の治療を、高い信頼性で、しかも効率的に同定することができる。さらに、個体に対して治療が有効であるか否かを評価することも可能である。
【0088】
少なくとも1つのバイオマーカーを測定するための前述の方法は、デバイスに組み込むことができる。本明細書において用いられるデバイスは、少なくとも前述の手段を含むものである。さらに、デバイスは、好ましくは、少なくとも1つのバイオマーカーの検出された特徴的特性、同様に好ましくは測定されたシグナル強度の比較及び評価のための手段も含む。デバイスの手段は、好ましくは、互いに動作可能に連結されている。これらの手段を動作可能に連結する方法は、デバイスに組み込まれる手段の種類に応じて異なる。例えば、自動で定性的又は定量的にバイオマーカーを測定する手段を適用する場合には、評価を容易にするために、該自動動作手段により得られるデータを例えばコンピュータープログラムにより処理することが可能である。好ましくは、そのような場合、上記手段は単一のデバイスに組み込まれる。従って、上記デバイスは、バイオマーカーの分析ユニットと、得られたデータを評価のために処理するコンピューターユニットとを備えていてもよい。あるいは、検査ストリップのような手段をバイオマーカーの測定に用いる場合には、比較のための手段は、前述したように医学的状態を示すことがわかっている結果データに測定結果データを割り当てる対照ストリップ又は対照表を含んでもよい。好ましいデバイスは、専門臨床医の特別な知識がなくても適用可能なもの、例えば単にサンプルをロードするだけでよい検査ストリップ又は電子デバイスである。
【0089】
他の選択肢として、少なくとも1つのバイオマーカーの測定方法は、好ましくは互いに動作可能に連結されたいくつかのデバイスを含むシステムに組み込むことが可能である。具体的には、上に詳細に記載したように本発明の方法を実施できるように手段を連結する必要がある。したがって、動作可能に連結された(operatively linked)とは、本明細書において用いられる場合、好ましくは、機能的に連結された(functionally linked)ことを意味する。本発明のシステムに使用される手段に応じて、該手段間のデータ伝送を可能にする手段、たとえば、ガラスファイバーケーブル及びハイスループットデータ伝送用の他のケーブルを用いて各手段を他の手段に接続することにより、該手段を機能的に連結することが可能である。それにもかかわらず、本発明では、たとえばLAN(無線LAN、W-LAN)を介する手段間の無線データ転送も想定される。好ましいシステムは、バイオマーカーを測定する手段を含む。本明細書において用いられるバイオマーカーの測定手段とは、バイオマーカーの分離手段(たとえばクロマトグラフィデバイス)、及び代謝物質の測定手段(たとえば質量分析デバイス)を含むものである。好適なデバイスについては、上に詳細に記載されている。本発明のシステムに使用される好ましい化合物分離手段としては、クロマトグラフィデバイス、より好ましくは、液体クロマトグラフィ用、HPLC用、及び/又はガスクロマトグラフィ用のデバイスが挙げられる。好ましい化合物測定デバイスは、質量分析デバイス、より好ましくは、GC-MS、LC-MS、直接注入質量分析器、FT-ICR-MS、CE-MS、HPLC-MS、四重極質量分析器、逐次連結質量分析器(たとえばMS-MS若しくはMS-MS-MS)、ICP-MS、Py-MS又はTOFを含む。好ましくは、分離手段と測定手段とを互いに連結させる。最も好ましくは、本明細書中の他の箇所に詳細に記載されるように、LC-MS及び/又はGC-MSを本発明のシステムに使用する。さらに、バイオマーカーの測定手段から得られた結果の比較手段及び/又は分析手段も含まれるものとする。結果の比較手段及び/又は分析手段は、少なくとも1つのデータベース、及び結果を比較するために実装されたコンピュータプログラムを含みうる。また、上述のシステム及びデバイスの好ましい実施形態については、以下に詳細に記載する。
【0090】
さらに本発明は、上に記載の医学的状態又は効果の指標(すなわち、胃バイパスが成功したかどうかの評価、胃バイパスが有益であるかどうかの予測、胃バイパスに伴う支持療法が有益な効果を有するかどうかの判定、糖尿病の診断、除脂肪体重の診断、エネルギー状態の診断、又は治療の同定)となる少なくとも1つのバイオマーカーの特性値を含むデータ集合に関する。
【0091】
「データ集合」という用語は、物理的及び/又は論理的に一まとめにしうるデータの集合を意味する。したがって、データ集合は、単一のデータ記憶媒体又は互いに動作可能に連結された物理的に分離されたデータ記憶媒体に組込み可能である。好ましくは、データ集合は、データベースを利用して実装される。したがって、本明細書において用いられるデータベースとは、好適な記憶媒体上のデータ集合を包含するものである。さらに、データベースは、好ましくは、データベース管理システムをも含む。データベース管理システムは、好ましくは、ネットワーク型、階層型、又はオブジェクト指向型のデータベース管理システムである。そのうえさらに、データベースは、連邦データベース又は統合データベースでありうる。より好ましくは、データベースは、分散型(連邦)システムとして、たとえばクライアントサーバーシステムとして実装されるであろう。より好ましくは、データベースは、検索アルゴリズムにより試験データセットをデータ集合に含まれるデータセットと比較できるように構築可能である。具体的には、そのようなアルゴリズムを用いて、上に記載した医学的状態又は効果の指標となる類似又は同一のデータセットが得られるように、データベースを検索することが可能である(たとえば、クエリー検索)。したがって、データ集合で同一又は類似のデータセットを同定できれば、試験データセットは、該医学的状態又は効果と関連付けられるであろう。その結果として、データ集合から得られた情報を、例えば上述した本発明の方法のための参照として用いることが可能である。より好ましくは、データ集合は、上で記載した群のいずれかに含まれるすべての代謝物質の特性値を含む。
【0092】
上記を考慮して、本発明は、上述のデータ集合を含むデータ記憶媒体を包含する。
【0093】
本明細書において用いられる「データ記憶媒体」という用語は、単一の物理的要素に基づくデータ記憶媒体、たとえば、CD、CD-ROM、ハードディスク、光記憶媒体、又はディスケットを包含する。さらに、この用語は、好ましくはクエリー検索に好適な方式で上述のデータ集合を提供するように互いに動作可能に連結された物理的に分離された要素よりなるデータ記憶媒体をも包含する。
【0094】
本発明はまた、
(a)サンプルの少なくとも1つのバイオマーカーの特性値を比較するための手段と、それと動作可能に連結された
(b)上に記載したようなデータ記憶媒体
とを含むシステムに関する。
【0095】
本明細書において用いられる「システム」という用語は、互いに動作可能に連結された異なる手段を意味する。該手段は、単一のデバイスに組み込みうるか、又は互いに動作可能に連結された物理的に分離されたデバイスでありうる。バイオマーカーの特性値を比較するための手段は、好ましくは、上で述べたような比較用のアルゴリズムに基づいて動作する。データ記憶媒体は、好ましくは、それぞれの記憶データセットが上で記載した医学的状態又は効果の指標となる上述のデータ集合又はデータベースを含む。したがって、本発明のシステムを用いれば、データ記憶媒体に記憶されたデータ集合に試験データセットが含まれるかどうかを同定することが可能である。その結果として、本発明の方法は、本発明のシステムにより実施することができる。
【0096】
システムの好ましい実施形態では、サンプルのバイオマーカーの特性値を測定する手段が含まれる。「バイオマーカーの特性値を測定する手段」という用語は、好ましくは、代謝物質を測定するための上述のデバイス、たとえば、質量分析デバイス、NMRデバイス、又はバイオマーカーの化学的アッセイ若しくは生物学的アッセイを行うためのデバイスを意味する。
【0097】
さらに本発明は、上に記載した群のいずれかから選択される少なくとも1つのバイオマーカーの測定手段を含む診断用手段に関する。
【0098】
「診断手段」という用語は、好ましくは、本明細書中の他の箇所に詳細に明記されるような診断用デバイス、システム、又は生物学的アッセイ若しくは化学的アッセイを意味する。
【0099】
「少なくとも1つのバイオマーカーを測定する手段」という表現は、バイオマーカーを特異的に認識可能なデバイス又は作用剤を意味する。好適なデバイスは、分光測定デバイス、たとえば、質量分析デバイス、NMRデバイス、又はバイオマーカーの化学的アッセイ若しくは生物学的アッセイを行うためのデバイスでありうる。好適な作用剤は、バイオマーカーを特異的に検出する化合物でありうる。本明細書において用いられる検出とは、二工程プロセスであってもよい。すなわち、最初に、化合物を検出対象のバイオマーカーに特異的に結合させ、続いて、検出可能なシグナル、たとえば、蛍光シグナル、化学発光シグナル、放射性シグナルなどを発生させることが可能である。検出可能なシグナルを発生させるために、さらなる化合物が必要になることもある。こうした化合物はすべて、「少なくとも1つのバイオマーカーを測定する手段」という用語に包含される。バイオマーカーに特異的に結合する化合物は、本明細書中の他の箇所に詳細に記載されており、好ましくは、酵素、抗体、リガンド、レセプター、又はバイオマーカーに特異的に結合する他の生物学的分子若しくは化学物質などである。
【0100】
さらに本発明は、上に記載した群のいずれかから選択される少なくとも1つのバイオマーカーを含む診断用組成物に関する。
【0101】
上述した群のいずれかから選択される少なくとも1つのバイオマーカーは、バイオマーカー、すなわち本明細書の他の箇所に記載したように被験体の医学的状態又は効果についての指標分子として機能するだろう。従って、代謝物質分子自体は、診断用組成物として、好ましくは本明細書において記載する手段によって可視化又は検出する際の診断用組成物として機能しうる。従って、本発明に従ってバイオマーカーの存在を示す診断用組成物はまた、物理的にはバイオマーカー、例えば抗体の複合体を含んでもよく、検出対象の代謝物質は診断用組成物として機能する。そのため、診断用組成物はさらに、本明細書の他の箇所に記載される代謝物質の検出用手段を含んでもよい。あるいは、検出手段、例えばMS又はNMRに基づく技術を使用する場合には、リスク状態の指標として機能する分子種は、検査対象の試験サンプルに含まれる少なくとも1つのバイオマーカーでありうる。従って、本発明に関して記載する少なくとも1つのバイオマーカーは、バイオマーカーとしてその同定のために、それ自体が診断用組成物として機能しうる。
【0102】
本発明の方法に従って測定しようとするバイオマーカーを以下の表に記載する。その名称で正確に定義されていないバイオマーカーはさらに表13及び14において特性を記載している。
【0103】
(表1A)


【0104】
(表1B)

【0105】
(表2)

【0106】
(表3)
3つの時点(手術前、手術後3ヶ月及び6ヵ月)のすべてでインスリン感受性と有意に相関する代謝物質(QUICKIにより測定、Yokoyama Hら、Diabetes Care, 2003)。インスリン感受性との負の相関は、上方調節された(増加した)代謝物質量(対照グループと比較して)が、糖尿病又は糖尿病リスクと関連することを示している。インスリン感受性との正の相関は、下方調節された代謝物質量(対照グループと比較して)が、糖尿病又は糖尿病リスクと関連することを示している。手術後の代謝物質レベルの正常への変化は、胃バイパス治療の成功を示すものである。

【0107】
(表4)

【0108】
(表5)
3つの時点(手術前、手術から3ヶ月後及び6ヵ月後)のすべてで体脂肪量(全体重の%で示す)と有意に相関する代謝物質。体脂肪量(%)との正の相関は、上方調節された代謝物質量(対照グループと比較して)が、肥満又は肥満リスクと関連することを示している。体脂肪(%)との負の相関は、下方調節された(減少した)代謝物質量(対照グループと比較して)が、肥満又は肥満リスクと関連することを示している。手術後の代謝物質レベルの正常への変化は、胃バイパス治療の成功を示すものである。

【0109】
(表6)
手術後12ヵ月を手術前の値と比較して、体脂肪量(%)の変化と相関する手術前時点の代謝物質レベル。体脂肪量(%)の変化との正の相関は、手術前時点での上方調節された代謝物質量(対照グループと比較して)が、胃バイパス治療の成功を予測することを示している。体脂肪量(%)の変化との負の相関は、手術前時点での下方調節された(減少した)代謝物質量(対照グループと比較して)が、胃バイパス治療の成功を予測することを示している。

【0110】
(表7)
手術後12ヵ月を手術前の値と比較して、インスリン感受性(QUICKIにより測定)の変化と相関する手術前時点の代謝物質レベル。インスリン感受性の変化との正の相関は、手術前時点で上方調節された(増加した)代謝物質量(対照グループと比較して)が、胃バイパス治療の成功を予測することを示している。インスリン感受性の変化との負の相関は、手術前の時点で下方調節された(減少した)代謝物質量(対照グループと比較して)が、胃バイパス治療の成功を予測することを示している。

【0111】
(表8)

【0112】
(表9)


【0113】
(表10)
3つの時点(手術前、手術後3及び6ヵ月)すべてで、インスリン感受性(QUICKIにより測定)と有意に相関する代謝物質。インスリン感受性との負の相関は、上方調節された(増加した)代謝物質量(対照グループと比較して)が、糖尿病又は糖尿病リスクと関連することを示している。インスリン感受性との正の相関は、下方調節された(減少した)代謝物質量(対照グループと比較して)が、糖尿病又は糖尿病リスクと関連することを示している。

【0114】
(表11)
3つの時点(手術前、手術後3及び6ヵ月)すべてで、安静時エネルギー消費と相関する代謝物質。安静時エネルギー消費との負の相関は、上方調節された(増加した)代謝物質量(対照グループと比較して)が、負のエネルギー状態と関連することを示している。安静時エネルギー消費との正の相関は、下方調節された(減少した)代謝物質量(対照グループと比較して)が、負のエネルギー状態と関連することを示している。

【0115】
(表12)
3つの時点(手術前、手術後3及び6ヵ月)すべてで、除脂肪体重(%)と相関する代謝物質。除脂肪体重(%)との正の相関は、上方調節された(増加した)代謝物質量(対照グループと比較して)が、高い除脂肪体重(%)と関連することを示している。除脂肪体重(%)との負の相関は、下方調節された(減少した)代謝物質量(対照グループと比較して)が、高い除脂肪体重(%)と関連することを示している。

【0116】
(表13)

【0117】
(表14)


【0118】
(表15)


【0119】
本明細書において上に参照したすべての参照文献は、その全開示内容、並びに以上の説明で明示的に参照した具体的な開示内容に関して、本明細書に参照として組み込むものとする。
【0120】
以下の実施例により、本発明を説明するが、該実施例によって本発明の範囲を制限又は限定する意図はない。
【実施例】
【0121】
実施例1
サンプルの調製
試験は、Hotel-Dieu Hospital(フランス、パリ)の栄養学科から先を見越して募った、年齢18〜61歳で、重度の肥満(BMI>35kg/m2、中央BMI=44.6、BMIの標準偏差=6.8)に分類される14人の女性被験体を含んだ。そのうち5人は糖尿病/肥満に分類され、9人は非糖尿病/肥満に分類された。手術前評価は、病歴と、身体、栄養、心肺及び心理学的評価を含むものであった。パラメーターはすべて午前中に空腹状態で評価した。肥満被験体は、手術前の少なくとも3ヶ月間体重が安定しており、肥満症手術の基準、すなわち、BMI≧40kg/m2又は≧35kg/m2で、少なくとも2つの共存症(高血圧、2型糖尿病又は脂質異常症)を満たした。上記の被験体は、急性又は慢性炎症性疾患、感染性疾患、癌及び/又は既知のアルコール消費(毎日>20g)、並びにその他の肝疾患の原因(ウイルス性肝炎、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、自己免疫性肝炎、抗トリプシン欠乏症)が挙げられる。Hotel-Dieu Hospitalの倫理委員会により臨床検査が承認され、被験体全員がインフォームドコンセントを提出した。
【0122】
ルーワイ胃バイパス(RGB)手術は、最も一般的かつ効果的な技術であり、本試験ではこれを患者全員に実施した。該手術は、食物摂取を制限するために小さい胃嚢を形成する。空腸下部と上記嚢を吻合することにより、小腸のY型セクションを形成して、食物が胃下部、十二指腸及び空腸の最初の部分をバイパスするようにする。血清サンプルを採取して、代謝物質のプロファイリング及び標準臨床パラメーター分析に付した。代謝物質のプロファイリングは、胃バイパス手術前(0ヶ月)、手術後3ヶ月及び6ヵ月に取得したサンプルについて実施した。標準臨床パラメーターを同じサンプルについて分析し、さらに胃バイパス手術後12ヶ月の時点でも分析した。
【0123】
実施例2
代謝物質プロファイリング
質量分析法に基づく代謝物質のプロファイリング分析のために、血漿サンプルを抽出し、極性及び非極性画分を取得した。GC-MS分析のために、酸性条件下で非極性画分をメタノールで処理することにより、脂肪酸メチルエステルを得た。両方の画分をO-メチルヒドロキシアミンヒドロクロリド及びピリジンでさらに誘導体化して、オキソ基をO-メチロキシムに変換した後、シリル化剤で処理してから分析に付した。LC-MS分析では、両画分を適切な溶媒混合物で再構成した。逆相分離カラムで勾配溶出によりHPLCを実施した。質量分析のために、WO2003073464号に記載のように、全スクリーン分析と並行して標的及び高感度MRM(多反応モニター)プロファイリングを可能にする検出技術を適用した。ステロイド及びその代謝物質をオンラインSPE-LC-MS(固相抽出-LC-MS)により測定した。カテコールアミン及びその代謝物質は、例えば、Yamadaら(Yamada H. Yamahara A. Yasuda S. Abe M. Oguri K. Fukushima S. Ikeda-Wada S. Dansyl chloride derivatization of methamphetamine: A method with advantages for screening and analysis of methamphetamine in urine. Journal of Analytical Toxicology. 26(1):17-22, 2002 Jan-Feb)に記載のように、オンラインSPE-LC-MS(固相抽出-LC-MS)により測定した。
【0124】
実施例3
データ解析
包括的分析バリデーションステップの後、各アナライトについてのデータをプールサンプルからのデータに対して正規化した。これらサンプルは、プロセスの変動性を説明するように、全プロセスを通して同時に実行した。些細な、混同させる可能性のある作用を排除するため、また統計分析のために、混合線形モデルを用いた(log10変換したプール正規化代謝物質データに基づく)。因子は、処置(手術前(参照)、手術後3及び6ヵ月)、適応(糖尿病/肥満及び非糖尿病/肥満)、及び処置と適応の相互作用(随意、モデルの質に正に寄与する場合にのみ含まれる)とした。適応についての参照は、1つのモデルにおける糖尿病/肥満と、第2のモデルにおける非糖尿病/肥満とした。手術後時点での適応効果を読み取るために、処置因子についての参照として、手術後3ヶ月又は6ヵ月のいずれかを用いて、追加の線形モデルを作成した。上記の線形モデルから、効果の大きさを示す比と、統計学的有意性を示すt-統計学のp値が得られた。調節の種類は、各代謝物質について、参照に対して各因子レベルが増大(比>1)していれば「上方」、参照に対して因子レベルが低減(比<1)していれば「下方」として決定した。
【0125】
表1A及び2〜12(上を参照)を作成するために、線形モデルから以下の結果を用いた:
(1)非糖尿病/肥満グループにおける処置(3ヶ月 対 手術前)
(2)糖尿病/肥満グループにおける処置(3ヶ月 対 手術前)(処置と適応の相互作用が確認されない限り、(1)と同じ)
(3)非糖尿病/肥満グループにおける処置(6ヶ月 対 手術前)
(4)糖尿病/肥満グループにおける処置(6ヶ月 対 手術前)(処置と適応の相互作用が確認されない限り、(3)と同じ)
(5)手術前時点又は手術後3ヶ月若しくは手術後6ヵ月での適応(糖尿病/肥満対非糖尿病/肥満)。
【0126】
別の態様の分析では、処置と適応の相互作用を含まない混合線形モデルを計算した。該モデルは、log10変換したプール正規化代謝物質データに基づくものであった。因子は、処置(手術前(参照)、手術後3ヶ月及び6ヶ月)と適応(糖尿病/肥満及び非糖尿病/肥満)とした。適応の参照は、非糖尿病/肥満とした。上記線形モデルから、効果の大きさを示す比と、統計学的有意性を示すt-統計学のp値が得られた。調節の種類は、各代謝物質について、参照に対して各因子レベルが増大(比>1)していれば「上方」、参照に対して因子レベルが低減(比<1)していれば「下方」として決定した。
【0127】
表1Bを作成するために、上記線形モデルから得られる以下の結果を用いた。
【0128】
(1)処置(3ヶ月 対 手術前)
(2)処置(6ヶ月 対 手術前)。
【0129】
さらに、log10変換した代謝物質データ(プール正規化比)を用いて、選択した臨床データ(A〜D、F:非log変換;E:log10変換)との相関分析を実施した:
(A)インスリン感受性(QUICKI):1/((log[空腹時グルコース])+(log[空腹時インスリン])
(B)除脂肪体重(全体重の%で示す;DEXA(二重エネルギーX線吸収法)により推定)
(C)安静時エネルギー消費量(REE、REE(kcal/d)=309 + 21.6 x除脂肪体重(kg)に従って計算)
(D)手術後12ヶ月と手術前時点でのインスリン感受性(QUICKI)の差
(E)手術後12ヶ月と手術前時点での体脂肪量(全体重の%で示す;DEXAにより推定)の差
(F)体脂肪量(全体重の%で示す;DEXAにより推定)。
【0130】
該当する問題に応じて、3つの時点(手術前、手術後3ヶ月及び6ヶ月)すべて又は手術後時点のみ(予測分析)からのいずれかの代謝物質データを用いた。こうした線形回帰分析から、説明変動度を表す決定係数(R2)値と、統計学的有意性を示すF-統計量のp値を計算した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において胃バイパス治療が成功したかどうか評価する方法であって、
(a)被験体のサンプルにおける、表1A、1B、3及び5のいずれかに示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を測定するステップ、並びに
(b)上記量を参照と比較するステップであって、それにより胃バイパス治療が成功したかどうかが診断される上記ステップ
を含む方法。
【請求項2】
評価が、表2及び3に示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーと参照との比較に基づいて、糖尿病に関して胃バイパス治療が成功したかどうかを予測することも含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
評価が、表4及び5に示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーと参照との比較に基づいて、肥満に関して胃バイパス治療が成功したかどうかを予測することも含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
胃バイパス治療がそれを必要とする被験体に有益であるかどうか予測する方法であって、
(a)被験体のサンプルにおける、表6及び7に示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を測定するステップ、並びに
(b)上記量を参照と比較するステップであって、それにより胃バイパス治療が有益であるかどうかが予測される上記ステップ
を含む方法。
【請求項5】
胃バイパス治療に伴う支持療法がそれを必要とする被験体に有益な効果を有するかどうか診断する方法であって、
(a)被験体のサンプルにおける、表8に示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を測定するステップ、及び
(b)上記量を参照と比較するステップであって、それにより栄養補助食が有益な効果を有するかどうかが判定される上記ステップ
を含む方法。
【請求項6】
支持療法が、栄養療法、栄養補助食品、薬物及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
胃バイパス治療が「ルーワイ」肥満治療症手術である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
被験体における糖尿病を診断する方法であって、
(a)被験体のサンプルにおける、表9及び10に示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカー、又は表15に示されるバイオマーカーの組合せの量を測定するステップ、並びに
(b)上記量を参照と比較するステップであって、それにより糖尿病が診断される上記ステップ
を含む方法。
【請求項9】
被験体における除脂肪体重を診断する方法であって、
(a)被験体のサンプルにおける、表12に示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を測定するステップ、及び
(b)上記量を参照と比較するステップであって、それにより除脂肪体重量が診断される上記ステップ
を含む方法。
【請求項10】
被験体のエネルギー状態を診断する方法であって、
(a)被験体のサンプルにおける、表11に示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を測定するステップ、及び
(b)上記量を参照と比較するステップであって、それによりエネルギー状態が同定される上記ステップ
を含む方法。
【請求項11】
糖尿病及び/又は肥満に対する治療を同定する方法であって、
(a)薬物が投与された被験体のサンプルにおける、表1A、1B、3及び5のいずれかに示されるバイオマーカー群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を測定するステップ、並びに
(b)上記量を参照と比較するステップであって、それにより治療が同定される上記ステップ
を含む方法。
【請求項12】
糖尿病に対する治療が、表2及び3に示される少なくとも1つのバイオマーカーと参照との比較により同定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
肥満に対する治療が、表4及び5に示される少なくとも1つのバイオマーカーと参照との比較により同定される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
治療が、薬物の投与、栄養食、栄養補助食品、外科手術、肥満治療症手術、身体活動の支援、生活習慣の提案、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2011−528117(P2011−528117A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517920(P2011−517920)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059091
【国際公開番号】WO2010/007106
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(511012983)メタノミクス ヘルス ゲーエムベーハー (3)
【出願人】(511013049)インセルム インスティチュート ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル (1)
【Fターム(参考)】