説明

胴体セグメント及び胴体セグメントの製造方法

ここに開示した航空機の胴体の胴体セグメント(2)は、芯材(8)を挟んで互いに離隔して配置される外側面板(6)と内側面板(4)とを備えており、艤装のための配管路(20、22)がその芯材(8)に一体化されている。また、かかる胴体セグメント(2)の製造方法を併せて開示した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前提部分に記載した種類の航空機の胴体の胴体セグメントに関し、また、かかる胴体セグメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の胴体セグメントの一例として、本件特許出願人によるドイツ特許出願の公開公報であるDE 10 2007 003 275 A1(特許文献1)に開示されているものがある。この公開公報の胴体セグメントは、炭素繊維強化樹脂材料(CFRP)から成る2枚の面板の間に、ハニカム構造材や発泡材などよりなる芯材が配設された外板部材として構成されている。この外板部材は、同一構造の複数の外板部材を互いに組付けることで航空機の胴体を構築するものであって、この航空機の胴体は、安定化のために複数の縦通材及び肋材で補強される。また、電力配線用ケーブルや空調用ダクトなどの艤装のための配管路はいずれも、それら縦通材ないし肋材に設けられた対応するブラケットに固定される。
【0003】
この公知の胴体セグメントに付随する短所として、艤装品ないし艤装機器、並びにキャビンの構成部材を、胴体の基礎構造体に、個別に取付けなければならないということがある。また、配管路を取付けるためには多数のブラケットが必要とされており、そのことによって胴体の組立作業のコストが増大している。更に、多数のブラケットが用いられるために航空機の重量が増大するということも短所となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2007 003 275 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、以上の短所を払拭することができ、組立作業を簡易化することができる胴体セグメントを提供すること、並びに、かかる胴体セグメントの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、請求項1に記載の特徴を備えた胴体セグメントにより達成され、また、請求項10に記載の方法により達成される。
【0007】
本発明に係る胴体セグメントは、キャビン側の面板である内側面板と、外側面板とで被覆された、芯材を備えている胴体セグメントである。そして、本発明によれば、艤装のための配管路が、前記芯材に一体化されている。
【0008】
本発明に係る課題の解決手段によれば、空調用ダクトなどを構成する配管路を取付けるためのブラケットが不要化されるという利点が得られる。そのため、航空機の胴体の組立作業の複雑度が軽減される。更には、ブラケットが不要化されるため、取付け手段としてブラケットを用いている公知の航空機と比べて、航空機が軽量化される。また、例えば電気配線用ケーブルどうしの相互電磁作用を、複数の配管路の適切な配置により意図的に除去することも可能である。更に、ブラケットを排除することで、組立作業のコストの低減が可能であり、従って製造コストの低減が可能となる。また更に、本発明に係る胴体セグメントは、縦通材などの胴体の縦方向に延在する補強材も、また、肋材などの胴体の周方向に延在する桁材も用いることなく胴体を構築することができる胴体セグメントとして形成することも可能であり、そうすることによって、航空機の組立作業並びに軽量化に関して良好な結果が得られる。また、この胴体セグメントは、その構造を、作用する荷重に適合した最適構造とすることが可能である。
【0009】
1つの実施形態によれば、前記胴体セグメントは複数の部材により構成されている。この実施例では、前記芯材が前記外側面板及び前記内側面板とは別に製作されている。また、前記芯材は例えばハニカム構造材から成るものとすることができる。
【0010】
別の1つの実施形態によれば、前記胴体セグメントは、複数の部材を積層して接合した構造のものではなく、前記内側面板、前記外側面板、及び前記芯材が一体に形成された、一体形成品とされている。この実施形態では、前記内側面板及び前記外側面板が、接着などの接合方法によって前記芯材に接合されるのではなく、前記芯材の製作時に同時に形成される。この場合、前記内側面板及び前記外側面板は、芯材と同一の発泡材で形成され、ただしその発泡材に対して部分的に異なった処理が施されることで形成される。この実施形態では、その発泡材を炭素繊維で強化するとよく、またそうする場合には、その強化用炭素繊維が、実質的に、前記外側面板から前記芯材を通過して前記内側面板まで延在しているようにするとよい。
【0011】
前記芯材と、前記外側面板及び前記内側面板とで、材料の硬度が異なるようにするのもよい。また特に、前記芯材の材料の硬度は、キャビン側の領域から前記外側面板へ向かうにつれて増大しているようにするとよい。そうすることで、前記胴体セグメントの剛性を大きなものとしつつ、キャビン側の領域では材料の硬度を小さくする(軟質発泡材とする)ことで断熱性を向上させることができる。
【0012】
前記芯材は、複数の層を含む多層構造の発泡材から成るものとするとよく、それによって好適な断熱性が得られる。また、その発泡材の構造を適切に設計することによって、急峻な温度勾配が生じないようにすることができ、それによって胴体セグメントの内部の結露をしっかりと抑制することができる。
【0013】
1つの変形例によれば、前記配管路は管部材で形成されている。
【0014】
別の1つの変形例によれば、航空機を更に軽量化するために、前記配管路はその壁が前記芯材の材料で形成されて前記芯材に一体化されている構成としている。
【0015】
前記内側面板が、キャビンの側壁を形成しているようにするのもよい。これによってキャビンの側壁が胴体の基礎構造体の一部で形成されるようになるため、キャビンの構成部材の点数を低減することができ、ひいては、組立作業の複雑度を更に軽減することができる。
【0016】
本発明に係る方法の1つの実施形態によれば、前記芯材の製作時に前記配管路を前記芯材に設けるようにしている。
【0017】
また、別の1つの実施形態によれば、前記芯材の製作後に前記配管路を前記芯材に設けるようにしている。この実施形態においては、前記芯材の製作時に、前記配管路の形成位置に中子を配設しておく。前記芯材の製作後にその中子を除去すれば、前記芯材の形成材料それ自体によって前記配管路の壁面が形成される。この中子としては、例えばワックス系材料から成る円柱体などが用いられ、そのような中子は、前記芯材の製作後に適切な処理を施すことによって、熔融させて流出させることができ、それによって前記芯材の中に、その中子に対応した形状の空間が前記配管路として形成される。
【0018】
本発明に係る更に別の方法によれば、前記胴体セグメントを成形機から取出した時点で既に、前記内側面板、前記外側面板、及び前記芯材の構造形態が、それらに必要とされる材料特性及び材料構造を備えた最終構造形態となっている。
【0019】
一方、前記胴体セグメントを成形機から取出した後に、更なる処理工程を実行することで、前記発泡材に、また特に、前記内側面板及び前記外側面板に、例えば硬度などの必要とされる材料特性を付与するようにするのもよい。そのような処理工程としては、例えば紫外線照射処理工程などが考えられる。
【0020】
前記発泡材として用いるのに適した材料は、樹脂系材料と同様に、金属系材料も好適に用いられる。同様に、前記内側面板及び前記外側面板の材料も、炭素繊維強化樹脂材料に限定されず、例えばガラス繊維強化材料(GFK材料)などのその他の繊維強化材料や、樹脂金属複合材料、それに、純金属複合材料なども用いられる。更に、前記内側面板と前記外側面板とを、互いに異なる材料から成るものとすることも考えられる。
【0021】
前記配管路は、以上に記載した具体例に限定されず、航空機に装備されるあらゆる種類の艤装のための配管路として利用し得るものである。その他の具体例としては、航空機搭載電気系統の電源供給のための電力配線用ケーブルを収容する配管路、飛行制御のための信号配線用ケーブルを収容する配管路、それに、給水配管を構成する配管路などとすることができる。
【0022】
窓やドアのための開口部は、前記胴体セグメントの製造時に形成するようにしてもよく、前記胴体セグメントの製造後に形成するようにしてもよい。
【0023】
前記胴体セグメントは、その軸方向(胴体の前後方向)と周方向(胴体の周方向)の長さを、様々に設定可能である。前記胴体セグメントを外板部材として構成する場合には、原理的に、その外板部材の縦方向の寸法を航空機の全長に亘る長さとすることも可能である。また同様に、前記胴体セグメントを円胴形の部材として構成することも可能であり、その円胴形の部材の端部どうしを突き合わせて、胴体の周方向に延在する接合部を介して互いに接合することによって、胴体を構築するようにすることができる。
【0024】
その他の有利な実施形態としては、従属請求項に記載したものがある。
【0025】
以下に添付の概略図に即して本発明の好適な実施形態について更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る航空機の胴体の胴体セグメントの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に、本発明に係る航空機の胴体の胴体セグメント2の横断面図を示した。この胴体セグメント2は、積層構造を有する湾曲形状の外板部材として構成されており、内側面板4と、外側面板6とを備え、それらの面板4、6の間に芯材8が配設されている。この胴体セグメント2は、その幅狭側の端部10、12の部分において、不図示の本発明に係る別の胴体セグメントに結合され、それによって航空機の胴体部分が構成される。
【0028】
内側面板4は、航空機のキャビンの側壁を構成する面板である。外側面板6は、航空機の胴体の外表面として用いられ、芯材8を外部環境から防護する機能も担っている。内側面板4及び外側面板6は、炭素繊維強化材料(CFR材料)から成り、芯材8に接合されている。内側面板4及び外側面板6は、それらの材料硬度が、芯材8の材料硬度より大きなものとされている。
【0029】
芯材8は発泡材で形成されており、内周層14と外周層16とを有している。内周層14は、外周層16と比べて硬度が小さく、それによってより断熱性を改善したものとなっている。
【0030】
芯材8には艤装のための複数の配管路20,22、例えば電力配線用ケーブルハーネスやデータ信号配線用ケーブルハーネス、または、空調用ダクトなどが含まれている。図1では、そのような複数の配管路のうちの代表として2本の配管路20、22にだけ参照符号を付してある。配管路20、22は、芯材8の中に嵌装された管部材24、26で形成されている。それら配管路20、22の、芯材8の中における形成位置並びに内径寸法は、夫々の配管路の用途に応じて適宜選定されている。例えば、データ信号配線用ケーブルハーネスを収容するための配管路20の内径寸法は、空調用ダクトを構成するための配管路22の内径寸法より小さい寸法に選定されている。
【0031】
内側面板4の硬度、外側面板6の硬度、及び芯材8の硬度は、縦通材などの胴体の縦方向に延在する補強材も、また、肋材などの胴体の周方向に延在する桁材も用いることなく胴体を構築することができるような、十分な大きさの硬度に選定するとよい。
【0032】
本発明に係る方法によれば、成形法により芯材8を製作するための成形型の中に、配管路20、22を形成するための管部材24、26を配置する。続いてその成形型の中に、芯材8の形成材料とする適宜の樹脂系原材料を充填する。続いて、その成形機を作動させて、発泡材から成る芯材8を形成する。内側面板4及び外側面板6を適宜の公知の製作方法により製作する。こうして芯材8、内側面板4、及び外側面板6を製作したならば、それらを互いに接合して所望の積層体とする。
【0033】
ここに開示した航空機の胴体の胴体セグメント2は、外側面板6と内側面板4とを備えており、それらの面板は間に芯材8を挟んで互いに離隔しており、艤装のための配管路20、22がその芯材8に一体化されている。また、かかる胴体セグメント2の製造方法を併せて開示した。
【符号の説明】
【0034】
2 胴体セグメント
4 内側面板
6 外側面板
8 芯材
10 幅狭側の端部
12 幅狭側の端部
14 内周層
16 外周層
20 配管路
22 配管路
24 管部材
26 管部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビン側の面板である内側面板(4)と、外側面板(6)とを備え、それら面板によって芯材(8)が被覆されている、航空機の胴体の胴体セグメント(2)において、艤装のための配管路(20、22)が前記芯材(8)に一体化されていることを特徴とする胴体セグメント。
【請求項2】
前記内側面板(4)及び前記外側面板(6)は前記芯材(8)とは別に製作されたものであることを特徴とする請求項1記載の胴体セグメント。
【請求項3】
前記胴体セグメント(2)は一体形成品として形成されたものであることを特徴とする請求項1記載の胴体セグメント。
【請求項4】
前記芯材(8)の材料の硬度は、前記内側面板の側から前記外側面板(6)へ向かうにつれて増大していることを特徴とする請求項3記載の胴体セグメント。
【請求項5】
前記芯材(8)は、複数の層を含む多層構造の発泡材から成ることを特徴とする請求項2、3、又は4記載の胴体セグメント。
【請求項6】
前記配管路(20、22)は、管部材(24、26)で形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の胴体セグメント。
【請求項7】
前記配管路(20、22)は、その壁が前記芯材の材料で形成されて前記芯材に一体化されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の胴体セグメント。
【請求項8】
前記内側面板(4)は、キャビンの側壁を構成するものであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の胴体セグメント。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項記載の胴体セグメントの製造方法において、前記芯材(8)の製作時に、または前記芯材(8)の製作後に、前記芯材(8)に前記配管路(20、22)を設けることを特徴とする方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−522677(P2012−522677A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502652(P2012−502652)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054247
【国際公開番号】WO2010/112527
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(506261453)エアバス・オペレーションズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (7)
【住所又は居所原語表記】Kreetslag 10,D−21129 Hamburg,Deutschland