説明

脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの重合

本明細書中に記載の重合法は、重縮合の間に二量体がグリコールエーテルとして形成され、脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル中に取り込まれるようにグリコールの脱水を制御するための方法を提供する。この現象の制御は、様々な熱力学的特性、結晶化度、生物含有量、および生分解性を有する独特なポリマー組成物を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中で述べる重合方法は、重縮合の間に二量体がグリコールエーテルとして形成され、脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル中に取り込まれるようにグリコールの脱水を制御する方法を提供する。この現象の制御は、様々な熱力学的特性、結晶化度、生物含有量、および生分解性を有する独特なポリマー組成物を実現する。
【背景技術】
【0002】
数々の理由で燃料または材料の原料としての石油の使用に対する抵抗が大きくなっている。その代わりとして持続可能性を増し、カーボンフットプリントを減らす趨勢にある。同様にライフシナリオの結末の検討は、製品設計において重要性を増しつつある。ポリマーの世界ではこれらの趨勢は、生物源から得られる、またそれが組み込まれたポリマーに生分解性を与えるモノマーの探索となって現れている。
【0003】
脂肪族−芳香族コポリエステルは、例えば1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸、およびブラシル酸(これらはすべて生物源から誘導することができる)を含めたそのようなモノマーから調製することができる包括的な生分解性ポリマーの部類である。脂肪族ジカルボン酸から誘導されるポリエステル反復単位は、生分解条件下で堆肥化などの酵素による加水分解を可能にする。より詳細には、脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルは、それらの物理的性質の他の側面を制御するためにそれらの組成中にポリ(アルキレンエーテル)グリコールを取り込むことによって調製することができる。さらに、ポリ(アルキレンエーテル)グリコール反復単位は、ポリマー鎖中でのそれらの酸化的切断により起こる第二様式の生分解を可能にすることができる。
【0004】
当業界で述べられる脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルには、一般に、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の混合物から誘導されるポリエステル(これらもまたポリ(アルキレンエーテル)グリコールを取り込んでいる)が含まれる。一般に既知の脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルは、高レベルのポリ(アルキレンエーテル)グリコール成分を取り込んでいる。例えば、Warzelhan等は、米国特許第5,936,045号、第6,046,248号、第6,258,924号、および第6,297,347号明細書中で、20〜25モル%のポリ(アルキレンエーテル)グリコール成分を有する脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル組成物を開示しており、それらは低い結晶融点を有することが分かっている。
【0005】
最近、Hayes等は米国特許第7,144,632号明細書中で、0.1から約3モル%のポリ(アルキレンエーテル)グリコール成分を含み、熱的性質および生分解速度の改良された脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル組成物を開示している。本明細書中で述べる方法とは異なり、上記の各事例ではポリ(アルキレンエーテル)グリコールは、独立したモノマーとして加えられる。また本明細書中で述べる組成とは異なり、そのポリ(アルキレンエーテル)グリコールは、本質的に3個以上のアルキレンエーテル反復単位からなり、また様々な分子量を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
様々な熱力学的特性、結晶化度、生物含有量、および生分解性を有するポリマー組成物を実現するために、重縮合の間に二量体がグリコールエーテルとして形成され、脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル中に取り込まれるようにグリコールの脱水を制御する方法を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルに関し、それは
全ジカルボン酸成分100モル%を基準にして、
a)約70から40モル%の芳香族ジカルボン酸成分、および
b)約30から60モル%の脂肪族ジカルボン酸成分
から実質上なるジカルボン酸成分と、
全グリコール成分100モル%を基準にして、
a)約99.9から98モル%の単鎖(single)グリコール成分、および
b)約0.1から2モル%のジアルキレングリコール成分
から実質上なるグリコール成分と、
脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの総重量を基準にしてナトリウム約0.001から0.1重量%のナトリウム緩衝成分と
を含む。
【0008】
これはさらに、
全ジカルボン酸成分100モル%を基準にして、
a)約70から40モル%の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、および
b)約30から60モル%の脂肪族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体
から実質上なるジカルボン酸成分と、
単鎖グリコール成分と、
脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの総重量を基準にしてナトリウム約0.001から0.1重量%のナトリウム緩衝成分と
を含む混合物を反応させることによって得られる脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルに関する。
【0009】
本発明はさらに、
a)1種類または複数種類のジカルボン酸モノマーまたはそれらのジエステル誘導体を、単鎖グリコールおよびエステル交換触媒と混ぜ合わせて第一反応混合物を形成するステップと、
b)その第一反応混合物を混合しながら約200℃と約260℃の間の温度まで加熱し、それによってエステル交換の揮発性生成物を蒸留除去して第二反応混合物を形成するステップと、
c)その第二反応混合物を、真空下で約240℃と260℃の間の温度で撹拌しながら重縮合させて脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルを形成するステップと
を含み、この工程の任意のステップの間にナトリウム緩衝化合物を少なくとも1回加える脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの製造方法に関する。
【0010】
本発明はさらに、脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルと、天然材料を含めた他のポリマー材料とのブレンド物に関する。それはまた、脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルとそれらのブレンド物を含む造形品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中では、普通は脂肪族ジカルボン酸によって脂肪族−芳香族コポリエステルに付与される様々な特性を、構成グリコールの一部に二量体を含めることによって達成するコポリエーテルエステルおよびその方法について述べる。さらに重合工程の間にそれらの二量体グリコールエーテルを生成し、またその生成の度合いを制御する方法を述べる。これらの方法によれば、二量体グリコールエーテルを必ずしも反応容器に装入する必要がなくなり、その代わりにそれを装入グリコールモノマーからin situで形成して所望の脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルを得ることができる。これは工程の単純化およびコスト削減の両方を実現する。
【0012】
この手法によって得られる利点の実例は、セバシン酸に関して見られる。このモノマーを、テレフタル酸および1,3−プロパンジオールと反応させることにより、多くの用途に役立つコポリエステルが生ずる。従来の手法によれば、或る一組の熱的性質を望むならば、テレフタル酸とセバシン酸の比率を特定の値に設定したはずである。従来の手法ではまた、これら3種類のモノマーのみを使用する場合、特定の一組の熱的性質に合わさなければならないとしても、原料送り量の自由度は存在しない。これとは対照的に本明細書中で述べる手法によれば、それらの熱的性質は、様々な原料送り量で達成される。1,3−プロパンジオールの二量体化を0に限定するという制限下では、供給量は従来の手法のものと同じであることになる。小幅な二量体化を促進させる場合、1,3−プロパンジオールの供給量をわずかに増す一方、セバシン酸の供給量をわずかに減らす。大幅な二量体化を促進させる場合、1,3−プロパンジオールの供給量を顕著に増す一方、セバシン酸の供給量を顕著に減らす。各事例において適切に制御することによりそのコポリマーは、所望の目標とする物理的性質を有する。この特定の例では生物源から誘導される或るモノマー、すなわちセバシン酸の含有率が、これもまた生物源から誘導される別のモノマー、すなわち1,3−プロパンジオールで相殺される。
【0013】
本明細書中で述べる重合方法は、重縮合の間にグリコールの二量体がグリコールエーテルとして形成され、脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル中に取り込まれるようにグリコールの脱水を制御するための方法を提供する。この現象の制御は、様々な熱力学的特性、結晶化度、生物含有量、および生分解性を有する独特なポリマー組成物を実現する。広範な特性を生み出すことにより、広範な用途に使用することができるポリマーの開発が可能になる。二量体化の制御、およびその結果としてのポリマーの組成および特性に与える影響を下記の実施例により例示する。
【0014】
このコポリエーテルエステルは一般に半結晶性である。用語「半結晶性」とは、芳香族−脂肪族コポリエーテルエステルのポリマー鎖の一部分が結晶相中に存在し、ポリマー鎖の残りの部分が非配向ガラス質アモルファス相中に存在することを指すことを意図している。結晶相は融解温度Tmによって、またアモルファス相はガラス転移温度Tgによって特徴づけられる。これらは示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定することができる。
【0015】
本明細書中ではジカルボン酸成分とグリコール成分を含む脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルを開示する。一般にこのジカルボン酸成分は、全酸成分100モル%を基準にして約70と40モル%の間の芳香族ジカルボン酸成分と、全ジカルボン酸成分100モル%を基準にして約30と60モル%の間の脂肪族ジカルボン酸成分から実質上なる。さらにこのグリコール成分は、全グリコール成分100モル%を基準にして約99.9と98モル%の間の単鎖グリコール成分と、全グリコール成分100モル%を基準にして約0.1と2モル%の間のジアルキレングリコール成分から実質上なる。
【0016】
この脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの典型的な実施形態ではジカルボン酸成分は、全ジカルボン酸成分100モル%を基準にして、約62と48モル%の間の芳香族ジカルボン酸成分と、約38と52モル%の間の脂肪族ジカルボン酸成分から実質上なる。より典型的にはジカルボン酸成分は、全ジカルボン酸成分100モル%を基準にして、約56と50モル%の間の芳香族ジカルボン酸成分と、約44と50モル%の間の脂肪族ジカルボン酸成分から実質上なる。
【0017】
これら開示した実施形態ではグリコール成分は、典型的には全グリコール成分100モル%を基準にして、約99.9と99モル%の間の単鎖グリコール成分と、約0.1と1モル%の間のジアルキレングリコール成分から実質上なる。より典型的にはグリコール成分は、全グリコール成分100モル%を基準にして、約99.8と99.3モル%の間の単鎖グリコール成分と、約0.2と0.7モル%の間のジアルキレングリコール成分から実質上なる。
【0018】
この脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルに役立つ芳香族ジカルボン酸成分には、非置換および置換芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸のビス(グリコール酸エステル)、および炭素8個から炭素20個を有する芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルが挙げられる。望ましいジカルボン酸成分の例には、テレフタル酸エステル、イソフタル酸エステル、フタル酸エステル、ナフタル酸エステル、および二安息香酸エステルから誘導されるものが挙げられる。望ましい芳香族ジカルボン酸成分の特定の例には、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタラート、ビス(3−ヒドロキシプロピル)テレフタラート、ビス(4−ヒドロキブチル)テレフタラート、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタラート、ビス(3−ヒドロキシプロピル)イソフタラート、ビス(4−ヒドロキブチル)イソフタラート、フタル酸、フタル酸無水物、フタル酸ジメチル、ビス(2−ヒドロキシエチル)フタラート、ビス(3−ヒドロキシプロピル)フタラート、ビス(4−ヒドロキブチル)フタラート、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタル酸ジメチル、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタル酸ジメチル、3,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、3,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジメチル、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジメチル、3,4’−ジフェニルスルフィドジカルボン酸、3,4’−ジフェニルスルフィドジカルボン酸ジメチル、4,4’−ジフェニルスルフィドジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフィドジカルボン酸ジメチル、3,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、3,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸ジメチル、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸ジメチル、3,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸ジメチル、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸ジメチル、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタル酸ジメチル、4,4’−メチレンビス(安息香酸)、4,4’−メチレンビス(安息香酸)ジメチル、およびこれらから誘導される混合物が挙げられる。一般に芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタラート、ビス(3−ヒドロキシプロピル)テレフタラート、ビス(4−ヒドロキブチル)テレフタラート、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタラート、ビス(3−ヒドロキシプロピル)イソフタラート、ビス(4−ヒドロキブチル)イソフタラート、フタル酸、フタル酸無水物、フタル酸ジメチル、ビス(2−ヒドロキシエチル)フタラート、ビス(3−ヒドロキシプロピル)フタラート、ビス(4−ヒドロキブチル)フタラート、およびこれらから誘導される混合物から誘導される。より一般的には芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸およびテレフタル酸ジメチルから誘導される。しかし本質的には既知の任意の芳香族ジカルボン酸、エステル、酸無水物、またはエステル形成性誘導体を使用することができる。
【0019】
この脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルに役立つ脂肪族ジカルボン酸成分には、非置換、置換、線状、環式、および分岐脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸のビスグリコール酸エステル、および炭素原子2個から36個を有する脂肪族ジカルボン酸の低級アルキルエステルが挙げられる。望ましい脂肪族ジカルボン酸成分の特定の例には、シュウ酸、シュウ酸ジメチル、マロン酸、マロン酸ジメチル、コハク酸、コハク酸ジメチル、メチルコハク酸、グルタル酸、グルタル酸ジメチル、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、アジピン酸、アジピン酸ジメチル、3−メチルアジピン酸、2,2,5,5−テトラメチルヘキサン二酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸、セバシン酸ジメチル、ビス(2−ヒドロキシエチル)セバカート、ビス(3−ヒドロキシプロピル)セバカート、ビス(4−ヒドロキブチル)セバカート、1,11−ウンデカンジカルボン酸(ブラシル酸)、1,10−デカンジカルボン酸、ウンデカン二酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカン二酸、ドコサン二酸、テトラコサン二酸、ダイマー酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、およびこれらから誘導される混合物が挙げられる。一般に脂肪族ジカルボン酸成分は、再生可能な生物源、具体的にはコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、およびブラシル酸から誘導される。しかし本質的には既知の任意の脂肪族ジカルボン酸、エステル、酸無水物、またはエステル形成性誘導体を使用することができる。
【0020】
本明細書中で開示する実施形態で一般に使用される単鎖グリコール成分には、炭素原子2個から10個を有する脂肪族ジオールが挙げられる。用語「グリコール」および「ジオール」は、2個のヒドロキシル基を含有する第一、第二、または第三アルコールの包括的組成物を指すために区別なく使用される。例には、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、および1,4−ブタンジオールが挙げられる。好ましくはこのグリコール成分は、再生可能な生物源、具体的には1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールから誘導される。しかし芳香族、脂環式、分岐、または不均一構造を含有するものを含めて本質的には既知の任意のグリコールを使用することができる。
【0021】
本明細書中で開示する実施形態で使用される1,3−プロパンジオールは、好ましくは再生可能な供給源から生化学的に得られる(「生物学的に誘導される」1,3−プロパンジオール)。1,3−プロパンジオールの特に好ましい供給源は、再生可能な生物源を用いた発酵法によるものである。再生可能な供給源由来の出発原料の具体例としては、トウモロコシ原料などの生物学的かつ再生可能な供給源から生産される原料を利用する1,3−プロパンジオール(PDO)への生化学的ルートが記述されている。例えば、グリセロールを1,3−プロパンジオールに変換することができる細菌株が、クレブシエラ属(Klebsiella)、シトロバクター属(Citrobacter)、クロストリジウム属(Clostridium)、およびラクトバシラス属(Lactobacillus)の種の中に発見されている。この技術は、米国特許第5633362号、第5686276号、および第5821092号明細書を含めて幾つかの刊行物中に開示されている。とりわけ米国特許第5821092号明細書は、組換え生物を用いてグリセロールから1,3−プロパンジオールを生物学的に産生する方法を開示している。この方法は、1,2−プロパンジオールに対して特異性を有する異種pduジオール脱水酵素遺伝子を用いて形質転換した病原性大腸菌(E.coli bacteria)を組み込む。この形質転換した大腸菌(E.coli)は、炭素源としてのグリセロールの存在下で増殖し、1,3−プロパンジオールがその増殖培地から単離される。細菌も酵母菌もグルコース(例えばコーンシュガー)または他の炭水化物をグリセロールに変換することができるので、これらの刊行物中で開示されている方法は1,3−プロパンジオールモノマーの速やかな、安価な、かつ環境責任を果たす供給源を提供する。
【0022】
上記で記述しまた参照した方法によって生産されるものなどの生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールは、その1,3−プロパンジオールの生産用原料を構成する植物によって取り込まれる大気中の二酸化炭素由来の炭素を含有する。このように、本発明の脈絡で用いられる好ましい生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールは再生可能な炭素のみを含有し、化石燃料系または石油系の炭素を含有しない。したがって、生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールを利用したものから作られるポリトリメチレンテレフタラートは、使用される1,3−プロパンジオールが、減少しつつある化石燃料を枯渇させず、かつ分解時に炭素を放出して大気中に戻し、再度植物によって使用されるので環境に与える影響がより少ない。したがって本発明の組成物は、石油系ジオールを含む類似の組成物よりも自然のままであり、環境に与える影響が少ないと特徴付けることができる。
【0023】
この生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールおよびそれから作られるポリトリメチレンテレフタラートを、二重炭素同位体フィンガープリント法(dual carbon−isotopic finger printing)によって、石油化学供給源から、または化石燃料炭素から生産された類似の化合物と区別することができる。この方法は、化学的にまったく同じ材料を実用的に区別し、炭素材料をその生物圏(植物)成分の成長の起点(または、場合によっては歴年)によって振り分ける。同位体14Cおよび13Cは、この問題に相補的情報をもたらす。その核半減期が5730年である放射性炭素年代測定用同位体(14C)は、試験片炭素を化石(「死んでいる」)原料と生物圏(「生きている」)原料の間で明確に振り分けることを可能にする(Currie,L.A.“Source Apportionment of Atmospheric Particles”,Characterization of Environmental Particles,J.Buffle and H.P.van Leeuwen,Eds.,1 of Vol.I of the IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series(Lewis Publishers,Inc)(1992)3〜74)。放射性炭素年代測定における基本的前提は、大気中の14C濃度の恒常性が生物中の14Cの恒常性をもたらすということである。単離された試料を扱う場合、試料の経年数は関係式
t=(−5730/0.693)ln(A/A0
によりおおよそ推定することができる。ただし、t=経年数であり、5730年は放射性炭素の半減期であり、AおよびA0は、それぞれ試料および現代標準の14Cの比放射能である(Hsieh,Y.,Soil Sci.Soc.Am J.,56,460(1992))。しかしながら、1950年以降の大気圏核実験および1850年以降の化石燃料の燃焼のために14Cは第二の地球化学的時間特性を獲得した。大気中のCO2の、したがって現存する生物圏中のその濃度は、1960年代中盤の核実験のピーク時にはおおよそ2倍になった。以後、おおよそ7〜10年の緩和「半減期」で、定常状態の宇宙線起源の(大気中の)基線である約1.2×10-12の同位体比(14C/12C)に徐々に戻ってきた。この近頃の半減期は文字通りに解釈してはならず、むしろ核時代の幕開け以降の大気中および生物圏の14Cの変動を追跡するためには、詳細な大気中の核の投入/崩壊関数を使用しなければならない。最近の生物圏炭素の毎年の年代測定の裏付けを与えるのが、この後者の生物圏14C時間特性である。14Cは、加速器質量分析法(AMS)によって測定することができ、その結果は「現代炭素の分率」の単位(fM)で与えられる。fMは、National Institute of Standards and Technology(NIST)の標準参照物質(SRM)4990Bおよび4990Cによって規定され、それぞれシュウ酸標準HOxIおよびHOxIIとして知られる。この基本定義は、HOxIの14C/12C同位体比の0.95倍(AD1950を基準とした)と関係がある。これは、崩壊補正した産業革命前の木材に概略で相当する。最新の現存する生物圏(植物材料)の場合、fM≒1.1である。
【0024】
安定な炭素同位体比(13C/12C)は、供給源の識別および振り分けに対する補完的ルートを提供する。所与の生物起源の材料中の13C/12C比は、大気中の二酸化炭素が固定された時点におけるその二酸化炭素中の13C/12C比の結果であり、その正確な代謝経路もまた反映している。地域的な変動もまた起こる。石油、C3植物(広葉タバコ)、C4植物(イネ科の草木)、および海成炭酸塩はすべて、13C/12Cとその対応するδ13Cの値の顕著な違いを示す。さらに、C3およびC4植物の脂質物質は、その代謝経路の結果として、その同一植物の炭水化物成分から得られる材料とは異なる分析結果を示す。その測定精度の範囲内で13Cは、同位体分画の影響のせいで大きな変動を示し、本発明にとって最も重要な影響は光合成機構である。植物中の炭素同位体比の違いの主な原因は、それら植物中の光合成炭素代謝経路の違い、具体的には一次カルボキシル化、すなわち大気中CO2の最初の固定の間に起こる反応の違いと密接に関連している。植物成長の2つの大分類は、「C3」(すなわちカルビン−ベンソン)光合成回路を組み込むもの、および「C4」(すなわちハッチ−スラック)光合成回路を組み込むものである。広葉樹および針葉樹などのC3植物は、温暖な気候の地帯が大勢を占める。C3植物では、その一次CO2固定化またはカルボキシル化反応は、リブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ酵素を伴い、その最初の安定な産物が炭素3個の化合物である。一方、C4植物には熱帯のイネ科の草木、トウモロコシ、およびサトウキビのような植物が含まれる。C4植物では、別の酵素であるホスフェノール−ピルビン酸カルボキシラーゼを伴う追加のカルボキシル化反応がその一次カルボキシル化反応である。その最初の安定な炭素化合物は炭素4個の酸であり、それは続いて脱カルボキシル化される。こうして放出されるCO2は、そのC3回路により再び固定される。
【0025】
4およびC3植物は両方とも様々な13C/12C同位体比を示すが、典型的な値は1ミル当たり約−10から−14(C4)および1ミル当たり−21から−26(C3)である(Weber等、J.Agric.Food Chem.,45,2042(1997))。石炭および石油は、一般にこの後者の範囲に入る。13C測定の尺度は、当初pee deeベレムナイト(PDB)石灰石をゼロに設定することによって定められ、その値は、この物質からの1000分の1偏差で与えられる。「δ13C」値は、単位1000分の1部(ミル当たり)であり、oooと略記され、
【数1】

に従って計算される。PDB基準物質(RM)を使い果たしてしまったために、IAEA、USGS、NIST、および他の選ばれた国際同位体研究機関の協力のもとに一連の代替RMが開発された。PDBからのミル当たり偏差の表記法がδ13Cである。測定は、CO2に関して、質量44、45、および46の分子イオンに対する高精度安定同位体比質量分析法(IRMS)によって行われる。
【0026】
したがって生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールおよび生物学的に誘導される1,3−プロパンジオールを含む組成物を、14C(fM)および二重炭素同位体フィンガープリント法に基づいて、今までにない物質組成を示すそれらの石油化学的に誘導される対応物と完全に区別することができる。これらの製品を区別する能力は、商業目的のためにそれらの材料を追跡するのに有益である。例えば、「新しい」および「古い」炭素同位体プロフィールの両方を含む製品を、「古い」材料だけで作られた製品と区別することができる。したがって対象とする材料を、それらの独特のプロフィールに基づいて商業目的で、また競争相手を明らかにする目的で、貯蔵寿命を決めるために、また特に環境に与える影響を評価するために追跡調査することができる。
【0027】
本明細書中で開示するポリマーを製造する際に反応物として、または反応物の成分として使用される1,3−プロパンジオールは、好ましくは、ガスクロマトグラフ分析によって測定される約99重量%を超える、より好ましくは約99.9重量%を超える純度を有する。米国特許第7038092号、米国特許第7098368号、米国特許第7084311号、および米国特許第20050069997A1号明細書に開示されている精製された1,3−プロパンジオールが特に好ましい。
【0028】
精製された1,3−プロパンジオールは、好ましくは下記の特徴を有する。
(1)紫外吸収が、220nmにおいて約0.200未満、250nmにおいて約0.075未満、275nmにおいて約0.075未満であり、かつ/または
(2)組成物が、約0.15未満のCIELAB「b*」色値(ASTM D6290)、および270nmにおいて約0.075未満の吸光度を有し、かつ/または
(3)過酸化物の組成が約10ppm未満であり、かつ/または
(4)ガスクロマトグラフィーで測定した全有機不純物(1,3−プロパンジオール以外の有機化合物)の濃度が、約400ppm未満、より好ましくは約300ppm未満、さらに一層好ましくは約150ppm未満である。
【0029】
本明細書中で実施形態中に開示するように脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルは、ジアルキレングリコールを重合容器に反応物として加えることなく生じさせることができる。本発明の実施形態において作製されるコポリエーテルエステルの望ましい物理的性質は、類似のジカルボン酸含有率を有するポリマーに対してジアルキレングリコール含有率を増加させることによる融解温度の低下によって実証されるように、グリコールエーテルの形成を制御することにより達成することができる。グリコールの二量体化によって与えられる追加の可撓性はまた、ポリマーの他の物理的性質も変えることが予想される。この制御は、モノマーの選択、触媒の選択、触媒量、スルホン酸基の選択、ナトリウム緩衝成分および塩基性成分の添加、および他の工程条件によって達成することができる。
【0030】
ナトリウム緩衝成分は、それらもまた脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの核剤として作用する役目を果たすことができる点で、特に実用的な形でグリコールエーテル形成の制御を可能にする。過剰なグリコールエーテル形成は、得られるコポリエーテルエステルの結晶化速度を遅らせる可能性があるので、ナトリウム緩衝成分は2つの違う形で結晶化に影響する可能性がある。一般に好適なナトリウム緩衝化合物は、カルボン酸および非ハロゲン化無機ナトリウム塩を含めてpH<9を有する低塩基度の化合物を生ずる低酸度の酸から作られる非腐食性ナトリウム塩である。一般にこれらの酸は、十分揮発性で重合の間に除去されるように分子量が低い。望ましいナトリウム緩衝化合物の特定の例は、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、ギ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、テレフタル酸一ナトリウム、および重炭酸ナトリウムである。
【0031】
本明細書中で開示する脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルは、スルホネート化合物またはそれらの混合物から実質上なるスルホネート成分を含有してもよい。これらのスルホネート化合物には、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム塩、トルエンスルホン酸、またはそれらの混合物などのポリマー鎖の骨格中にモノマーとして取り込む化合物、また取り込まない化合物を挙げることができる。一部類としてこれらの化合物は、概して重合の間にグリコールの二量体化を促進させる強酸部分を有するものからなる。本明細書中で開示する幾つかの実施形態ではスルホネート成分は、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム塩からなる。一般にスルホネート成分は、脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル中に取り込まれるジカルボン酸成分およびグリコール成分の総モルを基準として約0と5モル%の間の量が使用される。一般にはスルホネート成分は、約0.5と2モル%の間の量が使用される。
【0032】
本明細書中で開示する脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの製造工程の間に他の化合物が加えられる。これらの化合物には塩基性化合物、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、および炭酸カリウムが挙げられ、これらはグリコールエーテルの形成を制限するために加えられる。一部類としてはこれらの化合物は一般にpH>9の高塩基性である。このような化合物は、反応の間のグリコールの二量体化を制限する。
【0033】
本明細書中で開示する方法ではエステル交換触媒が一般に使用される。これらに限定されないがチタン(IV)イソプロポキシドを含めたチタンアルコキシドを含め、複数種の触媒を使用することができる。加えられるエステル交換触媒の量は、他の工程条件によってはグリコールエーテルの生成の利益になることも不利益になることもある。より具体的には、さきに述べたナトリウム緩衝化合物、塩基性化合物、およびスルホネート化合物に対する今述べたエステル交換触媒のレベルを調整することによって、これら2つの反応の相対速度、したがって生起する最終的な二量体化の度合いを制御することができる。
【0034】
複数の他の工程パラメータを用いて反応の間に達成される二量体化の度合いを制御することができる。例えば、ジカルボン酸自体ではなくジカルボン酸のジメチルエステルをグリコールモノマーと反応させることによりグリコールエーテルの形成を減らす。芳香族ジカルボン酸とスルホン化化合物の組合せが二量体化の速度を劇的に増すことが明らかにされているので、これはスルホン化モノマーを使用する場合には特に重要である。この組合せは、二量体化の制御を困難にし、かつ幾つかの用途にとって、得られるコポリエーテルエステルの物理的性質に著しい影響を与える恐れのあるグリコールエーテルの高レベルの取込みを引き起こすことが分かっている。しかし、グリコールエーテルの高レベルの取込みは、得られる脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルに望ましい物理的性質を与えるのに必要な脂肪族ジカルボン酸成分の必要レベルを減らすことができるので、幾つかの事例ではこの組合せが望ましい。このような組成物は、例えば透湿性ごみ処理袋などの或る種の用途、例えばより高い吸湿を必要とするものにとっては好ましい。本明細書中で開示する実施形態では、芳香族ジカルボン酸とスルホン化化合物の組合せを避け、ナトリウム緩衝化合物を使用して本明細書中で開示する用途に適した脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルを得ることによって、より低く、より狭い範囲でグリコールエーテルの取込みの制御を実現する。二量体化を制御する工程パラメータの別の例としては、より過剰なグリコールモノマーを反応容器に装入した場合、最終ポリマー中に取り込まれるグリコールエーテルのモル%が増す。
【0035】
一般に脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルは、開示したモノマーからポリエステルの調製に関して知られている任意の方法によって重合することができる。そのような方法は、適切な反応器の構成を用いてバッチ、セミバッチのいずれかで、または連続方式で働かせることができる。本明細書の実施形態中で開示したポリマーを調製するために使用される特定のバッチ反応工程は、260℃以上に反応物を加熱する手段、揮発性液体を蒸留除去するための分別カラム、高粘度溶融物を撹拌することができる効率のよい撹拌機、反応器の内容物を窒素で覆うための手段、および1トル未満の真空を達成することができる真空システムを備える。
【0036】
このバッチ工程は、一般にはエステル交換および重縮合からなる2段階で行われる。第一ステップ、すなわちエステル交換では、エステル交換触媒の存在下でジカルボン酸モノマーまたはそれらの誘導体を単鎖グリコールと結合させる。反応器に装入されるモノマーの正確な量は、所望のポリマーの量およびその組成に応じて熟練者によって容易に決められる。このエステル交換のステップでは、過剰のグリコールを使用し、その過剰分を第二の重縮合のステップの間に蒸留除去するのが有利である。10から100%のグリコール過剰量が一般に使用される。これら触媒は当業界で一般に知られており、この工程のための好ましい触媒はチタンアルコキシドである。使用される触媒の量は、一般にはポリマー100万部当たりチタン10から300部である。一緒にしたモノマーを撹拌しながら200から250℃の範囲の温度まで徐々に加熱する。その結果、エステル交換の揮発性生成物としてアルコールおよび/または水が形成され、それらは過度のグリコールとジカルボン酸のグリコレートアダクトとの損失なしに反応容器から蒸留除去することができる。使用される反応器およびモノマーによっては反応器を直接250℃まで加熱することもでき、また200から230℃の範囲の温度に留めることもできる。エステル交換のステップは通常240から260℃の範囲の温度で完了する。交換のステップの完了は、回収されたアルコールおよび/または水の量から、また分別カラムの上部での下降温度により確かめられた。
【0037】
第二ステップ、すなわち重縮合を真空下で240から260℃で行って過剰のグリコールを蒸留除去する。真空は、反応器の内容物の突沸を避けるために徐々に加える。所望の溶融体粘度に達するまで、完全な真空下(1トル未満)で撹拌を続ける。反応器の経験のある熟練者は、撹拌機のモーターに掛かるトルクからポリマーが所望の溶融体粘度に達したかどうかを判定することができる。一般に適切な物理的性質を有するポリマーは、260℃における零せん断溶融体粘度が少なくとも1000ポアズを超える場合に得られる。より一般的には2000ポアズを超える値が得られる。幾つかの実施形態では5000ポアズを超える値が望ましい。
【0038】
2ステップバッチ工程ではナトリウム緩衝成分は、グリコールエーテル形成を制御するために工程の任意のステップの間に加えられるナトリウム緩衝化合物またはそれらの混合物から実質上なる。一般にナトリウム緩衝成分は、エーテルグリコール形成の制御に関して最大の利益を達成するようにエステル交換のステップの間にモノマーと共に加えられる単一のナトリウム緩衝化合物から実質上なる。別法ではナトリウム緩衝化合物は、エステル交換のステップの完了後、または重縮合のステップの間に過剰のグリコールの一部を除去した直後などの工程の後期に加えられ、それでもなお制御の度合いを達成することができる。幾つかの事例では脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル中のこのナトリウム緩衝化合物の総量を与えるために工程の両方のステップで同じナトリウム緩衝化合物を加えることが望ましい場合もある。他の事例では個々のステップで異なる組成のナトリウム緩衝化合物、またはその混合物さえも使用し、それらの溶解度および融点の違いを利用するのが望ましい場合もある。バッチ、セミバッチ、または連続工程それぞれに対して添加の方法およびタイミング、量、および脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルのナトリウム緩衝成分に含まれるナトリウム緩衝化合物の組成は、グリコールエーテル形成の望ましい制御の度合いによって、またその特定の反応器の構成および条件によって必然的に決まる。
【0039】
本明細書中で開示する実施形態の脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルおよび方法に関してナトリウム緩衝成分は、形成される脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの総重量を基準にしてその中に取り込まれるナトリウムが約0.001と0.1重量%の間、典型的にはナトリウムが約0.01と0.08重量%の間、より典型的にはナトリウムが約0.02と0.06重量%の間を示すように使用される。これは、一般には重量対重量を基準とした百万分率(ppm)の用語で表され、約10と1000ppmの間、典型的には約100と800ppmの間、より典型的には約200と600ppmの間の範囲のナトリウムが与えられる。
【0040】
脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルは、造形品に加工するのに適した溶融体粘度および上記物品に役立つレベルの機械的性質を与えるのに十分な高い分子量を有することが一般に好ましい。一般に約20,000g/モルから約150,000g/モルの重量平均分子量(Mw)が有用である。約50,000g/モルから約130,000g/モルのMwがより一般的である。約80,000g/モルから約110,000g/モルのMwが最も一般的である。実際面では分子量は、固有または内部粘度などの溶液粘度と相関関係がある場合が多い。正確な相関性は所与のコポリマーの組成によって決まるが、上記分子量は一般には約0.5dl/gから約2.0dl/gの固有粘度(IV)値に相当する。約1.0dl/gから約1.8dl/gのIV値がより典型的である。約1.3dl/gから約1.6dl/gのIV値が最も典型的である。
【0041】
本明細書中で開示する方法によって調製されるコポリエーテルエステルは満足のいくような分子量に達するが、交換および重縮合のステップの温度および接触時間を低減させると同時に、上記分子量を迅速に増大させ、かつそれらの熱履歴をできるだけ少なくするために連鎖延長剤を使用するのが得策なこともある。好適な連鎖延長剤には、ジイソシアナート、ポリイソシアナート、酸二無水物、ジエポキシド、ポリエポキシド、ビスオキサゾリン、カルボジイミド、およびジビニルエーテルが挙げられ、これらは重縮合のステップの終わりに、または機械的押出設備による加工の間に、またはそのコポリエーテルエステルを所望の造形品に加工する間に加えることができる。望ましい連鎖延長剤の特定の例には、ヘキサメチレンジイソシアナート、メチレンビス(4−フェニルイソシアナート)、およびピロメリト酸二無水物が挙げられる。このような連鎖延長剤は、一般にはコポリエーテルエステルを基準にして0.1から2重量%で使用される。
【0042】
脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの分子量はまた、固相重合および真空押出などの後重合工程によって増加させることもでき、これらは両方とも重縮合によって生ずるどのような揮発性物質の効率的な除去も温度および時間のそれぞれの規模で可能にする。これらの工程の利点は、コポリエーテルエステルがその工程条件によってかき乱されずに残存することである。各工程において重縮合による必要な分子量の増加を獲得するために必要な温度および時間は、試料を採取することによって、または工程の出力、例えば機械的押出のトルク示数を監視することによって決めることができる。
【0043】
別法では、重合の間にコポリエーテルエステル中に分岐剤を取り込んで長鎖分岐を導入することによって溶融体粘度を増大させることもできる。好適な分岐剤には、カルボン酸官能基、ヒドロキシ官能基、またはこれらの混合物を含有する三官能性および多官能性化合物が挙げられる。望ましい分岐剤の特定の例には、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリト酸)、トリメチル−1,2,4−ベンゼントリカルボキシラート、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物(トリメリト酸無水物)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリト酸)、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(ピロメリト酸二無水物)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、ペンタエリトリトール、グリセロール、2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、およびこれらから得られる混合物が挙げられる。一般にはこのような分岐剤は、ジカルボン酸成分またはグリコール成分(その分岐剤の多数官能基によって決まる)に対して0.01から0.5モル%で使用される。
【0044】
さらに、コポリエーテルエステルの重合または加工の間に核剤を取り込んでそれらの結晶化速度を加速し、かつポリマー全体にわたってクリスタライトのより均一な分布を実現することによって、コポリエーテルエステルの熱的挙動を或る程度まで調整することができる。このような方法で融解ポリマーのより均一でむらのない熱クエンチングを保つことによってコポリエーテルエステルの加工を改善することができ、これはもしかすると造形品の機械的性質の改良にもつながる。具体的には好適な核剤には、上記ナトリウム緩衝化合物、高分子量カルボン酸のナトリウム塩、およびナトリウム陽イオンで部分的または完全に中和した高分子量アイオノマーが挙げられる。重合の間に取り込む場合、一般にはナトリウム緩衝化合物が使用され、モノマーと一緒に、あるいは工程の後期、例えば交換のステップの完了後で、重縮合のステップの前または間に加えることができる。完成したコポリエーテルエステルに配合する場合は高分子量ナトリウム塩および高分子量アイオノマーが一般に使用され、十分な混合を伴う機械的押出の間に加えることができる。望ましい核剤の特定の例には、ナトリウム緩衝化合物、酢酸ナトリウム、エルカ酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウム(Licomont(登録商標)NaV 101、Clariant)、Surlyn(登録商標)ナトリウムアイオノマー(エチレン−メタクリル酸ナトリウムアイオノマー、DuPontTM)、およびAClyn(登録商標)285(低分子量エチレン−アクリル酸ナトリウムアイオノマー、Honeywell International,Inc.)が挙げられる。一般にこのような核剤は、コポリエーテルエステルを基準にした重量対重量で10から1000百万分率(ppm)のナトリウムを与えるレベルで使用される。
【0045】
この脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルは、他の高分子材料とブレンドすることができる。そのような高分子材料は生分解性であってもなくてもよく、また天然由来のもの、それを変性したもの、または合成したものであることができる。
【0046】
脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルとブレンドするのに適した生分解性高分子材料には、ポリ(ヒドロキシアルカノアート)、ポリカーボナート、ポリ(カプロラクトン)、脂肪族ポリエステル、脂肪族−芳香族コポリエステル、脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル、脂肪族−芳香族コポリアミドエステル、スルホン化脂肪族−芳香族コポリエステル、スルホン化脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル、スルホン化脂肪族−芳香族コポリアミドエステル、およびそれらから誘導されるコポリマーおよび混合物が挙げられる。ブレンド可能な生分解性材料の特定の例には、DuPont CompanyのBiomax(登録商標)スルホン化脂肪族−芳香族コポリエステル、Eastman Chemical CompanyのEastar Bio(登録商標)脂肪族−芳香族コポリエステル、BASF corporationのEcoflex(登録商標)脂肪族−芳香族コポリエステル、ポリ(1,4−ブチレンテレフタラート−co−アジパート)(50:50モル)、IRe Chemical CompanyのEnPol(登録商標)ポリエステル、ポリ(1,4−ブチレンスクシナート)、Showa High Polymer CompanyのBionolle(登録商標)ポリエステル、ポリ(エチレンスクシナート)、ポリ(1,4−ブチレンアジパート−co−スクシナート)、ポリ(1,4−ブチレンアジパート)、ポリ(アミドエステル)、Bayer CompanyのBak(登録商標)ポリ(アミドエステル)、ポリ(エチレンカーボナート)、ポリ(ヒドロキシブチラート)、ポリ(ヒドロキシバレラート)、ポリ(ヒドロキシブチラート−co−ヒドロキシバレラート)、Monsanto CompanyのBiopol(登録商標)ポリ(ヒドロキシアルカノアート)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド−co−カプロラクトン)、Union Carbide CompanyのTone(R)ポリ(カプロラクトン)、Cargill Dow CompanyのEcoPLA(登録商標)ポリ(ラクチド)、およびこれらから得られる混合物が挙げられる。基本的には任意の生分解性材料をこの脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルとブレンドすることができる。
【0047】
この脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルとブレンドするのに適した非生分解性高分子材料の例には、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリ(エチレン−co−グリシジルメタクリラート)、ポリ(エチレン−co−メチル(メタ)アクリラート−co−グリシジルアクリラート)、ポリ(エチレン−co−n−ブチルアクリラート−co−グリシジルアクリラート)、ポリ(エチレン−co−メチルアクリラート)、ポリ(エチレン−co−エチルアクリラート)、ポリ(エチレン−co−ブチルアクリラート)、ポリ(エチレン−co−(メタ)アクリル酸)、ポリ(エチレン−co−(メタ)アクリル酸)の金属塩、ポリ(メチルメタクリラート)およびポリ(エチルメタクリラート)などのポリ((メタ)アクリラート)、ポリ(エチレン−co−一酸化炭素)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリエステル、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(1,3−プロピルテレフタラート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタラート)、ポリ(エチレン−co−1,4−シクロヘキサンジメタノールテレフタラート)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリ(4−ヒドロキシスチレン)、ノバラック、ポリ(クレゾール)、ポリアミド、ナイロン、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン612、ポリカーボナート、ポリ(ビスフェノールAカーボナート)、ポリスルフィド、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエーテル、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)、ポリスルホン、およびこれらのコポリマー、およびこれらから得られる混合物が挙げられる。
【0048】
この脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルとブレンドするのに適した天然高分子材料の例には、デンプン、デンプン誘導体、加工デンプン、熱可塑性デンプン、カチオン性デンプン、アニオン性デンプン、デンプンエステル類、例えば酢酸デンプン、デンプンヒドロキシエチルエーテル、アルキルデンプン類、デキストリン類、アミンデンプン類、リン酸デンプン類、ジアルデヒドデンプン類、セルロース、セルロース誘導体、変性セルロース、セルロースエステル類、例えば酢酸セルロース、二酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、吉草酸セルロース、三酢酸セルロース、トリプロピオン酸セルロース、三酪酸セルロース、およびセルロース混合エステル類、例えば酢酸プロピオン酸セルロースおよび酢酸酪酸セルロース、セルロースエーテル類、例えばメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシエチルプロピルセルロース、多糖類、アルギン酸、アルギン酸エステル、藻類コロイド、寒天(agar)、アラビアガム、グアールガム、アカシアガム、カラゲニンガム、ファーセレランガム、ガティガム、サイリウムガム、マルメロガム、タマリンドガム、イナゴマメガム、カラヤガム、キサンタンガム、トラガカントガム、タンパク質、プロラミン、コラーゲンおよびその誘導体、例えばゼラチンおよびグルー、カゼイン、ヒマワリタンパク質、タマゴタンパク質、ダイズタンパク質、寒天(vegetable gelatin)、グルテン、およびこれらから得られる混合物が挙げられる。熱可塑性デンプンは、例えば米国特許第5,362,777号明細書に記載のように生産することができる。基本的には既知の任意の天然高分子材料を、所望のブレンド組成を得るのに必要な工程条件および相溶化剤によってこの脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルとブレンドすることができる。
【0049】
この脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルおよびそれから形成されるブレンド物を用いて種々様々な造形品を製造することができる。脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルから製造することができる造形品には、フィルム、シート、繊維、フィラメント、袋、メルトブローン容器、刃物類などの成形品、塗装品、基体上へのポリマー溶融押出塗装品、基体上へのポリマー溶液塗装品、積層品、およびこのような造形品の複合、多層、および発泡集合体が挙げられる。この脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルは、ポリマーから作ることができる任意の造形品の製造に有用である。この脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルは、熱可塑性樹脂用の方法、例えば圧縮成形、熱成形、押出、同時押出、射出成形、ブロー成形、溶融紡糸、フィルムキャスティング、フィルムブローイング、ラミネーション、ガスまたは化学発泡剤を用いた発泡成形を含めた任意の既知の方法を用いてこのような造形品にするか、あるいはこれらの任意の適切な組合せを用いてその所望の造形品を調製することができる。
【0050】
造形品、具体的にはとりわけフィルム、袋、容器、カップ、および皿に使用されるものは、一般に堆肥にできることが望ましい。堆肥にできる包装および包装材料に対する現在の基準は、ASTM D6400−04およびEN 13432:2000に記載されている。より厳しい基準としてEN 13432は、新しい堆肥性包装材料の資格にとってより適切である。堆肥性としての資格を得るためには、その包装は、堆肥化過程に及ぼす、または得られた堆肥を用いた場合の植物の成長に及ぼす毒性が原因の負の影響なしに工業的堆肥化施設の条件下で3ヶ月以内に崩壊し、かつ6ヶ月以内に二酸化炭素に90%のレベルで生分解しなければならない。この点で本明細書中で開示する脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルは、フィルムなどの包装材料として使用されるそれらの造形品が堆肥化可能なことを示す場合に生分解性であるということができる。本発明の典型的な実施形態では造形品は、20ミクロンまで、より典型的には70ミクロンまで、幾つかの実施形態では120ミクロンまで、さらに他の実施形態では120ミクロンを超える厚さで堆肥化可能なフィルムを含む。
【0051】
これら脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル、それらのブレンド物、およびそれらから形成される造形品は、加工助剤としてこれらポリエステル中で使用される、または最終用途の性能のための任意の既知の添加剤を含むことができる。これら添加剤は、好ましくは非毒性であり、生分解性であり、かつ再生可能な生物源から誘導される。このような添加剤には、ポリマーブレンド成分用の相溶化剤、熱およびUV安定剤、難燃剤、可塑剤、流動性向上剤、スリップ剤、レオロジー調整剤、滑沢剤、強化剤、顔料、粘着防止剤、無機および有機充填剤、例えばシリカ、クレイ、タルク、チョーク、二酸化チタン、カーボンブラック、木粉、ケラチン、精製羽毛、および補強繊維、例えばガラス繊維、および天然繊維、例えば紙、ジュート、および麻が挙げられる。
【0052】
試験法
脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの固有粘度(IV)は、Viscotek Forced Flow Viscometer(FFV)Model Y−900を用いて測定した。試料を、50/50重量%のトリフルオロ酢酸/塩化メチレン(TFA/CH2Cl2)中に19℃で0.4%(wt/vol)の濃度で溶解した。この方法によって記録された固有粘度値は、Goodyear Method R−103b「Determination of Intrinsic Viscosity in 50/50(by weight)Trifluoroacetic Acid/Dichloromethane」を用いて求めた値と同値であった。この方法は、任意のポリエステル(すなわち、TFA/CH2Cl2の50/50重量%溶媒混合物中に完全に可溶なポリ(エチレンテレフタラート)(PET)、ポリ(トリメチレンテレフタラート)(3GT)、ポリ(ブチレンテレフタラート)(PBT)、ポリ(エチレンナフタラート)(PEN))に適用することができる。一般には25mlのポリマー溶液を調製するために試料サイズ0.1000gのポリエステルを使用した。通常、ポリマーの完全な溶解は、室温で8時間以内に起こった。溶解時間は、ポリエステルの分子量、結晶化度、化学構造、および形態(すなわち繊維、フィルム、摩砕粉(ground)、およびペレット)に左右された。
【0053】
ポリマーの組成は、核磁気共鳴分光法(NMR)によって測定した。各試料について数個のペレットまたはフレークを、室温(試料はまた、溶解速度を増すために構造変化を示さずに50℃まで加熱することができる)でトリフルオロ酢酸−d1中に溶解した。この溶液を5mm NMR管に移し、Varian S 400MHz分光計により30℃でスペクトルを得た。スペクトルの適切な面積の積分から試料のモル%組成を計算した。ジ−n−プロピレングリコール含有率に関して計算されるモル%は、そのポリマーを構成するジカルボン酸成分およびグリコール成分の両方に基づいている。このコポリエーテルエステルは、等しい部数のジカルボン酸成分とグリコール成分からなるので、グリコール成分のみの基準に換算することが望ましい場合、これらの値は倍になることになる。
【0054】
窒素雰囲気下でTA Instruments(New Castle,DE)Model Number 2920により示差走査熱量測定(DSC)を行った。試料を20℃/分で20℃から270℃まで加熱し、270℃で5分間保ち、液体N2中で急冷し、10℃/分で−100℃から270℃まで加熱し(Tg)、270℃で3分間保ち、10℃/分で−100℃まで冷却し(Tc)、−100℃に2分間保ち、10℃/分で−100℃から270℃まで加熱した(TcおよびTm)。
【実施例】
【0055】
1,3−プロパンジオールはDuPont/Tate & Lyle,Loudon,TN,USAから得た。別段の指示がない限り、すべての他の化学薬品、試薬、および材料は、Aldrich Chemical Company,Milwaukee,WI,USAから得た。
【0056】
下記の実施例および表中で使用される略語は次の通りである。3G(1,3−プロパンジオール)、TPA(テレフタル酸)、DMT(テレフタル酸ジメチル)、T(テレフタル酸)、Seb(セバシン酸)、SIPA(5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム塩)、Glu(グルタル酸)、TMA(トリメリト酸)、TMAnh(トリメリト酸無水物)、P(フタル酸)、PAnh(フタル酸無水物)、CAnh(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)、DPG(ジ−n−プロピレングリコール)、NaOAc(酢酸ナトリウム三水和物、EM Science,Cherry Hill,NJ)、NaHCO3(重炭酸ナトリウム、EMD Chemicals,Gibbstown,NJ)、NaOBz(安息香酸ナトリウム)、およびNaO2CH(ギ酸ナトリウム)。
【0057】
実施例1
250ml三つ口ガラス製フラスコに、50:25.5:23.5:1.0モル%の3G:T:Seb:SIPAの組成、すなわち1,3−プロパンジオール(48.66g、1.8当量)、テレフタル酸ジメチル(35.18g)、ジメチルイソフタラート−3−ナトリウムスルホナート(2.10g)、セバシン酸(33.77g)、および酢酸ナトリウム三水和物(0.143g、Na 300ppm)を有する反応混合物成分を装入して理論収量80gの最終ポリマーを得た。フラスコは、目盛付き捕集シリンダーを備えたビグリュー蒸留ヘッドおよび真空気密PTFEベアリングを備えたステンレス鋼製スターラーを具備し、窒素流でパージした。次いでこのフラスコにチタン(IV)イソプロポキシド(25μl、Ti 50ppm)を装入し、撹拌しながら注意深く真空(100トル)と窒素の間を3回循環させることによって脱気した。反応混合物を撹拌しながら窒素中で160℃まで加熱し、次いで230℃まで一定の割合で2.7時間かけて上昇させ、蒸留を開始させた。230℃における蒸留が終わったとき、温度を250℃まで上昇して蒸留を再開させた。2時間後、加熱サイクル全体で19mlの留出物が収集されていた。この捕集シリンダーを捕集フラスコと交換し、それをドライアイスで冷却し、反応混合物を完全な真空下(0.1トル未満)に置いた。溶融体粘度の増加に適応させるために撹拌速度を下げながら、反応混合物を完全な真空下で250℃において2.3時間撹拌した。次いで窒素で真空を解き放ち、反応塊を放置して室温まで冷却した。23.62gの追加の縮合物がフラスコ中に収集されており、68.96gの固体ポリマーが回収された。
【0058】
試料をGoodyear固有粘度について測定し、1.31dl/gの値であった。示差走査熱量測定(DSC)は、123.0℃の結晶Tm(19.8J/g)および−23.3℃のガラス転移Tgを示した。1H NMRは、ポリマーが0.32モル%のジ−n−プロピレングリコール含有率を有することを示した。
【0059】
実施例1の手順を用いて実施例2〜4および比較例(CE)1(これらはそれぞれの処理時間に小さな変更がある)を調製した(表1)。これらの実施例は、ナトリウム緩衝化合物の量を増加すると、スルホン化脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル中のジ−n−プロピレングリコール反復単位の量が減少する傾向があることを実証する。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例5
250ml三つ口ガラス製フラスコに、50:24.5:25.5モル%の3G:T:Sebの組成、すなわち1,3−プロパンジオール(48.66g、1.8当量)、テレフタル酸ジメチル(33.80g)、セバシン酸(36.64g)、および酢酸ナトリウム三水和物(0.0714g、Na 150ppm)を有する反応混合物成分を装入して理論収量80gの最終ポリマーを得た。フラスコは、目盛付き捕集シリンダーを備えたビグリュー蒸留ヘッドおよび真空気密PTFEベアリングを備えたステンレス鋼製スターラーを具備し、窒素流でパージした。次いでこのフラスコにチタン(IV)イソプロポキシド(25μl、Ti 50ppm)を装入し、撹拌しながら注意深く真空(100トル)と窒素の間を3回循環させることによって脱気した。反応混合物を撹拌しながら窒素中で160℃まで加熱し、次いで230℃まで一定の割合で2.4時間かけて上昇させ、蒸留を開始させた。230℃における蒸留が終わったとき、温度を250℃まで上昇して蒸留を再開させた。2時間後、加熱サイクル全体で18.5mlの留出物が収集されていた。この捕集シリンダーを捕集フラスコと交換し、それをドライアイスで冷却し、反応混合物を完全な真空下(0.1トル未満)に置いた。溶融体粘度の増加に適応させるために撹拌速度を下げながら、反応混合物を完全な真空下で250℃において3.3時間撹拌した。次いで窒素で真空を解き放ち、反応塊を放置して室温まで冷却した。追加の24.74gの縮合物がフラスコ中に収集されており、71.95gの固体ポリマーが回収された。
【0062】
試料をGoodyear固有粘度について測定し、1.86dl/gの値であった。示差走査熱量測定(DSC)は、119℃の結晶Tm(23.4J/g)および−31.2℃のガラス転移Tgを示した。1H NMRは、ポリマーが0.15モル%のジ−n−プロピレングリコール含有率を有することを示した。
【0063】
実施例5の手順を用いて実施例6〜9および比較例2〜3(これらはそれぞれの処理時間に小さな変更がある)を調製した(表2)。ジ−n−プロピレングリコール反復単位の量は、特に脂肪族ジカルボン酸としてグルタル酸を使用する場合、それらの脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの酢酸ナトリウム量の増加に伴って減少し、また表1のスルホン化脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルと比較した場合に低いことをこれらの実施例は実証する。
【0064】
【表2】

【0065】
実施例10
250ml三つ口ガラス製フラスコに、50:26.45:23.5:0.05モル%の3G:T:Seb:TMAの組成、すなわち1,3−プロパンジオール(61.37g、1.8当量)、テレフタル酸(39.37g)、セバシン酸(42.59g)、トリメリト酸無水物(0.0861g)、および酢酸ナトリウム三水和物(0.178g、Na 300ppm)を有する反応混合物成分を装入して理論収量100gの最終ポリマーを得た。フラスコは、目盛付き捕集シリンダーを備えたビグリュー蒸留ヘッドおよび真空気密PTFEベアリングを備えたステンレス鋼製スターラーを具備し、窒素流でパージした。次いでこのフラスコにチタン(IV)イソプロポキシド(187.4μl、Ti 300ppm)を装入し、10rpmで撹拌しながら注意深く真空(100トル)と窒素の間を3回循環させることによって脱気した。反応混合物を窒素中で50rpmで撹拌しながら165℃まで加熱し、次いで一定の割合で265℃まで直ちに上昇させ、蒸留を開始させた。265℃で2時間の後、加熱サイクル全体で15.8mlの留出物が収集されていた。この捕集シリンダーを捕集フラスコと交換し、それをドライアイスで冷却し、反応混合物を2トルの真空下に置いた。7個のポリマー試料を30分間隔で採取して固有粘度の増加を監視しながら、その反応混合物を真空下で265℃において2.5時間撹拌した。次いで窒素で真空を解き放ち、反応塊を放置して室温まで冷却した。追加の26.7gの縮合物がフラスコ中に収集されていた。
【0066】
試料をGoodyear固有粘度について測定し、1.02dl/gの値であった。示差走査熱量測定(DSC)は、133℃の結晶Tm(29.0J/g)および−31.3℃のガラス転移Tgを示した。1H NMRは、ポリマーが0.48モル%のジ−n−プロピレングリコール含有率を有することを示した。
【0067】
実施例10で調製した分岐型脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルは、酢酸ナトリウムを含有しない比較例4と比べて低レベルのジ−n−プロピレングリコール反復単位を有することが分かった(表3)。表3はまた、重合を実施例10の手順に従ってより少量の触媒(Ti 100ppm)を用いて行った実施例11および比較例5(これらはそれぞれの処理時間に小さな変更がある)を示す。表2中の結果と比較した場合、これらの実施例は、TPAを使用することによりDMTよりも高レベルのジ−n−プロピレングリコール反復単位を生じ、また使用する触媒が少量であるほど高レベルのジ−n−プロピレングリコール反復単位を生ずることを示す。
【0068】
【表3】

【0069】
実施例12
250ml三つ口ガラス製フラスコに、50:26.45:23.5:0.05モル%の3G:T:Seb:TMAの組成、すなわち1,3−プロパンジオール(61.37g、1.8当量)、テレフタル酸ジメチル(46.02g)、セバシン酸(42.59g)、トリメリト酸無水物(0.0861g)、および酢酸ナトリウム三水和物(0.178g、Na 300ppm)を有する反応混合物成分を装入して理論収量100gの最終ポリマーを得た。フラスコは、目盛付き捕集シリンダーを備えたビグリュー蒸留ヘッドおよび真空気密PTFEベアリングを備えたステンレス鋼製スターラーを具備し、窒素流でパージした。次いでこのフラスコにチタン(IV)イソプロポキシド(62.5μl、Ti 100ppm)を装入し、20rpmで撹拌しながら注意深く真空(100トル)と窒素の間を3回循環させることによって脱気した。反応混合物を50rpmで撹拌しながら窒素中で165℃まで加熱し、次いで265℃まで一定の割合で2時間かけて上昇させ、蒸留を開始させた。265℃で30分の後、加熱サイクル全体で20.0mlの留出物が収集されていた。この捕集シリンダーを捕集フラスコと交換し、それをドライアイスで冷却し、反応混合物を完全な真空下(0.1トル未満)に置いた。4個のポリマー試料を30分間隔で採取して固有粘度の増加を監視しながら、その反応混合物を完全な真空下で265℃において2時間撹拌した。次いで窒素で真空を解き放ち、反応塊を放置して室温まで冷却した。追加の32.72gの縮合物がフラスコ中に収集されていた。
【0070】
試料をGoodyear固有粘度について測定し、1.78dl/gの値であった。示差走査熱量測定(DSC)は、130℃の結晶Tm(32.7J/g)および−28.8℃のガラス転移Tgを示した。1H NMRは、ポリマーが0.20モル%のジ−n−プロピレングリコール含有率を有することを示した。
【0071】
実施例12の手順をもう2回、実施例13および14(これらはそれぞれの処理時間に小さな変更がある)において繰り返して、表4に示すように0.15および0.17モル%(平均で0.17モル%)のジ−n−プロピレングリコール含有率を有するポリマーを得た。次いで実施例12を比較例6および7において酢酸ナトリウムなしで2回繰り返して、平均で0.25モル%のより高いジ−n−プロピレングリコール含有率を有するコポリエーテルエステルを得た。表4の結果を表3の結果と比較した場合、DMTはTPAよりも低レベルのジ−n−プロピレングリコール反復単位を生じさせることが明らかである。
【0072】
【表4】

【0073】
実施例15
250ml三つ口ガラス製フラスコに、50:26.5:23.5モル%の3G:T:Sebの組成、すなわち1,3−プロパンジオール(49.10g、1.8当量)、テレフタル酸(31.56g)、セバシン酸(34.07g)、および安息香酸ナトリウム(0.150g、Na 300ppm)を有する反応混合物成分を装入して理論収量80gの最終ポリマーを得た。フラスコは、目盛付き捕集シリンダーを備えたビグリュー蒸留ヘッドおよび真空気密PTFEベアリングを備えたステンレス鋼製スターラーを具備し、窒素流でパージした。次いでこの反応フラスコにチタン(IV)イソプロポキシド(50μl、Ti 100ppm)を装入し、20rpmで撹拌しながら注意深く真空(100トル)と窒素の間を3回循環させることによって脱気した。反応混合物を窒素中で165℃まで加熱し、次いで100rpmで撹拌しながら260℃まで一定の割合で上昇させ、蒸留を開始させた。260℃で2.7時間の後、加熱サイクル全体で13.25mlの留出物が収集されていた。この捕集シリンダーを捕集フラスコと交換し、それをドライアイスで冷却し、反応混合物を0.5トルの真空下に置いた。溶融体粘度の増加に適応させるために撹拌速度を10rpmまで下げながら、反応混合物を真空下で260℃において2.5時間撹拌した。次いで窒素で真空を解き放ち、分析用にポリマーの試料を採取した。追加の23.1gの縮合物がフラスコ中に収集されていた。
【0074】
試料をGoodyear固有粘度について測定し、1.56dl/gの値であった。示差走査熱量測定(DSC)は、130℃の結晶Tm(27.9J/g)および−28.0℃のガラス転移Tgを示した。1H NMRは、ポリマーが0.25モル%のジ−n−プロピレングリコール含有率を有することを示した。
【0075】
実施例15で調製した脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルは、比較例8の安息香酸ナトリウムを使用しない重合と比べて低いレベルのジ−n−プロピレングリコール反復単位を有することが分かった(表5)。表5にはまた、実施例15の手順を用いた場合のナトリウム緩衝化合物の量および組成を変えることによるジ−n−プロピレングリコール反復単位の類似の制御を実証する実施例16および17(これらはそれぞれの処理時間に小さな変更がある)を示す。
【0076】
【表5】

【0077】
実施例18
250ml三つ口ガラス製フラスコに、50:25:20.5モル%の3G:T:Seb:Pの組成、すなわち1,3−プロパンジオール(62.08g、1.8当量)、テレフタル酸(37.65g)、セバシン酸(36.66g)、およびフタル酸無水物(6.71g)を有する反応混合物成分を装入して理論収量100gの最終ポリマーを得た。フラスコは、目盛付き捕集シリンダーを備えたビグリュー蒸留ヘッドおよび真空気密PTFEベアリングを備えたステンレス鋼製スターラーを具備し、窒素流でパージした。次いでこのフラスコにチタン(IV)イソプロポキシド(62.5μl、Ti 100ppm)を装入し、20rpmで撹拌しながら注意深く真空(100トル)と窒素の間を3回循環させることによって脱気した。反応混合物を窒素中で165℃まで加熱し、次いで100rpmで撹拌しながら250℃まで一定の割合で上昇させ、蒸留を開始させた。250℃で2.5時間の後、加熱サイクル全体で15.0mlの留出物が収集されていた。この捕集シリンダーを捕集フラスコと交換し、それをドライアイスで冷却し、反応混合物を完全な真空下(0.1トル未満)に置いた。過剰の1,3−プロパンジオールを除去し、透明な溶融物を得た後、窒素で真空を解き放ち、その融解ポリマーにギ酸ナトリウム(0.089g、Na 300ppm)を加えた。次いで溶融体粘度の増加に適応させるために撹拌速度を5rpmまで下げながら、反応混合物を完全な真空下で250℃において3.4時間撹拌した。次いで窒素で真空を解き放ち、反応塊を放置して室温まで冷却した。追加の34.1gの縮合物がフラスコ中に収集されており、81.87gの固体ポリマーが回収された。
【0078】
試料をGoodyear固有粘度について測定し、1.76dl/gの値であった。示差走査熱量測定(DSC)は、119℃の結晶Tm(18.3J/g)および−16.3℃のガラス転移Tgを示した。1H NMRは、ポリマーが0.37モル%のジ−n−プロピレングリコール含有率を有することを示した。
【0079】
コモノマーとしてフタル酸無水物を使用した実施例18で調製した脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルは、比較例9のギ酸ナトリウムを使用しない重合と比べて低いレベルのジ−n−プロピレングリコール反復単位を有することが分かった(表6)。表6はまた、実施例15の手順を用いた場合のコモノマーとしての1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物によるジ−n−プロピレングリコール反復単位の制御を実証するための実施例19および比較例10(これらはそれぞれの処理時間に小さな変更がある)を示す。
【0080】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルであって、
全酸成分100モル%を基準にして、
a)約70から40モル%の芳香族ジカルボン酸成分、および
b)約30から60モル%の脂肪族ジカルボン酸成分
から実質上なるジカルボン酸成分と、
全グリコール成分100モル%を基準にして、
a)約99.9から98モル%の単鎖(single)グリコール成分、および
b)約0.1から2モル%のジアルキレングリコール成分
から実質上なるグリコール成分と、
前記脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの総重量を基準にしてナトリウム約0.001から0.1重量%のナトリウム緩衝成分と
を含む、脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル。
【請求項2】
全酸成分100モル%を基準にして、
a)約70から40モル%の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、および
b)約30から60モル%の脂肪族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体
を含む混合物と、
単鎖グリコール成分と、
前記脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの総重量を基準にしてナトリウム約0.001から0.1重量%のナトリウム緩衝成分と
を反応させることによって得ることができる、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル。
【請求項3】
前記芳香族ジカルボン酸成分が、テレフタル酸およびテレフタル酸ジメチルからなる群から選択される、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル。
【請求項4】
前記脂肪族ジカルボン酸成分が、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、およびブラシル酸からなる群から選択される、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル。
【請求項5】
前記単鎖グリコール成分が、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールからなる群から選択される、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル。
【請求項6】
前記ナトリウム緩衝成分が、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、ギ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、テレフタル酸一ナトリウム、および重炭酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル。
【請求項7】
0と約5モル%の間のスルホネート成分を含有してもよい、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル。
【請求項8】
前記スルホネート成分が、5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム塩である、請求項7に記載の脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル。
【請求項9】
前記ジカルボン酸成分が、全酸成分100モル%を基準にして、
a)約62から48モル%の芳香族ジカルボン酸成分、および
b)約38から52モル%の脂肪族ジカルボン酸成分
から実質上なり、かつ
前記グリコール成分が、全グリコール成分100モル%を基準にして、
a)約99.9から99モル%の単鎖グリコール成分、および
b)約0.1から1モル%のジアルキレングリコール成分
から実質上なる、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル。
【請求項10】
前記ナトリウム緩衝成分が、前記脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの総重量を基準にしてナトリウム約0.01から0.08重量%である、請求項1に記載の脂肪族−芳香族コポリエーテルエステル。
【請求項11】
請求項1に記載の前記脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルと、少なくとも1種類の他の高分子材料とを含むブレンド物。
【請求項12】
前記他の高分子材料が、天然ポリマー、デンプン、およびポリ(乳酸)からなる群から選択される、請求項11に記載のブレンド物。
【請求項13】
請求項1に記載の前記脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルを含む造形品。
【請求項14】
フィルム、シート、繊維、メルトブローン容器、成形部品、および発泡成形部品からなる群から選択される、請求項13に記載の造形品。
【請求項15】
脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの製造方法であって、
a)1種類または複数種類のジカルボン酸モノマーまたはそれらのジエステル誘導体を、エステル交換触媒の存在下で単鎖グリコールと化合させて第一反応混合物を形成するステップと、
b)前記第一反応混合物を、混合しながら約200℃と260℃の間の温度に加熱し、それによってエステル交換の揮発性生成物を蒸留除去して第二反応混合物を形成するステップと、
c)前記第二反応混合物を、撹拌しながら真空下で約240℃と260℃の間の温度で重縮合させて前記脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルを形成するステップと
を含み、
前記方法の任意のステップの間にナトリウム緩衝化合物を少なくとも1回加える、方法。
【請求項16】
前記単鎖グリコールが、等モル比のヒドロキシル部分およびカルボン酸部分、またはそれらのエステル形成性誘導体を得るのに必要な量と比べて約10と100モル%の間の過剰量で反応容器に加えられる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記エステル交換触媒が、ポリマー100万部当たり約10と300部の間のチタン量で使用されるチタンアルコキシドである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ナトリウム緩衝化合物が、前記脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの総重量を基準にして約0.001と0.1重量%の間のナトリウム量でステップa)において加えられる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ナトリウム緩衝化合物が、前記脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルの総重量を基準にして約0.001と0.1重量%の間のナトリウム量でステップc)において加えられる、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記脂肪族−芳香族コポリエーテルエステルが、約1.0と1.8dl/gの間の固有粘度を有する、請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2012−512279(P2012−512279A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540951(P2011−540951)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/067875
【国際公開番号】WO2010/075030
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】