説明

脚絆に用いられる防護体および防護体付き脚絆

【課題】本発明は、山林・農地・その他の場所等における草刈作業時の刈払機等の動力草刈機の刃等による脛部切創事故防止に最適な、安全な脚絆に用いられる防護体および防護体付き脚絆を提供すること。
【解決手段】伸縮しやすい布地と、伸縮し難い布地との結合により形成された複数のポケットを有する金属板保持体と、前記ポケットに挿入され、挿入された状態で、隣り合う金属板同士がその端部において互いに重なり合う状態に配列された複数の金属板と、脚絆側に設けられた緩衝体と、からなる脚絆に用いられる防護体および、これと市販用脚絆とを一体化した防護体付脚絆。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山林・農地・その他の場所等における草刈作業時の刈払機等の動力草刈機の回転刃等による脛部切創事故防止に最適な、脚絆に用いられる防護体および防護体付き脚絆に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、山林や農地における草刈り作業は、もっぱら小型エンジンを有する動力草刈機(刈払機)によって行われている。非常に効率的である反面、高速回転する円盤状の刃先が鋭利であるため、作業時に、作業者が自らの足部、特に脛部を傷つけてしまう事故が多くその解決が求められてきた。
【0003】
これらの課題解決のために、例えば実開昭59−61220が提案されている。しかし、多数の鎖を脚絆に縫い込んであるが鎖と鎖の間隔が離れており、鋭利な刈払機等の刃から脛部を防護することはできなかった。これらの欠点を取り除くものとして、特開2004−162200号の安全脚絆が提案されている。しかし、この安全脚絆は市販の脚絆に比較すれば、安全であるものの、次のような点で問題点があり、その解決策が求められていた。
【0004】
(1)脚絆本体に直接金属板を内装させる構造のため製作に手間がかかり価格が高くな る。
(2)金属板の内装が金属板よりも大きい袋状を縫い合わせによって形成するため、縫 い目によって金属板同士が離れてしまうため、脛部に巻きつけた状態によっては図 7に示すように、更に金属板3同士の間隔が開いてしまし、その状態において鋭利 な円盤状の刃先が接触した場合、金属板3を掘り起こしてしまい、損傷させること があった。
(3)脚絆本体に直接金属板を内装させる構造のため、脛部に装着させた場合、高速回 転する円盤状の刃先に接触した場合、かなりの衝撃となるが、それを十分に吸収で きず、脛部を痛めることがあった。
【0005】
【特許文献1】実開昭59−61220号公報
【特許文献2】特開平2004−162200号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、低価格で、装着性がよく、安全性が高い脚絆に用いられる防護体及び防護体付き脚絆を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、
請求項1の脚絆に用いられる防護体の発明では、
伸縮しやすい布地と、伸縮しにくい布地との結合により形成された複数のポケットを有する金属板保持体と、前記ポケットに挿入され、挿入された状態で、隣り合う金属板同士がその端部において互いに重なり合う状態に配列された複数の金属板と、脚絆側に設けられた緩衝体と、からなる脚絆に用いられる防護体としたことを特徴とする。
請求項2の発明では、
前記金属板ポケットの幅が、金属板が挿入される前は前記金属板の幅よりも小さく形成されている請求項1記載の脚絆に用いられる防護体であることを特徴とする。
請求項3の発明では、
前記金属板は、幅方向において上部が広く、下方にいくにしたがって狭くなる細長い逆台形状に形成されている請求項2記載の脚絆に用いられる防護体であることを特徴とする。
請求項4の発明では
前記請求項1、請求項2又は請求項3のいずれかに記載の脚絆に用いられる防護体を脚絆の外側に取り付け一体化した、防護体付き脚絆であることを特徴とする。
請求項5の発明では
脚絆に用いられる防護体の脚絆への取り付け一体化は、縫い合わせ、面ファスナーあるいはホックのいずれかにより行われた請求項4記載の防護体付き脚絆であることを特徴とする。
請求項6の発明では
脚絆に用いられる防護体の脚絆へ取り付けは、防護体と脚絆との間に、空隙部を設けるように取り付け一体化した請求項4又は請求項5記載の防護体付き脚絆を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安全性の高い、脚絆に用いられる防護体を低価格で提供できる。また、脚絆と防護体とを、組み合わせ一体化することにより、低価格で、装着性がよく、より安全性が高い防護体付き脚絆を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
【0009】
以下、本発明の脚絆30に用いられる防護体10を図1、図2、図3、図6の図面にもとづいて説明する。図1は本発明の脚絆に用いられる防護体10の一部を構成する金属板保持体18を示しており、図2は金属板10を、図3は金属板12を金属板保持体14に挿入保持した状態を示している。図1において、金属板保持体14は伸縮しにくい布地16と伸縮しやすい布地18を結合することにより、複数のポケット14Aを形成した状態を示している。両布地の結合によりポケット14Aを形成するには、両布地を縫い合わせすることにより行うことが望ましいが、接着剤により両布地を接着することにより行ってもよい。
【0010】
尚、伸縮しにくい布地としてはナイロンやアラミド繊維のような、耐久性および耐摩耗性のあるもの望ましいが、これに限られるものではない。伸縮しやすい布地としては、伸びやすく金属板12を保持できる強さをもっていればよい。たとえばニット状のものが望ましい。
金属板12は、強度と価格から材質としては鉄製、特にステンレスが望ましいが、これに限られるものではなく、必要な強度があり、適正な価格の金属板であればよい。金属板12の形状は装着したときに上部に位置する上端W1の幅が下端W2よりも広く、長さLの短冊状の形状をしている。日本人の平均的な体格からすると、W1は25〜35mm、W2は15〜33mm、Lは200〜220mm、厚みは0.4mm〜0.8mmの範囲で特に0.6mmの寸法のものが望ましい。
【0011】
図1の、ポケット14Aの幅寸法Wは、金属板の幅W1、W2よりも、金属板の重なり代分だけ狭く作られている。
このポケット14Aに金属板12を上から挿入すると、伸縮しやすい布地18が幅方向に伸びた状態で金属板12を保持する。そして金属板12を次々と連続して挿入していけば図3に示すように伸びた布地分だけ、隣り合う金属板12同士を重なり合わせることができる。こうすることにより、隣り合う金属板12同士が重なりあった、金属板保持体14が完成する。
金属板12の重なりと配列は刈払機40の回転刃40Aが通常反時計回りの回転であることから、図6に示すように脛に装着した時に、右側方向に順に重なっていくように、後述する脚絆30との取り付ける場合に注意をする。
【0012】
次に、図6に示すように、前記金属板保持体14の伸縮しやすい布地18側に、緩衝体15を取り付ける。緩衝体15は、例えば、スポンジ、不織布、ポリウレタン等の発泡体からなるものを用い、先の伸縮しにくく、耐摩耗性、耐久性のある布地によって包み込まれており、金属板保持体14と縫い合わせ一体化することにより、防護体10が完成する。
【0013】
尚、例えば金属板保持体14を製作する場合、伸縮にくい布地16にあらかじめ、緩衝体15の大きさを想定して、その分大きく製作しておき、緩衝体19を配置した後、布地を縫い合わせすることによって、一体的に製作にしてもよい。
こうした構成にすることにより、金属板12が、隣り合い同士少し重なり合って配列されているため、図6に示すように刈払機40の回転刃40A(通常反時計方向に回転)が接触したとしても、重なりあった金属板10を刃先40Aが押しつける方向の力として働くため、隣り合う金属板12同士の配列を損傷させることがなく、脚絆30及び脛部を防護することが可能となる。
又、緩衝体15を備えているため、回転刃40Aが当たった場合でも、脛部への衝撃を緩和させることができる。
【実施例2】
【0014】
次に、実施例1の防護体10と脚絆との組み合わせ構造である防護体付き脚絆20について、図4、図5、図6を参照して説明する。
図5は脚絆30に防護体10を一体的に取り付けた状態を示している。
脚絆30は、例えば表布、裏布を重ねて縫い合わせたものの表面の一方で、縦方向に複数の掛糸を設け、裏面に前記掛糸に掛止めるコハゼを多数設けており、また、上下に一対の紐を固着して足に結ぶ公知な構成からなっている。
取り付ける方法としては、脚絆も防護体10も、互いに外表面が布地であるため、縫い合わせにした方が確実に取り付け可能であるため望ましいが、これに限られるものではなく、面ファスナーによる取り付け、ホック止めにより取り付けでもよい。後段の面ファスナー、ホックによる取り付けは、取り外しやすいので、脚絆30が汗で汚れた場合、脚絆30のみを洗濯すればよいので便利である。
【0015】
尚、脚絆30に防護体10を取り付ける場合、脚絆30と防護体10とはぴったりと取り付けず、空隙部Kを設けて取り付けることが重要である。これは図4に示すように空隙部Kがあれば、刈払機40の回転刃40Aが防護体10に大きな衝撃力をもって当たったとしても、刃の切り欠く力は防護体10で、衝撃力は、空隙部Kによって吸収し、万が一空隙部Kで吸収できなくとも、最終的には緩衝体15で吸収し、脛部に打撃を与えることがない。
このように、脚絆30と、防護体10を取り付けることにより、安全で、使い勝手のよい防護体付き脚絆20を低価格で提供することができる。
脚絆30は専用に製作してもよいが、一般的に市販されているものが大量生産で低価格で入手できるので市販用脚絆を用いることが望ましい。
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で種々設計しうること勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 は実施例1の脚絆に用いられる防護体の金属板装着体を示す要部斜視図である。
【図2】 実施例1の金属板の形状を示す平面図である。
【図3】 実施例1の金属板装着体に金属板を装着した場合の部分斜視図ある。
【図4】 実施例2の防護体付き脚絆半に刈払機の回転刃が当たった場合の想定斜視図である。
【図5】 実施例2の防護体付き脚絆の全体斜視図である。
【図6】 実施例1の脚絆に用いられる防護体の構成を示す断面図である。
【図7】 従来技術の欠点を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0017】
10 防護体
12 金属板
14 金属板保持体
14A ポケット
15 緩衝体
16 伸縮しにくい布地
18 伸縮しやすい布地
19 結合部
20 防護体付脚絆
30 脚絆
K 空隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮しやすい布地と、伸縮し難い布地との結合により形成された複数のポケットを有する金属板保持体と、前記ポケットに挿入され、挿入された状態で、隣り合う金属板同士がその端部において互いに重なり合う状態に配列された複数の金属板と、脚絆側に設けられた緩衝体と、からなる脚絆に用いられる防護体。
【請求項2】
前記金属板ポケットの幅が、金属板が挿入される前は前記金属板の幅よりも小さく形成されている請求項1記載の脚絆に用いられる防護体。
【請求項3】
前記金属板は、幅方向において上部が広く、下方にいくにしたがって狭くなる細長い逆台形状に形成されている請求項2記載の脚絆に用いられる防護体。
【請求項4】
前記請求項1、請求項2又は請求項3のいずれかに記載の脚絆に用いられる防護体を脚絆の外側に取り付け一体化した、防護体付き脚絆。
【請求項5】
脚絆に用いられる防護体の脚絆への取り付け一体化は、縫い合わせ、面ファスナーあるいはホックのいずれかにより行われた請求項4記載の防護体付き脚絆。
【請求項6】
脚絆に用いられる防護体の脚絆へ取り付けは、防護体と脚絆との間に、空隙部を設けるように取り付け一体化した請求項4又は請求項5記載の防護体付き脚絆。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−38319(P2008−38319A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238237(P2006−238237)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(599099526)株式会社光和 (9)
【Fターム(参考)】