説明

脱毛症の遺伝子治療のための毛髪保存方法および毛髪保存システム

【課題】将来において自己の毛髪を用いて脱毛症の遺伝子治療を行えるようにするため、頭部の複数の部位の、毛根部を含む健全な毛髪を、形態を保持した状態で、利用者別に長期保存することを、専門家によらず簡便かつ低コストで行えるようにする。
【解決手段】本体部に頭部の部位別に毛根部を含む毛髪を形態を保持した状態で投入するガラス化液が充填された毛髪投入溝22を有し、蓋部に封止用凸部26を有し、蓋を閉止したときに毛髪がガラス化液中に形態を保持して一括封止される毛髪保存トレイ20と、毛髪保存トレイを利用者別に収容する収容ラック30と、収容ラックを液体窒素中に閉止する断熱保存容器40を用い、利用者の複数部位の毛根を含む毛髪を採取し、外観態様に基づいて健全な毛髪を選定し、毛髪保存トレイの毛髪投入溝に投入して閉止し、個人識別ラベルを貼付し、収容ラックに収容し、断熱保存容器内の液体窒素に投入して閉止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、脱毛症が発症する前の利用者の毛髪を採取し、将来において利用者に脱毛症が発生したときに、採取された自己の毛髪を用いて脱毛症の遺伝子治療を行うことができるようにするために、採取した利用者の毛髪を長期に亘って保存する毛髪保存方法および毛髪保存システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多くの人が脱毛症に悩み、脱毛や薄毛を改善するさまざまな育毛剤や養毛剤が市販されてきたが、現在までに脱毛症を治療する完全な方法は開発されていない。
近年、遺伝子技術の発達により、自分自身の健全な組織を移植することで病気を治療する再生医療技術が進展してきている。このため、毛髪についても、脱毛症が発症する前の毛髪を保存しておき、将来脱毛症が発症したときに、保存しておいた毛髪から複製を生成し、それを自分自身の頭部に移植することで脱毛症を治療する再生治療が将来において実用化されると考えられている。
また、近年、人間のDNA(ヒトゲノム)の解読が急速に進展し、ヒトゲノムの解読結果に基づいて新たな遺伝子治療技術を開発することが志向されており、ヒトゲノムの解読結果に基づき、脱毛症が発生する前後の遺伝子情報を解析することで、脱毛症が発症する原因となっている遺伝子を特定し、これに基づいて脱毛症を治療する遺伝子治療が将来において実用化されることも考えられる。
【0003】
このような遺伝子技術の発達を背景として、米国サンフランシスコの「Hairogenics」社は、利用者の毛髪を長期保存する毛髪バンクビジネスを開始した。この毛髪バンクビジネスは、採取した利用者の毛髪を防水パッケージで真空包装し、それを温度管理された地下の保冷庫に保存するものであり、初期コストが49ドル、年間保管料が10ドルで毛髪を保存するサービスを提供している(非特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、かかる毛髪バンクは、採取された利用者の毛髪を真空包装して冷凍保存するものであるため、長期に亘って保存した場合に、細胞の劣化が進み、保存された自己の毛髪の複製を生成して脱毛部に移植することや、保存された自己の毛髪各部の遺伝子情報を抽出して遺伝子治療を行うことなどの将来の脱毛治療に利用できない場合が生ずる恐れがある。
【0005】
一般に、人体等から抽出された細胞を、将来において遺伝子情報を利用できるように長期保存する方法としては、培養した細胞をガラス化液等の高濃度の凍結保護液に浸漬させ、液体窒素により凍結保存する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、脱毛症を治療する方法として、自己の毛髪の残存する部分の毛包組織を採取し、これを脱毛部分に移植することで脱毛症を治療する方法が知られており、特許文献2には、採取した毛包組織を培養して凍結保存することで長期に亘って脱毛治療を行えるようにする方法が開示されている。
【0007】
【非特許文献1】NewsNet5.com、“Beat Baldness By Storing Hair Strands”、Posted: 9:49 a.m. EDT April 29, 2002、[平成20年12月1日検索]インターネット<URL: HYPERLINK "http://www.newsnet5.com/health/1423182/detail.html" http://www.newsnet5.com/health/1423182/detail.html >
【特許文献1】特開2008−92801号公報
【特許文献2】特開2002−145701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されているような細胞の凍結保存方法は、組織を断片化し、培養したものを凍結保存するものであって、組織の形態を保持した状態で保存されないので、将来において遺伝子技術によって同一態様の複製を生成したり、組織各部の遺伝子情報を抽出して遺伝子治療を行えるようにしたりする目的には適用できない。
【0009】
また、特許文献2に開示されている毛包の凍結保存方法は、自己の毛包組織を保存して脱毛部に移植するものであって、脱毛治療を行うという目的においては共通するが、保存対象は毛包組織であり、人体から抽出するという外科的処置を行うものであるため、医師等の専門家が行う必要がある。また、毛包組織のみを保存するものであるため、抽出された毛包組織から、それが健全なものか否かを判定することは困難であり、将来において利用できない不健全な毛包組織が保存されてしまう恐れがある。更には、毛髪の性質は頭部の部位によって異なる特性を有するため、抽出部位別に保存することが望ましいが、抽出部位別に凍結保存するためには煩雑な手順を繰り返す必要が生じ、保存に多大なコストを要するなどの問題があった。
【0010】
それゆえに、本願発明の目的は、将来において自己の毛髪を用いて脱毛症の遺伝子治療を行えるようにするため、頭部の複数の部位の、毛根部を含む健全な毛髪を、形態を保持した状態で、利用者別に長期保存することを、専門家によらず簡便かつ低コストで行える毛髪保存方法および毛髪保存システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の毛髪保存方法は、脱毛症が発症する前の利用者の毛髪を利用者別に保存するための開閉可能なチップ状のトレイであって、本体部には、頭部の部位別に、毛根部を含む毛髪を、形態を保持した状態で投入可能な複数の毛髪投入溝を有し、蓋部には、前記複数の毛髪投入溝のそれぞれを封止するために山形に形成された弾力性を有する封止用凸部を有し、前記毛髪投入溝には、毛髪を液体窒素により凍結したときに細胞が破壊されないようにする凍結保護液があらかじめ注入され、前記蓋部を前記本体部に閉止したときに、投入された各部位の毛髪が一括して前記凍結保護液中に形態を保持して封止される毛髪保存トレイと、前記毛髪保存トレイを利用者別に複数収容する収容ラックと、断熱容器内に液体窒素を封入したものであって、前記収容ラックを前記断熱容器内の液体窒素中に投入して閉止することによって、前記収容された利用者別の毛髪保存トレイを長期保存する断熱保存容器とを用いて毛髪を保存する方法であって、利用者の、脱毛症が発症する前の、頭部の複数の部位の、毛根部を含む毛髪を分離して採取する工程と、前記毛髪を採取する工程により採取された複数の部位の毛髪から外形形状を含む外観態様に基づいて健全な毛髪を選定する工程と、前記毛髪を選定する工程により選定された複数の部位の毛髪を前記毛髪保存トレイの所定の毛髪投入溝に分離して投入する工程と、前記毛髪投入溝に投入する工程により毛髪が投入された毛髪保存トレイを閉止する工程と、前記毛髪保存トレイを閉止する工程により閉止された毛髪保存トレイに利用者を識別する個人識別ラベルを貼付する工程と、前記個人識別ラベルを貼付する工程により個人識別ラベルが貼付された毛髪保存トレイを前記収容ラックに収容する工程と、前記収容ラックに収納する工程により毛髪保存トレイが収容された収容ラックを前記断熱保存容器内の液体窒素中に投入して閉止する工程とを含むものである。
【0012】
この発明によれば、本体部には、頭部の部位別に、毛根部を含む毛髪を、形態を保持した状態で投入可能な複数の毛髪投入溝を有し、蓋部には、毛髪投入溝のそれぞれに対応する封止用凸部を有し、毛髪投入溝には凍結保護液があらかじめ注入された毛髪保存トレイを使用して利用者の毛髪を保存するので、採取された毛髪を毛髪保存トレイの対応する毛髪投入溝に投入して蓋を閉止するだけで、投入された各部位の毛髪が一括して凍結保護液中に封止され、利用者の毛髪が封止された毛髪保存トレイを収容トレイに収容して断熱容器内の液体窒素に投入することで、将来において自己の毛髪を用いて脱毛症の治療が行えるように、頭部の複数の部位の、毛根部を含む毛髪を、形態を保持した状態で、利用者別に長期保存することを、専門家によらず簡便かつ低コストで実現することができる。
また、この発明によれば、利用者の毛根部を含む毛髪を保存するので、将来脱毛症の遺伝子治療を行う際に、毛根部に含まれていた有益な成長因子に関する遺伝子情報を利用者の毛髪から取得して治療を行うことが可能となる。
また、この発明によれば、利用者の頭部の複数の部位の毛髪を分離して保存するので、将来脱毛症の遺伝子治療を行う際に、利用者の頭部の部位別の特性の相違点を考慮して、適切な遺伝子治療を行うことが可能となる。
また、この発明によれば、利用者の毛髪を形態を保持して保存するので、将来脱毛症の遺伝子治療を行う際に、健全な毛髪と同一態様の複製を生成して移植したり、組織各部の遺伝子情報を抽出して適切な遺伝子治療を行えるようにしたりすることが可能となる。
また、この発明によれば、採取された毛髪から外形形状を含む外観態様に基づいて健全な毛髪を選定する工程を含むので、将来脱毛症の遺伝子治療を行う際に、不健全な毛髪によって遺伝子治療が行われることを防止できる。本願発明では、毛髪を採取する工程において毛根部を含む毛髪を採取するので、外形形状を含む外観態様に基づいて健全な毛髪を容易に選定することができる。
【0013】
前記複数の部位は、前頭部、後頭部、左側頭部、右側頭部、頭頂部、つむじ部を含むことが好ましい。
前頭部、後頭部、左側頭部、右側頭部、頭頂部、つむじ部は、脱毛症の症状によって異なる特性を示す特徴的部位であるので、これらの部位の毛髪を分離して保存することで、将来脱毛症の遺伝子治療を行う際に、利用者の頭部の部位別の特性の相違点を考慮して、より適切な遺伝子治療を行うことが可能となる。
【0014】
前記毛髪を選定する工程は、前記採取された毛髪を載置する毛髪載置台と、前記毛髪載置台に載置された毛髪を撮像する顕微鏡カメラと、前記顕微鏡カメラにより撮像された毛髪の画像を入力し、前記入力された毛髪の画像の外観態様をあらかじめ登録された健全な毛髪の外観態様と比較して健全な毛髪を選定する画像処理機能を有するコンピュータによって行われることが好ましい。
前記毛髪を選定する工程は、採取された毛髪の外形形状を含む外観態様に基づいて健全な毛髪を選定するものであるので、顕微鏡カメラで撮像された毛髪の画像の外観態様をあらかじめ登録された健全な毛髪の外観態様と比較する画像処理機能を有するコンピュータによって自動的に行うことができ、健全な毛髪をより信頼性よく選定することができる。
【0015】
本願発明の毛髪保存システムは、脱毛症が発症する前の利用者の毛髪を利用者別に保存するための開閉可能なチップ状のトレイであって、本体部には、頭部の部位別に、毛根部を含む毛髪を、形態を保持した状態で投入可能な複数の毛髪投入溝を有し、蓋部には、前記複数の毛髪投入溝のそれぞれを封止するために山形に形成された弾力性を有する封止用凸部を有し、前記毛髪投入溝には、毛髪を液体窒素により凍結したときに細胞が破壊されないようにする凍結保護液があらかじめ注入され、前記蓋部を前記本体部に閉止したときに、投入された各部位の毛髪が一括して前記凍結保護液中に形態を保持して封止される毛髪保存トレイと、前記毛髪保存トレイを利用者別に複数収容する収容ラックと、断熱容器内に液体窒素を封入したものであって、前記収容ラックを前記断熱容器内の液体窒素中に投入して閉止することによって、前記収容された利用者別の毛髪保存トレイを長期保存する断熱保存容器と、採取された利用者の毛髪を載置する毛髪載置台と、前記毛髪載置台に載置された毛髪を撮像する顕微鏡カメラと、前記顕微鏡カメラを前記毛髪載置台に載置されたすべての毛髪について撮像可能なように移動させるカメラ移動機構とを有する毛髪選定テーブルと、利用者の毛髪の保存状況を管理するコンピュータサーバであって、入力された利用者の情報に基づいて前記毛髪保存トレイに貼付する個人識別ラベルを印刷する個人識別ラベル印刷手段と、前記毛髪保存トレイに貼付された個人識別ラベルに印刷されている個人識別情報を読み取って入力する個人識別ラベル読取手段とを備え、前記断熱保存容器内の前記収容ラックに収容されている各利用者の毛髪保存トレイの保存位置を管理する毛髪保存管理機能と、前記毛髪選定テーブルの顕微鏡カメラにより撮像された毛髪の画像を入力し、前記入力された毛髪の画像の外観態様をあらかじめ登録された健全な毛髪の外観態様と比較して健全な毛髪を選定する画像処理機能とを有する毛髪保存管理サーバとを備えたものである。
【0016】
この発明によれば、本体部には、頭部の部位別に、毛根部を含む毛髪を、形態を保持した状態で投入可能な複数の毛髪投入溝を有し、蓋部には、毛髪投入溝のそれぞれに対応する封止用凸部を有し、毛髪投入溝には凍結保護液があらかじめ注入された毛髪保存トレイを使用して利用者の毛髪を保存するので、採取された毛髪を毛髪保存トレイの対応する毛髪投入溝に投入して蓋を閉止するだけで、投入された各部位の毛髪が一括して凍結保護液中に封止され、利用者の毛髪が封止された毛髪保存トレイを収容トレイに収容して断熱容器内の液体窒素に投入することで、将来において自己の毛髪を用いて脱毛症の治療が行えるように、頭部の複数の部位の、毛根部を含む毛髪を、形態を保持した状態で、利用者別に長期保存することを、専門家によらず簡便かつ低コストで実現することができる。
また、この発明によれば、毛髪保存トレイに貼付する個人識別ラベルを印刷する個人識別ラベル印刷手段と、毛髪保存トレイに貼付された個人識別ラベルを読み取る個人識別ラベル読取手段を備え、毛髪保存管理サーバの毛髪保存管理機能により、収容ラックに収容されている各利用者の毛髪保存トレイの保存場所がコンピュータ管理されるので、断熱保存容器に保存されている各利用者の毛髪を、迅速かつ的確に取り出して脱毛症の遺伝子治療に利用することができる。
また、この発明によれば、採取された利用者の毛髪を顕微鏡カメラで撮像する毛髪選定テーブルを備え、毛髪保存管理サーバの画像処理機能により、健全な毛髪を自動選定することができるので、保存すべき利用者の健全な毛髪をより信頼性よく選定できる。
【発明の効果】
【0017】
本願発明によれば、将来において自己の毛髪を用いて脱毛症の遺伝子治療を行えるようにするため、頭部の複数の部位の、毛根部を含む健全な毛髪を、形態を保持した状態で、利用者別に長期保存することを、専門家によらず簡便かつ低コストで行うことができるという効果がある。
【0018】
本願発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に本願発明の一実施形態に係る毛髪保存システムのシステム構成と、これを用いて利用者の毛髪を保存する本願発明の一実施形態に係る毛髪保存方法の処理手順を示す。
本願発明の一実施形態に係る毛髪保存システムは、採取された利用者の毛髪を凍結保存液中に封止するためのチップ状の毛髪保存トレイ20と、毛髪保存トレイを利用者別に収容する収容ラック30と、収容ラックに収容された毛髪保存トレイを液体窒素中に投入して毛髪を凍結保存させる断熱保存容器40と、採取された利用者の毛髪から脱毛症の遺伝子治療に用いることのできる健全な毛髪を選定するための毛髪選定テーブル50と、断熱保存容器40に保存されている各利用者の毛髪保存トレイの保存状況を管理するための毛髪保存管理サーバ60を備える。
【0020】
図2に、本願発明の一実施形態に係る毛髪保存システムを構成するものであって、本願発明の一実施形態に係る毛髪保存方法において使用される毛髪保存トレイ20の概略構造を示す。
毛髪保存トレイ20は、採取された利用者の毛髪を、形態を保持して液体窒素中で凍結保存するための開閉可能なチップ状の密閉容器であって、本体部と蓋部を有する。
図2において、(1)は毛髪保存トレイの蓋部を開放したときの平面図であり、(2)は本体部のAA断面を示す断面図であり、(3)は蓋部のBB断面を示す断面図である。
【0021】
毛髪保存トレイ20の本体部には、利用者の頭部の複数の部位の毛髪を投入するための複数の毛髪投入溝22を有し、各毛髪投入溝には、毛髪を液体窒素により凍結させたときに細胞が破壊されないようにするための凍結保護液としてガラス化液23があらかじめ充填されている。
【0022】
本実施形態では、利用者の毛髪を保存する部位として、毛髪の特性が異なる前頭部・後頭部・左側頭部・右側頭部・頭頂部・つむじ部の6箇所を選定し、毛髪保存トレイの本体部には各保存部位に対応する毛髪投入溝22が設けられ、各毛髪投入溝には毛髪の保存部位を記述した保存部位表示24が付されている。
【0023】
一方、毛髪保存トレイ20の蓋部には、本体部の各毛髪投入溝22を封止するために山形に形成された弾力性を有する封止用凸部26と、蓋部を本体部に固定するための蓋閉め具27を有する。
これにより、採取された利用者の各部位の毛髪を本体部の対応する毛髪投入溝22に投入し、蓋部を本体部に閉止して蓋閉め具27により固定したときに、投入された利用者の各部位の毛髪が、形態を保持した状態で、保存部位別に、一括して毛髪投入溝22内のガラス化液中に自動的に封止される。
【0024】
また、毛髪保存トレイ20の前面には、利用者の毛髪を封入した後に、当該毛髪保存トレイの利用者を識別するためのバーコードを含む個人識別ラベル28が貼付される。
尚、本願発明において、個人識別ラベルを貼付することには、毛髪保存トレイ20の前面にラベルポケットを備え、これに個人識別ラベルを投入して表示することも含む。
【0025】
図3に本願発明の一実施形態に係る収容ラック30の概略構造を示す。収容ラック30は、毛髪保存トレイ20を利用者別に収容するための多段式収容棚であり、上部には断熱保存容器40から取り出して持ち運ぶための取手32を有する。
【0026】
断熱保存容器40は、断熱材により形成された本体容器と、本体容器を閉止するための断熱閉止蓋46とを備える。本体容器の内部には、収容ラック30をセットして上下させる収容ラック上下機構42を備え、液体窒素44が所定の液位まで充填されている。
これにより、収容ラック上下機構42によって収容ラック30を最下点まで下降させることで、収容ラック30に収容されているすべての毛髪保存トレイが液体窒素中に浸漬され、容器閉め具48により断熱閉止蓋46を本体容器に固定することで、毛髪保存トレイ20が断熱保存容器40内で凍結保存される。
【0027】
断熱保存容器40内の液体窒素44は、蒸発により消費されるので、所定の液位を保つように定期的に補充する必要がる。また、断熱保存容器40は、閉止した状態における液体窒素の蒸発により内部圧力が上昇するため、内部圧力を一定以下に保持するための圧力保持機構を有するが、周知技術であるので詳細説明は省略する。
【0028】
収容ラック上下機構42は、セットされた収容ラック30を一段ずつ上下させ、新たに保存する利用者の毛髪保存トレイ20を収容ラック30に収容したり、既に保存されている利用者の毛髪保存トレイ20を収容ラック30から取り出したりできるようにするためのものであるが、単に各収容ラックを各段位に停止させるラチェット機構を備えた手動式上下機構でもよく、毛髪保存管理サーバ60からの指令により収容ラックを指定された段位に制御する制御手段を備えた電動式上下機構でもよい。
【0029】
毛髪選定テーブル50は、利用者から採取した毛髪を載置する毛髪載置台52と、毛髪載置台52に載置された毛髪を撮像する顕微鏡カメラ54と、毛髪載置台52に載置されたすべての毛髪を撮像できるように顕微鏡カメラ54を移動させるカメラ移動機構56を備える。
【0030】
毛髪保存管理サーバ60は、利用者の毛髪の保存状況を管理する毛髪保存管理プログラムがインストールされたコンピュータサーバであり、毛髪保存サービスを受ける利用者の個人情報と各利用者の毛髪保存トレイの保存場所が登録される利用者情報データベースを備える。
毛髪保存管理サーバ60には、新規に保存する毛髪保存トレイに貼付する個人識別ラベルを印刷するためにラベルプリンタ62と、既存の毛髪保存トレイに貼付されている個人識別ラベルを読み取るためのバーコードリーダ64とが接続されており、毛髪保存トレイに貼付する個人識別ラベルによって、各利用者の毛髪保存トレイの出し入れが厳格に管理される。
【0031】
また、毛髪保存管理サーバ60は、毛髪選定テーブル50と接続する入出力インターフェースを備えており、カメラ移動機構56を駆動し、顕微鏡カメラ54を移動させて毛髪載置台に載置されている各毛髪の画像を入力し、入力された毛髪画像の外観態様に基づいて健全な毛髪を選定する画像処理を行う画像処理プログラムがインストールされている。
【0032】
次に、図1に基づいて、上記毛髪保存システムにより利用者の毛髪を保存する毛髪保存方法の処理手順について説明する。
最初に、毛髪保存管理サーバ60の毛髪保存管理プログラムを起動し、表示されたメニュー画面から「利用者登録」を選択し、利用者の名前・連絡先等を入力することにより、利用者情報データベースに利用者の情報を登録する。
【0033】
次に、毛髪採取具10により、脱毛症が発症する前の利用者の毛髪を採取する。
採取する部位は、頭部の特徴的な性質を有すると考えられる前頭部、後頭部、左側頭部、右側頭部、頭頂部、つむじ部の6箇所とし、毛髪の成長因子の遺伝子情報を有していると考えられる毛根部を含む毛髪を採取する。
【0034】
毛髪は、大きく分けて皮膚の表面に出ている毛幹部と、皮膚の内部に埋もれている毛根部とに分けられ、毛根部の先端の球状に膨らんでいる部分は毛球と呼ばれる。
図4に示すように、毛髪の成長期には、毛根部の先端の毛球の内側に真皮が入り込んで堅く固着されており、毛球内側の毛母細胞が皮下組織の毛細血管に繋がっている毛乳頭から栄養分を吸収して毛髪を成長させる。成長期が終わると、毛乳頭から毛母細胞が剥離する退行期に入る。そして、毛根を覆っていた毛根鞘が消滅して毛髪の固着力が低下する休止期に入り、やがて自然脱毛する。脱毛後も、毛乳頭が健全であれば新しい新生毛が生成され、以上のヘアサイクルが繰り返される。
上述のように、成長期は毛髪が堅く固着されており、無理に引っ張ると毛幹部の途中で切れたり、皮下組織が剥がれたりする恐れがあるので、利用者の毛髪の採取は、軽く抜くことができる退行期から休止期の毛髪について行うことが好ましい。
【0035】
次に、上記採取された毛髪を毛髪選択テーブル50の毛髪載置台52に並べ、毛髪保存管理サーバ60のメニュー画面から「毛髪の選定」を選択することにより、顕微鏡カメラ54により撮像された毛髪の画像から健全な毛髪を選定するための画像処理プログラムを起動する。
画像処理プラグラムは、カメラ移動機構56により顕微鏡カメラ54を移動させ、毛髪載置台52に載置されている各毛髪について顕微鏡カメラ54により撮像された毛髪画像を入力し、入力された毛髪画像の外観態様をあらかじめ登録されている健全な毛根の外観態様条件と比較することによって各毛髪が健全な毛髪であるか否かを自動判定するものであり、毛髪載置台52に載置された各毛髪の判定結果が画面に表示される。
【0036】
図5に、健全な毛髪の外観態様と不健全な毛髪の外観態様の例を示す。
図5の(1)は健全な毛髪の外観態様の例であり、毛幹部について、所定範囲の長さと、所定範囲の太さと、毛髪の色素に対応する所定範囲の色彩とを有し、毛根部について、滑らかな楕円状の外形形状と、所定範囲の最大外形幅と、所定範囲の外形寸法と、毛根部の色素に対応する所定範囲の色彩とを有する。
一方、図5の(2)は不健全な毛髪の外観態様の例であり、Aは無理やり引き抜いた毛髪の例、B・C・D・Eは薄毛・脱毛症の毛髪の例、Fは円形脱毛症の毛髪の例、G・Hはその他の不健全な毛髪の例である。それぞれ、Aは毛根部の形状がいびつで毛根の周りに半透明のゼラチン状の組織が付着しており、Bは毛根部の膨らみがほとんどなく、Cは毛根部が変形しており、Dは毛根部の先に尻尾のようなものが生えており、Eは毛根部に皮脂が付着しており、Fは毛根部が針のように尖っており、Gは毛幹部の根元が白髪になっており、Hは毛幹部から毛根部がちぎれて裂けている。
【0037】
毛髪保存管理サーバ60の画像処理プログラムには、健全な毛髪を選定するための外観態様条件として、上述の健全な毛髪の毛幹部の長さ条件、毛幹部の太さ条件、毛幹部の色彩条件、毛根部の外形形状条件、毛根部の最大外形幅条件、毛根部の色彩条件があらかじめ登録されている。
毛髪保存管理サーバ60の画像処理プラグラムは、入力された各部位の毛髪の画像から、毛幹部の長さ、毛幹部の太さ、毛幹部の色彩、毛根部の外形形状、毛根部の最大外形幅、毛根部の色彩に関する外観態様情報を抽出し、これらをあらかじめ登録されている上記外観態様条件と比較し、すべての条件を満たしていると判定された毛髪については「良好」と表示し、いずれかの条件を満たしていないと判定された毛髪については、満たしていないと判定された条件項目を提示するとともに、当該部位の毛髪を再度採取するよう促す画面表示を行う。
尚、最終的に健全な毛髪として選定された各部位の毛髪画像は、利用者情報データベースの当該利用者の毛髪画像データとして登録されるようにしてもよい。
【0038】
次に、上記選定された各部位の健全な毛髪を毛髪保存トレイ20の対応する毛髪投入溝22の中のガラス化液23に投入する。
【0039】
選定されたすべての毛髪の投入が完了したら、毛髪保存トレイ20の蓋部を閉止し、蓋閉め具27により蓋部を本体部に固着する。これにより、採取された利用者の各部位の健全な毛髪が形態を維持した状態で一括して毛髪保存トレイのガラス化液中に封止される。
【0040】
次に、毛髪保存管理サーバ60のメニュー画面から「個人識別ラベルの印刷」を選択し、当該利用者の名前・連絡先・保存年月日・個人識別番号のバーコード表示を含む個人識別ラベル28をラベルプリンタ62により印刷させ、印刷された個人識別ラベルを当該毛髪保存トレイ20の前面に貼付する。
【0041】
次に、毛髪保存管理サーバ60のメニュー画面から「毛髪保存トレイの保存場所指定」を選択し、利用者情報データベースから利用者の毛髪保存トレイの保存場所情報に基づいて断熱保存容器内の各収容ラックの使用中の保存場所を表示させる。そして、ポインティングデバイス(マウス)により、空いている収容ラックの空いている収容位置を当該利用者の保存場所として指定する。
毛髪保存トレイの保存場所の指定が完了したら、断熱保存容器の断熱閉止蓋46を開け、指定された収容ラックを指定された収容位置まで引き上げ、当該利用者の毛髪保存トレイを当該収容ラックの当該収容位置に収容する。
【0042】
毛髪保存トレイの収容ラックへの収容が完了したら、当該収容ラックを最下段まで押し下げ、断熱保存容器40の断熱閉止蓋46を閉止し、容器閉め具48で断熱閉止蓋46を本体に固着することで当該利用者の毛髪保存トレイの断熱保存容器への保存を完了し、利用者の毛髪の凍結保存が開始される。
毛髪保存トレイの断熱保存容器への保存が完了したら、毛髪保存管理サーバ60のメニュー画面から「毛髪保存トレイの保存完了」を選択することで、利用者情報データベースに当該利用者の毛髪保存トレイの保存場所と保存開始年月日が登録される。
【0043】
一方、保存されている利用者の毛髪保存トレイを遺伝子治療等のために使用するときは、毛髪保存管理サーバ60の毛髪保存管理プログラムを起動し、表示されたメニュー画面から「毛髪保存トレイの取出」を選択し、利用者の名前や保存年月日等を入力することにより、当該利用者の毛髪保存トレイの断熱保存容器内の保存場所を画面表示させる。
そして、断熱保存容器の断熱閉止蓋46を開け、画面表示された収容トレイを表示された収容位置まで引き出して毛髪保存トレイを取り出し、バーコードリーダ64により当該取り出した毛髪保存トレイの前面に貼付された個人識別コードを読み取り、当該指定された利用者の毛髪保存トレイであることが確認されたら、「取出完了」を選択することにより、利用者情報データベースの当該利用者の保存位置情報が削除され、毛髪保存トレイを取り出した日付が取出年月日情報として登録される。
【0044】
上記実施形態では、毛髪保存トレイを単一の断熱保存容器に保存するものとして説明したが、必要に応じて複数の断熱保存容器に分割して保存するようにしてもよいことは言うまでもない。
また、ここで説明した断熱保存容器は利用者の毛髪を採取する場所における仮保存容器とし、毛髪保存トレイをまとめて凍結保存することのできる保管庫を別に備え、仮保存容器に保存された毛髪保存トレイを適宜移送するようにしてもよい。
【0045】
上記実施形態において例示した断熱保存容器40は、毛髪保存トレイ20を液体窒素中に浸漬させて毛髪を凍結保存する概念を示したものであり、毛髪保存トレイ20の出し入れに伴う液体窒素の蒸発を最小限にするための手段についての説明は省略しているが、例えば、毛髪保存トレイの出し入れを行う収容ラックの部分のみを開閉する開閉機構を備えるようにしてもよく、単一の毛髪保存トレイの出し入れを行う開閉口と、断熱保存容器内の収容ラックの指定位置と当該開閉口との間で毛髪保存トレイを移送する移送機構を備えるようにしてもよい。
【0046】
上記実施形態では、健全な毛髪を選定する画像処理は、毛髪画像から抽出された外観態様情報をあらかじめ登録された健全な毛髪の外観態様条件と比較することにより行うものとして説明したが、あらかじめ登録する健全な毛髪の外観態様条件として、健全な毛髪の代表的な画像を判定用画像として登録しておき、顕微鏡カメラにより撮像された毛髪画像と判定用画像との画像マッチングを行って健全な毛髪であるか否かを判定させるようにしてもよい。
また、健全な毛髪の画像とともに代表的な不健全な毛髪の画像を判定用画像として登録しておき、健全な毛髪の判定用画像との画像マッチングにより健全でないと判定された場合に、不健全な毛髪の判定用画像との画像マッチングを行って、不健全な毛髪の種別を判定させて画面表示するようにしてもよい。
【0047】
上記実施形態では、採取された頭部の各部位の毛髪を毛髪載置台に載置し、画像処理によって健全な毛髪でないと判定された毛髪について、当該部位の毛髪を再度採取するように促すものとして説明したが、頭部の各部位別に複数の毛髪を採取して毛髪載置台に載置し、各毛髪についての判定結果を画面表示し、健全と判定された毛髪を保存用として使用させるようにしてもよい。
【0048】
上記実施形態では、毛髪の選定を毛髪保存管理サーバの画像処理機能により自動的に行うものとして説明したが、顕微鏡カメラの映像を画面表示させるようにし、画面表示された毛髪の外観形態を人が見て健全な毛髪を選定するようにしてもよい。
【0049】
上記実施形態では、1つの毛髪保存管理サーバにより、毛髪保存管理機能と毛髪画像判定機能の両方を実行させるものとして説明したが、それぞれを専用のサーバにより実行させるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0050】
上記実施形態では、個人識別ラベルには、利用者を識別するためのバーコードを含み、これを毛髪保存管理サーバに接続されているバーコードリーダにより読み取るものとして説明したが、バーコードリーダに代えてOCRを用い、個人識別ラベルに印刷されている文字情報を直接読み取るようにしてもよいことは言うまでもない。
【0051】
上記実施形態では、毛髪を保存する頭部の部位は、特徴的な性質を有すると考えられる前頭部・後頭部・左側頭部・右側頭部・頭頂部・つむじ部の6箇所としたが、これらの部位のうちの一部を省略するようにしてもよく、例えば左右の生え際部などのその他の部位を含めるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上述べたように、本願発明によれば、将来において自己の毛髪を用いて脱毛症の遺伝子治療を行えるようにするため、頭部の複数の部位の、毛根部を含む健全な毛髪を、形態を保持した状態で、利用者別に長期保存することを、専門家によらず簡便かつ低コストで行うことのできる毛髪保存方法および毛髪保存システムが提供される。
尚、本願発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本願発明の効果を奏する限り、実施形態で述べた構成要素を適宜入れ替えたり、新たな構成要素を追加したり、一部の構成要素を削除したりしてもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本願発明の一実施形態に係る毛髪保存システムのシステム構成と、これを用いて利用者の毛髪を保存する本願発明の一実施形態に係る毛髪保存方法の処理手順を示す概念構成図である。
【図2】本願発明の一実施形態に係る毛髪保存トレイの図解図である。
【図3】本願発明の一実施形態に係る収容ラックの図解図である。
【図4】毛髪の成長サイクルを説明する説明図である。
【図5】健全な毛髪を選定するための毛髪の外観態様の例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
10 毛髪採取具
20 毛髪保存トレイ
22 毛髪投入溝
23 ガラス化液
24 保存部位表示
26 封入用凸部
28 個人識別ラベル
30 収容ラック
40 断熱保存容器
42 収容ラック上下機構
44 液体窒素
50 毛髪選定テーブル
52 毛髪載置台
54 顕微鏡カメラ
56 カメラ移動機構
60 毛髪保存管理サーバ
62 ラベルプリンタ
64 バーコードリーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱毛症が発症する前の利用者の毛髪を利用者別に保存するための開閉可能なチップ状のトレイであって、本体部には、頭部の部位別に、毛根部を含む毛髪を、形態を保持した状態で投入可能な複数の毛髪投入溝を有し、蓋部には、前記複数の毛髪投入溝のそれぞれを封止するために山形に形成された弾力性を有する封止用凸部を有し、前記毛髪投入溝には、毛髪を液体窒素により凍結させたときに細胞が破壊されないようにする凍結保護液があらかじめ注入され、前記蓋部を前記本体部に閉止したときに、投入された各部位の毛髪が一括して前記凍結保護液中に形態を保持して封止される、毛髪保存トレイと、
前記毛髪保存トレイを利用者別に複数収容する、収容ラックと、
断熱容器内に液体窒素を封入したものであって、前記収容ラックを前記断熱容器内の液体窒素中に投入して閉止することによって、前記収容された利用者別の毛髪保存トレイを長期保存する、断熱保存容器と、
を用いて毛髪を保存する方法であって、
利用者の、脱毛症が発症する前の、頭部の複数の部位の、毛根部を含む毛髪を分離して採取する工程と、
前記毛髪を採取する工程により採取された複数の部位の毛髪から外形形状を含む外観態様に基づいて健全な毛髪を選定する工程と、
前記毛髪を選定する工程により選定された複数の部位の毛髪を前記毛髪保存トレイの所定の毛髪投入溝に分離して投入する工程と、
前記毛髪投入溝に投入する工程により毛髪が投入された毛髪保存トレイを閉止する工程と、
前記毛髪保存トレイを閉止する工程により閉止された毛髪保存トレイに利用者を識別する個人識別ラベルを貼付する工程と、
前記個人識別ラベルを貼付する工程により個人識別ラベルが貼付された毛髪保存トレイを前記収容ラックに収容する工程と、
前記収容ラックに収納する工程により毛髪保存トレイが収容された収容ラックを前記断熱保存容器内の液体窒素中に投入して閉止する工程と、
を含む、毛髪保存方法。
【請求項2】
前記複数の部位は、前頭部、後頭部、左側頭部、右側頭部、頭頂部、つむじ部を含むことを特徴とする、請求項1に記載の毛髪保存方法。
【請求項3】
前記毛髪を選定する工程は、前記採取された毛髪を載置する毛髪載置台と、前記毛髪載置台に載置された毛髪を撮像する顕微鏡カメラと、前記顕微鏡カメラにより撮像された毛髪の画像を入力し、前記入力された毛髪の画像の外観態様をあらかじめ登録された健全な毛髪の外観態様と比較して健全な毛髪を選定する画像処理機能を有するコンピュータによって行われることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の毛髪保存方法。
【請求項4】
脱毛症が発症する前の利用者の毛髪を利用者別に保存するための開閉可能なチップ状のトレイであって、本体部には、頭部の部位別に、毛根部を含む毛髪を、形態を保持した状態で投入可能な複数の毛髪投入溝を有し、蓋部には、前記複数の毛髪投入溝のそれぞれを封止するために山形に形成された弾力性を有する封止用凸部を有し、前記毛髪投入溝には、毛髪を液体窒素により凍結させたときに細胞が破壊されないようにする凍結保護液があらかじめ注入され、前記蓋部を前記本体部に閉止したときに、投入された各部位の毛髪が一括して前記凍結保護液中に形態を保持して封止される、毛髪保存トレイと、
前記毛髪保存トレイを利用者別に複数収容する、収容ラックと、
断熱容器内に液体窒素を封入したものであって、前記収容ラックを前記断熱容器内の液体窒素中に投入して閉止することによって、前記収容された利用者別の毛髪保存トレイを長期保存する、断熱保存容器と、
採取された利用者の毛髪を載置する毛髪載置台と、前記毛髪載置台に載置された毛髪を撮像する顕微鏡カメラと、前記顕微鏡カメラを前記毛髪載置台に載置されたすべての毛髪について撮像可能なように移動させるカメラ移動機構とを有する、毛髪選定テーブルと、
利用者の毛髪の保存状況を管理するコンピュータサーバであって、入力された利用者の情報に基づいて前記毛髪保存トレイに貼付する個人識別ラベルを印刷する印刷手段と、前記毛髪保存トレイに貼付された個人識別ラベルに印刷されている個人識別情報を読み取って入力する個人識別ラベル読取手段とを備え、前記断熱保存容器内の前記収容ラックに収容されている各利用者の毛髪保存トレイの保存位置を管理する毛髪保存管理機能と、前記毛髪選定テーブルの顕微鏡カメラにより撮像された毛髪の画像を入力し、前記入力された毛髪の画像の外観態様をあらかじめ登録された健全な毛髪の外観態様と比較して健全な毛髪を選定する画像処理機能とを有する、毛髪保存管理サーバと、
を備えた、毛髪保存システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−143847(P2010−143847A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321797(P2008−321797)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(508372858)
【Fターム(参考)】