説明

脱気装置

【課題】液漏れが発生した際に、素早く脱気装置への液体の供給及び排出を停止させ、脱気度の低下した液体が供給されることを防止できる脱気装置を提供すること。
【解決手段】気体透過性チューブ102を介して液体排出口105へと流される液体を脱気する脱気装置100であって、真空引き口103は、真空引きにより気体透過性チューブ102から漏れ出した漏れ液1が溜まる位置に設けられており、漏れ出した漏れ液1は、溜まることなく真空引き口103から吸引されることを特徴としている。これにより、脱気装置100では、真空引き口103が、減圧チャンバー101内の漏れ液1が溜まる位置に設けられているので、減圧チャンバー101内で液漏れが発生した場合、漏れ液1は、自動的に真空引き口103へと集まることになる。そのため、漏れ出した漏れ液1を直に真空引き口103から吸引することができ、液漏れを素早く検知することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の脱気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体中の溶存ガスを脱気する脱気装置のひとつに、減圧チャンバー内に気体透過性チューブを収容し、減圧チャンバーの出口に、先端部に複数の吸引孔が設けられている真空引き用管を取り付けたものがある。この脱気装置は、真空引き用管の先端部が、気体透過性チューブの最下面よりも下方に位置するようになっており、減圧チャンバー内で液漏れが生じた場合、真空引き用管の先端から漏れた液体を吸い込むことが可能となっている。そして、真空引き用管に吸い込まれた液体は、素早く出口へと到達して真空ポンプ側に吸引されるので、減圧チャンバー内に漏れた液体が満ちて気体透過性チューブが漏れた液体に浸漬されるのを防止でき、さらに、液漏れが生じたとしても減圧チャンバー内の減圧度を保持し、十分な脱気効率での脱気を保障することが可能となっている。(特許文献1)
【特許文献1】特開2000−140506号公報(特許第3574576号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した脱気装置は、気体透過性チューブから漏れた液体を、真空引き用管によって真空引き口まで誘導しており、減圧チャンバー内に漏れた液体が満たされなくても真空引き口を介して真空ポンプへと漏れた液体を到達させることが可能となっている。これにより、この脱気装置は、気体透過性チューブが漏れた液体に浸漬される前に、減圧チャンバー内での液漏れを感知することができ、脱気を停止することが可能となっている。そして、液漏れが生じた場合でも、減圧チャンバー内の減圧度が保持された状態で脱気を停止することが可能となるので、液漏れが発生してから脱気を停止するまでの間も、十分な脱気効率で脱気された液体を供給することが可能となっている。
【0004】
しかしながら、この脱気装置は、真空引き用管の先端が漏れた液体によって閉ざされた状態にならなければ、真空引き口へと漏れた液体を誘導することができない。そのため、液漏れが発生した後でも、漏れた液体が減圧チャンバー内に溜まって真空引き用管の先端部が閉ざされるまで液体の供給をしばらく行うことになる。従って、流体排出口から排出される液体の量が、液漏れが発生していない場合と比べると液漏れの分低下することになる。
【0005】
さらに、この脱気装置では、減圧チャンバー内の減圧度を保持して十分な脱気効率での脱気を保障するとされているが、液漏れが発生した場合は減圧度が必ず低下するため、脱気度の低下した液体を排出してしまうことになる。以上のように、この脱気装置は、後工程に脱気度の低下した液体を供給してしまうことになり、また、後工程に供給される液体の供給量も変化するため、後工程での不良の発生等に繋がる可能性がある。この問題は、特に、高精度で脱気された液体を必要とする装置、例えば、半導体ウエハへのフォトレジスト等の塗布装置や現像装置、液晶製造装置等に用いた場合に顕著な問題となる虞がある。
【0006】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、液漏れが発生した際に、素早く脱気装置への液体の供給及び排出を停止させ、脱気度の低下した液体が供給されることを防止できる脱気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的達成のため、本発明の脱気装置では、液体流入口、液体排出口、及び真空引き口が設けられている減圧チャンバーと、一端が前記液体流入口に接続され、他端が前記液体排出口に接続されて前記減圧チャンバー内に収納される気体透過性チューブとを備え、前記真空引き口から前記減圧チャンバー内を真空引きすることにより、前記減圧チャンバー内を減圧し、前記液体流入口から前記気体透過性チューブを介して前記液体排出口へと流される液体を脱気する脱気装置であって、前記真空引き口は、真空引きにより前記気体透過性チューブから漏れ出した液体が溜まる位置に設けられており、前記漏れ出した液体は、前記位置に溜まることなく前記真空引き口から吸引されることを特徴としている。
【0008】
これにより、本発明の脱気装置では、真空引き口が、減圧チャンバー内の漏れ出した液体が溜まる位置に設けられているので、減圧チャンバー内で液漏れが発生した場合、漏れ出した液体は、自動的に真空引き口へと集まることになる。そのため、漏れ出した液体を直に真空引き口から吸引することができ、液漏れを素早く検知することが可能となる。
【0009】
また、本発明の脱気装置では、前記真空引き口は、前記減圧チャンバーの底面に設けられていることを特徴としている。これにより、本発明の脱気装置では、真空引き口まで漏れ出した液体を集めるのに、重力を利用することが可能となる。
【0010】
また、本発明の脱気装置では、前記真空引き口は、前記底面の略中央に設けられていることを特徴としている。これにより、この脱気装置では、減圧チャンバー内の端部で液漏れが発生した場合でも、漏れ出した液体が真空引き口まで到達する時間を一定の範囲内に収めることが可能となり、液漏れの検出時間を一定にすることが可能となる。
【0011】
また、本発明の脱気装置では、前記真空引き口は、前記減圧チャンバーの側面下部に設けられていることを特徴としている。これにより、本発明の脱気装置では、脱気装置を据え付ける場所の下方にスペースがとれない場合でも使用することが可能となる。
【0012】
また、本発明の脱気装置では、前記減圧チャンバーには、前記真空引き口まで液体を誘導する傾斜面が設けられていることを特徴としている。また、本発明の脱気装置では、前記減圧チャンバーの底面は擂鉢形状をしており、前記真空引き口が当該擂鉢の底部となる位置に設けられていることを特徴としている。これにより、この脱気装置では、漏れ出した液体を真空引き口まで誘導することが可能となるので、液漏れの検出時間をさらに短縮することも可能となる。また、粘弾性の高い液体を脱気する場合でも、素早く液漏れを検知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の成立に必須であるとは限らない。
【0014】
まず、第1の実施形態の脱気装置100について図1、2、3を用いて説明する。図1は、第1の実施形態における脱気装置100と、この脱気装置100に接続される周辺装置との関係を示す図であり、図2は、上記脱気装置100の概略断面図であり、図3は、上記脱気装置100の機能を説明する概略図である。
【0015】
図1に示すように、脱気装置100は、液体供給源10が液体流入管11を介して接続され、液体利用装置20が液体排出管21を介して接続され、真空ポンプ30が真空引き管31を介して接続されている。また、真空引き管31にはトラップ40が接続されており、このトラップ40に液体検知手段50が接続されている。
【0016】
液体供給源10は、液体利用装置20に液体を供給する装置であり、例えば、半導体ウエハ用のフォトレジスト、溶剤、現像液等の液体を貯蔵する液体タンクとこれらの液体を供給する供給ポンプを備えた装置である。
【0017】
液体利用装置20は、液体供給源10から供給された液体を利用して作業を行う装置であり、例えば、半導体ウエハ用のフォトレジスト、溶剤、現像液等の液体を噴射するノズルを備えた塗布装置等である。
【0018】
真空ポンプ30は、脱気装置100の内部から空気を吸引するための装置であり、回転子による回転式、ピストンによる往復式、及び補助ポンプを設け、その中で水銀または油を熱して蒸発させて噴流を作り、これによってポンプを作用させる拡散ポンプ等の種類がある。
【0019】
トラップ40は、真空ポンプ30へと液体が流れ込むことを防止して、真空ポンプ30の破損を防止するための部材である。
【0020】
液体検知手段50は、トラップ40内に液体が流入したことを検知するための検知手段であり、例えば、光学式、機械式、電気式の各センサがある。また、ピトー管等を用いて使用者が目視することによって検知する検知手段もある。
【0021】
脱気装置100は、液体利用装置20に供給される液体に溶存ガスが溶け込んでいるのが好ましくない場合に使用される装置であり、液体供給源10から流入された液体を真空ポンプ30の吸引力を利用して脱気し、脱気した液体を液体利用装置20へと排出するための装置である。
【0022】
このような構成において、脱気装置100は、溶存ガスを取り除くので、液体利用装置20は、好ましい状態の液体を利用して作業を行うことが可能となる。ただし、この脱気装置100は、脱気を行っている最中に内部で故障や不具合が発生し、液漏れを生じる場合がある。その場合、漏れ出した液体は、真空ポンプ30の吸引力によって吸引されてトラップ40へと流入し、液体検知手段50によって検知される。
【0023】
これにより、液体検知手段50からの検知信号により警告灯や警告音を作動させるように構成することによって、使用者は、真空ポンプ30を停止させることができる。また、管理システムは、液体検知手段50からの検知信号により真空ポンプ30を停止させる制御が行われるようにシステムを構成することによって、真空ポンプ30を停止させることができる。次に、本実施形態の脱気装置100の構成について図2を用いて説明する。
【0024】
図2に示すように、脱気装置100は、減圧チャンバー101、気体透過性チューブ102を備えている。そして、気体透過性チューブ102は、減圧チャンバー101内部にコイル形状に巻かれた状態で収納されている。また、減圧チャンバー101は、本実施形態の特徴的な部分である真空引き口103、液体流入口104、液体排出口105を有しており、さらに、気体透過性チューブ102を液体流入口104、液体排出口105に接続するための袋ナット106、Oリング107が取り付けられている。
【0025】
減圧チャンバー101は、形状が楕円形の円筒形状をしており、チャンバー本体101aと、チャンバー蓋101bとによって略構成され、チャンバー本体101aにチャンバー蓋101bを填め込むように形成されている。チャンバー本体101aのチャンバー底面101aaの略中央には、本実施形態の特徴的な部分である真空引き管31が接続される真空引き口103が設けられており、チャンバー蓋101bには、液体流入管11が接続される液体流入口104と、液体排出管21が接続される液体排出口105が設けられている。
【0026】
気体透過性チューブ102は、単位容積当たりの膜面積を広くするために多数本の中空糸体を集合した、樹脂材料で作成されたチューブの集合体であり、当該集合体の両端部に当たるチューブ端部102aでは、多数本の中空糸体を熱溶着によって溶着している。そして、気体透過性チューブ102は、両端部では溶着されて位置が変更されない態様となっており、その他の部分では自由に移動することが可能な態様となっている。
【0027】
本実施形態の特徴的な部分である真空引き口103は、チャンバー本体101aの下部から下方に向けて飛び出している円筒形の引き口であり、真空引き口103の穴は、円柱形状となっている。また、真空引き口103は、減圧チャンバー101内部では、チャンバー底面101aaと真空引き口103の穴とで段差ができないように形成されており、液体が真空引き口103の周囲で溜まらないようになっている。そして、真空引き口103には、真空引き管31が接続され、この真空引き管31を介して真空ポンプ30が接続されており、真空ポンプ30の吸引力によって真空引き口103から減圧チャンバー101内の空気が吸引されて、減圧チャンバー101は減圧されるようになっている。
【0028】
液体流入口104は、チャンバー蓋101bから上方に向けて飛び出している円筒形の流入口であり、液体流入口104には、液体流入管11が接続され、この液体流入管11を介して液体供給源10が接続されている。そして、液体流入口104は、減圧チャンバー101の内側に流入口オネジ部104aを備えており、袋ナット106のナットメネジ部106aと締結するようになっている。また、液体流入口104の穴は、液体供給源10側の径が大きく減圧チャンバー101側の径が小さい中間部に絞りのある円柱形状となっており、この液体流入口104を通過した液体の流速を向上させることが可能となっている。
【0029】
液体排出口105は、チャンバー蓋101bから上方に向けて飛び出している円筒形の排出口であり、液体排出口105には、液体排出管21が接続され、この液体排出管21を介して液体利用装置20へと接続されている。そして、液体排出口105は、減圧チャンバー101の内側に排出口オネジ部105aを備えており、袋ナット106のナットメネジ部106aと締結するようになっている。また、液体排出口105の穴は、液体利用装置20側の径が小さく減圧チャンバー101側の径が大きい中間部に絞りのある円柱形状となっており、この液体排出口105を通過した液体の流速を低下させることが可能となっている。
【0030】
袋ナット106は、流入口オネジ部104a、排出口オネジ部105aに取り付けられる袋ナットであり、内側にナットメネジ部106aが形成され、内部に液漏れを防止するためのOリング107を収納するようになっている。
【0031】
この脱気装置100は、以下の手順で組み立てられる。まず、気体透過性チューブ102のチューブ端部102aに、Oリング107が収納された袋ナット106を通す。そして、チャンバー蓋101bを外し、液体流入口104、液体排出口105にそれぞれチューブ端部102aを接触させ、流入口オネジ部104a、排出口ネオジ部105aに袋ナット106を締結する。これによって、気体透過性チューブ102は、袋ナット106に挿入されたOリング107によってチューブ端部102aの接続部から液体が漏れることを防止した状態で、液体流入口104、液体排出口105に接続される。そして、チャンバー蓋101bをチャンバー本体101aに填め込むことによって、気体透過性チューブ102を減圧チャンバー101内へと収納する。そして、脱気装置100の真空引き口103、液体流入口104、液体排出口105に、それぞれ真空ポンプ30、液体供給源10、液体利用装置20を接続する。
【0032】
このような構成の脱気装置100では、液体流入口104から気体透過性チューブ102に流入した液体は、減圧チャンバー101内部が真空ポンプ30によって減圧されているので、気体透過性チューブ102内を通過している間に溶存ガスが脱気されることになる。そして、脱気された液体は、液体排出口105から排出される。
【0033】
また、この脱気装置100に流入する液体は速度が向上するが、排出される液体は速度が低下するようになっている。そのため、気体透過性チューブ102内部では、流入した液体は、圧力が高められることになる。これによって、脱気装置100で脱気される液体は、効率よく溶存ガスが脱気され、排出されることが可能となっている。次に、本実施形態の脱気装置100で液漏れが発生した場合について図3を用いて説明する。
【0034】
図3は、脱気装置100の気体透過性チューブ102が破損し、減圧チャンバー101内で液漏れが発生した時の漏れた液体の流れを説明するための図である。図3に示すように、脱気が行われている状態で気体透過性チューブ102のチューブ破損部102bで破損が発生した場合、チューブ破損部102bから漏れ液1が漏れ出す。
【0035】
この漏れ液1は、図3に示す矢印aのように、まず重力によって気体透過性チューブ120の表面を、チャンバー底面101aaに向けて移動する。その後、漏れ液1は、図3に示す矢印bのように気体透過性チューブ120の表面から離れてチャンバー底面101aaに落下する。
【0036】
チャンバー底面101aaに落下した漏れ液1は、真空ポンプ30の吸引力によって、図3に示す矢印cのように真空引き口103へと引き寄せられる。そして、真空引き口103まで到達した漏れ液1は、図3に示す矢印dのように、真空引き口103から真空ポンプ30側へと吸引され、真空ポンプ30の手前にあるトラップ40に収容される。そして、このトラップ40に到達した漏れ液1は、液体検知手段50によって検知される。
【0037】
つまり、本実施形態の脱気装置100は、真空引き口103が、漏れ液1が重力によって落下するチャンバー底面101aaに設けられているので、漏れ液1を重力と真空ポンプ30との吸引力によってトラップ40へと導くことが可能となる。
【0038】
そのため、減圧チャンバー101内で液漏れが発生した場合、漏れ液1は、減圧チャンバー101内に溜まることなく、直ちにトラップ40へと導かれることになる。これにより、脱気装置100では、減圧チャンバー101内で液漏れが発生したことを直ぐに検知することが可能となり、液漏れが発生した場合には直ちに脱気装置100を停止させることが可能となる。そして、脱気度の低下した液体を排出することを低減することが可能となるので、後工程での不良の発生等を低減させることが可能となる。
【0039】
なお、図3では、気体透過性チューブ102の中間部が破損して液体が漏れ出す場合について説明したが、これは、あくまで一例であり、本実施形態の脱気装置100では、他の箇所、例えば、袋ナット106や、気体透過性チューブ102の上部等から液漏れが発生した場合でも、直ぐに液漏れを検知して脱気装置100を停止させることが可能である。
【0040】
次に、本発明の第2の実施形態について図4を用いて説明する。図4は、本発明の第2の実施形態における脱気装置200を、図2に対応させて示す図であり、同一構成箇所については、同一番号を付し説明を省略する。この脱気装置200は、減圧チャンバー201、気体透過性チューブ102、真空引き口203、液体流入口104、液体排出口105、袋ナット106、Oリング107を備えている点で、第1の実施形態の脱気装置100と同一であるが、真空引き口203は、第1の実施形態と異なるのでこの点についてのみ説明する。この脱気装置200も、図1に示す脱気装置100と同様の周辺装置に接続される。
【0041】
本実施形態の特徴的な部分である真空引き口203は、チャンバー本体201aのチャンバー側面下部201abから側方に向けて飛び出している円筒形の引き口であり、真空引き口203の穴は、円柱形状となっている。また、真空引き口203は、減圧チャンバー201内部では、チャンバー底面201aaと真空引き口203の穴とで段差ができないように形成されており、液体が真空引き口203の周囲で溜まらないようになっている。そして、真空引き口203には、真空引き管31が接続され、この真空引き管31を介して真空ポンプ30が接続されており、真空ポンプ30の吸引力によって真空引き口203から減圧チャンバー201内の空気が吸引されて、減圧チャンバー201は減圧されるようになっている。
【0042】
このような構成の脱気装置200は、チャンバー側面下部201abに設けられている真空引き口203の穴が、チャンバー底面201aaと段差のできないように形成されているので、重力によってチャンバー底面201aaへと落下した漏れ液1を重力と真空ポンプ30との吸引力によってトラップ40へと導くことが可能となる。
【0043】
そのため、減圧チャンバー201内で液漏れが発生した場合、漏れ液1は、減圧チャンバー201内に溜まることなく、直ちにトラップ40へと導かれることになる。これにより、脱気装置200では、減圧チャンバー201内で液漏れが発生したことを直ぐに検知することが可能となり、液漏れが発生した場合には直ちに脱気装置200を停止させることが可能となる。そして、脱気度の低下した液体を排出することを低減することが可能となるので、後工程での不良の発生等を低減させることが可能となる。
【0044】
また、第2の実施形態の脱気装置200は、真空引き口203がチャンバー本体201aのチャンバー側面下部201abから側方に向けて飛び出している。そのため、脱気装置200は、脱気装置を直接床等に設置しなければならない場所にも、設置することができ、本願の特徴的な作用を奏することが可能となる。
【0045】
次に、本発明の第3の実施形態について図5を用いて説明する。図5は、本発明の第3の実施形態における脱気装置300を、図2に対応させて示す図であり、同一構成箇所については、同一番号を付し説明を省略する。この脱気装置300は、減圧チャンバー301、気体透過性チューブ102、真空引き口303、液体流入口104、液体排出口105、袋ナット106、Oリング107を備えている点で、第1の実施形態の脱気装置100と同一であるが、減圧チャンバー301のチャンバー底面301aaは、第1の実施形態と異なるのでこの点についてのみ説明する。この脱気装置300も、図1に示す脱気装置100と同様の周辺装置に接続される。
【0046】
減圧チャンバー301のチャンバー底面301aaは、上方からみると形状が楕円形をしており、略中央に真空引き管31が接続される真空引き口303が設けられている。そして、このチャンバー底面301aaは、減圧チャンバー301のチャンバー本体301aの内周部から真空引き口303に向けて傾斜した、傾斜面を有している。
【0047】
このような構成の脱気装置300は、真空引き口303が、漏れ液1が重力によって落下するチャンバー底面301aaに設けられており、さらに、チャンバー底面301aaが、真空引き口303へ向けて傾斜した傾斜面を有しているので、漏れ液1を重力と真空ポンプ30との吸引力と、チャンバー底面301aaとによってトラップ40へと導くことが可能となる。
【0048】
そのため、減圧チャンバー301内で液漏れが発生した場合、漏れ液1は、減圧チャンバー301内に溜まることなく、直ちにトラップ40へと導かれることになる。これにより、脱気装置300では、減圧チャンバー301内で液漏れが発生したことを直ぐに検知することが可能となり、液漏れが発生した場合には直ちに脱気装置300を停止させることが可能となる。そして、脱気度の低下した液体を排出することを低減することが可能となるので、後工程での不良の発生等を低減させることが可能となる。
【0049】
また、第3の実施形態の脱気装置300は、チャンバー底面301aaが傾斜していることから漏れた液体の粘性が高く真空ポンプ30の吸引力で吸引し難い場合でも、漏れた液体を重力とチャンバー底面301aaの傾斜面とによって、真空引き口303へと誘導することができる。従って、脱気装置300は、粘性の高い液体を脱気する場合でも直に減圧チャンバー301内での液漏れを検知して脱気を停止することができる。
【0050】
次に、本発明の第4の実施形態について図6を用いて説明する。図6は、本発明の第4の実施形態における脱気装置400を、図4に対応させて示す図であり、同一構成箇所については、同一番号を付し説明を省略する。この脱気装置400は、減圧チャンバー401、気体透過性チューブ102、真空引き口403、液体流入口104、液体排出口105、袋ナット106、Oリング107を備えている点で、第2の実施形態の脱気装置100と同一であるが、減圧チャンバー401のチャンバー底面401aaは、第2の実施形態と異なるのでこの点についてのみ説明する。この脱気装置400も、図1に示す脱気装置100と同様の周辺装置に接続される。
【0051】
減圧チャンバー401のチャンバー底面401aaは、形状が楕円形をしており、チャンバー本体401aのチャンバー側面下部401abに真空引き口403が設けられている。そして、このチャンバー底面401aaは、減圧チャンバー401のチャンバー本体401aの内周部から真空引き口403に向けて傾斜した、傾斜面を有している。
【0052】
このような構成の脱気装置400は、チャンバー側面下部401abに設けられている真空引き口403の穴が、チャンバー底面401aaと段差のできないように形成されており、さらに、チャンバー底面401aaが、真空引き口403へ向けて傾斜した傾斜面を有しているので、漏れ液1を重力と真空ポンプ30との吸引力と、チャンバー底面401aaによってトラップ40へと導くことが可能となる。
【0053】
そのため、減圧チャンバー401内で液漏れが発生した場合、漏れ液1は、減圧チャンバー401内に溜まることなく、直ちにトラップ40へと導かれることになる。これにより、脱気装置400では、減圧チャンバー401内で液漏れが発生したことを直ぐに検知することが可能となり、液漏れが発生した場合には直ちに脱気装置400を停止させることが可能となる。そして、脱気度の低下した液体を排出することを低減することが可能となるので、後工程での不良の発生等を低減させることが可能となる。
【0054】
また、第4の実施形態の脱気装置400は、第2の実施形態の特徴部分と、第3の実施形態の特徴部分とを併せ持つので、第2、第3の実施形態の特徴的な作用を併せて奏することが可能となっている。
【0055】
次に、本発明の第5の実施形態について図7を用いて説明する。図7は、本発明の第5の実施形態における脱気装置500のチャンバー底面501aaを示す図であり、第1の実施形態の脱気装置100と、同一構成箇所については、同一番号を付し説明を省略する。この脱気装置500は、減圧チャンバー501、気体透過性チューブ102、真空引き口503、液体流入口104、液体排出口105、袋ナット106、Oリング107を備えている点で、第1の実施形態の脱気装置100と同一であるが、減圧チャンバー501のチャンバー底面501aaは、第1の実施形態と異なるのでこの点についてのみ説明する。この脱気装置500も、図1に示す脱気装置100と同様の周辺装置に接続される。
【0056】
減圧チャンバー501のチャンバー底面501aaは、上方からみると、形状が楕円形をしており、略中央には真空引き管31が接続される真空引き口503が設けられている。そして、このチャンバー底面501aaは、減圧チャンバー501のチャンバー本体501aの内周部から真空引き口503に向けて窪んだ擂鉢形状を有しており、この擂鉢の底部となる位置に真空引き口503が形成されている。そして、このチャンバー底面501aaは、減圧チャンバー501のチャンバー本体501aの内周部から真空引き口503に向けて溝501cが4本、十字形状で形成されており、この溝501cは、真空引き口503へと繋がっている。
【0057】
このような構成の脱気装置500でも、真空引き口503が、漏れ液1が重力によって落下するチャンバー底面501aaに設けられており、さらに、チャンバー底面501aaが、真空引き口503へ向けて傾斜した擂鉢形状を有しており、さらに、チャンバー底面501aaには、真空引き口503へ向けて溝501cが形成されているので、漏れ液1を重力と真空ポンプ30との吸引力と、チャンバー底面501aaと、溝501cとによってトラップ40へと導くことが可能となっている。
【0058】
そのため、減圧チャンバー501内で液漏れが発生した場合、漏れ液1は、減圧チャンバー501内に溜まることなく、直ちにトラップ40へと導かれることになる。これにより、脱気装置500では、減圧チャンバー501内で液漏れが発生したことを直ぐに検知することが可能となり、液漏れが発生した場合には直ちに脱気装置500を停止させることが可能となる。そして、脱気度の低下した液体を排出することを低減することが可能となるので、後工程での不良の発生等を低減させることが可能となる。
【0059】
また、第5の実施形態の脱気装置500は、チャンバー底面501aaが擂鉢形状に傾斜していることから漏れた液体の粘性が高く真空ポンプ30の吸引力で吸引し難い場合でも、漏れた液体を重力とチャンバー底面501aaの傾斜面とによって、真空引き口503へと誘導することができる。また、溝501cに真空ポンプ30の吸引力を作用させて、吸引力の集中する場所を増やし、漏れた液体を誘導することも可能となる。従って、脱気装置500では、粘性の高い液体を脱気する場合でも直に減圧チャンバー501内での液漏れを検知して脱気を停止することが可能となる。
【0060】
なお、本発明の実施形態の減圧チャンバー101、201、301、401、501は、楕円形の円筒となっていたが、この形状に限定されるものではない。例えば、円筒形状でも構わないし、円筒形状の場合には、チャンバー蓋はネジ込み式で取り付けられても構わない。
【0061】
また、本発明の実施形態の液体検出手段50は、トラップ40に接続されていたが、本発明の液体検出装置は、真空引き口に接続されていても構わない。この場合、液漏れをさらに早く検知することも可能となる。
【0062】
また、本発明の実施形態の真空引き口103、203、303、403、503は、それぞれ減圧チャンバーに一つずつ設けられていたが、減圧チャンバーに2つ以上設けられていても構わない。また、脱気装置の装着状態により、チャンバー蓋に設けられていても構わないが、その場合には、チャンバー蓋側に漏れた液体が重力によって溜まるようにする必要がある。これにより、本発明の脱気装置では、2機以上の真空ポンプで吸引することが可能となる。
【0063】
また、本発明の実施形態の溝501cは、擂鉢形状のチャンバー底面501aaに設けられていたが、これに限定されるものではない。例えば、チャンバー底面301aaのような傾斜面に設けても構わないし、チャンバー底面101aaのような平面に設けても構わない。また溝の本数も、1〜3、若しくは4以上でも構わないし、溝の形状も十字に限定されるものではなく、例えば、8方向に延びていてもよい。また、それぞれの溝が連結していても構わない。
【0064】
また、本発明の実施形態では、チャンバー底面501aaは、チャンバー本体501aの内周部から略中央に向けて窪んだ擂鉢形状となっていたが、逆に、チャンバー本体501aの内周部から略中央部に向けて盛り上がる逆擂鉢形状でも構わない。ただし、その場合には真空引き口がチャンバー側面下部に設けられている必要がある。
【0065】
また、本発明の実施形態では、真空引き口103、203、303、403、503には、真空ポンプ30と、吸引された液体が真空ポンプ30に吸引されることを防止するトラップ40とが接続されており、漏れ出した液体を検知する液体検知手段40が接続されているので、真空引き口103、203、303、403、503によって漏れ液1を吸引するだけで、減圧チャンバー101、201、301、401、501内での液漏れを検知することが可能となる。
【0066】
以上、第1〜5の実施形態の脱気装置100、200、300、400、500では、液体流入口104、液体排出口105、及び真空引き口103、203、303、403、503が設けられている減圧チャンバー101、201、301、401、501と、一端が前記液体流入口104に接続され、他端が前記液体排出口105に接続されて前記減圧チャンバー101、201、301、401、501内に収納される気体透過性チューブ102とを備え、前記真空引き口103、203、303、403、503から前記減圧チャンバー101、201、301、401、501内を真空引きすることにより、前記減圧チャンバー101、201、301、401、501内を減圧し、前記液体流入口104から前記気体透過性チューブ102を介して前記液体排出口105へと流される液体を脱気する脱気装置100、200、300、400、500であって、前記真空引き口103、203、303、403、503は、真空引きにより前記気体透過性チューブ102から漏れ出した液体が溜まる位置に設けられており、前記漏れ出した液体は、前記位置に溜まることなく前記真空引き口103、203、303、403、503から吸引されることを特徴としている。
【0067】
これにより、本実施形態の脱気装置100、200、300、400、500では、真空引き口103、203、303、403、503は、減圧チャンバー101、201、301、401、501内の漏れ出した液体が溜まる位置に設けられているので、減圧チャンバー101、201、301、401、501内で液漏れが発生した場合、漏れ出した液体は、自動的に真空引き口103、203、303、403、503へと集まることになる。そのため、漏れ出した液体を直に真空引き口103、203、303、403、503から吸引することができ、液漏れを素早く感知することが可能となる。
【0068】
また、本実施形態の脱気装置100、300、500では、前記真空引き口103、303、503は、前記減圧チャンバー101、301、501のチャンバー底面101aa、301aa、501aaに設けられていることを特徴としている。これにより、本実施形態の脱気装置100、300、500では、真空引き口103、303、503まで漏れ出した液体を集めるのに、重力を利用することが可能となる。
【0069】
また、本実施形態の脱気装置100、300、500では、前記真空引き口103、303、503は、前記チャンバー底面101aa、301aa、501aaの略中央に設けられていることを特徴としている。これにより、この脱気装置100、300、500では、減圧チャンバー101、301、501内の端部で液漏れが発生した場合でも、漏れ出した液体が真空引き口103、303、503まで到達する時間を一定の範囲内に収めることが可能となり、液漏れの検出時間を一定にすることが可能となる。
【0070】
また、本実施形態の脱気装置200、400では、前記真空引き口203、403は、前記減圧チャンバー201、401の側面下部に設けられていることを特徴としている。これにより、本実施形態の脱気装置200、400では、脱気装置200、400を据え付ける場所の下方にスペースがとれない場合でも使用することが可能となる。
【0071】
また、本実施形態の脱気装置300、400、500では、前記減圧チャンバー301、401、501には、前記真空引き口303、403、503まで液体を誘導する傾斜面が設けられていることを特徴としている。また、本実施形態の脱気装置500では、前記減圧チャンバー501のチャンバー底面501aaは擂鉢形状をしており、前記真空引き口503が当該擂鉢の底部となる位置に設けられていることを特徴としている。また、本実施形態の脱気装置500では、前記減圧チャンバー501には、前記漏れ出した液体を前記真空引き口503に誘導する溝501cが設けられていることを特徴としている。これにより、この脱気装置300、400、500では、漏れ出した液体を真空引き口303、403、503まで誘導することが可能となるので、液漏れの検出時間をさらに短縮することも可能となる。また、粘弾性の高い液体を脱気する場合でも、素早く液漏れを検知することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の脱気装置は、脱気された液体を必要とする機器であれば、どのような機器でも適用可能である。例えば、半導体ウエハへのフォトレジスト等の塗布装置や現像装置、液晶製造装置に使用される液体の脱気装置にも適用可能である。特に、高精度の脱気性能を必要とする機器に適用した場合に大きな効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1の実施形態における脱気装置100と周辺装置との関係図である。
【図2】第1の実施形態における脱気装置100の概略断面図である。
【図3】第1の実施形態における脱気装置100の機能説明図である。
【図4】第2の実施形態における脱気装置200の概略断面図である。
【図5】第3の実施形態における脱気装置300の概略断面図である。
【図6】第4の実施形態における脱気装置400の概略断面図である。
【図7】第5の実施形態における脱気装置500の概略断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 漏れ液、
10 液体供給源、
11 液体流入管、
20 液体利用装置、
21 液体排出管、
30 真空ポンプ、
31 真空引き管、
40 トラップ、
50 液体検知手段、
100、200、300、400、500 脱気装置、
101、201、301、401、501 減圧チャンバー、
101a、201a、301a、401a、501a チャンバー本体、
101b チャンバー蓋、
101aa、201aa、301aa、401aa、501aa チャンバー底面、
102 気体透過性チューブ、
102a チューブ端部、
102b チューブ破損部、
103、203、303、403、503 真空引き口、
104 液体流入口、
104a 流入口オネジ部、
105 液体排出口、
105a 排出口オネジ部、
106 袋ナット、
106a ナットメネジ部、
107 O−リング、
201ab、401ab チャンバー側面下部、
501c 溝、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体流入口、液体排出口、及び真空引き口が設けられている減圧チャンバーと、一端が前記液体流入口に接続され、他端が前記液体排出口に接続されて前記減圧チャンバー内に収納される気体透過性チューブとを備え、
前記真空引き口から前記減圧チャンバー内を真空引きすることにより、前記減圧チャンバー内を減圧し、前記液体流入口から前記気体透過性チューブを介して前記液体排出口へと流される液体を脱気する脱気装置であって、
前記真空引き口は、真空引きにより前記気体透過性チューブから漏れ出した液体が溜まる位置に設けられており、
前記漏れ出した液体は、前記位置に溜まることなく前記真空引き口から吸引されることを特徴とする脱気装置。
【請求項2】
前記真空引き口は、前記減圧チャンバーの底面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の脱気装置。
【請求項3】
前記真空引き口は、前記底面の略中央に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の脱気装置。
【請求項4】
前記真空引き口は、前記減圧チャンバーの側面下部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の脱気装置。
【請求項5】
前記減圧チャンバーには、前記真空引き口まで液体を誘導する傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の脱気装置。
【請求項6】
前記減圧チャンバーの底面は擂鉢形状をしており、前記真空引き口が当該擂鉢の底部となる位置に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の脱気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−36489(P2008−36489A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211510(P2006−211510)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000145530)株式会社潤工社 (71)
【Fターム(参考)】