説明

脱気装置

【課題】 高感度で精密な測定データが求められる場合、移動相交換や脱気能力の安定化に時間をかけずに優先的に分析時間の短縮化が求められる場合、腐食性溶媒を使用する場合、といった現在液体クロマトグラフ用脱気装置に求められる多様な要請に柔軟に対応可能な脱気手段を提供する。
【解決手段】 液体クロマトグラフが稼動している間、常時または所定のタイミングで移動相から溶存気体を除去するインライン脱気装置を2つ備えた脱気装置により、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフで分析する際に、移動相中に溶存する気体を除去するための脱気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーにおいて移動相中に溶存する気体は、送液ポンプ、分離カラム、検出器およびこれらを接続する送液流路内における気泡発生の要因となる。気泡が発生すると送液ポンプの送液不良、ピーク形状やベースラインの乱れ、ノイズ混入、さらには分離カラムの劣化をもたらす。また気泡発生に至らないまでも、移動相中に溶存する気体が、液密度の変動を通じて検出器、特に示差屈折率計のベースライン出力に揺らぎを生じさせたり、カラム中の固定相と反応し分析を妨害するおそれがある。また、移動相中の溶存酸素により測定試料が変質する場合もある。
【0003】
したがって液体クロマトグラフで分析を行なうときは、通常、移動相中の溶存気体を除去(脱気)する。脱気方法は、移動相が入った容器を送液ポンプ入口に備える前にあらかじめ脱気を行なうオフライン脱気と、液体クロマトグラフが稼働している間常時または所定のタイミングで脱気を行なうインライン脱気とに大別することができる。オフライン脱気は、脱気を停止したときから気体の再溶解が始まるので、分析時間が短い場合に適用できる方法である。一方インライン脱気は、分析が長時間にわたっても移動相中の溶存気体の濃度を低レベルに維持することができる方法である。
【0004】
オフライン脱気としてよく使われる方法としては、
(1)アスピレータをつないだ減圧室の中に移動相を入れた開口ビンを置き、撹拌子などで撹拌しながら気泡の発生が終わるまで減圧脱気する、実験室的な方法、
(2)液体に対する気体の溶解度が温度の上昇とともに低下する現象を利用した脱気方法であり、容器に入れた移動相を加熱して溶存気体を除去(パージ)する加熱脱気方法、
(3)溶離液を入れた容器を超音波洗浄機に一定時間浸すなどにより振動を与えることで溶存気体を除去(パージ)する、脱気方法、
が例示できる。
【0005】
このうち、前記(2)の方法は、加熱するだけでは気液平衡に達するのに時間がかかるため撹拌しながら脱気するのが有効である。また、前記(2)の方法では、液体の沸点以上に加熱して徹底的に溶存気体を除去(脱気)してもよい。ただし、前記(2)の方法は、揮発性の高い溶媒や熱分解しやすい物質を含んだ移動相には適用しにくく、また混合溶媒を加熱する場合は、混合比率が変動しないように注意する必要がある。前記(3)の方法は、実験室で手軽に実施できて便利であるが、超音波洗浄機に由来する騒音の問題がある。
【0006】
一方、インライン脱気としてよく使われる方法としては、
(4)気体透過性材料からなる流通式気液分離膜チューブと、前記チューブを収容するチャンバと、前記チャンバ内を減圧状態にするための真空ポンプと、を備えた装置を使用して脱気する方法、
(5)移動相を入れた容器に液体クロマトグラフの送液配管を接続した状態で加熱して移動相中の溶存気体を容器外へ除去(パージ)する加熱脱気方法、
(6)溶媒への溶解度が低く溶解度の温度依存性も小さいヘリウムガスを移動相を入れた容器中でバブリングすることで溶存気体と置換する方法(特許文献1および2)、
が例示できる。
【0007】
このうち、前記(4)の方法は、移動相の容器形状などに制限がないこと、混合溶媒(特に揮発性溶媒を含む溶媒)の組成が変化しにくいこと、配管に吸い込まれた気泡も除去できること、および脱気操作に人手がかからないことから、広く用いられている。しかしながら前記(4)の方法は、脱気能力が移動相流量に依存すること、チューブ内の移動相交換に時間を要すること、減圧動作を行なう真空ポンプの脈動に同調した脱気能力の周期的変動により液密度が変動し示差屈折率計のベースライン出力が不安定になること、などの問題点がある。前記(4)の方法で使用する脱気装置として、移動相を入れた容器を減圧チャンバの上に置きそれらを一つの断熱材で覆う(特許文献3)、または移動相を入れた容器と減圧チャンバとを一つの筐体内に収容して、一定の温度に保持する構成(特許文献4)が知られている。また、特許文献3には、前記構成のもとに温度制御しつつ脱気することにより、溶媒としてテトラヒドロフランを使用した場合、周囲温度を20℃から25℃に変化させたときのクロマトグラムのドリフトが顕著に改善したことを開示している。なお、前記(4)の方法における温度制御の範囲については、温度が高すぎると溶媒蒸気もチューブを構成する気液分離膜を通過してしまうため、20℃以上40℃以下の範囲で加温するのが好ましいとされている。前記(5)の方法は、測定中、溶存気体の濃度を測定に悪影響を与えない程度の低レベルに安定化させることが重要である。前記(5)の方法における設定温度は、分析の目的、要求される測定感度、移動相の種類に依存するが、概ね40℃程度から移動相の沸点近くまでの範囲に設定する。前記(6)の方法は、真空発生源といった特別な装置が不要な方法であるが、揮発性の高い溶媒を含む溶離液には適用しにくく、また高価なヘリウムガスを常時流す必要がありコスト面で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平6−011392号公報
【特許文献2】特開平9−127079号公報
【特許文献3】実開昭64−032703号公報
【特許文献4】特開2006−234650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
液体クロマトグラフィーのうち、高温サイズ排除クロマトグラフィー(高温GPCとも呼ばれるが、本明細書では以下高温SECと略す)は、常温では溶解しないポリエチレン、ポリプロピレンといったポリオレフィン類やエンジニアリングプラスチックの分析に使用され、180℃までの分析を可能とする。また、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチックを250℃程度までの高温下で分析する超高温SECも開発されている。従来の高温SEC装置は、移動相中の溶存気体を除去する装置(脱気装置)として、前記(4)に記載の気液分離膜チューブを備えた装置、または前記(5)に記載の加熱脱気方法を利用した装置を用いている。しかしながら、前記(4)の装置中の気液分離膜チューブは一般にフッ素樹脂製であるため、フッ素樹脂を溶解するおそれのあるフッ素系有機溶媒を移動相とした場合には適用できない問題点があった。また前記(5)に記載の方法を利用した装置は、フッ素系有機溶媒を移動相とした場合でも適用可能であるが、前記(4)の装置と比較し溶存気体の除去度(脱気度)が小さいため、高感度で精密な測定データが求められる場合には適用しにくい問題点があった。
【0010】
一方、近年、カラム充填剤の微小化および耐圧性の向上、カラムサイズの小型化、送液ポンプの高速化、移動相温度の高温化などの技術の進歩により、分析時間が1分以下となるような、従来の液体クロマトグラフィーに比べて桁違いの高速化/ハイスループット化が達成し得る超高速クロマトグラフィーが注目されている。移動相の送液速度の高速化は脱気装置における脱気効率の低下につながるため、安定化に時間を要する脱気方法は改良が求められている。
【0011】
そこで本発明は、高感度で精密な測定データが求められる場合、移動相交換や脱気能力の安定化に時間をかけずに優先的に分析時間の短縮化が求められる場合、腐食性溶媒を使用する場合、といった現在液体クロマトグラフ用脱気装置に求められる多様な要請に柔軟に対応可能な脱気手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を鑑みてなされた本発明は、以下の発明を包含する。
【0013】
第一の発明は、
移動相中の溶存気体を除去する液体クロマトグラフ用脱気装置であって、
液体クロマトグラフが稼動している間、常時または所定のタイミングで移動相から溶存気体を除去するインライン脱気装置を2つ備えた、前記脱気装置である。
【0014】
第二の発明は、移動相からの溶存気体の除去を、2つのインライン脱気装置のうちの一方で行なうか、または両方で行なうかを切り替え可能な、第一の発明に記載の脱気装置である。
【0015】
第三の発明は、
2つのインライン脱気装置が、
移動相を加熱する手段と、移動相に溶存した気体をパージする手段とを備えた第一のインライン脱気装置と、
気液分離膜チューブを有したチャンバと、前記チャンバ内を減圧状態にするための真空ポンプと、前記真空ポンプを制御する制御手段とを備えた、第二のインライン脱気装置と、
からなる、第一または第二の発明に記載の脱気装置である。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の脱気装置を適用できる液体クロマトグラフとしては、移動相に液体を使用するものであって、移動相中の溶存気体を除去する操作(脱気操作)が必要なものであれば制限はなく、移動相が水系溶媒であっても、有機溶媒であっても、適用可能である。
【0018】
本発明の脱気装置に備える、2つのインライン脱気装置は、例えば、前記(4)から(6)に記載の脱気方法を利用した装置のうち、同じ脱気方法を利用した装置2台からなる装置、または2つの異なる脱気方法を利用した装置1台ずつからなる装置を例示することができるが、2つの異なる脱気方法を利用した装置1台ずつからなる装置の方が、多様な要請に、より柔軟に対応できる点で好ましい。
【0019】
なお、液体クロマトグラフィーのうち高温SECでは、常温では溶解しないポリオレフィン類を溶解させるため、および粘性の高い移動相の流動性をあげ送液しやすくするために、移動相を加熱することが重要である。したがって、高温SECに対して本発明の脱気装置を適用する場合は、
移動相を加熱する手段と、移動相に溶存した気体をパージする手段とを備えた第一のインライン脱気装置(前記(5)の方法を利用した脱気装置)と、
気液分離膜チューブを有したチャンバと、前記チャンバ内を減圧状態にするための真空ポンプと、前記真空ポンプを制御する制御手段とを備えた、第二のインライン脱気装置(前記(4)の方法を利用した脱気装置)と、
を備えた構成が好ましい。
前記好ましい脱気装置を用いて高温SECで測定する場合、通常の測定では、前記第一のインライン脱気装置を用いて移動相の加熱と溶存気体の除去(脱気)を行ない、その後第二のインライン脱気装置を用いて溶存気体の除去(脱気)をさらに行なうことで、高感度で精密な測定データを取得する。一方、移動相としてフッ素系有機溶媒など第二のインライン脱気装置中の気液分離膜チューブを溶解する溶媒を用いる場合は、第一のインライン脱気装置のみで脱気を行なえばよい。また、要求される測定感度がさほど厳しくない場合や、分析開始までの時間を短縮したい場合も、第一のインライン脱気装置のみで脱気を行なえばよい。その理由として、第二のインライン脱気装置で発生する、気液分離膜チューブの容量に起因する移動相交換や脱気能力の安定化に時間を要する問題点を回避することができるからである。なお、移動相を第一のインライン脱気装置のみで脱気するか、第一および第二のインライン脱気装置で脱気するかの切り替えは、第一のインライン脱気装置と第二のインライン脱気装置との間に六方バルブ、四方バルブ、三方電磁弁などの公知の切り替え手段を用いて行なえばよい。
【0020】
前記好ましい脱気装置における第一のインライン脱気装置の一態様として、
加熱ヒータやペルチェ素子などの温調手段、温度計、温度制御回路、断熱材を備えた恒温槽に移動相を入れた容器を収容した移動相を加熱する手段と、
移動相から除去した溶存気体を外部に開放するためのパージ手段と、
を備えた装置があげられる。前記移動相を加熱する手段の形態としては、
移動相を入れた容器に対して温度計、面型ヒータを介して断熱材を密着させる形態でもよいし、
空気恒温槽の中に、移動相を入れた容器、加熱ヒータやペルチェ素子などの温調手段、温度計、適宜空気撹拌用のファンを設置する形態でもよいし、
湯浴のなかに移動相を入れた容器、温度計を浸す形態でもよい。
なお、溶存気体の除去効率(脱気効率)を向上させるために、移動相を撹拌するための撹拌子や撹拌棒などの撹拌手段をさらに備えると好ましい。また、移動相から除去した溶存気体を外部に開放するためのパージ手段は、移動相を入れた容器を外部に開放した状態にすることで溶存気体そのまま外部に開放してもよいが、溶存気体を外部に開放するための流路を設け、その途中に移動相への水分の混入を防止するための吸湿剤フィルタなどを設けた手段とすると、より好ましい。
【0021】
前記好ましい脱気装置における第一のインライン脱気装置の別の態様として、移動相を入れた容器を直接加熱するのではなく、移動相を入れた容器と送液ポンプとの間に、予熱管とエアトラップ(フェーズセパレータ)とを組み合わせた装置をあげることができる。すなわち、予熱管で発生させた気泡(溶存気体)をエアトラップにより流路系外に放出(パージ)する装置である。前記別の態様は移動相容器の形状や大きさ、材質にかかわらず実施できる利点を有する。なお、前記予熱管は熱伝導性と耐薬品性の高い金属製のものが好ましい。
【0022】
前記好ましい脱気装置における第一のインライン脱気装置において、移動相を加熱する手段の設定温度は、移動相として使用する溶媒の種類により、また移動相をどの程度脱気すべきかにより適宜決めればよい。加熱により変質または組成が変わるような溶媒を移動相として使用するときは、移動相を加熱する手段はペルチェ素子などにより比較的低温域に移動相を温調し、脱気は主に第二のインライン脱気装置により行なえばよい。なお、第一のインライン脱気手段で温調した移動相を第二のインライン脱気装置に送ることは、安定した検出器出力を得る上で好ましい。
【0023】
前記好ましい脱気装置における第二のインライン脱気装置で用いる気液分離膜チューブの材質は、ガス透過性を有する材料であれば適宜選択可能であるが、液体クロマトグラフで通常用いられる移動相に対して耐性を有する、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やガス透過性が高い非晶質フッ素ポリマーが通常用いられる。同様に、前記気液分離膜チューブを有したチャンバーの材質は、用いられる移動相に対して耐性を有し、かつガス透過性を有しない材料であれば適宜選択可能であり、通常、大量生産に向くアルミニウムや樹脂が用いられるが、金属腐食性溶媒や樹脂を溶解する溶媒を移動相として用いる場合はステンレスが好ましい。前記態様における第二のインライン脱気装置で用いる真空ポンプの形態は特に限定されることはなく、ACモータ、DCモータ、またはステッピングモータ駆動のダイヤフラムポンプを例示することができる。なお、前記真空ポンプにより作り出されるチャンバー内部の真空度(減圧状態)は、ゲージ圧で−50kPa以下、好ましくは−80kPa以下である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の脱気装置は、液体クロマトグラフが稼動している間、常時または所定のタイミングで移動相から溶存気体を除去するインライン脱気装置を2つ備えていることを特徴としており、好ましくは、移動相からの溶存気体の脱気を、前記2つのインライン脱気装置のうちの一方で行なうか、または両方で行なうかを切り替え可能な装置である。前記装置により、液体クロマトグラフィーの脱気手段に求められる多様な要請に柔軟に対応可能となる。
【0025】
例えば、本発明の脱気装置の一態様である、
移動相を加熱する手段と、移動相に溶存した気体をパージする手段とを備えた第一のインライン脱気装置と、
気液分離膜チューブを有したチャンバと、前記チャンバ内を減圧状態にするための真空ポンプと、前記真空ポンプを制御する制御手段とを備えた、第二のインライン脱気装置と、
を備えた脱気装置を用いて溶存気体を除去する場合、周囲の温度変化による溶存気体の濃度の違いが分析結果に影響を与えるような、高感度で精密な測定データが求められるときは、前記第一および第二のインライン脱気装置を用いて移動相中の溶存気体を除去(脱気)すればよいし、脱気不良による送液不良や分析結果への影響が小さいとき、および/または気液分離膜チューブを溶解する溶媒を移動相として使用するとき、および/または移動相交換や脱気能力の安定化に時間をかけず分析時間の短縮化を優先するときには、切り替え手段により第一のインライン脱気装置のみで移動相中の溶存気体を除去(脱気)すればよい。したがって前記脱気装置により、液体クロマトグラフィーの脱気手段に求められる多様な要請に柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の脱気装置を備えた送液システム構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の脱気装置の実施形態を図面により具体的に説明する。図1に、本発明の脱気装置を備えた送液システム構成の一例を示す。
【0028】
第一のインライン脱気装置10は、ヒータまたはペルチェ素子13を設けた恒温槽12に移動相11が収容されており、ヒータまたはペルチェ素子13による加熱により移動相11中の溶存気体から生じた気泡は開放ライン14を通じ吸湿剤フィルタ15を経て外部へパージされる。なお、移動相11からの溶存気体の除去効率(脱気効率)を高めるために、移動相11に撹拌子16を入れることで、撹拌駆動部17により移動相11を撹拌できるようにする。
【0029】
第二のインライン脱気装置20は、移動相の溶存気体を除去(脱気)するための脱気チャンバ21と、真空ポンプ22と、真空ポンプを制御する圧力制御回路23を備えている。脱気チャンバ21は三方電磁弁24を経て真空ポンプ22により内部が減圧状態となっており、送液ポンプ40によって送液された移動相が脱気チャンバ21内部にある気液分離膜チューブ(不図示)を通過することで、移動相中の溶存気体を除去(脱気)し外部へ排出することができる。脱気チャンバ21内の圧力は、圧力センサ25での値に基づき、圧力制御回路23により真空ポンプ22および/または三方電磁弁24を制御することで、一定の圧力(減圧状態)を維持している。なお、インライン脱気装置20の脱気性能を高度に安定化させるためには、脱気チャンバ21だけを温度制御するのではなく、圧力センサ25および圧力制御回路23を含めて一括して温度調整(図1では第二のインライン脱気装置の温調部26として図示)するのが好ましい。その理由として、圧力センサ25および圧力制御回路23の出力信号に温度ドリフトが生じるからである。また、検出器の出力ベースラインを安定化させるために、前述の温度調整の手当てに加え、移動相11と流路切り替えバルブ30とを接続する配管51、流路切り替えバルブ30とインライン脱気装置の温調部26とを接続する配管52・53、および流路切り替えバルブ30の周囲に断熱材を設けると特に好ましい。
【0030】
第一のインライン脱気装置10と送液ポンプ40との間には、第二のインライン脱気装置20に移動相を導入するか否かを切り替えるための流路切り替えバルブ30を備えている。図1では流路切り替えバルブ30として六方スイッチングバルブを用いているが、原理的には閉じた流路を着脱可能にする流路切り替えバルブであればよく、例えば四方バルブを用いてもよい。
【0031】
六方スイッチングバルブを流路切り替えバルブ30として用いる場合、第1の流路状態(図1の破線で示す流路)では、移動相11が送液ポンプ40により、流路51、流路切り替えバルブ30中のポートBからポートAへの流路(破線で示す流路)、流路52を経て、第二のインライン脱気装置20中の脱気チャンバ21にある気液分離膜チューブ(不図示)を通過する。脱気チャンバ21を通過した移動相は、流路53、流路切り替えバルブ30中のポートDからポートCへの流路(破線で示す流路)を経て、送液ポンプ40へ送液される。一方、六方スイッチングバルブを60度右回りに回転すると第2の流路状態(図1の太線で示す流路)となる。第2の流路状態では、移動相11が送液ポンプ40により、流路51、流路切り替えバルブ30中のポートBからポートCへの流路(太線で示す流路)を経て、送液ポンプ40へ送液される。
【符号の説明】
【0032】
10:第一のインライン脱気装置
11:移動相
12:恒温槽
13:ヒータまたはペルチェ素子
14:開放ライン
15:吸湿剤フィルタ
16:撹拌子
17:撹拌駆動部
20:第二のインライン脱気装置
21:脱気チャンバ
22:真空ポンプ
23:圧力制御回路
24:三方電磁弁
25:圧力センサ
26:第二のインライン脱気装置の温調部
30:流路切り替えバルブ
40:送液ポンプ
51・52・53:流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動相中の溶存気体を除去する液体クロマトグラフ用脱気装置であって、
液体クロマトグラフが稼動している間、常時または所定のタイミングで移動相から溶存気体を除去するインライン脱気装置を2つ備えた、前記脱気装置。
【請求項2】
移動相からの溶存気体の除去を、2つのインライン脱気装置のうちの一方で行なうか、または両方で行なうかを切り替え可能な、請求項1に記載の脱気装置。
【請求項3】
2つのインライン脱気装置が、
移動相を加熱する手段と、移動相に溶存した気体をパージする手段とを備えた第一のインライン脱気装置と、
気液分離膜チューブを有したチャンバと、前記チャンバ内を減圧状態にするための真空ポンプと、前記真空ポンプを制御する制御手段とを備えた、第二のインライン脱気装置と、
からなる、請求項1または2に記載の脱気装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−133367(P2011−133367A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293428(P2009−293428)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)