説明

脱水ケーキ粉砕機

【課題】脱水ケーキを移動中に粗い一次ほぐしし、次いで細かい二次ほぐしすることで、製紙スラッジ等の脱水ケーキを粉砕する。
【解決手段】投入口と排出口とを有する粉砕機本体内の上流側に多数のほぐし刃11を備えた一次ほぐし機構7を設けると共に、下流側に多数のほぐし羽根13を備えた二次ほぐし機構8を設け、多数のほぐし刃11はスクリュ羽根10の縁部に舌片状に設けて形成し、二次ほぐし機構8は下流側へと次第に大径となるテーパ筒12の周面に多数のほぐし羽根13を配設し、これらのほぐし羽根の向きを螺旋状方向に揃えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙スラッジ等の脱水ケーキに対して使用する脱水ケーキ粉砕機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単純沈殿スラッジのような繊維分の長い汚泥、例えば製紙スラッジ等をスクリュプレスにより脱水すると、濃度50%以上に脱水された脱水ケーキが得られる。そして排出されたケーキの形状は、大量に処理が可能な大型の機種から排出されるものほど大きな塊となるが、繊維分が長い分だけ細かく粉砕し難い。
【0003】
このような単純沈殿スラッジの最終処分は焼却されることが殆どであり、脱水ケーキの塊が大きいと燃焼効率が悪く、本来のパルプが持っている熱量が十分に燃焼されずに、焼却炉の温度を低下させる要因となる。従って、温度低下を生じさせないために、重油等の燃料を余分に使用しなければならず、コストアップにもなっている。
【0004】
スクリュ式の粉砕機として、例えば特許文献1〜3が開示されており、特許文献1には建材廃品の粉砕機が示されており、この粉砕機はスクリュを内装した横型の粉砕機本体の上部に投入口、前端部に排出口が設けられて、その投入口内に投入された材料を、回転するスクリュのスクリュ羽根の縁部とその投入口の下端開口縁との間で剪断し、引き続きスクリュの回転で排出口から外部へと送り出すように構成されている。
【0005】
特許文献2には加圧粉砕機が示されており、その基本的構造は、圧送スクリュを内装した横型の圧送筒の先端に多数の排出孔を有する排出板が固定され、この排出板の内面側に圧送スクリュと一体的に回転するカッタが設けられ、圧送筒内に投入された植物廃材を圧送スクリュで圧送することにより、各排出孔から分散押し出しすると同時に、カッタで剪断して粉砕するよう構成されている。
【0006】
特許文献3には、2軸スクリュシャフト式粉砕機が示されており、この粉砕機は互いに逆回転する2つの粉砕機を、双方にオーバーラップした状態で併設一体化させることによりダブル構造に構成されている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−90259号公報
【特許文献2】特開2001−198487号公報
【特許文献3】特開2003−159545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上述の特許文献1〜3の粉砕機は、製紙スラッジ等の脱水ケーキの粉砕には不適である。つまり、製紙スラッジの場合には、絡み合った細い繊維分が固定部材と回転部材との間の僅かな隙間に咬み込み状態に入り込み、しかも圧送がこれを助長するため、スクリュが回転不能に陥る可能性が高い。
【0009】
本発明の目的は、上述の問題点を解決し、脱水ケーキの塊を移動中に突きほぐすことで、脱水ケーキに対する粉砕を具現化し、動力を小さくして運転経費の低減を図る脱水ケーキ粉砕機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る脱水ケーキ粉砕機の技術的特徴は、上流側端部に投入口、下流側端部に排出口を設けた本体内の前記投入口側に、粗くほぐす一次ほぐし機構を設け、前記排出口側に細かくほぐす二次ほぐし機構を設けた脱水ケーキ粉砕機であって、前記本体内に回転軸を配置し、前記一次ほぐし機構は前記回転軸の周囲に送り機構のスクリュ羽根を螺旋状に巻回し、該スクリュ羽根の縁部に多数のほぐし刃を設け、前記二次ほぐし機構は前記回転軸の周囲に送り機構を兼ねた多数の長片状のほぐし羽根を設けたことにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る脱水ケーキ粉砕機によれば、脱水ケーキに対して粗い一次ほぐしに次いで、細かい二次ほぐしが施され、脱水ケーキを的確に粉砕して表面積を格段に増大させるので、焼却炉における燃焼効率を高めることができ、炉の温度を維持するための燃料の消費量を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を図示の実施例により詳細に説明する。
図面は製紙パルプ廃棄物用の粉砕機の実施例を示しており、図1は側面図、図2は平面図である。機台1上に横型ドラム状の粉砕機本体2が配され、両端においてスタンド3により固定されている。粉砕機本体2の円筒胴4の上流側端部の上面に投入口5、下流側端部の下面に排出口6が設けられ、スクリュプレス等により脱水された脱水ケーキが投入口5に投入され、排出口6に搬送される過程でほぐし処理が行われる内部経路が形成されている。
【0013】
図3は一次ほぐし機構、二次ほぐし機構の側面図であり、粉砕機本体2内の投入口5の部位には一次ほぐし機構7が構成され、投入口5と排出口6との間の中間部位には二次ほぐし機構8が構設され、これらは同一の回転軸9により連結されている。
【0014】
一次ほぐし機構7においては、回転軸9の周囲にスクリュ羽根10が等ピッチで螺旋状に巻回され、その周縁部は円筒胴4の内面に近接して設けられ、周縁部には図4に示すように多数のほぐし刃11がスクリュ羽根10を放射状に切り込むことにより設けられている。
【0015】
ほぐし刃11は上流側及び下流側に傾斜舌片状に切り折りされ、図5(a)に示すように下流側に傾斜したほぐし刃11aと、図5(b)に示す上流側に傾斜したほぐし刃11bとが交互に形成されると共に、これらの傾斜ほぐし刃11a、10b相互の中間部分にそれぞれ図5(c)に示すような直立ほぐし刃11cが形成されている。
【0016】
二次ほぐし機構8においては、回転軸9は下流側へと次第に大径となるようにテーパ筒12に形成され、その周面に長片状の多数のほぐし羽根13が配設されている。これらのほぐし羽根13は、テーパ筒12の中心線に対して直交して突出され、かつほぐし羽根13の角度は円周方向に対し稍々傾斜して設けられている。そして、それぞれのほぐし羽根13の先端部は円筒胴4の内面に近接して配されている。従って、ほぐし羽根13の長さはテーパ筒12に沿って上流側ほど長くされている。なお、図3においてテーパ筒12上のほぐし羽根13の図示は一部を省略している。
【0017】
図6の展開図に示すように、概して回転軸9の下流側ほどほぐし羽根13の配列密度は高くされ、終段のほぐし羽根13はより急角度にされている。なお、この点は設計的事項であり、所要に応じて適宜に設定すればよい。
【0018】
このように、一次ほぐし機構7と二次ほぐし機構8は一体の回転軸9上に配され、回転軸9の両端部は機台1に設けられた各軸受14に軸支されており、機台1の適所に固定された駆動用モータ15により駆動されるようになっている。
【0019】
即ち、回転軸9の一端が外部に突出されてプーリ16が取り付けられ、駆動用モータ15の回転軸17に取り付けられたプーリ18との間にベルト19が掛け渡されて機械的に連繋されている。なお、機械的連繋手段はこのようなベルト結合に限るものではなく、チェーン結合、ギア結合等でもよい。また駆動用モータ15以外の他の駆動源としてもよい。なお、20は粉砕機本体2に設けられた保守点検用の窓孔閉蓋である。
【0020】
使用に際しては、駆動用モータ15により回転軸9を回転させて、多数のほぐし刃11を備えた一次ほぐし機構7、多数のほぐし羽根13を備えた二次ほぐし機構8を回転作動させる。
【0021】
この状態で、粉砕機本体2の投入口5に脱水ケーキの塊を投入すると、脱水ケーキは一次ほぐし機構7においてほぐし刃11により粗く一次ほぐしされる。この一次ほぐしにおいては、スクリュ羽根10の縁部に交互に形成された多数のほぐし刃11a〜11cによって、投入された脱水ケーキは削られるようにして一次ほぐしされ、スクリュ羽根10間に落ち込む。これらの脱水ケーキの破砕物、及び円筒胴4の内周に付着する破砕物はほぐし刃11a〜11cにより掻き落されて、スクリュ羽根10の回転により二次ほぐし機構8に押し出されるようにして搬送される。
【0022】
このようにして、粗く一次ほぐしされた破砕物は、続いて二次ほぐし機構8において回転する多数のほぐし羽根13により、遠心力を用いて細かく二次ほぐしされて排出口6側に搬送され、排出口6から外部へと排出される。
【0023】
この二次ほぐし機構8では、テーパ状の回転軸9により下流に進むにつれ円筒胴4内の粉砕物の経路が狭くなるため、その分だけ粉砕物の流速が早くなり、多数のほぐし羽根13による二次ほぐしが促進され、一次ほぐし機構7で粗く一次ほぐしされた破砕物は、更に細かく効率良く粉砕される。
【0024】
この場合においても、円筒胴4の内周に付着する粉砕物は、ほぐし羽根13により掻き落されて、二次ほぐし機構8の作動に支障をきたすことはない。
【0025】
また、スクリュプレスでは蒸気を吹き込んで脱水効率を高めることがあり、この場合に本脱水ケーキ粉砕機による粉砕時に水分が気化して、水分含有率が低下する利点もある。
【0026】
なお、テーパ筒12を設けることなく、ほぐし羽根13の密度を下流側に進むにつれて更に大きくすることにより、同様の粉砕効果は得られる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
また、この脱水ケーキ粉砕機は、実施例の製紙パルプ廃棄物用のみならず、各種廃棄物で得られる脱水ケーキにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例の側面図である。
【図2】平面図である。
【図3】一次、二次ほぐし機構の側面図である。
【図4】スクリュ羽根の正面図である。
【図5】ほぐし刃の断面図である。
【図6】ほぐし羽根の配置展開図である。
【符号の説明】
【0029】
1 機台
2 粉砕機本体
5 投入口
6 排出口
7 一次ほぐし機構
8 二次ほぐし機構
9 回転軸
10 スクリュ羽根
11 ほぐし刃
12 テーパ筒
13 ほぐし羽根
15 駆動用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側端部に投入口、下流側端部に排出口を設けた本体内の前記投入口側に、粗くほぐす一次ほぐし機構を設け、前記排出口側に細かくほぐす二次ほぐし機構を設けた脱水ケーキ粉砕機であって、前記本体内に回転軸を配置し、前記一次ほぐし機構は前記回転軸の周囲に送り機構のスクリュ羽根を螺旋状に巻回し、該スクリュ羽根の縁部に多数のほぐし刃を設け、前記二次ほぐし機構は前記回転軸の周囲に送り機構を兼ねた多数の長片状のほぐし羽根を設けたことを特徴とする脱水ケーキ粉砕機。
【請求項2】
前記多数のほぐし刃は前記上流側又は下流側に傾けて舌片状に切り倒して形成した請求項1に記載の脱水ケーキ粉砕機。
【請求項3】
前記二次ほぐし機構は、前記下流側へと次第に大径となる前記回転軸の周面に前記多数のほぐし羽根を前記回転軸と直交する方向に突設し、これらのほぐし羽根の羽面の向きを前記回転軸に対し螺旋状の向きに揃えた請求項1又は2に記載の脱水ケーキ粉砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−68574(P2006−68574A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251318(P2004−251318)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(391044351)富国工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】