説明

脱硫及び脱硫用新規吸着剤

【課題】分解ガソリン及びディーゼル燃料の流体流の脱硫に使用するのに適切な吸着剤組成物、及び当該吸着剤組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】分解ガソリン及びディーゼル燃料からの硫黄除去に好適な吸着剤組成物であって、本質的に:
(a)亜鉄酸亜鉛;
(b)ニッケル;及び
(c)無機バインダー;
から成り、ここで、該亜鉄酸亜鉛及びニッケルは、還元された原子価の状態であり、且つ、分解ガソリン又はディーゼルの油流が脱硫条件の下で該吸着剤組成物と接触する際に、それらからの硫黄除去をもたらす量で存在する、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、分解ガソリン及びディーゼル燃料の流体流からの硫黄の除去に関する。別の側面では、本発明は分解ガソリン及びディーゼル燃料の流体流の脱硫に使用するのに適切な吸着剤組成物に関する。本発明の更なる側面は、分解ガソリン及びディーゼル燃料からの硫黄本体の除去に使用される硫黄吸着剤を製造するためのプロセスに関する。
【0002】
「本質的に何々から成る」及び「本質的に何々から成っている」という句は、本明細書に具体的に記載されていない他の工程、元素、又は物質が、本発明の基本的で新規な特性に影響しない限り、そのような工程、元素、又は物質の存在を排除せず、更にこれらの句は、使用される元素及び物質に通常関与する不純物を排除しない。
【0003】
上記の用語及び句は、米国司法権外の地域での使用を意図している。米国司法権内では、上記の用語及び句は、米国法廷及び米国特許庁によって解釈されるように適用されるべきである。
【0004】
(背景技術)
より清浄な燃料の必要性により、ガソリン及びディーゼル燃料中の硫黄含有量を下げる努力が世界的に続けられている。燃料中の硫黄が自動車の触媒コンバーターの性能に悪影響を及ぼすため、ガソリン及びディーゼル油の硫黄を減少させることは、大気の質を改善する一手段と考えられている。自動車エンジンの排気ガス中に硫黄酸化物が存在すると、コンバーター内の貴金属触媒の機能を阻害し、且つ、不可逆的に被毒させる恐れがある。性能が低下し、又は被毒したコンバーターからの排出ガスには、相当の未燃焼物、メタン以外の炭化水素、窒素酸化物及び一酸化炭素が含まれる。このような排気ガスは、日光による触媒作用で地上近くでオゾン、より一般的にはスモッグと呼ばれる、を生成する。
【0005】
ガソリン中の硫黄の大半は熱的に処理されたガソリンからのものである。例えば、熱分解ガソリン、ビスブレーカーガソリン、コーカーガソリン及び接触分解ガソリン(以後、まとめて「分解ガソリン」と呼ぶ)のような熱的に処理されたガソリンには、ある程度オレフィン、芳香族化合物及び硫黄含有化合物が含まれている。
【0006】
例えば、自動車用ガソリン、レーシングカー用ガソリン、航空機用ガソリン及びボート用ガソリンのような大半のガソリンには、少なくともある程度の分解ガソリンがブレンドされて含まれているので、分解ガソリン中の硫黄を減少させることは、本来このようなガソリン中の硫黄レベルを下げることに役立つと考えられる。
【0007】
ガソリン中の硫黄について、硫黄レベルを下げるべきかどうかについて的を絞って世間で議論されたことはなかった。低硫黄ガソリンが自動車からの排出を減らし、大気の質を改善するという合意が得られるようになった。かくて、必要な低減レベル、低硫黄ガソリンが必要な地域及び実行の時間枠に、実際の議論の焦点が絞られている。
【0008】
自動車による大気汚染の影響に対する関心が存続しているので、自動車用燃料中の硫黄レベルを下げる努力が更に必要であることは明らかである。現在のガソリン製品には、約330ppmの硫黄が含まれるものの、米国環境保護局は、最近、ガソリン中の平均硫黄含有量を、ピーク値80ppm、平均30ppm未満とする規制を発足させた。2006年までに、米国内で販売されるガソリンの全てのブレンドが30ppmのレベルに適合することを要求する基準が施行されるであろう。
【0009】
低硫黄含有量の自動車用燃料を製造することを可能にすることの必要性が益々増大していることに鑑み、連邦命令に工業的に対応するため種々のプロセスが提案されている。
【0010】
ガソリンから硫黄を除去するために提案されているプロセスの一つに水素化脱硫と呼ばれるプロセスがある。ガソリンの水素化脱硫が硫黄含有化合物を除去することができる一方で、これは、ガソリン中に含まれる全てではないにしろ大半のオレフィンを飽和させてしまう結果となる。オレフィンのこのような飽和化は、オクタン価(リサーチ法及びモーター法オクタン価の両者)が低下するという大きな影響を与える。このようなオレフィンが飽和する1つの原因は、除去が最も困難な硫黄含有化合物に属するチオフェン系化合物(例えば、チオフェン、ベンゾチオフェン、アルキルチオフェン類、アルキルベンゾチオフェン類及びアルキルジベンゾチオフェン類)の除去に必要な水素化脱硫条件にある。更に、チオフェン系化合物の除去に必要な水素化脱硫条件は、芳香族化合物をも飽和させる可能性がある。
【0011】
分解ガソリンからの硫黄除去の必要性に加えて、ディーゼル燃料の硫黄含有量を低減する必要性も石油工業に課せられている。水素化脱硫によるディーゼル油からの硫黄の除去において、セタン価は改善されるが、水素の使用に大きなコストが掛かる。この水素は水素化脱硫及び芳香族化合物の水素化の両者に消費される。
【0012】
このように、ディーデル燃料の処理のための更に経済的なプロセスを提供するために、芳香族化合物の水素化を起こさずに脱硫を達成するプロセスが必要である。
【0013】
分解ガソリン及びディーゼル燃料の両者における硫黄レベルの低減に対して、好結果をもたらし経済的に実行可能なプロセスが提供されないために、分解ガソリン及びディーゼル燃料の両者の脱硫に対し、高レベルの硫黄除去を達成しながらオクタン価への影響が最小の、より優れたプロセスの必要性が尚残っていることは明白である。
【0014】
このように、分解ガソリン及びディーゼル燃料の流体流からの硫黄除去のための新規な吸着剤システムを提供することが望まれる。
【0015】
更に、このような流体流の脱硫に有用な新規の吸着剤を製造するためのプロセスを提供することが望まれる。
【0016】
更に再び、分解ガソリン及びディーゼル燃料から、その中のオレフィン及び芳香族化合物の飽和化を最小限に抑えながら、硫黄含有化合物を除去するプロセスを提供することが望まれる。
【0017】
加えて、脱硫された分解ガソリンの重量基準で硫黄の含有量が約100ppm未満であり、且つ脱硫前の分解ガソリンと本質的に同じ量のオレフィン及び芳香族化合物を含む脱硫分解ガソリンを提供することが望まれる。
【0018】
本発明の他の側面、対象及びいくつかの利点は、本発明の以下の説明及び付属の特許請求の範囲から明白になるであろう。
【0019】
(発明の概要)
本発明は、改善された亜鉄酸亜鉛吸着剤システムを提供する。このシステムはニッケル促進剤を亜鉄酸亜鉛吸着剤システムへ添加し、得られる亜鉄酸亜鉛ニッケル組成物を還元することにより、分解ガソリン又はディーゼル燃料の脱硫に対して活性が強化された新規な吸着剤システムが得られるという、本発明者の発見に基づいており、このことは、再利用でも新しい吸着剤システムと同じレベルの脱硫を達成する吸着剤組成物が得られることによって実証される。
【0020】
従って、本発明のある側面では、分解ガソリン又はディーゼル燃料の脱硫に好適な新規な吸着剤が提供され、この吸着剤は、本質的に、ニッケルを含浸した無機バインダーを含む還元された亜鉄酸亜鉛から成る。ここで、亜鉄酸亜鉛及びニッケルは還元された原子価を有し、且つ、還元された亜鉄酸亜鉛ニッケルは、分解ガソリン又はディーゼル燃料からの硫黄除去を可能にする量で存在する。
【0021】
本発明の別の側面に従えば、酸化亜鉛、酸化鉄、無機バインダー、酸、及び水そして所望により増孔剤を混合し、これらの湿潤混合物、練生地、ペースト又はスラリーを形成し、これらの湿潤混合物、練生地、ペースト又はスラリーを粒子化してこれらの顆粒、押出品、錠剤、ペレット又は微小球を形成し、得られた粒子を乾燥し、乾燥した粒子を亜鉄酸亜鉛を生成する条件の下で焼成し、得られた亜鉄酸亜鉛組成物にニッケルを含浸し、含浸した組成物を乾燥し、得られた乾燥粒子を焼成し、そしてその後、得られた焼成された亜鉄酸亜鉛ニッケルを含む製品を、水素のような適切な還元剤で還元して、分解ガソリン又はディーゼル燃料流からの硫黄除去を可能にするのに十分な量の還元された原子価の亜鉄酸亜鉛及びニッケルを含有する吸着剤組成物を製造することを含む、新規な吸着剤組成物の調製プロセスが提供される。
【0022】
本発明の更なる側面に従えば、脱硫ゾーンにおいて、分解ガソリン又はディーゼル燃料を還元された固形亜鉄酸亜鉛ニッケル吸着剤で脱硫し、脱硫された分解ガソリン又はディーゼル燃料を硫化した吸着剤から分離し、硫化した固形亜鉄酸亜鉛ニッケル吸着剤の少なくとも一部を再生し、脱硫した再生亜鉄酸亜鉛ニッケル吸着剤を生成し、脱硫した再生吸着剤の少なくとも一部を活性化し、還元された亜鉄酸亜鉛ニッケル吸着剤を生成し、そしてその後、得られた還元された原子価の亜鉄酸亜鉛ニッケルを含む吸着剤の少なくとも一部を脱硫ゾーンに戻すことを含む、分解ガソリン又はディーゼル燃料の脱硫プロセスが提供される。
【0023】
(発明の詳細な説明)
本明細書で使用する「ガソリン」という用語は、沸点が約37.7℃(約100゜F)から約204.4℃(400゜F)の炭化水素の混合物、又はそのいずれの留分をも意味することを意図している。このような炭化水素は、例えば、ナフサ、直留ナフサ、コーカーナフサ、接触分解ガソリン、ビスブレーカーナフサ、アルキレート、イソメレート及びリフォーメートのような精油所内の各種炭化水素流を含む。
【0024】
本明細書で使用する「分解ガソリン」という用語は、沸点が約37.7℃(約100゜F)から約204.4℃(400゜F)の炭化水素、又は、大きい炭化水素分子を小さい炭化水素分子に分解する熱または接触プロセスのいずれかからの製品である、上記炭化水素のいずれの留分をも意味することを意図している。熱プロセスの例として、コーキング、熱分解及びビスブレーキングが挙げられる。流動接触分解及び重質油分解は接触分解の例である。場合によっては、分解ガソリンが本発明を実施する際の原料として使用される場合、脱硫に先立って、分留及び/又は水素化処理してよい。
【0025】
本明細書で使用する「ディーゼル燃料」という用語は、沸点が149℃(約300゜F)から約399℃(750゜F)の炭化水素の混合物から成る流体、又はそのいずれの留分をも意味することを意図している。このような炭化水素流には、軽サイクル油、灯油、ジェット燃料、直留ディーゼル油及び水素化ディーゼル油がある。
【0026】
本明細書で使用する「硫黄」という用語は、分解ガソリン中に通常存在するメルカプタン類、又はチオフェン系化合物、とりわけ、本発明に従って処理するべく意図している種類のディーゼル燃料中に通常存在するチオフェン、ベンゾチオフェン、アルキルチオフェン類、アルキルベンゾチオフェン類及びアルキルジベンゾチオフェン類、並びにそれらの高分子量体のような有機硫黄化合物を意味することを意図している。
【0027】
本明細書で使用する「気体状」という用語は、原料分解ガソリン又はディーゼル燃料が主に蒸気相である状態を意味することを意図している。
【0028】
本明細書で使用する「ニッケル」という用語は、金属ニッケル、酸化ニッケル又はニッケルの前駆体を意味することを意図している。
【0029】
本明細書で使用する「還元された亜鉄酸亜鉛ニッケル」という用語は、酸化亜鉛及び酸化鉄を焼成しニッケルを含浸して製造される亜鉄酸亜鉛であって、亜鉄酸亜鉛及びニッケル化合物の金属の原子価が、それらの金属が通常存在する状態より低い状態まで還元されるように、適切な還元剤、好ましくは水素による還元を受けているものを意味することを意図している。
【0030】
含浸によってニッケル促進剤を亜鉄酸亜鉛に添加するのが当面好ましいが、促進剤の金属を酸化亜鉛−鉄混合物に組み込み、その混合物を焼成することで亜鉄酸亜鉛−ニッケル組成物を生成させることも可能である。
【0031】
本発明は、改善された亜鉄酸亜鉛吸着剤システムを提供する。このシステムは、本質的に亜鉄酸亜鉛、ニッケル及びアルミナのような無機バインダーから成る亜鉄酸亜鉛吸着剤システムにニッケル促進剤を添加し、得られる亜鉄酸亜鉛ニッケルを還元することにより、分解ガソリン又はディーゼル燃料の流体流から、これらの流体流中のオレフィン含有量に重大な悪影響を及ぼすことなしに、即ち、処理される流体流のオクタン価を著しく低下させることなしに、チオフェン系硫黄化合物を除去する活性が強化された、新規な吸着剤システムが得られるという本発明者の発見に基づいており、このことは、再利用でも新しい亜鉄酸亜鉛吸着剤システムと同じような、望ましい低い硫黄レベルを達成する吸着剤組成物が得られることによって実証される。吸着剤システムのこのような高い性能の達成によって、再生が必要になるまでの、吸着剤システムの長い使用寿命が達成される。
【0032】
本発明の当面好ましい実施態様では、吸着剤組成物は約5から約90重量%の範囲の亜鉄酸亜鉛含有量を有する。
【0033】
吸着剤組成物の調製に使用される酸化亜鉛は、酸化亜鉛の形態か、又は本明細書に記載される調製条件の下で酸化亜鉛に転換し得る1種以上の亜鉛化合物の形態をとることができる。このような亜鉛化合物の例には、硫化亜鉛、硫酸亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛及び硝酸亜鉛が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、酸化亜鉛の形態は粉末酸化亜鉛である。
【0034】
吸着剤組成物の調製に使用される酸化鉄は、酸化鉄の形態か、又は本明細書に記載される調製条件の下で酸化鉄に転換し得る1種以上の鉄化合物の形態をとることができる。このような鉄化合物の例には、硫化鉄、硫酸鉄、水酸化鉄、炭酸鉄、酢酸鉄及び硝酸鉄が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、酸化鉄の形態は粉末酸化鉄である。
【0035】
酸化亜鉛と酸化鉄の混合物の生成に加えて、本発明の新規な吸着剤システムには、得られた亜鉄酸亜鉛粒子を結合して粘着性のある形態にする働きがある無機バインダーが存在する。
【0036】
バインダー成分は、セメントのような性質又は粘土のような性質を有し、粒子組成物を結合する働きがあるいずれの適切な化合物であってもよい。このようなバインダー成分の好適な例には、シリカ、アルミナ、例えば石膏プラスター、通常の石灰、水硬性石灰、天然セメント、ポルトランドセメント及び高アルミナセメントのようなセメント類、及び、例えばアタプルガイト、ベントナイト、ハロイサイト、ヘクトライト、カオリナイト、モンモリロナイト、ピロフィライト、セピオライト、タルク及びバーミキュライトのような粘土類が含まれるが、これらに限定されない。使用されるバインダーの量は、成分の全重量を基準にして約0.1から約30重量%の範囲にある。しかし、約1から約20重量%の範囲の量が好ましい。
【0037】
本発明の当面好ましい実施態様では、使用されるバインダーはアルミナである。水和アルミナ、火炎加水分解アルミナ、コロイドアルミナ溶液を含む、市場で入手可能な適切なアルミナ又はアルミノ珪酸塩類、及び、一般にアルミナ水和物の脱水によって製造されるアルミナ化合物のいずれも、本発明の吸着剤システムの調製に有用である。特に好ましいアルミナの一つに、テキサス州ヒューストンのCondea Vista社から入手可能なCatapalアルミナがある。
【0038】
吸着剤システムの形成において、酸化亜鉛、酸化鉄及びバインダーの初期混合物に増孔剤を添加することも当面好ましい。このような物質は、通常、粒子状の吸着剤システムの焼成の間に焼失して、得られる亜鉄酸亜鉛システムに細孔をつくることになる。このような増孔剤の例には、セルロース、セルロースゲル、微結晶セルロース、ステアリン酸亜鉛、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム及びグラファイトがある。本発明の当面好ましい一つの実施態様では、ペンシルバニア州、フィラデルフィアのFMC社から入手可能な微結晶セルロースであるLattice(R)NT−100が使用される。
【0039】
酸化亜鉛、酸化鉄及び無機バインダーの初期混合物は、約2から約70重量%の酸化亜鉛及び約3から約70重量%の酸化鉄から形成される。
【0040】
吸着剤システムの望ましい亜鉄酸亜鉛成分の生成では、一般に酸化亜鉛及び酸化鉄が、亜鉛の鉄に対する比が約0.5:2から約1.5:2の範囲であるような量で使用される。約1:2の比が当面好ましい。
【0041】
アルミナのようなバインダーは、最終の吸着剤組成物中で亜鉄酸亜鉛のバインダーとして機能するような量で使用される。一般にこのようなバインダーは、吸着剤組成物の全重量を基準にして約0.1から約30重量%の範囲の量で使用される。
【0042】
増孔化合物は、一般に、最終の焼成された吸着剤製品における望ましい空隙率を達成する量で、酸化亜鉛と酸化鉄の初期混合物に添加される。一般に、酸化亜鉛、酸化鉄及びバインダーの初期混合物の全重量を基準にして約0.1から約15重量%の範囲の量が使用される。
【0043】
吸着剤組成物の製造においては、主成分の酸化亜鉛、酸化鉄及びバインダー、好ましくはアルミナは、各成分の緊密な混合をもたらすようないずれの好適な方法によっても適切な比率で混ぜ合わされ、実質的に均一な混合物が提供される。
【0044】
吸着剤成分を混合するためのいずれの適切な手段も、材料の望ましい分散を達成するのに使用できる。このような手段には、とりわけタンブラー、定置型容器又はトラフ(とい、troughs)、回分式又は連続式のミューラーミキサー、衝撃型ミキサー等が含まれる。酸化鉄、アルミナ及び酸化亜鉛各成分の混合には、ミューラーミキサーを使用することが当面好ましい。
【0045】
吸着剤成分が適切に混合されて成形可能な混合物が得られると、得られた混合物は、湿潤混合物、練生地、ペースト又はスラリーの形態をとり得る。得られた混合物が湿潤混合物の形態である場合は、その湿潤混合物は緻密化され、その後、緻密化した混合物を乾燥及び焼成に続いて顆粒化することによって粒子とすることができる。酸化亜鉛、酸化鉄及びアルミナの混合物が、練生地状又はペースト状である混合物の形態で得られる場合は、混合物は顆粒、押出品、錠剤、球、ペレット又は微小球を形成するように成型することができる。1/32インチから1/2インチの直径及びいずれかの適切な長さを有する円筒状の押出品が当面好ましい。得られた粒子は、その後乾燥され、次いで焼成される。混合物がスラリーの形態の場合は、その粒子化はスラリーを噴霧乾燥することによって達成され、約20から約500ミクロンの大きさを有する微小球が生成する。このような微小球は次いで乾燥及び焼成される。粒子化した混合物の乾燥及び焼成後に亜鉄酸亜鉛を含む粒子が得られる。
【0046】
焼成後、得られた本質的に亜鉄酸亜鉛及びバインダーから成る粒子は、含浸された粒子中に約1から約50重量%の範囲の含有量のニッケルが得られるのに十分な量のニッケル又はニッケル化合物で含浸される。
【0047】
ニッケル含浸後、得られた組成物は一般に約37.7℃から約260℃(約100゜Fから約500゜F)の範囲の温度で乾燥され、次いで一般に約315.5℃から約1093℃(約600゜Fから約2000゜F)の範囲の温度で焼成される。
【0048】
亜鉄酸亜鉛バインダー複合物の含浸に適切なニッケル化合物は、ニッケル、酸化ニッケル又は酸化ニッケルの前駆体の群から選ばれる。
【0049】
焼成後、亜鉄酸亜鉛、ニッケル及びバインダーから本質的に成る得られた粒子は、適切な還元剤、好ましくは水素、によって還元され、還元された原子価を有する亜鉄酸亜鉛ニッケル組成物を生成する。そのような亜鉄酸亜鉛及びニッケルの還元された金属は、分解ガソリン又はディーゼル燃料の流体流からの硫黄除去に対して吸着剤の長期使用を可能にする量で存在する。
【0050】
本発明の還元された固形亜鉄酸亜鉛ニッケル吸着剤は、チオフェン系化合物のような有機硫黄化合物と反応、及び/又は、化学吸着する能力を有する組成物である。吸着剤は、分解ガソリンからジオレフィン及び他のガム形成化合物を除去することも好ましい。
【0051】
本発明の還元された固形吸着剤は、還元された亜鉄酸亜鉛ニッケル及び無機バインダーから本質的に成る。本発明の還元された固形吸着剤システム中の還元された亜鉄酸亜鉛及びニッケルの量は、適切な脱硫条件の下での接触の際、分解ガソリン又はディーゼル燃料流からチオフェン系硫黄化合物の除去を可能にすると考えられる量である。亜鉄酸亜鉛のこのような量は、一般に吸着剤組成物の全重量の約5から約90重量%の範囲であり、ニッケルの量は、一般に約15から約30重量%の範囲である。
【0052】
吸着剤組成物は、酸化鉄と酸化亜鉛の混合物の焼成によって亜鉄酸亜鉛を調製する際に所望する亜鉄酸亜鉛の形態に転換しなかった、鉄及び亜鉛酸化物の個々の金属の分離したわずかの固体相を含んでよい。亜鉄酸亜鉛中で化学的に結合しなかったこのような金属のこのようなわずかの量が、本発明の吸着剤組成物の吸着能力及び性能に重大な影響を及ぼすとは考えられない。
【0053】
上記から認識できるように、本発明の脱硫プロセスで有用な吸着剤組成物は:
(a)酸化亜鉛、酸化鉄及び無機バインダーを混合し、湿潤混合物、練生地、ペースト又はスラリーのうちの一つの形態の混合物を生成し;
(b)得られた混合物を粒子化して、顆粒、押出品、錠剤、ペレット、球又は微小球の内の一つの形状の粒子を形成し;
(c)得られた粒子を乾燥し;
(d)乾燥した粒子を焼成し;
(e)得られた焼成粒子にニッケル、酸化ニッケル又はニッケルの前駆体を含浸し;
(f)含浸した粒子を乾燥し;
(g)得られた乾燥粒子を焼成し;そして
(h)工程(g)の焼成された亜鉄酸亜鉛−ニッケル粒子を適切な還元剤で還元して、実質的に還元された原子価の鉄及びニッケル含有量を有する粒子組成物を生成し、ここで、還元された原子価の鉄及びニッケルが、分解ガソリン又はディーゼル燃料の流体流と、得られた還元された粒子状吸着剤とが接触する際に、それらからの硫黄除去を可能にするのに十分な量で存在する;
ことを含むプロセスによって調製することができる。
【0054】
分解ガソリン又はディーゼル燃料を脱硫するための新規な吸着剤を使用して、脱硫された分解ガソリン又はディーゼル燃料を提供する本プロセスは:
(a)分解ガソリン又はディーゼル燃料を脱硫ゾーンにおいて、還元された亜鉄酸亜鉛ニッケルを含有する固形吸着剤を用いて脱硫し;
(b)脱硫された分解ガソリン又は脱硫されたディーゼル燃料を、生じた硫化した固形吸着剤から分離し;
(c)硫化した固形吸着剤の少なくとも一部を再生して、再生され脱硫された固形吸着剤を生成し;
(d)次いで、再生され脱硫された固形吸着剤の少なくとも一部を還元し、還元された亜鉄酸亜鉛ニッケルを含有する固形吸着剤を生成し;そして
(e)還元された亜鉄酸亜鉛ニッケルを含有する、再生された固形吸着剤の少なくとも一部を脱硫ゾーンに戻す;
ことを含む。
【0055】
本発明の脱硫工程(a)は、全圧、温度、重量・時間当たりの空間速度及び水素流量を含む一組の条件の下で行われる。これらの条件は、還元された亜鉄酸亜鉛ニッケルを含有する固形吸着剤が分解ガソリン又はディーゼル燃料を脱硫し、脱硫された分解ガソリン又は脱硫されたディーゼル燃料、及び硫化した吸着剤を生成することができるように設定される。
【0056】
本発明のプロセスの脱硫工程の実施に当たっては、原料の分解ガソリン又はディーゼル燃料は蒸気相であることが好ましい。しかし、本発明の実施に当たっては、原料が全量蒸気相又は気相であることは、好ましくはあるが必須ではない。
【0057】
全圧は、約103kPaから約10.33MPa(約15psiaから約1500psia)の範囲をとることができる。しかし、全圧は約344kPaから約3445kPa(約50psiaから約500psia)の範囲であることが当面好ましい。
【0058】
一般に、温度は分解ガソリン又はディーゼル燃料を本質的に蒸気相に保つのに十分な値である必要がある。このような温度は37.7℃から約537.7℃(約100゜Fから約1000゜F)の範囲をとることができるが、分解ガソリンを取り扱う時は、204.4℃から約426.6℃(約400゜Fから約800゜F)の範囲の温度が、原料がディーゼル燃料である時は、260℃から約483℃(約500゜Fから約900゜F)の範囲の温度が当面好ましい。
【0059】
重量・時間当たりの空間速度(WHSV)は、脱硫ゾーンにおける吸着剤のポンド当たり、時間当たりの原料炭化水素流量のポンド数として定義される。本発明の実施に当たっては、このようなWHSVは、約0.5/hrから約50/hrである必要があり、好ましくは約1/hrから約20/hrである。
【0060】
脱硫工程の実施に当たっては、固形亜鉄酸亜鉛ニッケル吸着剤で処理される流体中のオレフィン及び芳香族化合物の、起こり得るいずれの化学吸着及び反応をも妨げる薬剤を使用することが、当面好ましい。このような薬剤としては、水素であることが当面好ましい。
【0061】
脱硫ゾーンにおける水素の流量は、一般に水素の原料炭化水素に対するモル比が約0.1から約10の範囲、好ましくは約0.2から約3.0の範囲になる流量である。
【0062】
脱硫ゾーンは、原料分解ガソリン又はディーゼル燃料の脱硫が起こるいかなるゾーンであってもよい。適切なゾーンの例は、固定床反応器、移動床反応器、流動床反応器及び移動式反応器である。当面、流動床反応器又は固定床反応器が好ましい。
【0063】
蒸気相化した流体の脱硫に際して、所望によりメタン、二酸化炭素、煙道ガス及び窒素のような希釈ガスが使用できる。このように、分解ガソリン又はディーゼル燃料の所望の脱硫を達成するのに、高い純度の水素を使用することが本発明のプロセスの実施にとって必須ではない。
【0064】
流動システムを使用する場合、約20から約1000マイクロメーターの範囲の粒子径を有する固形吸着剤を使用することが当面好ましい。好ましくは、このような吸着剤は約40から約500マイクロメーターの粒子径を有する。本発明の脱硫プロセスの実施に固定床システムを使用する場合は、吸着剤は約1/32インチから約1/2インチの範囲の粒子径を有する必要がある。
【0065】
更に、固形吸着剤のグラム当たり約1平方メートルからグラム当たり約1000平方メートルの表面積を有する亜鉄酸亜鉛ニッケル含有固形吸着剤を使用することが、当面好ましい。
【0066】
気体状又は蒸気相化した、脱硫された流体と硫化した吸着剤の分離は、気体から固体を分離することができる、当業界で公知のいずれの手段でも達成できる。このような手段の例は、サイクロン装置、沈降室又は固体と気体を分離する他の衝突板型装置である。脱硫された気体状の分解ガソリン又は脱硫されたディーゼル燃料は、次いで回収され、好ましくは液化される。
【0067】
気体状の分解ガソリン又は気体状のディーゼル燃料は、その一部としてオレフィン、芳香族化合物及び硫黄含有化合物、並びにパラフィン及びナフテンを含む組成物である。
【0068】
気体状分解ガソリン中のオレフィンの量は、一般に気体状分解ガソリンの重量を基準にして約10から35重量%の範囲にある。ディーゼル燃料については、オレフィンは本質的に含まれていない。
【0069】
気体状分解ガソリン中の芳香族化合物の量は、一般に気体状分解ガソリンの重量を基準にして約20から約40重量%の範囲にある。気体状ディーゼル燃料中の芳香族化合物の量は、一般に約10から約90重量%の範囲にある。
【0070】
分解ガソリン又はディーゼル燃料中の硫黄の量は、このような流体が本発明の吸着剤システムを用いて処理される前で、気体状分解ガソリンの重量に対し硫黄分で約100ppmから約10,000ppmの範囲であり、ディーゼル燃料の場合は約100ppmから約50,000ppmの範囲である。
【0071】
本発明の脱硫プロセスによる処理後は、分解ガソリン又はディーゼル燃料中の硫黄の量は100ppm未満である。
【0072】
本発明のプロセスの実施に当たっては、所望により、硫化した吸着剤からいずれかの炭化水素の一部、好ましくは全部を除去するのに役立つと考えられる除去装置を、硫化した吸着剤の再生のための再生装置の前に、又は再生された吸着剤の吸着剤活性化ゾーンへの導入に先立って、システムから酸素及び二酸化硫黄を除去するために水素還元ゾーンの前に挿入することができる。除去操作には全圧、温度及び除去剤の分圧を含む一組の条件が含まれる。
【0073】
除去装置が使用される場合、その全圧は約172kPaから約3445kPa(約25psiaから約500psia)の範囲にあることが好ましい。
【0074】
このような除去装置の温度は、約37.7℃から約538℃(約100゜Fから約1000゜F)の範囲であり得る。
【0075】
除去剤は硫化した固形吸着剤から炭化水素を除去するのに役立つ組成物である。当面は、好ましい除去剤は窒素である。
【0076】
吸着剤再生ゾーンでは、硫化した吸着剤の少なくとも一部が脱硫されるような一組の条件が使用される。
【0077】
再生ゾーンの全圧は、一般に約68.9kPaから約10.33MPa(約10から約1500psia)の範囲である。当面は、全圧は約172kPaから約3445kPa(約25psiaから約500psia)の範囲にあることが好ましい。
【0078】
硫黄除去剤の分圧は、一般に全圧の約1%から約25%の範囲である。
【0079】
硫黄除去剤は、二酸化硫黄のような気体状の硫黄・酸素含有化合物を発生させ、且つ、存在し得るいずれの残留炭化水素付着物をも焼却するのに役立つ組成物である。現在のところ、空気のような酸素含有ガスが好ましい硫黄除去剤である。
【0080】
再生ゾーンの温度は、一般に約37.7℃から約815℃(約100゜Fから約1500゜F)であり、当面好ましくは、約427℃から約649℃(約800゜Fから約1200゜F)の範囲である。
【0081】
再生ゾーンは、硫化した吸着剤の脱硫又は再生を行なうことができるいずれの容器であってもよい。
【0082】
脱硫された吸着剤は、次いで活性化ゾーンで還元剤を用いて還元され、吸着剤組成物の亜鉄酸亜鉛ニッケル含有量の少なくとも一部が還元されて、分解ガソリン又はディーゼル燃料の流れからの硫黄成分除去を可能にする量の、還元された金属を有する還元された固形吸着剤を生成する。
【0083】
一般に、本発明のプロセスを実施する際、脱硫された吸着剤の還元は37.7℃から約815℃(約100゜Fから約1500゜F)の範囲の温度、及び103kPaから約10.33MPa(約15から1500psia)の範囲の圧力で行われる。このような還元は、吸着剤システム中での鉄及びニッケルの還元の所望の水準を達成するのに十分な時間をかけて行われる。このような還元は、一般に約0.01から約20時間で達成することができる。
【0084】
再生された粒子状吸着剤の活性化の後、得られた活性化された(還元された)吸着剤の少なくとも一部を脱硫装置に戻すことができる。
【0085】
本発明のプロセスを固定床システムで行なう場合は、脱硫、再生、除去及び活性化の工程が、単一のゾーン又は容器で完遂される。
【0086】
本発明の実施により得られる脱硫された分解ガソリンは、市場での消費に好適なガソリン製品を供給するため、ブレンドガソリンの配合に使用することができる。
【0087】
本発明の実施により得られる脱硫されたディーゼル燃料は、同様に低硫黄燃料が要求される市場での消費に使用することができる。
【0088】
(実施例)
以下の実施例は、本発明を例示し、且つ、通常の技術を有する当業者に本発明を利用することを教示することを意図している。いずれにせよ、これらの実施例が本発明を限定することは意図していない。
【0089】
実施例I
70グラムの酸化亜鉛、142.5グラムの酸化鉄(ペンシルバニア州、ピッツバーグのMiles社製Bayferrox 130M Pigment)、37.5グラムの無機バインダー(Catapal D−水和アルミナ)及び10グラムの結晶性ミクロセルロースの増孔剤(Lattice(R)NT100)を乾燥状態で混合して、固形亜鉄酸亜鉛吸着剤を製造した。乾燥粉末を10分間混合した後、100グラムの蒸留水と6.25グラムの酢酸から成る溶液をその混合物に添加した。シグマ(Sigma)ミキサー中で混合後、次いで得られたペーストをボーノー(Bonnot)押出機によって、1/8インチ径の銅製押出ダイを使用して押出成型した。得られた押出品をオーブン内で95℃で、約3時間乾燥し、次いで815℃で1時間焼成した。増孔剤は焼成工程中に完全に酸化されて、気体状生成物(CO2、H2O)となった。
【0090】
実施例II
実施例Iで調製された粒子状固形亜鉄酸亜鉛吸着剤について、以下のようにその脱硫能力を試験した。
【0091】
1インチの石英製反応管に、12から20メッシュに粉砕した実施例Iの吸着剤10グラムを充填した。この固形の亜鉄酸亜鉛吸着剤を反応器の中央に置き、300cc/minの流量で流れる水素を用いて、685゜Fのベッド温度で1時間かけて還元した。
【0092】
吸着剤の還元後、気体状分解ガソリンの全重量を基準にして硫黄分で約345ppmの硫黄含有化合物を含み、且つ、気体状分解ガソリン中の硫黄含有化合物の重量を基準にして約95重量%のチオフェン系化合物を含む分解ガソリンを、反応器内に上方向に流した。分解ガソリンの流量は13.4ml/hrであった。還元された亜鉄酸亜鉛吸着剤による分解ガソリンの処理の間、水素の流量は300cc/minを維持した。
【0093】
この操作により、硫化した吸着剤及び脱硫された気体状分解ガソリンが生成した。5時間の間、1時間毎に一連の試料を採取し、硫黄含有量を分析した。以下の結果が得られた。
【0094】
【表1】

【0095】
上記のデータは、還元された亜鉄酸亜鉛吸着剤システムを使用して、硫黄含有量が大きく減少したことを示している。
【0096】
実施例III
4容量%の酸素を含む空気と窒素の混合流(流量:300cc/min)を用いてベッド温度896゜Fで2.5時間かけて、使用済み吸着剤を初めて再生することによって実施例IIの吸着剤システムのリサイクルを行なった。反応器への空気を停止後、吸着剤を窒素でパージし、次いで水素を300cc/minの流量、ベッド温度700゜Fで1時間導入した。
【0097】
吸着剤を還元後、分解ガソリンを13.4ml/hrの流量で、300cc/minの流量の水素と共に反応器に導入した。
【0098】
4時間の間、1時間毎に一連の試料を採取し、硫黄含有量を分析した。
【0099】
以下の結果が得られた。
【0100】
【表2】

【0101】
上記のデータは、亜鉄酸亜鉛吸着剤が再生可能であり、そして再生後でさえ、尚、分解ガソリンからの硫黄除去に効果的であることを実証している。
【0102】
実施例IV
実施例Iで製造した50グラムの焼成された亜鉄酸亜鉛バインダー組成物に、24.8グラムの硝酸ニッケルNi(NO32・6H2O及び1mlの蒸留水の溶液を含浸し、150℃で1時間乾燥し、次いで635℃で1時間焼成して、計算上10%のニッケル含有量を有する焼成された亜鉄酸亜鉛ニッケル組成物を得た。
【0103】
次いで、このように含浸された亜鉄酸亜鉛ニッケル化合物に、12.2グラムの硝酸ニッケルNi(NO32・6H2O及び1mlの蒸留水の第二溶液を含浸し、150℃で1時間乾燥し、次いで650℃で1時間焼成して、15重量%のニッケル含有量を有する亜鉄酸亜鉛ニッケル吸着剤組成物を得た。
【0104】
実施例V
実施例IVで調製した粒子状固形亜鉄酸亜鉛ニッケル吸着剤について、以下のようにその脱硫能力の試験を行った。
【0105】
1インチの石英製反応管に、実施例IVの吸着剤10グラムを充填した。この固形の亜鉄酸亜鉛ニッケルバインダー吸着剤を反応器の中央に置き、300cc/minの流量で流れる水素を用いて、685゜Fのベッド温度で1時間かけて還元した。
【0106】
吸着剤の還元後、気体状分解ガソリンの全重量を基準にして硫黄分約345ppmの硫黄含有化合物を含み、且つ、気体状分解ガソリン中の硫黄含有化合物の重量を基準にして約95重量%のチオフェン系化合物を含む分解ガソリンを、反応器内に上方向に流した。分解ガソリンの流量は13.4ml/hrであった。還元された亜鉄酸亜鉛吸着剤による分解ガソリンの処理の間、水素の流量を300cc/minに維持した。この操作により、硫化した吸着剤及び脱硫された気体状分解ガソリンが生成した。5時間の間、1時間毎に一連の試料を採取し、硫黄含有量を分析した。以下の結果が得られた。
【0107】
【表3】

【0108】
上記のデータは、還元された亜鉄酸亜鉛ニッケル吸着剤システムを使用することにより、硫黄含有量が有意に減少することを示している。
【0109】
実施例VI
流量が300cc/minである、4容量%の酸素を含む空気と窒素の混合流を用いて、ベッド温度896゜Fで2.5時間かけて、使用済み吸着剤を初めて再生することによって、実施例Vの吸着剤システムのリサイクルを行なった。反応器への空気を停止後、吸着剤を窒素でパージし、次いで水素を300cc/minの流量、ベッド温度700゜Fで1時間導入した。
【0110】
吸着剤を還元後、分解ガソリンを13.4ml/hrの流量で、300cc/minの流量の水素と共に反応器に導入した。
【0111】
4時間の間、1時間毎に一連の試料を採取し、硫黄含有量を分析した。
【0112】
以下の結果が得られた。
【0113】
【表4】

【0114】
上記のデータは、本発明の吸着剤が硫黄の除去に優れているだけでなく、再生可能であり、再生後も持続して分解ガソリンからの効果的な硫黄除去を提供することを実証している。
【0115】
本明細に開示された特定の実施例は、主として例示用と解釈すべきものである。記載されたこと以外の種々の変更を、当業者は疑いなく思い付くと考えられる。そしてこのような変更は、それらが付属の特許請求の範囲の精神及び範囲内にある限り、本発明の一部を形成していると理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解ガソリン及びディーゼル燃料からの硫黄除去に好適な吸着剤組成物であって、本質的に:
(a)亜鉄酸亜鉛;
(b)ニッケル;及び
(c)無機バインダー;
から成り、ここで、該亜鉄酸亜鉛及びニッケルは、還元された原子価の状態であり、且つ、分解ガソリン又はディーゼルの油流が脱硫条件の下で該吸着剤組成物と接触する際に、それらからの硫黄除去をもたらす量で存在する、組成物。
【請求項2】
該亜鉄酸亜鉛が約5から約90重量%の範囲の量で存在し、そして該ニッケルが約1から約50重量%の範囲の量で存在する、請求項1記載の吸着剤組成物。
【請求項3】
該吸着剤組成物が、顆粒、押出品、錠剤、球又は微小球のうちの1つの形状を有する粒子である、請求項1記載の吸着剤組成物。
【請求項4】
該無機バインダーが、アルミナ、シリカ、セメント、高アルミナセメント及び粘土から成る群から選ばれる、請求項1記載の吸着剤組成物。
【請求項5】
分解ガソリン又はディーゼル燃料の油流からの硫黄除去に適切な吸着剤組成物を製造するプロセスであって:
(a)酸化亜鉛、酸化鉄及び無機バインダーを混合して、それらの混合物を生成し;
(b)得られた混合物を粒子化して、その粒子を生成し;
(c)工程(b)の粒子を乾燥し;
(d)工程(c)の乾燥粒子を焼成し;
(e)得られた工程(d)の焼成粒子にニッケル、酸化ニッケル又は酸化ニッケルの前駆体を含浸し;
(f)工程(e)の含浸粒子を乾燥し;
(g)工程(f)の乾燥粒子を焼成し;そしてその後
(h)得られた工程(g)の粒子を適切な条件の下で適切な還元剤で還元し、還元された亜鉄酸亜鉛ニッケルを含む組成物が、分解ガソリン又はディーゼル燃料の油流が脱硫条件の下で組成物に接触する際に、該油流からの硫黄除去をもたらすような、還元された亜鉄酸亜鉛ニッケルの含有量を有する粒子組成物を製造する;
ことを含むプロセス。
【請求項6】
工程(a)の混合物の中に更に増孔剤が存在する、請求項5記載のプロセス。
【請求項7】
該混合物が、湿潤混合物、練生地、ペースト又はスラリーのうちの1つの形態を有する、請求項5記載のプロセス。
【請求項8】
該粒子が、顆粒、押出品、錠剤、球又は微小球のうちの1つの形状を有する粒子である、請求項5記載のプロセス。
【請求項9】
該酸化亜鉛が約2から約70重量%の範囲の量で存在し、該酸化鉄が約3から約70重量%の範囲の量で存在する、請求項5記載のプロセス。
【請求項10】
工程(b)及び工程(e)の粒子が、約37.7℃から約260℃(約100゜Fから約500゜F)の範囲の温度で乾燥される、請求項5記載のプロセス。
【請求項11】
工程(c)及び工程(f)の乾燥粒子が、約315℃から約1093℃(約600゜Fから約2000゜F)の範囲の温度で焼成される、請求項5記載のプロセス。
【請求項12】
工程(g)の該焼成粒子を、適切な条件の下で還元剤により還元ゾーンで還元してその中の得られる亜鉄酸亜鉛及びニッケルの還元をもたらし、得られる吸着剤組成物が、それを用いて脱硫条件の下で分解ガソリン又はディーゼル燃料を処理する際、それらからの硫黄除去をもたらすような量の、還元された亜鉄酸亜鉛及びニッケルを供給する、請求項5記載のプロセス。
【請求項13】
該還元された亜鉄酸亜鉛が、吸着剤組成物の全重量を基準にして約5から約90重量%の範囲の量で存在し、該還元されたニッケルが、吸着剤組成物の全重量を基準にして約1から約50重量%の範囲の量で存在する、請求項5記載のプロセス。
【請求項14】
亜鉄酸亜鉛ニッケルの還元が、約37.7℃から約815℃(約100゜Fから約1500゜F)の範囲の温度、及び約103kPaから約10.33MPa(約15psiaから約1500psia)の範囲の圧力で、吸着剤組成物の所望する還元された亜鉄酸亜鉛ニッケル成分の生成を可能にするのに十分な時間をかけて行なわれる、請求項5記載のプロセス。
【請求項15】
請求項5記載のプロセスの吸着剤製品。
【請求項16】
分解ガソリン又はディーゼル燃料の油流から硫黄を除去するためのプロセスであって:
(a)該油流を、本質的に亜鉄酸亜鉛、ニッケル及び無機バインダーから成る吸着剤組成物に接触させ、ここで、該亜鉄酸亜鉛及びニッケルは還元された状態であって、且つ、分解ガソリン又はディーゼル燃料の脱硫された油流及び硫化した吸着剤が生成するような条件の下で、脱硫ゾーンにおいて油流からの硫黄除去をもたらすような量で存在し;
(b)得られた、脱硫された流体流を該硫化した吸着剤から分離し;
(c)分離された硫化した吸着剤の少なくとも一部を再生ゾーンで再生し、その上に吸収された硫黄の少なくとも一部を除去し;
(d)得られた、脱硫された吸着剤を活性化ゾーンで還元し、分解ガソリン又はディーゼル燃料の油流から接触時に硫黄の除去をもたらすような含有量の還元された亜鉄酸亜鉛を供給し;そしてその後、
(e)得られた、脱硫され還元された吸着剤の少なくとも一部を、該脱硫ゾーンに戻す;
ことを含むプロセス。
【請求項17】
該脱硫が、約37.7℃から約538℃(約100゜Fから約1000゜F)の範囲の温度、及び約103.3kPaから約10.33MPa(約15psiaから約1500psia)の範囲の圧力で、該油流からの硫黄除去をもたらすのに十分な時間をかけて行なわれる、請求項16記載のプロセス。
【請求項18】
該再生が、約37.7℃から約815℃(約100゜Fから約1500゜F)の範囲の温度、及び約68.9kPaから約10.33MPa(約10から約1500psia)の範囲の圧力で、硫化した吸着剤からの少なくとも一部の硫黄除去をもたらすのに十分な時間をかけて行なわれる、請求項16記載のプロセス。
【請求項19】
該再生ゾーンにおいて再生剤として空気が使用される、請求項16記載のプロセス。
【請求項20】
該再生された吸着剤が、約37.7℃から約815℃(約100゜Fから約1500゜F)の範囲の温度、及び、約103.3kPaから約10.33MPa(約15から約1500psia)の範囲の圧力に維持されている水素化ゾーンで、該吸着剤に含まれる亜鉄酸亜鉛の原子価の還元をもたらすのに十分な時間をかけて水素による還元を受ける、請求項16記載のプロセス。
【請求項21】
請求項16記載のプロセスによる分解ガソリン製品。
【請求項22】
請求項16記載のプロセスによるディーゼル燃料製品。

【公開番号】特開2011−174090(P2011−174090A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123209(P2011−123209)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【分割の表示】特願2001−569292(P2001−569292)の分割
【原出願日】平成13年3月6日(2001.3.6)
【出願人】(508013490)チャイナ ペトロリウム アンド ケミカル コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】