説明

脱穀機

【課題】 扱胴2を備えた上部構造体40を、受網5を備えた下部構造体30に対して上昇揺動開放する際も、上部構造体40が備えている扱室上蓋50を上昇揺動開放する際も、適度な持ち上げ補助力を得て楽に開放操作できるようにする。
【解決手段】 上部構造40に上部構造体用スプリング90を装着し、扱室上蓋50に扱室上蓋用スプリング91を装着してある。上部構造用スプリング90は、下部構造体30を反力部材にして上部構造体40に対して上昇揺動操作力を付与する。扱室上蓋用スプリング50は、下部構造体30を反力部材にして扱室上蓋50に対して上昇揺動操作力を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀機体の扱胴を備えた上部構造体が、受網を備えた下部構造体に対して、前記扱胴に対して扱き口側とは反対側に位置する脱穀機体前後向きの軸芯まわりで上下に揺動開閉自在に連結され、前記上部構造体に、扱室上蓋が上下に揺動開閉自在に備えられている脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記脱穀機として、従来、例えば特許文献1に示されるように、上部ケース10(上部構造体に相当)が軸芯X1周りで揺動開閉可能に、下部ケース9(下部構造体に相当)対して軸支され、扱胴カバー11(扱室上蓋に相当)を、軸芯X1周りで上部ケース10に対して上下揺動開閉自在に構成したものを開発した。
【0003】
この種の脱穀機は、上部構造体を上昇開放して扱胴や受網に対するメンテナンスを行なうことができるように、扱室上蓋を上昇開放してワラ切り刃の交換など、扱室上蓋と扱胴の間に対するメンテナンスを行なうことができるように、上部構造体も、扱室上蓋も上昇開放できるようにしたものである。
【0004】
また、この脱穀機において、下部ケース9と扱胴カバー11とに支持されたガススプリング19を備えるとともに、このガススプリング19は、上部ケース10の持ち上げ補助力を与えるようにしていた。
【0005】
【特許文献1】特開平11−275934号公報(段落〔0012〕−〔0015〕、図4,5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1に示されたものでは、スプリングとしてのガススプリング19が下部ケース9と扱胴カバー11とに支持されているが、上部ケース10を開放する際、上部ケース10の係合バー22に係合したフック21による連結作用によって上部ケース10と扱胴カバー11が連結されて共に上昇揺動することから、ガススプリング19によって上部ケース10の持ち上げ補助力が与えられるものである。
【0007】
従って、この従来の技術を採用した場合、扱室上蓋を開放するとき、スプリングが過不足のない持ち上げ補助力を発揮するようにスプリングの付勢力を設定すると、上部構造体を開放する際、スプリングには扱室上蓋の荷重の他に上部構造体の荷重も掛かることから、スプリングによる持ち上げ補助が不足しやすくなっていた。
【0008】
本発明の目的は、上部構造体と扱室上蓋のいずれを開放する場合も適切な力の持ち上げ補助を得ることができる脱穀機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本第1発明にあっては、脱穀機体の扱胴を備えた上部構造体が、受網を備えた下部構造体に対して、前記扱胴に対して扱き口側とは反対側に位置する脱穀機体前後向きの軸芯まわりで上下に揺動開閉自在に連結され、
前記上部構造体に、扱室上蓋が上下に揺動開閉自在に備えられている脱穀機において、
前記上部構造体に上昇揺動操作力を付与する上部構造体用スプリングを、前記下部構造体を反力部材にして上部構造体に対して付与作用する状態に装着し、
前記扱室上蓋に上昇揺動操作力を付与する扱室上蓋用スプリングを、前記下部構造体を反力部材にして扱室上蓋に対して付与作用する状態に装着してある。
【0010】
すなわち、上部構造体を開放する際、上部構造体用スプリングが上部構造体に対して上昇揺動操作力を付与する。このとき、上部構造体に備えられていて上部構造体と共に下部構造体に対して上昇する扱室上蓋に対して扱室上蓋用スプリングが上昇揺動操作力を付与することにより、上部構造体用スプリングと扱室上蓋用スプリングの両スプリングによる上昇揺動操作力を持ち上げ補助力にしながら上部構造体を上昇開放することができる。
【0011】
扱室上蓋を開放する際、扱室上蓋用スプリングが扱室上蓋に対して上昇揺動操作力を付与し、このとき、上部構造体が上昇しなくて上部構造用スプリングが扱室上蓋に対して付与作用せず、扱室上蓋用スプリングと上部構造用スプリングのうちの扱室上蓋用スプリングのみの上昇揺動操作力を持ち上げ補助力にしながら扱室上蓋を上昇開放することができる。
【0012】
これにより、上部構造用スプリング及び扱室上蓋用スプリングの付勢力を適切に設定すれば、上部構造体を開放する際には、両スプリングによる上昇揺動操作力によって過不足がない持ち上げ補助力を付与されながら開放操作し、扱室上蓋を開放する際には、扱室上蓋用スプリングによる過不足がない持ち上げ補助力を付与されながら開放操作することができる。
【0013】
従って、本第1発明によれば、上部構造体を開放してメンテナンス作業を行なう場合も、扱室上蓋を開放してメンテナンス作業を行なう場合も、上部構造体や扱室上蓋を過不足がない持ち上げ補助力が付与されて楽にかつ適切な速度で開放することができる。
【0014】
本第2発明にあっては、本第1発明の構成において、前記上部構造体を下降閉じ状態に固定するロック体のロック解除を不能にする牽制状態と、前記ロック体のロック解除を許容する牽制解除状態とに切り換え自在な牽制手段を備えるとともに、前記扱室上蓋が開放されると、前記牽制手段が牽制状態に切り換わり、前記扱室上蓋が閉じられると、前記牽制手段が牽制解除状態に切り換わるように、牽制手段と扱室上蓋とを連係させてある。
【0015】
すなわち、扱室上蓋を開放した際、ロック解除具に身体が触れるなどすると、上部構造体の閉じロックが外れるものであれば、上部構造体用スプリングのために上部構造体が閉じ状態から浮き上がることがある。本第2発明にあっては、扱室上蓋が開放されると、牽制手段が扱室上蓋との連係のために牽制状態に切り換わってロック体のロック解除を不能にし、これにより、ロック解除具に触れられるなどしても、上部構造体のロック体による閉じロックが解除されなくて上部構造体が浮き上がる事態が発生しなくなる。
【0016】
従って、本第2発明によれば、上部構造体用スプリングを備えたものでありながら、扱室上蓋を開放してメンテナンス作業を行なう際、ロック体が外れて上部構造体が浮き上がることがないようにしながら作業できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、脱穀機体内の前端側の上部に設けた扱室1や、この扱室1に脱穀機体前後向きの軸芯まわりで駆動回動自在に設けた扱胴2などを有した脱穀部D、脱穀機体内の下部に設けた選別室10や、この選別室10の上部に駆動自在に設けた揺動選別装置11や、この揺動選別装置11の始端部の下方に設けた唐箕12などを有した選別部S、前記選別室10の底部に脱穀機体前後方向に並べて設けた1番スクリューコンベヤ20、2番スクリューコンベヤ21、脱穀機体内の前記扱室1の後方に設けた排ワラ搬送装置22を備えて、コンバイン用の脱穀機を構成してある。
【0018】
この脱穀機は、稲、麦などを収穫するためのものであり、脱穀部Dは、脱穀機体Kの横外側に駆動回動自在に設けた脱穀フィードチェーン3によって刈取り穀稈の株元側を脱穀機体Kの扱き口4(図3参照)に沿わせて脱穀機体後方側に挟持搬送して、その刈取り穀稈の穂先側を前記扱き口4から扱室1に挿入して扱胴2と、この扱胴2の下方に位置する受網5とによって脱穀処理し、脱穀排ワラを脱穀フィードチェーン3によって扱室1の後部に位置する送塵口6から扱室外に搬出する。扱室1では、扱室上部に位置するワラ切り刃7(図3参照)によって切れワラを切断処理しながら脱穀処理する。脱穀フィードチェーン3からの脱穀排ワラは、排ワラ搬送装置22によってさらに脱穀機体後方側に搬送されて脱穀機体後部に位置する排ワラ出口23から脱穀機体外に排出される。
【0019】
前記選別部Sは、扱室1から受網5を通して落下した脱穀処理物を揺動選別装置11の始端側で受け止めてこの揺動選別装置11によって脱穀機体後方側に搬送しながら、揺動選別装置11による選別作用と、唐箕12が脱穀機体後方向きに供給する選別風とによって、精粒などの1番処理物や2番処理物と、ワラ屑などの塵埃とに選別し、1番や2番処理物を揺動選別装置11から落下させ、塵埃を揺動選別装置11の後部の上方に位置する排塵ファン13によって選別風と共に吸引して脱穀機体外に排出する。
【0020】
選別部Sからの1番処理物は、1番スクリューコンベヤ20によって受け止めて脱穀機体横向きに搬送して脱穀機体横外側に搬出するようになっている。選別部Sからの2番処理物は、2番スクリューコンベヤ21によって受け止めて脱穀機体横向きに搬送して脱穀機体横外側に搬出するようになっている。2番スクリューコンベヤ21からの処理物は、2番スクリューコンベヤ21に接続された揚送装置24によって脱穀機体横側壁の投入口(図示せず)に揚送し、この投入口から脱穀機体内に投入して再度選別処理などされるように揺動選別装置11の始端側に還元するようになっている。
【0021】
図2,3,6などに示すように、前記脱穀機体Kは、扱室1の穀稈供給口8を有した前機壁31、前記排ワラ出口23を有した後機壁32、前記扱き口4を有した左横機壁33、前記投入口を有した右横機壁34などを備えた下部構造体30と、扱室1を形成する扱室前壁41、扱室後壁42、扱室横壁43などを備えた上部構造体40と、この上部構造体40に備えさせた扱室上蓋50などを備えて構成してある。扱室上蓋50を構成している部材の脱穀機体後方側に、扱室1よりも脱穀機体後方側に突出して排ワラ搬送装置22の上方を覆うカバーになる部分を備えてある。
【0022】
扱胴2は、扱胴2に一体回動自在に装着された扱胴支軸2aを介して上部構造体40の扱室前壁41と扱室後壁42に回動自在に支持されている。受網5は、下部構造体30の前機壁31、左横機壁33などの内側に設けた支持部(図示せず)に支持されている。
【0023】
図3などに示すように、脱穀機体Kの前記下部構造体30と前記上部構造体40とを別体の構造体に構成し、上部構造体40の前後側に設けた連結アーム部44を、扱胴2に対して扱き口4側とは反対側に扱胴回動軸芯と平行に配置した支軸45を介して下部構造体30の上端部に位置する支持筒部35に回動自在に連結してある。
【0024】
これにより、上部構造体40は、前記支軸45の軸芯であって、扱胴回動軸芯に平行な脱穀機体前後向きの軸芯45aのまわりで下部構造体30に対して上下に揺動操作できるようになっている。そして、上部構造体40を下部構造体30に対して上下に揺動操作することにより、上部構造体40は、図3に示す如く扱室前壁41の端部41aが前記前機壁31の支持壁部31aに当接して支持され、図6に示す如く扱室後壁42の端部42aが前記右横機壁34の内部に設けた支持壁部34aに当接して支持された状態であって、扱胴2が受網5に接近して扱胴2と受網5による脱穀処理が可能となった脱穀作業用の下降閉じ状態と、図5に示す如く扱室前壁41及び扱室後壁42が前記支持壁部31a,34aに対して上昇離間した状態であって、扱胴2と受網5の間が開いたメンテナンス作業用の上昇開き状態とに切り換わるようになっている。
【0025】
図3に示すように、前記扱室上蓋50の横一端側に設けた前後一対の連結部51を、前記支軸45に回動自在に連結してあり、扱室上蓋50は、上部構造体40が上下揺動する前記軸芯45aと同一の軸芯のまわりで上部構造体40に対しても、下部構造体30に対しても上下に揺動操作できるようになっている。そして、扱室上蓋50を上部構造体40に対して上下に揺動操作することにより、扱室上蓋50は、図4に示す如く扱室1の扱室前壁41と扱室後壁42の間の脱穀機体上方向きの開口9を開いたメンテナンス作業用の上昇開き状態と、図3に示す如く前記開口9を閉じた脱穀作業用の下降閉じ状態とに切り換わるようになっている。扱室上蓋50と上部構造体40の間に設けた蓋ロック機構60によって扱室上蓋50と上部構造体40が連結されていると、上部構造体40が下部構造体30に対して上下揺動されると、扱室上蓋50は、上部構造体40と共に下部構造体30に対して上下揺動するようになっている。
【0026】
図2,3に示すように、前記蓋ロック機構60は、上部構造体40の扱室横壁43に取付け部材61を介して固定されたロック杆62、扱室上蓋50の内部に支点ピン63を介して揺動自在に連結されたフック64を備えて構成してある。
すなわち、フック64から延出されて、延出端側が扱室上蓋50の貫通レバー孔65から扱室上蓋50の外部に突出している蓋ロックレバー66を前記支点ピン63の軸芯まわりで揺動操作することにより、フック64が支点ピン63の軸芯まわりで揺動してロック杆62に対して係脱するようになっており、フック64がロック杆62に対して係合すると、蓋ロック機構60は、扱室上蓋50をフック64を介して上部構造体40に対して連結して下降閉じ状態に固定するようにロック状態になる。フック64がロック杆62に対して離脱すると、蓋ロック機構60は、扱室上蓋50の上昇開放を許容するようにロック解除状態になる。
【0027】
図2に示すように、扱室1の前外側及び後外側に、ロック体71が装備された構造体ロック機構70を設けてある。
図3に示すように、前側の構造体ロック機構70は、扱室前壁41の外面側に支点ピン72を介して揺動自在に支持されたフック形の前記ロック体71、このロック体71に連結されたロックバネ73、前機壁31の前記支持壁部31aにピン支持体74を介して固定されたロックピン75を備えて構成してある。
【0028】
すなわち、ロック体71がロックバネ73によって支点ピン72の軸芯まわりで揺動操作されてロック体71のフック部71aがロックピン75に係合すると、構造体ロック機構70は、扱室前壁41をロック体71を介して前機壁31に連結することにより、上部構造体40を下降閉じ状態に固定するようにロック状態になる。ロック体71の端部から延出されて、上部構造体40の扱室横壁43の貫通レバー孔76から上部構造体40の横外側に突出しているロック解除レバー77を支点ピン72の軸芯まわりでロックバネ73に抗して揺動操作してロック体71を支点ピン72の軸芯まわりで揺動操作し、ロック体71のフック部71aがロックピン75から外れると、構造体ロック機構70は、上部構造体40の上昇開放を許容するようにロック解除状態になる。
【0029】
図6に示すように、後側の構造体ロック機構70は、ロック体71が扱室後壁42に支持され、ロックピン75が左横機壁34の支持壁部34aに支持されている点において、前側の構造体ロック機構70とは相違しているが、この点以外は、前側の構造体ロック機構70と同様に構成してあり、ロックバネ73によるロック体71の揺動操作によってロック状態になり、ロック解除レバー77によるロック体71の揺動操作によってロック解除状態になる。
【0030】
図2に示すように、扱室1の前外側及び後外側に、ピン形の牽制手段81が装備された牽制機構80を設けてある。
図3に示すように、前側の牽制機構80は、扱室前壁41の外面側に設けたガイド長孔82に摺動自在に支持された前記牽制手段81、この牽制手段81に一端側が連結され、他端側が扱室上蓋50のケーブル支持部83に連結されたワイヤケーブルで成る連係手段84を備えて構成してある。
【0031】
連係手段84は、牽制手段81と扱室上蓋50とを次の如く連係させている。
すなわち、図4に示すように、扱室上蓋50が上部構造体40に対して上昇揺動されるに伴い、扱室上蓋50による連係手段84の引っ張り操作のために牽制手段81がガイド長孔82に沿って上昇移動し、扱室上蓋50が上昇開き状態になると、連係手段84による引き続きの引張り操作と、連係手段84に備えてあるスプリング85が引き伸ばし操作されて発揮する弾性復元力とのために牽制手段81がロック体71の前記フック部71aと支点ピン75との間に脱穀機体下方側から当接して、ロック体71がロックピン75から外れることを阻止するようにロック体71に対してストップ作用した牽制状態になるように牽制手段81と扱室上蓋50とを連係させている。図3に示すように、扱室上蓋50が上部構造体40に対して下降揺動されるに伴い、これに伴う連係手段84の緩め操作のために牽制手段81がガイド長孔82に沿って下降移動し、扱室上蓋50が下降閉じ状態になると、牽制手段81がロック体71から離れてロック体71がロックピン75から外れることを許容した牽制解除状態になるように牽制手段81と扱室上蓋50を連係させている。
【0032】
これにより、扱室上蓋50が上昇開き状態にされると、前側の牽制機構80は、牽制手段81をロック体71に対してストップ作用させて、前側ロック体71のロック解除を不能にするように牽制状態になり、扱室上蓋50が下降閉じ状態にされると、前側の牽制機構80は、牽制手段81のロック体71に対するストップ作用を解除して、前側ロック体71のロック解除を許容するように牽制解除状態になる。
【0033】
後側の牽制機構80は、牽制手段81が扱室後壁42のガイド長孔に摺動自在に支持されている点において前側の牽制機構80と相違しているが、この点以外は前側の牽制機構80と同様に構成してあり、扱室上蓋50が上昇開き状態にされると、牽制手段81をロック体71に対してストップ作用させて、後側ロック体71のロック解除を不能にするように牽制状態になり、扱室上蓋50が下降閉じ状態にされると、牽制手段81のロック体71に対するストップ作用を解除して、後側ロック体71のロック解除を許容するように牽制解除状態になる。
【0034】
図3に示すように、扱室1の前外側に上部構造体用スプリング90を設け、図6に示すように、扱室1の後外側に扱室上蓋用スプリング91を設けてある。
図3に示すように、上部構造体用スプリング90は、一端側が上部構造体40に支持され、他端側が前機壁31の前記支持壁部31aに固定のスプリング支持体92に支持されるように装着したガススプリングによって構成してある。
【0035】
図6に示すように、扱室上蓋用スプリング91は、一端側が扱室上蓋50に支持され、他端側が右横側壁34の支持壁部34aに固定のスプリング支持体92に支持されるように装着したガススプリングによって構成してある。上部構造体用スプリング90を構成するガススプリングも、扱室上蓋用スプリング91を構成するガススプリングも、伸縮自在に連結し合った筒体93とロッド94、ロッド94が筒体93から出る側に、すなわち伸張側に付勢するように筒体内に充填したガスを備えて構成してある。
【0036】
これにより、上部構造体用スプリング90は、下部構造体30の前機壁31を反力部材にして、上部構造体40を上昇揺動操作するための補助力を上部構造体40に対して付与するようになっており、扱室上蓋用スプリング91は、下部構造体30の支持壁部34aを反力部材にして、扱室上蓋50を上昇揺動操作するための補助力を扱室上蓋50に対して付与するようになっている。
【0037】
つまり、扱胴2や受網5に対するメンテナンスを行なう場合、前後のロック解除レバー77を上昇側に揺動操作して前後の構造体ロック機構70のロック体71による上部構造体40の下部構造体30に対する閉じロックを解除し、この後もさらに、前後のロック解除レバー77を上昇操作していく。すると、各ロック解除レバー77が扱室横壁43の貫通レバー孔76内で扱室横壁43に当接して上部構造体40に対して持ち上げ作用し、図5に示す如く上部構造体40が上昇開き状態になって受網5と扱胴2の間が開き、扱き口4や穀稈供給口8からメンテナンス作業を行なうことが可能になる。このとき、上部構造体40に対して上部構造体用スプリング90が上昇揺動操作力を付与し、上部構造体40と共に上昇する扱室上蓋50に対して扱室上蓋用スプリング91が上昇揺動操作力を付与し、両スプリング90,91による上昇揺動操作力を持ち上げ補助力にしながら、上部構造体40及び扱室上蓋50を楽に上昇操作することができる。
【0038】
ワラ切り刃7の交換など、扱室上蓋50と扱胴2の間に対するメンテナスを行う際、蓋ロックレバー66を上昇側に揺動操作して蓋ロック機構60のフック64による扱室上蓋50の上部構造体40に対する閉じロックを解除し、この後もさらに、蓋ロックレバー66を上昇操作していく。すると、蓋ロックレバー66が扱室上蓋50の貫通レバー孔65内で扱室上蓋50に当接して扱室上蓋50に対して持ち上げ作用し、図4に示す如く扱室上蓋50が上昇開き状態になって扱室1の開口9が開き、この開口9からメンテナンス作業を行なえるようになる。このとき、扱室上蓋50に対して扱室上蓋用スプリング91が上昇揺動操作力を付与し、その操作力を持ち上げ補助力にしながら扱室上蓋50を楽に上昇操作することができる。
また、このとき、扱室上蓋50が上昇開き状態になると、前後の牽制機構80の連係手段81が作用して前側の牽制手段81も後側の牽制手段81も牽制状態になってロック体71のロック解除を不能にする。これにより、前後いずれのロック解除レバー77に身体が触れるなどしても、上部構造体40のロック体71による閉じロックが解除されず、上部構造体40が上部構造体用スプリング90による操作のために下降閉じ状態から浮き上がることを回避しながらメンテナンスを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】コンバイン用脱穀機の断面図
【図2】コンバイン用脱穀機の側面図
【図3】上部構造体及び扱室上蓋の閉じ状態での正面図
【図4】扱室上蓋の開き状態での正面図
【図5】上部構造体の開き状態での正面図
【図6】上部構造体及び扱室上蓋の閉じ状態での後面図
【符号の説明】
【0040】
2 扱胴
5 受網
30 下部構造体
40 上部構造体
45a 軸芯
50 扱室上蓋
71 ロック体
81 牽制手段
90 上部構造体用スプリング
91 扱室上蓋用スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀機体の扱胴を備えた上部構造体が、受網を備えた下部構造体に対して、前記扱胴に対して扱き口側とは反対側に位置する脱穀機体前後向きの軸芯まわりで上下に揺動開閉自在に連結され、
前記上部構造体に、扱室上蓋が上下に揺動開閉自在に備えられている脱穀機であって、
前記上部構造体に上昇揺動操作力を付与する上部構造体用スプリングを、前記下部構造体を反力部材にして上部構造体に対して付与作用する状態に装着し、
前記扱室上蓋に上昇揺動操作力を付与する扱室上蓋用スプリングを、前記下部構造体を反力部材にして扱室上蓋に対して付与作用する状態に装着してある脱穀機。
【請求項2】
前記上部構造体を下降閉じ状態に固定するロック体のロック解除を不能にする牽制状態と、前記ロック体のロック解除を許容する牽制解除状態とに切り換え自在な牽制手段を備えるとともに、前記扱室上蓋が開放されると、前記牽制手段が牽制状態に切り換わり、前記扱室上蓋が閉じられると、前記牽制手段が牽制解除状態に切り換わるように、牽制手段と扱室上蓋とを連係させてある請求項1記載の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−94731(P2006−94731A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282368(P2004−282368)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】