説明

脱穀装置及びコンバイン

【課題】刈取穀稈の穂先部に付いている穀粒を脱粒させるための脱穀装置において、塊状の排稈の中に紛れ込んだ穀粒(ササリ粒)を確実に回収して、脱穀ロスを抑制できるようにする。
【解決手段】胴体40の内部に取り付けられた前記回転軸連結用の固定板40c,40bに、起風手段としての起風翼片48を形成する。起風翼片48が回転軸41と一体的に回転することによって、胴体40内に空気流Fを形成するように構成する。胴体40の外周面のうち隣接するスクリュー羽根22の間に、空気流Fを吹き出すための放出口49を複数形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、刈り取られた穀稈の穂先部に付いている穀粒を脱粒させるための脱穀装置と、前記脱穀装置を搭載したコンバインとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンバインに搭載された脱穀装置の扱室には、エンジンの動力にて回転駆動する扱胴が内装されている。扱胴の外周面には、螺旋状のスクリュー羽根が半径方向外向きに突設されており、スクリュー羽根には、多数個の扱歯が、螺旋の方向に沿って飛び飛びの間隔にて取り付けられている。脱穀処理に際しては、扱室内に送り込まれた刈取穀稈に、スクリュー羽根や各扱歯を扱胴の回転にて接触させることにより、刈取穀稈を細かく切断して脱穀している。
【特許文献1】特開2006−254708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、例えば稲や麦等の刈取穀稈は脱粒性がよく、扱室の前方側でほとんど脱粒する。このため、脱穀物(穀粒や藁屑)は扱胴の下側を囲うクリンプ網から漏下して、次の選別工程に移行する。クリンプ網から漏下しなかった排稈や藁屑は、扱胴の回転によるスクリュー羽根の搬送作用にて塊状になりながら(一部は各扱歯にて分断され又はほぐされながら)、扱室の後部に形成された排塵口から、扱室外ひいては機外へ排出される。
【0004】
しかし、前記従来の構成では、胴体の外周面のうち隣接するスクリュー羽根の間に、排稈を溜め得る溝状のスペースが存在し、当該スペースは扱胴の後部まで螺旋状に延びているから、塊状の排稈は、スクリュー羽根や各扱歯にて分断されたりほぐされたりせずに、そのまま排塵口から排出され易い。塊状の排稈の中には穀粒(ササリ粒)が紛れ込んでいることも多く、ササリ粒までも塊状の排稈と共に機外へ排出してしまうと、脱穀ロスが多くなるという問題があった。
【0005】
そこで、本願発明は、上記の問題点を解消した脱穀装置、及び、かかる脱穀装置を搭載したコンバインを提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するため、請求項1の発明は、円筒状の胴体と、これを円周方向に回転可能に支持する回転軸とを備えており、前記胴体の外周面に、螺旋状のスクリュー羽根が外向き突設されている脱穀装置であって、前記胴体の内部には、当該内部を流れる空気流を形成するための起風手段が配置されており、前記胴体の外周面には、隣接するスクリュー羽根の間に、前記空気流を吹き出すための放出口が複数形成されているというものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した脱穀装置において、前記複数の放出口は、前記胴体の回転方向と逆向きに前記空気流を吹き出すように構成されているというものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した脱穀装置において、前記胴体の内部に取り付けられた前記回転軸連結用の固定板に、前記起風手段としての起風翼片が形成されており、前記起風翼片が前記回転軸と一体的に回転することによって、前記胴体内に空気流を形成するように構成されているというものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載した脱穀装置とエンジンとが搭載されているコンバインであって、前記エンジンが内装されたエンジンルーム内の空気を前記胴体内に導入するための排気ダクトを備えているというものである。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によると、円筒状の胴体の内部に、当該内部を流れる空気流を形成するための起風手段が配置されており、前記胴体の外周面には、隣接するスクリュー羽根の間に、前記空気流を吹き出すための放出口が複数形成されているから、隣接するスクリュー羽根の間のスペースに、スクリュー羽根の搬送作用にて塊状になった排稈が溜まろうとしても、前記胴体の内側から外部に向けて吹き出す空気流の作用によって、前記塊状の排稈は前記スペースから追い出される(離れる)ことになる。
【0011】
このため、前記塊状の排稈を、前記スクリュー羽根等にて、前記扱室外へ排出する前に確実に分断したりほぐしたりできるから、前記塊状の排稈の中に紛れ込んだササリ粒は、効率よく回収されて次の選別工程に移行することになる。従って、排稈と共にササリ粒を機外に排出してしまう脱穀ロスを少なくできるという効果を奏する。
【0012】
また、前記胴体の内側から外部に向けて吹き出す空気流の作用にて、隣接するスクリュー羽根の間のスペースに脱穀物や排稈が溜まるのを抑制できるから、前記扱室内での刈取穀稈(脱穀物や排稈を含む)の流動性が向上する。その結果、脱穀効率の向上に寄与するという効果も奏する。
【0013】
請求項2の発明によると、前記複数の放出口は、前記胴体の回転方向と逆向きに前記空気流を吹き出すように構成されているから、前記胴体の回転方向と前記空気流の吹き出し方向とは向かい合うことになる。このため、脱穀時において、前記各放出口内に脱穀物や排稈等が入り込むおそれはない(前記空気流の吹き出しが入り込みの邪魔をする)。
【0014】
請求項3の発明によると、前記胴体の内部に取り付けられた前記回転軸連結用の固定板に、前記起風手段としての起風翼片が形成されており、前記起風翼片が前記回転軸と一体的に回転することによって、前記胴体内に空気流を形成するように構成されているから、前記起風手段を駆動させるための専用の装置が不要であり、低コストで製作できるという効果を奏する。
【0015】
請求項4の発明によると、請求項3に記載した脱穀装置とエンジンとが搭載されているコンバインにおいて、前記エンジンが内装されたエンジンルーム内の空気を前記胴体内に導入するための排気ダクトを備えているから、前記エンジンからの放熱にて温められた前記エンジンルーム内の空気は、前記排気ダクトを介して前記胴体内に送られ、前記胴体の外周面に形成された前記複数の放出口から、温かい空気流が吹き出ることになる。
【0016】
つまり、前記扱室内においては、刈取穀稈(脱穀物や排稈を含む)に、温かい空気流を吹き付けることになるから、例えば朝露にて湿った刈取穀稈の湿気を取り除くことが可能になる。従って、前記脱穀装置に送り込まれる刈取穀稈が湿っていたとしても、前記脱穀装置での稈詰まりを防止して、脱穀性能を高い状態に維持できるという効果を奏する。また、前記起風手段としての前記各起風翼片の作用にて、前記エンジンルーム内の換気を促進できるから、前記エンジンのヒートバランス(熱効率)向上やオーバーヒート防止にも効果を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を、普通型コンバインに適用した図面(図1〜図6)に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図、図3は脱穀装置の側面断面図、図4は排気ダクトと扱胴との関係を示す要部平面図、図5は図3のV−V視正面断面図、図6は起風手段の別例を示す要部平面図である。
【0018】
(1).コンバインの概略構造
まず、図1及び図2を参照しながら、コンバインの概略構造について説明する。
【0019】
実施形態における普通型コンバインは、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、稲、麦、大豆等の植立穀稈を刈り取りながら取り込む刈取前処理装置3が単動式の油圧シリンダ(図示せず)にて昇降調節可能に装着されている。
【0020】
走行機体1の前部一側(実施形態では前部右側)には、キャビンタイプの操縦部5が搭載されている。操縦部5の後方には、脱穀後の穀粒を貯留するためのグレンタンク6が配置されている。グレンタンク6の後方には、動力源としてのエンジン7(図1及び図2参照)が配置されている。走行機体1の後部のうちエンジン7の後方には、排出オーガ8が旋回可能に立設されている。グレンタンク6内の穀粒は、排出オーガ8の先端籾投げ口から例えばトラックの荷台やコンテナ等に搬出される。走行機体1の他側(実施形態では左側)には、刈取前処理装置3から送られてきた刈取穀稈を脱穀処理するための脱穀装置9が搭載されている。脱穀装置9の下方には、揺動選別及び風選別を行うための選別装置10が配置されている。
【0021】
刈取前処理装置3は、脱穀装置9の前部開口に連通した角筒状のフィーダハウス11と、フィーダハウス11の前端に連設された横長バケット状のプラットホーム12とを備えている。フィーダハウス11の下面部と走行機体1の前端部とが単動式の油圧シリンダ(図示せず)を介して連結されている。プラットホーム12内には横送りオーガ13が回転可能に軸支されている。横送りオーガ13の前部上方にはタインバー付きの掻き込みリール14が配置されている。プラットホーム12の下面側には横長バリカン状の刈刃15が配置されている。プラットホーム12の前部には左右一対の分草体16が突設されている。
【0022】
掻き込みリール14にて後方に引き倒された植立穀稈は刈刃15にて刈り取られ、横送りオーガ13の回転駆動にてプラットホーム12の左右中央部付近に集められる。そして、集められた刈取穀稈は、フィーダハウス11内のチェンコンベヤ17を介して脱穀装置9に全量投入される。
【0023】
脱穀装置9に設けられた扱室20内には、エンジン7からの動力にて回転駆動する大径ロータ状の扱胴21が、その回転軸線を走行機体1の進行方向に沿って延出するようにして設けられている。図3〜図5に示すように、扱胴21の外周面には、螺旋状のスクリュー羽根22が半径方向外向きに突設されている。スクリュー羽根22には、多数個の扱歯23が、螺旋の方向に沿って飛び飛びの間隔にて取り付けられている。言うまでもないが、各扱歯23の先端はスクリュー羽根22の外周縁よりも半径方向外側に突出している。扱胴21の下方には、円弧状のクリンプ網24が各扱歯23の先端から適宜間隔を空けて配置されている。
【0024】
扱室20内に送り込まれた刈取穀稈は、扱胴21の矢印R方向(図3〜図5参照)の回転によるスクリュー羽根22の作用にて、走行機体1の進行方向後方に向けて搬送されつつ、扱胴21と一体回転する各扱歯23と扱胴21の下方にあるクリンプ網24とに接触して細かく切断され、脱穀される。クリンプ網24の網目よりも細かい穀粒等の脱穀物はクリンプ網24から漏下する。クリンプ網24から漏下しなかった排稈や藁屑は、扱胴21の回転によるスクリュー羽根22の搬送作用にて塊状になる等しつつ、扱室20の後部に形成された排塵口20cから、脱穀装置9の後部下側に配置されたスプレッダ33の箇所に排出される。
【0025】
なお、扱室20の上部内周面には、刈取穀稈の搬送速度を調節する複数の送塵弁25が前後水平方向に適宜間隔を空けて回動可能に枢着されている(図3参照)。これら送塵弁25の前後回動角度を調整することにより、刈取穀稈が扱室20内を移動する時間(滞留時間)を、刈取穀稈の品種や状態に応じて調節できる。
【0026】
脱穀装置9の下方に配置された選別装置10は、チャフシーブ28やグレンパン等を有する揺動選別機構26と、唐箕ファン29等を有する風選別機構27とを備えている。扱胴21にて脱穀されてクリンプ網24から漏下した脱穀物は、揺動選別機構26と風選別機構27との作用により、精粒等の一番物、枝梗付き穀粒等の二番物、及び藁屑等に選別される。
【0027】
揺動選別機構26及び風選別機構27での選別を経て、走行機体1の下部にある一番受け樋に集められた精粒等の一番物は、一番コンベヤ機構30及び揚穀コンベヤ機構(図示せず)を介してグレンタンク6に集積される。枝梗付き穀粒等の二番物は、二番コンベヤ機構31及び還元コンベヤ機構32等を介して扱室20に戻され、扱胴21にて再脱穀される。再脱穀後の二番物は選別装置10にて再選別される。藁屑等は、脱穀装置9の後部下側に配置されたスプレッダ33にて細かく切断されたのち、走行機体1の後方に排出される。
【0028】
(2).脱穀装置及びその周辺の構造
次に、図3〜図5を参照しながら、脱穀装置9及びその周辺の構造について説明する。
【0029】
脱穀装置9の扱室20内に配置された扱胴21は、円筒状の胴体40と、これを円周方向に回転可能に支持する前後長手の回転軸41とを備えている。スクリュー羽根22は胴体40の外周面に螺旋状で且つ半径方向外向きに突設されている。胴体40の外周面のうちスクリュー羽根22よりも後方の部位には、クリンプ網24から漏下しなかった塊状の排稈を排塵口20cから扱室20外に送り出す櫛歯状の掻き出し羽根42が半径方向外向きに突出するように取り付けられている。
【0030】
胴体40と回転軸41とは取り外し可能に連結されている。実施形態では、扱室20の前側板20aと胴体40の前面板40aとに、フランジ付きの前軸体43が抜き差し可能に貫通している一方、扱室20の後側板20bと胴体40の後面板40bとには、フランジ付きの後軸体44が抜き差し可能に貫通している。回転軸41は、胴体40の全長とほぼ同じ長さの中空状に形成されている。回転軸41の前後両端に前後軸体43,44を差し込み固定することにより、回転軸41は扱室20の前後側板20a,20bに回転可能に軸支されている。回転軸41の長手中途部には、胴体40内部を区画する複数の中仕切り板40cに対応した個数の固定フランジ45が固着されている。これら各固定フランジ45は、それぞれ対応する中仕切り板40cにボルト締結されている。なお、胴体40と回転軸41との連結構造自体は本願発明と直接的に関係しないので詳述しないが、必要であれば実公平6−4682号公報等を参照されたい。
【0031】
図3及び図4に示すように、胴体40の後端部は前向きに凹んでおり、後面板40bは凹み部分46の底になっている。一方、扱室20における後側板20bの内面には、胴体40後端部の凹み部分46に隙間を隔てて嵌る皿状板47が固着されている。このため、胴体40後端部の凹み部分46と皿状板47との間の隙間は、側断面視でパルス(方形波)状のラビリンス隙間になっており、後軸体44への藁屑(排稈)の巻き付きを防止している。
【0032】
最前の中仕切り板40cを除く中仕切り板40cと後面板40bとには、起風手段としての複数個の起風翼片48が切り起こしによって斜め前方に突出するように形成されている。各起風翼片48は、正面視で回転軸41を四方から囲むように放射状に、すなわち回転軸41の長手方向(回転軸線方向)から見て放射状に配置されている。この場合、各起風翼片48は回転方向後ろ側(矢印R方向の上流側)に位置し、切り起こしによる通風穴48aが回転方向前側(矢印R方向の下流側)に位置している。
【0033】
扱胴21の矢印R方向への回転に伴い、各起風翼片48が回転軸41を中心に矢印R方向に回転することにより、胴体40内に進行方向前方に流れる空気流Fが形成される。すなわち、各起風翼片48は、胴体40内に回転軸線方向の空気流Fを形成する軸流ファンとして機能することになる。中仕切り板40c(最前のものを除く)と後面板40bとは、特許請求の範囲に記載した固定板に相当するものである。
【0034】
胴体40の外周面のうち隣接するスクリュー羽根22の間には、胴体40内部に形成される空気流Fを吹き出すための複数の放出口49が螺旋の方向に沿って飛び飛びの間隔にて貫通形成されている。実施形態の各放出口49は、胴体40内部の空気流Fを外部に向けて扱胴21の回転方向(矢印R方向)と逆向きに吹き出させるために、回転方向上流側に向けて開口している(図5参照)。
【0035】
扱室20の構成要素のうち前後に重なり合う後側板20bと皿状板47とには、前後方向に貫通する横長の吸気口50が形成されている。吸気口50は、胴体40後端部の凹み部分46に臨ませている。後側板20bの外面には、扱室20の後方に配置された排気ダクト51の一端部が吸気口50に連通するように接続されている。排気ダクト51の他端部は、グレンタンク6の後方に配置された箱型のエンジンルーム52(図4参照)に連通接続されている。
【0036】
図4に示すように、エンジンルーム52内には、動力源としてのエンジン7と、エンジン7水冷用のラジエータ53と、ラジエータ53に対する通風ファン54とが配置されている。エンジン7の動力にて通風ファン54を駆動させることにより、エンジンルーム52内にラジエータ53を介して外気が取り込まれ、当該外気によってエンジン7及びラジエータ53が冷却される。
【0037】
エンジン7及びラジエータ53からの放熱にて温められたエンジンルーム52内の空気は、扱胴21の矢印R方向への回転に伴って各起風翼片48が回転軸41回りの矢印R方向に回転する(軸流ファンとして機能する)ことにより、排気ダクト51から扱室20の吸気口50を経由して、胴体40後端部の凹み部分46に送られ、胴体40内を前向きに流れる空気流Fとなる。そして、胴体40の外周面に形成された複数の放出口49から、胴体40内部の温かい空気流Fが扱胴21の回転方向(矢印R方向)と逆向きに吹き出るのである。
【0038】
(3).作用効果
以上の構成によると、胴体40の内部に設けられた中仕切り板40c(最前のものを除く)及び後面板40bに、起風手段としての起風翼片48が形成されており、起風翼片48が回転軸と一体的に回転することによって、胴体40内に空気流Fを形成するように構成されており、更に、胴体40の外周面には、隣接するスクリュー羽根22の間に、空気流Fを吹き出すための放出口49が複数形成されているから、隣接するスクリュー羽根22の間のスペースに、スクリュー羽根22の搬送作用にて塊状になった排稈が溜まろうとしても、胴体40の内側から外部に向けて吹き出す空気流Fの作用によって、塊状の排稈は扱室20の内壁やクリンプ網24側に追い出されることになる。
【0039】
このため、扱胴21の各扱歯23とクリンプ網24とで、塊状の排稈を、排塵口20cから排出する前に確実に分断したりほぐしたりできるから、塊状の排稈の中に紛れ込んだササリ粒は、効率よく回収されてクリンプ網24から漏下することになる。従って、排稈と共にササリ粒を機外に排出してしまう脱穀ロスを少なくできるのである。
【0040】
また、前述の通り、胴体40の内側から外部に向けて吹き出す空気流Fの作用にて、隣接するスクリュー羽根22の間のスペースに脱穀物や排稈が溜まるのを抑制できるから、扱室20内での刈取穀稈(脱穀物や排稈を含む)の流動性が向上する。その結果、脱穀効率の向上に寄与するのである。
【0041】
しかも、実施形態では、胴体40内部の中仕切り板40c(最前のものを除く)及び後面板40bに形成された各起風翼片48が軸流ファンとして機能し、扱胴21の回転駆動を利用して胴体40内を流れる空気流Fを形成するから、胴体40の内部に空気流Fを形成する起風手段を駆動させるための専用の装置が不要であり、低コストで製作できるという効果も奏する。
【0042】
その上、胴体40の外周面に形成された複数の放出口49が胴体40の回転方向上流側に向けて開口していて、胴体40の回転方向(矢印R方向)と空気流Fの吹き出し方向とが互いに逆向きになっている(向かい合っている)。このため、脱穀時において、各放出口49内に脱穀物や排稈等が入り込むおそれはない(空気流Fの吹き出しが入り込みの邪魔をする)。
【0043】
更に実施形態では、エンジン7が内装されたエンジンルーム52内の空気を胴体40内に導入するための排気ダクト51を備えているから、扱胴21の矢印R方向への回転に伴って各起風翼片48を軸流ファンとして機能させることにより、エンジン7及びラジエータ53からの放熱にて温められたエンジンルーム52内の空気は、排気ダクト51を介して胴体40内に送られ、胴体40の外周面に形成された複数の放出口49から、温かい空気流Fが扱胴21の回転方向(矢印R方向)と逆向きに吹き出ることになる。
【0044】
つまり、扱室20内では、刈取穀稈(脱穀物や排稈を含む)に、温かい空気流Fを吹き付けることになるから、例えば朝露にて湿った刈取穀稈の湿気を取り除くことが可能になる。従って、脱穀装置9に送り込まれる刈取穀稈が湿っていたとしても、脱穀装置9での稈詰まりを防止して、脱穀性能を高い状態に維持できる。また、軸流ファンとして機能する各起風翼片48の作用にて、エンジンルーム52内の換気を促進できるから、エンジン7のヒートバランス(熱効率)向上やオーバーヒート防止にも効果を発揮できる。
【0045】
(4).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、本願発明は、前述のような普通型コンバインの脱穀装置に限らず、自走自脱型コンバインの脱穀装置や定置式の脱穀装置に対して広く適用できる。また、起風手段としては前述の実施形態のものに限らず、通常のファン装置を採用してもよい。
【0046】
例えば、図6に示すように、中仕切り板40c(最前のものを除く)と後面板40bとは、前後方向に貫通する開口穴55を複数形成し、回転軸41にはこれと一体回転する軸流ファン56を取り付ける。このように構成した場合も、扱胴21の矢印R方向への回転に伴う軸流ファン56の回転駆動にて、胴体40内に進行方向前方に流れる空気流Fを形成でき、先の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0047】
その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】脱穀装置の側面断面図である。
【図4】排気ダクトと扱胴との関係を示す平面図である。
【図5】図3のV−V視正面断面図である。
【図6】起風手段の別例を示す要部平面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 走行機体
7 エンジン
9 脱穀装置
20 扱室
20a 前側板
20b 後側板
20c 排塵口
21 扱胴
22 スクリュー羽根
23 扱歯
24 クリンプ網
40 胴体
40a 前面板
40b 後面板
40c 中仕切り板
41 回転軸
46 凹み部分
47 皿状板
48 起風翼片
49 放出口
50 吸気口
51 排気ダクト
52 エンジンルーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴体と、これを円周方向に回転可能に支持する回転軸とを備えており、前記胴体の外周面に、螺旋状のスクリュー羽根が外向き突設されている脱穀装置であって、
前記胴体の内部には、当該内部を流れる空気流を形成するための起風手段が配置されており、前記胴体の外周面には、隣接するスクリュー羽根の間に、前記空気流を吹き出すための放出口が複数形成されている、
脱穀装置。
【請求項2】
前記複数の放出口は、前記胴体の回転方向と逆向きに前記空気流を吹き出すように構成されている、
請求項1に記載した脱穀装置。
【請求項3】
前記胴体の内部に取り付けられた前記回転軸連結用の固定板に、前記起風手段としての起風翼片が形成されており、前記起風翼片が前記回転軸と一体的に回転することによって、前記胴体内に空気流を形成するように構成されている、
請求項1又は2に記載した脱穀装置。
【請求項4】
請求項3に記載した脱穀装置とエンジンとが搭載されているコンバインであって、
前記エンジンが内装されたエンジンルーム内の空気を前記胴体内に導入するための排気ダクトを備えている、
コンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−60835(P2009−60835A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231016(P2007−231016)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】