説明

脱穀装置

【課題】脱穀する穀稈の種類が変わった場合に行われる脱穀状態の調整時間を短縮する。
【解決手段】連結体35の取り付け位置をスライドさせることにより、スクリュー羽根体32の伸延方向に関する扱歯体33の取付角度αを、±15°の範囲内で変更することができるようになっている。このように、スクリュー羽根体32から多数の扱歯体33を脱着することなく各扱歯体33の取付角度αをまとめて変更し、扱歯体33の扱き作用縁部75とスクリュー羽根体32とのなす扱き作用角度を調節することができるようになるため、脱穀する穀稈の性状に応じて行われる脱穀状態の調整時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用型のコンバインに搭載された脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、汎用型のコンバインに搭載された脱穀装置の扱室内には、エンジンの動力によりその中心軸線回りに回転駆動する略円筒形状の扱胴が設けられている。この扱胴を構成する扱胴本体の周面上には、螺旋状のスクリュー羽根体が螺旋扱歯として巻装されている。
【0003】
このスクリュー羽根体には、多数の扱歯体が、その伸延方向に沿って適宜な間隔で、かつ、その一端がスクリュー羽根体の外周縁よりも扱胴本体の半径方向外側に突出するように配設されている。
【0004】
そして、刈取時には、刈り取られた穀稈が扱室内に搬送され、扱胴の回転に伴って各扱歯体が扱き作用し、これにより、穀稈から穀粒が扱き落とされ(脱粒され)て穀粒を回収するようにしている。
【0005】
ところが、この扱胴の回転に伴って行われる穀粒の扱き落としは、作物の品種や穀稈の状態によって、穀稈と扱歯体とが干渉している時間(すなわち滞留時間)が異なることとなり、回収される穀粒の量や品質に差が生じることが知られている。
【0006】
それゆえ、比較的多様な種類の穀物を収穫する汎用型のコンバインでは、脱穀状態を最適な状態に保つために、滞留時間を穀物の性状に応じて自由に調整できるのが望ましい。
【0007】
そこで、滞留時間の調整をすべく、スクリュー羽根体の外周近傍に配設された扱歯体の突出長さを調整可能とする提案がいくつかなされている。
【0008】
例えば、扱歯体を、突出高さが高・中・低と異なる3つの歯体と、該歯体に連続する取付基部とで構成し、同取付基部の中心に穿設したボルト挿通孔にボルトを挿通してスクリュー羽根体に回動自在に配設すると共に、前記ボルトを中心に扱歯体を回動させ、予め決められた位置にて固定することで突出高さを三段階に変更可能とした扱歯構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
また、スクリュー羽根体に扱歯体取付用ブラケットを設けると共に、該取付ブラケット内に扱歯体を出入自在に挿入して位置調整及び固定自在に構成した扱歯体構造が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0010】
これらのような扱歯体構造によれば、作物の品種や穀稈の状態に応じて、扱歯体の突出長さを変更することができ、適宜滞留時間を調整して脱粒効率を高めることができる。
【0011】
【特許文献1】実公平6−36671号公報
【特許文献2】実公平6−26119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、穀稈からの脱粒効率を向上させるためには、上記従来の作物の品種や穀稈の状態に合わせて扱歯体の突出長さを変更させる方法の他に、扱歯体の扱き作用角度(扱歯体の扱き作用縁部とスクリュー羽根体の先端周縁部とがなす角度)を変更させる方法も有用であることが本発明者らの研究により明らかになりつつある。
【0013】
むしろ、扱歯体の扱き作用角度を作物の品種や穀稈の状態に合わせて調節する方法は、脱粒効率を向上させることは勿論のこと、穀粒にかかる力の方向を適切に調整することができ、穀粒の品質向上にも大きく寄与することが予想される。
【0014】
しかしながら、上記従来の扱歯体構造では、角度は固定されたままであり、扱歯体の扱き作用角度を変更することはできなかった。
【0015】
それゆえ、扱歯体の扱き作用角度が変更可能な脱穀装置が望まれている。
【0016】
また、他の着眼点から上記従来の扱歯体構造について検討すると、スクリュー羽根体に多数配設された扱歯体を、個々にそれぞれ調整するのは非常に煩雑である。
【0017】
すなわち、スクリュー羽根にボルト等で固定された扱歯体を調節するためには、ボルト等と扱歯体とをスクリュー羽根から一旦取り外し、扱歯体の向きを変えて再び取り付けなおす必要があり、この作業を個々の扱歯体について行うことは長時間を要する。
【0018】
そこで、本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、脱穀する作物の品種や穀稈の性状に応じて行われる扱歯体の扱き作用角度を調整することができ、しかも、同扱き作用角度の調整時間を短縮することができる脱穀装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明に係る脱穀装置では、扱胴を具備すると共に、同扱胴は、円筒状の周壁を有する扱胴本体をその軸線廻りに回転可能となし、同扱胴本体の周壁面に、螺旋状に伸延するスクリュー羽根体を突設し、同スクリュー羽根体に複数の扱歯体を突設して構成した脱穀装置において、各扱歯体は、螺旋状に伸延するスクリュー羽根体に、扱胴本体の軸線を中心とする半径方向に指向させて突出状に取り付けると共に、各扱歯体の指向方向と螺旋状に伸延するスクリュー羽根体の伸延方向とがなす扱歯体の取付角度は、スクリュー羽根体から各扱歯体を取り外すことなく調節可能とした。
【0020】
また、以下の点にも特徴を有する。
【0021】
(1)各扱歯体は、スクリュー羽根体に基端部を枢支して、スクリュー羽根体の伸延方向に回動自在となす一方、同スクリュー羽根体に連結体をスクリュー羽根体の伸延方向に位置調節自在に取り付け、同連結体に各扱歯体の中途部を連結して、同連結体を介して複数の扱歯体を一体的に回動させて、複数の扱歯体の取付角度を同時に調節可能となしたこと。
【0022】
(2)スクリュー羽根体の一側面側に各扱歯体を取り付ける一方、同スクリュー羽根体の他側面側に連結体を取り付けると共に、同連結体は、スクリュー羽根体の側面に沿わせて螺旋状に伸延させて形成し、同スクリュー羽根体の側面に面接触させて摺動位置調節自在に取り付けたこと。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の脱穀装置によれば、スクリュー羽根体から各扱歯体を取り外すことなく扱歯体の取付角度を変更して扱き作用角度(扱歯体の扱き作用縁部とスクリュー羽根体の先端周縁部とがなす角度)を調節することができるようになるため、脱穀する穀稈の性状に応じて行われる脱穀状態の調整時間を短縮することができる。
【0024】
また、請求項2に記載の脱穀装置によれば、スクリュー羽根体に沿って連結体の位置を微調整するだけで、複数の扱歯体の取付角度を変更することにより、それらの扱き作用角度を簡単かつ確実に一度で調節することができるため、かかる調整作業の手間を大幅に削減することができる。
【0025】
また、本発明の脱穀装置によれば、連結体は、スクリュー羽根体の側面に沿わせて螺旋状に伸延させて形成され、同スクリュー羽根体の側面に面接触させて摺動位置調節自在に取り付けられているので、連結体は、スクリュー羽根体の補強板としても機能するようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1には、本発明の一実施形態に係る脱穀装置が搭載されたコンバインA全体の側面図が示され、図2には、コンバインA全体の上面図が示されている。コンバインAは、稲、麦に限らず大豆、ソバ等の複数種類の穀類の刈取、脱穀作業を行う全稈投入型のコンバインである。図1、図2に示されるように、コンバインAでは、走行機体1の前方に刈取部2が取り付けられている。走行機体1は、後述する構成により、前進又は後退が可能となっており、走行機体1が前進することにより、走行機体1の前方にある穀稈が、刈取部2内に進入し、進入した穀稈が刈取部2内で刈り取られるようになる。
【0028】
まず、走行機体1の構成について説明する。走行機体1においては、その前進又は後退を可能とする左右一対のクローラ式の走行部(3、3)上に機体フレーム4が設けられている。左右の走行部(3,3)の回転数を異ならしめることにより、左右の進路変更も可能となっている。
【0029】
機体フレーム4の上の左側上部に、脱穀装置としての脱穀部5が配設され、その下に選別部6が配設されている。機体フレーム4上の右側上部には、前方から後方に渡って運転部7と貯留部8と原動機部10と穀粒搬出オーガ9とが配設されている。
【0030】
刈取部2内には、走行部(3,3)の前進により、所定の刈幅内の未刈り穀稈が進入する。刈取部2では、デバイダ31と掻込みリール33との協働により、この未刈り穀稈が、プラットフォーム28側へ掻込まれる。そして、掻込まれた未刈り穀稈の株元は刈刃30により刈り取られ、横送りオーガ29により略中央部に横送りされる。
【0031】
刈取部2には、四角形筒状のフィーダハウス25が設けられている。刈り取られた穀稈は、フィーダハウス25の搬入口部27よりフィーダハウス25内に搬送される。フィーダハウス25内には、搬送用コンベア35が配設されている。フィーダハウス25の後端に開口させた搬出口部26は、脱穀部5の扱室22と連通連結されている。フィーダハウス25内に搬送された穀稈は、搬送用コンベア35の搬送用スラットによりフィーダハウス25の底部に沿わせて後上方へ掻き上げられるようにして摺動され、フィーダハウス25の搬出口部26より脱穀部5に搬送される。
【0032】
脱穀部5には、扱室22が設けられている。この扱室22は、脱穀中は密閉されているが、作業者がメンテナンスを行うために開閉可能となっている。扱室22内には、軸流式(スクリュー形の)扱胴11が、その軸線が前後方向となるように横架されている。脱穀部5では、扱胴11がその軸線回りに回動することにより、刈取部2によって刈り取られた穀稈が脱穀されるようになる。
【0033】
選別部6には、上記脱穀部5にて脱穀された穀粒を揺動選別する揺動選別体12と、同揺動選別体12により選別された選別物をさらに風選する第1唐箕13及び第2唐箕14と、これらの唐箕13,14により風選された一番穀粒を回収する一番コンベア15及び二番穀粒を回収する二番コンベア16等が設けられている。
【0034】
運転部7には、キャビン17内の前部に操作コラム18が立設されている。操作コラム18の上端部にハンドル19等の各種操作系が設けられている。ハンドル19の後方には、運転席20が配設されている。
【0035】
貯留部8には、選別部6に設けられた一番コンベア15により回収された一番穀粒が貯留される。
【0036】
穀粒搬出オーガ9は、前記貯留部8内に貯留している一番穀粒を運搬車の荷台等に搬出する。
【0037】
原動機部10には、エンジン21等が搭載されている。このエンジン21の駆動により、各構成部、すなわち、刈取部2、走行部3、脱穀部5、選別部6、貯留部8、及び穀粒搬出オーガ9が動作する。
【0038】
図3には、扱胴11の側面図が示され、図4には、扱胴11の正面図が示されている。
【0039】
図3に示されるように、扱室22の一部を形成する前壁71と後壁72との間に、前後方向に伸延する回転軸34を横架し、同回転軸34に扱胴11を軸架している。ここで、回転軸34は、原動機部10のエンジン21の駆動により回転するようにしている。
【0040】
図3、図4にて総合して示されるように、扱胴11は、扱胴本体31と、スクリュー羽根体32と、扱歯体33とを備えている。扱胴本体31は、回転軸34に、円板状の前端壁76と後端壁77とを介して、前後方向に伸延する円筒状の周壁73を取り付けて形成しており、同周壁73は、その中心軸線を回転軸34の軸線と符合させ、同回転軸34と一体的に回転(本実施例では正面視にて反時計回りに回転)するようにしている。
【0041】
スクリュー羽根体32は、扱胴本体31の周壁73の周面上に巻装された(すなわち扱胴本体31の周壁73の周面に沿って、螺旋状に伸延する)一般構造用圧延鋼材、例えば炭素鋼材を素材とする帯状材であり、いわゆる螺旋扱歯である。スクリュー羽根体32は、ロータスクリューとも呼ばれている。扱胴本体31がコンバインAの前側から見て反時計回りに回転すると、扱室22内の穀稈は、このスクリュー羽根体32によって、後方に送られるようになる。
【0042】
図4に示されるように、このスクリュー羽根体32には、多数の扱歯体33が配設されている。各扱歯体33は、スクリュー羽根体32の伸延方向に沿って45度間隔で配設されている。これにより、スクリュー羽根体32一周に当たり、8本の扱歯体が取り付けられるようになる。個々の扱歯体33は、スクリュー羽根体32の伸延方向に、扱胴本体31の軸線を中心とする略半径方向に指向させてスクリュー羽根体32から突出している。扱胴11が、回転軸34回りに回転し、各扱歯体33が、穀稈に扱き作用することにより、穀稈から穀粒が扱き落とされるようになる。
【0043】
扱歯体33は、一般構造用圧延鋼材、例えば炭素鋼材を素材とした薄片である。その薄片の一部は、スクリュー羽根体32から扱胴本体31の略半径方向外側に延出しており、スクリュー羽根体32から突出した部分は、山形となっている。
【0044】
図5(a)に拡大して示されるように、扱歯体33には、2つのボルト挿通孔41,42が穿設されている。この2個のボルト挿通孔41,42は、扱胴本体31の略半径方向に間隔を空けて配置されている。このうち、ボルト挿通孔41は、真円状の貫通孔となっているが、ボルト挿通孔42は、扱歯体33がスクリュー羽根体32に調整自在に取り付けられるように、その扱胴本体31の半径方向を長手方向とする長穴となっている。
【0045】
図5(b)には、扱胴11を構成するスクリュー羽根体32の正面図が示されている。図5(b)に示されるように、スクリュー羽根体32の内径は、扱胴本体31の外形とほぼ同じである。図5(b)では、スクリュー羽根体32は、環状に見えるが、実際には、螺旋状となっている。図5(b)に拡大して示されるように、スクリュー羽根体32には、扱歯体33のボルト挿入孔41、42に対応する位置に、それぞれボルト挿通孔43,44が設けられている。ボルト挿通孔43は、真円状の貫通孔となっているが、ボルト挿通孔44は、スクリュー羽根32が螺旋状に伸延する方向を長手方向とする長穴となっている。
【0046】
さらに、扱胴11は、上述した、扱胴本体31と、スクリュー羽根体32と、扱歯体33とに加え、連結体35をさらに備えている。図5(c)には、扱胴11を構成する連結体35の正面図が示されている。図5(c)では、連結体35は、環状に見えるが、実際には、螺旋状となっている。図5(c)に示されるように、連結体35の外径は、スクリュー羽根体32の外径と同じとなっている。また、連結体35の螺旋のピッチは、スクリュー羽根体32の螺旋のピッチと同じとなっている。
【0047】
連結体35は、スクリュー羽根体32の側面に沿って螺旋状に伸延させた帯状長板部材であり、同スクリュー羽根体32の一側面(扱歯体33が取り付けられる側面とは反対側の側面)に取り付けられる。そして、連結体35の幅は、スクリュー羽根体32の幅よりも短くなっている。また、連結体35の伸延方向の長さは、スクリュー羽根体32の一周分の長さとなっている。図3に示されるように、スクリュー羽根体32は、扱胴本体31の円筒側面上を11周しているので、合計で11個の連結体35が、スクリュー羽根体32に取り付けられるようになる。
【0048】
図5(c)に拡大して示されるように、連結体35には、扱歯体33のボルト挿入孔41に対応する位置に、ボルト挿通孔45が設けられている。ボルト挿通孔45は、真円状の貫通孔となっている。
【0049】
図5(a)に示される8本の扱歯体33と、図5(b)に示されるスクリュー羽根体32と、図5(c)に示される連結体35とは、ボルトとナットとで連結される。図6(a)には、扱歯体33付近の拡大図が示され、図6(b)には、図6(a)のB−B’断面図が示されている。
【0050】
図6(a)、図6(b)に示されるように、扱歯体33と、スクリュー羽根体32とが、この順で、ボルト51とナット53とで連結され、扱歯体33と、連結体35とが、スクリュー羽根体32のボルト挿通孔44を介して、ボルト52とナット54とで、連結されている。
【0051】
ボルト51は、ワッシャー56と、カラー55に挿入されたうえで、扱歯体33のボルト挿通孔41に挿入された状態で、ナット53と螺合している。ボルト52も、ワッシャー56と、カラー55に挿入されたうえで、扱歯体33のボルト挿通孔41と、スクリュー羽根体32のボルト挿通孔44に挿入された状態で、ナット54と螺合している。カラー55は、ボルト51、52と、扱歯体33のボルト挿通孔41や、スクリュー羽根体32のボルト挿通孔44との間のガタをなくすために挿入されている。
【0052】
前述のように、扱歯体33は、スクリュー羽根体32から略半径方向外側に山形に延出しており、扱胴11の回転方向は、図6(a)の矢印で示される方向(正面視で反時計回り)となっている。したがって、扱室22内に搬入された穀稈は、扱歯体33の突出した部分の回転方向側の辺(図6(a)の扱き作用縁部75)に当たって、穀粒が扱き落とされるようになる。なお、穀稈が扱歯体33に当たって扱歯体33自体が回転するのを防止すべく、扱歯体33は、スクリュー羽根体32と、扱歯体33と、連結体35とは、2つのボルト51、52とナット53、54とで、2箇所で連結されている。
【0053】
また、前述のように、スクリュー羽根体32に設けられたボルト挿通孔44は、扱胴本体31の回転方向に長い長穴となっているため(図5(b)参照)、ボルト52の締め付けを緩めて、連結体35を、スクリュー羽根体32の伸延方向にスライドさせて、その取り付け位置を微調整することができるようになっている。
【0054】
連結体35を、スクリュー羽根体32の伸延方向にスライドさせると、スクリュー羽根体32内のボルト挿通孔44内で、ボルト52をスクリュー羽根体32の伸延方向に移動させることができるようになる。ボルト52が移動すると、その移動に伴って扱歯体33は、ボルト51を中心に回転する。すなわち、連結体35の取り付け位置をスクリュー羽根体32の伸延方向にスライドさせることにより、スクリュー羽根体32の伸延方向と、扱歯体33の突出方向(指向方向)との成す角度(取付角度)αを、所定範囲(図6(a)では、±15°の範囲)内で変更することができるようになっている。
【0055】
なお、扱歯体33に設けられたボルト挿通孔42は、扱胴本体31の半径方向を長手方向とする長穴となっている。これにより、ボルト51とボルト52との間隔が微小に変化した場合にも適応することができるようにしている。
【0056】
以上述べたように、各扱歯体33は、その基端部がスクリュー羽根体32に枢支されており、スクリュー羽根体32の伸延方向に回動自在となっている。また、連結体35は、スクリュー羽根体の伸延方向に位置調節自在に取り付けられており、その連結体35に各扱歯体33の中途部が連結されている。したがって、連結体35の位置を調整すれば、連結体35を介して複数の扱歯体33が一体的に回動可能となり複数の扱歯体33の取付角度αを同時に調節可能となっている。
【0057】
スクリュー羽根体32の伸延方向に関する扱歯体33の取付角度αを変えると、脱穀される穀稈に作用する扱歯体33の扱き作用縁部75の姿勢、すなわち扱き作用縁部75と、スクリュー羽根体32の先端周縁部とがなす角度(扱き作用角度)が変わるため、穀稈の脱穀状態(扱き作用度合い)を変更することができる。
【0058】
例えば、扱歯体33を、図6(a)において実線で示される位置とし、扱胴11の回転方向に関する扱歯体33の取付角度αを90度に設定する。この場合には、穀稈が、扱歯体33の扱き作用縁部75の立ち上がり角度(扱き作用角度)が急峻になって穀稈が扱き作用縁部75から受ける扱き作用度合いが大きくなるので、穀稈が扱歯体33から扱き作用を受けている時間、すなわち滞留時間が短くなる。この結果、穀粒の扱き落とし方が粗くなる。また、扱胴11の駆動トルクは大きくなり、脱穀時間は短くなる。
【0059】
一方、扱歯体33を、図6(a)において一点鎖線で示される位置とし、扱胴11の回転方向に関する扱歯体33の取付角度αを105度に設定する。この場合には、扱歯体33の扱き作用縁部75の立ち上がり角度(扱き作用角度)が緩やかになって穀稈が扱き作用縁部75から受ける扱き作用度合いが小さくなるので、穀稈が扱歯体33から扱き作用を受けている時間、すなわち滞留時間が長くなる。この結果、穀稈から穀粒をていねいに扱き落とすことができるようになる。また、扱胴11の駆動トルクは小さくなり、脱穀時間が長くなる。
【0060】
本実施形態では、作業者は、穀稈の種類や状態などの性状に応じて、その穀稈が常に最適な状態で脱穀できるように、スクリュー羽根体32の伸延方向に関する連結体35の取り付け位置をスライドさせて、扱歯体33の取付角度αを適宜設定した状態で、脱穀を行う。例えば、穀粒の扱き落としが比較的容易な穀稈の脱穀を行う場合には、扱歯体33を、図6(a)において、実線で示される位置とし、脱穀時間を短縮する。一方、穀粒の扱き落としが比較的困難な穀稈の脱穀を行う場合には、扱歯体33を、図6(a)において、一点鎖線で示される位置とし、滞留時間を長くして脱穀を丁寧に行うようにする。
【0061】
しかも、前述のように、扱室22は、メンテナンスのため開閉可能となっている。作業者は、扱室22を開いて、各ボルト51、52を緩め、連結体35の取り付け位置を微調整することにより、扱歯体33の取付角度αを調整する。このように、スクリュー羽根体32に沿って連結体35を所要の方向に摺動させて、同連結体35の位置を微調整し、その後に、上記各ボルト51、52を締め付けるだけで、多数の扱歯体33の取付角度αを一度に精度良く整合させて調節することができるので、個々の扱歯体33を延出方向に個別に調整する手間を省くことができるようになる。その結果、脱穀状態の調整時間をより短縮することができるようになる。
【0062】
さらには、本実施形態によれば、スクリュー羽根体32において、各扱歯体33が取り付けられている側面とは反対側の側面に取り付けられている。すなわち、スクリュー羽根体32の一側面に沿わせて螺旋状に伸延させて連結体35を同スクリュー羽根体32に面接触させた状態で連結しているので、連結体35は、スクリュー羽根体32の補強板としても機能して、同スクリュー羽根体32による扱歯体33の支持機能も良好に確保することができる。
【0063】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、スクリュー羽根体32から扱歯体33を取り外すことなく扱歯体33の取付角度αを変更して扱き作用角度を調節することができるようになるため、脱穀する穀稈の性状に応じて行われる脱穀状態の調整時間を短縮することができる。
【0064】
なお、上記実施形態では、連結体35の長さを、スクリュー羽根体32一周分の長さとしたが、連結体35の長さは、これ以下であっても、これ以上であってもよい。この長さは、スクリュー羽根体32に対する連結体35の取り付け誤差などによって適宜決定するのが望ましい。
【0065】
また、スクリュー羽根体32一周辺りの扱歯対33の数は、8個(45度間隔)には限られず、任意に決定することができるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上述べたように、本発明の脱穀装置は、汎用型のコンバインに搭載されるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの上面図である。
【図3】図1のコンバインの扱胴の側面図である。
【図4】図3のコンバインの扱胴の正面図である。
【図5】図5(a)は、扱歯体の正面図であり、図5(b)は、スクリュー羽根の正面図であり、図5(c)は、連結体の正面図である。
【図6】図6(a)は、扱歯体の拡大図であり、図6(b)は、図6(a)のB−B’断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 走行機体
2 刈取部
3 走行部
4 機体フレーム
5 脱穀部
6 選別部
7 運転部
8 貯留部
9 穀粒搬出オーガ
10 原動機部
11 扱胴
12 揺動選別体
13 第1唐箕
14 第2唐箕
15 一番コンベア
16 二番コンベア
17 キャビン
18 操作コラム
19 ハンドル
20 運転席
21 エンジン
22 扱室
25 フィーダハウス
26 搬出口部
27 搬入口部
28 プラットフォーム
29 横送りオーガ
31 扱胴本体
32 スクリュー羽根体
33 扱歯体
34 回転軸
35 連結体
41、42 ボルト挿通孔
43、44 ボルト挿通孔
45 ボルト挿通孔
51、52 ボルト
53、54 ナット
55 カラー
56 ワッシャー
71 前壁
72 後壁
73 周壁
75 扱き作用縁部
76 前端壁
77 後端壁
A コンバイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴を具備すると共に、同扱胴は、円筒状の周壁を有する扱胴本体をその軸線廻りに回転可能となし、同扱胴本体の周壁面に、螺旋状に伸延するスクリュー羽根体を突設し、同スクリュー羽根体に複数の扱歯体を突設して構成した脱穀装置において、
各扱歯体は、螺旋状に伸延するスクリュー羽根体に、扱胴本体の軸線を中心とする半径方向に指向させて突出状に取り付けると共に、
各扱歯体の指向方向と螺旋状に伸延するスクリュー羽根体の伸延方向とがなす扱歯体の取付角度は、スクリュー羽根体から各扱歯体を取り外すことなく調節可能となしたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
各扱歯体は、スクリュー羽根体に基端部を枢支して、スクリュー羽根体の伸延方向に回動自在となす一方、同スクリュー羽根体に連結体をスクリュー羽根体の伸延方向に位置調節自在に取り付け、
同連結体に各扱歯体の中途部を連結して、同連結体を介して複数の扱歯体を一体的に回動させて、複数の扱歯体の取付角度を同時に調節可能となしたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
スクリュー羽根体の一側面側に各扱歯体を取り付ける一方、同スクリュー羽根体の他側面側に連結体を取り付けると共に、
同連結体は、スクリュー羽根体の側面に沿わせて螺旋状に伸延させて形成し、同スクリュー羽根体の側面に面接触させて摺動位置調節自在に取り付けたことを特徴とする請求項2に記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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