説明

脱穀装置

【課題】扱室を形成する扱胴カバーの内面側に、この扱室内を流動する処理物に接触して、該処理物を扱室内で停滞させながら送塵量を調整する送塵ガイドを備えたコンバインの脱穀装置において、簡単且つ安価な構成の送塵ガイドで以って自動的且つ確実に送塵量の調整を行えるようにする。
【解決手段】扱室11を形成する扱胴カバー15の内面側に、扱室11における処理物の流動量が増えると送塵量を増加させる方向に変形可能な弾性材料からなる送塵ガイド16,16´を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱室内を流動する処理物に接触して、該処理物の流量を調整可能な送塵ガイドを備えたコンバインやハーベスタ等の脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの脱穀装置を構成する扱室内に、穀稈または処理物の送り方向に対して交差する位置に揺動自在な翼板からなる排塵調節弁(送塵ガイド)を設け、この排塵調節弁を処理物の発生に応動して開き方向に自動的に傾動可能に構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭52−61752号公報(図1−図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した特許文献1の排塵調節弁は、藁屑等の発生が少なくなると閉じ方向に自動的に傾動するようにスプリングを介して適正な付勢力が付与されており、排塵調節弁を構成する回動支点や複雑な揺動リンクを必要とし、また前記スプリングや回動支点に藁屑等が付着することにより排塵調節弁の傾動動作が不安定になると、処理物の流動量を所望の状態に調整できなくなるといった不具合を有していた。更に処理物の発生量が著しく増加した場合は、排塵調節弁が破損する虞もあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、扱室を形成する扱胴カバーの内面側に、この扱室内を流動する処理物に接触して、該処理物を扱室内で停滞させながら送塵量を調整する送塵ガイドを備えた脱穀装置において、前記処理物の流動量が増えると送塵量を増加させる方向に変形可能な弾性材料からなる送塵ガイドを設けたことを第1の特徴としている。
そして、前記送塵ガイド16がバネ材からなることを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明によれば、扱室を形成する扱胴カバーの内面側に、処理物の流動量が増えると送塵量を増加させる方向に変形可能な弾性材料からなる送塵ガイドを設けたことによって、扱室内で発生する藁屑等を充満させることなく自動的且つ確実に後方へ送塵して脱穀性能を維持することができると共に、処理物の発生量が著しく増加した場合でも当該送塵ガイド自体の変形によりその破損を回避できる。
そして、請求項2の発明によれば、前記送塵ガイドがバネ材からなり、それによって簡単且つ安価な構成の送塵ガイドを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、コンバイン1の平面図であって、該コンバイン1は、圃場内に植立する穀稈を刈り取る前処理部2と、刈り取った穀稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部3と、選別した穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク4と、穀粒タンク4内の穀粒を機外に排出する穀粒排出オーガ5と、脱穀済みの排藁を後処理する後処理部6と、座席7や各種操作具を配置した操縦部8を備えている。
【0007】
そして、脱穀部3は、図2に示すように、穀稈の株元を挟持して後方に搬送する脱穀フィードチェン9と、この脱穀フィードチェン9が搬送する穀稈の穂先側が導入される扱室11と、扱室11内に回転自在に内装すると共に外周部に突設した複数の扱歯12aによって穀稈の穂先側から穀粒を脱穀する扱胴12と、主として扱室11から穀粒を漏下させる多数の漏下孔を備えて扱胴12の下側に沿って設けた受網13と、受網13から漏下した穀粒を選別する選別室14を備えている。
【0008】
また、扱室11の上部は、該扱室11を形成する開閉自在な扱胴カバー(シリンダーカバー)15で覆ってあり、この扱胴カバー15を開き操作すると扱室11の上方が広く開放されるので、当該扱室11内の清掃、点検、及び整備作業等を容易に行うことができる。
【0009】
そして、扱胴カバー15の内面側には、本発明の要部である送塵ガイド16を設けている。この、送塵ガイド16は、扱室11内を流動する処理物に接触して、該処理物の単位時間当たりの流動量を調整する部材であり、その支持構造を、図3及び図4に基づいて以下説明する。
【0010】
上述した送塵ガイド16は、扱胴カバー15の開放端側に固設した正面視で右下がり傾斜のカバー体15aに螺設したブラケット17のボス部17aに回動自在に支持している。即ち、送塵ガイド16の基端部に固設した回動支点軸16aを前記ボス部17aに挿通支持すると共に、回動支点軸16aの上端に送塵ガイド16の開度調節アーム18を螺設し、更にこの開度調節アーム18の先端に当該送塵ガイド16の回動規制ピン18aを固設している。
【0011】
そして、扱胴カバー15の開放端側に螺設した正面視でコ字状の断面形状を有するフレーム部材19には、送塵ガイド16の回動支点軸16aを中心とする円弧状の長孔Hを設けたブラッケット21を螺設してあり、前記長孔Hに送塵ガイド16の回動規制ピン18aの先端(上端)が貫通するように構成している。
【0012】
以上説明した構成によれば、ブラッケット21に設けた円弧状の長孔Hに貫通する送塵ガイド16の回動規制ピン18を図4にB矢印で示す如く揺動させることができ、この回動規制ピン18の揺動に伴って送塵ガイド16もB´矢印で示すように揺動し、図5(a),(b)にC矢印で示す処理物の流動方向に対する送塵ガイド16の開度を調節できるようになっている。尚、送塵ガイド16の開度の固定は、回動規制ピン18の先端をナット22で締め付けることによってなされる。
【0013】
更に詳しくは、例えば扱室11内で発生する枝梗付着粒が多い場合は、扱室11内を流動する処理物の流動方向Cに対して送塵ガイド16を閉じ側に調節することにより、単位時間当たりの処理物の流動量を減らすことができる。即ち、処理物を扱室11内で停滞させて該扱室11内における枝梗付着粒の脱穀作用時間を長くすることができる。また、扱室11内で発生する藁屑が多くなると、その負荷により扱室11内で異音の発生やエンジンドロップが起こることがあり、この場合は、扱室11内を流動する処理物の流動方向Cに対して送塵ガイド16を開き側に調節することにより、単位時間当たりの処理物の流動量を増加させて扱室11内における藁屑のはけを促進することができる。
【0014】
また、上述した送塵ガイド16を簡単且つ安価なバネ材または硬質ゴム等の弾性材料で構成すれば、扱室11内を流動する処理物の単位時間当たりの流動量が増えると送塵量を増加させる方向に、当該送塵ガイド16の先端側を図5(b)に示す如く変形させることができ、それにより扱室11内で発生する藁屑等を充満させることなく自動的且つ確実に後方へ送塵して脱穀性能を維持することができると共に、処理物の発生量が著しく増大した場合でも当該送塵ガイド16自体の変形によりその破損を回避できる。
【0015】
尚、図6に示す実施例は、扱胴カバー15の開放端側に固設したカバー体15aに、押え板23を介して硬質ゴム(弾性材料)からなる送塵ガイド16´を直接螺設したものであり、この送塵ガイド16´の先端側は、扱室11内を流動する処理物の単位時間当たりの流動量が増えると、図示実線と二点鎖線で示す範囲で変形する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】コンバインの平面図。
【図2】脱穀装置の一部を省略した正断面図。
【図3】送塵ガイドの指示構造を示す要部拡大断面図(第一実施例)。
【図4】図3におけるA矢視。
【図5】(a),(b)送塵ガイドの作用説明図(第一実施例)。
【図6】送塵ガイドの指示構造を示す要部拡大断面図(第二実施例)。
【符号の説明】
【0017】
11 扱室
15 扱胴カバー
16 送塵ガイド(第一実施例)
16´ 送塵ガイド(第二実施例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(11)を形成する扱胴カバー(15)の内面側に、この扱室(11)内を流動する処理物に接触して、該処理物を扱室(11)内で停滞させながら送塵量を調整する送塵ガイド(16,16´)を備えた脱穀装置において、前記処理物の流動量が増えると送塵量を増加させる方向に変形可能な弾性材料からなる送塵ガイド(16,16´)を設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記送塵ガイド(16)がバネ材からなる請求項1に記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−33996(P2009−33996A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198980(P2007−198980)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】