説明

脱穀装置

【課題】揺動選別棚上の被処理物の層厚の偏りを少なくし、選別精度を高める。
【解決手段】扱胴(9)を軸架した扱室(2)の一側部に扱口(12)を形成し、扱室(2)の他側後部には排塵処理胴(24)を軸架した排塵処理室(25)の始端部を連通口(26)を介して連通し、排塵処理室(25)の前側には排塵処理胴(24)と同軸で駆動される二番処理胴(28)を軸架した二番処理室(34)を設け、扱室(2)と排塵処理室(25)と二番処理室(34)の下方に揺動選別棚(44)を設けた脱穀装置において、二番処理室(34)の被処理物移送方向終端部に、二番処理胴(28)に連動して駆動するファン(40)を設け、ファン(40)の吸気口(39)を二番処理室(34)内に臨ませ、該ファン(40)の排気口(43)を揺動選別棚(44)の始端部に臨ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、扱胴を軸架した扱室の一側部に扱口を形成し、扱室の後部他側には排塵処理胴を軸架した排塵処理室の始端部を連通口を介して連通し、排塵処理室の前側には排塵処理胴と同軸で駆動される二番処理胴を軸架した二番処理室を設け、扱室と排塵処理室と二番処理室の下方に揺動選別棚を設けた脱穀装置が知られている。
脱穀作業においては、揺動選別後の二番物は二番処理室に還元され、二番処理胴によって脱穀装置の前方へ向けて移送されながら処理された後、揺動選別棚の反扱口側の部位に落下して再選別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3146924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来の脱穀装置では、二番処理室内で処理した二番物が、揺動選別棚の反扱口側の部位に集中的に落下するため、この揺動選別棚上の被処理物の層の厚さが左右方向で偏り、選別精度が低下する問題がある。
この発明は、上記課題を解決し、脱穀装置による選別精度を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するために、次の技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、扱胴(9)を軸架した扱室(2)の一側部に扱口(12)を形成し、前記扱室(2)の他側後部には排塵処理胴(24)を軸架した排塵処理室(25)の始端部を連通口(26)を介して連通し、前記排塵処理室(25)の前側には排塵処理胴(24)と同軸で駆動される二番処理胴(28)を軸架した二番処理室(34)を設け、前記扱室(2)と排塵処理室(25)と二番処理室(34)の下方に揺動選別棚(44)を設けた脱穀装置において、前記二番処理室(34)の被処理物移送方向終端部に、二番処理胴(28)に連動して駆動するファン(40)を設け、該ファン(40)の吸気口(39)を二番処理室(34)内に臨ませ、該ファン(40)の排気口(43)を揺動選別棚(44)の始端部に臨ませたことを特徴とする脱穀装置とした。
請求項2記載の発明は、前記排気口(43)からの排気を、揺動選別棚(44)上における反扱口(12)側の部位から扱口(12)側の部位へ向けて送風する構成とした請求項1記載の脱穀装置とした。
請求項3記載の発明は、前記ファン(40)を二番処理胴(28)と同軸で駆動する構成とした請求項1または請求項2記載の脱穀装置とした。
請求項4記載の発明は、前記吸気口(39)を、二番処理胴(28)の下側に配置した受樋(37)の被処理物移送方向における終端部上側の部位に配置した請求項1または請求項2または請求項3記載の脱穀装置とした。
請求項5記載の発明は、前記受樋(37)に多数の濾過孔を備えた請求項4記載の脱穀装置とした。
請求項6記載の発明は、前記排気口(43)からの送風によって受樋(37)からの漏下物を揺動選別棚(44)の後方へ送る構成とした請求項4または請求項5記載の脱穀装置とした。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、二番処理室(34)の被処理物移送方向終端部に設けたファン(40)によって、二番処理室(34)内で処理した二番物を吸い出し、このファン(40)からの送風によって揺動選別棚(44)上に拡散しながら放出することで、揺動選別棚(44)上の被処理物の層厚の偏りを少なくし、選別精度を高めることができる。
また、このファン(40)は二番処理胴(28)に連動して駆動するため、独立した駆動機構を必要とせず、安価に提供することができる。
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加え、揺動選別棚(44)上における反扱口(12)側の部位から扱口(12)側の部位へ向けて送風される排気風によって、扱室(2)から揺動選別棚(44)の反扱口(12)側に多量に漏下する被処理物を、揺動選別棚(44)上の扱口(12)側の部位へ向けて拡散させ、選別能率を更に高めることができる。
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1または請求項2記載の発明の効果を奏するうえで、ファン(40)を二番処理胴(28)と同軸で駆動することで、二番処理胴(28)側からファン(40)を連動する特別な伝動機構を必要とせず、より安価に提供することができる。
請求項4記載の発明によれば、上記請求項1または請求項2または請求項3記載の発明の効果を奏するうえに、二番物を二番処理室(34)内で処理しながら受樋(37)で受けて終端部まで移送し、この終端部上側の部位に配置した吸気口(39)から円滑に吸い出すことができる。
請求項5記載の発明によれば、上記請求項4記載の発明の効果を奏するうえに、二番処理室(34)内で単粒化した穀粒を、受樋(37)の目合いから揺動選別棚(44)上に漏下させて回収することができ、この穀粒がファン(40)によって損傷する不具合を少なくすることができる。
請求項6記載の発明によれば、上記請求項4または請求項5記載の発明の効果に加え、排気口(43)からの送風によって、二番処理室(34)の受樋(37)から漏下する穀粒を揺動選別棚(44)の後方へ送ることで、選別精度が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】脱穀装置の説明用側面図。
【図2】脱穀装置の説明用平面図。
【図3】扱室を省略して示す脱穀装置の説明用平面図。
【図4】脱穀装置の説明用背面図。
【図5】脱穀装置の説明用背面図。
【図6】脱穀装置の説明用背面図。
【図7】脱穀装置の説明用側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明の実施の形態を、コンバインに搭載される脱穀装置を例示して説明する。
(全体レイアウト)
図1、図2に示すように、コンバインの機台フレーム上に搭載する脱穀装置1は、その上部に、扱室2と排塵処理室25と二番処理室34を備え、下部には選別室5を備える。
(扱室)
上記扱室2は、前側壁6と後側壁7の間に、多数の扱歯8を備えた扱胴9を扱胴軸10で軸架し、左側の外側壁11には前後方向に沿って扱口12を開口して形成する。
【0009】
扱胴9の下部外周には、扱網61を張設する。
この扱口12の左外側下部には、脱穀穀稈を扱口12から扱室2内へ挿入した状態で後方へ搬送するフィードチェン13を配置する。
【0010】
また、前記後側壁7の後方には、フィードチェン13の終端部から脱穀後の排藁を引き継いで後方へ搬送する排藁搬送装置14を設ける。この排藁搬送装置14は、排藁の穂先側を係止搬送するラグ式の穂先搬送装置15と、排藁の株元側を挟持搬送するチェン式の株元搬送装置16を平面視で平行に配置して構成し、後側壁7に連結した支持フレーム17で支持する。前記扱胴軸10の後端部に取り付けたプーリ18と、伝動ケース19の入力軸に設けたプーリ20との間に伝動ベルト21を巻き掛け、伝動ケース19の出力軸22を穂先搬送装置15の内部を貫通させて左外側へ延出させ、この出力軸22の端部に取り付けた駆動スプロケットで株元搬送装置16の中間部を駆動する。そして、この株元搬送装置16の終端部側に係合したスプロケットから、穂先搬送装置15後端部に駆動スプロケットを駆動する構成としている。この排藁搬送装置14の終端部は、脱穀装置1の後側に設ける排藁切断装置23の上部に臨ませて配置する。また、排藁搬送装置14の下側には、横断流ファン式の排塵ファン32を設ける。
(排塵処理室)
前記扱室2の右側後方の部位には、排塵処理胴24を軸架した排塵処理室25を設け、この排塵処理室25の前端部左側の部位を、前記扱室2の後端部右側の部位に、連通口26を介して連通させる。
【0011】
前記排塵処理胴24を排塵処理室25内に軸架する排塵処理胴軸27は、後述する二番処理胴28を軸架する二番処理胴軸29と同軸である。
【0012】
この排塵処理胴24における連通口26に臨む部位には、被処理物取り込み用の取込螺旋30を巻き掛け、排塵処理胴24における連通口26よりも後側の部位には、前記取込螺旋30よりもピッチの小さい処理螺旋31を巻き掛ける。尚、前記処理螺旋31に代えて多数の処理歯を設ける構成としてもよい。
【0013】
前記排塵処理胴24の下部外周には、格子上の濾過部材33を配置する。
(二番処理室)
前記排塵処理室25の前側には、二番処理胴28を二番処理胴軸29で軸架した二番処理室34を設ける。
【0014】
この二番処理胴29の後部には連続螺旋35を巻き掛け、二番処理胴29の中間部には多数の処理歯36を設ける。
【0015】
この二番処理室34の後端上部には、二番還元装置59の上端部の還元口60を開口させて二番物を還元する構成とし、この還元された二番物を、連続螺旋35と処理歯36によって二番処理室34の前部へ移送しながら処理する構成とする。
【0016】
また、前記二番処理胴28の下部外周に沿って、多数の濾過孔を有する目抜き鉄板で形成した受樋37を、二番処理室34の全長に亘って設ける。
(吸気口とファン)
前記二番処理室34の前端を形成する前壁38は、この二番処理室34内における二番物の移送終端となる。この前壁38の一部に切り欠き部を形成して二番処理胴軸29の前端部を前方へ貫通させ、この切り欠き部における二番処理胴軸29の周囲の部位に吸気口39を形成する。
【0017】
そして、二番処理胴軸29における前壁38よりも前側の部位に、該二番処理胴軸29から放射方向に延出した羽根板を有するファン40を設け、このファン40の外周をケーシング41で囲う。
(排気口)
前記ケーシング41の下部には送風ダクト42の上部を接続し、この送風ダクト42の下部に開口した排気口43を、後述する揺動選別棚44の始端部上側に臨ませて配置する。
また、この排気口43は、揺動選別棚44上における反扱口12側(右側)の部位から扱口12側(左側)の部位へ向けて斜めに送風するように配置し、排気口43からの送風によって受樋37からの漏下物(単粒化した穀粒など)を揺動選別棚44の左後方へ拡散する構成とする。
(二番処理胴の伝動)
前記二番処理胴軸29の前端をケーシング41を貫通させて更に前方に延出させ、ケーシング41の外部前面に取り付けた伝動ケース45内に挿入し、この伝動ケース45の内部の伝動機構を介して、この伝動ケース45の右外側に突出した入力軸46に連動させる。前記入力軸46の突出端部には、エンジンの駆動力が入力される入力プーリ47を取り付ける。
(揺動選別棚)
前記選別室5には、前後方向および上下方向に往復揺動しながら被処理物を選別する揺動選別棚44を設け、この揺動選別棚44の下側において、唐箕48と、一番移送螺旋49と、二番移送螺旋50を、前方から後方へこの順に配置する。
【0018】
前記揺動選別棚44には、波板状の移送棚51と、左右方向の多数の板体を前後方向に間隔をおいて配置したグレンシーブ52と、ストローラック53を、前方から後方へこの順に備える。前記排塵ファン32は、ストローラック53の上方に配置される。
(実施例による効果)
以上の構成により、二番処理胴軸29が、脱穀装置1の背面視において反時計回りに回転すると、ファン40の回転によって二番処理室34内の空気が吸気口39から吸い出され、排気口43から吹き出す。
この際、ファン40によって、二番処理室34内で処理した二番物を吸い出し、このファン40からの送風によって揺動選別棚44上に拡散しながら放出することで、揺動選別棚44上の被処理物の層厚の偏りを少なくし、選別精度を高めることができる。
また、このファン40は二番処理胴28に連動して駆動するため、独立した駆動機構を必要とせず、安価に提供することができる。
また、揺動選別棚44上における反扱口12側の部位から扱口12側の部位へ向けて送風される排気風によって、扱室2から揺動選別棚44の反扱口12側に多量に漏下する被処理物を、揺動選別棚44上の扱口12側の部位へ向けて拡散させ、選別能率を更に高めることができる。
また、ファン40を二番処理胴28と同軸で駆動することで、二番処理胴28側からファン40を連動する特別な伝動機構を必要とせず、より安価に提供することができる。
また、二番物を二番処理室34内で処理しながら受樋37で受けて終端部まで移送し、この終端部上側の部位に配置した吸気口39から円滑に吸い出すことができる。
また、二番処理室34内で単粒化した穀粒を、受樋37の目合いから揺動選別棚44上に漏下させて回収することができ、この穀粒がファン40によって損傷する不具合を少なくすることができる。
また、排気口43からの送風によって、二番処理室34の受樋37から漏下する穀粒を揺動選別棚44の後方へ送ることで、選別精度が更に向上する。
(周辺構成の補足、変形例)
図3に示すように、前記揺動選別棚44における移送棚51の上面に、反扱口12側から扱口12側に向けて傾斜した3枚の寄せ板54を設ける。この寄せ板54は、前記排気口43からの送風方向に沿い、この送風と共に流れてくる二番物を、扱室2から漏下した被処理物と共に左右方向へ拡散して層厚を薄くするためのものである。
【0019】
図4に示すように、前記ファン40は、二番処理胴軸29の前端部から放射方向に4枚の羽根板を延出させた構成であり、前記送風ダクト42は、脱穀装置1の背面視で扱口12側に向かって下がり傾斜する。扱室2の天井部分には、扱室2内における処理物の流れに抵抗を与える抵抗板55を設け、扱室2の天井部分の上側には、この抵抗板55を角度調節するレバー56を備える。
【0020】
図5に示すように、前記吸気口39は、脱穀装置1の背面視において、二番処理胴28の下半分に臨む前壁38の部位を切り欠いて形成するとよい。
【0021】
また、図6に示すように、前記吸気口39を、脱穀装置1の背面視において、二番処理胴28の右半分に臨む前壁38の部位を切り欠いて形成してもよい。
【0022】
また、図7に示すように、前記排気口43を、ダクト58を介して揺動選別棚44におけるグレンシーブ52の下方に配置した選別網57の上側に連通させてもよい。これによって、処理後の二番物を選別網57上に放出して選別することができる。尚、上記ダクト58は、唐箕48のケーシングの上側に配置する。
【0023】
また、排気口43から吹き出す風を、揺動選別棚44の揺動方向に沿う方向へ吹き出すように構成してもよい。これによって、揺動選別棚44上の被処理物の移送能力が高まる。
【0024】
また、排気口43に角度調節自在な風向案内板を設け、排気口43から吹き出す風の向きと二番物の放出方向を変更できる構成としてもよい。また、排気口43に開閉自在なシャッターを設けてもよい。
【0025】
また、前記ケーシング41には掃除口を設けて、内部に発生する詰まりを除去できるように構成するとよい。
【0026】
また、前記二番処理室34内における二番処理胴軸29の前端部には、二番物を吸気口39へ向けて送る羽根を設けてもよい。
【0027】
尚、参考例として、上記吸気口39を塞いでケーシング41の前壁を開口し、排気口43からの排気風をエンジンに向けて導く構成とすれば、エンジンの冷却効率が高まる。また、吸気口39を、ダクトを介してエンジンの周辺に連通させれば、エンジンの熱気を揺動選別棚44上に導入でき、湿材の脱穀選別作業の能率が高まる。
【符号の説明】
【0028】
2 扱室
9 扱胴
12 扱口
24 排塵処理胴
25 排塵処理室
26 連通口
28 二番処理胴
34 二番処理室
37 受樋
39 吸気口
40 ファン
43 排気口
44 揺動選別棚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(9)を軸架した扱室(2)の一側部に扱口(12)を形成し、前記扱室(2)の他側後部には排塵処理胴(24)を軸架した排塵処理室(25)の始端部を連通口(26)を介して連通し、前記排塵処理室(25)の前側には排塵処理胴(24)と同軸で駆動される二番処理胴(28)を軸架した二番処理室(34)を設け、前記扱室(2)と排塵処理室(25)と二番処理室(34)の下方に揺動選別棚(44)を設けた脱穀装置において、前記二番処理室(34)の被処理物移送方向終端部に、二番処理胴(28)に連動して駆動するファン(40)を設け、該ファン(40)の吸気口(39)を二番処理室(34)内に臨ませ、該ファン(40)の排気口(43)を揺動選別棚(44)の始端部に臨ませたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記排気口(43)からの排気を、揺動選別棚(44)上における反扱口(12)側の部位から扱口(12)側の部位へ向けて送風する構成とした請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記ファン(40)を二番処理胴(28)と同軸で駆動する構成とした請求項1または請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記吸気口(39)を、二番処理胴(28)の下側に配置した受樋(37)の被処理物移送方向における終端部上側の部位に配置した請求項1または請求項2または請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記受樋(37)に多数の濾過孔を備えた請求項4記載の脱穀装置。
【請求項6】
前記排気口(43)からの送風によって受樋(37)からの漏下物を揺動選別棚(44)の後方へ送る構成とした請求項4または請求項5記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−13345(P2013−13345A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146762(P2011−146762)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】