説明

脱臭浄化フィルタ

【課題】担体表面に脱臭剤が強固に担持されており、水溶性有機バインダーを使用したにも関わらず、除去性能を高く保持できる脱臭浄化フィルタを提供する。
【解決手段】担体表面に、少なくとも平均粒子直径1.0〜50μmの脱臭剤、平均アスペクト比10〜500を有する無機化合物、および水溶性有機バインダーを含む層が形成されている脱臭浄化フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器の排出ガス中に含まれる有害ガス成分を除去するための脱臭浄化フィルタに関する。ここで言う、有害ガス成分とは、人体、環境に対する有害ガス成分だけでなく、前記電子機器に対する有害ガス成分、例えば、前記電子機器の故障の原因となりうるガス等も含めるものである。
【背景技術】
【0002】
コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器は、近年集積化、小型化が進み、機器内部に熱がこもるのを避けるために、ファン等による排熱が欠かせなくなってきている。そして、インク、トナー等といった印字の際に用いられる成分、電子機器の本体を構成するプラスティック、および、各種接合部に使用されているゴム等に含まれている各種成分がガス化し、有害ガス成分として排熱と共に室内へと排出されている。また、コピー機、レーザープリンター等では高電圧を使用するため、前記ガス成分だけでなく、オゾンといった有害ガス成分も排出されている。近年、環境問題への意識の高まりから、有害ガス成分に関して、排出規制が行われるようになった。例えば、ドイツでは、「BAM(ブルーエンジェルマーク)」という環境ラベルが制定されており、電子機器毎に果たすべき環境性能基準が定められている。
【0003】
活性炭をハニカム担体に担持した活性炭担持ハニカム構造体についてはよく知られている(例えば、特許文献1、2参照)。一般に、活性炭は、排出ガス中の有害ガス成分を除去することができるため、前記活性炭担持ハニカム構造体を用いて、前記電子機器の排出ガス中に含まれる有害ガス成分を除去することが考えられる。しかしながら、活性炭とハニカム担体との結合剤はアクリル系バインダー、塩化ビニリデン系バインダー、コロイダルシリカであり、水溶性でないため、10重量%程度のバインダー量では、活性炭とハニカム担体との接着性は十分でなく、脱落が生じるという問題がある。ここで言う水溶性とは25℃、1気圧条件で水に溶解することを意味する。
【0004】
オゾン分解触媒フィルター及びその製造方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。オゾン分解触媒、もしくは、活性炭の、のり剤としてカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ソーダといった水溶性有機バインダーが開示されている。しかしながら、水溶性有機バインダーは、オゾン分解触媒、もしくは、活性炭を担体表面に強固に担持することができるという利点を有する反面、オゾン分解触媒、もしくは、活性炭を被覆してしまい、除去性能が低下してしまうという問題がある。
【0005】
上述のとおり、コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器の排出ガス中に含まれる有害ガス成分を除去するための脱臭浄化フィルタに関して、担体表面に脱臭剤が強固に担持されており、水溶性有機バインダーを使用しても除去性能を高く保持できる脱臭浄化フィルタは見当たらないのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開平1−293136号公報
【特許文献2】特公平5−34045号公報
【特許文献3】特開昭61−11154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術の課題を背景になされたものであり、コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器の排出ガス中に含まれる有害ガス成分を除去するための脱臭浄化フィルタに関するものであり、担体表面に脱臭剤が強固に担持されており、水溶性有機バインダーを使用したにも関わらず、除去性能を高く保持できる脱臭浄化フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち本発明は、以下の通りである。
1.担体表面に、少なくとも平均粒子直径1.0〜50μmの脱臭剤、平均アスペクト比10〜500を有する無機化合物、および水溶性有機バインダーを含む層が形成されている脱臭浄化フィルタ。
2.前記無機化合物の短辺の長さの平均値、および長辺の長さの平均値が0.05〜100μmである上記1に記載の脱臭浄化フィルタ。
3. 前記担体表面に形成されている層に含まれる無機化合物の量が、担体表面に形成される層の固形分に対する重量比率が0.5〜30重量%である上記1または2に記載の脱臭浄化フィルタ。
4. 前記脱臭剤が少なくとも活性炭、酸化マンガンのいずれかを含有する上記1〜3のいずれかに記載の脱臭浄化フィルタ。
【発明の効果】
【0009】
本発明による脱臭浄化フィルタは、担体表面に少なくとも平均粒子直径1.0〜50μmの脱臭剤、平均アスペクト比10〜500を有する無機化合物、および水溶性有機バインダーを含む層を形成しているため、脱臭剤が強固に担持されており、水溶性有機バインダーを使用したにも関わらず、除去性能を高く保持できるという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における脱臭浄化フィルタは、担体表面に、少なくとも、平均粒子直径1.0〜50μmの脱臭剤、平均アスペクト比10〜500を有する無機化合物、および、水溶性有機バインダーからなる層が形成されていることが好ましい。なお、ここで言う平均アスペクト比とは、無機化合物の長辺の長さを短辺の長さで割った値のことである。
【0011】
バインダーとして、水溶性有機バインダーを使用することにより、少量のバインダー添加量で脱臭剤を担体表面に強固に担持させることができ、また、平均アスペクト比10〜500を有する無機化合物を、担体表面に形成されている層内に含有させることにより、脱臭剤、無機化合物、水溶性有機バインダーからなる層が嵩高くなり、層内の空隙が増え、その結果、脱臭剤と有害ガス成分との接触確率が高くなり、除去性能を高く保持できることを本発明者は見出した。
【0012】
前記バインダーが水溶性有機バインダーでなければ、担体表面に脱臭剤を強固に担持するためには、バインダー添加量を多くしなければならず、その結果、脱臭剤が被覆されてしまい、除去性能を高く保持することができない。
【0013】
また、無機化合物を含有しない場合、あるいは無機化合物の平均アスペクト比が10より小さい、もしくは、500より大きい場合は、担体表面に形成されている層の充填密度が高くなり、脱臭剤と有害ガス成分との接触が困難になり、除去性能を高く保持することができない。担体表面に形成されている層内には、一般的な難燃剤が含有されてもよい。例えば、メラミンシアヌレート、水酸化アルミ、リン酸アルミ等の難燃剤が挙げられる。
【0014】
本発明における脱臭剤の平均粒子直径は1.0〜50μmであることが好ましい。より好ましくは、1.0〜30μmである。平均粒子直径が1.0μm未満であれば、脱臭剤が粉塵として舞いやすく、取り扱い性が悪く、50μmより大きければ、担体に強固に担持するのが困難になるからである。
【0015】
本発明における無機化合物は短辺の長さの平均値、および、長辺の長さの平均値の平均が0.05〜100μmであることが好ましい。短辺の長さの平均値、もしくは、長辺の長さの平均値が0.05μmより小さい場合は、無機化合物が粉塵として舞いやすく、取り扱い性が悪く、100μmより大きければ、担体に強固に担持するのが困難になるからである。
【0016】
本発明における担体表面に形成されている層に含有される無機化合物の量は、担体表面に形成される層の固形分に対する重量比率が0.5〜30重量%であることが好ましい。無機化合物の量が0.5重量%より少ない場合、または、30重量%より多い場合は、担体表面に形成されている層に十分な空隙ができないため、除去性能を高く保持することができない。本発明における無機化合物としては、特に定めないが、シリカゾル、アルミナゾル、活性アルミナ、粘土鉱物(セピオライト等)が挙げられる。好ましくは、セピオライト等の粘土鉱物が好ましい。
【0017】
本発明における脱臭剤は少なくとも活性炭、または、酸化マンガンを含有することが好ましい。活性炭は、揮発性有機化合物等の有害ガス成分の吸着除去に優れており、酸化マンガンはオゾン等の有害ガス成分を分解除去する能力に優れているからである。それ以外の成分については、特に定めないが、例えば、二酸化チタン、有機系脱臭剤等の一般的な脱臭剤を含有することができる。
【0018】
本発明における担体としては、特に定めないが、本発明の脱臭浄化フィルタは電子機器内に設置されるため、安全性の観点から難燃、もしくは、不燃性の担体が好ましく、また、高強度、低圧力損失という特徴を有するハニカム担体が好ましい。例えば、アルミ製ハニカム担体、無機繊維紙製のハニカム担体等が使用できる。
【0019】
本発明における水溶性有機バインダーの平均分子量は2×10〜2×10であることが好ましい。より好ましくは、1×10〜2×10である。平均分子量が2×10〜2×10であれば、担体表面に脱臭剤、無機化合物を強固に担持することができることを本発明者は見出したからである。平均分子量が2×10未満であれば、担体表面に脱臭剤、無機化合物十分強固に担持するためには、バインダー添加量を多くしなければならならず、その結果、脱臭剤が水溶性有機バインダーにより被覆されてしまい、脱臭性能が低下するため好ましくない。また、平均分子量が2×10より大きければ、水性スラリーの粘度が高くなり、脱臭剤、無機化合物を均一に担持することができなくなり好ましくない。ここでいう平均分子量とは重量平均分子量のことを指す。重量平均分子量は、一般的に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0020】
本発明における水溶性有機バインダーは、分子鎖中に少なくとも複素環構造を含有することが好ましい。分子鎖中に少なくとも複素環構造を含有することにより、複素環構造の電子的な効果により、担体表面と水性スラリーとの親和性、および、脱臭剤、無機化合物と水溶性有機バインダーとの親和性が増し、担体表面に脱臭剤、無機化合物を強固に、かつ、均一に担持することができるからである。複素環構造がなければ、担体表面と水性スラリー、および、脱臭剤、無機化合物と水溶性有機バインダーとの親和性が低下するため、強固、かつ、均一に担持することが困難になるため好ましくない。複素環構造の環員数については特に定めないが、3〜6員環が好ましい。複素環構造に含有されるヘテロ原子については特に定めないが、酸素、窒素が好ましい。例えば、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。
【0021】
本発明における担体表面に形成されている層に含有される水溶性有機バインダーの量は、担体表面に形成される層中の固形分に対して0.5〜10重量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜5重量%である。10重量%より多いと脱臭剤が水溶性有機バインダーにより被覆され、脱臭剤の除去性能が低下してしまうため、好ましくない。また、0.5重量%より少ないと、担体表面に十分に脱臭剤、無機化合物を担持することができないため、好ましくない。
【0022】
本発明における脱臭浄化フィルタの製造方法については特に定めない。担体を、脱臭剤、無機化合物、および、水溶性有機バインダーを含む水性スラリーと接触させた後に乾燥するといった一般的な方法を用いることができる。前記水性スラリーの固形分比率は、10〜50%、好ましくは25〜50%である。固形分比率が10%未満であると担体表面に脱臭剤、無機化合物が十分に担持されなくなるため好ましくない。また、固形分比率が50%を越えると増粘して水性スラリーの流動性が低下して含浸できなくなるため好ましくない。乾燥する際の温度は、通常60〜200℃、好ましくは100〜150℃である。乾燥温度が200℃を越えると、水溶性有機バインダーが劣化するため好ましくない。また、乾燥温度が60℃より低いと、乾燥時間が長くなるため、コストが高くなり好ましくない。
【0023】
本発明におけるフィルタは、コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器の排出ガス中に含まれる有害ガス成分を除去するための脱臭浄化フィルタ等に使用できる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例によって本発明の作用効果をより具体的に示す。下記実施例は本発明方法を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に沿って設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0025】
[オゾン除去性能の測定方法]
60mmφのガラス製カラムにハニカムサンプル(60mmφ、厚み20mm)をセットし、そのカラム中にオゾン1ppmを含む温度25℃、湿度50RH%の空気を2m/sの速度で通過させた。5分後にハニカムサンプル通過前後のオゾン濃度をオゾン計(ダシビ1500)にて測定し、その通過前後の濃度変化からオゾンの除去率[%]を算出した。
【0026】
[平均分子量の測定方法]
GPC装置(HLC−8120GPC、東ソー株式会社製)、カラム(TSKgelシリーズ、東ソー株式会社製)を使用し、有機バインダーの重量平均分子量を求めた。
【0027】
[平均粒子直径の測定方法]
走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−3500)を使用して、粒子サンプルの直径を100点測定し、それを相加平均して、粒子サンプルの平均粒径を求めた。
【0028】
[短辺の長さの平均値、および、長辺の長さの平均値、平均アスペクト比の測定方法]
走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−3500)を使用して、無機化合物100点分の短辺の長さ、長辺の長さを測定した。100点分の短辺の長さを相加平均して、無機化合物の短辺の長さの平均値を求めた。100点分の長辺の長さを相加平均して、無機化合物の長辺の長さの平均値を求めた。また、100点分の長辺の長さ/短辺の長さを算出し、相加平均して、平均アスペクト比を求めた。
【0029】
(実施例1)
厚さ0.03mmのアルミ箔を用いてハニカム(500セル/inch)を作製した。活性炭190g(乾燥重量95g、平均粒子直径15μm)、セピオライト3g(乾燥重量3g、繊維径(短辺の長さの平均値)0.2μm、繊維長(長辺の長さの平均値)50μm、平均アスペクト比250)、ポリビニルピロリドン2.1g(乾燥重量2g、平均分子量40,000)を140gのイオン交換水中に添加し、終夜撹拌し、十分に分散させることにより、水性スラリーを調整した。引き続いて、前記ハニカムを前記水性スラリーに浸漬し、水性スラリーがハニカム内部に十分に浸透したことを確認してから、ハニカムを引き上げた。エアーブローでハニカムから余分なスラリーを吹き落とした後、乾燥機内(120℃)で3時間乾燥させた。ハニカムサンプルの総添着量は58g/Lであった。
【0030】
(実施例2)
厚さ0.05mmの無機繊維紙を用いてハニカム(500セル/inch)を作製した。酸化マンガン73g(乾燥重量73g、平均粒子直径5μm)、セピオライト5g(乾燥重量5g、繊維径(短辺の長さの平均値)0.2μm、繊維長(長辺の長さの平均値)30μm、平均アスペクト比150)、水酸化アルミ20g(乾燥重量20g)、ポリビニルピロリドン2.1g(乾燥重量2g、平均分子量1,200,000)を235gのイオン交換水中に添加し、終夜撹拌し、十分に分散させることにより、水性スラリーを調整した。引き続いて、前記ハニカムを前記水性スラリーに浸漬し、水性スラリーがハニカム内部に十分に浸透したことを確認してから、ハニカムを引き上げた。エアーブローでハニカムから余分なスラリーを吹き落とした後、乾燥機内(120℃)で3時間乾燥させた。ハニカムサンプルの総添着量は78g/Lであった。
【0031】
(実施例3)
厚さ0.05mmの無機繊維紙を用いてハニカム(500セル/inch)を作製した。活性炭40g(乾燥重量20g、平均粒子直径15μm)、酸化マンガン50g(乾燥重量50g、平均粒子直径5μm)、水酸化アルミ20g(乾燥重量20g)、セピオライト8g(乾燥重量8g、繊維径(短辺の長さの平均値)0.1μm、繊維長(長辺の長さの平均値)5μm、アスペクト比50)、アルギン酸ソーダ2.35g(乾燥重量2g、平均分子量150,000)を215gのイオン交換水中に添加し、終夜撹拌し、十分に分散させることにより、水性スラリーを調整した。引き続いて、前記ハニカムを前記水性スラリーに浸漬し、水性スラリーがハニカム内部に十分に浸透したことを確認してから、ハニカムを引き上げた。エアーブローでハニカムから余分なスラリーを吹き落とした後、乾燥機内(120℃)で3時間乾燥させた。ハニカムサンプルの総添着量は82g/Lであった。
【0032】
(実施例4)
厚さ0.05mmの無機繊維紙を用いてハニカム(500セル/inch)を作製した。活性炭40g(乾燥重量20g、平均粒子直径15μm)、酸化マンガン50g(乾燥重量50g、平均粒子直径5μm)、水酸化アルミ8g(乾燥重量8g)、セピオライト20g(乾燥重量20g、繊維径(短辺の長さの平均値)0.2μm、繊維長(長辺の長さの平均値)5μm、アスペクト比25)、アルギン酸ソーダ2.35g(乾燥重量2g、平均分子量150,000)を215gのイオン交換水中に添加し、終夜撹拌し、十分に分散させることにより、水性スラリーを調整した。引き続いて、前記ハニカムを前記水性スラリーに浸漬し、水性スラリーがハニカム内部に十分に浸透したことを確認してから、ハニカムを引き上げた。エアーブローでハニカムから余分なスラリーを吹き落とした後、乾燥機内(120℃)で3時間乾燥させた。ハニカムサンプルの活性炭添着量は80g/Lであった。
【0033】
(比較例1)
厚さ0.03mmのアルミ箔を用いてハニカム(500セル/inch)を作製した。活性炭190g(乾燥重量95g、平均粒子直径0.5μm)、セピオライト3g(乾燥重量3g、繊維径(短辺の長さの平均値)0.2μm、繊維長(長辺の長さの平均値)50μm、アスペクト比250)、ポリビニルピロリドン2.1g(乾燥重量2g、平均分子量40,000)を140gのイオン交換水中に添加し、終夜撹拌し、十分に分散させることにより、水性スラリーを調整した。引き続いて、前記ハニカムを前記水性スラリーに浸漬し、水性スラリーがハニカム内部に十分に浸透したことを確認してから、ハニカムを引き上げた。エアーブローでハニカムから余分なスラリーを吹き落とした後、乾燥機内(120℃)で3時間乾燥させた。ハニカムサンプルの総添着量は62g/Lであった。
【0034】
(比較例2)
厚さ0.03mmのアルミ箔を用いてハニカム(500セル/inch)を作製した。活性炭190g(乾燥重量95g、平均粒子直径100μm)、セピオライト3g(乾燥重量3g、繊維径(短辺の長さの平均値)0.2μm、繊維長(長辺の長さの平均値)50μm、アスペクト比250)、ポリビニルピロリドン2.1g(乾燥重量2g、平均分子量40,000)を140gのイオン交換水中に添加し、終夜撹拌し、十分に分散させることにより、水性スラリーを調整した。引き続いて、前記ハニカムを前記水性スラリーに浸漬し、水性スラリーがハニカム内部に十分に浸透したことを確認してから、ハニカムを引き上げた。エアーブローでハニカムから余分なスラリーを吹き落とした後、乾燥機内(120℃)で3時間乾燥させた。ハニカムサンプルの総添着量は48g/Lであった。
【0035】
(比較例3)
厚さ0.05mmの無機繊維紙を用いてハニカム(500セル/inch)を作製した。活性炭40g(乾燥重量20g、平均粒子直径15μm)、酸化マンガン50g(乾燥重量50g、平均粒子直径5μm)、リン酸アルミ28g(乾燥重量28g、短辺10μm、長辺20μm、アスペクト比2)、アルギン酸ソーダ2.35g(乾燥重量2g、平均分子量150,000)を215gのイオン交換水中に添加し、終夜撹拌し、十分に分散させることにより、水性スラリーを調整した。引き続いて、前記ハニカムを前記水性スラリーに浸漬し、水性スラリーがハニカム内部に十分に浸透したことを確認してから、ハニカムを引き上げた。エアーブローでハニカムから余分なスラリーを吹き落とした後、乾燥機内(120℃)で3時間乾燥させた。ハニカムサンプルの総添着量は85g/Lであった。
【0036】
(比較例4)
厚さ0.05mmの無機繊維紙を用いてハニカム(500セル/inch)を作製した。活性炭40g(乾燥重量20g、平均粒子直径15μm)、酸化マンガン50g(乾燥重量50g、平均粒子直径5μm)、水酸化アルミ20g(乾燥重量20g)、セピオライト8g(乾燥重量8g、繊維径(短辺の長さの平均値)0.1μm、繊維長(長辺の長さの平均値)150μm、アスペクト比1500)、アルギン酸ソーダ2.35g(乾燥重量2g、平均分子量150,000)を215gのイオン交換水中に添加し、終夜撹拌し、十分に分散させることにより、水性スラリーを調整した。引き続いて、前記ハニカムを前記水性スラリーに浸漬し、水性スラリーがハニカム内部に十分に浸透したことを確認してから、ハニカムを引き上げた。エアーブローでハニカムから余分なスラリーを吹き落とした後、乾燥機内(120℃)で3時間乾燥させた。ハニカムサンプルの総添着量は76g/Lであった。
【0037】
(比較例5)
厚さ0.05mmの無機繊維紙を用いてハニカム(500セル/inch)を作製した。活性炭40g(乾燥重量20g、平均粒子直径15μm)、酸化マンガン50g(乾燥重量50g、平均粒子直径5μm)、水酸化アルミ2g(乾燥重量2g)、セピオライト8g(乾燥重量8g、繊維径(短辺の長さの平均値)0.1μm、繊維長(長辺の長さの平均値)5μm、アスペクト比50)、ポリ酢酸ビニルエマルジョン67g(乾燥重量20g、平均分子量10,000)を155gのイオン交換水中に添加し、終夜撹拌し、十分に分散させることにより、水性スラリーを調整した。引き続いて、前記ハニカムを前記水性スラリーに浸漬し、水性スラリーがハニカム内部に十分に浸透したことを確認してから、ハニカムを引き上げた。エアーブローでハニカムから余分なスラリーを吹き落とした後、乾燥機内(120℃)で3時間乾燥させた。ハニカムサンプルの総添着量は82g/Lであった。
【0038】
実施例1〜4、比較例1〜5のハニカムサンプルを用いてオゾン除去性能測定を実施した。結果を表1に示す。表1より明らかなように、本発明の実施例1〜4は、脱臭剤の平均粒径が小さい場合(比較例1)、および、脱臭剤の平均粒径が大きい場合(比較例2)と比較して、取り扱い性、脱落の面で優れている。また、無機化合物の平均アスペクト比が小さい場合(比較例3)、無機化合物の平均アスペクト比が大きい場合(比較例4)、バインダーが非水溶性で、分子鎖内に複素環構造を有していない有機バインダーの場合(比較例5)と実施例1〜4を比較して、オゾン除去性能に大きな差が見られる。
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明における脱臭浄化フィルタは、担体表面に無機粉体が強固に担持されており、かつ、高性能であり、コピー機、プリンター、多機能OA機、コンピュータ、プロジェクター、POD印刷機等の電子機器の排出ガス中に含まれる有害ガス成分を除去するための脱臭浄化フィルタ、冷蔵庫やトイレ脱臭機などに用いられる脱臭フィルタ等に使用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体表面に、少なくとも平均粒子直径1.0〜50μmの脱臭剤、平均アスペクト比10〜500を有する無機化合物、および水溶性有機バインダーを含む層が形成されている脱臭浄化フィルタ。
【請求項2】
前記無機化合物の短辺の長さの平均値、および長辺の長さの平均値が0.05〜100μmである請求項1に記載の脱臭浄化フィルタ。
【請求項3】
前記担体表面に形成されている層に含まれる無機化合物の量が、担体表面に形成される層の固形分に対する重量比率が0.5〜30重量%である請求項1または2に記載の脱臭浄化フィルタ。
【請求項4】
前記脱臭剤が少なくとも活性炭、酸化マンガンのいずれかを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の脱臭浄化フィルタ。


【公開番号】特開2010−29825(P2010−29825A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197304(P2008−197304)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】