説明

脱臭装置

【課題】短時間で対象空間に脱臭材(3)の脱臭効果を及ぼすことが可能で、且つコンパクトな脱臭装置を提供することにある。
【解決手段】複数の吸気孔を形成した吸気側の薄板と、複数の排気孔を形成した排気側の薄板とが厚さ方向に相対向して、両薄板間に空気室を形成するとともに、両薄板の少なくとも一方が厚さ方向に振動する薄膜振動体で形成された中空板状の薄型送風ファン(2)を脱臭材(3)に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の臭気成分を除去する脱臭装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅内の小空間、例えば玄関、クローゼット、トイレ等に設置して、小空間内の空気中に含まれるアンモニアやアセトアルデヒド等の臭気成分を除去する据置型の脱臭材が広く知られている(例えば、特許文献1)。この脱臭材は、一般に活性炭やゼオライトなどの吸着材で構成されており、該脱臭材自体に臭気成分を吸着させて小空間内の臭気成分を除去するものである。
【0003】
具体的に、上記小空間内に配置された脱臭材は、該脱臭材の近傍に拡散している臭気成分を吸着する。すると、該脱臭材の近傍において臭気成分の濃度の薄い領域が生じる。この濃度が薄い領域に、まだ吸着されていない臭気成分が拡散する。そして、この拡散した臭気成分が脱臭材に吸着される。
【0004】
このように、小空間内における臭気成分の自然拡散により、該臭気成分が脱臭材に接触し吸着される。そして、小空間内における臭気成分の濃度が次第に低くなるように構成される。
【特許文献1】特開2005−160852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この自然拡散だけで、臭気成分を脱臭材に吸着させようとすると、脱臭材から離れた位置にある臭気成分を吸着するまでに時間がかかる場合がある。又、小空間内にある物の位置関係によっては、その物が障害物となり、小空間全体の臭気成分を吸着するのに時間がかかる場合がある。一方で、小空間に設置される上記脱臭材は、その小空間の邪魔にならないような形状にする必要もある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、空間全体に短時間に脱臭効果を及ぼすことが可能で、且つコンパクトな脱臭装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、通風性を有する脱臭部材(3)と、該脱臭部材(3)を通過する気流を発生する薄型送風ファン(2)とを有し、上記薄型送風ファン(2)が、複数の吸気孔(7a)を形成した吸気側の薄板(7)と、複数の排気孔(8a)を形成した排気側の薄板(8)とが厚さ方向に相対向して、該両薄板(7,8)間に空気室(5)を形成するとともに、該両薄板(7,8)の少なくとも一方が厚さ方向に振動する薄膜振動体(7b,7c)で形成された中空板状のファン本体(2)を備え、上記ファン本体(2)の両薄板(7,8)の少なくとも一方に、上記脱臭部材(3)が取り付けられていることを特徴としている。
【0008】
ここで、上記薄型送風ファン(2)は、薄膜振動体(7b,7c)を構成する膜が厚さ方向に振動することにより送風を行うものである。つまり、上記膜(7c)が空気室(5)外方にある場合は小空間の空気を吸気孔(7a)から空気室(5)内に取り込み、上記膜(7c)が空気室(5)内方にある場合は空気室(5)内の空気を排気孔(8a)から小空間へ排出する。尚、該吸気孔(7a)を該小空間から空気室(5)に向かって細くなるテーパ状に形成し、該排気孔(8a)を空気室(5)から該小空間に向かって細くなるテーパ状に形成するとよい。これにより、上記膜(7c)が空気室(5)内方にある場合には、空気室(5)から吸気孔(7a)を通じて該小空間に排気される空気量よりも、空気室(5)から排気孔(8a)を通じて該小空間に排気される空気量の方が大きくなり、吸気側から排気側へ向かう送風方向を確実に規定できる。
【0009】
第1の発明では、上記薄型送風ファン(2)の両薄板(7,8)の少なくとも一方に上記脱臭部材(3)を取り付けた脱臭装置において、上記薄膜振動体(7b,7c)を振動させることにより、小空間内の臭気成分を含む空気を上記脱臭部材(3)へ強制的に送ることができる。又、上記薄型送風ファン(2)は、両薄板(7,8)が主な構成部材であるため、脱臭部材(3)に対して厚さを薄くすることも可能である。該脱臭部材(3)に薄型送風ファン(2)が取り付けられたとしても、装置全体が必要以上に大きくなることがない。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記薄型送風ファン(2)と上記脱臭部材(3)とが脱着可能に構成されていることを特徴としている。
【0011】
第2の発明では、上記脱臭部材(3)の吸着量が増えて脱臭作用が弱くなった場合に、脱臭部材(3)を取り替えることができる。
【0012】
第3の発明は、第1の発明において、上記脱臭部材(3)の脱臭性能を再生する再生モジュール(30)が、該脱臭部材(3)を通過する気流の上流側に取り付けられていることを特徴としている。
【0013】
第3の発明では、上記脱臭部材(3)の吸着量が増えて脱臭効果が低下した場合に、第2の発明とは違い、新しい脱臭部材(3)と取り替えることなく、該脱臭部材(3)の脱臭性能を上記再生モジュール(30)により再生することができる。
【0014】
第4の発明は、第3の発明において、上記再生モジュール(30)が、ストリーマ放電により低温プラズマを発生するように構成されていることを特徴としている。ここで、上記ストリーマ放電は、例えばコロナ放電やグロー放電と比較して活性種の活性領域を高密度かつ広範囲に形成することができる。
【0015】
第4の発明では、上記ストリーマ放電で生じた活性種により、上記脱臭部材(3)に吸着した臭気成分を分解して該脱臭部材(3)を再生することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記薄型送風ファン(2)を脱臭部材(3)に取り付けることにより、小空間内の臭気成分を含む空気を上記脱臭部材(3)へ強制的に送り、その空気を該脱臭部材(3)に通風させることができる。したがって、従来のように臭気成分の自然拡散だけで吸着させるのとは違い、短時間で小空間内に脱臭効果を及ぼすことができる。つまり、小空間内にある物が障害物となり、小空間全体の臭気成分を吸着するのに時間がかかることもない。又、上記薄型送風ファン(2)は、上記脱臭部材(3)よりも厚さを薄くすることも可能であるため、該脱臭部材(3)に薄型送風ファン(2)を取り付けた場合と取り付けない場合とで、その大きさはほとんど変わらない。つまり、脱臭装置をコンパクトに構成できるので、該脱臭装置を設置しても、小空間の邪魔になることがない。
【0017】
また、上記第2の発明によれば、上記薄型送風ファン(2)と上記脱臭部材(3)とが脱着可能に構成されているので、定期的に脱臭部材(3)を取り替えることにより、小空間内の脱臭効果を一定の状態に保つことができる。
【0018】
また、上記第3の発明によれば、上記再生モジュール(30)により、上記脱臭部材(3)の脱臭性能を再生することができるので、第2の発明とは違い、該脱臭部材(3)を定期的に取り替えずに、該脱臭部材(3)の脱臭能力を再生することにより、小空間に対する脱臭効果を一定の状態に保つことができる。
【0019】
また、上記第4の発明によれば、上記再生モジュール(30)がストリーマ放電により低温プラズマを発生するように構成されているので、例えば、グロー放電やコロナ放電と比較して小型でも活性種を多量に生成することができ、該再生モジュール(30)を小型化することができる。したがって、上記脱臭装置をコンパクトに構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
本実施形態の小型脱臭装置(1)(脱臭装置)は住宅内の小空間、例えば玄関、クローゼット、トイレ等に設けられるものであって、小空間内の臭気成分を吸着除去するためのものである。
【0022】
−小型脱臭装置の構成−
図1は、本発明の実施形態に係る小型脱臭装置(1)の構成を示す斜視図である。
【0023】
本実施形態の小型脱臭装置(1)は、図1に示すように、臭気成分を吸着除去する脱臭材(脱臭部材)(3)と、該脱臭材(3)を通過する気流を発生する薄型送風ファン(2)と、該薄型送風ファン(2)に電力を供給する電源部(4)とが一体化されて構成されている。
【0024】
図2(a)は薄型送風ファン(2)を排気側から見た図、図2(b)は吸気側から見た図、図3は薄型送風ファン(2)に設けられた薄膜振動体(7b,7c)部分の中央横断面図である。
【0025】
上記薄型送風ファン(2)は、厚さ方向に相対向する吸気側の薄板(7)と排気側の薄板(8)と、この両薄板(7,8)間の周縁部を囲う側周壁(6)とを備え、両薄板(7,8)間に、両薄板(7,8)及び側周壁(6)で区画された空気室(5)が形成されている。尚、該薄型送風ファン(2)は、1〜5mm程度の厚さで形成される。
【0026】
上記吸気側の薄板(7)は、ファン本体(2)の厚さ方向に振動する薄膜振動体(7b,7c)で構成されている。この薄膜振動体(7b,7c)は、複数の円形状に形成され、外周部の圧電セラミック(7c)と、この圧電セラミック(7c)の内側に形成されて圧電セラミック(7c)の振動に伴って振動するダイヤフラム(7b)とを備えている。
【0027】
上記圧電セラミック(7c)は、電圧を印加することで厚さ方向に変位を生じさせて振動させ、その振動に伴ってダイヤフラム(7b)を振動させるものである。
【0028】
上記ダイヤフラム(7b)には、外部から空気室(5)に向かって細くなるテーパ状に形成された複数の吸気孔(7a)が形成されている。この吸気孔(7a)は、ダイヤフラム(7b)の略全面に形成されている。一方、上記排気側の薄板(8)には、空気室(5)から外部に向かって細くなるテーパ状に形成された複数の排気孔(8a)が略全面に形成されている。
【0029】
上記脱臭材(3)は、矩形状に形成されたハニカム構造の基材に吸着材(例えば、活性炭又はゼオライト)を担持したものである。この脱臭材(3)は、図1に示すように、上記薄型送風ファン(2)における吸気側の薄板(7)に取付けられている。又、上記脱臭材(3)と上記薄型送風ファン(2)とは脱着可能に構成されている。
【0030】
上記電源部(4)は、蓄電部(図示なし)と、該蓄電部から供給される直流電流を交流電流に変換して出力する出力変換部(図示なし)とを備えている。上記蓄電部は、必要に応じて外部電源に接続して充電可能に構成されている。したがって、上記小型脱臭装置(1)は、常時外部電源に接続して使用するものではないので、該小型脱臭装置(1)の移動が容易である。
【0031】
−小型脱臭装置の動作−
以下、小型脱臭装置(1)の動作について説明する。上記薄型送風ファン(2)は、ダイヤフラム(7b)を振動させることにより、排気動作と吸気動作とを繰り返す。そして、これらの動作を繰り返すことにより、吸気側の薄板(7)に取付けられた脱臭材(3)を通過する気流を発生する。尚、図4は、薄型送風ファン(2)の薄膜振動体(7b,7c)部分における排気動作を示す断面図であり、図5は、薄型送風ファン(2)の薄膜振動体(7b,7c)部分における吸気動作を示す断面図である。
【0032】
上記排気動作時は、図4に示すように、上記薄型送風ファン(2)の圧電セラミック(7c)に上記電源部(4)の交流電圧を印加して厚さ方向に変位を生じさせ、その変位によりダイヤフラム(7b)を空気室(5)内方に変位させる。そして、このダイヤフラム(7b)の変位により空気室(5)内の容積が小さくなることで空気室(5)内の空気が圧縮され、排気側の薄板(8)に形成された複数の排気孔(8a)を通じて空気室(5)内の空気が外部に排出される。
【0033】
上記吸気動作時は、図5に示すように、圧電セラミック(7c)に所定の交流電圧を印加して排気動作とは逆方向に変位を生じさせ、ダイヤフラム(7b)を空気室(5)外方に変位させる。そして、このダイヤフラム(7b)の変位により空気室(5)内の容積が大きくなることで、ダイヤフラム(7b)に形成された複数の吸気孔(7a)を通じて外部から空気室(5)内に空気が吹い込まれる。
【0034】
したがって、上記圧電セラミック(7c)への印加電圧を適宜設定することで、ダイヤフラム(7b)の変位量を制御することができ、これにより、上記薄型送風ファン(2)の送風量を制御することが可能である。
【0035】
又、図4に示すように、空気室(5)内の空気が排気孔(8a)から排気される排気動作時には、空気室(5)内の一部の空気が、ダイヤフラム(7b)に形成した複数の吸気孔(7a)から外部に向かって逆流するように排気される。一方、図5に示すように、外部の空気が吸気孔(7a)から空気室(5)内に取り込まれる吸気動作時には、排気側の外部の空気が、排気孔(8a)から空気室(5)内に向かって逆流するように取り込まれる。
【0036】
ここで、排気動作時に排気孔(8a)から排気される排気流量をQ1、吸気動作時に排気孔(8a)から吸気されてしまう吸気流量をQ2とすると、排気孔(8a)は空気室(5)から外部に向かって細くなるテーパ状に形成されているため、Q1>Q2の関係が成立する。一方、吸気動作時に吸気孔(7a)から吸気される吸気流量をQ3、排気動作時に吸気孔(7a)から排気されてしまう排気流量をQ4とすると、吸気孔(7a)は、外部から空気室(5)に向かって細くなるテーパ状に形成されているため、Q3>Q4の関係が成立する。
【0037】
このように、吸気孔(7a)及び排気孔(8a)をそれぞれ送風方向に細くなるテーパ状に形成しておけば、吸排気動作時に送風方向とは逆方向に空気が逆流したとしても、薄型送風ファン(2)の送風量をQとすると、Q=Q1−Q2=Q3−Q4の関係が成立し、その影響は非常に少なくなる。
【0038】
以上により、上記薄型送風ファン(2)の吸気動作によって、小空間内の臭気成分を含む空気が上記脱臭材(3)を通過して、空気室(5)に取り込まれる。ここで、該空気室(5)に取り込まれた空気は、上記脱臭材(3)を通過する際に臭気成分が吸着除去された空気である。そして、上記薄型送風ファン(2)の排気動作によって、この臭気成分が吸着除去された空気が小空間に向かって排出される。
【0039】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、小空間内に上記小型脱臭装置(1)を設けることにより、小空間内の臭気成分を含む空気を上記脱臭材(3)へ強制的に送り、その空気を該脱臭材(3)に通風させることができる。これにより、従来のように臭気成分の自然拡散だけで吸着させる場合とは違い、短時間で小空間内に脱臭効果を及ぼすことができる。
【0040】
又、上記薄型送風ファン(2)は、厚さが1〜5mm程度なので、上記脱臭材(3)よりも薄く、該脱臭材(3)に薄型送風ファン(2)を取り付けた場合と取り付けない場合とで、その大きさはほとんど変わらない。つまり、小型脱臭装置(1)をコンパクトに構成でき、該小型脱臭装置(1)を小空間内に設置しても、邪魔になることがない。
【0041】
又、上記薄型送風ファン(2)と上記脱臭材(3)とが脱着可能に構成されているので、定期的に脱臭材(3)を取り替えることにより、該小型脱臭装置(1)における小空間に対する脱臭効果を一定の状態に保つことができる。ここで、取り替え用の脱臭材(3)は、新品のものでもよいし、取り替え前の脱臭材(3)から臭気成分を取り除いたものでもよい。
【0042】
−実施形態の変形例−
図6は、実施形態の変形例に係る小型脱臭装置(20)の構成を示す斜視図である。
【0043】
上記実施形態との違いは、上記脱臭材(3)に再生モジュール(30)を取り付けた点である。このため、実施形態と同じ部分については説明を省略し、相違点のみ説明する。
【0044】
図7は、上記再生モジュール(30)の構成を示す斜視図であり、図8は、上記再生モジュール(30)が脱臭材(3)に取付けられた状態を示す図である。
【0045】
上記再生モジュール(30)は、ストリーマ放電を行い、上記脱臭材(3)に吸着された臭気成分を分解するためのものである。図7に示すように、再生モジュール(30)は、絶縁カバー(35)及び放電基材(34)を備えている。又、図7では省略しているが、再生モジュール(30)は、図8に示すようにメッシュ状の対向電極(32)を有している。
【0046】
上記絶縁カバー(35)は、垂直断面がコの字型の長尺部材で構成されている。絶縁カバー(35)は、その開放部が上記薄型送風ファン(2)により生じる気流の下流側を向くように配置されている。この絶縁カバー(35)は、絶縁性の樹脂や碍子などを材料として構成されている。また、絶縁カバー(35)の壁面には、空気の流通孔(36)が複数箇所に形成されている(図6、図8参照)。
【0047】
上記放電基材(34)は、絶縁カバー(35)の内部に配置されている。放電基材(34)は、上記絶縁カバー(35)と同様、垂直断面がコの字型の長尺部材で構成されている。また、図7に示すように、放電基材(34)の開放部内には、複数の支持板(33)が形成されている。各支持板(33)は、放電基材(34)の中央板(34a)の所定箇所を空気の流れ方向にそれぞれ屈曲させて形成される。そして、各支持板(33)の下流端部は、逆方向に折り返されている。そして、各支持板(33)の折り返し部分には、放電極(31)がそれぞれ支持されている。
【0048】
上記放電極(31)は、線状ないし棒状に形成され、空気の流れと直交する左右方向に延びている。この放電極(31)は、タングステン線で構成されている。そして、放電極(31)の先端が、ストリーマ放電の基端を構成している。
【0049】
図8に示すように、再生モジュール(30)の放電極(31)と対峙する対向電極(32)が設けられている。対向電極(32)は、メッシュ状の板に形成されている。そして、対向電極(32)は、上記放電極(31)と略平行に配置されている。又、再生モジュール(30)は、上記電源部(4)に設けられた再生モジュール(30)用の高圧直流電源部(4a)に接続されている。尚、高圧直流電源部(4a)は、図8に簡略して示す。
【0050】
上記高圧直流電源部(4a)の正極側は、上記放電基材(34)を介して放電極(31)と電気的に接続されている。一方、高圧直流電源部(4a)の負極側(アース側)は、上記対向電極(32)と電気的に接続されている。
【0051】
以上のような構成の再生モジュール(30)では、両電極(31,32)に電圧が印加されると、上記放電極(31)の先端から上記対向電極(32)に向かってストリーマ放電(40)が進展する。その結果、空気中では、臭気成分を分解するための活性種(ラジカル、高速電子、励起分子等)が生成される。そして、この活性種により、上記脱臭材(3)に吸着した臭気成分を分解することができる。これにより、実施形態の小型脱臭装置(1)とは違い、該脱臭材(3)を定期的に取り替えずに、該脱臭材(3)の脱臭能力を再生することにより、小空間内の脱臭効果を一定の状態に保つことができる。
【0052】
又、上記再生モジュール(30)がストリーマ放電により低温プラズマを発生するように構成されているので、例えば、グロー放電やコロナ放電と比較して活性種を多量に生成することができる。したがって、該再生モジュール(30)をコンパクトに構成でき、該再生モジュール(30)を取り付けた脱臭装置(20)も、コンパクトに構成できる。
【0053】
尚、上記再生モジュール(30)における脱臭材(3)に対する再生能力を高くしたい場合には、該脱臭材(3)にプラズマ触媒を担持させてもよい。このプラズマ触媒には、マンガン系触媒や、いわゆる光触媒(二酸化チタンや酸化亜鉛、あるいはタングステン酸化物や硫化カドミウム)などを用いるとよい。
【0054】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0055】
上記実施形態では、脱臭材(3)を薄型送風ファン(2)の吸気側の薄板(7)に取り付けたが、これに限定されず、該脱臭材(3)を、排気側の薄板(8)に取り付けてもよいし、両側の薄板(7,8)に取り付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、空気中の臭気成分を除去する脱臭装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る小型脱臭装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る小型脱臭装置の薄型送風ファンの外観図であり、(a)は薄型送風ファンを排気側から見たときの平面図、(b)は吸気側から見たときの平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る小型脱臭装置の薄型送風ファンの薄膜振動体部分における中央横断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る小型脱臭装置の薄型送風ファンの薄膜振動体部分における排気動作を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る小型脱臭装置の薄型送風ファンの薄膜振動体部分における吸気動作を示す断面図である。
【図6】実施形態の変形例に係る小型脱臭装置の構成を示す斜視図である。
【図7】実施形態の変形例に係る小型脱臭装置の再生モジュールの構成を示す斜視図である。
【図8】実施形態の変形例に係る小型脱臭装置の再生モジュール脱臭材に取付けられた状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0058】
1 小型脱臭装置(脱臭装置)
2 薄型送風ファン
3 脱臭材(脱臭部材)
4 電源部
5 空気室
7 吸気側の薄板
7a 吸気孔
8 排気側の薄板
8a 排気孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風性を有する脱臭部材(3)と、該脱臭部材(3)を通過する気流を発生する薄型送風ファン(2)とを有し、
上記薄型送風ファン(2)が、複数の吸気孔(7a)を形成した吸気側の薄板(7)と、複数の排気孔(8a)を形成した排気側の薄板(8)とが厚さ方向に相対向して、該両薄板(7,8)間に空気室(5)を形成するとともに、該両薄板(7,8)の少なくとも一方が厚さ方向に振動する薄膜振動体(7b,7c)で形成された中空板状のファン本体(2)を備え、
上記ファン本体(2)の両薄板(7,8)の少なくとも一方に、上記脱臭部材(3)が取り付けられていることを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記薄型送風ファン(2)と上記脱臭部材(3)とが脱着可能に構成されていることを特徴とする脱臭装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記脱臭部材(3)の脱臭性能を再生する再生モジュール(30)が、該脱臭部材(3)を通過する気流の上流側に取り付けられていることを特徴とする脱臭装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記再生モジュール(30)が、ストリーマ放電により低温プラズマを発生するように構成されていることを特徴とする脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−264308(P2008−264308A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113273(P2007−113273)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】